(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223700
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/12 20060101AFI20171023BHJP
B60Q 1/068 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
F21S8/12 253
B60Q1/068 100
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-61494(P2013-61494)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-186889(P2014-186889A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】駒野 健二
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】弘中 将太
(72)【発明者】
【氏名】奥村 貫一
【審査官】
當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−243520(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/064400(WO,A1)
【文献】
特開平09−180510(JP,A)
【文献】
特開昭60−084514(JP,A)
【文献】
実開昭50−106552(JP,U)
【文献】
特開平11−125230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
B60Q 1/00−1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に、リフレクタ又は前記ハウジングに保持される光源と前記リフレクタを収容するとともに、該リフレクタを前記ハウジングに対して少なくとも上下方向に回動可能に支持し、前記ハウジングに回転可能に支持された調整ネジを前記灯室内に垂直に配置し、前記リフレクタに設けられたラックを前記調整ネジに噛合せしめて成るエーミング機構を備える車両用灯具において、
前記リフレクタは、前記ハウジングに対して支点を中心として上下に回動可能に支持されており、
前記ラックの後面は、前記リフレクタの背面に前記支点を中心とする円弧曲面として構成されるとともに、該後面に前記ラックの幅方向に延びる複数の歯が刻設されており、
前記調整ネジは、前記灯室内に臨む部分にネジ部を備え、
前記ネジ部と前記ラックの歯が噛合してラックアンドピニオン機構を構成しており、
前記調整ネジの硬度を前記ラックの硬度よりも高く設定し、
前記ラックの前記ラックアンドピニオン機構を構成する各歯の表面の幅方向中央部に突起を突設したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ラックの各歯に形成された突起と前記調整ネジとを点接触又は線接触させたことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、光軸調整を行うためのエーミング機構
を備える車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前端左右に配置されるヘッドランプやフォグランプ等の車両用灯具には、光軸を調整するためのエーミング機構が設けられている。このエーミング機構は、ハウジングに保持された光源に対してリフレクタを回動可能に支持し、調整ネジを回すことによって前記リフレクタを光源及びハウジングに対して傾動させて光軸調整を行うものである。
【0003】
ところで、特許文献1には、
図4に示すようなエーミング機構が提案されている。
【0004】
即ち、
図4は特許文献1において提案されたエーミング機構を備えるヘッドランプの側断面図であり、図示のヘッドランプ101においては、ハウジング102に保持された光源に対してリフレクタ105が回動可能に支持され、該リフレクタ105の背面の一部には歯車(ラック)108が形成されている。
【0005】
又、リフレクタ105の背面側(
図4の右側)には、垂直に配された調整ネジ110がハウジング102に回転可能に挿通支持されており、その中間高さ位置(リフレクタ105の歯車108に対向する位置)にはネジ(ピニオン)110bが形成されている。そして、このネジ110bとリフレクタ105に形成された歯車108とは互いに噛合してラックアンドピニオン機構を構成しており、調整ネジ110と歯車108によってエーミング機構が構成されている。
【0006】
上記エーミング機構を備えるヘッドランプ101において、光軸調整に際して調整ネジ110を回すと、その回転は該調整ネジ110に形成されたネジ110bとこれに噛合する歯車108によってリフレクタ105の上下方向の回動運動に変換され、該リフレクタ105が支点(ピボット点)を中心として上下に傾動するために所要の光軸調整がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP1055556A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4に示すヘッドランプ101に設けられたエーミング機構においては、調整ネジ110のネジ(ピニオン)110bとリフレクタ105の歯車(ラック)108とが弾性的に接触し、噛合している。このため、両者にバックラッシュを設けても、前述のように両者は弾性的に接触しているため、このバックラッシュが吸収されてしまい、両者の噛み合い部の摩擦抵抗が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、振動によるガタツキの発生を抑制し、且つ、小さなトルクで光軸調整を行うことができる車両用灯
具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に、リフレクタ又は前記ハウジングに保持される光源と前記リフレクタを収容するとともに、該リフレクタを前記ハウジングに対して少なくとも上下方向に回動可能に支持し、前記ハウジングに回転可能に支持された調整ネジを前記灯室内に垂直に配置し、前記リフレクタに設けられたラックを前記調整ネジに噛合せしめて成るエーミング機構を備える車両用灯具において、
前記リフレクタは、前記ハウジングに対して支点を中心として上下に回動可能に支持されており、
前記ラックの後面は、前記リフレクタの背面に前記支点を中心とする円弧曲面として構成されるとともに、該後面に前記
ラックの幅方向に延びる複数の歯が刻設されており、
前記調整ネジは、前記灯室内に臨む部分にネジ部を備え、
前記ネジ部と前記ラックの歯が噛合してラックアンドピニオン機構を構成しており、
前記調整ネジの硬度を前記ラックの硬度よりも高く設定し、
前記ラックの前記ラックアンドピニオン機構を構成する各歯の表面の幅方向中央部に突起を突設したことを特徴とする。
【0012】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明において、前記ラックの各歯に形成された突起と前記調整ネジとを点接触又は線接触させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、リフレクタに設けられたラックの各歯の幅方向中央部に突起を突設したため、該ラックに設けられた突起以外の部分と調整ネジ(ピニオン)との噛み合い部にバックラッシュを設けることが可能となる。このため、調整ネジを小さなトルクで回すことができ、該ラックの突起と調整ネジが接触しているため、バックラッシュに伴うリフレクタの振動によるガタツキが抑制され、異音の発生や点灯時の照明光の揺れ等の問題が解消される。
【0014】
又、リフレクタのラックの硬度の方が調整ネジの硬度よりも低い(柔らかい)ため、該ラックの各歯に突設された突起が調整ネジ(ピニオン)との噛合によって潰されて調整ネジに密着する。このため、ラックと調整ネジとの噛み合い部で一部が接触することとなり、リフレクタのガタツキが一層効果的に抑制される。
【0015】
請求項
2記載の発明によれば、リフレクタのラックの各歯に形成された突起と調整ネジとを点接触又は線接触させたため、両者の噛み合い部の摩擦抵抗が小さく抑えられ、調整ネジを小さなトルクで回すことができるために滑らかな光軸調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係
るフォグランプの側断面図である。
【
図3】(a)〜(c)はラックの各歯に突設された突起の種々の形態を示す部分斜視図である。
【
図4】特許文献1において提案されたエーミング機構を備えるヘッドランプの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係
るフォグランプの側断面図、
図2は
図1のA部拡大斜視図、
図3(a)〜(c)はラックの各歯に突設された突起の種々の形態を示す部分斜視図である。
【0019】
図1に示すフォグランプ1は、車両の前端左右に配置される灯具であって、ハウジング2とその前面開口部を覆うアウタレンズ3によって画成される灯室4内に、不図示の光源を保持して成るリフレクタ5と、該リフレクタ5の周囲を覆うエクステンション6と
、エーミング機構等を収容して構成されている。尚、左右のフォグランプ1の基本構成は同じであるため、以下、一方についてのみ図示及び説明する。
【0020】
上記ハウジング2は光不透過性の樹脂によって一体成形されており、その前面開口部を覆う前記アウタレンズ3は、光透過性の透明樹脂によって一体成形されており、該アウタレンズ3の周縁はハウジング2の前面開口部周縁に形成された嵌合溝2aに嵌め込まれ、その嵌め込み部がホットメルト等の接着剤7によって接着されることによって当該アウタレンズ3がハウジング2に固定されている。尚、前記エクステンション6は、ハウジング2と同様の光不透過性樹脂によって一体成形されている。
【0021】
前記リフレクタ5は、これの中心部に保持された不図示の光源から出射する光を前方(
図1の左方)に向けて反射させるものであって、その内面は反射面5aを構成しており、この反射面5aにはアルミ蒸着等の反射処理が施されている。
【0022】
ところで、リフレクタ5は、ハウジング2に対して不図示の支点(ピボット点)を中心として上下に回動可能に支持されており、その背面上部には中空状のラック8が設けられている。このラック8の後面は、リフレクタ5の支点(ピボット点)を中心とする円弧曲面として構成されており、この後面には、
図2に示すように幅方向に直線状に延びる複数の歯8aが刻設されている。そして、各歯8aの幅方向中心には突起9がそれそれ突設されている。ここで、突起9としては、
図3(a)に示すような幅方向に長い半円柱状のもの、
図3(b)に示すような前後方向に長い半円柱状のもの、
図3(c)に示すような半球状のもの等が考えられる。
【0023】
他方、
図1に示すように、ハウジング2の背面側には円筒状のホルダ部2bが垂直方向に一体に形成されており、このホルダ部2bには調整ネジ10が下方から差し込まれて回転可能に支持されている。調整ネジ10は、前記ラック8の歯8aと噛合した際、変形しないようにハウジング2のホルダ部2bによって挟持されている。そして、この調整ネジ10は、その下端の頭部10aがハウジング2の下方に突出しており、灯室4内に臨む部分の上端部にはネジ部(ピニオン)10bが形成されている。そして、調整ネジ10のネジ部(ピニオン)10bには、リフレクタ5に設けられた前記ラック8の歯8aが噛合しており、ネジ部10bとラック8はラックアンドピニオン機構を構成している。又、調整ネジ10とラック8によってエーミング機構が構成されている。尚、本実施の形態では、ラック8の材質にはPCが使用され、調整ネジ10の材質にはラック8の材質(PC)よりも硬度の高いPOMが使用されている。
【0024】
前記エーミング機構を備えるフォグランプ1において、光軸調整に際して調整ネジ10の頭部10aを操作して該調整ネジ10を何れかの方向に回すと、その回転は該調整ネジ10の先端部のネジ部10bとこれに噛合するリフレクタ5のラック8によってリフレクタ5の上下方向の回動運動に変換され、該リフレクタ5が不図示の光源と共に支点(ピボット点)を中心として上下に傾動するため、当該フォグランプ1の光軸調整がなされる。
【0025】
而して、本実施の形態においては、リフレクタ5に設けられたラック8の各歯8aの幅方向中央部に
図3(a)〜(c)に示すような突起9を突設したため、該ラック8に設けられた突起9以外の部分と調整ネジ10のネジ部(ピニオン)10bとの噛み合い部にバックラッシュを設けることが可能となり、突起9によりバックラッシュに伴うリフレクタ5の振動によるガタツキが抑制され、異音の発生や点灯時の照明光の揺れ等の問題が解消される。又、ラック8の突起9以外の部分と調整ネジ10のネジ部10bには適度なバックラッシュを設けることができるため、調整ネジ10を小さなトルクで回すことができ、滑らかな光軸調整が可能となる。そして、本実施の形態では、ラック8の硬度の方が調整ネジ10の硬度よりも低い(柔らかい)ため、該ラック8の各歯8aに突設された突起9が調整ネジ10のネジ部(ピニオン)10bとの噛合によって潰されて調整ネジ10のネジ部(ピニオン)10bに密着する。このため、ラック8と調整ネジ10のネジ部10bとの噛み合い部で一部が接触することとなり、リフレクタ5のガタツキが一層効果的に抑制される。
【0026】
又、ラック8の各歯8aに形成された突起9として、
図3(a),(b)に示すような半円柱状のものや、
図3(c)に示すような半球状のものを用いれば、該突起9と調整ネジ10のネジ部10bとを線接触又は点接触させることができるため、両者の噛み合い部の摩擦抵抗が小さく抑えられ、調整ネジ10を小さなトルクで回すことができるために滑らかな光軸調整が可能になるという効果が得られる。
【0027】
尚、以上は本発明をフォグランプ
に対して適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ等の他の任意の車両用灯
具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【0028】
又、以上は光源がリフレクタ5に保持された形態について説明したが、光源をハウジング2によって保持し、リフレクタ5を光源及びハウジング2に対して回動可能に支持するようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 フォグランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
2a ハウジングの嵌合溝
2b ハウジングのホルダ部
3 アウタレンズ
4 灯室
5 リフレクタ
5a リフレクタの反射面
6 エクステンション
7 接着剤
8 ラック
8a ラックの歯
9 突起
10 調整ネジ
10a 調整ネジの頭部
10b 調整ネジのネジ部(ピニオン)