(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223705
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】アルキルイミダゾール化合物の抽出方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/58 20060101AFI20171023BHJP
C07D 207/323 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
C07D233/58
C07D207/323
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-81151(P2013-81151)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-201573(P2014-201573A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年4月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 学
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真康
【審査官】
前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−169865(JP,A)
【文献】
特開昭60−056961(JP,A)
【文献】
特開平01−149772(JP,A)
【文献】
特開昭56−032464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/00
C07D 207/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロールを抽出剤として用いる式(1)で示されるアルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液からの式(1)で示されるアルキルイミダゾール化合物の抽出方
法。
式(1):
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R
2〜R
4は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環式化合物を抽出剤として用いるアルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液からのアルキルイミダゾール化合物の抽出方法に関する。
アルキルイミダゾール化合物は、医薬、農薬、機能性材料等の中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
アルキルイミダゾール化合物は、医薬、農薬、機能性材料等の中間体として有用な化合物であり、特に、グリーンケミストリーの分野において、リサイクル可能な溶媒としてのイオン液体の原料として有用な化合物である。
アルキルイミダゾール化合物を製造する方法としては、グリオキサール、ホルムアルデヒド、アンモニア及びメチルアミンを液相バッチ反応させた後、得られた反応液を1−ブチルアルコールで3回抽出することにより、収率70%で1−メチルイミダゾールを得たことが報告されている。また、同様の反応を行った後、酢酸エチルで3回抽出することにより、収率69%で1−メチルイミダゾールを得たことが報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−169865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来法において、グリオキサール、ホルムアルデヒド、アンモニア及びメチルアミンを液相バッチ反応させる方法は、水溶液での反応である上、反応工程においても水が副生するため、生成物である1−メチルイミダゾールを抽出等の方法で水と分離する必要がある。特許文献1の実施例には、前記の通り、反応液を1−ブチルアルコール、酢酸エチルを用いて1−メチルイミダゾールを抽出したことが記載されているが、本発明者らが特許文献1を参考に1−ブチルイミダゾール、酢酸エチル等によりアルキルイミダゾール化合物の抽出を試みたところ、これらの抽出剤ではアルキルイミダゾール化合物を効率よく抽出できないことがわかった(後述の比較例参照)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討した結果、アルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液に対して、抽出剤として複素環式化合物を用いるとアルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液からアルキルイミダゾール化合物を効率よく抽出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、複素環式化合物を抽出剤として用いるアルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液からのアルキルイミダゾール化合物の抽出方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液からアルキルイミダゾール化合物を効率よく抽出することができるため、本発明は工業的に有用な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明におけるアルキルイミダゾール化合物は、式(1):
【0010】
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R
2〜R
4は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。)で示されるアルキルイミダゾール化合物(以下、アルキルイミダゾール(1)という。)である。
【0011】
式(1)中、炭素数1〜8のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0012】
アルキルイミダゾール(1)の具体例としては、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−ペンチルイミダゾール、1−ヘキシルイミダゾール、1−ヘプチルイミダゾール、1−オクチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,2,5−トリメチルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール等が挙げられ、1−メチルイミダゾールが好ましい。
【0013】
本発明のアルキルイミダゾール化合物を含有する水溶液は、水溶液中に少なくともアルキルイミダゾール(1)を含有していればよく、アルキルイミダゾール(1)以外の不純物を含有していてもよい。アルキルイミダゾール(1)を含有する水溶液は、例えば、特許文献1に記載の方法により製造することができる。アルキルイミダゾール(1)を含有する水溶液の濃度は、アルキルイミダゾール(1)の含有量が1〜95重量%の範囲であり、好ましくは10〜80重量%の範囲である。
【0014】
本発明では、抽出剤として複素環式化合物を用いる。複素環式化合物としては、通常、複素環式芳香族化合物が用いられ、中でも分子内に1個以上の窒素原子を有する複素環式芳香族化合物が好ましく用いられる。
【0015】
分子内に1個以上の窒素原子を有する複素環式芳香族化合物としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン及びそれら化合物の芳香環上の少なくとも1つの水素原子がアルキル基に置換された化合物が挙げられ、それら化合物の2種以上の混合物を用いてもよい。
【0016】
分子内に1個以上の窒素原子を有する複素環式芳香族化合物として特に好ましいのは、下記式(2)で示されるピロール化合物(以下、ピロール(2)という。)である。
【0017】
【化2】
(式中、R
5〜R
8は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【0018】
式(2)中、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0019】
ピロール(2)としては、ピロール、2−メチルピロール、3−メチルピロール、2,3−ジメチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール等が挙げられ、それら化合物の2種類以上の混合物も用いることができる。中でも好ましく用いられるのは、ピロールである。
【0020】
本発明は、通常0〜100℃の範囲の温度で、好ましくは10〜40℃の範囲の温度で、実施できる。抽出の方法としては特に制限されず、バッチ式、連続式のいずれの方式も採用することができる。
【0021】
本発明における抽出剤の使用量は、アルキルイミダゾール(1)を含有する水溶液1重量部に対して、抽出剤0.1〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜5.0重量部の範囲である。アルキルイミダゾール(1)を含有する水溶液からアルキルイミダゾール(1)を抽出する際の抽出操作回数は、特に制限されず、合計の抽出剤使用量が同じ場合、操作回数が多いほど効率が良くなるが、経済的には不利となるため、1〜10回程度が好ましい。
【0022】
抽出、分液によりアルキルイミダゾール(1)を含有するピロール(2)溶液を取得した後、蒸留等の通常の手段によって、アルキルイミダゾール(1)とピロール(2)を分離し、目的物であるアルキルイミダゾール(1)を得ることができる。
【実施例】
【0023】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。なお、実施例中のガスクロマトグラフィーによる分析は以下の条件で、分配係数はガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果から以下の定義に従って算出した。
1)ガスクロマトグラフィー分析条件
ガスクロマトグラフ:島津製作所製GC−2010
カラム:J&W社製、DB−WAX、30m、内径0.32mm,膜厚0.25μm
温度:50℃(3min)→(15℃/min)→200℃(0min)
→(20℃/min)→250℃(9.5min)
2)分配係数
分配係数=ピロール(2)層に含有されるアルキルイミダゾール(1)濃度(重量%)/水層中に含有されるアルキルイミダゾール(1)濃度(重量%)
【0024】
実施例1
1−メチルイミダゾール8.9重量%、1,2−ジメチルイミダゾール0.9重量%、イミダゾール0.9重量%を含有する水溶液9.0gに対して、抽出剤としてピロールを8.0g添加し室温で十分に撹拌混合した。得られた溶液を室温で静置後、同温度で分液し、得られたピロール(2)層及び水層中に含まれるアルキルイミダゾール(1)をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果を表1に示す。
【0025】
比較例1〜5
抽出剤として、ピロールに代えて表1に記載の抽出剤を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その結果を表1にまとめて示す。
【0026】
【表1】