特許第6223618号(P6223618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223618状態変化を危険度に応じて報知する路上設置型道路標識
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6223618
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】状態変化を危険度に応じて報知する路上設置型道路標識
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20171023BHJP
   E01F 9/30 20160101ALI20171023BHJP
【FI】
   E01F13/02 A
   E01F9/30
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-107754(P2017-107754)
(22)【出願日】2017年5月31日
【審査請求日】2017年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593153428
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆一
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚武
(72)【発明者】
【氏名】村上 一晃
【審査官】 袴田 知弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−115262(JP,A)
【文献】 特開平11−154291(JP,A)
【文献】 特開平02−108705(JP,A)
【文献】 特開2003−253630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
E01F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識本体が有する内部空間に、三軸衝撃センサと、前記三軸衝撃センサに接続されたセンサ演算手段と、前記センサ演算手段に接続された送信手段が着脱自在に配置され、
前記センサ演算手段は、前記三軸衝撃センサから衝撃加速度データを取得し、前記衝撃加速度データと、危険度の低い状態変化を示す第一閾値、及び、前記第一閾値より大きく危険度の高い状態変化を示す第二閾値との比較演算をし、
前記送信手段は、前記比較演算の結果に基づき、前記衝撃加速度データが前記第二閾値を超えず前記第一閾値を超えた場合に第一報知信号を送信し、前記衝撃加速度データが前記第二閾値を超えた場合に第二報知信号を送信し、
前記第一報知信号と前記第二報知信号の双方、又はいずれかを受信する管理側装置から送信される確認信号を受信する受信手段と、前記確認信号に基づき前記管理側装置との通信が確立していることを判定する通信確立判定手段と、前記通信確立判定手段における判定を表示する表示手段を備えていることを特徴とする路上設置型道路標識。
【請求項2】
前記第一報知信号は、前記衝撃加速度データが前記第一閾値を超えたタイミングから所定時間経過した後、前記衝撃加速度データが第三閾値を超えているときに送信される請求項1に記載の路上設置型道路標識。
【請求項3】
前記標識本体は、円錐形の本体部と、前記本体部の底に着脱自在の底部を備え、前記底部に、前記三軸衝撃センサと、前記センサ演算手段と、前記送信手段が配置されている請求項1又は2に記載の路上設置型道路標識。
【請求項4】
前記内部空間に、更にジャイロセンサが配置され、前記第一報知信号は、前記衝撃加速度データが前記第一閾値を超えたタイミングから所定時間経過した後、前記ジャイロセンサの測定値に基づき得られた回転角度が第四閾値を超えているときに送信される請求項1又は2に記載の路上設置型道路標識。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路保守作業や道路補修作業などを行うときに、作業が行われる道路に設けられる通行規制領域を、通常の走行車線と区切るために設置され、状態変化を危険度に応じて報知する路上設置型道路標識に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路保守作業や道路補修作業を行う場合、作業が行われる道路の一部において通行規制がなされるが、通行規制のなされる領域は、並べて配置された多数の「コーン」と称される円錐形をなす路上載置型道路標識によって通常の走行車線と区切られることが多い。
【0003】
ところが、通行規制領域を通常の走行車線と区切るための路上設置型道路標識は、設置作業や回収作業の利便性を考慮し軽量なものとされているものが多い。そのため、走行車両が誤って規制領域に突入した場合、路上設置型道路標識はその衝撃により跳ね飛ばされ、走行車両の進入を防止するものとはならず、通行規制領域に突入した車両に作業者が跳ねられるおそれがあった。
【0004】
そこで、路上設置型道路標識で通常の走行車線と区切られた通行規制領域において、突入した車両による人身事故を未然に防止するための手法が提案されている。例えば、特開平6−266996号公報には、道路で事故処理等の作業を行っているときに、路上設置型道路標識を蹴散らして後続車が暴走したことを道路上の作業者に知らせることができる暴走車警報装置が開示されている。
【0005】
一方、路上設置型道路標識には、軽量であることにより、別の問題も生じている。すなわち、軽量な路上設置型道路標識には、強風や振動により、設置位置から移動し或いは転倒することがあった。
【0006】
そして、路上設置型道路標識が、所定の位置と異なる位置に配置されたり、或いは転倒していたりする場合は、走行車両の運転者に対し通行規制領域を明確に示すことができず、更に、走行の障害になるおそれがあった。そのため、路上設置型道路標識が正常な設置状態にあることを確認するための、定期的な巡回作業が行われている。
【0007】
ところが、巡回作業には手間と時間を要し、更には、確認作業が終わった直後に移動や転倒があった場合には、次の巡回作業まで、その状態が放置されてしまう問題があった。そこで、路上設置型道路標識の状態が正常状態から外れた場合に、そのことを遠隔で通知する手法が提案されている。例えば、特開平10−18242号公報には、円錐体のコーン(路上設置型道路標識)頂部に、振動と傾きの少なくとも一方に感応するセンサを設け、基準を超える振動あるいは傾きによる異常状態が発生したことを弁別する状態弁別回路の出力に応動して、異常の発生を無線信号によって通知する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−266996号公報
【特許文献2】特開平10−18242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、路上設置型道路標識の状態変化を示す情報は、通行規制領域を区切るための正常な設置状態を維持する目的と、通行規制領域へ走行車両が突入したことを領域内の作業者に報知する目的の、いずれの目的にも利用される。
【0010】
しかしながら、路上設置型道路標識の状態変化を検知する従来の手法では、設置状態を維持するために必要となる情報と、走行車両の突入を報知するために必要となる情報の双方を検出し、検出した情報に基づいて、不要な報知を行うことなく必要な報知のみを行うことが難しかった。
【0011】
例えば、車両の突入速度が低い場合には、路上設置型道路標識が跳ね飛ばされた直後に車両が停止できれば、作業者に危険の及ぶことはない。しかしながら、路上設置型道路標識の設置状態は大きく変化しており、その変化の検知により作業者へ報知されることになる。そして、このような場合にまで報知がなされると、作業者において報知に対する慣れが生じ、迅速な退避が必要となる本当に危険な状態でも、退避行動がとられなくなるおそれがあった。
【0012】
また、路上設置型道路標識の状態変化を検知する従来の手法では、状態変化を検知するセンサを路上設置型道路標識の内部に配置した場合、複数の路上設置型道路標識を重ねて運搬することができず、作業者により一度に運搬できる数量が制限され、設置作業を効率的に行うことが難しかった。
【0013】
一方、路上設置型道路標識の設置作業の効率を考慮し、路上設置型道路標識の頂部に設けた取り付け孔に、状態変化を検知するセンサを嵌装する手法も提案されているが、この場合、路上設置型道路標識の転倒に際し、センサが損傷する可能性があり、動作の信頼性に問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、設置作業の効率を低下させることなく設置でき、状態変化を危険性の低い場合と高い場合に区別して検出して報知することを可能し、しかも動作信頼性が高い路上設置型道路標識を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る路上設置型道路標識は、標識本体が有する内部空間に、三軸衝撃センサと、前記三軸衝撃センサに接続されたセンサ演算手段と、前記センサ演算手段に接続された送信手段が着脱自在に配置される。
【0016】
前記センサ演算手段は、前記三軸衝撃センサから衝撃加速度データを取得し、前記衝撃加速度データと、危険度の低い状態変化を示す第一閾値、及び、前記第一閾値より大きく危険度の高い状態変化を示す第二閾値との比較演算をする。
【0017】
前記送信手段は、前記比較演算の結果に基づき、前記衝撃加速度データが前記第二閾値を超えず前記第一閾値を超えた場合に第一報知信号を送信し、前記衝撃加速度データが前記第二閾値を超えた場合に第二報知信号を送信する。
【0018】
更に、前記第一報知信号と前記第二報知信号の双方、又はいずれかを受信する管理側装置から送信される確認信号を受信する受信手段と、前記確認信号に基づき前記管理側装置との通信が確立していることを判定する通信確立判定手段と、前記通信確立判定手段における判定を表示する表示手段を備える。
【0019】
前記第一報知信号は、前記衝撃加速度データが前記第一閾値を超えたタイミングから所定時間経過した後、前記衝撃加速度データが第三閾値を超えているときに送信されてもよい。
【0020】
なお、管理側装置とは、路上設置型道路標識において衝撃が検出されたとき、路上設置型道路標識から送信される報知信号を受けて、道路作業者や道路監視員に通報を行うための装置を意味する。管理側装置は、単独で機能するものでもよく、或いは複数の装置が協働するものであってもよい。
【0021】
前記標識本体は、円錐形の本体部と、前記本体部の底に着脱自在の底部を備え、前記底部に、前記三軸衝撃センサと、前記センサ演算手段と、前記送信手段が配置されているものであってもよい。
【0022】
前記内部空間に、更にジャイロセンサが配置され、前記第一報知信号は、前記衝撃加速度データが前記第一閾値を超えたタイミングから所定時間経過した後、前記ジャイロセンサの測定値に基づき得られた回転角度が第四閾値を超えているときに送信されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る路上設置型道路標識によれば、三軸衝撃センサから取得される衝撃加速度データと、危険度の低い状態変化を示す第一閾値、及び、前記第一閾値より大きく危険度の高い状態変化を示す第二閾値との比較演算の結果に応じて、第一報知信号と第二報知信号が送信される。従って、第一報知信号を危険性の低い状態変化に、第二報知信号を危険性の高い状態変化に対応させることで、状態変化を危険性の低い場合と高い場合に区別して検出し報知することができる。
【0024】
また、標識本体が有する内部空間に配置された三軸衝撃センサ、センサ演算手段、及び送信手段は、標識本体に対し着脱自在とされているため、標識本体から三軸衝撃センサ、センサ演算手段、及び送信手段を取り外した状態で、標識本体を複数重ねて運搬することができる。そのため、設置作業の効率を低下させることもない。
【0025】
更にまた、衝撃加速度データが第一閾値を超えたタイミングから所定時間経過した後、衝撃加速度データが第三閾値を超えているときに第一報知信号を送信するものであれば、風や振動による力が働いた後、転倒すること無く元の状態に戻った場合における、転倒の誤検出を防止することができ、検出の精度を更に向上させることができる。
【0026】
更にまた、管理側装置から送信される確認信号に基づき管理側装置との通信が確立していることを判定する通信確立判定手段と、通信確立判定手段における判定を表示する表示手段を備えるものであれば、設置状態を調整し、管理側装置との通信を確立させることができる。従って、検出された状態変化を確実に報知することが可能となり、検出の精度を更に向上させることができる。
【0027】
更にまた、「コーン」と称される公知の円錐形の標識を採用する場合、標識本体を、円錐形の本体部と、本体部の底に着脱自在の底部を備えるものとし、底部に、三軸衝撃センサと、センサ演算手段と、送信手段を配置することにより、三軸衝撃センサ、センサ演算手段、及び送信手段を標識本体から容易に取り外した状態とすることができる。そして、標識本体部と底部を分離した状態で、標識本体部と底部のそれぞれを複数重ねて運搬することが可能となるため、設置作業の効率低下を防ぐことができる。
【0028】
また、本体部の底に取り付けられる底部に三軸衝撃センサを配置することにより、三軸衝撃センサは、本体部の底の近傍に設置されるため、損傷の可能性が低くなるとともに、転倒による衝撃が緩和され、衝撃加速度データは外部からの衝撃力に対応するものとなる。そのため、強風や振動による転倒、速度が低い車両の衝突による転倒など、危険度の低い転倒が、危険度の高い状態変化として誤って検知されることを防止し、危険度の低い状態変化と危険度の高い状態変化の検出精度を、より高めることができる。
【0029】
標識本体が正面形状と側面形状の異なるものである場合、例えば、中央部分での折り曲げが可能とされた板材で構成される表示板の場合、転倒することなく、設置された場所から大きく移動することなく向きが変わり、表示面が視認され得ない状態となることがある。そのような標識本体には、内部空間に、更にジャイロセンサを配置する。そして、第一報知信号を、衝撃加速度データが第一閾値を超えたタイミングから所定時間経過した後、ジャイロセンサの測定値に基づき得られた回転角度が第四閾値を超えているときに送信されるものとすれば、向きが変わった状態を危険性に低い状態変化として放置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る路上設置型道路標識の実施形態の縦断面図である。
図2】標識本体部から取り外された状態の底部の正面図である。
図3】底部が取り外された状態の標識本体部の縦断面図である。
図4】本発明に係る路上設置型道路標識の他の実施形態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1〜3を参照しながら、本発明に係る路上設置型道路標識の実施形態について説明する。
本実施形態の路上設置型道路標識1は、円錐型標識をなす中空の標識本体10に、状態変化を検出し報知するための、三軸衝撃センサ、演算処理装置、及び通信装置が一体化された衝撃検出器2を装備したものである。
【0032】
標識本体10は、円錐形の本体部11と本体部11の底に着脱自在に取り付けられる底部12を備えている。本体部11は、「コーン」と称される公知の標識であり、内部空間を有し、頂部には、点灯装置等を嵌装するための取り付け孔13が設けられている。また、底面に開口14を有しており、開口の周囲に平面視正方形の鍔15が設けられている。そして、鍔15を介し、底部12が、本体部11の底に取り付けられている。
【0033】
底部12は、硬質ゴムで形成され、上面に、本体部11の鍔15に適合する窪み16が設けられている。また、窪み16の外縁上側に突起17が設けられている。そして、突起17と鍔15を係合させることにより、本体部11の底に底部12を取り付けた状態とすることができる。
【0034】
一方、突起17と鍔15の係合を解除することにより、本体部11の底から底部12を、必要に応じて取り外すことができるものとなっている。そして、図3に示すように、本体部11の底の開口14が開放され中が空洞の状態とすることにより、本体部11を複数重ねて運搬することが可能となる。
【0035】
本体部11から取り外した底部12も、図2に示すように、衝撃検出器2の通信用アンテナ21を倒した状態とすることにより、複数重ねて運搬することができる。
【0036】
突起17は、底部12が地面に設置された状態において、上下方向に働く力により撓むものとなっている。そして、地面に設置された底部12に対し、本体部11を真上から被せる作業により、本体部11の底に底部12を取り付けることができるものとなっている。また、底部12が取り付けられた状態の本体部11は、鉛直方向(真上方向)に引っ張る操作により、底部12を取り外すことができるものとなっている。
【0037】
ただし、底部12が取り付けられた状態にある本体部11に、鉛直方向から傾いた方向に力が働いても、突起17と鍔15の係合は解除されないものとなっている。従って、強風、振動、車両の衝突など、路上設置型道路標識1の設置状態を変化させる力が働いた場合には、底部12が本体部11から外れることなく、路上設置型道路標識1が受けた衝撃を衝撃検出器2で検出することができる。
【0038】
底部12の上面において、本体部11の内部空間に配置される部位には、衝撃検出器2を配置するための台座18が設けられている。台座18は、硬質スポンジで形成され、衝撃検出器2に適合する装着孔19が設けられている。そして、衝撃検出器2が、この装着孔19に嵌装されている。
【0039】
底部12の上面において、本体部11の内部空間に配置されない部位(円錐部分の外側に配置される部位)には、衝撃検出器2の操作器22に適合する装着孔20が設けられている。そして、操作器22が、この装着孔20に嵌装され、底部12を貫通する配線23を介し衝撃検出器2に接続されている。
【0040】
なお、底部12の材質や形状に制限はない。衝撃検出器2を衝撃から保護できる耐衝撃性を有し、本体部11の底に必要に応じて着脱できるものであればよく、使用状況などに応じ、公知の材質や形状を適宜選択することができる。例えば、窪み16を設ける代わりに、本体部11の円錐部分を挿通させることのできる環状部材を備えるものとし、環状部材を鍔15の上側に配置し、鉛直上下方向から鍔15を挟持する形状としてもよい。
【0041】
操作器22は、衝撃検出器2を操作するスイッチに加え、後述する通信確立の判定に基づき点灯する表示灯を備えている。表示灯は、本発明の表示手段に相当する。
【0042】
衝撃検出器2を構成する三軸衝撃センサは、衝撃が加えられたときの衝撃加速度を計測するものであり、3軸での計測が可能な公知のセンサが使用されている。
【0043】
衝撃検出器2を構成する演算処理装置は、公知のマイコンであり、本発明のセンサ演算手段としての機能を備える。そして、3軸衝撃センサから取得した衝撃加速度データを、予め設定された第一閾値、第二閾値及び第三閾値と比較する演算処理を行う。
【0044】
第一閾値は、危険度の低い状態変化が生じた場合、具体的には、強風や振動により設置位置から移動し或いは転倒した場合に、路上設置型道路標識1に生じる衝撃を想定し設定されている。この実施形態では、衝撃加速度センサにおける3軸のいずれかで検出される加速度として19.6m/s(2G)が設定されている。ただし、設定値に制限はなく、本体部10及び底部20の材質、寸法、重量などに応じて適宜設定すればよい。
【0045】
第二閾値は、危険度の高い状態変化が生じた場合、具体的には、高速で走行する車両が衝突した場合に、路上設置型道路標識1に生じる衝撃を想定し設定されている。この実施形態では、衝撃加速度センサにおける3軸のいずれかで検出される加速度として166.6m/s(17G)が設定されている。ただし、設定値に制限はなく、本体部10及び底部20の材質、寸法、重量などに応じて適宜設定すればよい。
【0046】
第三閾値は、路上設置型道路標識1が転倒した状態において、衝撃加速度センサにより検出される重力加速度が設定される。この実施形態では、路上設置型道路標識1が正常に設置された状態において重力加速度が働く方向にz軸を、重力加速度が働かない方向にx軸とy軸を設定し、路上設置型道路標識1が転倒した状態におけるx軸方向の加速度とy軸方向の加速度の合成値が設定される。
【0047】
衝撃検出器2を構成する演算処理装置は、また、本発明の通信確立判定手段としての機能を備える。そして、管理側装置から送信される確認信号の受信状態に基づき、管理側装置との通信確立の判定処理を行う。そして、管理側装置との通信が確立している場合は、操作器22の表示灯を点灯させる。
【0048】
衝撃検出器2を構成する通信装置は、2.4GHz帯の公知の通信装置であり、本発明の送信手段としての機能を備える。そして、演算処理装置における比較演算処理において、衝撃加速度データが第二閾値を超えた場合、瞬時に第二報知信号を送信する。また、衝撃加速度データが第二閾値を超えず第一閾値を超えた場合、衝撃加速度データが第一閾値を超えたタイミングから10秒経過した後、衝撃加速度データが第三閾値を超えているとき、第一報知信号を送信するものとなっている。なお、衝撃加速度データが第三閾値を超えているかどうかの判断のタイミングに制限はなく、路上設置型道路標識の形状等に応じ適宜設定することができる。
【0049】
衝撃検出器2を構成する通信装置は、また、本発明の受信手段としての機能を備える。そして、管理側装置から送信された確認信号を受信した場合には、その情報が演算処理装置に出力される。演算処理装置では、通信装置から引き渡された情報が示す受信状態に基づき、通信確立の判定処理を行う。
【0050】
なお、管理側装置とは、路上設置型道路標識1において衝撃が検出されたとき、路上設置型道路標識1から送信される報知信号を受けて、道路作業者や道路監視員に通報を行うための装置である。単独で機能するものでもよく、或いは複数の装置が協働するものであってもよい。
【0051】
この実施形態において、管理側装置から送信される確認信号は、複数の路上設置型道路標識1の全てに一律に送信されることを想定しているが、個々の路上設置型道路標識1からの要求信号への応答として送信されるものであってもよい。その場合、衝撃検出器2を構成する通信装置は、第一報知信号及び第二報知信号と異なるチャネルの通信要求信号を送信する。
【0052】
標識本体は、円錐形の標識に制限されず、例えば、中央部分での折り曲げが可能とされた板材で構成される表示板であってもよい。図4に、標識本体として表示板を採用した実施形態を示す。なお、図4において、図1〜3に示す実施形態と実質的に同じ部分には同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0053】
図4に示す路上設置型道路標識3は、中央部分での折り曲げが可能とされた板材で構成される標識本体30を備える。標識本体30は、所定の角度で折り曲げられ地面に起立した状態とされ、表示面の裏側に空間(内部空間に相当する)が形成されている。そして、表示面の裏側に、衝撃検出器2が取り付けられている。また、表示面の表側に、操作器22が取り付けられている。
【0054】
なお、路上設置型道路標識3の衝撃検出器2を構成する演算処理装置において、第一閾値は、衝撃加速度センサにおける3軸のいずれかで検出される加速度として156.8m/s(16G)が設定されている。また、衝撃検出器2は、ジャイロセンサを更に備え、衝撃加速度データが第三閾値を超えているかどうかの判断に加え、ジャイロセンサの測定値に基づき得られた回転角度が第四閾値を超えているかのどうかの判断も行われている。そして、衝撃加速度データが第三閾値を超えた場合、或いは回転角度が第四閾値を超えた場合に、第一報知信号が送信されるものとなっている。
【0055】
回転角度は、ジャイロセンサにおける3軸の各々の測定値を積分し、オフセット、及び温度によるドリフト値を考慮し算出されている。また第四閾値として、プラスマイナス5度が設定されている。
【0056】
測定値と第三閾値及び第四閾値との比較判断のタイミングは、衝撃加速度データが第一閾値を超えたタイミングから30秒経過した後とされている。その他の処理に関する設定は、図1〜3に示す路上設置型道路標識1の衝撃検出器2と同じものとなっている。
【符号の説明】
【0057】
1、3 路上設置型道路標識
2 衝撃検出器
10、30 標識本体
11 本体部
12 底部
13 取り付け孔
14 開口
15 鍔
16 窪み
17 突起
18 台座
19、20 装着孔
21 通信用アンテナ
22 操作器
23 配線
【要約】
【課題】設置作業の効率を低下させることなく設置でき、状態変化を危険性の低い場合と高い場合に区別して検出して報知することを可能し、しかも動作信頼性が高い路上設置型道路標識を提供する。
【解決手段】標識本体が有する内部空間に、三軸衝撃センサと、三軸衝撃センサに接続されたセンサ演算手段と、センサ演算手段に接続された送信手段が着脱自在に配置される。センサ演算手段は、三軸衝撃センサから衝撃加速度データを取得し、衝撃加速度データと、危険度の低い状態変化を示す第一閾値、及び、第一閾値より大きく危険度の高い状態変化を示す第二閾値との比較演算をする。送信手段は、比較演算の結果に基づき、衝撃加速度データが第二閾値を超えず第一閾値を超えた場合に第一報知信号を送信し、衝撃加速度データが第二閾値を超えた場合に第二報知信号を送信する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4