(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223675
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】真空蒸着源及びそれを用いた真空蒸着方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
C23C14/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-261368(P2012-261368)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-105375(P2014-105375A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100157989
【弁理士】
【氏名又は名称】葛谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】範 賓
【審査官】
宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−186787(JP,A)
【文献】
特開2012−207263(JP,A)
【文献】
特表2007−530786(JP,A)
【文献】
特開2007−046100(JP,A)
【文献】
特開2011−162846(JP,A)
【文献】
特開2010−159448(JP,A)
【文献】
特開2008−274322(JP,A)
【文献】
特開2010−106357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口径の第1開口部を有するルツボ主部と、中央最上部に蒸着材料の蒸気を噴出するための前記第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部を有するルツボ上部とを有し、内部に前記蒸着材料が収容されるルツボと、
前記ルツボに収容された蒸着材料の表面に、当該蒸着材料の側部側、底部側を除く当該表面の上部側から輻射を照射するように前記第2開口部を除く部分の前記ルツボ主部の上端部から前記第2開口部にかけて徐々に高くなるように傾斜する前記ルツボ上部側における前記ルツボの外側に沿って配置されて前記蒸着材料の表面を加熱する上部ヒータと、
前記第2開口部を除く部分の前記上部ヒータの外側に配置されて前記上部ヒータからの輻射を前記ルツボ上部側における前記ルツボの外側部分に反射するリフレクタと、を有し、
前記上部ヒータが前記蒸着材料の表面から内部にかけて温度勾配が形成されるように、前記蒸着材料の表面を蒸発に必要十分な温度に加熱し、表面を除く部分は分解あるいは変質しない温度に留める
真空蒸着源。
【請求項2】
前記ルツボ主部と前記ルツボ上部が取り外し可能に形成されており、前記第1開口部を塞ぐように前記第1開口部に嵌合して前記ルツボ上部が設けられている
請求項1に記載の真空蒸着源。
【請求項3】
前記ルツボは、前記蒸着材料の表面から内部にかけての温度勾配を実現するために、前記ルツボ主部と前記ルツボ上部とで、少なくともルツボを構成する材料、ルツボ表面のコーディングの有無、ルツボの厚さ、表面状態のうちの少なくともいずれかを変えてある
請求項1または2に記載の真空蒸着源。
【請求項4】
前記ルツボに収容された蒸着材料の表面を除く部分を冷却する冷却系をさらに有する
請求項1〜3のいずれかに記載の真空蒸着源。
【請求項5】
取り外し可能に設けられ、前記ルツボが戴置されるルツボ台をさらに有し、
前記ルツボ台に前記冷却系が内蔵されている
請求項4に記載の真空蒸着源。
【請求項6】
取り外し可能に設けられ、前記ルツボが戴置されるルツボ台をさらに有し、
前記ルツボ台が取り外された状態で、真空蒸着源の下方側から前記ルツボを挿脱可能である
請求項1〜4のいずれかに記載の真空蒸着源。
【請求項7】
第1の開口径の第1開口部を有するルツボ主部と、中央最上部に蒸着材料の蒸気を噴出するための前記第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部を有するルツボ上部とを有するルツボの内部に蒸着材料を収容する工程と、
前記第2開口部を除く部分の前記ルツボ主部の上端部から前記第2開口部にかけて徐々に高くなるように傾斜する前記ルツボ上部側における前記ルツボの外側に沿って上部ヒータが配置され、前記第2開口部を除く部分の前記上部ヒータの外側に前記上部ヒータからの輻射を前記ルツボ上部側における前記ルツボの外側部分に反射するリフレクタが配置されるように、前記ルツボを配置する工程と、
前記上部ヒータにより前記ルツボに収容された蒸着材料の表面に、当該蒸着材料の側部側、底部側を除く当該表面の上部側から輻射を照射する工程と、を有し、
前記蒸着材料の表面に前記輻射を照射する工程において、前記上部ヒータにより前記蒸着材料の表面から内部にかけて温度勾配が形成されるように、前記蒸着材料の表面を蒸発に必要十分な温度に加熱し、表面を除く部分は分解あるいは変質しない温度に留める
真空蒸着方法。
【請求項8】
前記ルツボを、前記蒸着材料の表面から内部にかけての温度勾配を実現するために、前記ルツボ主部と前記ルツボ上部とで、少なくともルツボを構成する材料、ルツボ表面のコーディングの有無、ルツボの厚さ、表面状態のうちの少なくともいずれかを変えて形成する
請求項7に記載の真空蒸着方法。
【請求項9】
前記蒸着材料の表面に前記輻射を照射する工程において、冷却系により前記ルツボに収容された蒸着材料の表面を除く部分を冷却する
請求項7または8に記載の真空蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着源及び
それを用いた真空蒸着方法に関する。特に、ルツボの外周にヒータを設けた構成の真空蒸着源及びそれを用いた真空蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空薄膜形成プロセスは、例えば、蒸着材料を加熱して蒸発させ、成膜対象基板表面で固化させて薄膜とする方法として、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティングなどの各種の方法が知られている。
真空薄膜形成プロセスの真空蒸着源において蒸着材料を加熱する方法としては、例えば抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザービーム加熱などの方法がある。
抵抗加熱では、例えばボート状あるいはワイヤ状のフィラメントなどのヒータから発せられる輻射によりルツボに収容された蒸着材料を加熱する。
【0003】
図4(a)は、従来例に係る真空蒸着源の模式構成図である。ここでは、クヌーセンセル(Kセル)と称せられるタイプの真空蒸着源を示している。
ルツボ121は、開口部側端部につば部121bが形成されている。つば部121bがルツボ固定部125に接することで、ルツボ121が係止されている。ルツボ121内には、蒸着材料Aが収容される。
ルツボ121の外周には、例えば輻射によりルツボ121内の蒸着材料Aを加熱するヒータ123が配置され、その外周にリフレクタ124が設けられている。
【0004】
例えば、真空蒸着装置は、真空チャンバーに上記の構成の真空蒸着源と成膜対象基板が配置されて構成されている。
上記の構成の真空蒸着源において、ヒータ123から発せられた輻射が直接的に、及びリフレクタ124で反射して間接的に、ルツボ121内に収容された蒸着材料Aに照射され、蒸着材料Aが加熱により昇温して蒸発する。蒸着材料Aの蒸気は、ルツボ121の開口部から噴出する。
ルツボ121から噴出した蒸着材料Aの蒸気が成膜対象基板表面で固化され、蒸着材料の薄膜が形成される。
【0005】
上記の構成の真空蒸着源において、成膜速度の安定性向上、蒸気分布の安定性向上、及び主として形成する薄膜の平坦性を高めるために蒸気分布を所定の形状とすることのため、ルツボ121の開口部にコンダクタンスを小さくするためのオリフィス121aが設けられている。ここでは、オリフィス121aがルツボ121と一体に形成されている。
【0006】
図4(b)は、従来例に係る真空蒸着源の模式構成図である。
図4(a)の真空蒸着源に対して、ルツボ121の開口部にオリフィス121cが別部材として設けられていることが異なる。
【0007】
図4(a)及び(b)に示す真空蒸着源において、ルツボを交換する場合には、ルツボの開口部側からルツボを取り出し、新たなルツボをつば部がルツボ固定部に接するように係止させて用いる。
【0008】
上記の構成の真空蒸着源において、ルツボ121の開口部側は、真空蒸着源の構造上真空チャンバー内の空間に曝される表面部位となり、ヒータで加熱されたルツボ121の内部に比べて相対的に温度が低下する。
【0009】
ルツボ121の開口部側がルツボ121の内部に比べて相対的に温度が低下することと、オリフィス(121a,121c)によりルツボ121の開口部のコンダクタンスが小さくされていることから、ルツボ121の開口部に蒸着材料が堆積しやすくなっている。
ルツボ121の開口部に蒸着材料が堆積すると、成膜速度の変動、蒸気分布の変動、蒸気噴出の停止などの不利益を引き起こす。
【0010】
上記の不利益を低減するため、上記の構成の真空蒸着源において、例えばルツボ121の開口側においてヒータの密度を高める対策がなされている。
【0011】
真空薄膜形成プロセスにおいて、ルツボの開口部への蒸着材料の堆積が許容範囲となりうる、成膜速度の安定性、蒸気分布の安定性、及び蒸気分布の形状は、プロセスごとに異なる場合がある。特に新規なプロセスの検討及び既存のプロセスにおいて最適化の検討を行う場合には重要な事項となる。
【0012】
また、蒸着材料の種類によっては、ヒータによる加熱で維持した温度と時間がある程度以上となると、材料の特性が劣化してしまうものがある。
形成される蒸着膜の特性が劣化を避けるため、真空蒸着源において継続して維持した温度と時間によって蒸着材料を収容したルツボを交換する必要が生じる。
【0013】
蒸着材料の堆積については同一の真空蒸着源を用いても、蒸着材料の種類、成膜速度、必要な膜厚によって問題となりうるかが異なる。
一方で、上記の各プロセスパラメータは、多くの場合、ルツボの形状と密接に関わるものである。
【0014】
上記のように、真空薄膜形成プロセスにおいて、ルツボの開口部に蒸着材料が堆積を抑制し、ヒータによる加熱による蒸着膜の特性劣化を回避するなど、成膜の安定性のさらなる向上が求められていた。
【0015】
真空蒸着に用いる蒸着源については、例えば特許文献1〜3などに記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2012−17511号公報
【特許文献2】特開2011−246786号公報
【特許文献3】特開2011−60865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
解決しようとする課題は、真空薄膜形成プロセスにおいて、成膜の安定性をさらに向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の真空蒸着源は、第1の開口径の第1開口部を有するルツボ主部と、前記第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部を有するルツボ上部とを有し、内部に蒸着材料が収容されるルツボと、前記ルツボに収容された蒸着材料の表面に輻射を照射するように前記第2開口部を除く部分の前記ルツボ上部側における前記ルツボの外側に配置されて前記蒸着材料を加熱する上部ヒータと、前記第2開口部を除く部分の前記上部ヒータの外側に配置されて前記上部ヒータからの輻射を反射するリフレクタとを有する。
【0019】
上記の本発明の真空蒸着源は、ルツボと、上部ヒータと、リフレクタを有する。
ルツボは、第1の開口径の第1開口部を有するルツボ主部と、第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部を有するルツボ上部とを有し、内部に蒸着材料が収容される。
上部ヒータは、ルツボに収容された蒸着材料の表面に輻射を照射するように第2開口部を除く部分のルツボ上部側におけるルツボの外側に配置されて蒸着材料を加熱する。
リフレクタは、第2開口部を除く部分の上部ヒータの外側に配置されて上部ヒータからの輻射を反射する。
【0020】
上記の本発明の真空蒸着源は、好適には、前記上部ヒータが前記蒸着材料の表面から内部にかけて温度勾配が形成されるように前記蒸着材料を加熱する。
【0021】
上記の本発明の真空蒸着源は、好適には、前記ルツボ主部と前記ルツボ上部が取り外し可能に形成されており、前記第1開口部を塞ぐように前記第1開口部に嵌合して前記ルツボ上部が設けられている。
【0022】
上記の本発明の真空蒸着源は、好適には、前記ルツボ主部の側部に配置されて、前記上部ヒータとは異なる条件で前記蒸着材料を加熱する下部ヒータをさらに有し、前記リフレクタが前記下部ヒータの外側にまで延伸しており、前記下部ヒータからの輻射を反射する。
【0023】
上記の本発明の真空蒸着源は、好適には、前記ルツボに収容された蒸着材料の表面の除く部分を冷却する冷却系をさらに有する。
【0024】
上記の本発明の真空蒸着源は、好適には、取り外し可能に設けられ、前記ルツボが戴置されるルツボ台をさらに有する。
【0025】
また、本発明の真空蒸着方法は、第1の開口径の第1開口部を有するルツボ主部と、前記第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部を有するルツボ上部とを有するルツボの内部に蒸着材料を収容する工程と、前記第2開口部を除く部分の前記ルツボ上部側における前記ルツボの外側に上部ヒータが配置され、前記第2開口部を除く部分の前記上部ヒータの外側に前記上部ヒータからの輻射を反射するリフレクタが配置されるように、前記ルツボを配置する工程と、前記上部ヒータにより前記ルツボに収容された蒸着材料の表面に輻射を照射する工程とを有する。
【0026】
上記の本発明の真空蒸着方法は、第1の開口径の第1開口部を有するルツボ主部と、第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部を有するルツボ上部とを有するルツボの内部に蒸着材料を収容し、第2開口部を除く部分のルツボ上部側におけるルツボの外側に上部ヒータが配置され、第2開口部を除く部分の上部ヒータの外側に上部ヒータからの輻射を反射するリフレクタが配置されるように、ルツボを配置する。次に、上部ヒータによりルツボに収容された蒸着材料の表面に輻射を照射する。
【0027】
上記の本発明の真空蒸着方法は、好適には、前記蒸着材料の表面に輻射を照射する工程において、前記上部ヒータが前記蒸着材料の表面から内部にかけて温度勾配が形成されるように前記蒸着材料を加熱する。
【0028】
上記の本発明の真空蒸着方法は、好適には、前記ルツボを配置する工程において、下部ヒータが前記ルツボ主部の側部に配置され、前記下部ヒータの外側にまで延伸した前記リフレクタが前記下部ヒータの外側に配置されるように、前記ルツボを配置し、前記蒸着材料の表面に輻射を照射する工程において、前記下部ヒータにより前記上部ヒータとは異なる条件で前記蒸着材料を加熱する。
【0029】
上記の本発明の真空蒸着方法は、好適には、前記蒸着材料の表面に輻射を照射する工程において、冷却系により前記ルツボに収容された蒸着材料の表面の除く部分を冷却する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の真空蒸着源は、真空薄膜形成プロセスにおいて、第2開口部を除く部分のルツボ上部側におけるルツボの外側に配置された上部ヒータによりルツボに収容された蒸着材料の表面に輻射を照射するように蒸着材料を加熱することにより、成膜の安定性をさらに向上させることができる。
【0031】
本発明の真空蒸着方法は、真空薄膜形成プロセスにおいて、第2開口部を除く部分のルツボ上部側におけるルツボの外側に配置された上部ヒータによりルツボに収容された蒸着材料の表面に輻射を照射するように蒸着材料を加熱することにより、成膜の安定性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る真空蒸着装置の模式構成図である。
【
図2】
図2は本発明の実施形態に係る真空蒸着源の模式構成図である。
【
図3】
図3は本発明の実施形態に係る真空蒸着源の説明図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、従来例に係る真空蒸着源の模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の真空蒸着源とそれを用いた真空蒸着方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0034】
[真空蒸着装置の構成]
図1は、本実施形態に係る真空蒸着装置の模式構成図である。
例えば、真空チャンバー10に、排気管11及び真空ポンプ12が接続されており、内部が所定の圧力に減圧可能となっている。真空蒸着による成膜時における真空チャンバー10内の背圧は、例えば10
−2〜10
−5Pa程度である。
【0035】
例えば、真空チャンバー10の内部に、真空蒸発源20が配置される。真空蒸着源20には、例えば電源20aが接続されている。
真空蒸発源20は後述の構成を有し、
図1中の矢印Vの方向に蒸着材料の蒸気を噴出する。
【0036】
例えば、真空チャンバー10内には、真空蒸発源20の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に成膜対象基板を保持する基板ホルダ30が設けられている。
基板ホルダ30により、成膜対象基板の成膜しようとする表面が蒸着材料の蒸気に臨むように、成膜対象基板が保持される。
図面上はドーム型の基板ホルダを示しているが、その他の形状の基板ホルダでもよく、また、長尺状の基板を連続搬送する搬送系としてもよい。
真空蒸着源から噴出された蒸着材料の蒸気が成膜対象基板の表面に達して固化すると、成膜対象基板の表面に蒸着材料の薄膜が形成される。
【0037】
[真空蒸着源の構成]
図2は、本実施形態に係る真空蒸着源の模式構成図である。本実施形態の真空蒸着源は、クヌーセンセル(Kセル)と称せられるタイプの真空蒸着源である。
真空蒸着源20は、例えば、ルツボ(坩堝)21、ルツボ台22、上部ヒータ23aと下部ヒータ23b、及びリフレクタ24を有する。
ルツボ21は、第1の開口径の第1開口部21aを有するルツボ主部21bと、第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部21cを有するルツボ上部21dとを有し、内部に蒸着材料Aが収容される。
第2開口部21cは、成膜速度の安定性向上、蒸気分布の安定性向上、及び主として形成する薄膜の平坦性を高めるために蒸気分布を所定の形状とする目的のためコンダクタンスを小さくするオリフィスとなる。
【0038】
ルツボ主部21bとルツボ上部21dが取り外し可能に形成されており、第1開口部21aを塞ぐように第1開口部21aに嵌合してルツボ上部21dが設けられている。このため、蒸着材料を補充または交換する場合、ルツボ上部21dをルツボ主部21bから取り外すことで、第1の開口径のルツボ主部21bから蒸着材料を容易に除去し、あるいはルツボ主部21b内に補充することができる。
【0039】
ルツボ21は、例えば、焼結BN(焼結された窒化ホウ素)、PBN(CVD(Chemical Vapor Deposition)法による熱分解で形成された窒化ホウ素)、Mo、CIPカーボンなどで構成される。
上記のルツボ21の材料は、コスト、寿命、内部タンクの大きさ、加工性、真空蒸着材料との反応性及び相性の各特性から適宜選択される。
また、後述の蒸着材料Aの表面から内部にかけての好ましい温度勾配を実現するために、ルツボ主部21bとルツボ上部21dとで、ルツボを構成する材料、ルツボ表面のコーティングの有無、ルツボの厚さ、表面状態などを変えることができる。
【0040】
例えば、ルツボ台22はルツボ21が戴置される台であり、取り外し可能に設けられている。
【0041】
例えば、上部ヒータ23aは、ルツボ21に収容された蒸着材料Aの表面に輻射を照射するように第2開口部21cを除く部分のルツボ上部21d側におけるルツボ21の外側に配置されて蒸着材料を加熱する。
【0042】
例えば、ルツボ主部21bの側部に配置されて、上部ヒータ23aとは異なる条件で蒸着材料Aを加熱する下部ヒータ23bをさらに有していてもよい。
【0043】
上部ヒータ23a及び下部ヒータ23bは、例えば、ハロゲンランプ、あるいはニッケルクロムなどからなる抵抗加熱部材を用いることができる。
【0044】
例えば、リフレクタ24は、第2開口部21cを除く部分の上部ヒータ23aの外側に配置されて上部ヒータ23aからの輻射を反射する。
【0045】
下部ヒータ23bを有する場合には、リフレクタ24が下部ヒータ23bの外側にまで延伸しており、下部ヒータ23bからの輻射を反射する構成としてもよい。
【0046】
例えば、ルツボ21に収容された蒸着材料Aの表面の除く部分を冷却する不図示の冷却系をさらに有してもよい。
例えば、ルツボ台22中に冷却系を内蔵させることも可能である。
【0047】
上記の構成の真空蒸発源において、例えば、上部ヒータ23aが蒸着材料Aの表面から内部にかけて温度勾配が形成されるように、蒸着材料Aを加熱する。
さらに、下部ヒータ23b及び冷却系を適宜組み合わせることで、蒸着材料Aの表面から内部にかけての温度勾配を制御することができる。
【0048】
例えば、ルツボ21の所定の位置には不図示の熱電対が取り付けられており、熱電対からフィードバックをかけて上部ヒータ、下部ヒータ及び冷却系などを制御し、蒸着材料Aの温度を制御することができる。ここで、上記において真空蒸着源20に電源20aが接続された構成としたが、電源20aの他に熱電対からのフィードバックを行う制御系統の配線などを適宜設けることができる。
また、蒸着材料Aの温度勾配はリフレクタ24の枚数などで調整することも可能である。
【0049】
上記の構成の真空蒸着源において、上部ヒータ23a、あるいは上部ヒータ23a及び下部ヒータ23bから発せられた輻射が直接的に、及びリフレクタ24で反射して間接的に、ルツボ21内に収容された蒸着材料Aに照射され、蒸着材料Aが加熱により昇温して蒸発する。蒸着材料Aの蒸気は、ルツボ21の第2開口部21cから噴出する。
ルツボ21から噴出した蒸着材料Aの蒸気が成膜対象基板表面で固化され、蒸着材料の薄膜が形成される。
【0050】
上記の構成の真空蒸着源において、オリフィスとなる第2開口部21cによりルツボ21の開口部のコンダクタンスが小さくされているが、上部ヒータ23aが第2開口部21cを除く部分のルツボ上部21d側におけるルツボ21の外側に配置されていることにより、ルツボ21の第2開口部21cでの蒸着材料の堆積を抑制できる。これにより、成膜速度の変動、蒸気分布の変動、蒸気噴出の停止などの不利益を抑制し、成膜の安定性を向上させることができる。
【0051】
真空蒸着源において、蒸着材料は加熱されると蒸着材料の表面から蒸発し、ルツボの開口部から外部に噴出する。蒸着材料の表面を除く部分は、蒸発する温度まで到達していても、蒸発しないで蒸着材料中に留まっている。
ここで、蒸着材料が液体である場合、加熱されると材料内に対流が生じるため、材料内の温度は均一になる。
一方、昇華型の蒸着材料は材料内の温度が均一になりにくく、また、加熱により分解あるいは変質しやすい材料である場合には、ルツボの開口部側である蒸着材料の表面を蒸発に必要十分な程度に加熱し、表面を除く部分は分解あるいは変質しない温度に留めておいたほうが好ましい。ここで、蒸着材料を分解あるいは変質しない温度に留める場合、例えば温度を時間で積算した数値で管理する。
本実施形態の真空蒸着源によれば、ルツボ内の蒸着材料の表面を蒸発に必要十分な程度に加熱し、側面と底面は必要に応じて温度調整できるため、温度管理が容易となる。また、不要に蒸着材料を高温にすることがなく、理想的な温度分布で蒸着材料を加熱することができる。
これにより、蒸着材料の特性劣化を抑制し、成膜の安定性を向上させることができる。
【0052】
本実施形態の真空蒸着源に用いる蒸着材料としては、下記の材料を好ましく用いることができる。
例えば、加熱により分解しやすい蒸着材料として、ZnSe(セレン化亜鉛),ZnS(硫化亜鉛),MgF
2(フッ化マグネシウム),TlI(ヨウ化タリウム)などがある。
また、加熱により変質しやすい蒸着材料として、有機EL材料、パーフロロアルキシシラザンなどの有機フッ素化合物、シリコーン樹脂などの有機防汚膜材料などがある。
【0053】
図3は本発明の実施形態に係る真空蒸着源の説明図である。
例えば、ルツボ台22は取り外し可能に設けられている。蒸着材料を収容したルツボを交換する場合には、ルツボ台22を取り外し、ルツボ21を真空蒸着源の下部から取り出し、新たな蒸着材料を収容したルツボを真空蒸着源の下部から上部ヒータ23a及び下部ヒータ23bの内側の位置に挿入する。挿入されたルツボ23をルツボ台2
2上に戴置することで、ルツボ21を固定することができる。
従来の真空蒸着源では、ルツボの交換を真空蒸着源の上方から行うため、ルツボの上方にヒータやリフレクタを配置することができなかった。
本実施形態の真空蒸着源では、ルツボの交換を真空蒸着源の下方から行うため、ルツボの上方にヒータやリフレクタを配置することができる。これにより、ルツボ内の蒸着材料の表面から蒸発に必要十分な程度に加熱することができるようになる。
【0054】
[真空蒸着方法]
次に、本実施形態に係る真空蒸発方法について説明する。
まず、例えば、第1の開口径の第1開口部21aを有するルツボ主部21bと、第1の開口径を狭めた第2の開口径の第2開口部21cを有するルツボ上部21dとを有するルツボ21の内部に蒸着材料Aを収容する。
次に、例えば、第2開口部を除く部分のルツボ上部21d側におけるルツボ21の外側に上部ヒータ23aが配置され、第2開口部を除く部分の上部ヒータ23aの外側に上部ヒータ23aからの輻射を反射するリフレクタ24が配置されるように、ルツボ21を配置する。
次に、例えば、上部ヒータ23aによりルツボ21に収容された蒸着材料Aの表面に輻射を照射する。
【0055】
例えば、下部ヒータ23bがルツボ主部21bの側部に配置され、下部ヒータ23bの外側にまで延伸したリフレクタ24が下部ヒータ23bの外側に配置されるように、ルツボ21を配置してもよい。この場合、蒸着材料Aの表面に輻射を照射する工程において、下部ヒータ23bにより上部ヒータ23aとは異なる条件で蒸着材料Aを加熱することができる。
【0056】
また、例えば、蒸着材料の表面に輻射を照射する工程において、冷却系によりルツボ21に収容された蒸着材料Aの表面の除く部分を冷却してもよい。
【0057】
上記の構成の真空蒸着源において、上部ヒータ23a、あるいは上部ヒータ23a及び下部ヒータ23bから発せられた輻射が直接的に、及びリフレクタ24で反射して間接的に、ルツボ21内に収容された蒸着材料Aに照射され、蒸着材料Aが加熱により昇温して蒸発する。蒸着材料Aの蒸気は、ルツボ21の第2開口部21cから噴出する。
ルツボ21から噴出した蒸着材料Aの蒸気が成膜対象基板表面で固化され、蒸着材料の薄膜が形成される。
【0058】
例えば、蒸着材料Aの表面に輻射を照射する工程において、上部ヒータ23aが蒸着材料Aの表面から内部にかけて温度勾配が形成されるように蒸着材料を加熱することが好ましい。
さらに、下部ヒータ23b及び冷却系を適宜組み合わせることで、蒸着材料Aの表面から内部にかけての温度勾配を制御することができる。
【0059】
上記の真空蒸着方法によれば、ルツボ21の第2開口部21cでの蒸着材料の堆積を抑制でき、成膜速度の変動、蒸気分布の変動、蒸気噴出の停止などの不利益を抑制し、成膜の安定性を向上させることができる。
また、ルツボ内の蒸着材料の表面を蒸発に必要十分な程度に加熱し、側面と底面は必要に応じて温度調整できるため、温度管理が容易となる。また、不要に蒸着材料を高温にすることがなく、理想的な温度分布で蒸着材料を加熱することができ、例えば昇華型の蒸着材料を好ましく適用することができる。
これにより、蒸着材料の特性劣化を抑制し、成膜の安定性を向上させることができる。
【0060】
<実施例>
上記の実施形態の真空蒸着源を用いた真空蒸着装置により、TlI(ヨウ化タリウム)を真空蒸着した。
成膜の条件は、上部ヒータを470℃に設定したときに、蒸着材料の表面を除く部分に相当するルツボの下部の温度の熱電対測定値が300℃であり、成膜速度0.05nm/sを得た。TlIは加熱で分解しやすいが、上記の実施形態の真空蒸着源を用いることで、分解することなく真空蒸着することができた。
【0061】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、下部ヒータは、
図2ではルツボ主
部21bの側面の一部のみに形成されているが、側面の全体に対して形成された構成としてもよい。
ルツボ主
部とルツボ上部は一体に形成されていてもよい。
上部ヒータ及び下部ヒータは、ハロゲンランプ、ニッケルクロムなどからなる抵抗加熱部材の他、輻射により蒸着材料を加熱する種々の加熱手段を適用することができる。
冷却系としては、ルツボ台に内蔵する構成の他、冷却すべき箇所に冷却管などを配置してもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10・・・真空チャンバー
11・・・排気管
12・・・真空ポンプ
20・・・真空蒸着源
20a・・・電源
21・・・ルツボ
21a・・・第1開口部
21b・・・ルツボ主
部
21c・・・第2開口部
21d・・・ルツボ上部
22・・・ルツボ台
23a・・・上部ヒータ
23b・・・下部ヒータ
24・・・リフレクタ
30・・・基板ホルダ
121・・・ルツボ
121a,121c・・・オリフィス
121b・・・つば部
123・・・ヒータ
124・・・リフレクタ
125・・・ルツボ固定部
A・・・蒸着材料