(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223595
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】シール剤塗布方法及びこれに用いるシール剤整形装置
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20171030BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20171030BHJP
B05C 11/02 20060101ALI20171030BHJP
B05C 17/10 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
B05D7/24 301N
B05D7/00 P
B05C11/02
B05C17/10
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-555095(P2016-555095)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2015062821
(87)【国際公開番号】WO2016063559
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-216686(P2014-216686)
(32)【優先日】2014年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 卓
(72)【発明者】
【氏名】筏井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】荒畑 康史
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−159288(JP,A)
【文献】
特開平5−246457(JP,A)
【文献】
特開平5−246456(JP,A)
【文献】
特開2004−144206(JP,A)
【文献】
特開2006−167676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00〜 7/26
B05C 5/00〜21/00
B62D25/00〜25/04
B60R13/06
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのワークの接合部における間隙に流動性を備えるシール剤を塗布する方法において、
該間隙に該シール剤を塗布する塗布工程と、
塗布された該シール剤の形状を整える整形工程とを備え、
該整形工程は、
該接合部の長さ方向に沿った溝状の非接触部と、該非接触部の両側において該非接触部と同じ方向を向いた接触面を有する1対の接触部とを備える整形用型部材を、塗布された該シール剤の両側で該1対の接触部の接触面が該接合部の表面に接し、該シール剤が該非接触部に収容されるように配置する配置工程と、
該配置工程の後、該整形用型部材を該接合部に押圧し、かつ該押圧により該非接触部を変形させることにより、該非接触部により該シール剤の長さ方向への浸出を許容し、該1対の接触部により該シール剤の幅方向への浸出を阻止しながら、該シール剤を該非接触部の外形に添って整形する工程とを備えることを特徴とするシール剤塗布方法。
【請求項2】
2つのワークの接合部における間隙に塗布された流動性を備えるシール剤の形状を整える整形装置であって、
該接合部の長さ方向に沿って延在し、塗布された該シール剤の両側で該接合部に接触して幅方向への該シール剤の侵出を阻止する1対の接触部と、
該1対の接触部に挟まれる部分に該接合部の長さ方向に沿って延在して塗布された該シール剤を収容し、長さ方向への該シール剤の侵出を許容する非接触部とを備える整形用型部材と、
該整形用型部材を該接合部に対して押圧する押圧部材とを備え、
該1対の接触部は、該非接触部の両側において該非接触部と同じ方向を向き、該接合部との接触時に該接合部の表面と接触して該シール剤の浸出の阻止を実現するための接触面を有し、
該非接触部は、前記押圧部材による押圧によって変形する部材で構成されることを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項3】
請求項2記載のシール剤整形装置において、前記整形用型部材は、前記非接触部の前記接合部と反対側に設けられ、該接合部側に押圧されて、該非接触部に収容された前記シール剤を変形させる押圧部を備え、
前記押圧部材は、該押圧部に圧接して該押圧部により該シール剤を変形させる圧接部材を備えることを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項4】
請求項3記載のシール剤整形装置において、前記押圧部の前記接触部に隣接する部分の厚さd1は、該接触部の該押圧部に隣接する部分の厚さd2よりも小さいことを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項5】
請求項3記載のシール剤整形装置において、前記圧接部材は、前記押圧部に対する圧接量を規制するリミットピンを備えることを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項6】
請求項3記載のシール剤整形装置において、前記接触部は、前記接合部の長さ方向に沿って延在して該接合部に接地する複数の接地部を備え、該接地部は互いに所定の空隙を存して設けられていることを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項7】
請求項2記載のシール剤整形装置において、前記接触部はシール剤の通過を阻止し、空気の通過を許容する空気抜き孔を備えることを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項8】
請求項2記載のシール剤整形装置において、前記非接触部の両側の前記接触部に隣接する部分は、前記ワークに対する該接触部の接触面を基準とする所定の高さを有する内壁で構成されることを特徴とするシール剤整形装置。
【請求項9】
請求項8記載のシール剤整形装置において、前記整形用型部材には、前記接触面から前記内壁の高さ以下の所定距離だけ離れた個所に、該整形用型部材の変形時に該内壁の高さが所定値以下になるのを阻止する剛体が埋め込まれることを特徴とするシール剤整形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのワークの接合部における間隙にシール剤を塗布する方法及びこれに用いるシール剤整形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のサイドパネルアウターは、一枚の鋼板をプレス成形し、開口部を打ち抜くことにより製造されている。ところが、サイドパネルアウターはフロントドア及びリアドアに相当する部分に大きな開口部を備えており、この開口部を形成するために打ち抜かれた鋼板は多くの場合スクラップとなるので、歩留まりの低下が避けられないという問題がある。
【0003】
前記問題を解決するために、サイドパネルアウターを上下に2分割することが考えられる。この場合、例えば、サイドパネルアウターを、フロントピラーの下端部、センターピラーの上部、リアピラーの下端部で分割する。このようにすると、サイドパネルアウターは、フロントピラー、センターピラー上部の基部、リアピラー及びクォーターパネルからなる上部ワークと、センターピラー下部及びロッカパネルからなる下部ワークとに分割される。
【0004】
そこで、例えば、上部ワークの場合には、一方の上部ワークの凸部(リアピラー及びクォーターパネル)が、他方の上部ワークの凹部(センターピラーとリアピラーとの間の空間、フロントドア及びリアドアに相当)に納まるように配置する。この結果、フロントドア及びリアドアに相当する部分の大きな開口部を有効に利用することができ、鋼板の無駄を省いて歩留まりを向上させることができる。
【0005】
ところで、サイドパネルアウターを上部ワーク及び下部ワークに2分割すると、両ワークを接合した接合部に間隙ができるので、この間隙にシール剤を塗布する必要がある。シール剤を塗布する方法としては、例えば、ロボットハンドにシーラーガンを把持させ、シーラーガンから接合部に形成される間隙に沿ってシール剤を吐出させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−31166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接合部に形成される間隙に沿って、シーラーガンからシール剤を単に吐出させただけでは、塗布されたシール剤の各部の形状が不揃いとなり、接合部が外部から見える場合には十分な外観品質を得ることができないという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、2つのワークの接合部における間隙にシール剤を塗布するときに優れた外観品質を得ることができるシール剤塗布方法及びこれに用いるシール剤整形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のシール剤塗布方法は、2つのワークの接合部における間隙に流動性を備えるシール剤を塗布する方法において、該間隙に該シール剤を塗布する塗布工程と、塗布された該シール剤の形状を整える整形工程とを備え、該整形工程は、該接合部の長さ方向に沿った溝状の非接触部と、該非接触部の両側において該非接触部と同じ方向を向いた接触面を有する1対の接触部とを備える整形用型部材を、塗布された該シール剤の両側で該1対の接触部の接触面が該接合部の表面に接し、該シール剤が該非接触部に収容されるように配置する配置工程と、該配置工程の後、該整形用型部材を該接合部に押圧し、かつ該押圧により該非接触部を変形させることにより、該非接触部により該シール剤の長さ方向への浸出を許容し、該1対の接触部により該シール剤の幅方向への浸出を阻止しながら、該シール剤を該非接触部の外形に添って整形する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のシール剤塗布方法では、まず、2つのワークの接合部における間隙に流動性を備えるシール剤を塗布する。次に、前記接合部に整形用型部材を配設する。前記整形用型部材は、前記接合部の長さ方向に沿って延在する1対の接触部が、塗布されたシール剤の両側で接合部に接触する一方、1対の接触部の間の非接触部にシール剤を収容する。
【0011】
次に、整形用型部材を接合部に対して押圧することにより、非接触部に収容されたシール剤を接合部側に押圧すると、シール剤は流動性を備えているので容易に変形される。このとき、シール剤は、接合部の幅方向への侵出が接触部に阻止される一方、該接合部の長さ方向への侵出は非接触部により許容されているので、余分なシール剤が該接合部の長さ方向へ押し出される。
【0012】
この結果、本発明のシール剤塗布方法では、前記間隙に塗布されたシール剤が、非接触部の形状に沿って整形されることとなり、接合部において優れた外観形状を得ることができる。
【0013】
一方、本発明のシール剤整形装置は、2つのワークの接合部における間隙に塗布された流動性を備えるシール剤の形状を整える整形装置であって、該接合部の長さ方向に沿って延在し、塗布された該シール剤の両側で該接合部に接触して幅方向への該シール剤の侵出を阻止する1対の接触部と、該1対の接触部に挟まれる部分に該接合部の長さ方向に沿って延在して塗布された該シール剤を収容し、長さ方向への該シール剤の侵出を許容する非接触部とを備える整形用型部材と、該整形用型部材を該接合部に対して押圧する押圧部材とを備え、該1対の接触部は、該非接触部の両側において該非接触部と同じ方向を向き、該接合部との接触時に該接合部の表面と接触して該シール剤の浸出の阻止を実現するための接触面を有し、該非接触部は、前記押圧部材による押圧によって変形する部材で構成されることを特徴とする。
【0014】
本発明のシール剤整形装置によれば、2つのワークの接合部における間隙に塗布された流動性を備えるシール剤の両側に、接合部の長さ方向に沿って延在する1対の接触部が接触する一方、1対の接触部の間の非接触部にシール剤を収容する。そして、押圧部材で整形用型部材を接合部に対して押圧することにより、シール剤は流動性を備えているので容易に変形される。
【0015】
このとき、シール剤は、接合部の幅方向への侵出が接触部に阻止される一方、該接合部の長さ方向への侵出は非接触部により許容されているので、余分なシール剤が該接合部の長さ方向へ押し出される。この結果、本発明のシール剤整形装置では、前記間隙に塗布されたシール剤が、非接触部の形状に沿って整形されることとなり、接合部において優れた外観品質を得ることができる。
【0016】
本発明のシール剤整形装置において、前記整形用型部材は、前記非接触部の前記接合部と反対側に設けられ、該接合部側に押圧されて、該非接触部に収容された前記シール剤を変形させる押圧部を備え、前記押圧部材は、該押圧部に圧接して該押圧部により該シール剤を変形させる圧接部材を備えるのが好ましい。
【0017】
ただし、この場合、前記押圧部は前記非接触部の前記接合部と反対側に設けられており、前記1対の接触部に挟まれている。このため、前記圧接部材を押圧部に圧接して、押圧部によりシール剤を接合部側に押圧させると、1対の接触部が押圧部側に倒れ込み、接合部の幅方向へのシール剤の侵出を十分に阻止できないことが懸念される。
【0018】
そこで、本発明のシール剤整形装置において、前記押圧部の前記接触部に隣接する部分の厚さd1は、該接触部の該押圧部に隣接する部分の厚さd2よりも小さいことが好ましい。押圧部を接触部よりも肉薄とすることにより、該押圧部が該接触部より変形され易くなり、該接触部が該押圧部側に倒れ込み難くなるので、接合部の幅方向へのシール剤の侵出を確実に阻止することができる。
【0019】
また、本発明のシール剤整形装置において、前記圧接部材は、前記押圧部に対する圧接量を規制するリミットピンを備えることが好ましい。圧接部材は、リミットピンを備えることにより、押圧部に対する圧接量が規制され、過度に圧接されることがないので、整形されたシール剤の厚さを均一にすることができる。
【0020】
また、本発明のシール剤整形装置において、前記接触部は、前記接合部の長さ方向に沿って延在して該接合部に接地する複数の接地部を備え、該接地部は互いに所定の空隙を存して設けられていることが好ましい。
【0021】
前記接触部は、接合部に接地する接地部が互いに所定の空隙を存して複数設けられていることにより、単一の接地部を備える場合に比較して接合部に対する接地面積が小さくなり、同一の圧力で押圧されたときに接地圧が大きくなる。この結果、前記圧接部材を押圧部に圧接したときに1対の接触部をさらに押圧部側に倒れ込み難くすることができる。
【0022】
また、本発明のシール剤整形装置において、前記接触部はシール剤の通過を阻止し、空気の通過を許容する空気抜き孔を備えることが好ましい。
【0023】
接触部が空気抜き孔を備えることにより、前記圧接部材を前記押圧部に圧接してシール剤の整形を行うときに、前記非接触部内の空気のみを該空気抜き孔から外部に逃がすことができ、整形されたシール剤の表面に欠損が生じることを防止することができる。
【0024】
また、本発明のシール剤整形装置において、前記非接触部の両側の前記接触部に隣接する部分は、前記ワークに対する該接触部の接触面を基準とする所定の高さを有する内壁で構成されることが好ましい。
【0025】
これによれば、シール剤の整形時には、非接触部の両側の内壁に対応する部分として、シール剤の両側に、ある程度の高さを有する側面が形成される。このため、シール剤の両側は、この側面に対応する厚さを有し、ワークに対するシール剤の境界がシール剤の側面により明確に画定される。したがって、シール剤を、乱れの無い均一なものとして整形することができる。
【0026】
また、本発明のシール剤整形装置において、前記整形用型部材には、前記接触面から前記内壁の高さ以下の所定距離だけ離れた個所に、該整形用型部材の変形時に該内壁の高さが所定値以下になるのを阻止する剛体が埋め込まれることが好ましい。
【0027】
これによれば、埋め込まれた剛体により、非接触部の両側の内壁の高さが所定値以下となることがないので、この内壁に対応してシール剤の両側に形成される側面の高さが所定値以下となるのを回避して、確実に、ワークとシール剤との境界を画定し、乱れの無い均一なものとすることができる。
【0028】
すなわち、整形されたシール剤は、非接触部の内壁に対応する側面を有するので、そのワークに対する境界は、明確に画定され、乱れの無い均一なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1Aは、2つのワークの接合部を示す斜視図、
図1Bは、
図1Aのb−b線断面図。
【0030】
図2Aは、本発明のシール剤整形装置の構成を示す正面図、
図2Bは、
図2Aのb−b線断面図。
【0031】
図3Aは、本発明のシール剤塗布方法において整形用型部材を接合部に配設する工程を示す模式的断面図、
図3Bは、シール剤を整形する工程を示す模式的断面図。
【0032】
図4は本発明のシール剤塗布方法において整形用型部材を接合部に配設する方法を示す模式的正面図。
【0033】
図5は、
図2A及び
図2Bのシール剤整形装置における整形用型部材の別の例を示す断面図である。
【0034】
図6は、
図5の整形用型部材を用いて整形されたシール剤を示す斜視図である。
【0035】
図7は、整形用型部材のさらに別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0037】
本実施形態のシール剤塗布方法は、
図1A及び
図1Bに示すように、2つのワーク1,2の接合部3における間隙4に流動性を備えるシール剤5を塗布するときに適用される。
【0038】
ワーク1,2は、幅方向の中央部に凸部1a,2aを備え、凸部1a,2aはそれぞれワーク1,2の長さ方向に延在している。
図1Bに示すように、ワーク1は、段差部1bにより高段側と低段側とに別れており、低段側が端部となっている。ワーク2はワーク1の低段側となっている端部に積層されることにより接合部3が形成され、ワーク2の端部と段差部1bとの間が間隙4となっている。
【0039】
本実施形態のシール剤塗布方法では、まず、シール剤5が、例えばロボットハンド等に把持されたシーラーガン(図示せず)等により接合部3に吐出され、ワーク1,2に跨って間隙4をシールするように塗布される。ここで、塗布されたシール剤5は、シーラーガンから単に吐出されただけでは各部の形状が不揃いとなり、優れた外観品質を得ることができない。
【0040】
そこで、本実施形態のシール剤塗布方法では、次に、
図2A及び
図2Bに示すシール剤整形装置6を用いて塗布されたシール剤5の整形を行う。シール剤整形装置6は、整形用型部材7と、これを接合部3に対して押圧する押圧部材を構成する圧接部材8とを備えている。
【0041】
整形用型部材7は、例えばシリコーン樹脂等の軟質樹脂からなり、1対の側壁9,9と、側壁9,9に挟まれた溝部10とを備える樋形状であり、中央部にワーク1,2の凸部1a,2aに沿う形状の凹部11を備えている。
【0042】
側壁9,9は、接合部3の長さ方向に沿って延在し、両端の上部に傾斜部9aを備えている。また、側壁9,9の底面は、塗布されたシール剤5の両側で接合部3に接触する1対の接触部12,12となっており、各接触部12は1対の接地部12a,12aと、接地部12a,12a間に形成された空隙部12bとから構成されている。
【0043】
溝部10は、底部に側壁9,9を繋ぐ底面13を備え、底面13の接合部3側は、非接触部14となっている。非接触部14は、断面視アーチ形状であって整形用型部材7の端部で外部に開口しており、接合部3に塗布されたシール剤5を収容する。
【0044】
また、接触部12は、一方の端部が非接触部14に連通し、他方の端部が外部に開口している空気抜き孔15を備えている。空気抜き孔15は、非接触部14に収容されたシール剤5の通過を阻止する一方、空気の通過は許容するように形成されている。
【0045】
また、整形用型部材7において、底面13の厚さd1は、接触部12の厚さd2よりも小さく、底面13が接触部12よりも肉薄に形成されている。
【0046】
圧接部材8は、例えばアクリル樹脂等の硬質樹脂からなり、それぞれ整形用型部材7の溝部10の底面13の形状に沿う形状を備える割型8a,8bからなる。割型8a,8bは、
図2Aの左右から溝部10に挿入されて底面13に圧接されるようになっており、底面13を押圧部としてシール剤5を押圧する。また、割型8a,8bは、底面13に圧接されたときに、圧接量を規制するリミットピン16を底面13に対向する面に備えている。
【0047】
次に、本実施形態のシール剤塗布方法では、
図3Aに示すように、接合部3に整形用型部材7を配設する。整形用型部材7は、図示しないアクチュエータ等により接合部3に圧接され、接触部12,12がシール剤5の両側に配置される一方、非接触部14にシール剤5が収容されるように行われる。
【0048】
このとき、整形用型部材7の接触部12は、底面が1対の接地部12a,12aに分割されているので、アクチュエータ等の圧力が一定であれば、底面を分割しない場合よりも接地面積当たりの接地圧を大きくすることができる。
【0049】
また、整形用型部材7は、
図4に示すように、側壁9の上面に当接される第1駒17と、傾斜部9a及び第1駒17に当接される第2駒18を介して接合部に3に圧接される。このようにすることにより、整形用型部材7が接合部3の各部に対して均一に圧接するように調整することができる。第1駒17及び第2駒18は、圧接部材8とともに、整形用型部材7を接合部3に対して押圧する押圧部材を構成する。
【0050】
次に、
図3Bに示すように、整形用型部材7の溝部10に圧接部材8を挿入し、図示しないアクチュエータ等により底面13に圧接する。このとき、
図2Aに矢示するように、まず割型8a,8bを整形用型部材7の左右から底面13に圧接し、次いで割型8a,8bを整形用型部材7の上方から底面13に圧接する。
【0051】
このようにすると、整形用型部材7はシリコーン樹脂等の軟質樹脂からなり、底面13は接触部12よりも肉薄に形成されているので、容易に変形して非接触部14に収容されているシール剤5を押圧する。一方、接触部12は底面13より肉厚であり、接地部12a,12aにより接地圧が大きくされているので、底面13がシール剤5方向に変形しても、側壁9が溝部10方向に倒れ込むことはない。
【0052】
シール剤5は、流動性を備えているので、底面13により押圧されると非接触部14の形状に沿って、接合部3の幅方向及び長さ方向に流延される。このとき、シール剤5は、接合部3の幅方向では接触部12により阻止されて接触部12の外部に侵出することはないが、接合部3の長さ方向では非接触部14の開口部から外部に侵出することができる。
【0053】
外方に侵出したシール剤5は固化した後に切り取るようにしてもよいが、整形用型部材7に非接触部14の開口部に連通する切欠部(図示せず)を形成しておき、この切欠部に収容するようにしてもよい。前記切欠部にシール剤5を収容することにより、固化した後に切り取る工程を省略することができる。
【0054】
また、シール剤5を底面13により押圧するときに、非接触部14内部に存在している空気は、接触部12に設けられている空気抜き孔15から外部に放出される。従って、シール剤5が固化したときに、その表面に欠損部が形成されることを防止することができる。
【0055】
また、圧接部材8は、リミットピン16により底面13に対する圧接量が規制されるので、前述のように流延されたシール剤5を均一な厚さに整形することができる。
【0056】
本実施形態のシール剤塗布方法では、例えば紫外線硬化樹脂からなるシール剤5を用いることができる。シール剤5が紫外線硬化樹脂からなる場合、整形用型部材7をシリコーン樹脂製とし、圧接部材8をアクリル樹脂製とすることが好ましい。このようにすると、シリコーン樹脂及びアクリル樹脂はいずれも紫外線を透過するので、整形用型部材7及び圧接部材8を介して紫外線を照射することができる。この結果、整形用型部材7の底面13に圧接部材8を圧接し、底面13によりシール剤5を押圧したままの状態で、シール剤5に紫外線を照射して固化させることができるので好都合である。
【0057】
図5は、シール剤整形装置6における整形用型部材の別の例を示す断面図である。
図5では、この例に係る整形用型部材19における非接触部20の一方の側の断面が示されている。非接触部20の他方の側の断面もこれと同様である。
【0058】
図5に示すように、整形用型部材19は、上述の整形用型部材7の接触部12と同様の接触部21を備える。非接触部20の接触部21に隣接する部分は、内壁20aを構成する。内壁20aは、これに隣接する接触部21のワーク1又は2に対する接触面21aに対して角度θを成し、接触面21aを基準とする高さh1を有する。角度θとしては、例えば90°又はその近傍の角度が該当する。高さh1としては、例えば0.1[mm]又はその近傍の値が該当する。
【0059】
図6は、この整形用型部材19を用いて整形されたシール剤5の一部を示す斜視図である。
図6に示すように、整形後のシール剤5は、そのワーク1又は2と反対側の部分円筒状の曲面5bと、その両側の側面5aとを有する。側面5aは、整形時の整形用型部材19の変形により高さh1が減少した内壁20aにより整形される。この減少量を考慮し、内壁20aの高さh1は、側面5aの高さh2として、例えば0.05〜0.1[mm]の高さが担保されるように設定される。
【0060】
担保すべき側面5aの高さh2は、例えば、整形後のシール剤5に要求される止水性能や外観を考慮して決定される。整形用型部材19の他の構成は、
図2Aの整形用部材7の場合と同様である。
【0061】
整形用型部材19によるシール剤5の整形は、
図3A〜
図4を用いて上述したのと同様にして行われる。その際、
図4のように、整形用型部材19が、第1駒17と、傾斜部9a及び第1駒17に当接される第2駒18を介して接合部3に圧接され、そして、
図3Bのように、圧接部材8が、整形用型部材19の底面13に圧接される。
【0062】
このとき、接合部3への圧接により整形用型部材19に変形が生じ、非接触部20の内壁20aの高さは本来の高さh1から減少する。例えば、高さh1が0.1[mm]であるとすれば、この高さが0.05[mm]に減少する。また、圧接部材8の底面13への圧接により、シール剤5は、その長さ方向に流動するが、幅方向への流動は、高さh1が減少した内壁20aによって確実に阻止される。
【0063】
したがって、整形用型部材19により整形されたシール剤5は、
図6のように、整形時に減少した高さh1に対応する高さh2を有する側面5aを備える。そして、整形後のシール剤5とワーク1,2との境界は、側面5aにより明確に画定され、均一で乱れの無いものとなる。
【0064】
図7は、整形用型部材のさらに別の例を示す断面図である。
図7では、この例に係る整形用型部材22の非接触部23の一方の側の断面が示されている。非接触部23の他方の側の断面も同様である。
【0065】
図7に示すように、整形用型部材22は、上述の整形用型部材7の接触部12と同様の接触部24を備える。非接触部23は、
図5の内壁20aと同様の内壁23aを有する。整形用型部材22には、その接触部24のワーク1,2に対する接触面24aから離れた所定範囲内の箇所において、接触面24aに平行な姿勢で、シム板25が埋設されている。
【0066】
この埋設は、例えば、整形用型部材22をシリコーンで成形する際に、まず、整形用型部材22におけるシム板25よりもワーク1,2と反対側の部分を成形し、その後、その上にシム板25を載置し、さらにその上に液状シリコーンを供給することにより行うことができる。
【0067】
シム板25を接触面24aから離れた個所に埋設するようにしたのは、ワーク1又は2に対する接触部24の追従性を確保する必要があるからである。したがって、この観点に基づき、接触面24aから埋設箇所までの距離が決定される。
【0068】
すなわち、内壁23aの高さをh3とし、h3よりも小さい所定の距離をdとすれば、接触面24aからの距離が(h3−d)〜h3の範囲内にシム板25が存在する。この場合、例えば、内壁23aの高さh3として0.55[mm]、距離dとして0.1[mm]、シム板25の厚さtとして0.05[mm]が該当する。
【0069】
整形用型部材22によるシール剤5の整形は、
図5の整形用型部材19の場合と同様にして行われる。そして、整形時には、整形用型部材19の場合と同様に、整形用型部材22の変形により、内壁23aの高さh3が減少する。
【0070】
しかし、シム板25が存在するので、内壁23aの高さは、少なくともシム板25の厚さt、例えば0.05[mm]以上に維持される。したがって、整形後のシール剤5における側面5aの高さh2(
図6参照)は、少なくともシム板25の厚さt以上であることが保障される。したがって、整形後のシール剤5とワーク1,2との境界が、シール剤5の側面5aによって、確実に画定され、均一で乱れの無いものとなる。
【0071】
なお、整形時における非接触部23の内壁23aの最低限の高さを保証するために、シム板25に代えて、加圧圧縮されても圧潰しない他の剛体、例えばガラスビーズを用いてもよい。ガラスビーズのような不連続的なシムを採用する場合には、
図2Aのように接触部12が曲折している場合に、その接触部12の形状に容易にシムを沿わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
1,2…ワーク、3…接合部、4…間隙、5…シール剤、5a…側面、6…シール剤整形装置、7、19、22…整形用型部材、8…圧接部材(押圧部材)、12、21、24…接触部、13…底面(押圧部)、14、20、23…非接触部、15…空気抜き孔、16…リミットピン、17…第1駒(押圧部材)、18…第2駒(押圧部材)、21a、24a…接触面、20a、23a…内壁、25…シム板(剛体)。