(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の圧電性高分子の成形方法について説明する。
【0019】
なお、本明細書において、「圧電性高分子」とは、その分子が一軸配向した場合に、圧電性を発現し得る高分子を言う。また、「高分子圧電材料」とは、前記圧電性高分子により形成され、圧電性を有する高分子材料を意味する。
【0020】
本発明の第1の要旨によれば、圧電性高分子から形成された材料を、当該圧電性高分子のガラス転移温度以上、結晶化温度未満の温度で成形し、ついで、上記圧電性高分子の結晶化温度以上の温度で熱処理することを特徴とする、圧電性高分子の成形方法が提供される。
【0021】
本発明の成形方法に用いられる上記圧電性高分子は、ヘリカルキラリティを有する圧電性高分子である。当該ヘリカルキラリティを有する圧電性高分子としては、ポリ乳酸、ポリペプチド、ポリメチルグルタメート、ポリベンジルグルタメート等のキラリティを持ち主鎖がらせんを描く高分子が挙げられ、ポリ乳酸または乳酸を構成単位として含む共重合体が好ましく、ポリ乳酸がさらに好ましい。当該ポリ乳酸は、L体またはD体のいずれであってもよいが、入手が容易であるL体からなるポリ乳酸が好ましい。
【0022】
本発明の成形方法に付される圧電性高分子から形成された材料は、圧電性高分子を主成分とする材料であり、例えば圧電性高分子の含有量が50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、または80質量%以上含む材料、あるいは実質的に圧電性高分子から成る材料、例えば圧電性高分子の含有量が99〜100質量%である材料が挙げられる。
【0023】
本発明の成形方法に付される圧電性高分子から形成された材料は、各種成形方法に付すことができる形態であれば特に限定されないが、好ましくはシートまたはフィルムの形態である。当該シートまたはフィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、約1μm〜20mm、好ましくは約0.03〜1.0mm、より好ましくは約0.1〜0.3mmである。
【0024】
上記圧電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えばポリ乳酸である場合、好ましくは約10,000〜1,000,000、より好ましくは約15,000〜400,000、さらに好ましくは約20,000〜250,000である。重量平均分子量を、約10,000以上とすることにより、得られる成形体(高分子圧電材料)の機械的強度および弾性を確保することができる。また、重量平均分子量を、約1,000,000以下とすることにより、より配向結晶化させることができる。
【0025】
本発明の成形方法において、真空成形時の温度は、用いる圧電性高分子のガラス転移温度以上、結晶化温度未満の温度である。例えば、重量平均分子量100,000のポリ乳酸を用いる場合、当該温度範囲は、約50℃〜105℃であり、好ましくは約70〜110℃、より好ましくは約75〜105℃である。当該温度をガラス転移温度以上にすることにより、真空成形が容易になり、また、真空成型時のフィルムの破損を防止することができる。また、当該温度を結晶化温度以下とすることにより、得られる成形体の圧電率を安定させることができる。
【0026】
上記「ガラス転移温度」は、示差走査熱量測定 DSC(Differential scanning calorimetry)で測定することができる。また、上記「結晶化温度」は、示差走査熱量測定 DSC(Differential scanning calorimetry)で測定することができる。
【0027】
本発明の成形方法は、特に限定されないが、真空成形、圧空成型、射出成形、圧縮成型、ブロー成形等を利用することができるが、好ましくは真空成形が用いられる。
【0028】
本発明の成形方法は、真空成形で行う場合、(金)型(雌型および雄型を含み、その材質は問わない。以下、総称して単に「金型」という)にセットされた圧電性高分子から形成された材料を、プラグにより、金型と反対の面から金型の内部に向かってプレスし(押し込み)、真空形成を補助してもよい。当該プレス時の圧力は、プレス面積1cm
2あたり、約140〜20,000kg、好ましくは約200〜5,000kg、より好ましくは約300〜2,000kgの圧力である。プレス圧を前記範囲とすることにより、より高い圧電率を得ることができる。
【0029】
本発明の方法において「真空」とは、一般的な真空ポンプを用いて得ることのできる圧力を意味しており、具体的には1×10
−3Pa以下の圧力である。
【0030】
本発明の成形方法においては、後述の所望のリタデーションが得られるような延伸倍率で延伸することが好ましい。
【0031】
本発明の成形方法は、真空成形後、得られた成形体を熱処理することを含む。当該熱処理の温度は、用いた圧電性高分子の結晶化温度以上、融点または分解温度以下であれば特に限定されないが、好ましくは結晶化温度より約0〜50℃高い温度、より好ましくは結晶化温度より約3〜20℃高い温度である。例えば、圧電性高分子がポリ乳酸である場合、当該温度範囲は、約80〜150℃、好ましくは約100〜110℃である。当該温度範囲で熱処理することにより、圧電性高分子の分子の配向が良好な結晶が生成し、より高い圧電率を得ることができる。
【0032】
上記「融点」は、示差走査熱量測定 DSC(Differential scanning calorimetry)により測定することができる。
【0033】
上記熱処理は、真空成形後の任意のタイミングで行うことができる。例えば、真空成形後、成形体を金型から取り出す前に加熱してもよい。また、真空成形後、成形体を金型から取り出し、加熱炉等の別の加熱手段を用いて熱処理してもよい。
【0034】
上記熱処理の後、好ましくは、加熱された成形体を、ガラス転移点以下の温度まで急冷する。このように急冷することにより、圧電性に悪影響を及ぼす球晶の生成を抑制することができる。
【0035】
本発明の成形方法に用いられる圧電性高分子から形成された材料は、柔軟化剤を含んでいてもよい。当該添加剤を用いることにより、フィルムの柔軟性が増し、真空成形が容易になる。
【0036】
当該柔軟化剤としては、特に限定されないが、圧電性高分子がポリ乳酸である場合、ポリマー末端のカルボン酸基または水酸基との親和性または反応性を有するエラストマーが好ましい。このようなエラストマーとしては、カルボン酸基または水酸基との親和性に優れる官能基、例えばアミン、エポキシ、無水カルボン酸などを付加したスチレン系エラストマー(例えば、SBSやこれを水素添加して得られるSEBS)、同様の官能基を付加したオレフィン系エラストマー、およびポリヒドロキシブチレート系軟質系コポリマー(アミン末端を持つスチレン系エラストマー)などが挙げられる。具体的には、ポリアルキルメタクリレートとポリアルキルアクリレートのブロック共重合体、例えばPMMA−PnBA−PMMA(ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸n−ブチル−ポリメタクリル酸メチル)ブロック共重合体が挙げられる。当該ブロック共重合体は、例えば株式会社クラレ社製のLA2250(商品名)、LA2140(商品名)、LA4285(商品名)等として入手することができる。
【0037】
上記柔軟化剤の添加量は、圧電性高分子と柔軟化剤の総量に対して、約1〜40質量%、好ましくは約5〜30質量%である。当該添加量を約1質量%以上とすることにより、真空成形が容易になる。また、当該添加量を約40質量%以下とすることにより、得られる成形体の弾性率および圧電率の低下を抑制することができる。
【0038】
また、本発明の成形方法に用いられる圧電性高分子から形成される材料は、さらに別の添加剤、例えば、着色剤、可塑剤等を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の成形方法により得られる成形体は、圧電性部位を有する。該圧電性部位は、好ましくは100nm以上、より好ましくは500nm以上、さらに好ましくは1,000nm以上のリタデーションを有する。
【0040】
本発明の成形方法により得られる成形体の形状は、真空成形により得られうる形状であれば特に限定されず、例えば円筒、円錐、三角柱および四角柱などの多角柱、三角錐および四角錐などの多角錐、ドーム形、ならびにこれらを組み合わせた任意の形状であってもよいが、圧電性高分子をより均一に延伸することができる形状、例えば、円筒形が好ましい。
【0041】
本発明の成形方法により得られる成形体は、高い透明性を確保することができる。
【0042】
本発明の成形方法により得られる成形体は、圧電性を有し、かつ任意の形状とすることができる。したがって、本発明の成形方法により得られる成形体は、例えば、圧電スピーカー、アクチュエーター、振動発生装置、ハプティクス等に用いることができる。
【0043】
本発明の第2の要旨によれば、圧電性高分子から形成される圧電性部位と、該圧電性部位の第1の主面に位置する第1電極と、該圧電性部位の第2の主面に位置する第2電極とを有する振動発生装置であって、圧電率が0.5pC/N以上であり、かつ、下記(a)〜(c):
(a)前記圧電性部位の厚みに対する長手方向の長さの比が、約100以上である、
(b)前記圧電性部位の厚みに対する湾曲部の曲率半径の比が、約10以上である、
(c)前記圧電性部位の湾曲部の曲率半径に対する長手方向の長さの比が、約0.01以上である
の少なくとも1つを満たすことを特徴とする振動発生装置が提供される。
【0044】
上記圧電性部位の圧電率は、0.5pC/N以上であり、好ましくは2pC/N以上であり、より好ましくは3pC/N以上であり、さらに好ましくは5pC/N以上である。
【0045】
上記圧電性部位の厚みに対する長手方向の長さの比は、約100以上であり、好ましくは約1,000以上である。この比を約100以上とすることにより、座屈による振動を生じることが可能になる。
【0046】
上記圧電性部位の厚みに対する湾曲部の曲率半径の比は、約10以上であり、好ましくは約30以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。この比を約10以上とすることにより、座屈による振動を生じることが可能になる。
【0047】
上記圧電性部位の湾曲部の曲率半径に対する長手方向の長さの比は、約0.01以上である、好ましくは約0.1以上、より好ましくは1以上である。この比を約0.01以上とすることにより、座屈による振動を生じることが可能になる。
【0048】
本発明において、上記の条件(a)〜(c)の少なくとも1つを満たせばよいが、同時に2つを満たすことが好ましく、3つ全てを満たすことがより好ましい。また、少なくとも条件(b)を満たすことが好ましく、例えば条件(b)のみ、条件(a)と(b)、条件(b)と(c)、または条件(a)〜(c)の全てを満たすことが好ましい。
【0049】
上記圧電性部位において、圧電性高分子は、圧電性部位の長手方向に配向することが好ましい。
【0050】
上記「座屈」とは、圧電性高分子がずり変形により配向方向に伸びることによる応力によってたわみを生じる現象である。この変形(たわみ)に起因する振動を座屈による振動という。
【0051】
本発明の第3の要旨によれば、上記本発明の振動発生装置を振動板として備えたスピーカーが提供される。
【0052】
本発明のスピーカーは、好ましくは、圧電性高分子から形成される圧電性部位と、該圧電性部位の第1の主面に位置する第1電極と、該圧電性部位の第2の主面に位置する第2電極とを有するスピーカーであって、前記圧電性部位において、
(i)圧電率が2pC/N以上であり、
(ii)少なくとも一部が湾曲しており、
(iii)弾性率が0.1GPa以上であり、かつ
(iv)下記(a’)〜(c’):
(a’)前記圧電性部位の厚みに対する長手方向の長さの比が、約100以上である、
(b’)前記圧電性部位の厚みに対する湾曲部の曲率半径の比が、約10以上である、
(c’)前記圧電性部位の湾曲部の曲率半径に対する長手方向の長さの比が、約0.01以上である
の少なくとも1つを満たすこと
を特徴とする。
【0053】
本発明において、上記の条件(a’)〜(c’)の少なくとも1つを満たせばよいが、同時に2つを満たすことが好ましく、3つ全てを満たすことがより好ましい。また、少なくとも条件(b’)を満たすことが好ましく、例えば条件(b’)のみ、条件(a’)と(b’)、条件(b’)と(c’)、または条件(a’)〜(c’)の全てを満たすことが好ましい。
【0054】
以下、本発明のスピーカーについて、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0055】
本実施形態のスピーカー1を
図1に示し、その本体部8の斜視図を
図2に示し、その側面部4のA−A線に沿った断面図を
図3に示す。なお、
図3では、第1電極14および第2電極16は、実際は薄層であり得るが、厚みを強調して模式的に示している。
【0056】
図1および
図2に示されるように、当該スピーカー1は、円形の開口部を有する底面部2と、当該底面部2の開口部から底面部2に対して略垂直に伸びた円筒状の側面部4と、側面部4の上方の開口部を塞ぐ上面部6とから一体に形成された本体部8を有する。さらに、
図3に示されるように、側面部4の内側面10および外側面12に、それぞれ、第1電極14および第2電極16を有する。
【0057】
上記スピーカーにおいて、本体部8は、圧電性高分子から形成されるフィルムにより構成される。当該圧電性高分子としては、特に限定されるものではないが、好ましくは上記本発明の成形方法に用いることができるヘリカルキラリティを有する圧電性高分子が挙げられ、より好ましくはポリ乳酸または乳酸を構成単位として含む共重合体、さらに好ましくはポリ乳酸が用いられる。
【0058】
上記フィルムは、柔軟化剤、着色剤、可塑剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0059】
側面部4は圧電性を有し、その両主面(すなわち、内側面10と外側面12)に設置された第1電極14と第2電極16により電圧が印加される。この電圧を変化させることにより、側面部4が振動し、音波が発生する。すなわち、この側面部4が振動板として機能する。
【0060】
上記の側面部4は、本発明のスピーカーの「圧電性部位」に相当し、好ましくは下記4つの特徴:
(i)約2pC/N以上の圧電率を有する;
(ii)少なくとも一部が湾曲している;
(iii)弾性率が約0.1GPa以上である;および
(iv)下記(a”)〜(c”):
(a”)厚みに対する長手方向(円筒の高さ方向)の長さの比が、約100以上である、
(b”)厚みに対する円筒の半径の比が、約10以上である、
(c”)円筒の半径に対する長手方向の長さの比が、約0.01以上である
の少なくとも1つを満たす;
を有する。
【0061】
以下、上記の特徴(i)について説明する。
本実施形態における側面部4では、フィルムを形成するヘリカルキラリティを有する圧電性高分子が円筒の高さ方向に一軸配向しており、これにより側面部4は圧電性を有している。圧電性を有することにより、側面部4の両主面間に電圧が印加されると、フィルムが変形(ずり変形)する。この電圧を変化させることにより側面部は振動する。
【0062】
本発明において、この圧電性部位の圧電率は、当該圧電性部位を電圧の印加により変形させるのに十分な圧電率であればよく、例えば約2pC/N以上、好ましくは約3pC/N以上、より好ましくは約4pC/N以上、さらに好ましくは約6pC/N以上、特に好ましくは約8pC/N以上である。
【0063】
次に、上記の特徴(ii)について説明する。
本実施形態における側面部4は、略円筒の形状をとることにより湾曲している。このように湾曲することにより、圧電性高分子フィルムに生じるフィルム面に平行な振動(ずり変形)を、フィルムの表面に発現させることが可能になる。このように表面に発現した振動により周囲の空気が振動し、音波となる。
【0064】
本実施形態において、側面部4の円筒の半径は特に限定されない。当該半径を小さくすると、湾曲の程度が大きくなり、ずり変形により生じる振動を、より効率的にフィルムの表面に発現させることができ、単位面積あたりの音圧を大きくすることができる。一方、当該半径を大きくすると、ずり変形により生じる振動をフィルムの表面に発現させる効率は低くなるが、側面部の表面積、すなわち振動板の表面積が大きくなる。したがって、当該半径は、全体としての音圧を考慮して決定され、例えば、本実施形態においては、側面部4の円筒の半径は、約0.3〜20cm、好ましくは約1〜10cmとすることができる。
【0065】
なお、本実施形態においては、側面部4は円筒状であるが、本願発明はかかる態様に限定されるものではなく、圧電性部位の少なくとも一部がずり変形により生じる振動を圧電性部位の表面に発現できる程度に湾曲していればよい。例えば、限定するものではないが、圧電性部位の湾曲部は、約0.05〜100cm、例えば約1〜20cmの曲率半径を有していればよい。
【0066】
次に、上記の特徴(iii)について説明する。
本実施形態において、側面部4は、約0.1GPa以上、好ましくは約0.3GPa以上、より好ましくは約0.5GPa以上、さらに好ましくは1GPa以上、特に好ましくは1.5GPa以上の弾性率を有する。側面部4が約0.1GPa以上の弾性率を有することにより、周囲の空気をより強く振動させることができる。この結果、高い音圧を得ることが可能になる。
【0067】
次に、上記の特徴(iv)について説明する。
本実施形態において、側面部4は、下記(a”)〜(c”):
(a”)厚みに対する長手方向(円筒の高さ方向)の長さの比が、約100以上である;
(b”)厚みに対する円筒の半径の比が、約10以上である;
(c”)円筒の半径に対する長手方向の長さの比が、約0.01以上である;
の少なくとも1つを満たす。
【0068】
上記厚みに対する長手方向(円筒の高さ方向)の長さの比が約100以上、好ましくは約1,000以上である。
【0069】
上記厚みに対する円筒の半径の曲率半径の比は、約10以上であり、好ましくは約30以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。
【0070】
上記円筒の半径に対する長手方向の長さの比は、約0.01以上である、好ましくは約0.1以上、より好ましくは1以上である。
【0071】
上記条件(a”)〜(c”)の少なくとも1つを満たすことにより、側面部4は、座屈による振動を生じることが可能になる。このように座屈による振動を生じさせることにより、広い周波数領域にわたり平坦な音圧−周波数特性を得ることができる。
【0072】
上記の側面部4の長手方向の長さは、特に限定されないが、約0.5〜100cm、好ましくは約1〜50cm、より好ましくは、約5〜30cmである。
【0073】
上記の側面部4の半径は、特に限定されないが、約0.5〜30cm、好ましくは約1〜20cm、より好ましくは約2〜10cmである。
【0074】
上記の側面部4の膜厚は、特に限定されないが、約1μm〜50mm、好ましくは約0.01〜10mm、より好ましくは約0.1〜1mm、さらに好ましくは約0.1〜0.3mmである。
【0075】
上記の側面部4の圧電性部位は、好ましくは100nm以上、より好ましくは500nm以上、さらに好ましくは1,000nm以上のリタデーションを有する。
【0076】
本発明のスピーカーは、座屈による振動を利用して、音圧および音圧−周波数特性を向上させている。したがって、本発明のスピーカーは、座屈による振動を生じやすくすることにより、より音圧および音圧−周波数特性を向上させることができる。
【0077】
座屈による振動を生じやすくする方法としては、例えば、圧電性部位に応力を加えることが挙げられる。上記応力は、圧電性部位の長手方向、本実施形態においては円筒の高さ方向に加えることが好ましい。
【0078】
本実施形態において、側面部4は、その内側面10および外側面12に、それぞれ、第1電極14および第2電極16を有する。この第1電極14におよび第2電極16間により、圧電性を有する側面部4に電圧が印加される。
【0079】
この第1電極および第2電極を形成する導電性材料は、特に限定されるものではないが、例えばCu、Ag、Ni等が挙げられる。電極の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば蒸着法が挙げられる。
【0080】
上記第1電極および第2電極は、それぞれ、圧電性部位のそれぞれの主面の全体に形成されていてもよく、その一部のみに形成されていてもよい。
【0081】
本実施形態において、底面部2および上面部6は、特に圧電性を有している必要はなく、それ自体が振動を生じるものではないが、それぞれ、側面部4の下端および上端を固定して、側面部4で生じる振動を安定化し、振動の強度を向上させ、音圧および音質を向上させることに寄与する。また、他の周波数領域と比較して、相対的に低い音圧である周波数領域が存在する場合、その音圧を向上させるために、底面部2または上面部6を、その周波数領域で共振を起こすような形態として、より平坦な音圧−周波数特性を得ることができる。
【0082】
次に、本実施形態のスピーカー1の製造方法を説明する。
【0083】
本実施形態におけるスピーカーの本体部8は、上記した本発明の成形方法により簡便に製造することができる。すなわち、圧電性高分子から形成されたフィルムを、当該圧電性高分子のガラス転移温度以上、結晶化温度未満の温度で真空成形して本体部8の形状に成形し、ついで、上記圧電性高分子の結晶化温度以上の温度で熱処理することにより、本体部8を製造することができる。
【0084】
ついで、側面部4の内側面および外側面に導電性金属を蒸着し、第1電極および第2電極を形成し、本実施形態のスピーカー1を得ることができる。
【0085】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
【0086】
特に、本発明のスピーカーは、上記した本発明の成形方法を利用して製造できるので、本発明の成形方法で製造可能なあらゆる形状とすることができる。したがって、本発明の成形方法により、圧電性高分子を、例えば、テレビのフレーム、携帯電話または携帯ゲーム機の筐体あるいはそれらの一部として成形してそれらに圧電性を与えることによって、それらにスピーカーとしての機能を付与することができる。
【実施例】
【0087】
以下の実施例において、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
実施例1
ポリ乳酸フィルム(多木化学株式会社製、分子量100,000、厚み1mmのシート状)を、真空成形機にセットした。金型は、半径5cm、深さ12cmのものを用いた。上記フィルムを99.3℃に加温し、フィルムの上面から金型に向かって約2トンの圧力でプラグを押し込みながら、真空成形した。得られた成形体を真空成形機から取り出し、該成形体の形状に対応する冶具に固定し、加熱炉において約110℃で5分間熱処理し、ついで、水を張った水槽に入れて急冷し、円筒部の寸法が半径5cm、高さ12cmである、
図2に対応する成形体を得た。
【0089】
実施例2
実施例1で用いたポリ乳酸フィルムを、分子量60,000、厚み0.5mmのポリ乳酸フィルム(多木化学株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
【0090】
比較例1
真空成形時のフィルム温度を110℃とし、プラグによる押し込みを行わないこと以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
【0091】
試験例1
実施例1〜2および比較例1の成形体の円筒部から縦120mm、横5mmの試料を切り出した。この試料を上下に3等分した上部、中部および下部(
図2の上側が上部)の圧電率およびリタデーションを測定した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示されるように、本発明の成型方法を用いることにより、高い圧電率とリタデーションを有する成形体を得ることができることが確認された。
【0094】
実施例3
実施例1で用いたポリ乳酸フィルムを、分子量90,000、厚み0.1mmのポリ乳酸フィルム(多木化学株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた形成体の側面部の両主面に銅を蒸着して電極を形成し、本発明のスピーカーを作製した。
【0095】
比較例2
実施例1で用いたポリ乳酸フィルムを、分子量60,000、厚み1.5mmのポリ乳酸フィルム(多木化学株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた形成体の側面部の両主面に銅を蒸着して電極を形成し、比較例2のスピーカーを作製した。
【0096】
比較例3
真空成形時のフィルム温度を110℃とし、プラグによる押し込みを行わないこと以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた形成体の側面部の両主面に銅を蒸着して電極を形成し、比較例3のスピーカーを作製した。
【0097】
上記実施例3および比較例2〜3の円筒部の寸法を下記表2に示す。なお、膜厚は円筒の中部における値である。
【表2】
【0098】
試験例2
実施例3および比較例1〜2について、音響測定装置(LA2560、小野測器)を用いて、音圧−周波数特性を測定した。結果を
図4に示す。
【0099】
図4から明らかなように、圧電率が1pC/N未満(0.1pC/N)である比較例3のスピーカーは、ほぼ全周波数領域で音圧が40dBを下回っており、スピーカーとして用いるには不十分であった。
【0100】
また、r/dが10未満(8.3)である比較例2は、周波数1,500Hz〜2,500Hzに大きな音圧ピークが見られ、周波数1,000Hz付近の音圧と周波数2,000Hz付近の音圧は、約30dBもの差があった。このピークは共振によるものであると考えられる。
【0101】
一方、実施例3のスピーカーは、共振周波数付近以外の領域においても音圧が上昇し、全体として70dB以上の音圧であり、周波数1,000Hz付近の音圧と周波数2,000Hz付近の音圧の差も10dB程度に抑えられ、全体として良好な音圧−周波数特性を得ることができることが確認された。これは座屈による振動により、共振周波数以外の周波数領域でも高い音圧が得られるようになった為と考えられる。