特許第6223554号(P6223554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223554揮散用容器、及び当該揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223554
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】揮散用容器、及び当該揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20171023BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20171023BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20171023BHJP
   B65D 41/04 20060101ALI20171023BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20171023BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B65D83/00 F
   A01N25/18 102A
   A01P17/00
   B65D41/04 400
   B65D85/00 A
   A01M1/20 D
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-517133(P2016-517133)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公表番号】特表2016-527147(P2016-527147A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】CN2014071339
(87)【国際公開番号】WO2014194684
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】201310228825.4
(32)【優先日】2013年6月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515339701
【氏名又は名称】中山富士化工有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515339239
【氏名又は名称】ザ ヤンキー キャンドル カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 志威
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】エンコ,フレデリック エー.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ケリアン ビー.
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280394(JP,A)
【文献】 実開昭57−017955(JP,U)
【文献】 実開昭59−191925(JP,U)
【文献】 特開平08−112339(JP,A)
【文献】 特開2002−234804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 85/00
A61L 9/12
A01N 25/18
A01P 17/00
B65D 41/04
A01M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性物質を外部に揮散させる揮散用容器であって、
前記揮発性物質を収納する本体と、
前記揮発性物質の揮散孔を有し、前記本体にねじ込んで装着する蓋体と、
を備え、
前記蓋体を前記本体にねじ込んだとき、互いに係合して前記蓋体が逆回転する方向に抵抗を発生させる、本体側仮ロック部と蓋体側仮ロック部とからなる一対の仮ロック機構が前記蓋体と前記本体との間に設けられ、前記仮ロック機構の少なくとも一方が段状に構成され
前記仮ロック機構による抵抗を越えてさらに前記蓋体をねじ込んだとき、互いに係合して前記蓋体が逆回転することを防止する、本体側本ロック部と蓋体側本ロック部とからなる一対の本ロック機構が前記蓋体と前記本体との間に設けられ、
上面視で、本体側本ロック部が本体側仮ロック部に対して設けられる角度と、蓋体側本ロック部が蓋体側仮ロック部に対して設けられる角度とが異なっている揮散用容器。
【請求項2】
前記仮ロック機構は、前記蓋体と前記本体との間における周上の一箇所に設けられている請求項1に記載の揮散用容器。
【請求項3】
前記仮ロック機構は、前記蓋体を前記本体に合わせた状態から前記蓋体を1〜1.5回転させてねじ込んだときに互いに係合するように設けられている請求項1又は2に記載の揮散用容器。
【請求項4】
前記仮ロック機構は、締付トルクが10kgf・m以上で互いに係合するように構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の揮散用容器。
【請求項5】
前記本ロック機構は、締付トルクが13kgf・m以上で互いに係合するように構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の揮散用容器。
【請求項6】
前記蓋体は、前記本体より弾性率が大きい材料で構成されている請求項1〜5の何れか一項に記載の揮散用容器。
【請求項7】
前記蓋体は、前記本体より柔軟な素材で構成されたパッキンを備えている請求項1〜6の何れか一項に記載の揮散用容器。
【請求項8】
前記揮発性物質は、20℃における蒸気圧が0.01〜50Paとなるように選択される請求項1〜7の何れか一項に記載の揮散用容器。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置であって、
前記揮発性物質として、吸水性ポリマーに、飛翔害虫忌避成分、忌避効果持続成分、及び水を含む飛翔害虫忌避香料組成物を吸収させた水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を収納した飛翔害虫忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質を外部に揮散させる揮散用容器、及び当該揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫を駆除又は忌避するため、常温で揮発性を有する防虫剤が市販されている。また、最近では、防虫剤に揮発性を有する芳香剤(香料成分)を添加した商品も開発されている。防虫剤や芳香剤等の揮発性を有する物質(揮発性物質)を取り扱う商品では、通常、揮発性物質を容器本体に入れ、容器開口部をシール等で密封した状態で販売されている。使用時には、容器開口部のシールを剥がし、容器本体に蓋を装着することになる。容器本体への蓋の装着方法は、ねじ込み式、押込み式、接着式等、種々考案されているが、子供による悪戯等を防止するため、一旦装着した蓋が容器本体から容易に外れないようにする必要がある。ここで、ねじ込み式の容器は、蓋を容器本体に装着すると上下方向に分離し難く、さらに装着が簡単であるため、揮発性物質の容器として広く採用されている。
【0003】
従来、ねじ込み式の容器として、容器本体に設けられたネジ部にキャップを螺合させ、容器本体の開口部を開閉可能にした芳香剤用容器があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の芳香剤用容器は、未使用時は容器本体に芳香剤を入れた状態で開口部がシール材により密封されており、使用時に容器本体からキャップを一旦取り外し、シール材を剥がして開口部を開放状態にしてから容器本体にキャップを装着し、芳香剤を外部に揮散させる。
【0004】
一方、揮発性物質専用の容器ではないが、容器本体の開口部に蓋を螺合させる容器において、容器本体と蓋との間にロック機構を設けたものも知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の容器では、容器本体側のねじ山の終端付近に二つの係止用の突起を並べて設けるとともに、蓋側のねじ山の終端付近に一つの係止用の突起を設け、容器本体に蓋を最後までねじ込むと蓋側の突起が容器本体側の二つの突起の間に嵌り込み、蓋が容器本体から容易に外れないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−225295号公報
【特許文献2】実開昭57−17955公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
揮発性物質を収納する容器には、揮発性物質を適切に揮散させつつ所定の揮散孔以外からは揮発性物質を漏らさない密封性、子供による悪戯等を防止する安全性、揮発性物質に対する適合性等が要求される。
【0007】
この点、特許文献1の芳香剤用容器は、未使用状態では容器本体の開口部がシール材で密封されており、内容物が外部に放出されないようにしてあるため、使用前の安全性は確保されていると考えられる。ところが、使用時には、シール材を剥がして容器本体の開口部を開放し、キャップを容器本体の側面の凸部に係合させた状態とするものであるため、子供の力でも容器本体からキャップを容易に取り外すことができてしまう。なお、特許文献1の芳香剤容器には、キャップの脱離を防止するためのロック機構等の構成は見られない。
【0008】
特許文献2の容器は、容器本体と蓋との間に突起によるロック機構が設けられているため、未開封時での子供による悪戯等を防止する効果はあると考えられる。しかしながら、この容器は揮発性物質を収納することを想定していないため、そのまま揮散用容器として使用することには問題がある。この容器に揮発性物質を収納して外部に揮散させようとすると、蓋を半開きにする必要がある。この場合、ロック機構は無効になるため、蓋を容易に取り外すことができてしまう。また、揮発性物質は、容器本体と蓋との僅かな隙間からも外部に漏出し得るため、単純にロック機構を設けただけでは、揮散用容器としての機能を十分に果たすことは困難である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、使用時において、揮発性物質を適切に揮散させることができるとともに、子供による悪戯等を防止できる揮散用容器を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る揮散用容器の特徴構成は、
揮発性物質を外部に揮散させる揮散用容器であって、
前記揮発性物質を収納する本体と、
前記揮発性物質の揮散孔を有し、前記本体にねじ込んで装着する蓋体と、
を備え、
前記蓋体を前記本体にねじ込んだとき、互いに係合して前記蓋体が逆回転する方向に抵抗を発生させる一対の仮ロック機構が前記蓋体と前記本体との間に設けられ、前記仮ロック機構の少なくとも一方が段状に構成されていることにある。
【0011】
本構成の揮散用容器によれば、蓋体を本体にねじ込んだとき、互いに係合して蓋体が逆回転する方向に抵抗を発生させる一対の仮ロック機構が蓋体と本体との間に設けられているため、蓋体を本体にねじ込むと仮ロック機構に抵抗が発生し、蓋体の逆回転が抑制されて子供による悪戯等を防止することができる。ここで、仮ロック機構は対で構成されるものであるが、そのうちの少なくとも一方が段状に構成されているため、蓋体を本体にねじ込むと段階的に力が掛かることとなり、使用者は蓋体の締付状態を感覚的に認識することができる。また、このような段階的に蓋体を締め付ける方式は、一度に蓋体を締め付ける方式と比較して、少ない力で蓋体の締め付けが可能となるため、蓋体の締付作業を楽なものにしながら、蓋体と本体との間に確実に抵抗が発生する状態に導くことができる。
【0012】
本発明に係る揮散用容器において、
前記仮ロック機構は、前記蓋体と前記本体との間における周上の一箇所に設けられていることが好ましい。
【0013】
本構成の揮散用容器によれば、蓋体と本体との間における周上の一箇所に仮ロック機構を設けることにより、蓋体と本体との間に余分な物体が存在せず、本体に対して蓋体を締め付けたとき両者間に隙間が発生し難いため、揮発性物質が揮散孔以外から漏出し難い容器とすることができる。
【0014】
本発明に係る揮散用容器において、
前記仮ロック機構は、前記蓋体を前記本体に合わせた状態から前記蓋体を1〜1.5回転させてねじ込んだときに互いに係合するように設けられていることが好ましい。
【0015】
本構成の揮散用容器によれば、蓋体を本体に合わせた状態から蓋体を1〜1.5回転させてねじ込むだけで蓋体と本体との間に抵抗が発生する状態にできることから、少ない労力で確実に蓋体の締付作業を行うことができる。
【0016】
本発明に係る揮散用容器において、
前記仮ロック機構は、締付トルクが10kgf・m以上で互いに係合するように構成されていることが好ましい。
【0017】
本構成の揮散用容器によれば、仮ロック機構は、締付トルクが10kgf・m以上で互いに係合するように構成されていることから、一般的な成人であれば蓋の締付作業や開封作業を十分に行うことができ、しかも締付トルクが10kgf・m以上であれば、子供による悪戯等も防止することができる。
【0018】
本発明に係る揮散用容器において、
前記仮ロック機構による抵抗を越えてさらに前記蓋体をねじ込んだとき、互いに係合して前記蓋体が逆回転することを防止する一対の本ロック機構が前記蓋体と前記本体との間に設けられていることが好ましい。
【0019】
本構成の揮散用容器によれば、前記仮ロック機構に加えて、蓋体が逆回転することを防止する一対の本ロック機構が設けられている。この本ロック機構も対で構成されており、仮ロック機構による抵抗を越えてさらに蓋体をねじ込んだとき、一対の本ロック機構が互いに係合して蓋体が逆回転することを防止するものであるから、子供だけでなく成人の力でも開封できない状態にまで蓋を締め付けることができる。従って、蓋の誤開封や、本体に収納した揮発性物質の漏出を確実に防止することができる。
【0020】
本発明に係る揮散用容器において、
前記本ロック機構は、締付トルクが13kgf・m以上で互いに係合するように構成されていることが好ましい。
【0021】
本構成の揮散用容器によれば、本ロック機構は、締付トルクが13kgf・m以上で互いに係合するように構成されていることから、子供による悪戯や誤ロック操作を防止できるとともに、一般的な成人であればロック操作が可能である。従って、使用時における安全性と利便性とを両立させることができる。
【0022】
本発明に係る揮散用容器において、
前記蓋体は、前記本体よりも弾性率が大きい材料で構成されていることが好ましい。
【0023】
本構成の揮散用容器によれば、蓋体は、本体よりも弾性率が大きい材料で構成されているため、蓋体を本体にねじ込んで仮ロック機構又は本ロック機構が対を成して当接すると、蓋体が弾性変形して確実に係合状態にすることができる。また、蓋体が本体に締め付けられると、蓋体の弾性によって両者間に密着効果が生じ、その結果、蓋体と本体との間に隙間が発生し難くなり、揮発性物質の漏出を確実に防止することができる。
【0024】
本発明に係る揮散用容器において、
前記蓋体は、前記本体より柔軟な素材で構成されたパッキンを備えていることが好ましい。
【0025】
本構成の揮散用容器によれば、蓋体は、本体より柔軟な素材で構成されたパッキンを備えているため、蓋体を本体にねじ込んで装着すると、パッキンを介して本体と蓋体とが密着する。その結果、本体に対する蓋体の締め付け性が向上するとともに、一体化した揮散用容器を安定させることができる。
【0026】
本発明に係る揮散用容器において、
前記揮発性物質は、20℃における蒸気圧が0.01〜50Paとなるように選択されることが好ましい。
【0027】
本構成の揮散用容器によれば、揮発性物質は、20℃における蒸気圧が0.01〜50Paとなるように選択されるため、常温で揮発性を有する防虫剤や芳香剤等の容器として特に適したものとなる。
【0028】
上記課題を解決するための本発明に係る飛翔害虫忌避装置の特徴構成は、
上記の何れか一つに記載の揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置であって、
前記揮発性物質として、吸水性ポリマーに、飛翔害虫忌避成分、忌避効果持続成分、及び水を含む飛翔害虫忌避香料組成物を吸収させた水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を収納したことにある。
【0029】
本構成の飛翔害虫忌避装置によれば、本発明の揮散用容器に、揮発性物質として飛翔害虫忌避効果のある水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を収納したものであるから、安全性及び利便性に優れた飛翔害虫忌避装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、第一実施形態に係る揮散用容器の斜視図であり、(a)本体から蓋体を外した状態、(b)蓋体を裏側から見た状態を夫々示している。
図2図2は、第一実施形態において、本体に蓋体をねじ込んで一対の仮ロック機構を係合させる順序を示した仮ロック機構の高さ位置における揮散用容器の断面図であり、仮ロック機構の(a)係合前の状態、(b)係合途中の状態、(c)係合後の状態を夫々示している。
図3図3は、第二実施形態に係る揮散用容器の斜視図であり、(a)本体から蓋体を外した状態、(b)蓋体を裏側から見た状態を夫々示している。
図4図4は、第二実施形態において、本体に蓋体をねじ込んで一対の本ロック機構を係合させる順序を示した仮ロック機構及び本ロック機構の高さ位置における揮散用容器の断面図であり、本ロック機構の(a)係合前の状態、(b)係合途中の状態、(c)係合後の状態を夫々示している。
図5図5は、第三実施形態に係る揮散用容器の断面図である。
図6図6は、密着構造としてパッキンを設けた蓋体を裏側から見た斜視図である。
図7図7は、第一実施形態に係る揮散用容器を使用した飛翔害虫忌避装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の揮散用容器に関する実施形態について、図1図6を参照しながら説明する。本発明の飛翔害虫忌避装置については、図7を参照しながら簡潔に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0032】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る揮散用容器100の斜視図である。(a)は、本体10から蓋体20を外した状態を示している。(b)は、蓋体20を裏側から見た状態を示している。揮散用容器100は、後述する揮発性物質を外部に揮散させるために使用する容器であり、本体10と、蓋体20とを備えている。
【0033】
本体10は、開口部11を備えた有底の筒状体であり、その内部に後述する揮発性物質を収納することができる。本体10の開口部11付近の外周面には、後述の蓋体20が螺着するための本体側ネジ部12が形成されている。本体側ネジ部12の長さ(本体側ネジ部12の始端12aから終端12bに至る距離)は、本体10の外周の1〜1.5周分に相当する。本体側ネジ部12の終端12bの延長方向には、終端12bから所定距離を離して本体側仮ロック部31が設けられている。本体側仮ロック部31は、後述の蓋体20に設けられている蓋体側仮ロック部32と組み合わされて、一対の仮ロック機構30を構成する。
【0034】
本体10を構成する材料は、本体10の内部に収納する揮発性物質を変質させず、且つ収納した揮発性物質によって本体10自身が劣化、浸食、腐食等を受けない材料であればよい。そのような材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、ポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)、及びポリオキシメチレン(POM)等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、及びポリウレタン樹脂(PUR)等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、強度及び透明性において優れているポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。なお、揮発性物質が有機溶媒等を含む場合は、樹脂を溶解させる虞があるため、樹脂の代わりに、例えば、金属、ガラス、セラミックス等の無機材料で本体10を構成することも可能である。
【0035】
本体10の構成材料として樹脂材料を使用する場合、射出成型、押出成型、ブロー成型、圧縮成型等の成型法により本体10を作製することができる。本体10の成型を行うと、本体10には本体側ネジ部12及び本体側仮ロック部31も同時に形成される。
【0036】
本体10の大きさは、直径については、子供による悪戯等を防止する観点から、一般的な成人であれば把持できるが、子供には把持し難い大きさである6〜9cm程度とすることが好ましい。高さについては、本体10の安定性を確保する観点から、5〜10cm程度とすることが好ましい。本体10の外観は、収納した揮発性物質の状態を外部から視認できるように、透明又は半透明に構成することが好ましい。ただし、揮発性物質が光によって分解され易いものである場合は、本体10を任意の色で着色したり、遮光性のシールを貼り付けたりすることも可能である。
【0037】
蓋体20は、本体10の開口部11を覆う円盤型の筒状体として構成される。蓋体の内周面には、本体10の本体側ネジ部12と係合可能な蓋体側ネジ部22が形成されている。蓋体側ネジ部22の終端22bの延長方向には、終端22bから所定距離を離して蓋体側仮ロック部32が設けられている。蓋体側仮ロック部32は、本体10に設けられている本体側仮ロック部31と組み合わされて、前述したように一対の仮ロック機構30を構成する。仮ロック機構30については、後で詳しく説明する。蓋体20の上面には、本体10の内部に収納された揮発性物質を外部に放出させるための揮散孔21が設けられている。揮散孔21の形状及び個数は任意とすることができる。
【0038】
蓋体20を構成する材料は、本体10の内部に収納する揮発性物質を変質させず、且つ収納した揮発性物質によって蓋体20自身が劣化、浸食、腐食等を受けない材料であればよく、先に説明した本体10を構成する材料と同様のものを使用することができる。ただし、蓋体20は本体10より弾性率が大きくなるように、本体10の構成材料に応じて、蓋体20の構成材料を選択することが好ましい。例えば、本体10の構成材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)を選択した場合、蓋体20の材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)より弾性率が大きいポリプロピレン(PP)を選択することができる。
【0039】
蓋体20は、本体10と同様の各種成型法により作製することができる。蓋体20の成型を行うと、蓋体20には蓋体側ネジ部22及び蓋体側仮ロック部32も同時に形成される。
【0040】
蓋体20の大きさは、本体10に合わせて設定される。直径については、本体10の開口部11を確実に覆うように、5〜9cm程度とすることが好ましい。高さについては、本体10の本体側ネジ部12と確実に螺着させるため、1〜3cm程度とすることが好ましい。蓋体20の外観は、本体10と同様に透明又は半透明に構成してもよく、あるいは蓋体20を任意の色で着色したり、遮光性のシールを貼り付けたりすることも可能である。
【0041】
本発明の揮散用容器100において特徴的な構成である一対の仮ロック機構30について説明する。この揮散用容器100では、本体10に蓋体20をねじ込むことにより、本体10側の本体側仮ロック部31と蓋体20側の蓋体側仮ロック部32とが係合し、一対の仮ロック機構30として機能する。図2は、本体10に蓋体20をねじ込んで一対の仮ロック機構30を係合させる順序を示した揮散用容器100の仮ロック機構30の高さ位置における断面図である。(a)は、仮ロック機構30が係合する前の状態を示している。(b)は、仮ロック機構30が係合している途中の状態を示している。(c)は、仮ロック機構30が係合した後の状態を示している。図2の断面図では、仮ロック機構30の状態を分かり易くするため、本体側ネジ部12及び蓋体側ネジ部22の表示は省略してある。
【0042】
本実施形態の揮散用容器100は、本体10に設けられる本体側仮ロック部31が外側に突出する(すなわち、蓋体20の内周面に向かって突出する)ように段状に構成され、蓋体20に設けられる蓋体側仮ロック部32が内側に突出する(すなわち、本体10の外周面に向かって突出する)ように楔形に構成されている。本体10に蓋体20をねじ込むにあたり、蓋体20を本体10の開口部11に合わせる。このとき、図2(a)に示すように、蓋体20側の蓋体側仮ロック部32と本体10側の本体側仮ロック部31とが対峙する状態になるまで、本体10に対して蓋体20を相対回転させる。次に、本体10に蓋体20をねじ込むことにより本体10に対して蓋体20をさらに相対回転させると、図2(b)に示すように、蓋体側仮ロック部32と本体側仮ロック部31とが当接する。このとき、本体側仮ロック部31は段状(本実施形態では二段)に構成されているため、蓋体20が弾性変形しながら楔形の蓋体側仮ロック部32が本体側仮ロック部31の一段目に乗り上げた状態となる。そして、この状態から蓋体20をさらにねじ込むと、蓋体20の弾性変形がさらに進行し、蓋体側仮ロック部32は本体側仮ロック部31の二段目に乗り上げる。その後、蓋体側仮ロック部32が本体側仮ロック部31を越えた時点で蓋体20は弾性変形した状態から元の状態に復帰し、図2(c)に示すように、本体側仮ロック部31と蓋体側仮ロック部32との係合状態が達成される。この係合状態は、本体10から蓋体20を取り外し可能な仮ロック状態ではあるが、蓋体側仮ロック部32の後部と本体側仮ロック部31の後部とが一定の範囲に亘って当接し、蓋体20が逆回転する方向に抵抗が発生する。従って、蓋体20が本体10に対して緩むことが抑制される。
【0043】
上述のとおり、一対の仮ロック機構30の係合は、蓋体20の弾性変形を利用して行われるため、蓋体20は、本体10よりも弾性率が大きい材料で構成されていることが好ましい。蓋体20の弾性率が本体10の弾性率より大きくなるように夫々の材料を選択すると、蓋体20を本体10にねじ込んで本体側仮ロック部31と蓋体側仮ロック部32とが互いに当接した後、蓋体20が弾性変形することにより一対の仮ロック機構30が確実に係合状態となる。また、蓋体20が本体10に締め付けられると、蓋体20の弾性によって両者間に密着効果が生じ、その結果、蓋体20と本体10との間に隙間が発生し難くなり、揮発性物質の漏出を確実に防止することができる。
【0044】
本実施形態における係合状態(仮ロック状態)は、蓋体20を本体10に合わせた状態から蓋体20を1〜1.5回転させてねじ込んだときに達成される。従って、少ない労力でも確実に蓋体20の締付作業を行うことができる。係合状態では、本体側仮ロック部31と蓋体側仮ロック部32とは一対の仮ロック機構30として機能し、蓋体20が本体10に対して容易に逆回転して緩まることが抑制される。このため、子供による悪戯等を防止することができる。
【0045】
本実施形態では、一対の仮ロック機構30のうち本体側仮ロック部31が段状に構成されているため、蓋体20を本体10にねじ込むと段階的に力が掛かることとなり、使用者は仮ロック状態になるまで蓋体20の締付状態を感覚的に認識することができる。また、このような段階的に蓋体20を締め付ける方式は、一度に蓋体20を締め付ける方式と比較して、少ない力で蓋体20の締め付けが可能となるため、蓋体20の締付作業を楽なものにしながら、蓋体20と本体10との間に確実に抵抗が発生する状態に導くことができる。なお、一対の仮ロック機構30のうち蓋体側仮ロック部32の方を段状に構成しても同様の効果が得られる。
【0046】
本実施形態では、一対の仮ロック機構30を構成する本体側仮ロック部31及び蓋体側仮ロック部32は、図2に示すように、蓋体20と本体10との間における周上の一箇所に設けられる。すなわち、本体側仮ロック部31は本体10の外周面に一つ設けられ、蓋体側仮ロック部32は蓋体20の内周面に一つ設けられる。この場合、蓋体20と本体10との間に余分な物体が存在せず、本体10に対して蓋体20を締め付けたとき両者間に隙間が発生し難くなる。このため、揮発性物質が蓋体20の揮散孔21以外から漏出し難い揮散用容器100とすることができる。なお、本発明は、一対の仮ロック機構30を蓋体20と本体10との間における周上に複数設けることを排除するものではない。仮ロック機構30を複数設けた場合は、本体側仮ロック部31と蓋体側仮ロック部32との係合力が高まる。従って、本体10と蓋体20との間により強力な抵抗を発生させたい場合には、仮ロック機構30を複数設けることが有効となる。仮ロック機構30を複数設けるにあたっては、係合力を均等化するため、蓋体20と本体10との間における周上に一定間隔で設けることが好ましい。
【0047】
本実施形態では、一対の仮ロック機構30を構成する本体側仮ロック部31及び蓋体側仮ロック部32は、締付トルクが10kgf・m以上で互いに係合するように構成されている。10kgf・mの締付トルクは、一般的な成人であれば蓋体20の締付作業や開封作業を十分に行うことができるが、子供では蓋体20を容易に緩ませられない程度の大きさである。従って、子供による悪戯等を効果的に防止することができる。
【0048】
<第二実施形態>
図3は、本発明の第二実施形態に係る揮散用容器200の斜視図である。(a)は、本体10から蓋体20を外した状態を示している。(b)は、蓋体20を裏側から見た状態を示している。第二実施形態の揮散用容器200は、第一実施形態の揮散用容器100に一対の本ロック機構40を設けたものである。従って、本ロック機構40以外の構成については第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0049】
本ロック機構40は、本体10に対して蓋体20を完全に締め付けたときに蓋体20が逆回転することを防止するものである。本ロック機構40は、本体10側に設けられた本体側本ロック部41と、蓋体20側に設けられた蓋体側本ロック部42とから構成される。本体側本ロック部41は、本体側ネジ部12の終端12bの延長方向にある本体側仮ロック部31よりさらに先の延長線上において、外側に突出する(すなわち、蓋体20の内周面に向かって突出する)楔形の部材として設けられる。蓋体側本ロック部42は、蓋体側ネジ部22の終端22bの延長方向にある蓋体側仮ロック部32よりさらに先の延長線上において、内側に突出する(すなわち、本体10の外周面に向かって突出する)楔形の部材として設けられる。本ロック機構40の係合状態(本ロック状態)を達成するためには、本体10に対して蓋体20をねじ込んで本体側仮ロック部31と蓋体側仮ロック部32とを係合させ、その状態からさらに蓋体20をねじ込んで本体側本ロック部41と蓋体側本ロック部42とを係合させる。以下、本ロック機構40による揮散用容器200の本ロック手順について、図4を参照して説明する。
【0050】
図4は、本体10に蓋体20をねじ込んで一対の本ロック機構40を係合させる順序を示した仮ロック機構30及び本ロック機構40の高さ位置における揮散用容器200の断面図である。(a)は、本ロック機構40が係合する前の状態を示している。(b)は、本ロック機構40が係合している途中の状態を示している。(c)は、本ロック機構40が係合した後の状態を示している。図4の断面図では、仮ロック機構30及び本ロック機構40の状態を分かり易くするため、本体側ネジ部12及び蓋体側ネジ部22の表示は省略してある。
【0051】
図4から理解されるように、本体側本ロック部41は、本体側仮ロック部31に対して上面視で約90度ずらした位置に設けられている。これに対し、蓋体側本ロック部42は、蓋体側仮ロック部32に対して上面視で約180度ずらした位置に設けられている。このように、本体側本ロック部41及び蓋体側本ロック部42を設ける位置に一定の角度差をつけることで、一対の仮ロック機構30が先に係合し、その後に一対の本ロック機構40が係合することを可能としている。具体的に説明すると、図4(a)に示すように、一対の仮ロック機構30が係合する直前の状態では、一対の本ロック機構40を構成する本体側本ロック部41と蓋体側本ロック部42とは約90度の角度で離間した状態にある。次に、一対の仮ロック機構30を係合させ、蓋体側仮ロック部32を本体側仮ロック部31の位置から先に進めると、図4(b)に示すように、蓋体側本ロック部42が本体側本ロック部41の直前にまで移動して対峙した状態となる。そして、図4(c)に示すように、本体10に対して蓋体20をさらにねじ込むと、蓋体側本ロック部42が本体側本ロック部41を越えて本ロック状態が達成される。本ロック状態では、蓋体側本ロック部42の後部と本体側本ロック部41の後部とが略全体に亘って当接し、蓋体20が逆回転できない状態となる。従って、本体10から蓋体20を取り外すことは、子供の力では当然のこと、成人の力でも実質的に不可能となる。なお、本体側本ロック部41と蓋体側本ロック部42とを係合させるために必要な締付トルクは、13kgf・m以上に設定することが好ましい。これにより、子供による悪戯や誤ロック操作を防止できるとともに、一般的な成人であればロック操作が可能である。従って、揮散用容器200の使用時における安全性と利便性とを両立させることができる。
【0052】
<第三実施形態>
図5は、本発明の第三実施形態に係る揮散用容器300の断面図である。図5の断面図では、仮ロック機構30の状態を分かり易くするため、本体側ネジ部12及び蓋体側ネジ部22の表示は省略してある。第三実施形態の揮散用容器300は、第一実施形態の揮散用容器100に設けられる一対の仮ロック機構30において、本体側仮ロック部31及び蓋体側仮ロック部32の両方を段状に構成したものである。それ以外の構成については第一実施形態と同様であるため、詳細な説明や図面は省略する。
【0053】
一対の仮ロック機構30を構成する本体側仮ロック部31及び蓋体側仮ロック部32の両方を段状に構成した場合でも、蓋体20の締付状態を感覚的に認識できるという効果や、蓋体20の締付作業を楽なものにしながら、蓋体20と本体10との間に確実に抵抗が発生する状態に導くという効果を同様に得ることができる。しかも、本体側仮ロック部31と蓋体側仮ロック部32との両方を段状に構成した場合は、互いの段状部分が嵌まり合うことで、段階的な力の掛かり方がより明確に感じられ、締め付け状態の確認がより容易となる。
【0054】
<揮散用容器の密着構造>
上記の各実施形態に係る揮散用容器100,200,300においては、本体10に対する蓋体20の締め付け性及び安定性を向上させるため、密着構造を設けることができる。図6は、密着構造としてパッキン23を設けた蓋体20を裏側から見た斜視図である。同図は、第一実施形態に係る揮散用容器100の蓋体20にパッキン23を設けた例であり、(a)は、パッキン23の装着前の状態、(b)は、パッキン23の装着後の状態を夫々示している。パッキン23は、蓋体20の内側面に接するとともに、蓋体20を本体10に装着したときに本体10の開口部に接するよう円環状に構成される。また、パッキン23の円環の内側には、蓋体20からパッキン23を取り外すときに把持するための摘み部23aが形成される。蓋体20にパッキン23を装着した状態で、蓋体20を本体10にねじ込んで装着すると、本体10側の本体側仮ロック部31と蓋体20側の蓋体側仮ロック部32とが係合し、このときパッキン23を介して本体10と蓋体20とが密着する。その結果、本体10に対する蓋体20の締め付け性が向上するとともに、一体化した揮散用容器100を安定させることができる。蓋体20に設けられるパッキン23は、本体10との良好な密着性を実現するため、本体10の構成材料と同等の素材、あるいは本体10の構成材料より柔軟な素材で構成することが好ましい。そのような素材として、例えば、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、天然ゴム等のゴム材料や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料等が挙げられる。なお、揮散用容器100に設ける密着構造は、本体10に対する蓋体20の締め付け性及び安定性を向上させるものであればよく、上述のパッキン23の代わりとして、例えば、蓋体20の内側にグリース等の粘着性物質を塗布することも可能である。
【0055】
<揮発性物質>
本発明の揮散用容器100は、例えば、蚊、蚋、ユスリカ、ハエ類、コバエ類等の飛翔害虫を忌避するために使用する飛翔害虫忌避装置として利用することができる。この場合、揮散用容器100の内部に揮発性を有する飛翔害虫忌避剤を収納する。飛翔害虫忌避剤は、そのままの状態で揮散用容器100に収納することも可能であるが、揮発性が高いものでは容器からの揮散量をコントロールし難い場合がある。そこで、飛翔害虫忌避剤の取扱いを容易にするため、適量の飛翔害虫忌避剤を水に溶解させて水溶液を調製し、これをゲルビーズに保持させた水性ゲルビーズの形態で収納することが好ましい。水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤は、吸水性ポリマーに、飛翔害虫忌避成分、忌避効果持続成分、及び水を含む飛翔害虫忌避香料組成物を吸収させることにより調製される。この場合、飛翔害虫忌避成分が揮発性を有する物質であるが、本発明では、当該飛翔害虫忌避成分、又は当該飛翔害虫忌避成分を含有する飛翔害虫忌避香料組成物を揮発性物質として取り扱う。揮発性物質は、20℃における蒸気圧が0.01〜50Paとなるように選択される。以下、揮発性物質の一部又は全部を構成する飛翔害虫忌避成分について説明する。
【0056】
飛翔害虫忌避成分は、(a)一般式(I):
CH−COO−R ・・・ (I)
(R:炭素数が6〜12のアルコール残基)
で表される酢酸エステル化合物、及び/又は一般式(II):
−CH−COO−CH−CH=CH ・・・ (II)
(R2:炭素数が4〜7のアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、又はフェノキシ基)
で表されるアリルエステル化合物から選ばれる一種以上の香料成分と、
(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる一種以上の香料成分と、を含有する。
【0057】
一般式(I)で表される酢酸エステル化合物としては、例えば、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、及びイソボルニルアセテート等が挙げられる。これらの酢酸エステル化合物は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0058】
一般式(II)で表されるアリルエステル化合物としては、例えば、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート、アリルイソブチルオキシアセテート、アリルn−アミルオキシアセテート、アリルシクロヘキシルアセテート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、アリルフェノキシアセテート等が挙げられる。これらのアリルエステル化合物は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0059】
モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとしては、例えば、テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、エチルリナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオール等が代表的である。これらのモノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールは、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0060】
飛翔害虫忌避香料組成物は、飛翔害虫忌避香料として、上記以外の香料成分、例えば、リモネン等のモノテルペン系炭化水素、メントン、カルボン、プレゴン、カンファー、ダマスコン等のモノテルペン系ケトン、シトラール、シトロネラール、ネラール、ペリラアルデヒド等のモノテルペン系アルデヒド、シンナミルフォーメート、ゲラニルフォーメート等のエステル化合物、フェニルエチルアルコール、ジフェニルオキサイド、インドールアロマ等を適宜添加してもよく、さらには、上記香料成分を含む種々の精油類、例えば、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモン油、シトロネラ油、レモングラス油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、タイム油等を適宜添加してもよい。
【0061】
飛翔害虫忌避香料組成物は、飛翔害虫忌避香料の揮散後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paである一種以上のグリコール及び/又はグリコールエーテルを配合することが好ましい。その具体例として、プロピレングリコール(10.7Pa)、ジプロピレングリコール(1.3Pa)、トリプロピレングリコール(0.67Pa)、ジエチレングリコール(3Pa)、トリエチレングリコール(1Pa)、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール(6.7Pa)、ベンジルグリコール(2.7Pa)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(3Pa)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。物質名の後のカッコ内の数値は、20℃における蒸気圧を表している。これらの忌避効果持続成分のうち、ジプロピレングリコールが好ましく使用される。なお、上記のグリコール及び/又はグリコールエーテルは、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0062】
飛翔害虫忌避香料組成物に、例えば、殺虫成分、消臭成分、除菌・抗菌成分等の他の機能性成分を配合することも可能である。殺虫成分としては、常温揮散性ピレスロイド系のエムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等が挙げられる。消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科の中から選ばれる植物抽出物が代表的である。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加してリラックス効果を付与することもできる。これらの機能性成分は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0063】
水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を調製する際には、吸水性ポリマーを含浸させる飛翔害虫忌避香料組成物(含浸液)に界面活性剤を配合しておくことが好ましい。界面活性剤は、飛翔害虫忌避香料組成物をゲルビーズの内部に確実に保持させ、その徐放化に寄与する。その結果、長期間安定した飛翔害虫忌避効果を発揮することが可能となる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0064】
吸水性ポリマーには、アクリル酸系吸水性ポリマーを使用することが好ましい。アクリル酸系吸水性ポリマーは、吸水性に優れており、自重の100倍以上の水を吸収することができる。粒径約2mm程度のアクリル酸系吸水性ポリマーであれば、含浸液を吸収した後も略透明な状態を維持しつつ、粒径約10mm程度にまで膨張し得る。アクリル酸系吸水性ポリマーとしては、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体(アクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体やアクリル酸/アクリル酸カリウム塩共重合体等)やアクリルアミド/アクリル酸又はその塩の共重合体が挙げられる。
【0065】
水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤の調製では、例えば、開口部を有する適当な容量の透明容器に所定量の吸水性ポリマーを入れ、続いて飛翔害虫忌避香料組成物を含む含浸液を注ぎ込む作業を行う。このとき、水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を調製する容器として、本発明の揮散用容器を使用することも可能である。この場合、調製した水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を揮散用容器に入れ替える手間が省ける。水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤の調製に際して、容器への吸水性ポリマー及び含浸液の投入順序は、どちらが先でも構わない。また、含浸液には必要に応じて、溶剤、BHT等の安定化剤、イソチアゾリン系等の防腐剤、ビトレックス等の苦味剤、pH調整剤、着色剤等を適宜配合しておくことも可能である。
【0066】
水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤の調製に用いる溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0067】
<飛翔害虫忌避装置>
以上のようにして揮発性物質を含む水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤を調製し、これを本発明の揮散用容器に収納したものは、本発明の飛翔害虫忌避装置として使用することができる。図7は、第一実施形態に係る揮散用容器100を使用した飛翔害虫忌避装置100´の斜視図である。この飛翔害虫忌避装置100´の内部には、水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤50が揮散用容器100の半分程度まで収納されている。飛翔害虫忌避装置100´は、玄関、台所、トイレ、リビングルーム、寝室等の室内、倉庫、車中等の空間や、庭先、屋外において、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、コバエ類(ショウジョウバエ類、ノミバエ類等)、チョウバエ類、イガ類等の飛翔害虫を忌避する用途に使用され、安全性及び利便性に優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の揮散用容器は、飛翔害虫忌避装置として利用可能であるが、その他の用途として、例えば、芳香剤の収納容器、調味料の収納容器等にも利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 本体
20 蓋体
21 揮散孔
23 パッキン
30 仮ロック機構
31 本体側仮ロック部
32 蓋体側仮ロック部
40 本ロック機構
41 本体側本ロック部
42 蓋体側本ロック部
50 水性ゲルビーズタイプの飛翔害虫忌避剤
100,200,300 揮散用容器
100´ 飛翔害虫忌避装置
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
図6(a)】
図6(b)】
図7