(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性溶媒中に存在しているモノクロロシランに対してアンモニアを化学量論的に過剰に計量供給して、液相中でトリシリルアミンおよび500g/molまでのモル質量を有するポリシラザンを製造する方法に関する。ここで、トリシリルアミンの他にポリシラザンがモル質量500g/molまで生じる反応が進行する。続いて、TSAが、ガス状で前記混合生成物から分離される。この得られたTSAは、ろ過および蒸留により精製されて、高純度またはきわめて高い純度で得られる。底部混合生成物は、前記反応器からろ過ユニットを通され、ここで、固体の塩化アンモニウムが分離されて、ポリシラザンおよび溶媒からなる液状の混合物が得られる。この液状の混合物は、さらなる蒸留に供給されて、溶媒が回収される。
【0002】
NH
3をモノクロロシランに対して化学量論的に過剰に直接供給することによって、モノクロロシランは反応器内で完全に反応する。それによって、TSAの精製のための下流の装置部材において、モノクロロシランとさらに形成された少量のジシリルアミン(以下「DSA」と表す)とが反応して固体の塩化アンモニウムが形成されることが完全に阻止される。それに応じて、前記反応器の後でろ過された溶液は、固体を全く含んでいない。使用された蒸留塔は、蒸留工程の終了後、いかなる固体もしくは沈殿物も含んでいない。
【0003】
ポリシラザンは、ケイ素原子および窒素原子の順序が交互になっている基本構造を有するポリマーである。例えば、http://de.wikipedia.org/wiki/Polysilazane、またはM.Weinmann、「Polysilazanes」「Inorganic Polymers」、publisher R.De Jaeger and M.Gleria、371〜413ページで概要が見られる。
【0004】
ポリシラザンは、多くの場合、ケイ素原子それぞれが2個の窒素原子に結合している、もしくは窒素原子それぞれが2個のケイ素原子に結合しているため、これらは、主に、一般式[R
1R
2Si−NR
3]
nの分子鎖として表すことができる。R
1、R
2およびR
3の基は、水素原子または有機残基であってよい。水素原子だけが置換基として存在している場合、前記ポリマーは、ペルヒドロポリシラザン[H
2Si−NH]
nと呼ばれる。炭化水素基が、ケイ素および/または窒素に結合している場合、オルガノポリシラザンと呼ばれる。
【0005】
ポリシラザンは、無色ないし黄色の液体または固体であり、油状ないしワックス状を経てガラス状に変わり、約1kg/lの密度を有するものである。平均分子量は、数百g/mol〜100,000g/mol超までであってよい。分子量だけでなく分子のマクロ構造も凝集状態および粘度を特定する。モル質量が10,000g/mol超の場合、融点は90〜140℃である。高分子ペルヒドロポリシラザン[(SiH
2)NH]
xは、ケイ酸に似た白色の物質である。ポリシラザンは、徐々に老化して、H
2および/またはNH
3を脱離することがある。
【0006】
比較的小さい分子は、熱処理により比較的大きい分子に変換することができる。100〜300℃の温度では、分子の架橋は、水素およびアンモニアを脱離しながら行われる。
【0007】
ポリシラザンは、被覆材料としても、腐食防止系の高温塗料の成分としても使用される。さらに、ポリシラザンは、優れた絶縁体であるため、電子産業および太陽光産業で使用される。セラミック産業では、ポリシラザンは、プレセラミックポリマーとして使用される。さらに、ポリシラザンは、鋼の酸化防止のための高性能被覆として用いられる。ポリシラザンは、20質量%溶液として市販されている。
【0008】
ポリシラザンの製造は、クロロシランもしくは炭化水素置換されたクロロシランと、アンモニアもしくは炭化水素置換されたアミンから行うことができる(アンモニアおよびアミンの他に、同じくヒドラジンとの反応も行うことができる)。前記反応では、ポリシラザンの他に、塩化アンモニウムもしくは炭化水素置換されたアミノクロリドが生じ、これらは、分離する必要がある。前記反応は、基本的に、自発的な発熱反応である。
【0009】
先行技術では、モノクロロシラン、ジクロロシランもしくはトリクロロシランを、それぞれアンモニアと反応させるポリシラザンの製造が公知であり、ここで、モノハロゲンシラン、ジハロゲンシランもしくはトリハロゲンシランの使用が可能である。ここで、ペルヒドロポリシラザンが生じる。炭化水素置換された出発材料を使用する場合、オルガノポリシラザンの形成が予測される。ジクロロシランおよびトリクロロシランを使用する合成で得られる高分子ポリシラザンは溶解度が低いため、このポリシラザンは、同時に生じる塩化アンモニウムから不充分にしか分離されない。
【0010】
アンモニアとジクロロシランとの反応が行われる場合、中国特許出願公開第102173398号明細書、特開昭61−072607号公報、特開昭61−072614号公報、特開平10−046108号公報、米国特許出願公開第4397828号明細書、国際公開第91/19688号の刊行物に開示の通り、直接、高分子ポリシラザンが形成される。xは、以下の反応式中、少なくとも7である。
【0011】
【化1】
【0012】
アンモニアとトリクロロシランとの反応では、直接、以下の反応式によるポリシラザンの3次元空間構造が生じる。
【0013】
【化2】
【0014】
上記合成経路は、溶媒の使用下に実施することができる。さらなる方策は、国際公開第2004/035475号の出願明細書が意図する通り、ハロゲンシランを液体アンモニアに計量供給することである。それによって、アンモニウムハロゲン化物とポリシラザンとを容易に分離することができる、それというのは、アンモニウムハロゲン化物は、アンモニア中で溶解する一方、ポリシラザンは、第二の液相を形成するからである。これらの液体は、相分離によって互いに分離できる。
【0015】
ハロゲンシランを溶媒中および液体アンモニア中で使用する前記製造の他に、塩がさらに形成されることがないさらなる方法が存在している。それには、触媒的脱水素カップリング、再分配反応、開環重合が含まれ、これらは、別の箇所に記載されている(M.Weinmann、Polysilazanes、Inorganic Polymers、Editors:R.De Jaeger、M.Gleria、371〜413ページ)。これらの方法は、ポリシラザンを製造するために大規模工業的に使用されない。
【0016】
トリシリルアミン、N(SiH
3)
3の商業的製造に高い関心が持たれている。トリシリルアミンは、上記反応経路では形成されない。むしろ、方程式(3)によるモノクロロシランとアンモニアとの反応から形成される:
【化3】
【0017】
ここおよび以下において「TSA」と省略される物質は、易可動性の、無色および容易に加水分解可能な、−105.6℃の融点および+52℃の沸点を有する液体である。別の窒素を含有するケイ素化合物のTSAは、半導体産業における重要な物質である。
【0018】
TSAを窒化ケイ素層の製造に使用することは長らく公知であり、例えば、米国特許第4,200,666号および特願昭61−96741号の刊行物に記載されている。TSAは、特に、チップ製造において、窒化ケイ素層または酸窒化ケイ素層の層前駆体として使用される。国際公開第2004/030071号で公開された出願は、TSAの適用のための特別な方法を開示しており、ここで、チップ製造で適用する場合、TSAを確実に、スムーズに、および高純度品質で一定に製造することが特に重要であることが明らかになっている。
【0019】
論文J.Am.Chem.Soc.88、1966、37ページ以下は、ガス状のモノクロロシランとアンモニアとを、アンモニアをゆっくり添加して実験室規模で反応させてTSAにする反応を記載しており、ここで、ポリシラザンおよび塩化アンモニウムが同時に生じる。したがって、TSAおよびポリシラザンを同時に製造することは、原則的に確かに公知である。しかし、従来、前記2つの物質を大規模工業的に製造することは、一連の問題のために不成功に終わっている。例えば、塩化アンモニウムが固体の形態で生じて装置および配管を詰まらせることがある。TSAおよびポリシラザンを分離することもできず、関心を持つ市場に必要な純度で製造することもできない。さらに、従来、TSA対さらに得られるポリシラザンの質量比を調節することに成功していない。すなわち、TSAおよびポリシラザンを、実験室規模を越える同一のプロセスで製造することは、従来不可能であった。
【0020】
独国特許出願公開第102012214290.8号明細書には、ポリシラザンおよびトリシリルアミンの複合的(gekoppelt)な製造方法が開示されており、ここで、TSAおよびポリシラザンの製造は、まず、化学量論的に不足しているアンモニアを添加することによってモノクロロシランを反応させて行われる。続いて、TSAが、ガス状で前記混合生成物から分離される。その後に初めてアンモニアがさらに添加されるため、この工程で初めて、計量供給されたすべてのアンモニアが、最初に装入された量のモノクロロシランに対して化学量論的に過剰となる。最初に化学量論的に不足しているアンモニアが前記反応器に添加されるため、モノクロロシランは完全に反応していない。それに応じて、続いてTSAがガス状で分離されると、モノクロロシランならびに形成された少量のジシリルアミンは、一緒にTSA生成物溶液に達する。ジシルアミンとモノクロロシランは、互いに反応する。この反応は、ゆっくりと進行し、さらなる塩化アンモニアの沈殿を伴う。それによって、前記反応器から取り出されたTSA生成物溶液中、もしくは前記反応器に後接続されている装置部分において、塩化アンモニウムが沈殿する。前記反応がゆっくり進行することによって、塩化アンモニウムの沈殿は、それに応じてろ過後にTSA生成物溶液ろ過液中で再び起こる。特に、この反応は、TSAの精製に用いられる蒸留塔内において塩化アンモニウム沈殿物をもたらす。
【0021】
ここで、本発明の課題は、前記2つの生成物を同時に、調節可能な量で、および上記欠点および制約を完全に回避して合成する商業的に関心の高い方法を提供することであった。さらなる課題は、前記反応器の外部の、TSA生成物流を精製するための装置部材において、モノクロロシランとジシリルアミンとの反応による塩化アンモニウムのその後の形成を阻止することであった。
【0022】
前記課題は、直接的におよび1つの工程において、アンモニアを不活性溶媒中に存在しているモノクロロシランに対して化学量論的に過剰に計量供給することによって予期せず解決した。NH
3をモノクロロシランに対して化学量論的に過剰に計量供給することによって、モノクロロシランは反応器内で完全に反応する。したがって、NH
3をモノクロロシランに対して化学量論的に過剰に計量供給することにより、下流の装置部材において、モノクロロシランと、さらに形成された少量のジシリルアミンとが反応して固体の塩化アンモニウムが形成されることが阻止される。前記反応は、トリシリルアミンの他に、反応式(3)によりポリシラザンが生じる反応器内で実施される。
【0023】
続いて、TSAは、ガス状で前記混合生成物から分離される。得られたTSAは、ろ過および蒸留によって精製されて、高純度またはきわめて高い純度で得られる。続いて、前記反応器の底部混合生成物は、ろ過ユニットに通され、ここで、固体の塩化アンモニウムが分離されて、前記ポリシラザンと溶媒からなる液状の混合物が得られる。前記溶媒の大部分は、ポリシラザンと溶媒からなる混合物から蒸留分離によって回収することができる。前記ろ過された溶液は、塩化アンモニウムを全く含んでいない。使用された蒸留塔は、蒸留後に、固体の塩化アンモニウムを含んでいない。
【0024】
本発明の対象は、すなわち、液相中でトリシリルアミンおよびポリシラザンを製造する方法であって、
(a)溶媒(L)中に溶解した少なくともモノクロロシラン(MCS)を液状で反応器(1)に装入し、ここで、前記溶媒は、モノクロロシラン、アンモニア、TSA、DSAおよびポリシラザンに対して不活性であり、かつTSAよりも高い沸点を有するものであり、および
(b)アンモニア(NH
3)をモノクロロシラン(MCS)に対して化学量論的に過剰で反応器(1)に導入して、反応器(1)内で反応を実施し、および
(c)前記反応器を放圧して、0.5bar(絶対圧)〜0.8bar(絶対圧)の圧力に調節し、混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA、NH
3)をガス状で反応器(1)から頂部を介して蒸留ユニット(2)に送り込み、真空ユニット(8)を用いてNH
3を分離し、前記混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA)を熱交換器(7)内で凝縮して、前記混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA)を容器(6)に集め、続いて
(d)ろ過ユニット(3)を用いてろ過し、ここで、固体の塩化アンモニウム(NH
4Cl)は、前記混合生成物から分離され、
ろ過ユニット(3)からのろ過液を蒸留塔(4)に通し、
この蒸留塔において、DSAを頂部を介して混合物(TSA、L)から分離して、
この混合物(TSA、L)を蒸留塔(11)に通し、
この蒸留塔において、TSAを頂部を介して溶媒(L)から分離し、ここで、前記溶媒は、回収され、
および、
(e)反応器(1)の底部混合生成物(PS、L、NH
4Cl)をろ過ユニット(5)に通し、ここで、固体の塩化アンモニウム(NH
4Cl)は、分離されて、ポリシラザン(PS)と溶媒(L)からなる混合物を得て容器(9)に集め、
続いて、
(f)前記ポリシラザン(PS)と溶媒(L)からなる混合物を蒸留塔(10)に供給し、この蒸留塔において、前記溶媒の大部分を頂部を介して回収し、ポリシラザン(PS)と溶媒(L)からなる濃縮された混合物を底部を介して取り出す、
前記液相中でトリシリルアミンおよびポリシラザンを製造する方法である。
【0025】
本発明による方法は、以下において詳しく説明される。
【0026】
反応器(1)に導入されたアンモニア(NH
3)のモノクロロシランに対して準備された化学量論的過剰は、2〜20%、特に好ましくは2〜10%が選択されるのが好ましい。したがって、モノクロロシランは、前記反応器内で量的にNH
3と反応することが確保されている。工程(b)の間、反応器(1)内における反応で得られた混合生成物は、塩化アンモニウム(NH
4Cl)を含んでいる。
【0027】
本発明による方法で使用される不活性溶媒(L)は、アンモニウムハロゲン化物、特に好ましくは塩化アンモニウムが不溶であるものが選択されるのが好ましい。このことによって、アンモニウムハロゲン化物、好ましくは塩化アンモニウムの分離だけでなく、工程(d)において、ペルヒドロポリシラザンを取得する方法の実施も容易になる。
【0028】
TSA、DSAとの共沸混合物も、本発明による方法の実施の間に得られるポリシラザンとの共沸混合物も形成しない不活性溶媒が使用されるのが好ましい。前記不活性溶媒は、TSAよりも難揮発性であるのが望ましい。そのような好ましい溶媒は、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、キシレンおよび/またはジブチルエーテルから選択されていてよい。
【0029】
溶媒(L)としてトルエンが使用されるのが殊に好ましい。トルエン中に溶解したモノクロロシランが液状で前記反応器に装入されて、アンモニアが、
図1に図示される通り前記反応器に導入される場合、TSA、ポリシラザン、塩化アンモニウムならびに少量のDSAが生じる。TSA、ポリシラザンおよびDSAは、トルエン中で安定している。さらに、塩化アンモニウムは、トルエン中で難溶性であり、そのため、塩化アンモニウムの分離はろ過を用いて容易になる。
【0030】
さらに、トルエンは、反応溶液の希釈ならびに反応エンタルピーの測定(Aufnahme)に用いられる。
【0031】
本発明による方法において、溶媒(L)、好ましくはトルエンをモノクロロシランに対して体積的に過剰で使用するのが有利でありうる。液体である溶媒対モノクロロシランの体積比が、30:1〜1:1、好ましくは20:1〜3:1、特に好ましくは10:1〜3:1で調節されるのが好ましい。しかし、3:1〜1:1の範囲の体積比の場合、利点は比較的小さい。この過剰は、モノクロロシランの著しい希釈をもたらし、これによって、TSAの収率がさらにまた高められる。Lをモノクロロシラン(MCS)に対して体積的に過剰で使用するさらなる利点は、反応溶液中の塩化アンモニウムの濃度を低下させ、それによって、反応器撹拌および反応器排出を容易にすることにある。しかし、過度の過剰、例えば、30:1を上回る過剰は、反応器内の空時収量を低下させる。
【0032】
前記反応を実施するために、前記反応器の反応器容量の好ましくは99%まで、さらに好ましくは5〜95%、特に好ましくは20〜80%に、前記出発材料ならびに前記溶媒の反応混合物を充填する。
【0033】
前記反応器内における反応混合物の反応は、−60℃〜+40℃の温度、好ましくは−20℃〜+10℃の温度、特に好ましくは−20℃〜+5℃の温度、殊に好ましくは−15℃〜0℃の温度で実施される。前記反応は、0.5bar〜15barの圧力で、特に、所定の反応条件下に調節された圧力下に実施されてよい。得られたポリシラザン(PS)は、塩素を含んでいない。したがって、ペルヒドロポリシラザンである。
【0034】
前記反応は、保護ガス下、例えば、窒素および/または希ガス、好ましくはアルゴン下で、酸素および水の非存在下に、特に湿分の非存在下に実施され、ここで、当該装置は、最初の充填工程の前に乾燥されて、保護ガスで洗浄されるのが好ましい。
【0035】
さらに、反応器内での反応において、溶媒中に溶解した液状のモノクロロシランの装入によって、モノクロロシラン、ならびに生じた少量のトリシリルアミン、ポリシラザンならびに生じた少量のDSAの相応の混合物の蒸気圧/液圧平衡は、実質的に調節される。アンモニアが、導入時に、存在しているモノクロロシランと直接に反応する間、アンモニアは、蒸気圧/液圧平衡に影響を与えない。さらに、アンモニアのトルエン中での溶解度は、13.7g/l(1bar(絶対圧)および0℃)である。
【0036】
工程(b)における反応に続いて、前記反応器は放圧されて、0.5bar(絶対圧)〜0.8bar(絶対圧)の圧力に調節され、前記混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA、NH
3)は、ガス状で反応器(1)から頂部を介して蒸留ユニット(2)に送り込まれる。
【0037】
過剰なアンモニアは、前記混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA)の凝縮の間、真空ポンプを介して排出される。
【0038】
好ましくは、本発明による方法において、工程(c)の後に得られる蒸留液は、ろ過ユニット(3)を用いてろ過されてよく、ここで、固体の塩化アンモニウム(NH
4Cl)は、前記蒸留液から分離され、ろ過ユニット(3)からの前記ろ過液は、蒸留塔(4)に通され、この蒸留塔において、DSAは頂部を介して前記混合物(TSA、L)から分離されて、この混合物(TSA、L)は蒸留塔(11)に通され、この蒸留塔において、TSAは、頂部を介して溶媒(L)から分離される。それによって、99.5質量%超の純度のTSAが得られることが利点である。
【0039】
反応器(1)中に存在しているポリシラザンは、アンモニアの過剰計量供給により塩素を含んでいない。
【0040】
ペルヒドロポリシラザンは、120〜300g/molのモル質量を有しているのが好ましい。本発明により得られる混合生成物は、CAS番号がまだ存在していない新規のペルヒドロポリシラザンを含んでいてもよい。第1表は、構造式の例を示している。
【0041】
【表1】
【0042】
工程(e)において、ペルヒドロポリシラザン、トルエンおよび塩化アンモニアを含む底部混合生成物は、反応器(1)からろ過ユニット(5)を通され、ここで、固体の塩化アンモニウムが、前記混合生成物から分離される。工程(a)におけるMCSの使用と関連して、500g/molまでのモル質量を有するペルヒドロポリシラザンを分離するために、塩化アンモニウムをろ過することは容易に可能である。モル質量が明らかに比較的高いポリシラザンを分離するための、塩化アンモニウムのろ過は、完全には成功しないが、本発明による方法においては不必要でもある、それというのは、500g/molよりも明らかに高いモル質量を有するポリシラザンは、ジクロロシランおよび/またはトリクロロシランが、MCSの代わりに、またはMCSに加えて、工程(a)において装入される場合にしか生じないからである。
【0043】
続いて、前記溶媒を回収して、前記ポリシラザンと溶媒からなる混合物中のポリシラザンの割合を高めるために、前記溶媒は、蒸留により大部分が前記ポリシラザンと溶媒からなる混合物から蒸発させる。それに続いて、前記濃縮された溶液は、任意の溶媒、好ましくはトルエンまたはジブチルエーテルを再び加えて、このようにして、商業的な需要に適合した濃度に調節することができる。例えば、2質量%溶液を10質量%に高めて、続いて、トルエンまたはジブチルエーテルを用いて再び5質量%に希釈することができる。本発明による方法のこの実施態様によって、溶媒の交換、および/またはポリシラザンおよび複数の、少なくとも2つの溶媒からなる混合物の準備をすることができる。同様に、本発明により得られるポリシラザンの濃度は、例えば、厳密ではない蒸留後に、適切に調節することもできる。
【0044】
本発明による方法は、反応、前記反応器からの混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA、NH
3)の蒸留、前記底部混合生成物(PS、L、NH
4Cl)の排出ならびにろ過に関して連続的に実施される。本発明による方法は、前記混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA)のろ過および蒸留、ならびにろ過された底部混合生成物(PS、L)の蒸留に関して連続的に実施される。
【0045】
それによって、蒸留塔(10)、(11)における蒸留に続いて、成分、特に前記溶媒の返送方策を利用することができる。
【0046】
本発明による方法の工程(e)において、前記底部混合生成物(PS、L、NH
4Cl)のろ過を、室温以下の温度、特に好ましくは室温で実施し、ここで、澄明のろ過液が得られる、および/または工程(f)において、前記ポリシラザン(PS)と溶媒(L)からなる混合物の蒸留を、0.5bar(絶対圧)で実施することが有利でありうる。
【0047】
工程(f)におけるオプションの利点は、ポリシラザンが熱により扱われることにある。そのような利点は、同じく工程(f)における別の低圧の場合にも生じる。
【0048】
室温とは、本発明の範囲において、20℃の温度であると理解される。
【0049】
特に好ましくは、工程(f)において、留去可能な量の溶媒は、当業者の知識に基づいて選択でき、ここで、ポリシラザンが、一緒に頂部を通らないこと、もしくは底部の粘度が著しく上昇することに注意しなければならない。ここで、トルエンが溶媒(L)として使用される場合、本発明による方法は、2〜15、詳しく言うと、好ましくは1の通常の方法の範囲よりも小さい還流比でも、純粋なトルエンを頂部を介して取り出すことができることが特別な利点である。
【0050】
本発明の対象は、同じく、溶媒(L)中の出発材料である少なくともモノクロロシラン(MCS)とアンモニアとを液相中で反応させて、トリシリルアミンおよびポリシラザンを含む混合生成物を形成させるための、反応器(1)を含む装置であって、この反応器が、
・成分であるアンモニア、少なくともモノクロロシランならびに溶媒(L)のための供給部と、
混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA、NH
3)のための排出部であって、該排出部が、反応器(1)に
・後接続された蒸留ユニット(2)、真空ポンプ(8)が接続された、後接続された熱交換器(7)、および容器(6)に通じており、この容器は、
・ろ過ユニット(3)へ向かう導管を備えており、このろ過ユニットは、NH
4Clのための少なくとも1つの固体排出部、および
ろ過液の移動のためのさらなる導管を有しており、この導管は、
・蒸留塔(4)に通じており、この蒸留塔は、DSAのための頂部を介する排出部、および混合物(TSA、L)のための底部からの放出部(Ausschleusung)を備えており、この放出部は、
・蒸留塔(11)に通じており、この蒸留塔は、TSAのために頂部を介する排出部、および溶媒(L)のための底部からの放出部を備えている、前記混合生成物(TSA、L、NH
4Cl、DSA、NH
3)のための排出部と、
底部混合生成物(PS、L、NH
4Cl)のための前記反応器底部からの放出部であって、この放出部が、
・後接続されたろ過ユニット(5)に通じており、このろ過ユニットは、NH
4Clのための少なくとも1つの固体排出部、およびポリシラザンと溶媒からなるろ過液を容器(9)に移動させるためのさらなる導管を有しており、この容器に、さらにまた
蒸留塔(10)が接続されており、この蒸留塔は、溶媒のための頂部を介する排出部、およびポリシラザン(PS)と溶媒(L)からなる濃縮された混合物のための底部からの放出部を備えている、前記底部混合物(PS、L、NH
4Cl)のための前記反応器底部からの放出部と
を有する前記反応器(1)を含む装置である。
【0051】
本発明による装置は、高純度品質のTSAおよびポリシラザン溶液を提供するものである。
【0052】
本発明による装置は、
図1に図示されている。
【0053】
蒸留ユニット(2)は、本発明の範囲において、規則充填塔と同義である。前記蒸留ユニットは、トルエンを部分的に濃縮して、そのようにして工程(c)において前記反応器から取り出された気相中のTSA含有量を高める。
【0054】
蒸留塔(4)を用いて、ろ過ユニット(3)からのろ過液のDSAの含分は、減少するか、または除去される。蒸留塔(11)は、所望の純度のTSAを製造するために、本発明による方法において使用される。
【0055】
本発明により使用される物質と接触する、本発明による装置部材は、ステンレス鋼で仕上げられており、冷却もしくは加熱が制御可能であるのが好ましい。
【0056】
本発明による方法のさらなる実施態様では、工程(a)において、溶媒(L)中に溶解したMCSに加えて、ジクロロシラン(DCS)が混合されていてよい。したがって、工程(a)において、溶媒(L)中に溶解したMCSとDCSからなる混合物が、液状で反応器(1)に装入されてよい。
【0057】
この場合、本発明による方法において、MCSおよびDSCは、反応器(1)内でアンモニアと完全に反応する。それによって、TSAを精製するための下流の装置部材において、MCSおよび/またはDCSとジシリルアミンとが反応して塩化アンモニウムが形成されることが完全に阻止される。本発明による方法では、前記反応器の後でろ過された溶液は、固体を全く含んでいない。使用された蒸留塔は、蒸留工程の終了後、固体も沈殿物も含んでいない。
【0058】
工程(a)において、MCSとDCSからなる混合物が使用される場合、純粋なモノクロロシランを使用する場合よりも高いモル質量を有するポリシラザンが得られる。そのようなポリシラザンは、
図1には記載されていない。しかし、DCSの存在によって、TSA収率は、純粋なモノクロロシランを使用する場合よりも低い。
【0059】
したがって、本発明による方法は、工程(a)におけるDCSのMCSへの混合に対して寛容であることが利点であり、およびそのような混合の場合も、前記反応器の下流の、TSAを精製するための装置部材において、いかなる固体も沈殿物も形成されないことが利点である。