特許第6223536号(P6223536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6223536
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】起動用回転弁
(51)【国際特許分類】
   F02N 9/04 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   F02N9/04 B
   F02N9/04 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239412(P2016-239412)
(22)【出願日】2016年12月9日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】堀川 政人
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234733(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00505366(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ数に対応する複数の空気通路とこれらの複数の空気通路の出口とを有するハウジングと、
上記ハウジングに回転自在に支持されると共に、カム軸に一端が連結された軸部と、その軸部の他端側に連なる円板部とを有し、上記円板部に、回転に伴って、順次上記複数の空気通路に連通するひとつの貫通穴を有する回転弁体と、
上記ハウジングに、上記回転弁体の円板部を覆うように取り付けられると共に、空気入口を有するカバーと
を備え、
上記複数の空気通路の出口は、上方または斜め上方に向けて開口しており、
上記複数の空気通路の出口が開口する上記ハウジングの径方向の端面は、斜め上方に向くように、鉛直面に対して傾斜していることを特徴とする起動用回転弁。
【請求項2】
シリンダ数に対応する複数の空気通路とこれらの複数の空気通路の出口とを有するハウジングと、
上記ハウジングに回転自在に支持されると共に、カム軸に一端が連結された軸部と、その軸部の他端側に連なる円板部とを有し、上記円板部に、回転に伴って、順次上記複数の空気通路に連通するひとつの貫通穴を有する回転弁体と、
上記ハウジングに、上記回転弁体の円板部を覆うように取り付けられると共に、空気入口を有するカバーと
を備え、
上記複数の空気通路の出口は、上方または斜め上方に向けて開口しており、
上記複数の空気通路の出口は、上記回転弁体の軸方向に関して異なる位置に設けられていることを特徴とする起動用回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関のシリンダ毎に設けられる始動弁に空気圧源からの圧縮空気を順次分配する内燃機関の起動用回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の起動用回転弁としては、特開平11−303713号公報(特許文献1)の図1に記載のものがある。
【0003】
この従来の起動用回転弁(特許文献1では始動空気管制弁と言っている。)では、ハウジングに設けられた6個の空気通路の6個の出口が、ハウジングの周囲に等間隔に配置されている。そのため、半数の3個の出口が下方に向いて開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−303713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記従来の起動用回転弁では、ハウジングの外周部に設けられた6個の出口のうち、半数の3個の出口が下方に向いているため、この下方に向いた3個の出口に接続された配管は、必然的に、U字状に屈曲して、シリンダ毎の始動弁に接続されることになる。
【0006】
このように、上記従来の起動用回転弁では、必然的に、空気通路の出口と始動弁とがU字状に屈曲した配管で接続されることになるため、配管のU字状の屈曲部が、空気からでたドレン水、回転弁の摺動部を潤滑する潤滑油等の液体の溜まり部となって、始動時に、溜まり部に溜まっていたドレン水、潤滑油等の液体がシリンダ毎の始動弁の周辺に噴出するという問題がある。このドレン水、潤滑油等の液体の噴出が周囲環境を汚し、著しい場合は火災の原因となり、また、溜まった水により錆等が発生して機器の寿命を損ねるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、起動用回転弁の複数の空気通路の出口と始動弁とをつなぐ配管にU字状の屈曲部(液体の溜まり部)ができないようにできて、ドレン水、潤滑油等の液体の噴出を防止して、周囲環境の汚染を防止でき、火災の発生を防止でき、また、機器の寿命を延長できる起動用回転弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の起動用回転弁は、
シリンダ数に対応する複数の空気通路とこれらの複数の空気通路の出口とを有するハウジングと、
上記ハウジングに回転自在に支持されると共に、カム軸に一端が連結された軸部と、その軸部の他端側に連なる円板部とを有し、上記円板部に、回転に伴って、順次上記複数の空気通路に連通するひとつの貫通穴を有する回転弁体と、
上記ハウジングに、上記回転弁体の円板部を覆うように取り付けられると共に、空気入口を有するカバーと
を備え、
上記複数の空気通路の出口は、上方または斜め上方に向けて開口しており、
上記複数の空気通路の出口が開口する上記ハウジングの径方向の端面は、斜め上方に向くように、鉛直面に対して傾斜していることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、上記複数の空気通路の出口は、上方または斜め上方に向けて開口しているから、複数の空気通路の出口と始動弁とをつなぐ配管をU字状に屈曲させる必要がなくなって、U字状の屈曲部、つまり、ドレン水、潤滑油等の液体の溜まり部がなくなる。
【0010】
そのため、始動時に、始動弁からドレン水、潤滑油等の液体が噴出することがなくなって、周囲環境の汚染を防止でき、火災の発生を防止でき、また、錆等の発生を防止して機器の寿命を延長できる。
【0011】
さらに、上記複数の空気通路の出口が開口する上記ハウジングの径方向の端面は、斜め上方に向くように、鉛直面に対して傾斜している。
【0012】
このように、上記複数の空気通路の出口が開口する上記ハウジングの径方向の端面が、斜め上方に向くように、鉛直面に対して傾斜しているから、上記空気通路の出口を、斜め上方に向けて開口する加工を簡単にできる。
【0013】
また、この発明では、
上記複数の空気通路の出口は、上記回転弁体の軸方向に関して異なる位置に設けられている。
【0014】
この発明によれば、上記複数の空気通路の出口は、上記回転弁体の軸方向に関して異なる位置に設けられているから、上記複数の空気通路の出口は、上方または斜め上方に向けて開口するように配置しても、開口、または、その開口に接続する金具の干渉を容易に防止できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数の空気通路の出口が、上方または斜め上方に向けて開口しているので、複数の空気通路の出口と始動弁とをつなぐ配管をU字状に屈曲させる必要がなくなって、ドレン水、油等の液体の溜まり部がなくなって、始動時に、始動弁からドレン水、油等の液体が噴出することがなくなって、周囲環境の汚染を防止でき、火災の発生を防止でき、また、錆等の発生を防止して機器の寿命を延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の1実施形態の起動用回転弁の断面図である。
図2】上記起動用回転弁の一部を破断した左側面図である。
図3】上記起動用回転弁のハウジングの要部の段面図である。
図4】上記起動用回転弁のハウジングの左側面図である。
図5図3のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、この実施形態の起動用回転弁は、ハウジング1を備え、このハウジング1には、図示しない内燃機械のシリンダ数に対応する複数の空気通路2(図1では一つのみを示す)を設けている。この起動用回転弁は、6気筒の内燃機械用のもので、空気通路2の数は図3、4に示すように6個である。図示しないが、例えば、8気筒の場合は、気筒数に応じて空気通路の数は8となる。
【0019】
上記ハウジング1内には、空気通路2,2,2,…を開閉するための回転弁体3を設けている。この回転弁体3は、水平方向に延びる軸部31と円板部32とからなり、上記軸部32は、ブッシュ5を介してハウジング1に回転自在に支持されている。上記軸部31の一端は、中間継手6を介してカム軸7に連結される一方、軸部31の他端には、円板部32が連なっている。この円板部32には、ひとつの貫通穴33を設け、円板部32の回転によって、この貫通穴33と、ハウジング1の端面に開口する複数の空気通路2,2,2,…(図4を参照)の入口2a,2a,2a,…とが順次連通するようになっている。
【0020】
上記円板部32をカバーするように、カバー15をハウジング1にボルト16,16,16(図1および2を参照)によって取り付けている。上記カバー15には、空気入口17を設け、この空気入口17から供給された圧縮空気は、上記円板部32の回転によって、貫通穴33を通って複数の空気通路2,2,2,…に順次供給される。
【0021】
より詳しくは、図4に示すように、上記複数の空気通路2,2,2,…の入口2a,2a,2a,…は、ハウジング1の軸方向(回転弁体3の軸部31の軸方向)の端面11に、同一ピッチ円上に等間隔に設けている。上記回転弁体3の回転に伴って、回転弁体3の円板部32の貫通穴33が、図4に示す複数の空気通路2,2,2,…の入口2a,2a,2a,…の1つに対向すると、図示しない起動用空気槽からの圧縮空気が、カバー15の空気入口17,回転弁体3の円板部32の貫通穴33を通って、ハウジング1の空気通路2の入口2aに流入し、空気通路2を通って、図4に示す複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…の1つから、図示しない各気筒の始動弁に供給されるようになっている。
【0022】
図3に示すように、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…が開口するハウジング1の径方向に向いている端面(以下、径方向の端面という)21,22は、斜め上方に向くように、鉛直面Vに対して傾斜している。また、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…も、斜め上方に向けて開口している。上記出口2b,2b,2b…の内面には、配管を接続するための例えば管用テーパねじや管用平行ねじ等の配管ねじを切っている。
【0023】
上記複数の空気通路2,2,2,…は、図3に示すように、入口2a,2a,2a,…から出口2b,2b,2b…まで、水平部と上り勾配部とからなっていて、潤滑油などの溜まり部が生じないようにしている。
【0024】
また、上記ハウジング1の外周側の径方向の端面21には、図5に示すように、空気通路2,2,2の出口2b,2b,2bを、回転弁体3の軸方向に関して異なる位置に設けて、図示しない配管の継手部が干渉しないようにしている。上記ハウジング1の外周側の径方向の端面22も、図示しないが、図5に示す外周側の径方向の端面21と同様に、空気通路2,2,2の出口2b,2b,2bを回転弁体3の軸方向に関して異なる位置に設けて、図示しない配管の継手部が干渉しないようにしている。
【0025】
なお、図1において、51,52,53,54は潤滑油通路である。
【0026】
上記構成の起動用回転弁によれば、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…は、斜め上方に向けて開口しているから、複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…と図示しない始動弁とをつなぐ配管をU字状に屈曲させる必要がなくなって、U字状の屈曲部、つまり、ドレン水、潤滑油等の液体の溜まり部がなくなる。
【0027】
そのため、始動時に、始動弁からドレン水、潤滑油等の液体が噴出することがなくなって、周囲環境の汚染を防止でき、火災の発生を防止でき、また、錆等の発生を防止して機器の寿命を延長できる。
【0028】
また、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…が開口するハウジング1の径方向の端面21,22が、斜め上方に向くように、鉛直面Vに対して傾斜しているから、空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…を、斜め上方に向けて開口する加工を簡単にできる。
【0029】
また、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…は、回転弁体3の軸方向に関して異なる位置に設けられているので、複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…を、斜め上方に向けて開口するように配置しても、開口、または、その開口に接続する金具の干渉を容易に防止できる。
【0030】
上記実施形態では、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…は、斜め上方に向けて開口しているが、空気通路の出口を全て上方に向けて開口してもよい。
【0031】
上記実施形態では、上記複数の空気通路2,2,2,…の出口2b,2b,2b…が開口するハウジング1の径方向の端面21,22は、斜め上方に向くように、鉛直面Vに対して傾斜しているが、径方向の端面は上方に向くようにして、この上方に向いた径方向の端面に空気通路の全ての出口を設けてもよい。
【0032】
上記実施形態では、6気筒用の起動回転弁について述べたが、この発明は8気筒用などの起動回転弁にも同様に適用できる。
【0033】
上記実施形態および変形例で述べた構成要素は、適宜、組み合わせてもよく、また、適宜、選択、置換、あるいは、削除してもよいのは、勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 ハウジング
2 空気通路
2a 入口
2b 出口
3 回転弁体
5 ブッシュ
15 カバー
17 空気入口
21,22 径方向の端面
31 軸部
32 円板部
33 貫通穴
V 鉛直面
【要約】      (修正有)
【課題】起動用回転弁の複数の空気通路の出口と始動弁とをつなぐ配管にU字状の屈曲部ができないようにすること。
【解決手段】シリンダ数に対応する複数の空気通路2とこれらの複数の空気通路の出口2bとを有するハウジング1と、ハウジングに回転自在に支持されると共に、カム軸に一端が連結された軸部と、その軸部の他端側に連なる円板部とを有し、円板部に、回転に伴って、順次上複数の空気通路に連通するひとつの貫通穴を有する回転弁体と、ハウジングに、回転弁体の円板部を覆うように取り付けられると共に、空気入口を有するカバーとを備え、複数の空気通路の出口は、上方または斜め上方に向けて開口している。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5