特許第6223532号(P6223532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6223532
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】石鹸
(51)【国際特許分類】
   C11D 13/16 20060101AFI20171023BHJP
   C11D 13/08 20060101ALI20171023BHJP
   C11D 9/44 20060101ALI20171023BHJP
   C11D 17/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C11D13/16
   C11D13/08
   C11D9/44
   C11D17/00
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-231453(P2016-231453)
(22)【出願日】2016年11月29日
【審査請求日】2016年11月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500389302
【氏名又は名称】株式会社エスディーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】石野 榮一
(72)【発明者】
【氏名】石野 武
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−036587(JP,B1)
【文献】 特開平02−099600(JP,A)
【文献】 実開昭58−163543(JP,U)
【文献】 特開平08−302400(JP,A)
【文献】 実開昭49−046043(JP,U)
【文献】 特開平03−265698(JP,A)
【文献】 特開2000−303097(JP,A)
【文献】 特開平02−167400(JP,A)
【文献】 特開平01−097611(JP,A)
【文献】 実開昭52−007863(JP,U)
【文献】 特開昭45−036587(JP,A)
【文献】 特開昭58−163543(JP,A)
【文献】 実開昭49−469043(JP,U)
【文献】 アート&デザイン−石けん教室+アロマテラピー新潟,日本,2016年 9月 5日,第1−8頁写真等
【文献】 縦入れもようの石けん<石けんレッスン,日本,2016年 9月28日,第1、3頁写真
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
B29C 39/12
C11C 5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直回転軸により回転可能な基台上に、互いに内径(最も小さい内径)が異なる複数の筒状型の端部を基台上面に着脱可能に密着させ、
該複数の筒状型のうち、より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して、各筒状型の間に形成された空間、及び最も内側の筒状型の内部からなる空間が形成されるように該基台上に密着させ、
該複数の筒状型のそれぞれの筒の軸の中心が該垂直回転軸に一致するように基台上面に密着させてなるか、少なくとも一部の筒状型を偏芯して回転するように基台上面に密着させてなる
石鹸製造型。
【請求項2】
該複数の筒状型の内面の筒の軸方向に垂直な断面は、それぞれ独立して、円形、楕円形、多角形、不定形、及びこれらの形状を組み合わせてなる形状から任意に選択してなる請求項1に記載の石鹸製造型。
【請求項3】
垂直回転軸により回転可能な基台上に、互いに内径(最も小さい内径)が異なる複数の筒状型の端部を基台上面に着脱可能に密着させ、
このとき、該複数の筒状型のうち、より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して該基台上に密着させてなる垂直回転軸により回転可能な基台上に、互いに内径が異なる複数の筒状型の端部を基台上面に着脱可能に密着させ、
該複数の筒状型のうち、より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して、各筒状型の間に形成された空間、及び最も内側の筒状型の内部からなる空間が形成されるように該基台上に密着させてなる石鹸製造型を用い、
第1工程:
複数の空間のうち、隣接する空間に石鹸溶融液を注入しないように、第1の空間に第1の石鹸溶融液を注入する工程
第2工程:
第1の空間の第1の石鹸溶融液の温度が低下して流動性を失ったあとに、該第1の空間に隣接する第2の空間に第2の石鹸溶融液を注入する工程
第3工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該第1と該第2の空間を仕切る筒状型を取り出す工程
第4工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該垂直回転軸を回転させる工程
を有する石鹸の製造方法。
【請求項4】
より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して、各筒状型の間に形成された空間、及び最も内側の筒状型の内部からなる、複数の空間が形成された石鹸製造型を用い、
第1工程:
複数の空間のうち、隣接する空間に石鹸溶融液を注入しないように、第1の空間に第1の石鹸溶融液を注入する工程
第2工程:
第1の空間の第1の石鹸溶融液の温度が低下して流動性を失ったあとに、該第1の空間に隣接する第2の空間に第2の石鹸溶融液を注入する工程
第3工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該第1と該第2の空間を仕切る筒状型を取り出す工程
第4工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、筒状型を、その長さ方向に平行な軸を中心に回転させる工程
を有する石鹸の製造方法により得られた、
多色からなる模様を有する筒状石鹸であって、隣接する色は連続的に変化して、目視では隣接する色の境界を確認できない程度のグラデーションを形成し、かつ、各色は筒形に形成されている石鹸。
【請求項5】
模様はグラデーション模様のみである請求項4に記載の石鹸。
【請求項6】
より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して、各筒状型の間に形成された空間、及び最も内側の筒状型の内部からなる、複数の空間が形成された石鹸製造型を用い、
第1工程:
複数の空間のうち、隣接する空間に石鹸溶融液を注入しないように、第1の空間に第1の石鹸溶融液を注入する工程
第2工程:
第1の空間の第1の石鹸溶融液の温度が低下して流動性を失ったあとに、該第1の空間に隣接する第2の空間に第2の石鹸溶融液を注入する工程
第3工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該第1と該第2の空間を仕切る筒状型を取り出す工程
第4工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、筒状型を、その長さ方向に平行な軸を中心に回転させる工程
を有する石鹸の製造方法により得られた、
多色からなる模様を有する石鹸であって、隣接する色は連続的に変化して、目視では隣接する色の境界を確認できない程度のグラデーションを形成し、かつ、隣接する色が連続的に変化する曲線部分が形成されている石鹸。
【請求項7】
グラデーション模様が円弧形状である請求項6に記載の石鹸。
【請求項8】
模様はグラデーション模様のみである請求項6又は7に記載の石鹸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美観に優れた石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
多色からなる石鹸であって、1色目の石鹸素地を成形型内に注入して冷却し、次いで、冷却された石鹸素地が固化する前に、より高温で加熱溶融した2色目の石鹸素地を該成形型内に注入して固化させることにより得られた、色の境界が明確ではなく、グラデーション模様を形成してなる石鹸は、特許文献1に記載されているように公知である。
また、石鹸用基質ベースとマーブルベースを混練し、これを押出成形機により押し出すことによって、色彩が連続的に変化するマーブル模様石鹸は、特許文献2に記載されているように公知である。
そして、特許文献3には、筒状の型内にインサートを設け、インサートの内側の空隙に第1の石鹸溶融液を充填し、これを冷却した後にインサートを除去して、インサートの内側及びインサートの厚み部分を反映した空隙に、第2の石鹸溶解液を充填し、これを冷却する石鹸の製造方法が記載されている。加えて、第1と第2の石鹸が互いの間で粘着性結合を有さないときには、図4B及びCに示されるように、第1と第2の石鹸の間で、細かい凹凸を嵌合させて一体化を図ることが記載されている。そして図3及び4において、第1及び第2の石鹸は明確な境界を有して一体化されていることを確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−302400号公報
【特許文献2】特開2001−311098号公報
【特許文献3】特表2008−523228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多色石鹸であって、色の境界が連続的であって、グラデーションを形成している石鹸自体は、上記のように公知ではあるが、特許文献1の記載によれば、色の境界は石鹸を堆積させて形成させることを基本とし、かつ平面を形成するものであって筒状の軸方向に伸びる模様を形成できない。そしてたとえば筒状石鹸の内部と周縁部との間で異なる色とすることはできないし、色の境界を曲面とすることもできない。なお、仮に特許文献1に記載の方法において、2番目の石鹸素地を勢いよく注入すると、色の境界が平面にはならないかも知れないが、このときには、その境界は不定形のものか、せいぜい、2番目の石鹸素地を注入した地点で、1番目の石鹸が流動して凹部を形成するのであって、計算された模様や美観の石鹸を得ることが困難である。
またマーブル模様の石鹸は、2色の材料を混練する工程を必須とし、その結果として、不規則なマーブル模様を形成させることしかできず、規則的な模様を得ることができない。
さらに、加熱し軟化された2色の石鹸素地を2色の押出成形機によって押出成形し、例えば、中心部と周縁部とが互いに異なる色を有する石鹸を得ることが知られているが、上記特許文献2に記載の事項からも明確なように、2色の石鹸素地をあえて混練をしない限り、単に押出成形をしたのみでは、色彩が連続的に変化する模様を得ることはできない。
この点は押出成形の原理上からも明確であり、ダイスから押し出される石鹸素地は、押出のために加圧されることによって、ある程度の流動性を得るものであり、押出された直後から、本来、流動性を有しない。仮に押出後において流動性を有すると、押出後の外形を維持できず、意図する形状にできないことは明確である。
そして特許文献3に示す方法によれば、図4B及びCとその関連個所に記載のように、2つの石鹸を機械的に結合させることができるものであり、このような記載によれば、2つの石鹸が形成する境界は、少なくとも目視において、明確に境界線を形成するものとして形成されることがわかる。そうすると、特許文献3に記載する装置及び方法のように、固化された石鹸に対して溶融した石鹸を単に隣接させるように充填したのでは、それらの石鹸の境界において十分に混合されず、連続的に色が変化するようなグラデーションを形成することが困難であることがわかる。
さらに、一つの型内に複数のノズルから石鹸溶融液を同時に供給し、固化することも可能であるが、この方法によっても予め計算されたグラデーションを得ることが困難であると同時に、供給されている時間にわたり型内の石鹸溶融液が流動するので、結果的に型内の上部よりも下部に存在する石鹸がより撹拌されることになり、型の深さ方向のどこをとっても均一な模様とすることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の石鹸製造装置、石鹸製造方法及び石鹸を発明した。
1.垂直回転軸により回転可能な基台上に、互いに内径が異なる複数の筒状型の端部を基台上面に着脱可能に密着させ、
該複数の筒状型のうち、より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して、各筒状型の間に形成された空間、及び最も内側の筒状型の内部からなる空間が形成されるように該基台上に密着させてなる石鹸製造型。
2.該複数の筒状型の内面の筒の軸方向に垂直な断面は、それぞれ独立して、円形、楕円形、多角形、不定形、及びこれらの形状を組み合わせてなる形状から任意に選択してなる1に記載の石鹸製造型。
3.該複数の筒状型のそれぞれの筒の軸の中心が該垂直回転軸に一致するように基台上面に密着させてなる1又は2に記載の石鹸製造型。
4.垂直回転軸により回転可能な基台上に、互いに内径が異なる複数の筒状型の端部を基台上面に着脱可能に密着させ、
このとき、該複数の筒状型のうち、より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して該基台上に密着させてなる垂直回転軸により回転可能な基台上に、互いに内径が異なる複数の筒状型の端部を基台上面に着脱可能に密着させ、
該複数の筒状型のうち、より大きい内径の筒状型内により小さい内径の筒状型を挿入して、各筒状型の間に形成された空間、及び最も内側の筒状型の内部からなる空間が形成されるように該基台上に密着させてなる石鹸製造型を用い、
第1工程:
複数の空間のうち、隣接する空間に石鹸溶融液を注入しないように、第1の空間に第1の石鹸溶融液を注入する工程
第2工程:
第1の空間の第1の石鹸溶融液の温度が低下して流動性を失った後に、該第1の空間に隣接する第2の空間に第2の石鹸溶融液を注入する工程
第3工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該第1と該第2の空間を仕切る筒状型を取り出す工程
第4工程:
該第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該垂直回転軸を回転させる工程
を有する石鹸の製造方法。
5.多色からなる模様を有する筒状石鹸であって、隣接する色は連続的に変化し、かつ、各色は筒形に形成されている石鹸。
6.多色からなる模様を有する石鹸であって、隣接する色は連続的に変化し、かつ、各色は溝状に形成されている石鹸。
【発明の効果】
【0006】
本発明の石鹸製造型(装置)及び石鹸製造方法によれば、多色模様とするための隣接する色が連続的に変化して、色の境界線を目視にて確認できないグラデーションを形成した石鹸を、より簡単にかつ多量に得ることができる。それに加えて、得られた石鹸は筒状であり、その石鹸に形成された多色模様の色の変化する境界は平面を構成することはなく、筒状の長さ方向に伸びた面である。その結果、筒状の石鹸を切断して任意の大きさや形状の石鹸とした場合であっても、得られた石鹸が有する連続的な色の変化は、筒状に由来する曲面を反映したものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の石鹸製造型の斜視図
図2】本発明の石鹸製造型の上面図
図3】本発明の第1工程後の状態の模式図
図4】本発明の第2工程後の状態の模式図
図5】本発明の第3工程後の状態の模式図
図6】本発明の第4工程後の状態の模式図
図7】本発明の筒形に形成されている石鹸の模式図
図8】本発明の多色からなる模様を有し、かつ、各色は溝状に形成されている石鹸の模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(石鹸製造型)
本発明の石鹸製造型について、以下に例を示して説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
本発明の石鹸製造型は、図1に示すように、垂直回転軸Aによって回転可能に支持された基台Bを設け、その上面に互いに内径が異なる複数(n個)の筒状型Cの端部を基台上面に着脱可能に密着させてなることを基本とする。
このため、基台Bの上面には、筒状型Cの端部を密着させるために、図示はしないが、該端部を嵌合させるための凹部が形成されたり、及び/又は、任意の固定部材が設けられていたりしても良い。
基台上面及び筒状型は、冷却され固化した石鹸に対して離型性を有する材料であって、石鹸溶融液によっても変質や変形しない材料からなるものである。そのような材料としては、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属が好ましい。
【0009】
このように筒状型Cの端部を密着させるための構造を有する基台上に、互いに内径が異なる複数の筒状型Cを着脱可能に密着させる。図1に示すように、内径が大である筒状型の内部に内径が小である筒状型が挿入されるようにして基台B上に固定される。
このとき、複数の筒状型の筒の軸方向に垂直な面にて切断してなる断面は、図2の1に断面が円形と正方形の筒状型を示すように、それぞれ独立して、円形、楕円形、多角形、不定形、及びこれらの形状を組み合わせてなる形状から任意に選択できる。
例えば、全ての筒状型Cの断面内面の形状は、全て円形であるように相似形であってもよく、また、一部の筒状型の断面内面の形状が四角形であり、他の筒状型の断面内面の形状が円形である等のように、相似形でなくてもよい。
その結果、図2の1に示すように断面が円形の筒状型を、その筒状型の間隔が一定となるように配置しても良いが、筒状型の間隔が場所によって異なるようにしてもよい。
図2の1でいえば、最も外側の筒状型以外の7つの筒状型は断面が円形であり、最も外側の筒状型は正方形であるが、例えば、円形の筒状型を7つから2つに変更し、2つの円形の筒状型の間に断面が楕円形の筒状型や多角形の筒状型とすることもできる。
このように、内部に設置する筒状型の断面形状を円形以外の形状とすることにより、製造される石鹸の着色されたパターンを任意に変化させることができ、より自由度を備えたデザインとすることができる。
【0010】
また全ての筒状型の長さ方向の中心軸が共通するように基台上に固定されていても良く、またそうでなくてもよい。図1及び図2の1に示す場合は、全ての筒状型の長さ方向の中心軸が共通するように基台上に固定されている。そうでない場合には、ある一つの筒状型の内面とその直ぐ内部に設置された他の筒状型の外面との間隔からなる空間が、場所によって異なること、及び、少なくとも一部の筒状型は、該垂直回転軸による回転の際に偏芯して設けられて回転されることを意味している。
図2の1に示す筒状型の断面の形状を、例えば、図2の2(a)の模式図に示すように、断面が円形の7つの筒状型を3つに変更し、最も内側の筒状型の断面を多角形としたり、図2の2(b)のように断面が円形の8つの筒状型を4つに変更し、その4つの筒状型の筒の中心軸が一致しないように偏芯させたり、さらに、図2の2(c)のように一部の筒状型の断面を楕円としたりする等することもできる。
このような筒状型の構成とすることで、製造された石鹸をより自由度に優れたデザインとすることができる。
また、最外層の筒状型の内径は、例えば2〜20cm程度である。
【0011】
(石鹸の製造方法)
例えば筒状型を2つ使用して石鹸を製造する場合、内側の筒状型の内面に1つめの空間が形成され、さらに2つの筒状型の間に2つめの空間が形成される。そしてこれらの空間にそれぞれの色の石鹸溶融液が注入される。
同様に、仮に筒状型を7つ使用する場合には、最も内側に設けられた、内径が最小の筒状型の内面に、一つの空間が形成され、かつ該内径が最小の筒状型を覆うように次に内径が小さい筒状型が設けられ、この2つの筒状型の間に空間が形成される。
このようにして、筒状型を例えば7つ使用する際には、隣接する筒状型との間で、合計7−1個の空間が形成される。そしてこれらの筒状型同士の間に形成された空間と、最も内側に設けた筒状型の内部の合計7個の空間に、石鹸溶融液が注入されることになる。
なお、使用する筒状型は7つに限定されず、必要に応じて6つ以下、8つ以上とすることができる。
【0012】
基台上に全ての筒状型を着脱可能に密着させた状態において、図1及び図2の1に示すように、石鹸製造中に筒状型が傾いたり、基台Bから外れたりしないように、必要に応じて固定部材Dを用いて固定しておく。
例えば、図3に示すように、第1工程として、図3においてS1〜S8の8つの空間のうち、隣接する空間に石鹸溶融液を注入しないように、塗り潰したS2、S4、S6及びS8の4つの空間、つまり第1の空間に、任意の色の石鹸溶融液(70〜75℃程度)を、図示しないがノズル等により注入し、その後石鹸溶融液が流動性を失う程度まで温度を低下させる。この温度を低下させるのには2〜3分程度を要する。なお、流動性を失う程度の温度とはおよそ55〜65℃程度である。この4つの第1の空間に注入する石鹸溶融液は、互いに同じ石鹸溶融液でもよく、互いに異なる色や、添加剤を含有するものでもよい。
なおこれらの温度範囲は石鹸の組成によって変動するので、本発明はこれらの温度範囲に限定されるものではない。
このとき、注入中及び注入後において、垂直回転軸Aにより基台Bを任意の回転速度となるように回転させても良く、又は石鹸溶融液の温度が低下して流動性を失うまでの間にわたって回転させなくてもよい。なお、第1及び/又は第2の石鹸溶融液に薄片状の粒子を混合させた場合には、注入後に流動性を失うまでの間に回転を行って、薄片状の粒子の平面を、回転軸を中心とした円の接線方向と略平行に配向させることができる。この結果、得られた石鹸が、より光輝性を有したり、干渉色を有したりする等の美観とデザイン性の向上を図ることができる。
【0013】
第2工程としては、第1工程にて注入した溶融石鹸液が流動性を失った後に、速やかに、上記の第1の空間に隣接する第2の空間、つまり、図3に示すS1、S3、S5及びS7の4つの空間に第2の石鹸溶融液を注入する工程である。その結果、図4に示すように、それぞれの筒状型内に各色の石鹸が注入された状態となる。
この4つの第2の空間に注入する第2の石鹸溶融液は、互いに同じ石鹸溶融液でもよく、互いに異なる色や、添加剤を含有するものでもよい。
【0014】
第3工程としては、第2工程にて注入した第2の石鹸溶融液が流動性を有する時点において、該第1の空間と該第2の空間を仕切る筒状型を取り出す工程である。図4において、断面が円形で示された7つの筒状型を全て取り出すことになる。
この結果、流動性を有する第2の石鹸溶融液は取り出された筒状型が存在していた空間にも充填されて、図4に示す場合において、最も外側の正方形の筒状型のみが型として残り、その内部は図5に示すように、第1工程及び第2工程により注入された石鹸が存在するのみとなる。
【0015】
第4工程としては、第3の工程の後速やかに、該第2の石鹸の溶融液が流動性を有する時点において、図5に示すように該垂直回転軸Aを矢印方向に回転させて基台Bを回転させ、その結果として最も外側の筒状型とその内部の石鹸を、筒状型と共に回転させる工程である。
この回転によって、未だ流動性を有している第2の石鹸の溶融液と、既に流動性を失った第1の石鹸の溶融液の固化体(以下、「第1の石鹸」とする)との界面において、第2の石鹸の溶融液から第1の石鹸の表面に伝熱して、第1の石鹸の表面を若干溶融し、同時に、回転によってその界面付近に存在する、表面が若干溶融された第1の石鹸と第2の石鹸の溶融液との間に剪断力が働くことになる。このような剪断力が発生することによって、第1の石鹸と第2の石鹸の溶融液がその界面において混合されて、その境界が不明瞭なものとなり、第1の石鹸と第2の石鹸の色が異なる場合には、その色の境界は連続的に色が変わる状態となる。
なお、予め、流動性を失った第1の石鹸の内面及び/又は外面に、筒の長さ方向に平行に伸びる微細な溝を形成できるように、筒状型の内面及び/又は外面を加工しておくこともできる。第1の石鹸の内面及び/又は外面に微細な溝を設けることによって、石鹸溶融液と流動性を失った石鹸との接触面積がより広くなるので、石鹸溶融液から流動性を失った石鹸への伝熱がより速やかに行われて、これらの石鹸をより速やかに部分的に混合させることができる。
【0016】
その結果として、第1の石鹸と第2の石鹸溶融液との界面において、両者の石鹸が互いに分散しあうことになって、この界面が明確な界面では無くなり、図6に示すように、第1の石鹸と第2の石鹸溶融液はその境界を確認できない程度に混じることになる。かつ、第1の石鹸と第2の石鹸溶融液とが完全に混合されることはなく、元々それらの境界に近い部分において、より混合され、第1の石鹸の内部にいくほど、かつ第2の石鹸溶融液の内部にいくほど、完全に混合されない状態となる。
そして、第1の石鹸と第2の石鹸溶融液の温度が低下して固化した結果、第1の石鹸と第2の石鹸溶融液が固化した部分との間において、両者の色が目視にてその境を確認できないグラデーションを形成するようにして連続的に色が混合された状態を形成できる。
このとき、図4における、S1〜S8のそれぞれの間隔も考慮して第2の石鹸溶融液の温度と回転数が調整される。
【0017】
回転数としては、最も外側の筒状型の内径、及び石鹸溶融液の温度にもよるが、毎秒0.5回転〜5回転、好ましくは毎秒1回転〜3回転である。回転数が小さいと、回転による効果を十分に発揮できず、第2の石鹸溶融液と第1の石鹸との間に十分な剪断力を発生できないので、境界のないグラデーションを有する石鹸とすることが困難になる。
回転数が大きすぎると、第2の石鹸溶融液が第1の石鹸をより多く溶解してしまい、互いの石鹸が混ざりすぎて、十分なグラデーションを形成することができない。
第2の石鹸溶融液が流動性を失い、最も外側の筒状型を固化された石鹸から取り外しても良い状態となる程度に固化した後において、最後に残された最も外側の筒状型と、固化された筒状形状の石鹸を分離して、図7に示すような筒状石鹸を得ることができる。
【0018】
(石鹸)
本発明による石鹸は、洗顔用や体洗い用等で、かつ上記石鹸製造型及び製造方法により製造される多色からなる模様を有する筒状石鹸であって、隣接する色は連続的に変化し、かつ、各色は筒形に形成されている石鹸である。そのため、例えば虹色の模様となるように、各色の石鹸素材を使用して、その色の境界が実際の虹と同じく、色の境が目視にて確認できずに連続的な色の変化として表現されたものを得ることもできる。
本発明における石鹸の材料としては、公知の材料からなる石鹸素材を採用することができる。
油脂や高級脂肪酸を鹸化させてなる素地に、顔料や染料等の着色料、香料、砂糖、グリコールやグリセリン等のアルコール類等を配合してなる材料を採用できる。
本発明にて使用される石鹸素材は、透明石鹸、半透明石鹸、不透明な石鹸のいずれでもよく、これらの石鹸から任意選択でき、又は、一つの筒状石鹸の一部に透明石鹸、他の一部に半透明石鹸、残りの部分に不透明な石鹸を採用する等、異なる透明性の石鹸を併用することもできる。もちろん、透明石鹸のみ、半透明石鹸のみ、不透明な石鹸のみを使用した石鹸とすることもできる。
また、本発明の石鹸を得ることができる範囲において、第1及び第2の石鹸溶融液に溶解しない樹脂、紙、金属等からなる物品を配合することもでき、植物、動物、キャラクター等の造形物を表現した小片、球状、フレーク状や薄片状の粉体を配合することができる。その結果として、本発明による色が連続的に変化してグラデーションを有し、色の境界を目視にて確認できないという美観とこれらの物品による美観を総合してより優れた美観の石鹸とすることもできる。
【0019】
本発明の筒状に形成された石鹸は例えば図7に示すように筒形に形成されている石鹸であって、その筒形の石鹸を単に輪切りにして個別の石鹸としても良く、筒形の石鹸の径が大きければ、輪切りにすることに加えて、必要に応じて、図7の破線にて示すように筒形の石鹸の軸方向に平行な面等も切断して個々の石鹸とすることができる。
輪切りのみして得た石鹸であれば、その外周部から中心に向けて色が連続的に変化する全体的な模様を楽しむことができる。
また任意の形状とするように切断して個々の石鹸とした場合であっても、例えば図8に示すように、筒状型の断面形状に由来する模様であって、隣接する色が連続的に変化する曲線部分を有するものを得ることができる。このような曲線部分は溝状の曲面中に各色の部分が形成された形状といえる。
このとき図8の直方体形状の石鹸では、その上面からみた模様と側面から見た模様とは異なるので、その変化を楽しむことができ、また透明石鹸であれば、各面から透かして見た場合の模様はさらに連続的となる。
そして、切断されて個々の石鹸となった石鹸が、色が連続的に変化することによって表現できる曲線部分を有する模様としては、全て平面状に堆積してなる模様ではない。
また、部分的に窪み(樋状のような溝状ではなく、半球状等のように窪んだ部分)を有する形状である場合において、石鹸の外観として、その窪み部分を目視にて確認できない場合があるので、窪み形状の模様を形成する必要性がなく、そのため、窪み形状を有しない曲線上とすることが望ましい。さらに石鹸内には、図8に示すような、筒を、筒の軸方向に平行な面で切断して得た樋状のような溝状の曲面を有することが、筒状の石鹸から個々の石鹸を切り出す際に、それぞれの石鹸の模様を、より均一に保つことができる上でより望ましい。
本発明の石鹸では石鹸内部に模様が隠れることがなく、使用前から意図した美観を備えることができる。
【符号の説明】
【0020】
A・・・垂直回転軸
B・・・基台
C・・・筒状型
D・・・固定部材
S1〜S8:空間
【要約】      (修正有)
【課題】多色石鹸であって、色の境界が連続的であって、グラデーションを形成している、美観に優れた石鹸の製造方法。
【解決手段】垂直回転軸Aにより回転可能な基台B上に、互いに内径が異なる複数(n個)の筒状型Cの端部を基台A上面に着脱可能に密着し、該複数の筒状型Cのうち、より大きい内径の筒状型C内により小さい内径の筒状型Cを挿入して、各筒状型Cの間にn−1個の間隙が形成されるように該基台B上に密着させてなる石鹸製造型。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8