(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223660
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電磁波データ管理システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
G01R29/08
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-96771(P2012-96771)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-228210(P2013-228210A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月4日
【審判番号】不服2016-12041(P2016-12041/J1)
【審判請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-64911(P2012-64911)
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-73423(P2012-73423)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506428230
【氏名又は名称】森田テック 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】森田 治
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明徳
【合議体】
【審判長】
中塚 直樹
【審判官】
清水 稔
【審判官】
関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/028186(WO,A1)
【文献】
特許第4562587(JP,B2)
【文献】
特開2006−308402(JP,A)
【文献】
特開2005−3479(JP,A)
【文献】
特開2003−66079(JP,A)
【文献】
特開2007−171956(JP,A)
【文献】
特開平9−81310(JP,A)
【文献】
特表2010−521733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性タイプの唯一のプローブで受けた電磁波の計測データが入力される入力手段と、
前記プローブに固定的に取り付けられている少なくとも3つの赤外線を吸収又は反射するマーカと、
前記各マーカを撮像する赤外線ビデオカメラと、
前記赤外線ビデオカメラによって撮像された赤外線撮像データに基づいて前記プローブの空間上の位置データを取得する取得手段と、
前記入力手段によって計測データが入力されている際に当該計測データと前記取得手段によって取得されるプローブの位置データとを紐付けて保存する保存手段と、
前記赤外線ビデオカメラから出力されている位置データをピックアップするように指示するスイッチと、
前記計測データに対応する周波数帯域幅の計測が完了したことを前記プローブの操作者に報知する報知手段と、
を備える電磁波データ管理システム。
【請求項2】
前記プローブは、各々の軸心が相互に直交するXYZ方向に配置されている複数のコイルと、
前記各コイルによって誘起される電磁界に基づく電圧を増幅するアンプと、を備える、請求項1記載の電磁波データ管理システム。
【請求項3】
前記保存手段によって保存された各データを表示する表示手段を備える、請求項1記載の電磁波データ管理システム。
【請求項4】
前記プローブの位置データを出力する位置センサを備える、請求項1記載の電磁波データ管理システム。
【請求項5】
前記プローブで受けた電磁波の計測データを出力する周波数計測器を備える、請求項1記載の電磁波データ管理システム。
【請求項6】
指向性タイプの唯一のプローブで受けた電磁波の計測データを入力するステップと、
前記プローブに固定的に取り付けられている少なくとも3つの赤外線を吸収又は反射するマーカを赤外線ビデオカメラによって撮像するステップと、
前記赤外線ビデオカメラによって撮像した赤外線撮像データに基づいて前記プローブの空間上の位置データを取得するステップと、
前記計測データが入力されている際に当該計測データと前記プローブの位置データとを紐付けて保存するステップと、
前記赤外線ビデオカメラから出力されている位置データをピックアップするように指示するステップと、
前記計測データに対応する周波数帯域幅の計測が完了したことを前記プローブの操作者に報知するステップと、
を含む電磁波データ管理方法。
【請求項7】
請求項6記載の各ステップをコンピュータに実行させるための電磁波データ管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波データ管理システム、方法及びプログラムに関し、特に、プローブで受けた電磁波の計測データとその計測位置を示す位置データとを管理する、電磁波データ管理システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定対象物の測定位置を視認して、その視認した場所の電磁波強度分布の測定を短時間で容易に測定することができる電磁波測定装置が開示されている。この電磁波測定装置は、測定対象物の電磁波強度分布を検出する複数のプローブプローブを備えるプローブアレイと、該測定対象物を撮像するカメラと、プローブアレイをカメラの焦点位置に固定するカメラ固定部材とを備え、プローブアレイは、カメラの主点を頂点とする円錐(画角)の底面を焦点面において、複数の前記プローブプローブを前記カメラの画像信号から前記測定対象物の位置が視認可能に、予め定められる間隔で配設し、プローブアレイをカメラの視野内に固定配設して、測定対象物の周波数強度分布と該画像との位置とを対応付けて測定可能にしている。
【0003】
【特許文献1】特開2009−276092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている電磁波測定装置は、プローブアレイを用いているので、各プローブ及びそれらに接続されている配線を通る電波が他のプローブによる測定結果に対して不可避的に干渉するため、正しい電磁波の強度分布を取得することは困難である。
【0005】
また、プローブアレイを用いる場合には、そのプローブアレイよりも物理的に小さな隙間内の電磁波測定を行うことは不可能であり、測定対象物が限定的であった。さらに、これにも関連するが、測定対象物をカメラで撮像した場合、通常、カメラからの画像はディスプレイに平面的にしか表示できないので、測定対象物の奥行き方向の測定結果の区別が困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記不都合を解決するために、プローブアレイを用いずに3次元空間での電磁波測定を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電磁波データ管理システムは、
唯一のプローブ(例えば
図1のプローブ10)で受けた電磁波の計測データを入力する第1入力手段(例えば
図1の入力手段64)と、
前記プローブの位置を検出する位置センサから出力される空間上の位置データを入力する第2入力手段(例えば
図1の入力手段61と制御手段62とによって実現される手段)と、
前記第1入力手段によって計測データが入力されている際に当該計測データと前記第2入力手段によって入力されるプローブの位置データとを紐付けて保存する保存手段(例えば
図1のPC70)とを備えるシステムである。
【0008】
また、本発明の電磁波データ管理方法は、
唯一のプローブで受けた電磁波の計測データを入力するステップと、
前記プローブの位置を検出する位置センサから出力される3次元の位置データを入力するステップと、
前記計測データと位置データとを紐付けて保存するステップとを含む方法である。
【0009】
さらに、本発明の電磁波データ管理プログラムは、上記各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0010】
本発明によれば、唯一のプローブで電磁波を計測している際に、併せて、そのプローブの位置を検出し、計測データと位置データとを紐付けているので、例えば、空間上の電磁波の強度分布の表示を行うこともできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の電磁波データ管理システムの模式的な構成図である。
【
図2】
図1に示すプローブ10であるところの電磁界センサ100の模式的な内部構成図である。
【
図3】
図2に示す電磁界センサ100の電気的接続の説明図である。
【
図5】
図3に示すコイル群の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0012】
10 プローブ
20 スペクトラムアナライザ
30 撮像手段
40 LEDランプ付きスイッチ
50 マーカ
60 コントロールユニット
70 パーソナルコンピュータ(PC)
80 ディスプレイ
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
はじめに、本実施形態の電磁波データ管理システムの一つの利点を説明する。2007年6月18日に、世界保健機関のタスクグループによって、低周波(400kHzまでの超低周波)の電界及び磁界への暴露による健康リスクに関する環境保健クライテリアが発行された。
【0015】
我々の身の回りでも、電磁調理器(IH調理器)、電気掃除機、家庭用テレビ、パーソナルコンピュータ、家電製品全般、デジタル家電全般、情報機器、照明器具、さらには今後普及が見込まれる電気自動車も低周波磁界の発生源を有している。
【0016】
低周波磁界の人体への暴露による健康リスクを回避するためには、電磁界のシールド対策を講ずる必要があるが、そのためには、電磁調理器等の低周波磁界発生源における、いずれの位置からどのくらいの強度の低周波磁界が発生しているかを特定する必要がある。
【0017】
本実施形態の電磁波データ管理システムは、このような特定が可能であり、とりわけ、
図2に示すようなものを用いると、XYZ軸という3軸方向に対する電磁界強度を測定することができるので、電磁界のシールド対策を講ずる上で非常に有益である。
【0018】
(構成の説明)
図1は、本発明の実施形態の電磁波データ管理システムの模式的な構成図である。
図1には、以下説明する、プローブ10と、スペクトラムアナライザ20と、撮像手段30と、LEDランプ付きスイッチ40と、マーカ50と、コントロールユニット60と、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称する。)70と、ディスプレイ80とを示している。
【0019】
プローブ10は、電磁波を受けるものであり、いわゆるアンテナと同義である。本実施形態の電磁波データ管理システムにおいては、唯一のプローブ10を用いるようにしている。プローブ10は、指向性を有しているものを用いてもよいし、指向性を有していないものを用いてもよい。
【0020】
プローブ10について例示するとすれば、NARDA社製の電磁波測定器「ELT−400」、日置電機社製の磁界測定器「FT3470−52」、或いは、後述の電磁界センサ100(
図2)を用いることができる。
【0021】
スペクトラムアナライザ20は、プローブ10とコントロールユニット60との間に接続されている。スペクトラムアナライザ20とコントロールユニット60との間では、例えばRS232C、GPIB(General Purpose Interface Bus)、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)の各規格に基づいてデータの通信がなされる。
【0022】
スペクトラムアナライザ20は、プローブ10によって受けられた電磁波に基づく出力信号を入力して、予め設定された測定範囲の周波数帯域幅において電磁波の強度を測定し、コントロールユニット60に対して測定データを出力する。加えて、当該測定を完了した場合にはコントロールユニット60に対してその旨を通知する。
【0023】
撮像手段30は、測定対象物を撮影するスチルカメラ又はビデオカメラと、マーカ50を撮影するカメラとを備えている。本実施形態の電磁波データ管理システムでは、ビデオカメラは選択的に備えればよいが、マーカ撮影用カメラを備えることは必須である。マーカ撮影用カメラはいわゆる赤外線ビデオカメラとすることができる。撮像手段30は、コントロールユニット60に対してUSB接続がされ、かつ、コントロールユニット60からDC電源を確保している。なお、撮像手段30からの出力に対してノイズが重畳されることを回避するために、上記USB接続に代えて光通信などを採用してもよい。
【0024】
LEDランプ付きスイッチ40は、コントロールユニット60に対して、ディジタルI/O端子を通じて接続されている。LEDランプ付きスイッチ40は、コントロールユニット60に対して、撮像手段30から出力されているマーカ50の赤外線撮像データ(位置データ)をピックアップするように指示するためのスイッチである。
【0025】
LEDランプ付きスイッチ40は、このスイッチが押下されてから、その位置における予めスペクトラムアナライザ20に設定された測定範囲の周波数帯域幅における電磁波の強度を測定し終えると点灯するLEDランプを備えている。
【0026】
本実施形態では、電磁波の計測完了にスペクトラムアナライザ20からコントロールユニット60に対して既述の通知を出力しているので、コントロールユニット60はこの通知に基づいてからLEDランプ付きスイッチ40に対してLEDランプの点灯のための指示を送ればよい。
【0027】
なお、LEDランプ部分とスイッチ部分とは別個に設けてもよく、LEDランプに代えてスピーカやバイブレーション機能を設けて、視覚以外の他の五感を通じてプローブ10の操作者に電磁波の計測が完了の旨を報知してもよい。
【0028】
また、LEDランプ付きスイッチ40を設けることは必須ではない点に留意されたい。例えば、スペクトラムアナライザ20が非常に高スペックのものであれば、測定時間も短くて済むので、プローブ10の操作者が例えば秒速10cm〜20cm程度の速度で移動させることで電磁波の強度を空間上で連続的にスキャンすることが可能となる。
【0029】
マーカ50は、撮像手段30によって撮像されるものである。本実施形態では、撮像手段30におけるマーカ50の撮像用カメラとして赤外線ビデオカメラを用いていることから、マーカ50はプラスチック製などのように赤外線を吸収又は反射する材質のもので製造すればよい。マーカ50は、その大きさは特に限定されるものではないが、例えばピンポン玉程度の大きさとすればよい。
【0030】
本実施形態では、マーカ50は、プローブ10に対して固定的に取り付けることが必要である。したがって、プローブ10とスペクトラムアナライザ20とを接続するフレキシブルな配線などに取り付けてはならず、プローブ10の取付部(図示せず)など剛体に取り付ける必要がある。
【0031】
これにより、プローブ10から所定の位置に固定的に取り付けたマーカ50を撮像手段30によって撮像し、その撮像データからプローブ10とマーカ50との距離をオフセットすれば、プローブ10の位置データを取得できる。
【0032】
なお、プローブ10が指向性タイプである場合には、マーカ50を少なくとも3つ取り付けるとよい。こうすると、全てのマーカ50を撮像することで、空間における6軸の自由度による高精度な測定可能となるからである。
【0033】
コントロールユニット60は、プローブ10の位置を検出するためのマーカ50の赤外線撮像データ及び測定対象物の可視光線撮像データを入力する入力手段61と、スペクトラムアナライザ60から出力される計測データ等を入力する入力手段64と、LEDランプ付きスイッチ40との間の通信を行う通信手段65と、入力手段64によって入力された計測データ等をPC70に対して出力する出力手段63と、以下説明する各種処理動作を制御する制御手段62とを備える。
【0034】
すなわち、制御手段62は、主として、
通信手段65によってLEDランプ付きスイッチ40が押下されたこと示す信号が入力された場合に、撮像手段30から出力されるマーカ50の位置データをピックアップする、
入力手段61によって入力されたマーカ50の赤外線撮像データから、マーカ50とプローブ10とのオフセット量を減じることによってプローブ10の位置データを算出する、
算出した位置データと入力手段64によって入力される計測データとを紐付けた状態で、出力手段63を通じてPC70に出力する、
入力手段64によってスペクトラムアナライザ20からの電磁波の強度の測定完了通知が入力された場合に、通信手段65を通じてLEDランプ付きスイッチ40のLEDランプを点灯させる指示を出力する、
といった各処理を実行する。
【0035】
PC70は、コントロールユニット60から出力された各データを図示しない記録媒体に記録したり、当該各データに基づいて所定の画像処理を施して画像データを作成してディスプレイ80に出力したりするものである。
【0036】
ディスプレイ80は、PC70に接続されていて、PC70から出力される画像データが表示される表示媒体するものである。
【0037】
以上の構成によれば、システム全体としてみれば、プローブ10で受けた電磁波の計測データと、その計測時のプローブ10の空間上の位置データとを紐付けて保存することが可能となる。
【0038】
ただし、
図1に示す構成は一例であり、例えば、撮像手段10及びマーカ50を用いることは必須ではない。これらに代えて、GPSなどを用いてプローブ10の位置を検出することも可能である。したがって、コントロールユニット60には、プローブ10の位置データ自体が入力されるようにしてもよい。
【0039】
(動作の説明)
つぎに、本実施形態の電磁波データ管理システムの動作について、電磁波データ管理システムの使用方法とともに説明する。
【0040】
まず、プローブ10の操作者は、スペクトラムアナライザ20に、測定範囲となる周波数帯域幅を設定する。つづいて、電磁波データ管理システムが駆動している状態で把持したプローブ10を、電磁波データを計測したい場所に位置させる。それから、プローブ10の操作者がLEDランプ付きスイッチ40を押下すると、当該スイッチ40を押下した旨の通知が通信手段65を通じてコントロールユニット60に入力される。
【0041】
コントロールユニット60では、この通知を入力すると、制御手段62によって、撮像手段30から出力されるマーカ50の位置データがピックアップされる。換言すると、プローブ10の操作者がLEDランプ付きスイッチ40をほぼ押下したタイミングで、赤外線撮像データが固定されることになる。
【0042】
ここで、スペクトラムアナライザ20は、測定範囲となる周波数帯域幅の設定内容などに応じて電磁波の強度の計測時間が異なる。この測定時間は、周波数帯域幅の広狭、スペクトラムアナライザ20自体のスペックなどに依存するからである。
【0043】
そうすると、ある位置での電磁波の強度を測定したい場合には、所定の周波数帯域の全幅での計測が完了しないうちにプローブ10を移動させてしまうと、移動させた先の電磁波をセンシングしてしまうので、測定したい位置での周波数帯域の全幅での電磁波の強度を測定できないことになる。
【0044】
そこで、本実施形態では、電磁波の測定者、すなわちプローブ10の操作者に対して、プローブ10を移動させないことを促すために、プローブ10の操作者がLEDランプ付きスイッチ40を押下してから、LEDランプ付きスイッチ40のLEDランプが点灯するまで、プローブ10を移動させないようにしている。
【0045】
換言すると、プローブ10の操作者がLEDランプ付きスイッチ40を押下してから、LEDランプ付きスイッチ40のLEDランプが点灯するまでの時間は、スペクトラムアナライザ20に対する設定内容等に従って決定される。
【0046】
なお、厳密な意味では、プローブ10の操作者の手ぶれによってプローブ10の位置が変わってしまうが、操作者がプローブ10を意図的に移動させようとしなければ、手ぶれ分は計測誤差と同視してよい。
【0047】
また、制御手段62は、入力手段61によって入力されたマーカ50の赤外線撮像データと既述のオフセット量とに基づいてプローブ10の位置データを算出する。その後、制御手段62は、入力手段64を通じてスペクトラムアナライザ20からの電磁波の強度の測定完了通知が入力された場合に、通信手段65を通じてLEDランプ付きスイッチ40のLEDランプを点灯させる指示を出力する。
【0048】
この結果、プローブ10の操作者は、プローブ10を移動させて、次の測定位置で再度LEDランプ付きスイッチ40を押下すればよい。
【0049】
一方、コントロールユニット60では、算出済みの位置データと入力手段64によって入力されたる計測データとを紐付けた状態で、出力手段63を通じてPC70に出力する。
【0050】
PC70では、コントロールユニット60から出力された各データを図示しない記録媒体に記録したり、当該各データに基づいて所定の画像処理を施して計測データと位置データとが一体的な画像データを作成する。PC70は、この画像データをディスプレイ80に出力することで、そこに表示させることもできる。
【0051】
本実施形態では、コントロールユニット60において、主となる動作を実現する例を説明したが、コントロールユニット60を設けることなく、既述のコントロールユニット60の一部又は全ての動作をPC70で実現することも可能である。
【0052】
例えば、コントロールユニット60を設けることなく、既述のコントロールユニット60の動作をPC70で実現するためには、プローブ10で受けた電磁波の計測データを入力するステップと、プローブ10に付帯するマーカ50の位置を検出する位置センサから出力される空間上の位置データを入力するステップと、入力した位置データと既述のオフセット量に基づいてプローブ10の位置を算出するステップと、前記計測データと前記位置データとを紐付けて保存するステップとをPC70に実行させるプログラムを、PC70にインストールすればよい。
【0053】
図2は、
図1に示すプローブ10であるところの電磁界センサ100の模式的な内部構成図である。
図2(a)には電磁界センサ100を構成するコイル群の平面図を示し、
図2(b)にはコイル群の側面図を示している。
【0054】
まず、電磁界センサ100の概要について説明する。電磁界センサ100は、電磁界の向き及び強度を計測することができ、特に、本実施形態では、電磁界の向きを特定できるようにするために、各々の軸心が相互に直交するXYZ方向に配置されている複数のコイルと、各コイルによって誘起される電磁界に基づく電圧を増幅するアンプとを備える。
【0055】
電磁界センサ100の外形は、特に限定されるものではなく、ドーム状、円柱状、立方体、直方体など適宜選択すればよい。電磁界センサ100の外観寸法の一例を示すと、後述するコイルのサイズからすれば、φ40mm×30mm、30mm×30mm×30mm或いは20mm×30mm×40mm内に収まるような大きさとすることができる。
【0056】
もっとも、電磁界の測定対象によっては、このサイズまで小型化することは不要であろうことから、測定対象のサイズに応じてコイルサイズを決定し、それに応じて電磁界センサ100自体の大きさも選択すればよい。したがって、電磁界センサ100自体の大きさは、例えば、上記サイズの1.5倍〜3倍程度の大きさとしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、電磁界センサ100に設けられているアンプとしては、内部アンプゲインが20dB程度であることが好ましい。また、電磁界センサ100は、10Hz〜1GHzの周波数帯域をカバーできるようにするとよい。このための条件については後述する。
【0058】
図2に示すように、電磁界センサ100は、図示しない基板上に設けられているスペーサ110を備える。この基板及びスペーサ110は、発泡体、樹脂材、木材などのように、電磁界の強度を正確に測定することができる素材とすべきであり、例えば、発泡スチロールを用いることができる。
【0059】
図2(a)には、直方体状の外形で中央部分が矩形状に開口されているスペーサ110を示しているが、スペーサ110の形状は、これに限定されるものではなく、例えば、円筒状の外形としてもよい。
【0060】
コイル群は、軸心がX方向、Y方向、Z方向のいずれかに沿う態様で配置されているコイルを備える。なお、X方向、Y方向、Z方向とは、相互に直交しているという相対的なものであり、X軸等の絶対的なものがあるわけではない点には留意されたい。
【0061】
スペーサ110は、コイルZ
1,Z
2の長さ方向の中心に、コイルX
1,X
2等の軸心が直交する条件としている。したがって、例えば、コイルX
1等が相対的に
図2に示す場合に比して短い場合には、必ずしもスペーサ110を設ける必要はない。
【0062】
また、スペーサ110を設けなくて済むように、コイル群のレイアウトを変更することも可能である。具体的には、例えば、立方体に組んだ基板を用意し、各基板の垂直方向にコイルの軸心が沿うように配置することも一法である。
【0063】
スペーサ110上には、それぞれ、軸心がX方向となる態様でコイルX
1,X
2が、軸心がY方向となる態様でコイルY
1,Y
2とが栽置される。また、スペーサ110の開口部分には、軸心がZ方向となる態様でコイルZ
1,Z
2が栽置される。
【0064】
なお、
図2には、コイルZ
1,Z
2が矩形状の開口部分に対角上に栽置されている例を示しているが、載置条件はこれに限定されず、コイルZ
1,Z
2は対称性を持たせる条件で栽置させればよい。
【0065】
また、コイル群から出力される電圧は、既述のように、各コイルに接続されるアンプによって増幅されるが、アンプは、例えば、図示しない基板の下側に、アンプ用基板などを用意して、この上に設ければよい。
【0066】
図3は、
図2に示す電磁界センサ100の電気的接続の説明図である。ここでは、コイルX
1,X
2についての電気的接続関係を示しているが、コイルY
1,Y
2及びコイルZ
1,Z
2の電気的接続関係も、これと同様としている。
【0067】
図3に示すように、例えば、コイルX
1の巻き始め側は、既述のアンプ(AMP)120の第1の入力端に対して電線130を通じて接続されている。また、コイルX
1の巻き終り側は、コイルX
2の巻き始め側に直列接続されている。さらに、コイルX
2の巻き終り側が既述のアンプ120の第2の入力端に対して電線140を通じて接続されている。コイルX
1,X
2等は直列接続されているので、これらに誘起される電磁界のX成分に基づく電圧は合成される。
【0068】
アンプ120の出力端及びコイルY
1,Y
2,Z
1,Z
2のアンプの出力端は、ケーブルを通じてそれぞれにスペクトラムアナライザ20に接続されている。
【0069】
ここで、アンプ120は、どのようなタイプのものを用いてもよいが、広い周波数帯域において、高利得を得られるようにするとよい。したがって、負帰還多段アンプを採用し、一段あたりの利得を下げ、その分、周波数帯域を広げるようにするとよい。
【0070】
図4は、
図2に示すコイルX
1の説明図である。
図4(a)にはコイルを構成するフェライトコアを示し、
図4(b)には
図4(a)に示したフェライトコアに対して電線を巻いた様子を示している。なお、コイルX
1以外の他のコイルY
1,Z
1等も、
図4に示すコイルX
1と同様の構成としている。
【0071】
コイルX
1は、例えば、直径φ14mm程度、高さが12mm程度という大きさとしている。もっとも、このサイズは例示であり、これに対して1.5〜3倍程度の大きさとしてもよいし、これに対して小さくしてもよい。ただし、コイルX
1は、空間分解能を高めようとしてあまりに小さくすると、電磁界の受信感度が小さくなるため、小さくするといっても、せいぜい上記サイズの半分程度までに留めておくことがよい。
【0072】
コイルX
1は、上記のようにフェライトコアとしているが、詳しくは、例えば、マンガンと亜鉛とを含むフェライトコアを採用することができる。具体的には、透磁率に着目すれば「2G4」、「2H6」と称されるフェライト材料を用いると、100kHzまでの超低周波領域に好適に用いることができる。
【0073】
換言すると、高周波領域における電磁界強度を計測したい場合には、「7B2」と称されるフェライト材料など、ニッケルと亜鉛とを含むフェライトコアを採用するとよい。もっとも、係る場合には、アンプ120とスペクトラムアナライザ400とを高周波用のものに変更するとよい。
【0074】
コイルX
1は、電磁界アンテナとして機能することになるので、その大きさ、形状の決定は重要である。一般的には、アンテナの開口部が大きいほど受信レベルは大きくなるが、その一方で電磁界センサ100の大きさの制限もある。
【0075】
本実施形態では、フェライト材に巻くコイルの巻き数をある程度確保してインダクタンスを大きくするようにしている。このため、
図4に示すように、コイルの巻き領域を一般的なフェライトコイルに比して大きく確保している。
【0076】
コイルX
1を構成する電線は、例えば、低周波の電磁界センサに好適に用いることができる、2種ポリウレタン被覆銅線とすることができる。このような導線を用いる場合には、フェライト材に巻くコイルの巻き数をある程度確保するためには、0.05φ〜0.16φ程度の線径のものを選択するとよい。
【0077】
電線を機械巻きする場合には、0.05φ〜0.09φ程度のものを採用するとよい。一方、人手によって巻く場合には、0.10φ〜0.16φ程度のものを採用するとよい。何れの巻き方を採用するかは、各々、メリットとデメリットとがあるため、電磁界の計測対象或いは計測感度などに応じて決定すればよい。
【0078】
なお、人手巻きの場合には、コイルX
1の直流抵抗の増加を防止でき、電磁界の受信感度を高められるというメリットが挙げられる。一方、機械巻きの場合には、綿密な巻き方ができ、巻きムラが生じにくいというメリットがある。
【0079】
図5は、
図3に示すコイル群の配置例を示す図である。
図5に示す配置例は、
図2に示す態様に似通っているが、コイルX
1等の形状に起因して、スペーサ110が不要な場合を示している。
図5に示す態様で各コイルを配置すると、コイル群全体としてみれば、半球状に近い受信指向特性を有することになる。
【0080】
ここで、コイルX
1等は平衡接続で使用されるが、アンプ120等の入力は不平衡接続とされる。この相違につき整合を図るするために、バランであるところの「平衡:不平衡トランス」といった信号変換素子をコイルX
1等とアンプ120等との間に備えることも一法である。
【0081】
ただ、上記トランスには周波数振幅特性があり、広い周波数を伝達する場合には不向きであるので、信号変換素子に代えて同様の主機能である信号変換ICを用いるとよい。これにより、コイルX
1等で誘起される電圧を、損失なく不平衡に変換してアンプ120等に入力することができる。