特許第6223663号(P6223663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223663
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】自動二輪車用のブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/173 20060101AFI20171023BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20171023BHJP
   B62L 3/08 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B60T8/173
   B60T8/1761
   B62L3/08
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-162103(P2012-162103)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-19374(P2014-19374A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊作
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−030546(JP,A)
【文献】 特開平09−011882(JP,A)
【文献】 特開平08−201070(JP,A)
【文献】 特表平10−503446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 − 8/96
B62L 3/00 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車のブレーキ装置を制御するための自動二輪車用のブレーキ制御装置であって、
前輪の車輪速度を検知するための前輪速度センサと、
後輪の車輪速度を検知するための後輪速度センサと、
前記前輪速度センサからの車輪速度及び/又は前記後輪速度センサからの車輪速度に基づいて車輪ロックを防止するようブレーキ装置を作動させるABS制御装置と
前記自動二輪車のライダーが車体停止する意志を検知するための車体停止検知装置と、
前記車体停止検知装置において前記自動二輪車のライダーが車体停止する意志が検知され、かつ、前記前輪速度センサからの車輪速度及び前記後輪速度センサから車輪速度のうちの、駆動輪である車輪の車輪速度が検知され、かつ、前記前輪速度センサからの車輪速度及び前記後輪速度センサからの車輪速度のうちの、非駆動輪である車輪の車輪速度が検知され状態において、前記ABS制御装置の作動を制限するABS作動制限装置と、を備え、
前記車体停止検知装置は、前輪及び輪のうちの非駆動輪である車輪用のホイールシリンダに供給されるブレーキ液を測定するためのセンサを備え、該センサの出力に基づいて前記自動二輪車のライダーが車体を停止する意志を検知す
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記ABS制御装置は、前記前輪速度センサ及び前記後輪速センサからの入力に基づいて推定車体速度を求め、前記推定車体速度ならびに前記車輪速度に基づいて車輪ロックを防止するようにした
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記ABS作動制限装置が前記ABS制御装置の作動を制限するとき、前記ABS作動制限装置は、前記推定車体速度をゼロ又は最低速度になるよう前記ABS制御装置を制御する
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキ制御装置において、
前記車体停止検知装置が故障したと判断する故障診断装置をさらに備え、
前記故障診断装置は、前記ABS作動制限装置が前記ABS制御装置の作動を制限する必要があると判断した場合に、前記前輪速度センサからの車輪速度前記後輪速度センサからの車輪速度の比を演算して、当該車輪速度の比が所定の速度比内にある第1の条件を満たしたとき、前記車体停止検知装置が故障したと判断し、
前記故障診断装置が、前記車体停止検知装置が故障したと判断したとき、当該故障診断装置は、前記車体停止検知装置の検知を無効とする
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
前記所定の速度比は、1に近い値である
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1の条件を満たさず、かつ、前記前輪速度センサからの車輪速度前記後輪速度センサからの車輪速度の差を演算して当該車輪速度の差が所定の車輪速度差内にある第2の条件を満たしたとき、前記車体停止検知装置が故障したと判断し、
前記故障診断装置が、前記車体停止検知装置が故障したと判断したとき、当該故障診断装置は、前記車体停止検知装置の検知を無効とする
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置において、
前記故障診断装置は、さらに、前記第1の条件が、所定時間の間継続して満たされた場合に、前記車体停止検知装置が故障したと判断する
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載のブレーキ制御装置において、
前記故障診断装置は、さらに、前記第2の条件が、所定時間の間継続して満たされた場合に、前記車体停止検知装置が故障したと判断する
ことを特徴とする自動二輪車用のブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用のブレーキ制御装置に関し、より詳細には、車輪ロックを防止するABS制御装置を備えた自動二輪車用のブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動二輪車においても、より安定した制動を行うために、車輪ロックを防止するABS制御装置を備えたものが増えている。このようなABS制御装置では、例えば、前後輪のうち低い側の車輪速度に推定車体速度を追従させ、推定車体速度と他方の車輪速度とを比較してスリップ率を演算しスリップ率が所定値以上のとき車輪がロックしていると判断してABS制御を行っている。
【0003】
しかしながら、自動二輪車においては、車輪センサがエンジンの近くに配置されるなど自動車と異なる特有の構造を備えているため、エンジンの振動により車輪センサがノイズの影響を受けることがある。このようなノイズの影響による誤作動防止のために、自動二輪車用のABS制御装置では、一般的に、ノイズモニターを設け、車輪加速度が一定以上の値を示すとノイズと判断してABS制御を制限又は禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−503446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、ノイズモニターがあらゆる種類のノイズを判断することは困難であり、ノイズと判断できず車輪センサがノイズを拾ってしまった場合に、そのノイズによる入力信号に基づいて、不必要な又は誤ったABS制御が行われ、車体を十分に安定的に制御できない虞があった。特に、自動二輪車が、バーンアウト(前輪ブレーキを掛けた状態で、アクセルを開けて後輪を空転させる操作)のような特殊な状態で停止していた場合に、不必要な又は誤ったABS制御が行われると、ブレーキ力が弱くなり、ライダーの意志に反して車体が急発進してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みなされたもので、車輪センサがノイズを拾った場合でも、不必要な又は誤ったABS制御が行われることがないようにした自動二輪車用のブレーキ制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたもので、
自動二輪車のブレーキ装置を制御するための自動二輪車用のブレーキ制御装置であって、
前輪の速度を検知するための前輪速度センサと、
後輪の速度を検知するための後輪速度センサと、
前輪速度センサからの前輪速度及び/又は後輪速度センサからの後輪速度に基づいて車輪ロックを防止するようブレーキ装置を作動させるABS制御装置と
自動二輪車の車体の停止状態を検知するための車体停止検知装置と、
前記車体停止検知装置に基づいて自動二輪車の車体の停止状態が検知された状態で、前記前輪速度センサ及び後輪速度センサの少なくとも一方から車輪速度が検知されたとき、前記ABS制御装置の作動を制限するABS作動制限装置とを備えた自動二輪車用のブレーキ制御装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体停止検知装置に基づいて自動二輪車の車体の停止状態が検知された状態で、前輪速度センサ及び後輪速度センサの少なくとも一方から車輪速度が検知されたとき、ABS制御装置の作動を制限するようにしたので、ライダーの意志に反して車体が移動することがなくなり、車体のコントロールをより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、自動二輪車用のブレーキ用液圧回路に用いられる本発明の一実施例に係るブレーキ制御装置のブロック図を示している。
図2図2は、従来技術と、本発明の第1実施形態とを比較して説明するためのタイミングチャートを示している。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る自動二輪車のブレーキ制御方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る自動二輪車のブレーキ制御方法を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、本発明の第2実施形態を説明するためのタイミングチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る自動二輪車用のブレーキ制御装置を、以下、図1乃至図3を参照しつつ説明する。なお、各図において同一要素には同一符号が付されている。
自動二輪車用のブレーキ制御装置は、自動二輪車のブレーキ装置を制御するためのものであり、自動二輪車のブレーキ装置は、図1において、ブレーキ用液圧回路100として示されている。
【0011】
ブレーキ用液圧回路100は、前輪に対する制動力を発生させるために、前輪用マスタシリンダ(Front M/C)101と、前輪用リザーバタンク102と、前輪用ホイールシリンダ(Front W/C)103とを備えている。また、ブレーキ用液圧回路100は、後輪に対する制動力を発生させるために、後輪用マスタシリンダ(Rear M/C)104と、後輪用リザーバタンク105と、後輪用ホイールシリンダ(Rear W/C)106とを備えている。さらに、ブレーキ用液圧回路100は、前輪に対する制動力と後輪に対する制動力とを制御するためのブレーキ液圧制御装置10を備えている。
【0012】
ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用及び後輪用マスタシリンダ101、104と、前輪用及び後輪用ホイールシリンダ103、106との間に配設されており、前輪用EV弁1と、前輪用AV弁2と、後輪用EV弁3と、後輪用AV弁4と、ブレーキ液を加圧する一対のポンプエレメント5、6と、ポンプエレメント5、6のピストンを駆動するモータ7と、ブレーキ液を受け入れるリザーバ9、12などを備えている。
【0013】
ブレーキ制御装置は、ブレーキ液圧を検出する圧力センサ13と、前輪の速度を検知するための前輪速度センサ300と、後輪の速度を検知するための後輪速度センサ302と、これらのセンサからの信号に基づいて、ブレーキ液圧制御装置10の弁1〜4等を駆動制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0014】
電子制御ユニット(ECU)200は、ブレーキ液圧制御装置10に指示を与え、ブレーキ液圧制御装置10は、電子制御ユニット(ECU)200からの指示を受けて、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、及び/又は、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、ABS制御を行うことができるようになっている。
【0015】
前輪用マスタシリンダ101には、第1配管107を介して、前輪用リザーバタンク102が接続されている。また、前輪用マスタシリンダ101には、第2配管108、ブレーキ液圧制御装置10、及び第3配管109を介して、前輪用ホイールシリンダ103が接続されている。
【0016】
前輪用マスタシリンダ101は、例えば、車両のハンドルレバー110により駆動されると、ブレーキ液圧制御装置10を介して、前輪用ホイールシリンダ103に対するブレーキ液圧を発生させる。また、前輪用ホイールシリンダ103は、供給されるブレーキ液圧に応じて前輪用ディスクブレーキ装置111を駆動し、前輪を制動する。
【0017】
後輪用マスタシリンダ104には、第4配管112を介して後輪用リザーバタンク105が接続される。また、後輪用マスタシリンダ104には、第5配管113、ブレーキ液制御装置10及び第6配管114を介して、後輪用ホイールシリンダ106が接続される。
【0018】
後輪用マスタシリンダ104は、例えば、車両のフットペダル115により駆動されると、ブレーキ液圧制御装置10を介して、後輪用ホイールシリンダ106に対するブレーキ液圧を発生させる。また、後輪用ホイールシリンダ106は、供給されるブレーキ液圧に応じて後輪用ディスクブレーキ装置116を駆動し、後輪を制動する。
【0019】
ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用EV弁(込め弁)1と、前輪用AV弁(弛め弁)2と、後輪用EV弁3と、後輪用AV弁4と、前輪用ポンプエレメント5と、後輪用ポンプエレメント6と、モータ7とを有している。
【0020】
前輪用EVおよびAV弁1、2と、後輪用EVおよびAV弁3、4とは、例えば、周知の2位置型電磁弁である。また、前輪用ポンプエレメント5及び後輪用ポンプエレメント6は、モータ7により駆動される構成となっている。
【0021】
各弁1、2、3、4及びモータ7は、電子制御ユニット200に接続されており、この電子制御ユニット200からの制御信号に基づいて、駆動制御される。
ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液が流動するための前輪用流路11と、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液が流動するための後輪用流路21と、を含む。
【0022】
前輪用流路11において、第1流路11aの一端側が、第2配管108に接続されており、第1流路11aの他端側が前輪用EV弁1に接続される。第2流路11bの一端側が前輪用EV弁1に接続されており、第2流路11bの他端側が第3配管109に接続される。第1流路11aには第3流路11cの一端側が接続されており、第3流路11cの他端側が前輪用ポンプエレメント5の吐出側に接続される。第4流路11dの一端側が前輪用ポンプエレメント5の吸引側に接続されており、第4流路11dの他端側が前輪用AV弁2に接続される。前輪用ポンプエレメント5は、第4流路11d側から第3流路11c側へ、すなわち、前輪用ホイールシリンダ103側から前輪用マスタシリンダ101側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路11dには、ブレーキ液の圧力を減圧するリザーバ9が接続される。第2流路11bには第5流路11eの一端側が接続されており、第5流路11eの他端が前輪用AV弁2に接続される。第2流路11bには、前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13が設けられている。このように、圧力センサ13を設けることにより、より正確なブレーキ液の圧力制御を行うことが可能となる。
【0023】
一方、後輪用流路21において、上述した前輪用流路11と略同様に、第1流路21aの一端側が第2配管113に接続されており、第1流路21aの他端側が後輪用EV弁3に接続される。第2流路21bの一端側が後輪用EV弁3に接続されており、第2流路21bの他端側が第3配管114に接続される。第1流路21aには、第3流路21cの一
端が接続されており、第3流路21cの他端が後輪用ポンプエレメント6の吐出側に接続される。第4流路21dの一端側が後輪用ポンプエレメント6の吸引側に接続されており、第4流路21dの他端側が後輪用AV弁4に接続される。後輪用ポンプエレメント6は、第4流路21d側から第3流路21c側へ、すなわち、後輪用ホイールシリンダ106側から後輪用マスタシリンダ104側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路21dには、リザーバ12が接続される。第2流路21bには、第5流路21eの一端が接続されており、第5流路21eの他端が後輪用AV弁4に接続される。
【0024】
ブレーキ制御装置は、上述したように、ブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13と、前輪の速度を検知するための前輪速度センサ300と、後輪の速度を検知するための後輪速度センサ302と、ブレーキ液圧制御装置10を制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0025】
本実施形態においては、電子制御ユニット(ECU)200が、前輪速度センサからの前輪速度及び/又は後輪速度センサからの後輪速度に基づいて車輪ロックを防止するようブレーキ液圧制御装置10を制御してABSを作動させるABS制御装置を構成している。
【0026】
電子制御ユニット(ECU)200には、記憶装置210が接続されており、記憶装置210に記憶されたプログラム(図3参照)に基づいて、ブレーキ液圧制御装置10に制御信号を送って、ABSなどの制動アルゴリズムを実行している。
【0027】
電子制御ユニット(ECU)200は、前輪速度センサ300及び/又は後輪速度センサ302からの入力信号に基づいて推定車体速度を求め、この推定車体速度ならびに前輪及び/又は後輪の車輪速度に基づいて車輪ロックを防止している。なお、推定車体速度は、前輪速度センサ300及び/又は後輪速度センサ302からの入力信号に基づいて決定する必要は必ずしもなく、GPSセンサを車体に配置して、このようなセンサから推定車体速度を求めるようにしてもよい。
【0028】
本実施形態においては、前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13が、自動二輪車の車体の停止状態を検知するための車体停止検知装置を構成しており、圧力センサ13で検出された圧力信号は電子制御ユニット(ECU)200に送られる。電子制御ユニット(ECU)200は、推定車体速度がゼロ(0)又は一定速度以下のときに、圧力センサ13から所定以上のブレーキ液圧が検出された場合、車体が停止状態にあると判断し、その後、検出されたブレーキ液圧が所定圧力以下に下がった場合、停止状態が解除されたと判断する。
【0029】
本実施形態においては、電子制御ユニット(ECU)200が、車体停止検知装置に基づいて自動二輪車の車体の停止状態が検知された状態で、前輪速度センサ及び後輪速度センサの少なくとも一方から車輪速度が検知されたとき、ABS制御装置の作動を制限するABS作動制限装置を構成している。具体的には、電子制御ユニット(ECU)200は、
車体が停止状態にあると判断している間に、前輪速度センサ300及び/又は後輪速度センサ302から信号を受信したとき、当該信号をノイズと判断し、ABS制御を制限又は禁止する。ABS制御を制限又は禁止するために、推定車体速度をゼロ(0)又は低速度に設定してもよい。ここで、低速度は、ABS制御が行われない速度帯とすることが好ましい。
【0030】
本実施形態においては、ブレーキ液圧を測定するセンサとして、前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出する前輪用の圧力センサ13を用いたが、後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液の圧力を検出する後輪用の圧力センサを設けて、この後輪用の圧力センサの圧力に基づいて、自動二輪車の車体の停止状態を検知しても良い。もっとも、前輪用の圧力センサ13と後輪用の圧力センサとの両方からの信号を用いて、自動二輪車の車体の停止状態を検知しても良い。
【0031】
また、前輪用ホイールシリンダ103、後輪用ホイールシリンダ106のブレーキ液圧を測定する必要は必ずしもなく、前輪用マスタシリンダ101や後輪用マスタシリンダ104のブレーキ液圧を測定して、自動二輪車の車体の停止状態を検知しても良い。もちろん、前輪用ホイールシリンダ103、後輪用ホイールシリンダ106、前輪用マスタシリンダ101、及び後輪用マスタシリンダ104の4つのブレーキ液圧を測定して、これらの圧力状態から自動二輪車の車体の停止状態を検知しても良い。このように、測定すべきブレーキ液圧は、マスタシリンダの液圧でもよいし、ホイールシリンダ(キャリパー)の液圧でも良い。もちろん、その両方を使用しても良い。また、前輪ブレーキ系統の液圧でも良いし、後輪ブレーキ系統の液圧でも良い。もちろん、その両方を使用しても良い。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、車体が停止状態にあるときに、ノイズ信号が入力された場合でも、不要なABS制御を防ぐことができる。したがって、ライダーは、バーンアウト(前輪ブレーキを掛けた状態で、アクセルを開けて後輪を空転させる操作)のような特殊な運転を安心して行うことができる。
【0033】
次に上記実施形態の作動を図2に基づいて説明する。
まず、バーンアウトでノイズが発生した場合に、上述したABSの作動を制限しないとどのような作動となるかを説明する。
【0034】
バーンアウトを行う場合、ライダーは、まず、前輪にブレーキをかける。このため、前輪のブレーキ液圧300が、図2(b)に示されるように上昇し、図2(c)に示されるように車体停止が検知される。次いで、ライダーが、アクセルを開けて後輪が空転を始めると、後輪の車速304が上昇を始める。ここで、前輪速度センサ300にノイズが発生すると、図2(a)の点線306内に示されたように、パルス状の信号308が前輪速度として検出されることになる。それに伴い、推定車体速度310は、両車輪速度のうち低い方である前輪の車輪速度308に追従するように演算される。このように、車体が停止状態にもかかわらず、推定車体速度が演算されることとなる。
【0035】
ノイズ308がなくなると、推定車体速度310もこれに追従して下降する。しかしながら、前輪速度センサ300からの信号にフィルタリング処理による信号遅延が起きるため、パルス状のノイズ信号308とは異なり、推定車体速度310は徐々に下がり始める。このように、前輪の車輪速度308と推定車体速度310との間に差が生じ、ブレーキを掛けた車輪に不要なABS制御の介入が開始され、丸で囲った一点鎖線312の領域において、ブレーキを掛けているにもかかわらず、車体が前に進んでいくことになる。
【0036】
次に、上記本実施形態のABS作動を制限した場合の作動を説明する。
まず、電子制御ユニット(ECU)200は、圧力センサ13が正常か否かを判断する(ステップ400)。これは圧力センサに設けられたモニターからの信号に基づいて断線などをチェックするものである。ここで、圧力センサが正常でない場合、通常のようにABS制御を許可し(ステップ402)、推定車体速度を演算する(ステップ404)。ステップ400で圧力センサ13が正常であると判断された場合、検出された圧力が所定の圧力閾値Para1(ABS制御を禁止又は制限すべき圧力値)よりも大きいか否かを判断する(ステップ406)。このように、検出された圧力が、この圧力閾値Para1より大きいか否かを判断することにより、車体が停止しているか、又は走行状態から停止状態に移行している可能性があることを判断できるようになっている。圧力閾値Para1より低い場合、検出された圧力が、圧力閾値Para1より低い値に設定された圧力閾値Para2と比較される(ステップ408)。ここで、圧力閾値Para2よりも大きいと判断された場合、検出された圧力が、圧力閾値Para1と圧力閾値Para2との間の中間領域にあると判断され、既存の制御状態を維持する(ステップ410)。ステップ408において、検出された圧力が、圧力閾値Para2よりも小さいと判断された場合、ライダーが車体を停止したいとの意志(ライダーが、ハンドルレバー110を軽く握った状態など)がないと判断して、ABS制御を許可する(ステップ402)。
【0037】
このように、検出された圧力が圧力閾値Para1より大きいか否かを判断することにより、ライダーがハンドルレバー110を強く握り、車両の停止状態を維持しているか、又は車両を停止させる状態に移行している可能性があることを判断する。
【0038】
ステップ406において、検出された圧力が、所定の圧力閾値Para1よりも大きいと判断された場合、推定車速度が所定の速度閾値Para3よりも低いか否か判断される(ステップ412)。このステップにより車両が停止状態にあり、かつライダーが車両の停止状態を維持しようとしているかどうかを確実に判断することができる。推定車速度は、他のサブルーチンにおいて事前に求められている。具体的には、前輪速度センサ300で検出された前輪速度と、後輪速度センサ302で検出された後輪速度とを比較し、車両の加減速の状態や路面の状態を判断して高い方又は低い方のいずれかの車輪速度が推定車速度となるように演算される。ステップ412において、推定車速度が所定の速度閾値Para3よりも高い場合、ABS制御を許可する(ステップ402)。これは、ライダーが所定速度以上で走行中にハンドルレバー110を強く握り確実に停止することを望んでいる場合にABS制御を行うためである。ステップ412において、推定車体速度が所定の速度閾値Para3よりも低い場合、ライダーが車両の停止中でさらにハンドルレバー110を強く握り車両の停止状態を維持しようとしていると判断できるため、電子制御ユニット(ECU)200は、ABS制御装置の作動を制限する必要があると判断し、ステップ414に進み、ABS制御を禁止または制限する。このとき、推定車体速度が、ゼロまたは低速度値に設定される(ステップ416)。ここで、低速度値は、ABS制御が行われない速度帯となる。
【0039】
本実施形態実施形態において、バーンアウト状態でノイズが発生した場合でも、図2のXY(Xはブレーキ圧力がPara1以上の間にノイズにより前輪速度308が検出されたとき。Yは、ブレーキ圧力がPara2よりも下がったとき。)の間、推定車体速度312がゼロとなり、不要なABS制御が防止される。一方、ブレーキ液圧が下がり(図2のY以降)、車体の停止状態がリセットされると、ABS制御が許可される状態となり、推定車体速度312は低い車輪速度(図2では前輪速度308)に追従することになる。これは、バーンアウト状態から発進する場合、非駆動輪である前輪の方が駆動輪である後輪よりも車輪速度が低いため。図2のY以降、推定車体速度310は前輪速度308に追従する。
【0040】
なお、上記実施形態において、車体停止検知装置として圧力センサ13を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、自動二輪車のブレーキ装置が制動中であることを示すブレーキライトスイッチ、自動二輪車の存在位置を検出するGPSセンサ、加速度センサ、ヨーレイトセンサ、第三の車輪速センサ、レーザーセンサー、レーダー、及びカメラなどを用いても良い。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係る自動二輪車用のブレーキ制御装置を、以下、図1図3乃至図5を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態の自動二輪車用のブレーキ制御装置と同様な構成には同符号を用いて重複する説明は適宜省略する。
【0042】
第1の実施形態実施においては、車体の停止状態を検出するために一例としてブレーキ液圧を測定する圧力センサ13を用いたが、第2の実施形態実施においては、この圧力センサが圧力値を誤検出等した場合の対応を考慮したものである。図3のステップ400において圧力センサが正常か否かの判断がされているが、正常と判断された後であっても、車両の振動等により圧力センサが圧力値を誤検出する場合があるためである。
【0043】
圧力センサ13が誤検出して間違った値を示した場合、車体の停止状態が検出されたままリセットできず、ABS制御を行うことができなくなる。このため、第2の実施形態においては、車輪速度の比または差、あるいはその両方の値を比較し、比が1.0に十分近く、または差が十分に小さく、両車輪速度がこの条件を安定して一定時間満たせば、正常な走行状態と判断し、車体停止状態の検出をリセットする。これにより、ブレーキ液圧を測定するセンサが間違った値を示した場合でも、適切なABS制御を行うことができる。
【0044】
第2実施形態に係る自動二輪車用のブレーキ制御装置は、電子制御ユニット(ECU)200とこれに接続された記憶装置210が、車体停止検知装置が故障したと判断する故障診断装置を構成している。
【0045】
電子制御ユニット(ECU)200は、図3に示したステップ412において、ABS制御装置の作動を制限する必要があると判断した場合に、ステップ414に進む前に、図3の点線で示したステップ500を実行する。ステップ500では、前輪と後輪との車輪速度の比を演算して、当該車輪速度の比が1.0に十分近い第1の条件、前輪と後輪の車輪速度の差を演算して当該車輪速度の差が十分に小さい第2の条件、及び前記車輪速度の比が1.0に十分近く且つ前記車輪速度の差が十分に小さい第3の条件のうちの少なくとも1つの条件を満たしたとき、電子制御ユニット(ECU)200は、車体停止検知装置としての圧力センサ13が圧力値を誤検出したと判断し、圧力センサ13の検知を無効(リセット)とする。
【0046】
ステップ500の具体例が、図4に示されている。まず、車輪速度センサ300、302が正常か否か検知する(ステップ502)。これは、車輪速度センサに設けられたモニターからの信号に基づいて断線などがチェックされる。ステップ502で車輪速度センサが異常であると判断された場合、タイマーにゼロが設定され(ステップ504)、正常な走行はできないと判断して(ステップ506)、ABS制御を禁止又は制限する(ステップ414)。
【0047】
ステップ502において、車輪速度センサが正常と判断された場合、前輪の車輪車速が停止速度0より大きいか否か判断する(ステップ508)。前輪に速度があると判断された場合、次いで、後輪の車輪車速も停止速度0より大きいか否か判断する(ステップ510)。このように前輪からも後輪からも速度が検出された場合、後輪の車輪速度と前輪の車輪速度の比、例えば、後輪の車輪速度/前輪の車軸速度が、正常な車輪速度比の下限値と正常な車輪速度比の上限値と間にあるか否か判断される(ステップ512、514)。正常な車輪速度比の下限値と正常な車輪速度比の上限値は、実験や経験などにより事前に求めておき(一般的には、1に近い値となる)、記憶装置210に記憶されている。これらの下限及び上限値は車両の大きさや重量によって異なる値であるが、例えば1000ccクラスの自動二輪車であれば、下限値を0.9、上限値を1.1とすることができる。車輪速度の比が、正常な車輪速度比の下限値と正常な車輪速度比の上限値と間、すなわち、所定値の間にある状態が、所定時間続いた否かを判断し(ステップ516、518)、所定時間を超えた場合、車輪速度センサからの信号が正常であり、圧力センサ13からの信号は誤信号であると判断して、正常な走行状態にあると判断し(ステップ520)、ABS制御が許可される(ステップ402)。
【0048】
一方、車輪速度の比が、所定値の間にない場合でも、低速の場合は正常走行と考えられる場合があるので、前輪と後輪との間の車輪速度の差が、正常な車輪速度差内にあるかないかを判断する(ステップ522)。例えば、前輪の車輪速度が0.1km/hあり、後輪の車輪速度が0.2km/hあった場合、車輪速度比は「2」となって異常値となるが、車輪速度差は0.1km/hであり正常値である。低速度走行している場合はこのような速度差になることがあるので、単に速度比だけではなく速度差も判断することにより、車輪速度センサからの信号に基づいてより正確に正常走行か否かの判断を行うことができる。なお、正常な車輪速度差は実験値あるいは経験値で事前に求め記憶装置210に記憶されている。正常な車輪速度差は車両の大きさや重量によって異なる値であるが、例えば1000ccクラスの自動二輪車の場合、0.5m/s〜1.0m/sの間とすることができる。
【0049】
ステップ522において、前輪と後輪との間の車輪速度の差が、正常な車輪速度差内にあると判断された場合、圧力センサ13からの信号は誤信号であると判断して、正常な走行状態にあると判断し(ステップ520)、ABS制御が許可される(ステップ402)。
【0050】
バーンアウトでノイズが発生した場合に、圧力センサ13が故障していた場合を例にとり、図5に基づいて説明する。
バーンアウトを行う場合、ライダーは、まず、前輪にブレーキをかける。このため、前輪のブレーキ液圧600が上昇し、車体停止602が検知される。次いで、ライダーが、アクセルを開けて後輪が空転を始めると、後輪の車速604が上昇を始める。ここで、前輪速度センサにノイズが発生すると、図2で示されたパルス状の信号308が前輪速度として検出されるが、推定車体速度312がゼロとなり(ステップ412)、圧力センサ13が故障した状態でも、ABS制御が禁止される状態となる(ステップ414、416)。一方、図5に示されたように前輪速度センサにノイズが発生しない場合でも、推定車体速度612がゼロとなり(ステップ412)、同様に、圧力センサ13が故障した状態でも、ABS制御が禁止される状態となる(ステップ414、416)。Zの時点で、バーンアウト状態から発進する場合、前輪の車輪速度606が上がり、後輪の車輪速度に徐々に近づいていく。ここで点線の丸608で示されたように、車輪速度比又は車輪速度差が十分に小さくなると(ステップ512、514、522)、タイマーのカウントが開始され(ステップ516)、これが所定時間の間続いたと判断された場合、圧力センサ13からの信号600はまだ所定圧以上を示し、信号602は車体停止を示しているが、2つの車輪速度センサからの信号の方が正しい値と判断する。これにより、ABS制御の禁止を解除し、点線の丸610で示したように、ABS制御を行う。
【0051】
以上のように、第2の実施形態によれば、ブレーキ液圧を測定するセンサが故障した場合でも、適切なABS制御を行うことができる。
本発明の特定の好ましい実施形態を参照して説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な変更を行ってもよいということは当業者には理解されよう。
【0052】
特許請求の範囲で使用される全ての用語は、当業者には理解されるように、これに反する明確な表示がなされていない限り、これらの用語の最も広い意味及び妥当な構造を持つものである。詳細には、単数で表現されたものは、特許請求の範囲にこれに反する明確な制限が記載されていない限り、一つ又はそれ以上の表記のエレメントを示すものと読まれるべきである。
【符号の説明】
【0053】
10 ブレーキ液圧制御装置
13 圧力センサ13
100 ブレーキ用液圧回路(自動二輪車のブレーキ装置)
200 電子制御ユニット(ECU)
210 記憶装置
300 前輪速度センサ
302 後輪速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5