(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223547
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】リニアモータの放熱構造
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20171023BHJP
H02K 9/22 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
H02K41/02 Z
H02K9/22 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-509816(P2016-509816)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2014059095
(87)【国際公開番号】WO2015145717
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】白川 佳宏
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−44932(JP,A)
【文献】
特開2001−128438(JP,A)
【文献】
特開2003−164088(JP,A)
【文献】
特開2004−236376(JP,A)
【文献】
特開2002−112473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔でリニアに配列された複数のティースにそれぞれ角筒型のボビンに巻回したコイルを装着したリニアモータの放熱構造において、
隣接する前記コイル間に、該コイルで発生した熱を外部に伝導して放熱する放熱部材を配置し、該コイルのうちの該コイルの弾性力により前記角筒型のボビンのエッジ間で外側へ湾曲状に浮き上がって膨らんだ部分で該放熱部材を挟み込むことを特徴とするリニアモータの放熱構造。
【請求項2】
前記角筒型のボビンのエッジ間の部分のうちの前記放熱部材が挟み込まれる部分を凹状に形成し又は無くすことにより、該放熱部材で前記コイルの膨らみ部分を内側に押し込むように該放熱部材を挟み込むことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータの放熱構造。
【請求項3】
前記角筒型のボビンのエッジ部分の丸みの曲率半径を調整することにより、そのボビンに巻回した前記コイルの膨らみ量を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアモータの放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性能を向上させたリニアモータの放熱構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアモータの放熱構造としては、例えば、特許文献1(特開2008−61458号公報)に記載されているように、電機子コアのスロットの底面とコイルとの間にヒートパイプ等の放熱部材を挟み込んで、コイルで発生した熱を放熱部材を通して外部に放熱するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−61458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のリニアモータの放熱構造では、発熱源となるコイルで発生した熱を直接的に放熱部材に伝達して放熱できる利点があるが、電機子コアのスロットに収容したコイルの平坦な側面(コイル巻回方向と直交する方向の面)をスロットの底面に挿入した放熱部材に接触させる構成であるため、部品公差や組立公差によってコイルの平坦な側面と放熱部材との接触具合(伝熱抵抗)に大きなばらつきが生じて、コイルから放熱部材への伝熱性能が安定せず、部品公差や組立公差によって放熱性能がばらつきやすいという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、部品公差や組立公差によるコイルと放熱部材との接触具合(伝熱抵抗)のばらつきを小さくできて、高い放熱性能を安定して得ることができるリニアモータの放熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、所定間隔でリニアに配列された複数のティースにそれぞれ角筒型のボビンに巻回したコイルを装着したリニアモータの放熱構造において、隣接する前記コイル間に、該コイルで発生した熱を外部に伝導して放熱する放熱部材を配置し、該コイルのうちの該コイルの弾性力により前記角筒型のボビンのエッジ間で外側へ湾曲状に浮き上がって膨らんだ部分で該放熱部材を挟み込むことを特徴とするものである。
【0007】
この放熱構造では、隣接するコイル間に配置した放熱部材を、該コイルのうちの該コイルの弾性力により角筒型のボビンのエッジ間で外側へ湾曲状に浮き上がって膨らんだ部分で挟み込むため、部品公差や組立公差があっても、その公差をコイルの膨らみ部分の弾性変形により吸収してコイルと放熱部材との接触具合(伝熱抵抗)のばらつきを小さくでき、高い放熱性能を安定して得ることができる。
【0008】
また、本発明は、角筒型のボビンのエッジ間の部分のうちの放熱部材が挟み込まれる部分を凹状に形成し又は無くすことにより、該放熱部材でコイルの膨らみ部分を内側に押し込むように該放熱部材を挟み込むようにしても良い。このようにすれば、放熱部材を挟み込むコイルの弾性変形量(押し込み量)を増大できるため、コイルと放熱部材とをより強く接触させて、両者間の伝熱抵抗をより小さくして放熱性能を一層高めることができると共に、コイル間に放熱部材を挟み込むことによるコイル間隔の増加量を減らすことができる。
【0009】
更に、本発明は、角筒型のボビンのエッジ部分の丸みの曲率半径を調整することによりコイルの膨らみ量を調整するようにしても良い。例えば、角筒型のボビンのエッジ部分の丸みの曲率半径を小さくすると、そのボビンに巻回したコイルの弾性変形可能な膨らみ量が大きくなって、部品公差や組立公差をコイルの弾性変形により吸収できる余裕度が大きくなると共に、放熱部材を挟み込むコイルの弾性変形量が大きくなることにより放熱部材へのコイルの押し付け力が大きくなる。反対に、角筒型のボビンのエッジ部分の丸みの曲率半径を大きくすると、そのボビンに巻回したコイルの弾性変形可能な膨らみ量が小さくなって、部品公差や組立公差をコイルの弾性変形により吸収できる余裕度が減少すると共に、放熱部材を挟み込むコイルの弾性変形量が減少することにより放熱部材へのコイルの押し付け力が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の実施例1のリニアモータの可動子を示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施例1のコイル間に放熱部材を挟み込んだ状態を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は実施例1の放熱部材を挟み込む前のコイルの状態を示す断面図、同図(b)は実施例1の放熱部材を挟み込んだコイルの状態を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)乃至(c)は、実施例1の角筒型のボビンのエッジ部分の丸みの曲率半径とコイルの膨らみ量との関係を説明する断面図である。
【
図5】
図5(a)は実施例2の放熱部材を挟み込む前のコイルの状態を示す断面図、同図(b)は実施例2の放熱部材を挟み込んだコイルの状態を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は実施例3の放熱部材を挟み込む前のコイルの状態を示す断面図、同図(b)は実施例3の放熱部材を挟み込んだコイルの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した3つの実施例1〜3を説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、リニアモータの可動子11は、複数のティース12を所定間隔でリニアに配列すると共に、各ティース12にそれぞれ角筒型のボビン14に巻回したコイル15を装着し、これら全体を固定枠16で連結固定して一体化した構成となっている。尚、図示はしないが、固定子は、コア上に複数の永久磁石を交互に異極となるようにリニアに等ピッチで配列して構成され、この固定子の永久磁石の配列に沿って可動子11が移動するようになっている。
【0013】
隣接するコイル15間には、該コイル15で発生した熱を外部に伝導して放熱する放熱部材17が配置されている。放熱部材17は、ヒートパイプ等の高熱伝導部材により形成され、該放熱部材17のうちの可動子11の外側に突出する部分には、放熱フィン18又はヒートシンク等が設けられている。
【0014】
角筒型のボビン14に巻回したコイル15は、放熱部材17を挟み込む前の状態では、
図3(a)に示すように、該コイル15の弾性力により角筒型のボビン14のエッジ間の部分が外側へ湾曲状に浮き上がって膨らんだ状態となり、該コイル15の膨らみ量(浮き上がり量)の範囲内で該コイル15の膨らみ部分が内側に押し込み可能(弾性変形可能)となっている。そこで、本実施例1では、
図3(a)、(b)に示すように、各コイル15の間隔を、挟み込んだ放熱部材17が各コイル15の弾性変形可能な膨らみ部分を内側に押し込む間隔に設定している。これにより、
図2、
図3(b)に示すように、各コイル15間に挟み込んだ放熱部材17が各コイル15の弾性変形可能な膨らみ部分を内側に押し込むように弾性変形させてその弾性力により各コイル15を放熱部材17の両面に密着させた状態に保持する。
【0015】
更に、本実施例1では、
図4に示すように、角筒型のボビン14のエッジ部分の丸みの曲率半径Rを調整することによりコイル15の膨らみ量(浮き上がり量)を調整するようにしている。例えば、
図4(a)に示すように、角筒型のボビン14のエッジ部分の丸みの曲率半径Rを小さくすると、そのボビン14に巻回したコイル15の弾性変形可能な膨らみ量が大きくなって、部品公差や組立公差をコイル15の弾性変形により吸収できる余裕度が大きくなると共に、放熱部材17を挟み込むコイル15の弾性変形量が大きくなることにより放熱部材17へのコイル15の押し付け力が大きくなる。反対に、
図4(b)、(c)に示すように、角筒型のボビン14のエッジ部分の丸みの曲率半径Rを大きくするほど、そのボビン14に巻回したコイル15の弾性変形可能な膨らみ量が小さくなって、部品公差や組立公差をコイル15の弾性変形により吸収できる余裕度が減少すると共に、放熱部材17を挟み込むコイル15の弾性変形量が減少することにより放熱部材17へのコイル15の押し付け力が減少する。従って、コイル15の巻線自体の弾性係数のばらつきや、部品公差、組立公差や、放熱部材17へのコイル15の必要とされる押し付け力を考慮して、角筒型のボビン14のエッジ部分の丸みの曲率半径Rを決定するようにすれば良い。
【0016】
以上説明した本実施例1のリニアモータの放熱構造では、隣接するコイル15間に配置した放熱部材17を、該コイル15のうちの該コイル15の弾性力により角筒型のボビン14のエッジ間で外側へ湾曲状に浮き上がって膨らんだ部分で挟み込むため、部品公差や組立公差があっても、その公差をコイル15の膨らみ部分の弾性変形により吸収してコイル15と放熱部材17との接触具合(伝熱抵抗)のばらつきを小さくでき、高い放熱性能を安定して得ることができる。
【実施例2】
【0017】
図5に示す本発明の実施例2では、角筒型のボビン24のエッジ間の部分のうちの放熱部材17が挟み込まれる部分を凹状に形成して、該放熱部材17でコイル15の膨らみ部分をボビン24の凹状部25内に押し込むように該放熱部材17を挟み込むようにしている。その他の構成は、前記実施例1と同じである。
【0018】
本実施例2では、放熱部材17を挟み込むコイル15の弾性変形量(押し込み量)をボビン24の凹状部25の凹み分だけ増大できるため、部品公差や組立公差をコイル15の弾性変形により吸収できる余裕度が大きくなると共に、放熱部材17を挟み込むコイル15の弾性変形量が大きくなることにより放熱部材17へのコイル15の押し付け力が大きくなり、両者間の伝熱抵抗をより小さくして放熱性能を一層高めることができる。しかも、コイル15間に放熱部材17を挟み込むことによるコイル15間隔の増加量をボビン24の凹状部25の凹み分だけ減らすことができ、前記実施例1と比べてリニアモータをコンパクト化できる。
【実施例3】
【0019】
図6に示す本発明の実施例3では、角筒型のボビン34のエッジ間の部分のうちの放熱部材17が挟み込まれる部分を無くして開口部35を形成し、該放熱部材17でコイル15の膨らみ部分をボビン34の開口部35内に押し込むように該放熱部材17を挟み込むようにしている。その他の構成は、前記実施例1と同じである。
【0020】
本実施例3では、放熱部材17を挟み込むコイル15の弾性変形量(押し込み量)をボビン34の開口部35の凹み分(ボビン34の肉厚分)だけ前記実施例1よりも増大できるため、上記実施例2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
11…可動子、12…ティース、14…ボビン、15…コイル、17…放熱部材、18…放熱フィン、24…ボビン、25…凹状部、34…ボビン、35…開口部