(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材料として使用できる熱伝導性組成物と、それを使用した放熱材料に関する。
背景技術
【0002】
電子機器は、年々高集積化・高速化しており、それに応じて熱対策のための放熱材料の需要が高まっている。
特開昭62−43493号公報には、熱伝導性と電気絶縁性の良い熱伝導性シリコーングリースの発明が記載されている。熱伝導性を付与する成分として、粒子径が0.01〜100μmのボロンナイトライドを使用することが記載されているが(2頁右下欄)、実施例では粒度1〜5μmのボロンナイトライドが使用されている。
【0003】
特開2003−176414号公報には、熱伝導性シリコーン組成物の発明が記載されている。熱伝導性を付与する成分として、(B)平均粒子径0.1〜100μm、好ましくは20〜50μmの低融点金属粉末(段落番号0011)、(D)充填剤(段落番号0014)が記載されている。
【0004】
特開2003−218296号公報には、シリコーン樹脂、熱伝導性充填剤を含むシリコーン樹脂組成物の発明が記載されている。熱伝導性充填剤としては、低融点金属粉末、平均粒子径0.1〜100μm、好ましくは20〜50μmのアルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末などが記載されている(段落番号0017〜0021)。
【0005】
特開2003−301189号公報には、放熱性シリコーングリース組成物の発明が記載されている。熱伝導性充填剤として、平均粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmの範囲のものを使用することが記載されている(段落番号0012、0013)。
【0006】
2005−112961号公報には、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の発明が記載されている。平均粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmの熱伝導性充填剤を使用することが記載されている(段落番号0030〜0032)
【0007】
特開2007−99821号公報には、熱伝導性シリコーングリース組成物の発明が記載されている。(B)成分の金属酸化物粉末、金属窒化物粉末として、所望の熱伝導性を得るため、平均粒子径が0.1〜10μm、好ましくは0.2〜8μmのものを使用することが記載されている(段落番号0016、0017)。
【0008】
特開2008−184549号公報には、放熱材の製造方法の発明が記載されている。(D)熱伝導性充填剤として、平均粒子径が100μm以下、好ましくは0.1〜80μmのものが使用されている(段落番号0027、0028)。実施例1では、平均粒子径14μmの酸化アルミニウム(D−1)、平均粒子径2μmの酸化アルミニウム(D−2)、平均粒子径0.5μmの酸化亜鉛(D−3)が併用されている。
【0009】
特開2009−96961号公報には、熱伝導性シリコーングリース組成物の発明が記載されている。(B−1)平均粒子径が12〜100μm(好ましくは15〜30μm)の熱伝導性充填剤と、(B−2)平均粒子径が0.1〜10μm(好ましくは0.3〜5μm)の熱伝導性充填剤を使用することが記載されている(特許請求の範囲、段落番号0028〜0030)。
【0010】
特開2010−13563号公報には、熱伝導性シリコーングリースの発明が記載されている。(A)の熱伝導性無機充填剤は、平均粒子径0.1〜100μm、特に1〜70μmの範囲であることが好ましいと記載されている(段落番号0025)。実施例では、B−1:酸化亜鉛粉末(不定形、平均粒子径:1.0μm)、B−2:アルミナ粉末(球形、平均粒子径:2.0μm)、B−3:アルミニウム粉末(不定形、平均粒子径7.0μm)が使用されている。
【0011】
特開2010−126568号公報には、放熱用シリコーングリース組成物の発明が記載されている。(B)熱伝導性無機充填剤は、平均粒子径0.1〜100μmの範囲であることが必要であり、好ましくは0.5〜50μmであると記載されている。
実施例では、C−1:アルミナ粉末(平均粒子径10μm、比表面積1.5m
2/g)、C−2:アルミナ粉末(平均粒子径1μm、比表面積8m
2/g)、C−3:酸化亜鉛粉末(平均粒子径0.3μm、比表面積4m
2/g)、C−4:アルミ粉末(平均粒子径10μm、比表面積3m
2/g)、C−5:アルミナ粉末(平均粒子径0.01μm、比表面積160m
2/g)が使用されている。
【0012】
特開2011−122000号公報には、高熱伝導性ポッティング材用シリコーン組成物の発明が記載されている。(A)熱伝導性充填剤として、平均粒子径1〜100μm、好ましくは5〜50μmのものを使用することが記載されている(段落番号0018)。(A)熱伝導性充填剤としてアルミナ粉末を使用するときは、(B1)平均粒子径が5μm超〜50μm以下の球状アルミナと、(B2)平均粒子径が0.1μm〜5μmの球状または不定形アルミナを併用することが好ましいことが記載されている(段落番号0018)。
【0013】
特開2013−147600号公報には、熱伝導性シリコーン組成物の発明が記載されている。(B)成分である熱伝導性充填材は、主にアルミナを含有するもので、(C−i)平均粒子径10〜30μmである不定形アルミナ、(C−ii)平均粒子径30〜85μmである球状アルミナ、(C−iii)平均粒子径0.1〜6μmである絶縁性無機フィラーからなるものであると記載されており(段落番号0032)、不定形のアルミナと球状のアルミナを組み合わせることで特有の効果が得られるものである。
発明の概要
【0014】
本発明は、低粘度にすることができ、熱伝導性の良い熱伝導性組成物、及びそれを使用した放熱材料を提供することを課題とする。
【0015】
本発明の第1の実施形態によれば、(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上配合してなり、(A)成分100質量部に対してアルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン(B)成分0.01〜20質量部を含有する、熱伝導性組成物が提供される。
【0016】
また本発明の第2の実施形態によれば、(A)球状の熱伝導性充填剤、(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン、および(C)ポリオルガノシロキサン(ただし、(B)成分のジメチルポリシロキサンは含まれない)を含有する熱伝導性組成物であって、前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上配合してなり、(A)成分100質量部に対して(B)成分と(C)成分を合計量で1.5〜35質量部含有しており、(B)成分と(C)成分の合計量中の(C)成分の含有割合が15〜98質量%である、熱伝導性組成物が提供される。
【0017】
さらに本発明は、上記第1又は第2の実施形態による組成物を使用した放熱材料を提供する。
【0018】
本発明の組成物は、高い熱伝導率を有しているが、低粘度にすることができるため、放熱材料として使用したとき、適用対象に塗布することが容易になる。
発明を実施するための形態
【0019】
<第1実施形態の熱伝導性組成物>
本発明の第1の実施形態の熱伝導性組成物は、(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有するものである。
【0020】
[(A)成分]
(A)成分は球状の熱伝導性充填剤であり、不定形の熱伝導性充填剤は含まれない。球状は、完全な球であることを要するものではないが、長軸と短軸が存在している場合には、長軸/短軸=1.0±0.2程度であるものを示すものである。
【0021】
(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、熱伝導性を高くできることから、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上配合してなり、35質量%以上配合してなることが好ましい。
【0022】
一つの例では、(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、(A−1)平均粒子径50μm以上の充填剤30質量%以上、好ましくは35質量%以上を配合してなり、(A−2)平均粒子径40μm以下の充填剤70質量%未満、好ましくは65質量%未満配合してなる。
【0023】
別の例では、(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、(A−1)平均粒子径50μm以上の充填剤30〜60質量%、好ましくは35〜55質量%配合してなり、(A−2)平均粒子径40μm以下、好ましくは平均粒子径が8〜25μmの充填剤を15〜30質量%、好ましくは18〜28質量%配合してなり、(A−3)平均粒子径8μm未満の充填剤を残部割合(合計で100質量%)配合してなる。
【0024】
(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は、球状のものならば特に制限がないが、金属酸化物粉末、金属窒化物粉末、金属粉末から選ばれるものを使用することができる。一つの例では、(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウムから選ばれるものが好ましく、球状の酸化アルミニウムがより好ましい。(A)成分の球状の熱伝導性充填剤としては、例えば、昭和電工(株)から販売されている球状アルミナである「アルミナビーズ CB(登録商標)」のCBシリーズ(平均粒子径d
50=2〜71μm)、住友化学(株)から販売されている「スミコランダム(登録商標)」シリーズ(平均粒子径0.3〜18μm)などを使用することができる。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分のアルコキシシラン化合物としては、1分子中に少なくとも次の一般式:−SiR
113−a(OR
12)
a (II)
(式中、R
11は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基、R
12は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基、aは1、2または3)で表されるアルコキシシリル基を有している化合物が好ましい。
【0026】
一般式(II)のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物としては、次のような一般式(II−1)及び一般式(II−2)の化合物を挙げることができる。
【0027】
【化1】
式中、
x=10〜500
Y=Si(CH
3)
2CH=CH
2またはSi(CH
3)
3である。
【0028】
また、(B)成分のアルコキシシラン化合物としては、次の一般式(III)で表される化合物も使用することができる。
R
21aR
22bSi(OR
23)
4−a−b (III)
(式中、R
21は独立に炭素原子数6〜15のアルキル基であり、R
22は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基であり、R
23は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、但しa+bは1〜3の整数である。)
【0029】
一般式(III)において、R
21で表されるアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基などを挙げることができる。R
22で表される非置換または置換の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換または置換のアルキル基、およびフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基などの非置換または置換のフェニル基などが好ましい。R
23としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが好ましい。
【0030】
(B)成分のジメチルポリシロキサンとして
は、分子鎖片末端がトリアルコキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンを挙げることができる。
【0033】
(B)成分としては、さらに例えば特開2009−221311号公報に記載の(D)成分の表面処理剤(ウェッター)(段落番号0041〜0048)を使用することもできる。
【0034】
第1発明の組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1.0〜5質量部である。
【0035】
<第2実施形態の熱伝導性組成物>
本発明の第2の実施形態の熱伝導性組成物は、上記した(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンに加えて、さらに(C)成分のポリオルガノシロキサンを含有するものである。(C)成分のポリオルガノシロキサンには、(B)成分のジメチルポリシロキサンは含まれない。
【0036】
[(C)成分]
(C)成分のポリオルガノシロキサンとしては、次の平均組成式(I)で表されるものを使用することができる。
R
1aR
2bSiO
[4−(a+b)]/2 (I)
【0037】
式中、R
1は、アルケニル基である。アルケニル基は、炭素原子数が2〜8の範囲にあるものが好ましく、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基などを挙げることができ、好ましくはビニル基である。アルケニル基を含有するときは、好ましくは1分子中に1個以上、好ましくは2個以上含有される。アルケニル基が1個以上であると、(C)成分をゲル状からゴム状の間で調整することができる。また、アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0038】
R
2は、脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の1価炭化水素基である。脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の1価炭化水素基は、炭素原子数が1〜12、好ましくは1〜10のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子、シアン基などで置換した基、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基などのハロゲン化炭化水素基やα−シアノエチル基、β−シアノプロピル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基などを挙げることができる。これらのなかでも好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0039】
a,bは、0≦a<3、0<b<3、1<a+b<3を満足する正数であり、好ましくは0.0005≦a≦1、1.5≦b<2.4、1.5<a+b<2.5であり、より好ましくは0.001≦a≦0.5、1.8≦b≦2.1、1.8<a+b≦2.2を満足する数である。
【0040】
(C)成分の分子構造は、直鎖状、分岐状のものが好ましい。
(C)成分の23℃における粘度は、0.01〜10Pa・sであることが好ましい。より好ましくは0.02〜1.0Pa・sである。
【0041】
本発明の第2実施形態の組成物中の(B)成分と(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して(B)成分と(C)成分を合計量で1.5〜35質量部含有しており、好ましくは1.5〜30質量部、より好ましくは1.5〜28質量部含有している。また(B)成分と(C)成分は、(B)成分と(C)成分の合計量中の(C)成分の含有割合が15〜98質量%であり、好ましくは18〜98質量%であり、より好ましくは20〜98質量%であるように配合される。
【0042】
本発明の組成物は、必要に応じて、反応抑制剤、補強性シリカ、難燃性付与剤、耐熱性向上剤、可塑剤、着色剤、接着性付与材、希釈剤などを本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
【0043】
本発明の第1および第2の実施形態の組成物は、グリース状(ペースト状)のものである。本発明の第1の実施形態の(B)成分がアルコキシシラン化合物(II−1,2)でY=Si(CH
3)
2CH
2=CH
2の場合、或いは第2の実施形態の組成物で同様の(B)成分を用い、それに加えて又はそれに代えて上記したとおり(C)成分の置換基を不飽和基を含むように選択した場合、下記の(D)成分、(E)成分を併用することによりゲル状のものからゴム状のものまで硬さを調整することができる。ここでゴム状のものにしたときには、弾力性のあるものから、例えば石のように硬いものまでを含むものである。
【0044】
[(D)成分]
(D)成分は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、(C)成分の架橋剤となる成分である。(D)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上、好ましくは3個以上有するものである。この水素原子は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両方に結合していてもよい。さらに両末端のみにケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを併用してもよい。(D)成分の分子構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状あるいは三次元網目状のいずれでもよく、1種単独又は2種以上を併用してもよい。(D)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは公知のものであり、例えば特開2008−184549号公報に記載されている(B)成分を使用することができる。
【0045】
[(E)成分]
(E)成分は白金系触媒であり、(C)成分と(D)成分を混練した後の硬化を促進させる成分である。(E)成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる周知の触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテートなどを挙げることができる。(E)成分の含有量は、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができるものであり、(C)成分と(D)成分の合計量に対し、白金元素に換算して0.1〜1000ppmの範囲とすることが好ましい。
【0046】
本発明の組成物が(D)成分および(E)成分を含まないグリース状のものであるときは、(A)成分、(B)成分、さらに必要に応じて(C)成分と他の任意成分をプラネタリーミキサーなどの混合機で混合することにより得ることができる。混合時には、必要に応じて50〜150℃の範囲で加熱しながら混合してもよい。さらに均一仕上げのためには、高剪断力下で混練操作を行うことが好ましい。混練装置としては、3本ロール、コロイドミル、サンドグラインダー等があるが、中でも3本ロールによる方法が好ましい。
【0047】
また本発明の組成物がさらに(D)成分と(E)成分を含むゲル状のものであるとき、特開2008−184549号公報に記載の放熱材の製造方法と同様にして得ることができる。
【0048】
本発明の組成物からなる放熱材料は、上記した熱伝導性組成物からなるものである。本発明の組成物からなる放熱材料は、(D)成分および(E)成分を含まないグリース状のものであるとき、粘度(実施例に記載の測定方法により求められる粘度)は、発熱部位に対する塗布の容易さから、10〜1000Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0049】
上記したように本発明の第1の実施形態の(B)成分がアルコキシシラン化合物(II−1,2)でY=Si(CH
3)
2CH
2=CH
2の場合や第2の実施形態の組成物からなる放熱材料は、(D)成分および(E)成分を含むゴム状のものであるとき、硬度計TypeE型(JISK6249準拠)で測定した硬さがたとえば5以上のものであることが好ましい。
【0050】
本発明の組成物からなる放熱材料は、熱線法で測定した23℃における熱伝導率が1.0W/(m・K)以上、好ましくは1.5W/(m・K)以上のものである。前記熱伝導率を調整して放熱効果を高めるためには、組成物中の(A)成分の含有割合が80質量%以上であることが好ましく、要求される熱伝導率に応じて(A)成分の含有割合を増加させることができる。
【0051】
本発明の放熱材料は、発熱量の多いCPUを搭載しているPC/サーバーの他、パワーモジュール、超LSI、光部品(光ピックアップやLED)を搭載した各電子機器、家電機器(DVD/HDDレコーダー(プレイヤー)、FPDなどのAV機器など)、PC周辺機器、家庭用ゲーム機、自動車のほか、インバーターやスイッチング電源などの産業用機器などの放熱材料として使用することができる。放熱材料はグリース状(ペースト状)、ゲル状、ゴム状等の形態を有することができる。
【0052】
以下では本発明の種々の実施態様を示す。
<1>(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、
前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上、好ましくは35質量%以上配合してなり、
(A)成分100質量部に対してアルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン(B)成分0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1.0〜5質量部を含有する、熱伝導性組成物。
【0053】
<2>(A)球状の熱伝導性充填剤、(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンおよび(C)ポリオルガノシロキサン(ただし、(B)成分のジメチルポリシロキサンは含まれない)を含有する熱伝導性組成物であって、
前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上、好ましくは35質量%以上配合してなり、
(A)成分100質量部に対して(B)成分と(C)成分を合計量で1.5〜35質量部、好ましくは1.5〜30質量部、より好ましくは1.5〜28質量部含有しており、
(B)成分と(C)成分の合計量中の(C)成分の含有割合が15〜98質量%、好ましくは18〜97質量%、より好ましくは20〜98質量%である、熱伝導性組成物。
【0054】
<3>(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が、平均粒子径50μm以上の充填剤30質量%以上、好ましくは35質量%以上と、平均粒子径40μm以下の充填剤70質量%未満、好ましくは65質量%未満を配合してなる混合物である、<1>又は<2>記載の熱伝導性組成物。
【0055】
<4>(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が、平均粒子径50μm以上の充填剤30質量%〜60質量%、好ましくは35〜55質量%、平均粒子径40μm以下、好ましくは平均粒子径8〜25μmの充填剤15〜30質量%、好ましくは18〜28質量%および残部割合の平均粒子径が8μm未満の充填剤を配合してなる混合物である、<1>又は<2>記載の熱伝導性組成物。
【0056】
<5>(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が、金属酸化物粉末、金属粉末から選ばれるものである、<1>から<4>の何れか1記載の熱伝導性組成物。
【0057】
<6>(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウムから選ばれるものである、<5>記載の熱伝導性組成物。
【0058】
<7><1>〜<6>のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物からなる放熱材料。
【0059】
<8>(A)球状の熱伝導性充填剤100質量部に対して、(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1.0〜5質量部を混合する、熱伝導性組成物の製造方法であって、
前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上、好ましくは35質量%以上配合してなる、熱伝導性組成物の製造方法。
【0060】
<9>(A)球状の熱伝導性充填剤100質量部に対して、(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンおよび(C)ポリオルガノシロキサン(ただし、(B)成分のジメチルポリシロキサンは含まれない)を合計量で1.5〜35質量部、好ましくは1.5〜30質量部、より好ましくは1.5〜28質量部混合する、熱伝導性組成物の製造方法であって、
前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上、好ましくは35質量%以上配合してなり、
前記(B)成分と(C)成分の合計量中の(C)成分の含有割合が15〜98質量%、好ましくは18〜97質量%、より好ましくは20〜98質量%である、熱伝導性組成物の製造方法。
【0061】
<10>前記(B)成分が一般式(II)のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物である、<1>〜<9>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0062】
<11>前記(B)成分が一般式(II−1)又は一般式(II−2)の化合物である、<10>の組成物、放熱材料又は製造方法。
【0063】
<12>前記(B)成分が一般式(III)で表される化合物である、<1>〜<9>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0064】
<13>前記(B)成分が一般式(IV)で表されるジメチルポリシロキサンである、<1>〜<9>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0065】
<14>前記(C)成分が平均組成式(I)で表されるポリオルガノシロキサンである、<1>〜<9>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0066】
<15>さらに(D)成分としてポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含み、(E)成分として白金系触媒を含む、<1>〜<9>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
実施例
【0067】
実施例1〜10
表1に示す(A)および(B)成分、または(A)、(B)および(C)成分をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、熱伝導性組成物を得た。(B)および(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。(A)成分の平均粒子径、組成物の粘度、熱伝導率を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0068】
[平均粒子径]
平均粒子径(メジアン径d
50)は、コールカウンター法により測定した。
【0069】
[粘度1]
JIS K6249に準拠。回転粘度計ローターNo.4、回転数60rpm、1分値の粘度を示す。
【0070】
[粘度2]
JIS K6249に準拠。回転粘度計ローターNo.7、回転数20rpm、1分値の粘度を示す。
【0071】
[熱伝導率]
23℃において、熱線法に従い、熱伝導率計(京都電子工業社製、QTM−500)を用いて測定した。
【0072】
【表1】
【0073】
(A)成分
(A−1):昭和電工(株)の球状アルミナ(アルミナビーズ),平均粒子径100μm
(A−11):昭和電工(株)の球状アルミナ(アルミナビーズ),平均粒子径20μm
(A−21):住友化学(株)の丸み状アルミナ(スミコランダム),平均粒子径3μm
(A−22):住友化学(株)の丸み状アルミナ(スミコランダム),平均粒子径0.4μm
(B)成分:アルコキシシラン(一般式(II−1)において、x:20、Y:Si(CH
3)
2CH=CH
2)
(C)成分:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたポリオルガノシロキサン(60cSt)
【0074】
実施例11〜13
表2に示す(A)〜(C)成分をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、熱伝導性組成物を得た。(B)および(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。組成物の粘度、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
(A−2):昭和電工(株)の球状アルミナ(アルミナビーズ),平均粒子径70μm
【0077】
実施例14〜16
表3に示す(A)〜(C)成分(質量部)をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、熱伝導性組成物を得た。
(B)および(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。
組成物の粘度、熱伝導率を測定した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
(A−3):昭和電工(株)の球状アルミナ(アルミナビーズ),平均粒子径50μm
(A−12):昭和電工(株)の球状アルミナ(アルミナビーズ),平均粒子径10μm
【0080】
比較例1〜3
表4に示す(A)〜(C)成分(質量部)をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、比較用の熱伝導性組成物を得た。(B)および(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。組成物の粘度、熱伝導率を測定した。結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
表1〜表3の実施例と表4の比較例との対比から、実施例の組成物は、大粒子径の球状アルミナの割合が大きいため、熱伝導率を高く、粘度を低くできたことが確認された。また、表1〜表3の実施例と表4の比較例との対比から、同程度の熱伝導率であれば、粘度を低くできたことも確認された。
【0083】
さらに実施例8(100μmのアルミナ含有)、実施例11(70μmのアルミナ含有)、実施例14(50μmのアルミナ含有)と比較例1(0.4〜20μmのアルミナ含有)は、いずれも組成物中のアルミナ含有量は92.5質量%と同じであるが、熱伝導率の高さは、実施例8>実施例11>実施例14>比較例1の順であった。他の組成物中のアルミナ含有量が同じ実施例と比較例を対比してみても、やはり平均粒子径の大きなアルミナを含有している実施例の方の熱伝導率が高かった。
【0084】
これらの結果は、平均粒子径の小さな熱伝導性無機充填剤を使用することで熱伝導性を高めている従来技術からは予測できない効果であった。
産業上の利用可能性
【0085】
本発明の熱伝導性組成物は、パーソナルコンピューターなどの電子機器のような発熱部位を有する各種機器用の放熱材料として使用することができる。