【発明が解決しようとする課題】
【0008】
双方の原理には深刻な問題が付随する。誘導による単線からの電磁ハーベストは単一導体に対する接続を必要とする。したがって、電気ケーブルの外側絶縁を剥いでエナジーハーベスタ(ハーベスト装置)に設置する必要がある。
【0009】
外側絶縁を除去することによって、電気的な設置の安全性が損なわれ、また絶縁を復旧するため外側遮蔽の設置をしなければならない。さらに、誘導エナジーハーベスタは製造が比較的高額であり、また導体を流れる電流に依存する。
【0010】
電気的導体とアース端子との間の電界差からのエナジーハーベストは、誘導による単線からの電磁ハーベストよりも安価であり、また多芯ケーブルの外側に設置することができる。他方、この原理は、電気的アース端子に対して物理的に接続する必要がある。したがって、これらタイプのエナジーハーベスタは多くの用途には適用できない。
【0011】
したがって、設置がより容易な環境発電(エナジーハーベスティング)デバイスに対する必要性がある。
【0012】
本発明の目的は、エネルギーを採取する電気ケーブルの単一導体に対する接続が不要な環境発電デバイスを得るにある。
【0013】
本発明の他の目的は、エネルギーを採取する電気的アース端子に対する接続が不要なスタンドアロンの環境発電デバイスを得るにある。
【0014】
本発明の目的は、さらに、電圧を昇圧するコンバータを使用することなく1〜10ボルトの範囲における電圧を供給できる環境発電デバイスを得るにある。
【0015】
本発明の目的は、さらに、ケーブルを流れる電流に左右されない環境発電デバイスを得るにある。
【0016】
さらに、大電流が必要な場合、数個のパッチを当てることができる。しかし、上述の非特許文献1及び2は、この課題については重視しておらず、又はこの課題を解決する方法を示唆していない。
【0017】
したがって、本発明の目的は、複数個のパッチを当てる環境発電デバイスを得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、特許請求の範囲の請求項1に定義した環境発電デバイスによって達成することができる。好適な実施形態は、特許請求の範囲の従属項に定義し、また以下に添付図面につき説明及び図示する。
【0019】
本明細書において、「環境発電デバイス(energy harvesting device)」は、電気エネルギーを採取(ハーベスト)するデバイスを意味する。
【0020】
本発明による環境発電デバイスは、電気ケーブルの一部を包囲するよう構成した環境発電デバイスである。環境発電デバイスは、第1出口(第1アウトレット)ポイントと第2出口(第2アウトレット)ポイントとの間に電位差を生ずるよう配列する構成とし、互いに電気的に分離しまた導電性である複数個のパッチ部材を備え、前記パッチ部材は、前記第1出口ポイント及び/又は第2出口ポイントに電気的に接続する。パッチ部材は、前記電気ケーブルに直接又は前記電気ケーブルの近傍に取り付けるよう構成する。
【0021】
これにより、エネルギーを採取する電気ケーブルの導体に電気的に接続する必要がない環境発電デバイスを得ることができる。
【0022】
環境発電デバイスのケーブルに対する設置は簡単、容易かつ安全である。
【0023】
さらに、環境発電デバイスは電気的アース端子に接続する必要はない。
【0024】
従来の電磁的環境発電デバイスは標準的な電気デバイスでエネルギーを使用するのに電圧の変換を必要とするが、本発明による環境発電デバイスは、電圧を昇圧するコンバータ(例えば、DC−DCコンバータ)を使用することなく、1〜10ボルトの領域における電圧を供給することができる。
【0025】
ケーブルの電圧及びエナジーハーベスタのサイズに基づいて、本発明による環境発電デバイスは、マイクロワット又はミリワットの領域における電力を採取することができる。
【0026】
本発明による環境発電デバイスは、ケーブルを電位差源に電気的に接続する限り、電気エネルギーを採取することができる。ケーブルは「通電している」必要はない。このことは大きな利点であり、これはすなわち、電気装置がスイッチオフ状態であっても電気装置を主電源に接続している場合、電気エネルギーを連続的に採取することができるからである。したがって、電気装置が電流を引き込むときにのみ電気装置のケーブルから電気エネルギーを採取できる環境発電デバイスと比べると、採取すべき電力はより少なくて済む。
【0027】
パッチ部材は、板状、例えば長方形形状にすると有利である。
【0028】
パッチ部材は、長方形であり、また例えば5×25mm、2×10mm、又は8×40mmの寸法を有すると好適である。
【0029】
環境発電デバイスは、分離部材によって互いに電気的に分離する複数個のパッチ部材を備えると有利である。
【0030】
電気的な分離部材はプラスチックのような非導電材料で生産することができる。
【0031】
分離部材は接着又は機械的取付け方法によってケーブルに取り付けるよう構成することができる。
【0032】
前記パッチ部材は、多数の接続部材によって整流ユニットに電気的に接続し、また前記整流ユニットは、前記パッチ部材からの電流を所定方向の流れに整流するよう構成した複数個の整流器を有するものとすると有利である。
【0033】
これにより、交流電流(AC)又は直流電流(DC)が流れるケーブルから最適電力採取を行うことができる。
【0034】
有利には、環境発電デバイスは、前記パッチ部材の第1グループからの電流を整流器によって第1方向に流れるよう整流し、また残りの前記パッチ部材からの電流を整流器によって他の方向に流れるよう整流する構成とする。
【0035】
環境発電デバイスは、第1出口ポイントと第2出口ポイントとの間の
電位差を増大するよう構成すると有利である。
【0036】
環境発電デバイスは、前記パッチ部材からのすべての電流を整流し、またこれにより第1出口ポイントと第2出口ポイントとの間の電位差を増大するよう構成すると有利である。
【0037】
パッチ部材は可撓プリント基板、好適には、封止材料内に封止した可撓プリント基板から形成すると有利である。
【0038】
前記パッチ部材は、多数の接続部材(例えば、ワイヤ)によって整流ユニットに電気的に接続すると有利である。
【0039】
この構造は信頼性の高い様態で得るのが容易である。さらに、容易に生産することができる。
【0040】
パッチ部材のそれぞれは、前記パッチ部材からの電流を一方の方向に整流するよう構成した第1整流器に電気的に(直接)接続し、また前記パッチ部材からの電流を他方の方向に整流するよう構成した第2整流器に電気的に(直接)接続すると有利である。
【0041】
これにより、各パッチ部材からの電流を容易かつ効率的に整流するのが容易である。
【0042】
前記整流ユニットには、前記パッチ部材からの交流電流を一方の所定方向に整流し得る複数個の整流器を設けると有利である。
【0043】
したがって、整流ユニットは、全てのパッチ部材からの電流を一方の所定方向に整流するのに使用することができる。
【0044】
前記パッチ部材それぞれからの電流は、接続部材(ワイヤ)を介して、またさらに第1主コネクタを介して第1出口ポイントに電気的に導通させると有利である。
【0045】
前記パッチ部材それぞれからの電流は、接続部材(ワイヤ)を介して、またさらに第2主コネクタを介して第2出口ポイントに電気的に導通させると有利である。
【0046】
このようにして、第1出口ポイントと第2出口ポイントとの間に電位差を生ずることができる。
【0047】
前記整流ユニットはエネルギー貯蔵部を有するものとすると有利である。
【0048】
これにより、後で使用するため採取したエネルギーを貯蔵できる。
【0049】
エネルギー貯蔵部はキャパシタ及び/又はバッテリとすると有利である。
【0050】
前記パッチ部材は、前記ケーブルの周りを多重層にして包むよう構成すると有利である。
【0051】
環境発電デバイスは、数個の個別モジュールを備え、各モジュールは、電気エネルギーを採取する構成とし、前記モジュールは、前記モジュールを互いに電気的に接続するための手段を有するものとすると有利である。
【0052】
これにより多量のエネルギーを採取し、また異なるサイズ及び容量の環境発電デバイスを構築することができる。
【0053】
本発明による環境発電デバイスを組み込んだ電気デバイスを設けると有利である。
【0054】
これにより、エナジーハーベスタ(環境発電)デバイスを組み込んだ電気デバイスをケーブルに取り付けることができる。この場合、エナジーハーベスタデバイスを組み込んだ電気デバイスには、エナジーハーベスタデバイスによって採取したエネルギーを供給する。
【0055】
本発明によるエナジーハーベスタデバイスを組み込んだセンサを設けると有利である。
【0056】
本発明は以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。添付図面は単に図示しただけで、したがって、本発明を限定するものではない。