(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
精製トリテルペンアルコール中、トリテルペンアルコール遊離体の含有量が50質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
更に、トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%超であるオリザノールに有機溶媒を接触させる処理を行い、トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%以下である原料オリザノールを得る工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、原料オリザノールをアルカリ加水分解して精製トリテルペンアルコールを製造する方法であって、
(1)トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%以下である原料オリザノールを、当該原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率が80%以上となるようにアルカリ加水分解する工程、
(2)工程(1)で得られたアルカリ加水分解物を水洗し、トリテルペンアルコールを得る工程、を含む。
【0011】
本発明の工程(1)は、トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%以下である原料オリザノールを、当該原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率が80%以上となるようにアルカリ加水分解する工程である。
オリザノールは、米糠油、トウモロコシ油、その他の穀類の糠油中に存在する物質で、トリテルペンアルコールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルとトリテルペンアルコール以外の植物ステロールのフェルラ酸エステルの総称である。
【0012】
オリザノールは、前記米糠油等の製造過程で生じる脱酸フーツ(脱酸工程で分離されるアルカリ油さい)に多く含まれる。このため、オリザノールには、トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩(以下、脂肪酸(塩)とも記する)が多く含有されている。
本発明の方法においては、アルカリ加水分解の原料として、トリアシルグリセロールと脂肪酸(塩)の合計含有量が15質量%(以下、単に%とする)以下であるオリザノールを用いる。
原料として用いるオリザノール(原料オリザノール)中のトリアシルグリセロールと脂肪酸(塩)の合計含有量は、加水分解後のトリテルペンアルコールの濾過分離を良好にする観点から、更に12%以下、更に9%以下、更に6%以下、更に3%以下、更に2%以下が好ましい。
【0013】
また、原料オリザノール中、トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの含有量は、トリテルペンアルコールの収量の観点から、50%以上、更に60%以上、更に70%以上であること好ましく、工業生産性及びコストの観点から、95%以下、更に90%以下、更に85%以下、更に80%以下が好ましい。
【0014】
また、原料オリザノール中、植物ステロールフェルラ酸エステルの含有量は、トリテルペンアルコールの収量の観点から、50%以下、更に40%以下、更に35%以下が好ましく、工業生産性及びコストの観点から、5%以上、更に10%以上、更に20%以上が好ましい。
【0015】
かかる原料オリザノールは、例えば脱酸フーツの水蒸気処理、超臨界炭酸ガス抽出等によって得ることができる。
また、トリアシルグリセロールと脂肪酸(塩)の合計含有量が15質量%超であるオリザノールに、有機溶媒を接触させる処理を行うことで、オリザノール中のトリアシルグリセロールと脂肪酸(塩)を低減させることもできる。
ここで用いられる有機溶媒としてはヘプタンやヘキサン等の炭化水素類やエタノール等の低級アルコールが挙げられる。
具体的な接触方法としては、トリアシルグリセロールと脂肪酸(塩)の合計含有量が15質量%超であるオリザノールに上記有機溶媒を3質量倍以上添加し、攪拌、濾別後、乾燥する方法が挙げられる。
【0016】
本発明の方法においては、原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルを十分にアルカリ加水分解することが重要である。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率を80%以上とすることで、粘りが少なく、流動性に優れた粉末状のトリテルペンアルコールを得ることができる。
トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は、上記と同様の観点から、82%以上が好ましく、更に84%以上、更に90%以上、更に95%以上が好ましい。なお、トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は、後記実施例に記載のとおり次式(1)により求められる。
トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率[%]=[(アルカリ加水分解後のトリテルペンアルコール遊離体のモル数−アルカリ加水分解前のトリテルペンアルコール遊離体のモル数)/原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルのモル数]×100 (1)
【0017】
本発明で用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等が挙げられる。なかでも、取り扱い性の点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、更に水酸化カリウムが好ましい。
【0018】
アルカリの濃度は、トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルを十分に加水分解するという観点より、0.1mol/dm
3以上が好ましく、更に0.5mol/dm
3以上、更に1mol/dm
3以上、更に1.5mol/dm
3以上、更に2mol/dm
3以上が好ましい。また、アルカリの濃度は、加水分解反応後の水洗を効率的に行う観点から、5mol/dm
3以下が好ましく、更に3mol/dm
3以下が好ましい。
【0019】
本発明の方法においては、アルカリ水溶液、更にはアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いて加水分解を行うことが好ましい。
反応温度は、トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルを十分に加水分解するという観点より、110℃以上が好ましく、更に120℃以上、更に140℃以上、更に150℃以上が好ましい。また、反応温度は、得られたトリテルペンアルコールの分解を抑制する観点より、240℃以下が好ましく、更に200℃以下、更に180℃以下が好ましい。
【0020】
反応時間は、アルカリ濃度と反応温度とから適宜選択されるが、トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルを十分に加水分解できる条件を選択することが好ましい。具体的には、操作性の観点から、1分〜180分が好ましく、更に3分〜150分、更に5分〜120分が好ましい。
これらの条件を採用することにより、原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルを十分に加水分解することができる。また、本条件により、植物ステロールのフェルラ酸エステルも十分に加水分解することができる。
【0021】
本発明の方法における工程(2)は、前記工程(1)で得られたアルカリ加水分解物を水洗し、トリテルペンアルコールを得る工程である。
水洗方法としては、アルカリ加水分解物の濾過中に水で掛け洗いをする連続式やアルカリ加水分解物と水を混合・攪拌し濾別するバッチ式が挙げられる。水としては、例えば、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水が例示される。
【0022】
また、水として酸性水溶液を使用することもできる。酸性水溶液を調製するために用いられる酸としては、公知の酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、フェルラ酸アルカリ塩との反応を回避する観点から、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸等の弱酸を用いるのが好ましく、更にクエン酸が好ましい。
水として酸性水溶液を使用する場合の酸性水溶液のpH(25℃)は1〜6が好ましく、更に4〜6が好ましい。
【0023】
水の使用量は、残存するアルカリとフェルラ酸アルカリ塩を効率的に除去する観点から、アルカリ加水分解物に対し、5質量倍以上が好ましく、更に10質量倍以上が好ましい
【0024】
水の温度は、トリテルペンアルコールの融点以下が好ましく、90℃以下、更に70℃以下、更に50℃以下が好ましい。また、操作性の観点から、5℃以上、更に10℃以上、更に15℃以上が好ましい。
【0025】
水洗時間は1〜120分が好ましく、5〜60分がより好ましく、10〜30分が更に好ましい。
水洗は1回でも複数回でもよく、例えば2回、3回繰り返してもよい。
【0026】
本発明の方法においては、工程(2)に先立ち、アルカリ加水分解で使用されずに残存したアルカリを酸で中和する工程を行うのが、アルカリを効率的に除去する観点から好ましい。
酸は上記と同様の公知の酸を使用できる。なかでも、フェルラ酸アルカリ塩との反応を回避する観点から、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸等の弱酸を用いるのが好ましく、更にクエン酸が好ましい。
酸の添加量は、加水分解に使用したアルカリに対して、0.7倍当量以上が好ましく、更に0.8倍当量以上、更に0.9倍当量以上が好ましい。
【0027】
このような処理により、アルカリ加水分解物から残存するアルカリやフェルラ酸アルカリ塩等が除去され、精製トリテルペンアルコールが得られる。更に、水洗後、乾燥することにより粉末状の形態で精製トリテルペンアルコールが得られる。
乾燥の方法は、公知の方法を適用できる。乾燥温度は、乾燥時間短縮の観点から、20℃以上、更に30℃以上、更に40℃以上、更に50℃以上が好ましい。乾燥温度の上限は、トリテルペンアルコールの融点以下が好ましく、更に120℃以下、更に100℃以下が好ましい。また、乾燥時間は、水分を十分に除去する観点から3時間以上、更に6時間以上、更に12時間以上が好ましい。
【0028】
本明細書においてトリテルペンアルコールとは、炭素数30又は31の四環性トリテルペンアルコールを云う。これらトリテルペンアルコールは、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール等の炭素数28又は29の4−デスメチルステロールとは明確に相違する化合物である。トリテルペンアルコールは、遊離型のトリテルペンアルコールと脂肪酸エステル型のトリテルペンアルコールを含む。本明細書において遊離型とはステロイド核のC−3位に水酸基をもつものを指し、脂肪酸エステル型とは、前記遊離型のC−3位の水酸基に脂肪酸がエステル結合したものを指す。
トリテルペンアルコール遊離体には、例えば、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール、シクロブラノール、シクロアルタノール、シクロサドール、シクロラウデノール、ブチロスペリモール、パルケオール等が含まれる。
【0029】
本発明において、精製トリテルペンアルコールのトリテルペンアルコール純度は、生理機能を有効に発揮する観点から50%以上、更に60%以上、更に70%以上であることが好ましく、工業生産性の観点から95%以下、更に90%以下、更に80%以下であることが好ましい。ここで、トリテルペンアルコール純度とは、精製トリテルペンアルコール中のトリテルペンアルコール遊離体の濃度である。
【0030】
また、精製トリテルペンアルコール中、植物ステロール遊離体の含有量は、植物ステロールの生理機能を有効に発揮する観点から、5%以上、更に10%以上、更に20%以上が好ましく、工業生産性の観点から50%以下、更に40%以下、更に30%以下であることが好ましい。
植物ステロール遊離体には、例えば、β−シトステロール、カンペステロール、α−シトステロール、スチグマステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、ブラシカステロール、フコステロール、イソフコステロール、スピナステロール、アベナステロール等が含まれる。
【0031】
本発明の精製トリテルペンアルコールは、粘りが少なく、流動性に優れ、取り扱いが容易なため幅広い用途に使用可能である。例えば、様々な飲料や食品に配合して使用することができる。
【0032】
本発明の態様及び好ましい実施態様を以下に示す。
【0033】
<1>原料オリザノールをアルカリ加水分解して精製トリテルペンアルコールを製造する方法であって、
(1)トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%以下である原料オリザノールを、当該原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率が80%以上となるようにアルカリ加水分解する工程、
(2)工程(1)で得られたアルカリ加水分解物を水洗し、トリテルペンアルコールを得る工程、
を含む精製トリテルペンアルコールの製造方法。
【0034】
<2>原料オリザノール中のトリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が、好ましくは12質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である<1>に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<3>原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である<1>又は<2>に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<4>原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率が、好ましくは82%以上、より好ましくは84%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である<1>〜<3>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<5>アルカリが、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア及びアミン類から選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化カリウムである<1>〜<4>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<6>アルカリの濃度が、好ましくは0.1mol/dm
3以上、より好ましくは0.5mol/dm
3以上、より好ましくは1mol/dm
3以上、更に好ましくは1.5mol/dm
3以上、更に好ましくは2mol/dm
3以上であり、また、好ましくは5mol/dm
3以下、より好ましくは3mol/dm
3以下である<1>〜<5>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<7>工程(1)のアルカリ加水分解をアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いて行う<1>〜<6>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<8>工程(1)のアルカリ加水分解の反応温度が、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、また、好ましくは240℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である<1>〜<7>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<9>工程(1)のアルカリ加水分解の反応時間が、好ましくは1分〜180分、より好ましくは3分〜150分、更に好ましくは5分〜120分である<1>〜<8>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<10>水洗に使用する水の量が、アルカリ加水分解物に対し、好ましくは5質量倍以上、より好ましくは10質量倍以上である<1>〜<9>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<11>水の温度が、好ましくはトリテルペンアルコールの融点以下、より好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは50℃以下であり、また、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上である<1>〜<10>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<12>更に、アルカリ加水分解後、使用されずに残存したアルカリを酸で中和する工程を含む、<1>〜<11>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<13>中和に用いる酸が、好ましくは塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはリン酸、クエン酸及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはクエン酸である<12>に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<14>水洗後、トリテルペンアルコールを乾燥する工程を含む<1>〜<13>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<15>精製トリテルペンアルコール中、トリテルペンアルコール遊離体の含有量が好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である<1>〜<14>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<16>更に、トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%超であるオリザノールに有機溶媒を接触させる処理を行い、トリアシルグリセロール、脂肪酸及び脂肪酸塩の合計の含有量が15質量%以下である原料オリザノールを得る工程を含む、<1>〜<15>のいずれか1に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
<17>有機溶媒が、好ましくは低級アルコール、より好ましくはエタノールである<16>に記載の精製トリテルペンアルコールの製造方法。
【実施例】
【0035】
〔分析方法〕
(1)トリテルペンアルコール遊離体及び植物ステロール遊離体
固相抽出カラムにより、油とトリテルペンアルコール遊離体画分と植物ステロール遊離体画分を分離した。分離したトリテルペンアルコール遊離体画分と植物ステロール遊離体画分をそれぞれ約25mgとり、クロロホルムで10mLにメスアップした。これをGCに1μL注入し分析した。GC分析の条件は下記のとおりである。
固相抽出カラム:Sep−Pak syika 5g
カラム:キャピラリーGCカラム DB−1(J&W)、30mx0.25mm、膜厚
0.25μm
キャリアガス:He、2.30mL/min
インジェクター:Split(40:1)、T=300℃
ディテクター:FID、T=300℃
オーブン温度:150℃で1.5分間保持、15℃/分で250℃まで昇温、5℃/分
で320℃まで昇温、3分間保持
【0036】
(2)オリザノール
オリザノールとして0.2〜0.8mg/10mlとなるように、サンプルを酢酸エチルでメスアップし、完全に溶解・混合を確認後、HPLCを使用して分析した。
カラム:Inersil ODS−3(Φ4.6×250μm)
メソッド:波長325nm、分析時間60分、カラム温度40℃、流量1.2ml/min
【0037】
(3)トリアシルグリセロール及び脂肪酸(塩)
原料オリザノールの質量からオリザノールと各遊離体の質量を引き、残りをトリアシルグリセロール及び脂肪酸(塩)の合計量とした。
【0038】
〔分解率の算出〕
原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は、次式(1)により算出した。
トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率[%]=[(アルカリ加水分解後のトリテルペンアルコール遊離体のモル数−アルカリ加水分解前のトリテルペンアルコール遊離体のモル数)/原料オリザノール中のトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルのモル数]×100 (1)
【0039】
〔精製トリテルペンアルコールの形態の評価〕
乾燥後の精製トリテルペンアルコールの形態をパネル5名が下記の評価基準で評価し、その平均値を評点とした。
(形態の評価基準)
4:粒子径の小さい粉末で、さらさらしている
3:さらさらした粉末だが、若干だまがある
2:若干粘りのある粉末で、だまがある
1:粘りのあるかたまりで、だまが非常に多く大きい
【0040】
実施例1
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、150℃にて30分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は99.5%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を64g添加し、pH7まで中和した。
中和後、常温の蒸留水500gを用いて濾過しながら掛け洗いにより1回水洗し、精製トリテルペンアルコールを得た。
次いで、精製トリテルペンアルコールを50℃で15時間減圧乾燥し、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0041】
実施例2
表1に示す組成のγ−オリザノール(オリザ油化(株)製)を3gとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、実施例1と同じ条件で加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は97.2%であった。次いで、実施例1と同じ条件で中和、水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0042】
実施例3
表1に示す組成のγ−オリザノール(築野食品工業(株)製)を3.16gとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、実施例1と同じ条件で加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は100%であった。次いで、実施例1と同じ条件で中和、水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0043】
実施例4
表1に示す組成のγ−オリザノール(築野食品工業(株)製)を3.39gとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、実施例1と同じ条件で加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は100%であった。次いで、実施例1と同じ条件で中和、水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0044】
実施例5
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、140℃にて30分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は85.2%であった。次いで、実施例1と同じ条件で中和、水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0045】
実施例6
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、1mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、170℃にて10分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は84.9%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を32g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0046】
実施例7
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、1mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、150℃にて60分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は92.5%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を32g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0047】
実施例8
γ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、0.5mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、180℃にて30分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は81.1%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を16g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0048】
実施例9
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、0.5mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、210℃にて5分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は100%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を16g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0049】
実施例10
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)を3gとり、3mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、120℃にて60分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は81%であった。その後、10%クエン酸水溶液を96g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0050】
実施例11
表1に示す組成のγ−オリザノール(築野食品工業(株)製)を3.16gとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、実施例1と同じ条件で加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は99.4%であった。次いで、中和を行わずに、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粉末状の精製トリテルペンアルコールを得た。
【0051】
比較例1
表1に示す組成のγ−オリザノール(築野食品工業(株)製)3.61gをとり、2mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、150℃にて30分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は100%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を64g添加し、pH7まで中和した。中和後、500gの蒸留水を用いて実施例1と同じ条件で水洗したが粘度の高いかたまりとなり、濾過をすることができなかった。
【0052】
比較例2
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)3gをとり、1mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、150℃にて30分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は57.8%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を32g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粘度の高い固形状のトリテルペンアルコールを得た。
【0053】
比較例3
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)3gをとり、0.5mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、180℃にて5分間加水分解を行った。トリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は31.5%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を16g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粘度の高い固形状のトリテルペンアルコールを得た。
【0054】
比較例4
表1に示す組成のγ−オリザノール(和光純薬工業(株)製)3gをとり、0.5mol/dm
3水酸化カリウム水溶液50gを加え、150℃にて120分間加水分解を行った。Tトリテルペンアルコールフェルラ酸エステルの分解率は49.9%であった。次いで、10%クエン酸水溶液を16g添加し、pH7まで中和した。中和後、実施例1と同じ条件で水洗及び乾燥を行い、粘度の高い固形状のトリテルペンアルコールを得た。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から明らかなように、本発明方法によれば、トリテルペンアルコール純度が高く、流動性に優れた粉末状の精製トリテルペンアルコールを得ることができた。他方、原料オリザノール中にトリアシルグリセロール及び脂肪酸(塩)を多く含む比較例1では、水洗によりトリテルペンアルコールを分離することはできず、比較例2〜4では、得られたトリテルペンアルコールに粘性があり粉末とすることができなかった。