特許第6223635号(P6223635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223635
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20171023BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61B1/005 512
   G02B23/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-519952(P2017-519952)
(86)(22)【出願日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】JP2016084050
(87)【国際公開番号】WO2017086372
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-227904(P2015-227904)
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 傑
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 精介
(72)【発明者】
【氏名】上甲 英洋
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇
【審査官】 森川 能匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−065976(JP,A)
【文献】 特開2006−055664(JP,A)
【文献】 特開平11−178784(JP,A)
【文献】 特開2007−325748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長に形成された挿入部と、
細線を管状に編組することにより形成され、前記挿入部の内部に筒状に設けられた網状管と、
前記挿入部の内部に挿通される、素線を巻回して形成されたコイルと、このコイルの内部に挿通される、素線を撚り合わせて形成されたワイヤとを備え、前記ワイヤを牽引することで前記コイルに圧縮力を加えて前記挿入部の曲げ硬さを調整する硬度変更機構と、
を備えており、
前記網状管において前記細線間に生じる隙間の寸法を、前記ワイヤの直径よりも小さく、かつ前記ワイヤの前記素線の直径よりも大きく設定する
ことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記網状管において前記細線間に生じる隙間の寸法を、前記コイルの直径および前記コイルにおける前記素線の直径よりも小さく設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記網状管の外周を覆う、樹脂にて形成された外皮をさらに備え、前記コイルの前記素線の硬度を前記外皮の硬度より低く設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記網状管の外周を覆う、樹脂にて形成された外皮をさらに備え、前記ワイヤの前記素線の硬度を前記外皮の硬度より低く設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記ワイヤは、前記挿入部の基端側に設けられた牽引機構部により牽引される
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部内に線状部材が挿通された内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の体内や構造物の内部等の観察が困難な箇所を観察するために、生体や構造物の外部から内部に挿入可能な挿入部の先端部内に、光学像を撮像するための撮像ユニットを具備した内視鏡が、例えば医療分野や工業分野において利用されている。
【0003】
日本国特開平10−276965号公報に開示されている内視鏡は、挿入部の一部の曲げ方向の硬度を変更する硬度変更機構部を有する。硬度変更機構部は、挿入部内に挿通されたコイルパイプと、コイルパイプ内に挿通されたワイヤと、ワイヤを牽引することでコイルパイプに圧縮力を加える牽引機構部と、を備える。コイルパイプは、加えられる圧縮力に応じて曲げ方向の硬度が変化する。このため、挿入部のコイルパイプが挿通された部分の硬度は、コイルパイプに加えられる圧縮力に応じて変化する。
【0004】
日本国特開平10−276965号公報に開示されている内視鏡の硬度変更機構部においては、例えばワイヤを牽引してコイルパイプを圧縮した状態で、可撓管部が許容される所定の曲げ半径よりも小さく屈曲された場合に、ワイヤやコイルパイプが破損する可能性がある。挿入部内においてワイヤやコイルパイプ等の線状部材が破損した場合には、これらが可撓管部の外皮を傷つけて可撓管部内の水密性を低下させる恐れがある。
【0005】
本発明は、上述した点を解決するものであって、挿入部内に線状部材が挿通された内視鏡において、線状部材の破損時においても挿入部の水密性を保持することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の内視鏡は、細長に形成された挿入部と、細線を管状に編組することにより形成され、前記挿入部の内部に筒状に設けられた網状管と、前記挿入部の内部に挿通される、素線を巻回して形成されたコイルと、このコイルの内部に挿通される、素線を撚り合わせて形成されたワイヤとを備え、前記ワイヤを牽引することで前記コイルに圧縮力を加えて前記挿入部の曲げ硬さを調整する硬度変更機構と、を備えており、前記網状管において前記細線間に生じる隙間の寸法を、前記ワイヤの直径よりも小さく、かつ前記ワイヤの前記素線の直径よりも大きく設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】内視鏡の構成を説明する図である。
図2】可撓管部および硬度変更機構部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0009】
図1に示す本実施形態の内視鏡1は、人体等の被検体内に導入可能な細長の挿入部2を有し、挿入部2に被検体内を観察するための構成を有する。なお、内視鏡1の挿入部2が導入される被検体は、人体に限らず、他の生体であってもよいし、機械や建造物等の人工物であってもよい。
【0010】
本実施形態の内視鏡1は、被検体の内部に導入される細長に形成された挿入部2と、挿入部2の基端に位置する操作部3と、操作部3から延出するユニバーサルコード4とで主に構成されている。
【0011】
挿入部2は、先端に配設される先端部8、先端部8の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部9、及び湾曲部9の基端側と操作部3の先端側とを接続する可撓性を有する可撓管部10が連設されて構成されている。
【0012】
先端部8には、被検体内を観察するための構成等が配設されている。例えば、先端部8には、対物レンズ及び撮像素子を含み光学的に被検体内を観察するための撮像ユニットが配設されている。また、先端部8には、図示しないが、撮像ユニットの被写体を照明する光を出射する照明光出射部も設けられている。なお、先端部8には、超音波を用いて音響的に被検体内を観察するための超音波振動子が配設されていてもよい。
【0013】
挿入部2の基端に配設された操作部3には、湾曲部9の湾曲を操作するためのアングル操作ノブ6が設けられている。ユニバーサルコード4の基端部には図示しない外部装置に接続可能に構成された内視鏡コネクタ5が設けられている。内視鏡コネクタ5が接続される外部装置は、先端部8に設けられた撮像ユニットを制御するカメラコントロールユニット等を備える。
【0014】
また、操作部3には、可撓管部10内に配設された硬度変更機構部20を操作するための硬度変更ノブ21が設けられている。硬度変更機構部20は、可撓管部10の長手方向に沿って可撓管部10内に挿入されており、硬度変更ノブ21による操作入力に応じて、屈曲に対する硬度が変化する構成を有する。すなわち、硬度変更機構部20は、可撓管部10の屈曲に対する硬度を変化させる。
【0015】
次に、可撓管部10および硬度変更機構部20の構成について説明する。図2に示すように、可撓管部10は、網状管11および外皮12を備える。
【0016】
網状管11は、ステンレス合金等の金属製の細線を管状に編組することにより形成されている。外皮12は、網状管11の外周を被覆する合成樹脂製の膜である。網状管11を外皮12により覆うことにより、可撓管部10内の気密が保たれる。言い換えれば、網状管11は、筒状の外皮12を外周に有する可撓管部10内に挿通されている。
【0017】
なお、図示しないが、網状管11の内側には、可撓管部10の潰れを防止する芯材であるフレックス管が設けられている。フレックス管は、細長の金属製の薄板を、可撓管部10の長手方向に沿った軸周りに螺旋状に巻回することにより形成されている。フレックス管を構成する薄板の幅は、薄板を巻回するピッチ幅よりも狭いため、フレックス管は可撓管部10の屈曲に応じて変形する。
【0018】
以上のように構成された可撓管部10内には、前述した硬度変更機構部20の他に、撮像ユニットと内視鏡コネクタとを電気的に接続する電気ケーブルや、流体や処置具等を通すための管路等の内蔵物が挿通されている。硬度変更機構部20の以外の内蔵物は、公知の技術であるため説明は省略する。
【0019】
硬度変更機構部20は、線状部材であるコイルパイプ22、第1ワイヤ24および第2ワイヤ26を備える。硬度変更機構部20を構成する部材について、挿入部2の先端部8側に向かう方向を先端方向と称し、操作部3側に向かう方向を基端方向と称する。
【0020】
コイルパイプ22は、例えばステンレス合金等の金属製の線状の素線を、挿入部2の長手方向に平行な所定の軸A周りに螺旋状に巻回して形成された線状部材である。
【0021】
コイルパイプ22を構成する素線の直径は、網状管11において隣接する細線の間に生じる最大の隙間よりも大きい。言い換えれば、網状管11に生じる隙間の最大寸法は、コイルパイプ22の素線の直径よりも小さい。
【0022】
コイルパイプ22の基端22bは、操作部3に固定されたコイル固定部23によって保持されている。コイルパイプ22内には、所定の軸Aを中心とした所定の内径の空間が設けられている。コイルパイプ22内には、後述する第1ワイヤ24が挿通される。
【0023】
第1ワイヤ24は、コイルパイプ22内に挿通され、金属製の線状の素線を撚り合わせることにより形成された線状部材である。第1ワイヤ24は、例えばステンレス合金等からなる素線を撚り合わせることにより形成されている。
【0024】
第1ワイヤ24の直径は、網状管11において隣接する細線の間に生じる最大の隙間よりも大きい。言い換えれば、網状管11に生じる隙間の最大寸法は、第1ワイヤ24の直径よりも小さい。
【0025】
第1ワイヤ24の素線は、コイルパイプ22を構成する素線よりも細径である。そして、第1ワイヤ24の素線の硬度は、外皮12の硬度よりも低く、第1ワイヤ24の素線は外皮12の表面に突き刺さらない強度を有する。例えば、第1ワイヤ24の素線を、外皮12に対して直行する方向から突き当てたとしても、第1ワイヤ24は外皮12に突き刺さることなく座屈変形する。
【0026】
コイルパイプ22に挿通された第1ワイヤ24の先端24aは、第1ワイヤ24が基端方向に牽引された場合に、コイルパイプ22に軸Aに沿って圧縮する方向の力が加わるように、コイルパイプ22の先端22aと係合している。
【0027】
具体的には、第1ワイヤ24の先端24aは、コイルパイプ22の先端22aよりも先端方向に突出している。そして、第1ワイヤ24の先端24aには、コイルパイプ22の内径よりも大きい外形を有する接続部25が固着されている。すなわち、第1ワイヤ24の先端24aのコイルパイプ22の先端22aに対する基端方向への相対的な移動は、接続部25によって規制されている。
【0028】
また、接続部25は、コイルパイプ22の先端22aに接着剤、半田付けまたはロウ付け等によって固着されている。すなわち、第1ワイヤ24の先端24aは、コイルパイプ22の先端22aに固定されている。なお、第1ワイヤ24の先端24aは、接続部25を介さずに、接着剤、半田付けまたはロウ付け等によってコイルパイプ22の先端22aに直接的に固着されていてもよい。
【0029】
前述のように、コイルパイプ22の基端22bは、コイル固定部23によって操作部3に固定されている。したがって、第1ワイヤ24を基端方向に牽引した場合、第1ワイヤ24に加えられた張力がコイルパイプ22の先端22aに伝達され、コイルパイプ22には軸A方向に圧縮する力が加えられる。コイルパイプ22に圧縮力が加えられることにより、コイルパイプ22が生じる曲げ変形に対する抵抗力が大きくなる。コイルパイプ22に加えられる圧縮力が大きいほど、コイルパイプ22が生じる曲げ変形に対する抵抗力は大きくなる。
【0030】
第1ワイヤ24の基端24bは、第1ワイヤ24を基端方向に牽引して第1ワイヤ24に張力を加える牽引機構部30に接続されている。
【0031】
牽引機構部30は、公知であるため詳細な説明を省略するが、本実施形態では一例として、牽引機構部30は、操作部3に対して回動する硬度変更ノブ21と、第1ワイヤ24の基端24bを保持し硬度変更ノブ21の回動に応じて軸Aに沿う方向に進退移動するワイヤ保持部30aと、を備える。
【0032】
硬度変更ノブ21の内周面には、カム溝21bが彫設されている。ワイヤ保持部30aは、操作部3内において軸Aに沿う方向に進退移動可能に配設されている。また、ワイヤ保持部30aには、カム溝21bに摺動可能に係合するカムピン30bが設けられている。カム溝21bとカムピン30bとの係合により、ワイヤ保持部30aは、硬度変更ノブ21の回動に応じて軸Aに沿う方向に進退移動する。以上のように構成された、本実施形態の牽引機構部30は、使用者による硬度変更ノブ21の回動操作に応じて、第1ワイヤ24に加える張力を変更することができる。
【0033】
第2ワイヤ26は、金属製の線状の素線を撚り合わせることにより形成された線状部材である。第2ワイヤ26は、例えばステンレス合金等からなる素線を撚り合わせることにより形成されている。
【0034】
第2ワイヤ26の直径は、第1ワイヤ24の直径よりも小さいが、網状管11において隣接する細線の間に生じる最大の隙間よりも大きい。言い換えれば、網状管11に生じる隙間の最大寸法は、第2ワイヤ26の直径よりも小さい。
【0035】
第2ワイヤ26の素線は、第1ワイヤ24の素線よりも細径である。また、第2ワイヤ26の素線は、第1ワイヤ24の素線よりも引っ張り強度の低い材料からなる。そして、第2ワイヤ26の直径は、第1ワイヤ24よりも細径である。
【0036】
そして、第2ワイヤ26の素線の硬度は、第1ワイヤ26の素線と同様に、外皮12の硬度よりも低く、第2ワイヤ26の素線は外皮12の表面に突き刺さらない強度を有する。例えば、第2ワイヤ26の素線を、外皮12の表面に対して直行する方向から突き当てたとしても、第2ワイヤ26は外皮12に突き刺さることなく座屈変形する。
【0037】
第2ワイヤ26は、先端26aが回転が規制された状態で挿入部2の構成部材に固定されており、基端26bが第1ワイヤ24の先端24aに固定されている。すなわち、第2ワイヤ26は、第1ワイヤ24よりも先端側に配置されている。
【0038】
具体的には、第2ワイヤ26の先端26aは、挿入部2の湾曲部9の基端に配置された枠部材9aのワイヤ固定部28に、軸A周りの回転が規制された状態で固定されている。第2ワイヤ26の先端26aは、例えば接着剤、半田付けまたはロウ付け等によってワイヤ固定部28に固着されている。
【0039】
また、第2ワイヤ26の基端26bは、接続部25に例えば接着剤、半田付けまたはロウ付け等によって固着されている。第1ワイヤ24の先端24aおよび第2ワイヤ26の基端26bは、互いの中心軸が軸A上に位置するように、それぞれ接続部25に固着されている。
【0040】
なお、第2ワイヤ26の基端26bは、接続部25を介さずに、直接的に第1ワイヤ24の先端24aに例えば接着剤、半田付けまたはロウ付け等によって固着されていてもよい。
【0041】
第2ワイヤ26の先端26aが湾曲部9の枠部材9aに固着されることによって、第1ワイヤ24の先端24aの可撓管部10内における位置が、所定の範囲内に保持される。すなわち、可撓管部10内における、コイルパイプ22の先端22aが移動可能な範囲が、第2ワイヤ26によって定められている。このため、コイルパイプ22は、牽引機構部30によって第1ワイヤ24を基端方向に牽引した場合や、可撓管部10の屈曲を繰り返した場合、第2ワイヤ26によって定められた範囲でのみ移動可能に保持される。
【0042】
コイルパイプ22は、前述のように、牽引機構部30によって第1ワイヤ24に加えられる張力に応じて、曲げ変形に対する抵抗力が変化する。よって、可撓管部10のコイルパイプ22が内部に配置されている範囲の屈曲に対する硬度は、コイルパイプ22の曲げ変形に対する抵抗力に応じて変化する。以上に説明した構成により、硬度変更機構部20は、挿入部2の少なくとも一部の硬度を変更する。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態の内視鏡1が備える硬度変更機構部20は、可撓管部10内に挿通される線状部材であるコイルパイプ22、第1ワイヤ24および第2ワイヤ26を備える。また、これらの線状部材の周囲を囲む可撓管部10は、細線を管状に編組することにより形成され網状管11と、網状管11の外周を覆う外皮12と、を備える。
【0044】
ここで、網状管11における隣接する細線間に生じる隙間の最大寸法は、コイルパイプ22の素線の直径よりも小さい。したがって、例えば牽引機構部30により第1ワイヤ24を牽引してコイルパイプ22を圧縮した状態で、可撓管部10が許容される所定の曲げ半径よりも小さく屈曲された場合にコイルパイプ22が折損したとしても、コイルパイプ22を構成する素線は、網状管11の外側に突出することがない。したがって本実施形態では、コイルパイプ22の折損時において、コイルパイプ22の素線が外皮12に接触することを防止し、外皮12が損傷することを防止できる。
【0045】
また、網状管11における隣接する細線間に生じる隙間の最大寸法は、第1ワイヤ24および第2ワイヤ26の直径よりも小さい。したがって、第1ワイヤ24または第2ワイヤ26が切断したとしても、第1ワイヤ24または第2ワイヤ26は、網状管11の外側に突出することがない。したがって本実施形態では、第1ワイヤ24または第2ワイヤ26の切断時において、第1ワイヤ24または第2ワイヤ26が外皮12に接触することを防止し、外皮12が損傷することを防止できる。
【0046】
第1ワイヤ24および第2ワイヤ26を構成する素線の直径は、網状管11における隣接する細線間に生じる隙間の最大寸法よりも小さいことから、切断した第1ワイヤ24または第2ワイヤ26がほつれた場合には、いくつかの素線が網状管11を貫通して外皮12に接触する可能性がある。しかしながら本実施形態では、第1ワイヤ24および第2ワイヤ26を構成する素線の硬度は、外皮12の硬度よりも低いため、素線単体が外皮12に接触したとしても、外皮12の損傷が防止される。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態の内視鏡1によれば、硬度変更機構部20が有する挿入部2内に挿通される線状部材であるコイルパイプ22、第1ワイヤ24および第2ワイヤ26が破損した場合においても、挿入部2の外周を覆う外皮12の損傷を防止し、挿入部2の水密性を保持することができる。
【0048】
なお、他の実施形態として、前述した第1ワイヤ24を構成する素線の硬度を外皮12の硬度より高くしたとしても、第1ワイヤ24の素線の径をコイルパイプ22の隙間の最大寸法より小さくすると共に、第2ワイヤ26を構成する素線の硬度を外皮12の硬度より低くすることで、外皮12の損傷を防止することが可能となる。つまり、可撓管部10の内面と対向するよう露呈されたワイヤやコイルの素線の硬度を外皮12の硬度より低くすることで、本発明の目的である外皮の損傷を防止することが充分に可能となる。
【0049】
また、本発明は、硬度変更機構部20が有する線状部材の他にも、挿入部2内に挿通される他のワイヤ等の線状部材についても適用可能である。例えば、公知のように、挿入部2内には、湾曲部9を湾曲操作するための湾曲操作ワイヤが挿通されている。湾曲操作ワイヤは、アングル操作ノブ6の回動に応じて牽引されて湾曲部9を湾曲させる。湾曲操作ワイヤに本発明を適用する場合には、湾曲操作ワイヤの直径または湾曲操作ワイヤの素線の直径のいずれかが、網状管11における隣接する細線間に生じる隙間の最大寸法よりも大きく設定される。また、湾曲操作ワイヤの素線の直径が網状管11における隣接する細線間に生じる隙間の最大寸法よりも小さい場合には、当該素線の硬度は、外皮12の硬度よりも低く設定される。この場合においても、前述の実施形態と同様に、湾曲操作ワイヤが切断した場合において、挿入部2の外周を覆う外皮12の損傷を防止し、挿入部2の水密性を保持することができる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内視鏡もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0051】
本出願は、2015年11月20日に日本国に出願された特願2015−227904号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
図1
図2