(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0014】
本発明の合成樹脂エマルジョンは、芳香環含有不飽和モノマー(x)を50重量%以上含有する単量体成分[I]を重合して得られる合成樹脂が、ノニオン系界面活性剤(y)で分散安定化されてなる合成樹脂エマルジョンである。
【0015】
まず、合成樹脂について説明する。
上記合成樹脂は、芳香環含有不飽和モノマー(x)を必須成分として50重量%以上含有する単量体成分[I]を重合して得られるものである。そして、かかる合成樹脂は、単量体成分[I]として芳香環含有不飽和モノマー(x)のみを含有し単独重合して得られるものであってもよいし、必要に応じて該芳香族モノマー以外のその他単量体も含有した単量体成分[I]を共重合して得られるものであってもよい。
【0016】
上記芳香環含有不飽和モノマー(x)としては、例えば、芳香環含有(メタ)アクリレートモノマー(x1)、芳香環含有ビニル系モノマー(x2)等が挙げられるが、反応性に優れる点で芳香環含有(メタ)アクリレートモノマー(x1)が好ましい。
【0017】
上記芳香環含有(メタ)アクリレート系モノマー(x1)としては、例えば、エーテル系の芳香環含有(メタ)アクリレート系モノマー(x1−1)、エステル系の芳香環含有(メタ)アクリレート系モノマー(x1−2)等が挙げられる。
【0018】
上記エーテル系の芳香環含有(メタ)アクリレート系モノマー(x1−1)としては、例えばフェノール誘導体、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等のジヒドロキシベンゼン誘導体等が挙げられる。
【0019】
上記フェノール誘導体としては、フェノールの水酸基の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体であることが好ましく、ジヒドロキシベンゼン誘導体としては、レゾルシノールの有する2つの水酸基の一方もしくは両方の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた誘導体であることが好ましい。
かかる(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位としては、オキシアルキレン構造も含有する下記一般式(1)で示されるものが好ましい。
【0020】
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Xはアルキレン基、nは1以上の整数である。)
【0021】
上記、一般式(1)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、殊にはエチレン基が好ましい。
nが2以上のポリオキシアルキレン鎖部位の場合は、同一オキシアルキレン鎖のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
また、上記アルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、通常ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられるが、これらの中でも水酸基が好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜2であり、更に好ましくは2である。かかるnの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向があり、また、屈折率や複屈折を制御するためにもアルキレン基やオキシアルキレン構造が短い方が良いので、nが小さいことが好ましい。
【0023】
上記フェノールの水酸基の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体の具体例としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、市販品としては、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#193」)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#220」)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社製、商品名「ライトアクリレートP2HA」)、エトキシ化o−フェニルフェニルアクリレート(新中村化学社製、商品名「NKエステルA−LEN−10」)等が挙げられる。
【0024】
上記エステル系の芳香環含有(メタ)アクリレート系モノマー(x1−2)としては、例えば安息香酸誘導体、フタル酸誘導体等が挙げられる。
【0025】
上記安息香酸誘導体としては、安息香酸のカルボキシル基の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体であることが好ましく、フタル酸誘導体としては、フタル酸の有する2つのカルボキシル基の一方もしくは両方の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体であることが好ましい。
かかる(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位としては、前述した一般式(1)で示されるものが好ましい。
【0026】
上記フタル酸の有する2つのカルボキシル基の一方もしくは両方の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体の具体例としては、市販品として、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#2311HP」)、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#2000」)、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#2100」)、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸(新中村化学工業社製。商品名「CB−1」)等が挙げられる。
【0027】
これら芳香環含有(メタ)アクリレートモノマー(x1)の中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、反応性に優れる点で特に好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0028】
上記芳香環含有ビニル系モノマー(x2)としては、例えば、スチレン、p−tブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレン、p−クロロスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸リチウム、ビス(4−ビニルフェニル)スルホン、2−ビニルナフタレン、α-メチルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。
【0029】
芳香環含有不飽和モノマー(x)の単量体成分[I]全体に対する含有割合としては、50重量%以上であることが必要であり、好ましくは65重量%以上、特に好ましくは重量80%以上である。かかる含有割合の上限としては100重量%である。
かかる芳香環含有不飽和モノマー(x)の含有割合が少なすぎると屈折率が充分に大きくならず好ましくない。
【0030】
本発明において、必要に応じて芳香環含有不飽和モノマー(x)と併用されるその他モノマーとしては、例えば、下記の単量体(a)〜(k)等(ただし、芳香環含有不飽和モノマー(x)を除く)があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル。
(b)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(c)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(d)エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体。
(e)メチロール基含有エチレン性不飽和単量体。
(f)アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体。
(g)シアノ基含有エチレン性不飽和単量体。
(h)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体。
(i)アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体。
(j)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(k)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
【0031】
本発明で使用する合成樹脂としては、上記(a)〜(k)以外に、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の単量体も、所望に応じて適宜使用することができる。
なお、本発明においては、酢酸ビニル等の単量体は、耐候性に劣るため、併用しないことが好ましい。
【0032】
つぎに、上記(a)〜(k)に例示された単量体について、詳述する。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20(好ましくは1〜10)の脂肪族(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜10の脂肪族(メタ)アクリレートである。
【0033】
上記ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも好ましくは、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、炭素数2〜4のアルキレン基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0034】
上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を用いることができ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、イタコン酸がより好ましい。なお、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のようなジカルボン酸の場合には、これらのモノエステルやモノアマイドを用いてもよい。
【0035】
上記エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体(d)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートである。
【0036】
上記メチロール基含有エチレン性不飽和単量体(e)としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
上記アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体(f)としては、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
上記シアノ基含有エチレン性不飽和単量体(g)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
【0039】
上記ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体(h)としては、例えば、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0040】
上記アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(i)としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0041】
上記スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(j)としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸(塩)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0042】
上記リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(k)としては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロイロキシエチル〕ホスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0043】
上記単量体(a)〜(k)の中でも、(b)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体、(c)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、(j)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体、(k)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、特に好ましくは(c)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体である。
【0044】
上記単量体(a)〜(k)の単量体成分[I]全体に対する含有割合としては、0〜50重量%であることが好ましく、特に好ましくは0〜35重量%、更に好ましくは0〜20重量%である。かかる単量体(a)〜(k)の含有割合が多すぎると塗膜の屈折率の低下や経時での安定性を低下させる傾向がある。
【0045】
本発明における合成樹脂は、上記単量体成分[I]が、単独重合または共重合されて得られるものである。
【0046】
次に本発明の合成樹脂エマルジョンについて説明する。
【0047】
本発明の合成樹脂エマルジョンは、上記単量体成分[I]の単独重合体もしくは共重合体が分散されたものであるが、この重合の際に、上記単量体成分[I]以外に、ノニオン系の界面活性剤(y)を使用することが必要であり、更に必要に応じて、重合開始剤、重合調整剤、その他界面活性剤、可塑剤、造膜助剤等の他の成分を適宜用いることができる。
【0048】
本発明においては、界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤(y)を用いることが、
塗膜の透明性の点で必要である。
【0049】
上記ノニオン系界面活性剤(y)としては、公知一般のノニオン系界面活性剤を用いることができ、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシ多環フェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類等の非反応性ノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類等の反応性ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0050】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、具体的には、花王(株)社製の商品名:「エマルゲン103(HLB=8.1)」「エマルゲン104P(HLB=9.6)」「エマルゲン105(HLB=9.7)」「エマルゲン106(HLB=10.5)」「エマルゲン108(HLB=12.1)」「エマルゲン109P(HLB=13.6)」「エマルゲン120(HLB=15.3)」「エマルゲン123P(HLB=16.9)」「エマルゲン130K(HLB=18.1)」「エマルゲン147(HLB=16.3)」「エマルゲン150(HLB=18.4)」等のポリオキシエチレンラウリルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン210P(HLB=10.7)」「エマルゲン220(HLB=14.2)」等のポリオキシエチレンセチルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン306P(HLB=9.4)」「エマルゲン320P(HLB=13.9)」「エマルゲン350(HLB=17.8)」等のポリオキシエチレンステアリルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン404(HLB=8.8)」「エマルゲン408(HLB=10)」「エマルゲン409PV(HLB=12)」「エマルゲン420(HLB=13.6)」「エマルゲン430(HLB=16.2)」等のポリオキシエチレンオレイルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン705(HLB=10.5)」「エマルゲン707(HLB=12.1)」「エマルゲン709(HLB=13.3)」「エマルゲン1108(HLB=13.5)」「エマルゲン1118S−70(HLB16.4)」「エマルゲン1135S−70(HLB=17.9)」「エマルゲン1150S−60(HLB=18.5)」等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン4085(HLB=18.9)」等のポリオキシエチレンミリステルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン2020G−HA(HLB=15)」等のポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲン2025G(HLB=15.7)」等のポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲンLS−106(HLB=12.5)」「エマルゲンLS−110(HLB=13.4)」「エマルゲンLS−114(HLB=14)」「エマルゲンMS−110(HLB=12.7)」等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲンMS−110(HLB=12.7)」等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲンB−66(HLB=13.2)」等のポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル類;
花王(株)社製の商品名:「エマルゲンPP−290」等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類;
等が挙げられる。
【0051】
上記ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類としては、具体的には、
日本乳化剤(株)社製の商品名:「ニューコール562(HLB=8.9)」「ニューコール560(HLB=10.9)」「ニューコール564(HLB=12.3)」「ニューコール565(HLB=13.3)」「ニューコール566(HLB=14.1)」「ニューコール568(HLB=15.2)」「ニューコール504(HLB=16.0)」「ニューコール506(HLB=17.2)」「ニューコール509(HLB=18.0)」「ニューコール516(HLB=18.8)」等のアルキルフェニルエーテル類;等が挙げられる。
【0052】
上記ポリオキシ多環フェニルエーテル類としては、具体的には、
花王(株)社製の商品名:「エマルゲンA−60(HLB=12.8)」「エマルゲンA−90(HLB=14.5)」「エマルゲンA−500(HLB=18)」等のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル類;
日本乳化剤社製の商品名:「ニューコール703(HLB=8.0)」「ニューコール704(HLB=9.2)」「ニューコール706(HLB=10.9)」「ニューコール707(HLB=12.3)」「ニューコール708(HLB=12.6)」「ニューコール709(HLB=13.3)」「ニューコール710(HLB=13.6)」「ニューコール711(HLB=14.1)」「ニューコール712(HLB=14.5)」「ニューコール714(HLB=15.0)」「ニューコール714(80)(HLB=15.0)」「ニューコール719(HLB=6.0)」「ニューコール723(HLB=16.6)」「ニューコール729(HLB=17.2)」「ニューコール733(HLB=17.5)」「ニューコール740(HLB=17.9)」「ニューコール747(HLB=18.2)」「ニューコール780(60)(HLB=18.9)」「ニューコール610(HLB=13.8)」「ニューコール2604(HLB=9.0)」「ニューコール2607(HLB=11.2)」「ニューコール2609(HLB=12.6)」「ニューコール2614(HLB=14.7)」「ニューコール707-F(HLB=12.5)」「ニューコール710-F(HLB=13.3)」「ニューコール714-F(HLB=14.1)」「ニューコール2608-F(HLB=12.5)」「ニューコール2600-FB(HLB=13.1)」「ニューコール2616-F(HLB=13.9)」「ニューコール3612-FA(HLB=13.2)」等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル類;
等が挙げられる。
【0053】
上記ソルビタン脂肪酸エステル類としては、具体的には、
花王(株)社製の商品名:「レオドールSP−L10(HLB=8.6)」「レオドールスーパーSP−L10(HLB=8.6)」等のソルビタンモノラウレート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールSP−P10(HLB=6.7)」等のソルビタンモノパルミテート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールSP−S10V(HLB=4.7)」「レオドールAS−10V(HLB=4.7)」等のソルビタンモノステアレート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールSP−S20(HLB=4.4)」等のソルビタンジステアレート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールSP−S30V(HLB=2.1)」等のソルビタントリステアレート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールSP−O10V(HLB=4.3)」「レオドールSP−O30V(HLB=1.8)」「レオドールAO−10V(HLB=4.3)等のソルビタンモノオレエート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールAO−15V(HLB=3.7)」等のソルビタンセスキオレエート類;
等が挙げられる。
【0054】
上記ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類としては、具体的には、
花王(株)社製の商品名:「レオドールTW−L120(HLB=16.7)」「レオドールTW−L106(HLB=13.3)」「レオドールスーパーTW−L120(HLB=16.7)」等のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールTW−P120(HLB=15.6)」等のポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールTW−S120V(HLB=14.9)」「レオドールTW−S106V(HLB=9.6)」等のポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート類;
「レオドールTW−S320V(HLB=10.5)」等のポリオキシエチレンソルビタントリステアレート類;
花王(株)社製の商品名:「レオドールTW−O120V(HLB=15)」「レオドールTW−O106V(HLB=10)」等のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート類;
等が挙げられる。
【0055】
上記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類としては、具体的には
花王(株)社製の商品名:「ラテムルPD−420(HLB=12.6)」「ラテムルPD−430(HLB=14.4)」「ラテムルPD−450(HLB=16.2)」等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類;
等が挙げられる。
【0056】
また、上記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類以外の反応性界面活性剤としては、例えば、(株)ADEKA社製「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープER−40」等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも
、乳化安定性の点で
、反応性ノニオン系界面活性剤
を用いることが必要である。
【0058】
また、上記ノニオン系界面活性剤(y)としては、水酸基を含有するノニオン系界面活性剤を用いることが
必要であり、特には
水酸基とオキシアルキレン基を含有するノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0059】
また、上記ノニオン系界面活性剤(y)としては、HLBが10以上のものを用いることが好ましく、特に好ましくは13以上、更に好ましくは15以上である。かかるHLBが低すぎると安定な合成樹脂エマルジョンが得られにくい傾向がある。なお、HLBの上限は通常20である。
【0060】
なお、上記HLB(Hydrophilie-Lipophile Balance)とは、Daviesの理論によるHLB値であり、HLB=Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)+7で表される値である。
【0061】
上記ノニオン系界面活性剤(y)の使用量は、単量体成分[I]全体100
重量部に対して、好ましくは0.5〜30重量部、特に好ましくは1〜25重量部、更に好ましくは3〜20重量部である。ノニオン系界面活性剤(y)の使用量が多すぎると耐水性が低下する傾向があり、少なすぎると重合時の安定性が低下しやすい傾向がある。
【0062】
上記重合開始剤としては、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能である。例えば、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2′−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等があげられる。
【0063】
これらの重合開始剤は単独であるいは2種以上併せて用いられる。これらの中でも重合安定性に優れる点で、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、レドックス系触媒(酸化剤:過硫酸カリウム,過硫酸ナトリウム、還元剤:亜硫酸ナトリウム,酸性亜硫酸ナトリウム,ロンガリット,アスコルビン酸)等が好適である。
【0064】
上記重合開始剤の使用量は、単量体成分[I]全体100重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.03〜3重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部である。重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合速度が遅くなる傾向があり、多すぎると、得られる共重合体の分子量が低くなり耐水性が低下しやすい傾向がある。
【0065】
なお、上記重合開始剤は、重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて重合途中に追加添加してもよい。あるいは、単量体成分[I]に予め添加したり、上記単量体成分[I]からなる乳化液に添加したりしてもよい。また、重合開始剤の添加に際しては、重合開始剤を別途溶媒や上記単量体成分[I]に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤をさらに乳化状にして添加したりしてもよい。
【0066】
また、前記重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、pH緩衝剤等があげられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0067】
この連鎖移動剤の使用は、重合を安定に行わせるという点では有効であるが、アクリル系樹脂の重合度を低下させ、得られる塗膜の弾性率を低下させる可能性がある。そのため、具体的には、連鎖移動剤の使用量は、単量体成分[I]全体100重量部に対して、0.01〜1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.5重量部、更に好ましくは0.01〜0.3重量部である。かかる連鎖移動剤の使用量が少なすぎると、連鎖移動剤としての効果が不足する傾向があり、使用量が多すぎると、反応性の低下や塗膜の弾性率が低下する傾向がある。
【0068】
また、上記pH緩衝剤としては、例えば、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸アンモニウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0069】
上記pH緩衝剤の使用量は、単量体成分[I]全体100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。かかるpH緩衝剤の使用量が少なすぎると、重合調整剤としての効果が不足する傾向があり、使用量が多すぎると、反応を阻害しやすい傾向がある。
【0070】
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内において、ノニオン系界面活性剤以外のその他界面活性剤を用いることも可能であり、例えば、アルキルもしくはアルキルアリル硫酸塩、アルキルもしくはアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;およびアンモニウム=α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
なお、分子内に二重結合を有した反応性界面活性剤を使用しても良い。
【0071】
上記可塑剤としては、例えば、アジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、燐酸系可塑剤等があげられ、前記造膜助剤としては、例えば、沸点が260℃以上のものがあげられる。
【0072】
また、可塑剤および造膜助剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、適宜選択することができ、例えば、可塑剤としては単量体成分[I]全体100重量部に対して通常0.1〜50重量部、造膜助剤としては単量体成分[I]全体100重量部に対して通常0.1〜50重量部である。
【0073】
つぎに、本発明の合成樹脂エマルジョンの製造方法について説明する。
本発明の合成樹脂エマルジョンは、例えば、ノニオン系界面活性剤(y)を用い、上記単量体成分[I]を乳化重合することによって製造することができる。この重合過程において、ノニオン系界面活性剤(y)により分散安定化されてなる合成樹脂を分散質とする合成樹脂エマルジョンが製造される。
【0074】
合成樹脂エマルジョンは、分散質が上記合成樹脂であり、また、分散媒としては、上記合成樹脂が分散質となるような分散媒が好ましい。このような分散媒の中でも、より好ましいのは水系媒体からなるものである。ここで水系媒体とは、水、または水を主体としてアルコール性溶媒を含有する水性溶媒をいい、好ましくは水である。
【0075】
本発明の合成樹脂エマルジョンの重合方法としては、
[1]単量体成分[I]、ノニオン系界面活性剤(y)、水等の全量を仕込み、昇温し重合する方法、
[2]反応缶にノニオン系界面活性剤(y)、水、単量体成分[I]の一部を仕込み、昇温し重合した後、残りの単量体成分[I]を滴下または分割添加して重合を継続する方法、
[3]反応缶にノニオン系界面活性剤(y)、水等を仕込んでおき昇温した後、単量体成分[I]を全量滴下または分割添加して重合する方法等があげられる。中でも、重合温度の制御が容易である点で、上記[2]、[3]の方法が好ましい。
なお、上記ノニオン系界面活性剤(y)は、単量体成分[I]の初期重合中、滴下重合中、後期熟成中、残存モノマー処理の追加重合中の、いずれの工程に使用しても差し支えない。
【0076】
上記[1]〜[3]に示す重合方法における重合条件としては、例えば、上記[1]の重合方法における重合条件として、通常、40〜100℃程度の温度範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度反応を行うこと等があげられる。
また、上記[2]の重合方法における重合条件としては、単量体成分[I]の1〜50重量%を通常40〜90℃で0.1〜5時間重合した後、残りの単量体成分[I]を1〜7時間程度かけて滴下または分割添加して、その後、上記温度で1〜3時間程度熟成すること等があげられる。
そして、上記[3]の重合方法における重合条件としては、重合缶に水を仕込み、40〜90℃に昇温し、単量体成分[I]を2〜7時間程度かけて滴下または分割添加し、その後、上記温度で1〜3時間程度熟成すること等があげられる。
【0077】
上記乳化液の、乳化の際の撹拌は、各成分を混合し、ホモディスパー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
【0078】
なお、本発明の合成樹脂エマルジョンには、必要に応じて、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0079】
また、本発明においては、ミニエマルジョン重合法を用いて重合することも好ましい。
【0080】
ミニエマルジョン重合法は、例えば、P.L.Tang, E.D.Sudol, C.A.SilebiおよびM.S.El-Aasserにより、Journal of Applied Polymer Science,第43巻、1059〜1066頁(1991年)に記載されている方法で行なうことができる。ミニエマルジョンは、重合可能なモノマーの水性エマルジョンであり、界面活性剤と共界面活性剤(cosurfactant)の存在下にモノマーを機械的に微分散することにより得られる。重合には水溶性または油溶性の開始剤を使用することが可能であり、モノマーの重合は水相中ではなく油滴内で起こる。この点、水相中のミセルで重合が開始する乳化重合とは異なる。
【0081】
本発明で使用する共界面活性剤(補助安定剤)としては、ミニエマルジョン重合法で使用されている公知のものを適宜使用することができ、例えば、(a)C8〜C30−アルカン、例えばヘキサデカン、(b)C8〜C30(好ましくはC10〜C30、更に好ましくはC12〜C30)−アルキル(メタ)アクリレート、例えば、ステアリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、(c)C8〜C30−アルキルアルコール、例えばセチルアルコール、(d)C8〜C30−アルキルチオール、例えばドデシルメルカプタン、(e)ポリマー、例えばフリーラジカル重合したポリマー、ポリアダクト、例えばポリウレタンまたは重縮合物、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、(f)その他、カルボン酸類、ケトン類、アミン類などが挙げられる。
本発明においては、水に対する溶解度がモノマーより低い共界面活性剤を選択して使用することが好ましい。
【0082】
本発明の合成樹脂エマルジョン中の合成樹脂の平均粒子径は、10〜1,000nm、特には10〜500nm、更には10〜200nmの範囲が好ましい。粒子径がより小さい方が、粒子の細密充填による塗膜の光沢や耐水性に有利である。この平均粒子径の測定は、光散乱法に基づくものである。
【0083】
この合成樹脂の平均粒子径は、重合時に用いる処方を適宜に調整することにより、所定の範囲内に設定することができ、例えば、重合時の撹拌速度等を調整すること等によって、所定範囲に設定することができる。
【0084】
上記合成樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−50〜100℃の範囲、更には−30〜90℃、特には0〜80℃であることが好ましい。ガラス転移温度が高すぎると、塗膜の造膜温度が高くなりすぎ、造膜不良の傾向がみられ、低すぎると塗膜のタック発生の原因となる傾向がみられる。
【0085】
なお、合成樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下記の式(1)に示すFoxの式で算出した値を用いた。
1/Tg=W
1/Tg
1+W
2/Tg
2+ ・・・ + W
n/Tg
n ・・・(1)
上記式(1)において、W
1からW
nは、使用している各単量体の重量分率を示し、Tg
1からTg
nは、各単量体の単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。また絶対温度は、絶対温度「K」=セルシウス温度「℃」+273.15として計算する。
【0086】
上記合成樹脂エマルジョンの不揮発分濃度(固形分濃度)は、5重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは5〜45重量%である。
なお、本発明における不揮発分濃度とは、105℃で1時間乾燥した後の不揮発分濃度(固形分濃度)をいう。
【0087】
かくして本発明の合成樹脂エマルジョンが得られる。
本発明の合成樹脂エマルジョンは、コーティング剤として有用であり、各種基材へのトップコート剤やアンカーコート剤など、塗膜形成用として有効に用いられるものである。
塗工方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられる。
【0088】
塗工膜厚(乾燥後の膜厚)としては、通常1〜50μmであることが好ましく、特には3〜30μmであることが好ましい。
【0089】
塗工する対象である基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂等やそれらの成型品(フィルム、シート、カップ等)、金属、ガラス等が挙げられる。
【0090】
上記塗工により得られる乾燥塗膜(コーティング層)の屈折率としては、589nmにおける屈折率として、1.48以上であることが好ましく、特に好ましくは1.49以上、更に好ましくは1.50以上である。
かかる屈折率が低すぎると、高屈折を要求する光学用途に使用しづらくなる傾向がある。
【0091】
また、上記乾燥塗膜(コーティング層)の透過率については、500nmにおける透過率として、85%以上であることが好ましく、特に好ましくは87%以上、更に好ましくは89%以上である。
かかる透過率が低すぎると、光学用途に使用しづらくなる傾向がある。
【0092】
本発明の芳香環含有不飽和モノマー(x)を50重量%以上含有する単量体成分[I]を重合して得られる合成樹脂が、ノニオン系界面活性剤(y)で分散安定化されてなる合成樹脂エマルジョンは、白濁が発生せずに透明であり、かつ高屈折率を示すコーティング層が得られるため、ディスプレイ、レンズ等の光学用コーティング剤として有用である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例中「%」、「部」とあるのは、重量基準を表す。
【0094】
<合成樹脂エマルジョン(A)の製造>
【0095】
[実施例1]<合成樹脂エマルジョン(A−1)の製造>
フェノキシエチルアクリレート10部、ヘキサデカン0.2部、アゾビスイソブチロニトリル0.05部を予め均一混合した後、反応性ノニオン系界面活性剤(ADEKA社製、「アデカリアソープER−20」:HLB=15.1)1.3部および水98.2部と混合撹拌し、乳化液(I)を得た。
得られた乳化液(I)に超音波処理装置(日本精機製作所Ultra Generator Model US-300Tを用い、出力97W/h )を用い、12分間超音波処理し、平均粒子径360nmの乳化液(II)を得た。
次に、冷却管、撹拌翼を備えたフラスコに、乳化液(II)を移し、撹拌下70℃に昇温し、70℃に保持したまま8時間撹拌を続けた後、30℃まで冷却し、200メッシュの金網でろ過し、合成樹脂エマルジョン(A−1)(不揮発分9.3%;平均粒子径922nm;ガラス転移温度−22℃)を得た。
【0096】
[実施例2]<合成樹脂エマルジョン(A−2)の製造>
実施例1において、ノニオン系界面活性剤を、反応性ノニオン系界面活性剤(ADEKA社製、「アデカリアソープER−30」:HLB=16.4)1.5部に変更し、水の使用量を99.5部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、合成樹脂エマルジョン(A−2)(不揮発分9.8%;平均粒子径817nm;ガラス転移温度−22℃)を得た。
【0097】
[実施例3]<合成樹脂エマルジョン(A−3)の製造>
実施例1において、ノニオン系界面活性剤を、反応性ノニオン系界面活性剤(ADEKA社製、「アデカリアソープER−40」:HLB=17.2)1.7部に変更し、水の使用量を99.3部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、合成樹脂エマルジョン(A−3)(不揮発分10.1%;平均粒子径306nm;ガラス転移温度−22℃)を得た。
【0101】
[比較例1]<合成樹脂エマルジョン(A’−1)の製造>
実施例1において、界面活性剤を、スルホン酸系のアニオン性界面活性剤(和光純薬工業社製、商品名「SDS」)0.5部に変更し、水の使用量を100部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、合成樹脂エマルジョン(A’−1)(不揮発分9.1%;平均粒子径250nm;ガラス転移温度−22℃)を得た。
【0102】
[比較例2]<合成樹脂エマルジョン(A’−2)の製造>
実施例1において、界面活性剤を、スルホン酸系のアニオン性界面活性剤(花王(株)社製、商品名「ラテムルE-118B」)1.1部に変更し、水の使用量を100部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、合成樹脂エマルジョン(A’−2)(不揮発分8.5%;平均粒子径210nm;ガラス転移温度−22℃)を得た。
【0103】
[比較例3]<合成樹脂エマルジョン(A’−3)の製造>
実施例1において、界面活性剤を、スルホン酸系のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、商品名「ハイテノールNF-08」)1.0部に変更し、水の使用量を100部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、合成樹脂エマルジョン(A’−3)(不揮発分9.6%;平均粒子径149nm;ガラス転移温度−22℃)を得た。
【0104】
実施例1〜
3、比較例1〜3で得られた合成樹脂エマルジョン(A)を用いて、以下の透明性評価を行なった。
【0105】
[透明性]
底径54mmの東洋アルミエコープロダクツ(株)製アルミカップにサンプルを2g量り取り、105℃の熱風循環式にて60分間乾燥させることにより、乾燥塗膜を得た。得られた乾燥塗膜について目視にて透明性を判断し、下記の基準にて評価した。結果は表1に記す。
(評価)
○・・・透明である
△・・・わずかに不透明である
×・・・全体に濁りがある
【0106】
【表1】
【0107】
また、実施例1、
3、比較例1〜3の合成樹脂エマルジョンを用いて、以下の通り透過率、および屈折率を測定した。
【0108】
[透過率]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、合成樹脂エマルジョンを乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工、乾燥し、乾燥塗膜付きPETフィルムを得た。
乾燥塗膜付きPETフィルムの500nmにおける透過率を分光光度計(電子吸収スペクトル)(商品名「UV−3100PC」(SIMADZU社製)を用いて測定した。測定値および評価結果を表2に記す。
(評価)
○・・・85%以上
×・・・80%未満
【0109】
[屈折率]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、合成樹脂エマルジョンを乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工、乾燥し、乾燥塗膜付きPETフィルムを得た。
乾燥塗膜付きPETフィルムの589nmにおける屈折率を屈折率計(商品名「DR−M2」(アタゴ社製))を用いて測定した。測定値および評価結果を表2に記す。
(評価)
○・・・1.48以上
×・・・1.48未満
【0110】
【表2】
【0111】
上記において、実施例、比較例ともに高屈折率を有していたが、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を使用した実施例の合成樹脂エマルジョンから得られるコーティング層は透明性に優れるものであるのに対し、ノニオン系界面活性剤を使用せずにスルホン酸系界面活性剤を使用した比較例では透明性に劣る結果となった。