(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材料として使用できる熱伝導性組成物と、それを使用した放熱材料に関する。
背景技術
【0002】
電子機器は、年々高集積化・高速化しており、それに応じて熱対策のための放熱材料の需要が高まっている。
特開昭62−43493号公報には、熱伝導性と電気絶縁性の良い熱伝導性シリコーングリースの発明が記載されている。熱伝導性を付与する成分として、粒子径が0.01〜100μmのボロンナイトライドを使用することが記載されているが(2頁右下欄)、実施例では粒度1〜5μmのボロンナイトライドが使用されている。
【0003】
特開2003−176414号公報には、熱伝導性シリコーン組成物の発明が記載されている。熱伝導性を付与する成分として、(B)平均粒子径0.1〜100μm、好ましくは20〜50μmの低融点金属粉末(段落番号0011)、(D)充填剤(段落番号0014)が記載されている。
【0004】
特開2003−218296号公報には、シリコーン樹脂、熱伝導性充填剤を含むシリコーン樹脂組成物の発明が記載されている。熱伝導性充填剤としては、低融点金属粉末、平均粒子径0.1〜100μm、好ましくは20〜50μmのアルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末などが記載されている(段落番号0017〜0021)。
【0005】
特開2003−301189号公報には、放熱性シリコーングリース組成物の発明が記載されている。熱伝導性充填剤として、平均粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmの範囲のものを使用することが記載されている(段落番号0012、0013)。
【0006】
2005−112961号公報には、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の発明が記載されている。平均粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmの熱伝導性充填剤を使用することが記載されている(段落番号0030〜0032)
【0007】
特開2007−99821号公報には、熱伝導性シリコーングリース組成物の発明が記載されている。(B)成分の金属酸化物粉末、金属窒化物粉末として、所望の熱伝導性を得るため、平均粒子径が0.1〜10μm、好ましくは0.2〜8μmのものを使用することが記載されている(段落番号0016、0017)。
【0008】
特開2008−184549号公報には、放熱材の製造方法の発明が記載されている。(D)熱伝導性充填剤として、平均粒子径が100μm以下、好ましくは0.1〜80μmのものが使用されている(段落番号0027、0028)。実施例1では、平均粒子径14μmの酸化アルミニウム(D−1)、平均粒子径2μmの酸化アルミニウム(D−2)、平均粒子径0.5μmの酸化亜鉛(D−3)が併用されている。
【0009】
特開2009−96961号公報には、熱伝導性シリコーングリース組成物の発明が記載されている。(B−1)平均粒子径が12〜100μm(好ましくは15〜30μm)の熱伝導性充填剤と、(B−2)平均粒子径が0.1〜10μm(好ましくは0.3〜5μm)の熱伝導性充填剤を使用することが記載されている(特許請求の範囲、段落番号0028〜0030)。
【0010】
特開2010−13563号公報には、熱伝導性シリコーングリースの発明が記載されている。(A)の熱伝導性無機充填剤は、平均粒子径0.1〜100μm、特に1〜70μmの範囲であることが好ましいと記載されている(段落番号0025)。実施例では、B−1:酸化亜鉛粉末(不定形、平均粒子径:1.0μm)、B−2:アルミナ粉末(球形、平均粒子径:2.0μm)、B−3:アルミニウム粉末(不定形、平均粒子径7.0μm)が使用されている。
【0011】
特開2010−126568号公報には、放熱用シリコーングリース組成物の発明が記載されている。(B)熱伝導性無機充填剤は、平均粒子径0.1〜100μmの範囲であることが必要であり、好ましくは0.5〜50μmであると記載されている。
実施例では、C−1:アルミナ粉末(平均粒子径10μm、比表面積1.5m
2/g)、C−2:アルミナ粉末(平均粒子径1μm、比表面積8m
2/g)、C−3:酸化亜鉛粉末(平均粒子径0.3μm、比表面積4m
2/g)、C−4:アルミ粉末(平均粒子径10μm、比表面積3m
2/g)、C−5:アルミナ粉末(平均粒子径0.01μm、比表面積160m
2/g)が使用されている。
【0012】
特開2011−122000号公報には、高熱伝導性ポッティング材用シリコーン組成物の発明が記載されている。(A)熱伝導性充填剤として、平均粒子径1〜100μm、好ましくは5〜50μmのものを使用することが記載されている(段落番号0018)。(A)熱伝導性充填剤としてアルミナ粉末を使用するときは、(B1)平均粒子径が5μm超〜50μm以下の球状アルミナと、(B2)平均粒子径が0.1μm〜5μmの球状または不定形アルミナを併用することが好ましいことが記載されている(段落番号0018)。
【0013】
特開2013−147600号公報には、熱伝導性シリコーン組成物の発明が記載されている。(B)成分である熱伝導性充填材は、主にアルミナを含有するもので、(C−i)平均粒子径10〜30μmである不定形アルミナ、(C−ii)平均粒子径30〜85μmである球状アルミナ、(C−iii)平均粒子径0.1〜6μmである絶縁性無機フィラーからなるものであると記載されており(段落番号0032)、不定形のアルミナと球状のアルミナを組み合わせることで特有の効果が得られるものである。
発明の概要
【0014】
本発明は、低粘度にすることができ、熱伝導性の良い熱伝導性組成物、及びそれを使用した放熱材料を提供することを課題とする。
【0015】
本発明の第1の実施形態によれば、(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、前記(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を30質量%以上配合してなりる、熱伝導性組成物が提供される。
【0016】
また本発明の第2の実施形態によれば、(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、前記(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を30質量%以上配合し、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤を10質量%以上配合してなる、熱伝導性組成物が提供される。
【0017】
さらに本発明は、上記第1又は第2の実施形態による組成物を使用した放熱材料を提供する。
【0018】
本発明の組成物は、高い熱伝導率を有しているが、低粘度にすることができるため、放熱材料として使用したとき、適用対象に塗布することが容易になる。
発明を実施するための形態
【0019】
<第1実施形態の熱伝導性組成物>
本発明の第1の実施形態の熱伝導性組成物は、(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する。
【0020】
[(A)成分]
(A)成分は球状の熱伝導性充填剤であり、不定形の熱伝導性充填剤は含まれない。球状は、完全な球であることを要するものではないが、長軸と短軸が存在している場合には、長軸/短軸=1.0±0.2程度であるものを示すものである。
【0021】
(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、熱伝導性を高くできることから、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上配合してなり、40質量%以上配合してなることが好ましく、50質量%以上配合してなることがより好ましい。
【0022】
一つの例では、前記(A)成分の混合物は、平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を50質量%以上配合してなり、平均粒子径50μm未満の球状の熱伝導性充填剤を50質量%以下配合してなるものが好ましい。
【0023】
別の例では、前記(A)成分の混合物は、平均粒子径50μm以上、好ましくは平均粒子径50〜100μm、より好ましくは平均粒子径50〜80μmの球状の熱伝導性充填剤を50〜70質量%、好ましくは50〜60質量%配合し、平均粒子径50μm未満、好ましくは平均粒子径が1〜10μm、より好ましくは平均粒子径が1〜5μmの球状の熱伝導性充填剤を30〜50質量%、好ましくは40〜50質量%配合してなるものがより好ましい。
【0024】
平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤は窒化物からなるものであり、前記窒化物は熱伝導性の観点から窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素が好ましい。平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、アルミニウムなどの金属は使用しない。窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤としては、株式会社トクヤマから販売されている丸み状窒化アルミニウム「FAN−f50−J(平均粒子径50μm)」、同「FAN−f80(平均粒子径80μm)」などを使用することができる。
【0025】
また、平均粒子径50μm未満の球状の熱伝導性充填剤も窒化物からなるものが好ましく、株式会社トクヤマから販売されている丸み状窒化アルミニウム「HF−01(平均粒子径1μm)」、同「HF−05(平均粒子径5μm)」などを使用することができる。しかしながら、他の球状の金属酸化物粉末や金属粉末、例えば酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウムから選ばれるものも使用可能である。平均粒子径50μm未満の球状の熱伝導性充填剤は、平均粒子径の異なる2種以上を配合して用いることができる。
【0026】
[(B)成分]
(B)成分のアルコキシシラン化合物としては、1分子中に少なくとも次の一般式:−SiR
113−a(OR
12)
a (II)
(式中、R
11は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基、R
12は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基、aは1、2または3)で表されるアルコキシシリル基を有している化合物が好ましい。
【0027】
一般式(II)のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物としては、次のような一般式(II−1)及び一般式(II−2)の化合物を挙げることができる。
【0028】
【化1】
式中、
x=10〜500
Y=Si(CH
3)
2CH=CH
2またはSi(CH
3)
3である。
【0029】
また、(B)成分のアルコキシシラン化合物としては、次の一般式(III)で表される化合物も使用することができる。
R
21aR
22bSi(OR
23)
4−a−b (III)
(式中、R
21は独立に炭素原子数6〜15のアルキル基であり、R
22は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基であり、R
23は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、但しa+bは1〜3の整数である。)
【0030】
一般式(III)において、R
21で表されるアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基などを挙げることができる。R
22で表される非置換または置換の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換または置換のアルキル基、およびフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基などの非置換または置換のフェニル基などが好ましい。R
23としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが好ましい。
【0031】
(B)成分のジメチルポリシロキサンとして
は、分子鎖片末端がトリアルコキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンを挙げることができる。
【0034】
(B)成分としては、さらに例えば特開2009−221311号公報に記載の(D)成分の表面処理剤(ウェッター)(段落番号0041〜0048)を使用することもできる。
【0035】
第1発明の組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜30質量部であり、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
【0036】
<第2実施形態の熱伝導性組成物>
本発明の第2の実施形態の熱伝導性組成物も、(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する。
[(A)成分]
(A)成分は球状の熱伝導性充填剤であり、不定形の熱伝導性充填剤は含まれない。球状は、完全な球であることを要するものではないが、長軸と短軸が存在している場合には、長軸/短軸=1.0±0.2程度であるものを示すものである。
(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、熱伝導性を高くできることから、前記混合物が、平均粒子径50μm以上の充填剤を30質量%以上配合してなり、40質量%以上配合してなることが好ましく、50質量%以上配合してなることがより好ましい。
【0037】
(A)成分の球状の熱伝導性充填剤は、平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤と、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤という、平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物である。
【0038】
前記(A)成分の混合物中、平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤の配合量は、熱伝導性を高くできることから、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。一例では、前記(A)成分の混合物は、平均粒子径50μm以上、好ましくは平均粒子径50〜100μm、より好ましくは平均粒子径50〜80μmの球状の熱伝導性充填剤を50〜70質量%、好ましくは50〜60質量%配合してなる。
【0039】
また粘度の上昇を抑制し、熱伝導性を高くする観点から、前記(A)成分の混合物中、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤の配合量は、10質量%以上、好ましくは15質量%以上である。一例では、前記(A)成分の混合物中、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤の配合量は、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%である。
【0040】
また、前記(A)成分の混合物は、平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤と平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤を除いた残部として、平均粒子径1μm以上〜平均粒子径50μm未満、好ましくは平均粒子径1〜10μm、より好ましくは平均粒子径1〜5μmの球状の熱伝導性充填剤を配合してなるものが好ましい。
【0041】
前記(A)成分の混合物中、平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤は窒化物からなるものであり、前記窒化物は熱伝導性の観点から窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素が好ましい。窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤としては、株式会社トクヤマから販売されている丸み状窒化アルミニウム「FAN−f50−J(平均粒子径50μm)」、同「FAN−f80(平均粒子径80μm)」などを使用することができる。
【0042】
平均粒子径1μm以上〜平均粒子径50μm未満、好ましくは平均粒子径1〜10μm、より好ましくは平均粒子径1〜5μmの球状の熱伝導性充填剤は、窒化物からなるものが好ましく、株式会社トクヤマから販売されている丸み状窒化アルミニウム「HF−01(平均粒子径1μm)」、同「HF−05(平均粒子径5μm)」などを使用することができる。しかしながら、他の球状の金属酸化物粉末や金属粉末、例えば酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミニウムから選ばれるものも使用可能である。
【0043】
平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物、窒化アルミニウムや窒化ホウ素のような窒化物、アルミニウム、銅、銀、金などの金属、金属/金属酸化物のコアシェル型粒子などから選ばれるものを使用することができる。
【0044】
[(B)成分]
第1実施形態の熱伝導性組成物で使用した(B)成分と同じアルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを使用することができる。
【0045】
第2実施形態の組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは3〜15質量部である。
【0046】
[その他の成分]
第1実施形態の組成物と第2実施形態の組成物は、それぞれの(A)成分と(B)成分に加えて、さらに(C)成分としてポリオルガノシロキサンを含有することができる。(C)成分のポリオルガノシロキサンには、(B)成分のジメチルポリシロキサンは含まれない。
【0047】
[(C)成分]
(C)成分のポリオルガノシロキサンとしては、次の平均組成式(I)で表されるものを使用することができる。
R
1aR
2bSiO
[4−(a+b)]/2 (I)
【0048】
式中、R
1は、アルケニル基である。アルケニル基は、炭素原子数が2〜8の範囲にあるものが好ましく、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基などを挙げることができ、好ましくはビニル基である。アルケニル基を含有するときは、好ましくは1分子中に1個以上、好ましくは2個以上含有される。アルケニル基が1個以上であると、(C)成分をゲル状からゴム状の間で調整することができる。また、アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0049】
R
2は、脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の1価炭化水素基である。脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の1価炭化水素基は、炭素原子数が1〜12、好ましくは1〜10のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子、シアン基などで置換した基、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基などのハロゲン化炭化水素基やα−シアノエチル基、β−シアノプロピル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基などを挙げることができる。これらのなかでも好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0050】
a,bは、0≦a<3、0<b<3、1<a+b<3を満足する正数であり、好ましくは0.0005≦a≦1、1.5≦b<2.4、1.5<a+b<2.5であり、より好ましくは0.001≦a≦0.5、1.8≦b≦2.1、1.8<a+b≦2.2を満足する数である。
【0051】
(C)成分の分子構造は、直鎖状、分岐状のものが好ましい。
(C)成分の23℃における粘度は、0.01〜10Pa・sであることが好ましい。より好ましくは0.02〜1.0Pa・sである。
【0052】
(C)成分を含有する場合は、(A)成分100質量部に対して(B)成分と(C)成分を合計量で1.5〜35質量部含有し、好ましくは1.5〜30質量部、より好ましくは1.5〜28質量部含有する。(B)成分と(C)成分は、(B)成分と(C)成分の合計量中の(C)成分の含有割合が15〜98質量%であり、好ましくは18〜98質量%であり、より好ましくは20〜98質量%であるように配合される。
【0053】
本発明の組成物は、必要に応じて、反応抑制剤、補強性シリカ、難燃性付与剤、耐熱性向上剤、可塑剤、着色剤、接着性付与材、希釈剤などを本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
【0054】
本発明の第1および第2の実施形態の組成物は、グリース状(ペースト状)のものである。(B)成分としてアルコキシシラン化合物(II−1,2)でY=Si(CH
3)
2CH
2=CH
2のものを使用した場合は、(C)成分の置換基を不飽和基を含むように選択し、下記の(D)成分、(E)成分を併用することによりゲル状のものからゴム状のものまで硬さを調整することができる。ここでゴム状のものにしたときには、弾力性のあるものから、例えば石のように硬いものまでを含むものである。
【0055】
[(D)成分]
(D)成分は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、(C)成分の架橋剤となる成分である。(D)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上、好ましくは3個以上有するものである。この水素原子は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両方に結合していてもよい。さらに両末端のみにケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを併用してもよい。(D)成分の分子構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状あるいは三次元網目状のいずれでもよく、1種単独又は2種以上を併用してもよい。(D)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは公知のものであり、例えば特開2008−184549号公報に記載されている(B)成分を使用することができる。
【0056】
[(E)成分]
(E)成分は白金系触媒であり、(C)成分と(D)成分を混練した後の硬化を促進させる成分である。(E)成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる周知の触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテートなどを挙げることができる。(E)成分の含有量は、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができるものであり、(C)成分と(D)成分の合計量に対し、白金元素に換算して0.1〜1000ppmの範囲とすることが好ましい。
【0057】
本発明の組成物は、(A)成分および(B)成分、さらに必要に応じて他の任意成分をプラネタリーミキサーなどの混合機で混合することにより得ることができる。混合時には、必要に応じて50〜150℃の範囲で加熱しながら混合してもよい。さらに均一仕上げのためには、高剪断力下で混練操作を行うことが好ましい。混練装置としては、3本ロール、コロイドミル、サンドグラインダー等があるが、中でも3本ロールによる方法が好ましい。
【0058】
また本発明の組成物がさらに(D)成分と(E)成分を含むゲル状のものであるとき、特開2008−184549号公報に記載の放熱材の製造方法と同様にして得ることができる。
【0059】
本発明の組成物からなる放熱材料は、上記した熱伝導性組成物からなるものである。本発明の組成物からなる放熱材料は、(D)成分および(E)成分を含まないグリース状のものであるとき、粘度(実施例に記載の測定方法により求められる粘度)は、発熱部位に対する塗布の容易さから、10〜1000Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0060】
上記したように(B)成分がアルコキシシラン化合物(II−1,2)でY=Si(CH
3)
2CH
2=CH
2を含む組成物からなる放熱材料は、(C)成分、(D)成分および(E)成分を含むゴム状のものであるとき、硬度計TypeE型(JISK6249準拠)で測定した硬さがたとえば5以上のものであることが好ましい。
【0061】
本発明の組成物からなる放熱材料は、熱線法で測定した23℃における熱伝導率が2.0W/(m・K)以上、好ましくは2.5W/(m・K)以上、より好ましくは3.0W/(m・K)以上のものである。前記熱伝導率を調整して放熱効果を高めるためには、組成物中の(A)成分の含有割合が80質量%以上であることが好ましく、要求される熱伝導率に応じて(A)成分の含有割合を増加させることができる。
【0062】
本発明の放熱材料は、発熱量の多いCPUを搭載しているPC/サーバーの他、パワーモジュール、超LSI、光部品(光ピックアップやLED)を搭載した各電子機器、家電機器(DVD/HDDレコーダー(プレイヤー)、FPDなどのAV機器など)、PC周辺機器、家庭用ゲーム機、自動車のほか、インバーターやスイッチング電源などの産業用機器などの放熱材料として使用することができる。放熱材料はグリース状(ペースト状)、ゲル状、ゴム状等の形態を有することができる。
【0063】
以下では本発明の種々の実施態様を示す。
<1>(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、
前記(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上配合してなる、熱伝導性組成物。
【0064】
<2> 前記(A)成分の混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を50質量%以上配合してなり、平均粒子径50μm未満の球状の熱伝導性充填剤を50質量%以下配合してなる、<1>の熱伝導性組成物。
【0065】
<3>(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、
前記(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50〜100μm、好ましくは平均粒子径50〜80μmの球状の熱伝導性充填剤を50〜70質量%、好ましくは50〜60質量%配合してなる、熱伝導性組成物。
【0066】
<4> 前記(A)成分の混合物が、平均粒子径1〜10μm、好ましくは平均粒子径1〜5μmの球状の熱伝導性充填剤を30〜50質量、好ましくは40〜50質量%配合してなる、<3>の熱伝導性組成物。
【0067】
<5>(A)成分100質量部に対してアルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン(B)成分1〜30質量部、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部を含有する、<1>〜<4>のいずれかの熱伝導性組成物。
【0068】
<6>(A)球状の熱伝導性充填剤と(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサンを含有する熱伝導性組成物であって、
前記(A)成分の球状の熱伝導性充填剤が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、
前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上配合してなり、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤を10質量%以上、好ましくは15質量%以上配合してなる、熱伝導性組成物。
【0069】
<7>前記(A)成分の混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上の球状の熱伝導性充填剤を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上配合してなり、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤を10質量%以上、好ましくは15質量%以上配合してなり、残部が平均粒子径1μm以上〜平均粒子径50μm未満の球状の熱伝導性充填剤を配合してなる、<6>の熱伝導性組成物。
【0070】
<8>前記(A)成分の混合物が、窒化物からなる平均粒子径50〜100μm、好ましくは平均粒子径50〜80μmの球状の熱伝導性充填剤を50〜70質量%、好ましくは50〜60質量%配合してなる、<6>又は<7>の熱伝導性組成物。
【0071】
<9>前記(A)成分の混合物が、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤を10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%配合してなる、<6>〜<8>のいずれかの熱伝導性組成物。
【0072】
<10>残部が平均粒子径1〜10μm、好ましくは平均粒子径1〜5μmの球状の熱伝導性充填剤を配合してなる、<6>〜<9>のいずれかの熱伝導性組成物。
【0073】
<11>(A)成分100質量部に対してアルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン(B)成分1〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは3〜15質量部を含有する、<6>〜<10>のいずれかの熱伝導性組成物。
【0074】
<12>平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤が酸化アルミニウム又は酸化亜鉛である、<6>〜<11>のいずれかの熱伝導性組成物。
【0075】
<13>前記窒化物が窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素である、<1>〜<12>のいずれかの熱伝導性組成物。
【0076】
<14><1>〜<13>のいずれかに記載の熱伝導性組成物からなる放熱材料。
【0077】
<15>(A)球状の熱伝導性充填剤100質量部に対して、(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン1〜30質量部、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部を混合する、熱伝導性組成物の製造方法であって、
前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上、好ましくは平均粒子径50〜100μm、より好ましくは平均粒子径50〜80μmの充填剤を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上配合してなる、熱伝導性組成物の製造方法。
【0078】
<16>(A)球状の熱伝導性充填剤100質量部に対して、(B)アルコキシシラン化合物またはジメチルポリシロキサン1〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは3〜15質量部混合する、熱伝導性組成物の製造方法であって、
前記(A)が平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物であり、前記混合物が、窒化物からなる平均粒子径50μm以上、好ましくは平均粒子径50〜100μm、より好ましくは平均粒子径50〜80μmの充填剤を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上配合してなり、また、平均粒子径1μm未満の球状の熱伝導性充填剤を10質量%以上、好ましくは15質量%以上配合してなる、熱伝導性組成物の製造方法。
【0079】
<17>前記窒化物が窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素である、<16>又は<17>の製造方法。
【0080】
<18>前記(B)成分が一般式(II)のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物である、<1>〜<17>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0081】
<19>前記(B)成分が一般式(II−1)又は一般式(II−2)の化合物である、<18>の組成物、放熱材料又は製造方法。
【0082】
<20>前記(B)成分が一般式(III)で表される化合物である、<1>〜<17>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0083】
<21>前記(B)成分が一般式(IV)で表されるジメチルポリシロキサンである、<1>〜<17>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0084】
<22>さらに(C)成分として平均組成式(I)で表されるポリオルガノシロキサンを含む、<1>〜<17>の何れかの組成物、放熱材料又は製造方法。
【0085】
<23>さらに(D)成分としてポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含み、(E)成分として白金系触媒を含む、<22>の組成物、放熱材料又は製造方法。
実施例
【0086】
<使用成分>
(A)成分
丸み状窒化アルミニウム「FAN−f80」,平均粒子径80μm,(株)トクヤマ
丸み状窒化アルミニウム「FAN−f50−J」,平均粒子径50μm,(株)トクヤマ
丸み状窒化アルミニウム「HF−05」,平均粒子径5μm,(株)トクヤマ
丸み状窒化アルミニウム「HF−01」,平均粒子径1μm,(株)トクヤマ
丸み状アルミナ「スミコランダム」,平均粒子径0.4μm,住友化学(株)
【0087】
(B)成分
表面処理剤(一般式(II−1)において、x:20、Y:Si(CH
3)
2CH=CH
2)
【0088】
<測定方法>
[平均粒子径]
平均粒子径(メジアン径d
50)は、コールカウンター法により測定した。
【0089】
[粘度]
JIS K6249に準拠。回転粘度計ローターNo.7、回転数20rpm、1分値の粘度を示す。
【0090】
[熱伝導率]
23℃において、熱線法に従い、熱伝導率計(京都電子工業社製、QTM−500)を用いて測定した。
【0091】
実施例1〜18
表1、表2に示す(A)および(B)成分をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、熱伝導性組成物を得た。(B)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。組成物の粘度、熱伝導率を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1と表2の対比から、平均粒子径50μmの窒化アルミニウムを含む実施例1〜9の組成物と、平均粒子径80μmの窒化アルミニウムを含む実施例10〜18の組成物では、粘度は実施例1〜9の組成物の方が小さいが、熱伝導率は実施例10〜18の組成物の方が高かった。なお、表1、表2中の「纏まる限界」は、成形できるものであることを意味し、成形できずに粉状態のままであるものが含まれないことを意味する。また、「ペースト」はペースト(グリース)状で粘度が測定できなかったことを意味する。
【0095】
実施例19〜22
表3に示す(A)および(B)成分をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、熱伝導性組成物を得た。(B)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。組成物の粘度、熱伝導率を下記の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
表3と表2の対比から、(A)成分中に平均粒子径が1μm未満のアルミナを10質量%以上含有させることで、粘度の上昇を抑制しつつ、熱伝導率を高めることができた。なお、表3中の「纏まる限界」は、上記と同じ意味である。
【0098】
比較例1〜16
表4〜表6に示す(A)および(B)成分をプラネタリー型ミキサー(ダルトン社製)に仕込み、室温にて1時間撹拌混合し、さらに120℃にて1時間撹拌混合して、比較用の熱伝導性組成物を得た。(B)成分の量は、(A)成分100質量部に対する質量部表示である。組成物の粘度、熱伝導率を測定した。結果を表4〜表6に示す。なお、表5〜表6中の「纏まる限界」は、上記と同じ意味である。
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
表1〜表3の実施例と表4の比較例1〜4との対比から、(A)成分を平均粒子径の異なる充填剤を特定割合で配合してなる混合物にすることで、粘度と熱伝導率が改善できることが確認できた。
【0103】
表1〜表3の実施例と表5、6の比較例5〜16との対比から、(A)成分として平均粒子径が50μm以上の窒化アルミニウムを含有することで、粘度と熱伝導率が改善できることが確認できた。
【0104】
表1の実施例1、2と表5の比較例7、8は、(A)成分と(B)成分の配合量は同じであるが、実施例1、2の方が粘度は低く、熱伝導率は大きかった。
産業上の利用可能性
【0105】
本発明の熱伝導性組成物は、パーソナルコンピューターなどの電子機器のような発熱部位を有する各種機器用の放熱材料として使用することができる。