【実施例】
【0019】
本発明の実施例に係る排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施例に係る排煙脱硫装置の構成を簡略に示す概略構成図であり、
図2は、脱硫吸収塔の斜視図である。
図1、2に示すように、本実施例に係る排煙脱硫装置10は、脱硫吸収塔11と、スプレーパイプ12と、吸収液供給手段13と、ノズル14と、アルカリ剤供給手段15と、排水排出管16とを有する。
【0020】
NOx、SOx及び煤塵を含む排煙(排ガス)17が脱硫吸収塔11に導入される。排ガス17は、石炭炊きボイラなどから排出されるガスであり、石炭炊きボイラなどでは燃料中の窒素、硫黄が燃焼によりNOx、SOxとなり、排ガス17中にはNOx、SOx及び煤塵が含まれている。
【0021】
脱硫吸収塔11は、並流式脱硫吸収塔(並流塔)18と、向流式脱硫吸収塔(向流塔)19と、貯留タンク20とから構成されている。脱硫吸収塔11では、石灰石を吸収剤とした吸収剤スラリーを含む吸収液21を排ガス17と気液接触させると共に、吸収液21を酸化のために空気と接触させている。
【0022】
なお、本実施例において、吸収剤スラリーは、カルシウムを含有するスラリーであり、本実施例においては石灰石スラリーをいう。
【0023】
並流塔18は、貯留タンク20の一側部から上方に延設されて箱型形状をなすように形成され、上部に未処理の排ガス17を導入するための導入開口部22を有する。排ガス17は導入開口部22から塔内部に導入され、内部に導入した排ガス17は塔下方に向って流れる。
【0024】
向流塔19は、貯留タンク20の他側部から上方に延設されて箱型形状をなすように形成され、上部に処理済みの排ガス(処理排ガス)23を排出するための排出開口部24を有する。排ガス17は、貯留タンク20の上方に向って流れるようになっている。
【0025】
並流塔18、向流塔19内にはスプレーパイプ12が水平方向に設けられ、スプレーパイプ12はその一端部が閉塞されている。スプレーパイプ12は、塔内に水平方向に沿って平行に複数設けられている。
【0026】
各スプレーパイプ12には、脱硫吸収塔11内に吸収液21を噴射する複数のノズル14が設けられている。複数のノズル14は、各スプレーパイプ12に所定間隔をもって設けられて吸収液21を上方に向かって液柱状に噴射する。
【0027】
脱硫吸収塔11には、貯留タンク20内の吸収液21をスプレーパイプ12に供給する循環ポンプ26が設けられている。各循環ポンプ26は供給パイプ27を介してU字形状をなす循環ヘッダ28に連結されている。各循環ヘッダ28は連結パイプ29を介して各スプレーパイプ12に連結されている。
【0028】
貯留タンク20は、石灰石を吸収剤とした吸収液21を貯留するものである。貯留タンク20には、貯留タンク20内での吸収液21が所要レベルに維持されるように、吸収液供給手段13から吸収液21が補給されると共に、並流塔18、向流塔19の底部に滴下した吸収液21は貯留タンク20に貯留される。
【0029】
貯留タンク20内には空気供給装置31が設けられている。空気供給装置31は、アーム回転式のものであって、貯留タンク20内に設けられる中空回転軸32と、中空回転軸32を回転するためのモータ(駆動装置)33と、貯留タンク20内に中空回転軸32により支持されてモータ33により水平回転するアーム34と、中空回転軸32から伸びて開口端がアーム34の下側に延長された空気供給管35と、中空回転軸32の基端側を空気源に供給するためのロータリージョイント36と、から構成されている。
【0030】
この空気供給装置31は、ロータリージョイント36から空気を圧入しながら中空回転軸32を回転することで、空気供給管35よりアーム34の回転方向背面側に生じる気相域に空気を供給し、アーム34の回転により生じる渦力によりこの気相域終縁部の千切れ現象を起こして略均一な微細気泡を多数発生させる。これにより、スプレーパイプ12から吹上げられて排ガス17中のSOx、NOxを吸収しつつ流下し、貯留タンク20に貯留された吸収液21に、貯留タンク20内に吹込んだ空気を効率良く接触させることができる。このため、空気供給装置31により発生した微細な気泡は吸収液21中の吸収剤スラリーに吹込まれ、吸収液21がこれら空気と接触して酸化することで、副生品として石膏(硫酸カルシウム(CaSO
4))が生成される。
【0031】
吸収液供給手段13は、スプレーパイプ12の他端部に連結され、脱硫吸収塔11内に石灰石(炭酸カルシウム(CaCO
3))を吸収剤とした吸収剤スラリーを含む吸収液21を供給するものである。吸収液供給手段13は、吸収液21を貯留する石灰石タンク41と、吸収液21を並流塔18、向流塔19に供給する吸収液供給ライン42とを有する。石灰石タンク41内の吸収液21は、吸収液供給ライン42を介して貯留タンク20内に供給される。なお、吸収液供給ライン42には調節弁V11が設けられ、貯留タンク20内に供給される吸収液21の供給量は調節弁V11により調整される。
【0032】
貯留タンク20内の吸収液21は、循環ポンプ26によりそれぞれ供給パイプ27を通って循環ヘッダ28に供給され、連結パイプ29を通って並流塔18、向流塔19内の各スプレーパイプ12に供給される。スプレーパイプ12に供給された吸収液21は並流塔18、向流塔19内のスプレーパイプ12に設けられているノズル14から上方に向かって噴射され、排ガス17と気液接触して排ガス17を浄化する。
【0033】
排ガス17は、導入開口部22を通って並流塔18内に導入され、内部を下降する。そして、並流塔18では、スプレーパイプ12に供給された吸収液21がスプレーパイプ12から各ノズル14に分岐して供給され、各ノズル14から上方へ噴射される。上方に吹き上げられた吸収液21は、頂部で分散した後に微細化して落下する。吸収液21に含まれる粒子状の吸収剤スラリー(CaCO
3)は並流塔18内に分散して存在するようになり、吸収液21を排ガス17と気液接触させることで排ガス17中のSOx、NOxは吸収液21に吸収されると共に、排ガス17中に含まれる微細な煤塵が捕集され、吸収液21は排ガス17を浄化しながら落下する。
【0034】
並流塔18において、亜硫酸ガスを含む排ガス17が、粒子状の吸収液21が存在する領域を流下するため、体積当たりの気液接触面積が大きくなる。また、ノズル14の近傍では、排ガス17は吸収液21が吹き上げられる流れに効果的に巻き込まれるため、吸収液21と排ガス17とは効果的に混合し、並流塔18において排ガス17に含まれる大半の亜硫酸ガスが除去される。
【0035】
並流塔18の内部を流下した排ガス17は、貯留タンク20の上部を横方向に流れた後、向流塔19に移動して向流塔19の下部側から入り、向流塔19内を上昇する。向流塔19では、スプレーパイプ12に供給された吸収液21がスプレーパイプ12から各ノズル14に分岐して供給され、各ノズル14から上方へ噴射される。上方に吹き上げられた吸収液21は、頂部で分散した後に微細化して落下する。吸収液21に含まれる粒子状の吸収剤スラリー(CaCO
3)は向流塔19内に分散して存在するようになり、吸収液21を排ガス17と気液接触させることで、排ガス17中の煤塵や塩化水素、フッ化水素等の酸性ガスとともに、NOx、SOxが吸収液21の液滴表面に吸収されると共に、排ガス17中に含まれる微細な煤塵が捕集され、吸収液21は排ガス17を浄化しながら落下する。
【0036】
向流塔19内では、亜硫酸ガスを含む排ガス17は粒子状の吸収剤スラリー(CaCO
3)が存在する領域を上昇するため、体積当たりの気液接触面積が大きくなる。排ガス17は吸収液21が吹き上げられる流れに効果的に巻き込まれるため、吸収液21と排ガス17とは効果的に混合し、排ガス17中に残留する残りの亜硫酸ガスが除去される。
【0037】
吸収液21と向流接触した後の排ガス17は、向流塔19上部に設けられているミストエリミネータ等により排ガス17に同伴されるミストが除去された後、清浄な排ガス17は処理排ガス23として塔頂部の排出開口部24から排出され、必要により再加熱されて煙突より排出される。
【0038】
また、本実施例においては、並流塔18、向流塔19内に設置された各ノズル14から吸収液21を上方に向かって液柱状に噴射するようにしているが、これに限定されるものではなく、各ノズル14から吸収液21を塔下方側に向かってシャワー状に噴霧するようにしてもよい。
【0039】
一方、貯留タンク20に貯留された吸収液21には、空気供給装置31により発生した微細な気泡が吹込まれ、吸収液21がこれら空気と接触して酸化することで、石膏が生成される。貯留タンク20には、貯留タンク20内での吸収液21が所要レベルに維持されるように、吸収液供給手段13から吸収液21が補給されると共に、並流塔18、向流塔19の底部に滴下した吸収液21は貯留タンク20に貯留される。
【0040】
アルカリ剤供給手段15は、脱硫吸収塔11の貯留タンク20内にアルカリ剤を含むアルカリ剤含有溶液44を供給するものである。アルカリ剤供給手段15は、アルカリ剤含有溶液44を貯留するアルカリ剤含有溶液タンク45と、アルカリ剤含有溶液44を貯留タンク20に供給するアルカリ剤含有溶液供給ライン46とを有する。アルカリ剤含有溶液タンク45内のアルカリ剤含有溶液44は、アルカリ剤含有溶液送給ポンプ47によりアルカリ剤含有溶液供給ライン46を介して貯留タンク20に供給される。アルカリ剤含有溶液44を、貯留タンク20に供給することで、吸収液21に含まれる粒子状の吸収剤スラリーの活性を高め、脱硫性能を向上させることができる。なお、アルカリ剤含有溶液供給ライン46には調節弁V12が設けられ、貯留タンク20内に供給されるアルカリ剤含有溶液44の供給量は調節弁V12により調整される。
【0041】
アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、硫酸ナトリウム(Na
2(SO
4))、水酸化カリウム(KOH)、硫酸カリウム(K
2(SO
4))、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、硫酸マグネシウム(Mg
2(SO
4))、硫酸アンモニウム((NH
4)
2(SO
4))等が挙げられるが、中でも塩基性の高いNaOHを用いることが好ましい。アルカリ剤としては、NaOH、MgOH等の複数を用いてもよい。
【0042】
吸収剤
(アルカリ剤)としてNaOH、Mg
(OH)2を用いた場合には、下記式(1)、(2)のように脱硫反応が進行し、吸収液21中にイオン化して溶解する。
2NaOH+SO
2→Na
2SO
3+H
2ONa
2SO
3+1/2・O
2→Na
2SO
4→2Na
++SO
42-・・・(1)
Mg(OH)
2+SO
2→MgSO
3+H
2OMgSO
3+1/2・O
2→MgSO
4→Mg
2++SO
42-・・・(2)
【0043】
脱硫により生じるMgSO
3やNa
2SO
3等の副生物は、排ガス17中に含まれるO
2により自然酸化されるか、貯留タンク20内の空気供給装置31から供給される空気により酸化される。
【0044】
脱硫吸収塔11には、吸収液21中の炭酸イオン濃度を測定するための炭酸カルシウム濃度測定計50を設けるようにしてもよい。炭酸カルシウム濃度測定計50で貯留タンク20内の吸収液21中の炭酸イオン濃度を測定することで、吸収液21を注入することにより吸収剤の反応性の向上具合の変化を連続して測定することができる。
【0045】
貯留タンク20内の吸収液21は、循環ポンプ26から抜き出されて、供給パイプ27、循環ヘッダ28、連結パイプ29、スプレーパイプ12に供給され、貯留タンク20と、並流塔18、向流塔19とを循環して排ガス17の浄化に使用される。そのため、貯留タンク20の内部の吸収液21中の吸収剤スラリーは、石膏と吸収剤である少量の石灰石が懸濁又は溶存した状態となっている。循環使用された石膏を含む吸収液21は脱硫吸収塔11から吸収液排出管51を介して排出される。
【0046】
吸収液排出管51には調節弁V13が設けられ、脱硫吸収塔11から排出される吸収液21の排出量は調節弁V13により調整される。脱硫吸収塔11から吸収液排出管51に排出される吸収液21の排出量は、脱硫吸収塔11に送給される排ガス17のガス量、ガス温度、ガス性状、放流規制値、排水処理設備の容量等に基づいて調整される。
【0047】
吸収液21はスラリー抜出ポンプ52により排出されて石膏分離機53に供給される。吸収液21は石膏分離機53でろ過されて水分の少ない固形分(通常、水分含有率10%程度)が取り出される。取り出された固形分は脱水され、石膏54が回収される。
【0048】
一方、石膏分離機53からのろ液55はろ液タンク56に送給される。そして、ろ液抜き出しポンプ57より抜き出されたろ液55は、排水排出管16を通過して排水58として排出される。
【0049】
排水排出管16には、ろ液55の一部を抜き出すためのろ液循環ライン61が連結されている。ろ液循環ライン61は、排水排出管16と、抜き出したろ液55を貯蔵するための吸収液調整タンク62とを連結する。ろ液55の一部はろ液循環ライン61に抜き出され、吸収液調整タンク62に送給される。吸収液調整タンク62には補給水63と共に石灰石64が加えられ、吸収液21が調整される。この吸収液21は吸収液供給ポンプ65により再び貯留タンク20内に供給される。
【0050】
なお、ろ液循環ライン61には調節弁V14が設けられ、吸収液調整タンク62内に供給されるろ液55の供給量は調節弁V14により調整される。
【0051】
排水排出管16には、排水58の流量を計測するための流量計71が設けられている。流量計71で測定された流量結果は制御装置72に送られる。
【0052】
制御装置72は、流量計71で測定された測定結果に基づいて、調節弁V12の開度を調整してアルカリ剤含有溶液44の供給量を排水58の排出量に基づいて調整する。アルカリ剤含有溶液44は、脱硫吸収塔11において所定の脱硫性能(例えば、所定の規制値)を維持するように連続して供給することが好ましい。
【0053】
貯留タンク20の内部への吸収液21の量は、排水58の排出量に応じて調整されている。排水58の排出量から吸収液21の排出量を求めることができるので、吸収液21中の吸収剤の濃度が一定となるように、貯留タンク20への吸収液21の供給量を調整することができる。具体的には、排水58として排出されるろ液55の排出量が多いほど、吸収液21中の吸収剤もその分排水58と共に排出されることになるため、貯留タンク20内の吸収液21中の吸収剤の濃度は低くなる。そのため、この場合には、貯留タンク20に新たに供給されるアルカリ剤含有溶液44の液量は多くして、貯留タンク20内の吸収液21中の吸収剤の濃度を高くする必要がある。一方、排水58として排出されるろ液55の排出量が少ないほど、吸収液21中の吸収剤もその分排水58と共に排出されることはないため、貯留タンク20内の吸収液21中の吸収剤の濃度は高く維持されている。そのため、この場合には、貯留タンク20に新たに供給されるアルカリ剤含有溶液44の液量は少量で足り、貯留タンク20内の吸収液21中の吸収剤の濃度を高く維持する。
【0054】
そのため、排水58の排出量に基づいてアルカリ剤含有溶液44を脱硫吸収塔11に供給することにより、貯留タンク20内の吸収液21中の吸収剤
(アルカリ剤)の濃度が一定となるように調整することができ、貯留タンク20の内部の吸収液21中の吸収剤スラリー
(CaCO3)の活性を所定の規制値より高めの脱硫性能(例えば、所定の規制値より数%高い値)を維持するようにすることができる。
【0055】
従来の排煙脱硫装置では、NaOH溶液などの注入はバッチ式であり、NaOH溶液などを注入する際には、NaOH溶液などの注入後、所定期間再度添加しなくても済むように所定の規制値より遥かに高い脱硫性能となるように過剰にNaOH溶液などを添加していた。一方、本実施例に係る排煙脱硫装置10では、排水58の排出量に基づいてアルカリ剤含有溶液44を脱硫吸収塔11に供給し、貯留タンク20の内部の吸収液21中の吸収剤スラリーの活性を高め、所定の規制値より高めの脱硫性能(例えば、所定の規制値より数%高い値)を維持するようにしている。
【0056】
よって、本実施例に係る排煙脱硫装置10によれば、アルカリ剤含有溶液44の供給量を排水58の排出量に基づいて調整できるため、アルカリ剤含有溶液44を貯留タンク20内に過剰に供給することなく、排水58の排出量に応じて脱硫吸収塔11に所定の脱硫性能(例えば、所定の規制値)を維持するように適切に供給することができる。このため、プラントの運転コストが増大するのを抑制することができる。
【0057】
図3は、脱硫性能の一例を示す説明図であり、
図4は、時間当たりのNaOHの投入量の一例を示す説明図である。
図3に示すように、排水58の排出量に基づいてアルカリ剤含有溶液44を連続して供給することで脱硫性能は一定に維持できている(図中、実施例1参照)が、アルカリ剤含有溶液44の注入をバッチ式とすると、アルカリ剤含有溶液44の注入当初は、脱硫性能は高くなるが時間の経過と共に低下して規制値付近まで低下した後、再度アルカリ剤含有溶液44を注入している(図中、比較例1参照)。そのため、
図4に示すように、排水58の排出量に基づいてアルカリ剤含有溶液44を連続して供給することで規制値を満たすための必要最低限のアルカリ剤含有溶液44の供給で足りるため、時間当たりで使用するアルカリ剤含有溶液44の投入量は小さくなる(図中、実施例1参照)。一方、アルカリ剤含有溶液44の注入をバッチ式とすると、脱硫性能が低くなっても安定して規制値以上にするためアルカリ剤含有溶液44の注入時は過剰に注入しているため、時間当たりで使用するアルカリ剤含有溶液44の投入量は大きくなる(図中、比較例1参照)。
【0058】
よって、排水58の排出量に基づいてアルカリ剤含有溶液44を連続して供給することで、貯留タンク20内に供給される
アルカリ剤含有溶液44の量を適切に調整しつつ、吸収剤の反応性を向上させ、脱硫性能を一定に維持することができると共に、運転中に使用されるアルカリ剤含有溶液44の消費量を低減することができる。
【0059】
また、貯留タンク20内に供給される吸収液21の供給量は、排水58の排出量の他に、更に石膏54中の水分の含水量も合わせて調整するようにしてもよい。
【0060】
また、脱硫吸収塔11には、吸収液21中の塩素イオン(Cl
-)濃度を測定するための塩素イオン濃度測定計73を設けるようにしてもよい。排ガス17は石炭を燃焼させることにより生じるガスであり、石炭中に塩素が含まれていると、排ガス17に塩素イオンが混入する場合があり、吸収液21に塩素イオンが含まれる虞がある。塩素イオンはアルカリ剤が吸収剤(石灰石)の反応性を向上させる効果を阻害するため、吸収液21に塩素イオンが含まれている場合には、塩素イオンによるアルカリ剤の吸収剤(石灰石)の反応性を向上させる効果を抑制する割合も考慮してアルカリ剤含有溶液44を脱硫吸収塔11に供給することが好ましい。そこで、塩素イオン濃度測定計73で貯留タンク20内の吸収液21中の塩素イオン濃度を測定することにより、アルカリ剤による吸収剤(石灰石)の反応性を効率よく向上させることができる。
【0061】
本実施例では、脱硫吸収塔11に吸収液21中の塩素イオン濃度を測定するための塩素イオン濃度測定計73を設けているが、これに限定されるものではなく、塩素、又は塩素イオン濃度が測定できるものであればよく、例えば、電気伝導度測定計測器などが挙げられる。また、吸収液21中の塩素イオン濃度の測定に限られるものではなく、吸収液21中の塩素イオンは石炭中の塩素に起因するものであることから、脱硫吸収塔11に流入する排ガス17中の塩素や、石炭中の塩素を測定するようにしてもよい。
【0062】
このように、本実施例に係る排煙脱硫装置10は、効率良く安定して石灰石の反応性を向上させ、火力発電所等プラントの運転コストを低減させることができると共に排ガス17の浄化性能の向上を図ることができる。即ち、本実施例に係る排煙脱硫装置10によれば、排水58の排出量に基づいてアルカリ剤含有溶液44を脱硫吸収塔11に供給することにより、貯留タンク20の内部の吸収液21中の吸収剤スラリーの活性を高めることができる。この結果、アルカリ剤含有溶液44は貯留タンク20内に過剰に入れることなく適切に供給することができるため、所定の規制値より高めの脱硫性能(例えば、所定の規制値より数%高い値)を一定に維持することができると共に、運転中に使用されるアルカリ剤含有溶液44の量の低減を図ることができる。このため、プラントの運転費用の低減を図りつつ、安定して効率良く脱硫及び脱塵を行うことができる。
【0063】
また、本実施例では、排煙脱硫装置10に脱硫吸収塔11を設け、この脱硫吸収塔11を、並流塔18及び向流塔19の下部が貯留タンク20により連結されている構造としたが、この構造に限定されるものではなく、脱硫吸収塔11を一つだけとしても良い。