特許第6223542号(P6223542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223542薄片粉末を製造するための低エネルギーの粉砕
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223542
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】薄片粉末を製造するための低エネルギーの粉砕
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/04 20060101AFI20171023BHJP
   H01G 9/052 20060101ALI20171023BHJP
   H01G 9/04 20060101ALI20171023BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20171023BHJP
   B02C 17/20 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B22F9/04 C
   H01G9/05 K
   H01G9/04 334
   B22F1/00 R
   B22F1/00 P
   B22F1/00 N
   B02C17/20
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-501436(P2016-501436)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-519210(P2016-519210A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】US2014024202
(87)【国際公開番号】WO2014165038
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/779,242
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ ブレイディ エー.
(72)【発明者】
【氏名】デュフール マシュー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ファイフ ジェームス アラン
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−511667(JP,A)
【文献】 特開2003−299977(JP,A)
【文献】 特開2005−325448(JP,A)
【文献】 特開平01−242702(JP,A)
【文献】 特開2010−150650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
B22F 9/00− 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属粒子の表面積を増大させる方法であって、
タンタル粉末、および平均直径が0.01cm以上0.3175cm以下のメディアを粉砕装置に充填する工程と、
1つのメディア粒子あたり3000エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕を行い、粉砕された粉末を得る工程と、
を有し、
前記タンタル粉末は、BET表面積が4M/gより大きく、アスペクト比が3以上であり、30ppm以下の不純物を含む、方法。
【請求項2】
1つのメディア粒子あたり1000エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つのメディア粒子あたり100エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕を行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つのメディア粒子あたり5エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕を行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つのメディア粒子あたり2エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕を行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つのメディア粒子あたり1エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕を行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記メディアは、鋼、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、440ステンレス鋼、ガラス、炭化タングステン、タンタル、ニオブ、タンタル窒化物、ニオブ窒化物、タンタル炭化物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記メディアは球状である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記粉砕された粉末のBET表面積は5M/gより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記粉砕された粉末のBET表面積は6M/gより大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粉砕された粉末のBET表面積は7M/gより大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粉砕された粉末のBET表面積は8M/gより大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粉砕された粉末のBET表面積は9M/gより大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粉砕された粉末は、鉄、ニッケルおよびクロムから選択される不純物が30ppm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記粉砕された粉末は、鉄、ニッケル、クロム、シリコンおよびジルコニウムから選択される不純物が30ppm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記平均運動エネルギーは、120RPM以下の駆動軸の回転速度で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記粉砕装置は、アトライタミル、ボールミル、振動ボールミルおよび水平攪拌ボールミルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された弁金属薄片に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願発明は、2013年3月13日に出願された係属中の米国仮特許出願第61/779,242号に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
電解コンデンサの陽極の製造に用いられる弁金属(特にタンタル)の薄片粉末は、従来技術では、粒子の比表面積を増加させるために、ボールミル、振動ボールミル、アトライタミルなどの中で、粉末を機械的に粉砕することによって製造されていた。この方法は広く実用化されており、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1〜8に開示されている。
【0004】
従来技術の方法によって製造された弁金属薄片は、電荷密度(典型的には、グラムあたりのマイクロファラド(CV/g)として示される)が低レベルから中位レベルであるということに特徴付けられ、このレベルは、機械的な粉砕によって達成可能な限界であると考えられていた。産業において、鋼粉砕機中の機械的な変形によって、約20,000マイクロファラドの弁金属よりも大きいCV/gを有する薄片(好ましくは、ブルナウアー‐エメット‐テラー(BET)表面積が約1M/gよりも大きいタンタル)を製造することは期待できない、と産業界では考えられていた。
【0005】
粉砕は非常に高度な技術であり、粉砕によって得られる弁金属粉末は限界に達したと、当業者は考えている。当業者は機械的な限界に達したと考えているが、鋭意研究したところ、驚くべきことに、当該技術分野の予測とは反対に、より低い粉砕エネルギーで高い比表面積を生じさせることにより、高い電荷密度の粉末を達成することができることが見出された。本明細書において説明するように、特定の条件下では、より低い粉砕エネルギーによって、より低い表面不純物で高い比表面積を実際に達成することができ、これにより、機械的な粉砕によって達成可能であると考えられていた特性を超える材料が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,580,367号明細書
【特許文献2】米国特許第4,940,490号明細書
【特許文献3】米国特許第5,211,741号明細書
【特許文献4】米国特許第5,261,942号明細書
【特許文献5】米国特許第4,441,927号明細書
【特許文献6】米国特許第4,555,268号明細書
【特許文献7】米国特許第4,740,238号明細書
【特許文献8】米国特許第3,647,415号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、許容できない濃度の金属不純物を発生させることなく、特に、許容できないほど高い濃度の鉄、ニッケル、クロム、シリコンおよびジルコニウムを発生させることなく、必要な比表面積を実現する、高い表面積の弁金属(好ましくはタンタル)の粉末を製造する新規の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特別な利点は、低い電荷密度を持った粉末のような、比較的低い値の粉末を用いて、粉砕によって、より高い電荷密度の値を増大させることができる点である。
【0009】
これら及び他の利点は、理解されるように、弁金属粒子の表面積を増大させる方法において提供される。当該方法は、弁金属粉末、および平均直径が0.01cm以上0.3175cm以下のメディアを粉砕装置に充填する工程を含む。その後、当該弁金属粉末は、1つのメディア粒子あたり3000エルグ以下の平均運動エネルギーで粉砕され、粉砕された粉末が得られる。
【0010】
さらに他の実施形態では、CV/gが1グラムあたり30,000マイクロファラドボルト以上であり、BET表面積が4M/gより大きく、アスペクト比が3以上である、弁金属粉末が提供される。
【0011】
さらに他の実施形態では、弁金属粉末を含む陽極を備え、前記弁金属粉末は、CV/gが1グラムあたり180,000マイクロファラドボルト以上であり、BET表面積が4M/gより大きく、アスペクト比が3以上である、コンデンサが提供される。誘電体が前記陽極上に設けられ、陰極が前記誘電体上に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態によって提供される効果を示すグラフである。
図2】本発明の実施形態によって提供される効果を示すグラフである。
図3】本発明の実施形態によって提供される効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、従来、機械的な粉砕によって達成可能と考えられていたよりも高いCV/gおよび表面積を有する、改善された弁金属薄片(特にタンタル薄片)に関する。また、本発明は、従来、適当な薄片の形成が不可能と考えられていた、小さいメディアおよび低いエネルギーによる、改善された粉砕方法に関する。
【0014】
本発明は、機械的なボールミル、アトライタミル、振動ボールミル、または非常に小さなメディアを用いる回転ミルによって製造される、改善された弁金属粒子(特にタンタル粒子)に関する。好ましくは、メディアの平均直径は、0.001cmから0.3175cmである。より好ましくは、メディアの平均直径は、0.025cmから0.1cmであり、特に好ましくは、メディアの平均直径は、0.025cmから0.030cmである。
【0015】
粉砕は、RPMが120未満のアトライタミルのRPMで達成されるような、低い粉砕エネルギーによってなされる。弁金属粒子は、数時間にわたって高いBET表面積になるように粉砕される。粉砕された粒子は、ミルに供給された粒子よりBET表面積が2〜4倍高く、表面の不純物が低い濃度のままであった。一実施形態では、改善された粉砕工程に供給された粉末のBETは、1グラムあたり約2〜約7平方メートルに増加した。弁金属薄片のBETは、粉砕によって、4M/gより大きくなることが好ましく、5M/gより大きくなることがさらに好ましく、6M/gより大きくなることがさらに好ましく、少なくとも7M/gであることがさらに好ましく、少なくとも8M/gであることがさらに好ましく、少なくとも9M/gであることがさらに好ましい。弁金属粒子は、金属不純物が低い濃度であることが好ましく、弁金属以外の金属が30ppm以下であることが好ましい。弁金属粒子に含まれる鉄、ニッケルおよびクロムの混合物は、30ppmであることがさらに好ましく、弁金属粒子に含まれる鉄、ニッケル、クロム、シリコンおよびジルコニウムの混合物は、30ppmであることがさらに重要である。また、炭素も低いことが好ましいが、炭素含有量は、粒子表面の平方メートルあたり約23マイクログラムから約18マイクログラム未満まで低下した。
【0016】
弁金属粉末のCV/gは、弁金属(好ましくはタンタル)1グラムあたり180,000マイクロファラドボルトであることが好ましく、弁金属(好ましくはタンタル)1グラムあたり200,000マイクロファラドボルトであることがさらに好ましく、弁金属(好ましくはタンタル)1グラムあたり250,000マイクロファラドボルトであることがさらに好ましい。1グラムあたり30,000マイクロファラドボルト未満の、低いCV/gの粉末は、CV/gが著しく増加するように扱うことができ、これにより、粉末の価値が著しく増加する。より好ましくは、1グラムあたり50,000マイクロファラドボルト未満の粉末は、CV/gが著しく増加するように扱うことができる。さらに、より好ましくは、1グラムあたり100,000マイクロファラドボルト未満の粉末は、CV/gが著しく増加するように扱うことができる。
【0017】
ミル内のメディア粒子に与えられる運動エネルギーは、
として、定量的に定義することができる。ρMediaは、メディア材料の密度(1立方センチメートルあたりのグラム)である。νMediaは、平均的なメディア対象物(例えば球状のメディアボール)の体積(立方センチメートル)である。Vは、粉砕動作の間にメディア対象物に運動エネルギーを与えるミルの攪拌機構の最高速度であり、1秒あたりのセンチメートルで表わされる。
【0018】
この計算を行なう方法の一例として、アトライタミル構造を想定する。該構造では、縦円筒型のタンクが、直径0.1cmの球形の鋼メディアで満たされている。該鋼メディアは、長さLの水平に位置する金属アームからなる攪拌機構によって移動する。該金属アームは、中心位置の垂直駆動軸に取り付けられ回転する。そのような回転する金属アームの先端の速度Vは、粉砕機構の最高攪拌速度であり、
として計算される。攪拌アームの長さLは、センチメートルで与えられ、RPMは、駆動軸の1分あたりの回転数である。この例では、平均的なメディア対象物の平均運動エネルギーの最終的な計算のために、球状の鋼メディアの密度ρMediaを約8グラム/立方センチメートル(典型的な鋼の密度)とし、νMedia
とした。ここで、rは、鋼球体の半径の平均(センチメートル)である。この例において、メディア球体の直径が0.1cmであり、攪拌アームの長さが10センチメートルであり、ミルのRPMが200であると仮定すると、1球体あたりの運動エネルギーは、
エルグである。粉砕メディア球体あたりの粉砕エネルギーが約3000エルグを超えると、不純物の増加を引き起こして望ましくない。より好ましくは、粉砕エネルギーが約1000エルグより小さく、特に好ましくは、100エルグより小さい。粉砕メディア球体あたりの粉砕エネルギーは、5エルグ以下であることが特に適切であり、2エルグ以下であることがさらに好ましく、1エルグ以下であることが最も好ましい。
【0019】
タンタル粉末を粉砕する先行技術の方法は、高いエネルギーを得るために、大質量の金属粉砕メディアの使用に依存していた。様々な粉砕に用いられる高いエネルギー工程の間に、高い運動エネルギーを発生させるため、粉砕メディアのサイズは、大質量で、これにより運動量の大きいメディアとなるように有利に選択されていた。タンタル粉末1グラムあたりの高いマイクロファラドボルトが可能な粉砕の間、十分な表面積を作るための「高エネルギー」粉砕と呼ばれるものは、3000エルグの倍数、かつ、通常は10000エルグを十分に超えることが必要とされると考えられており、適切な結果を得るために必要であると考えられていた。これらの工程を模倣した我々の実験は、これらの方法によってタンタル1グラムあたりの高いマイクロファラドボルトを達成すると、驚くべきことに、粉砕された構造の材料によって、そして最も顕著には粉砕メディアによって、表面の汚染が引き起こされることを示している。
【0020】
メディアは、好ましくは、球状の鋼、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、440ステンレス鋼、ガラス、炭化タングステン、タンタル、ニオブ、タンタル窒化物、ニオブ窒化物、タンタル炭化物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。該混合物は、より柔軟な内側材料と、より硬い外側材料とを有するコアシェル構造のような構造化された材料を含んでもよい。混合材料で形成されたメディアの一例として、タンタル窒化物で覆われたタンタル球体が挙げられるであろう。
【0021】
粉砕されて薄片になる粒子は、タンタル、ニオブ、タングステン、チタン、アルミニウムおよびそれらの合金からなる群から選択された弁金属粒子であることが好ましい。タンタルは、より好適な弁金属である。
【0022】
薄片のアスペクト比は、薄片と同じ表面積を有する直径と厚さとの比として決定され、少なくとも3〜約300が好ましい。薄片のアスペクト比は、少なくとも10であることが好ましく、少なくとも100であることがより好ましい。約200〜約300のアスペクト比が特に好ましい。薄片となったニオブ粉末は、その形状(morphology)によって表面積を大きくすることができる。
【0023】
本明細書に記載された弁金属粉末は、特にコンデンサ中の陽極としての使用に適している。本技術で周知のように、弁金属は誘電体を形成するために酸化されることが好ましく、誘電体は導体に覆われる。
【0024】
比較例1
0.18M/gのBETを有する冶金等級タンタル粉末のサンプルを、長さ9.842cm(3.875インチ)の攪拌アームを有するオハイオ州アクロンのユニオンプロセス社製の1−Sアトライタミルに入れた。標準的な工業的実施に従い、粉砕潤滑剤としてエチルアルコールを使用し、粉砕メディアとして当量直径が0.4762cm(0.1875インチ)の440ステンレス鋼球体を使用して、粉砕を行った。粉砕を、400RPMで180分間行うことにより、38,600エルグを超える運動エネルギーが加えられた。粉砕された生成物をミルから取り除き、ミルの摩耗(wear)から残余のFe、Ni、Cr、SiおよびZrを決定するために、HClおよびHFの酸の中で浸出させた。この技術は、タンタルが、あらゆる遊離した440ステンレス鋼の粒子をも容易に溶かす強い鉱酸に晒されても、実際に影響を受けないという事実を利用している。この酸で洗浄されたサンプルのバルク分析を表1に示す。一般に、これらの濃度は、産業において、商業的に使用可能なタンタルコンデンサ粉末としては高すぎると考えられる。
鋼の不純物が酸処理後も残留している理由は、酸による溶解から鋼を保護するように作用するタンタルの表面内に、鋼の粒子が打ち込まれるためであると考えられている。
【0025】
比較例2
1.44M/gのBETを有する、ネバダ州マウンドハウスのケメットエレクトロニクス社から利用可能なNT40タンタル粉末のサンプルを、比較例1で使用されたものと同じミルに入れ、標準的な工業的実施に従い、エチルアルコールと、直径が0.4762cm(0.1875インチ)の440ステンレス鋼球体とを使用して、350RPMで3600分間、粉砕を行った。これにより、29,600エルグを超える運動エネルギーが加えられた。生成物を、比較例1のように、HClおよびHFの酸の中で浸出させた。生成物のバルク分析を表1に示す。一般に、これらの濃度は、産業において、商業的に使用可能なタンタルコンデンサ粉末としては高すぎると考えられる。
【0026】
比較例3
2.23M/gのBETを有するNT120タンタル粉末のサンプルを、エチルアルコールと、直径0.317cm(0.125インチ)の440ステンレス鋼球体と共に、上記と同じアトライタミルに入れて、250RPMで120分間、粉砕を行った。これにより、4,400エルグを超える運動エネルギーが加えられた。生成物を、前述のように、酸の中で浸出させた。結果物の分析を表1に示す。これらの濃度は改善されているが、比較可能なBETを含む商業的に使用可能なタンタルコンデンサ粉末としては、依然として規格制限を超えていると考えられる。
【0027】
【表1】
【0028】
ミルに入れられたタンタル粉末のBETが増加して、高いBETのタンタル粉末中の不純物の面密度が低減することで改善が図られているが、先行技術のプロセスは、許容できない濃度の不純物を加えることなく、約2よりも大きいBETを達成することはできなかった。
【0029】
許容できる濃度の不純物を含む、高い比表面積のタンタル粉末を実現する新規な方法を見出すために、我々は、粉砕中のミル内部のエネルギー強度を低減することにより、先行技術の方法からの抜本的な試みを研究した。表面積を増大させるために、粉砕エネルギーを増加させる必要があると、長い間考えられていた。
【0030】
発明の実施例1
上記と同じアトライタミルに、2.23M/gのBETを有するNT120タンタル粉末を入れた。ステンレス鋼球体の代わりに、直径が0.05cmである低質量ジルコニア球体を用いた。この粉砕球体は、比較例3で用いた球体よりも質量が359倍小さかった。球体の質量を小さくすることに加え、ミルRPMを100RPMに低下させた。これにより、入力される運動エネルギーが2エルグ未満となった。非常に低質量のメディアと、粉砕プロセスに入力される低パワーとの組み合わせとともに、粉砕時間を1800分とした。このように材料および条件を抜本的に異ならせて、HClおよびHFの酸の中で浸出させた後の最終生成物をバルク分析した結果を、表2に示す。一般に、これらの不純物の表面濃度は、商業用のタンタルコンデンサとして使用可能であろう。
【0031】
発明の実施例2
上記と同じアトライタミルに、2.23M/gのBETを有するNT120タンタル粉末を入れた。先行技術のステンレス鋼球体の代わりに、直径が0.05cmである低質量ジルコニア球体を用いた。この粉砕球体は、比較例3で用いた球体よりも質量が359倍小さかった。球体の質量を小さくすることに加え、ミルRPMを90RPMに低下させた。これにより、入力される運動エネルギーが2エルグ未満となった。非常に低質量のメディアと、粉砕プロセスに入力される低パワーとの組み合わせとともに、粉砕時間を1800分とした。このように材料および条件を抜本的に異ならせて、HClおよびHFの酸の中で浸出させた後の最終生成物をバルク分析した結果を、表2に示す。一般に、これらの不純物の表面濃度は、商業用のタンタルコンデンサとして使用可能であろう。
【0032】
これらの例では、先行技術の工程は、高い入力を有する重い球体を用いた結果、高いエネルギーで粉砕できたが、許容できない濃度の不純物を発生させずに2M/gより大きいBETを達成することはできなかった。本発明の低エネルギー工程は、4または5M/gより大きいBETを達成し、かつ、不純物は許容できる濃度であった。
【0033】
【表2】
【0034】
発明の実施例3
粉砕RPMおよび粉砕時間の一連の組み合わせが異なること以外は、発明の実施例2と同様の基本工程を用いて、3つのタンタル粉末のサンプルを準備した。これらのサンプルを800℃の熱で塊にして、タンタル粉末製造業の通常工程を用いて800℃でマグネシウムによって還元した。タンタル粉末を焼結陽極の塊に変化させて、達成可能な機能的静電容量を確認するために、コンデンサの陽極として電気的に評価した。これらの粉末を製造するために適用された粉砕時間およびRPM、並びに、3つのサンプルから作製されたアノードの電気的試験の結果を、ミルに入れられた粉砕していない出発材料と比較して、表3に示す。1粒子あたり60RPMで1エルグ未満の運動エネルギーを粉末に加え、1粒子あたり100RPMで2エルグ未満の運動エネルギーを粉末に加えた。
【0035】
【表3】
【0036】
発明の実施例では、グラムあたりのマイクロファラッドが非常に高い値であり、全ての場合において、漏電は許容できる値である。1グラムあたりのマイクロファラッドが200,000を超えるレベルも達成できる。
【0037】
発明の実施例4
上述の例で用いたものと同じアトライタミルに、2.09M/gのBET比表面積を有する、ネバダ州マウンドハウスのケメットブルーパウダー社製のタンタル粉末を3.86Kg入れた。該ミルに、平均直径0.01cm〜0.03cmのタンタル球体を50Kg入れ、エチルアルコールで覆った。この非常に小さいタンタル球体を、粉砕工程のために粉砕メディアとして用いた。該ミルを60RPMで1020分間動作させ、生成物をミルから取り除き、当該産業におけるタンタル粉末の典型的な酸処理と同様に、塩化水素、窒素およびフッ化水素の酸の中で浸出させることにより洗浄した。運動エネルギーは1粒子あたり0.5エルグ未満であった。製造されたタンタル薄片を物理的かつ化学的にバルク分析した結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
発明の実施例5
発明の実施例4で用いたものと同じアトライタミルに、発明の実施例4で用いたものと同じタンタル粉末、同じ非常に小さいタンタル球体およびエチルアルコールを入れた。該ミルを70RPMで1260分間動作させ、これにより1粒子あたり0.5エルグ未満を加えた。発明の実施例4と同様に、生成物を酸洗浄した。製造されたタンタル薄片を物理的かつ化学的にバルク分析した結果を表5に示す。
【0040】
【表5】
【0041】
発明の実施例6
発明の実施例4で用いたものと同じアトライタミルに、発明の実施例4で用いたものと同じタンタル粉末、同じ非常に小さいタンタル球体およびエチルアルコールを入れた。該ミルを70RPMで1500分間動作させた。発明の実施例4と同様に、生成物を酸洗浄した。製造されたタンタル薄片を物理的かつ化学的にバルク分析した結果を表6に示す。
【0042】
【表6】
【0043】
電気的な特性を決定するために、発明の実施例1および2で製造された粉末を、業務用の有機バインダーで結合して、業務用のプレス機を用いて陽極をプレスして、およそ0.24cm×0.22cm×0.05cm、密度が6.0g/cmの陽極を形成した。電気的接続のため、プレス操作の間に0.03cmのTaワイヤを挿入した。陽極を約400℃で溶解させ(delubed)、その後、1050〜1150℃の温度で真空焼結した。焼結後、陽極を固定して、Chatillon LTCM−6を用いて陽極からリードワイヤを引っ張ることによって、リードワイヤの引張強度を測定した。その後、リン酸および水の溶液(350Ω・cm)中に、83℃、18Vで、陽極を形成した。その後、バイアス無しの50Hzで、かつ、70%の化成電圧の漏電流で、陽極の静電容量を試験した。引張強度の結果を図1に示し、CV/gの結果を図2に示し、漏電を図3に示す。
【0044】
本発明について、好ましい実施形態を特に参照して説明したが、これに限定されない。当業者であれば、特に列挙されていないが、添付の請求項に特に記載されたような本発明の範囲内で、追加の実施形態および改良を実現するであろう。
図1
図2
図3