特許第6223710号(P6223710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6223710-車両用空調装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223710
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B60H1/00 102J
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-104441(P2013-104441)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-223871(P2014-223871A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】延井 崇艶
(72)【発明者】
【氏名】伯方 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】金本 英之
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−227442(JP,A)
【文献】 特開2010−208596(JP,A)
【文献】 特開2008−049782(JP,A)
【文献】 特開2002−127731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空調用機器を収容するとともに第1空気通路及び第2空気通路が形成されたケーシングと、
上記ケーシング内に配設されて上記第1空気通路及び第2空気通路を開閉するダンパとを備えた車両用空調装置において、
上記ケーシングの内面には、上記第1空気通路の上流端開口部が開口する傾斜面と、上記第2空気通路の上流端が開口する傾斜面とが、鉛直線に対する傾斜角度が等しくなるように形成され、
上記ダンパは、上記第1空気通路の上流端開口部が開口する傾斜面と、上記第2空気通路の上流端開口部が開口する傾斜面との中間位置で上記ケーシングに回動可能に支持されるとともに水平方向に延びる支軸と、該支軸の径方向に延びる閉塞板部とを備え、上記支軸は上記閉塞板部よりも上方に位置するように配設され、該閉塞板部は、上記支軸と共に回動することにより、上記第1空気通路の上流端開口部を開き、かつ、上記第2空気通路の上流端開口部を閉じる第1空気通路開放位置と、上記第1空気通路の上流端開口部を閉じ、かつ、上記第2空気通路の上流端開口部を開く第2空気通路開放位置とに切り替えられ、
上記閉塞板部は、第1空気通路開放位置にあるときに、上記第1空気通路の空気の流れに沿うように、かつ、第2空気通路開放位置にあるときに、上記第2空気通路の空気の流れに沿うように形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用空調装置は、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を収容するケーシングを備えている。このケーシング内には温度調節を行うためのエアミックスダンパや吹出方向を切り替えるための吹出方向切替ダンパ等が配設されている。各ダンパを作動させることで所望温度の調和空気を生成して車室の各部に供給することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のダンパは、ケーシングに回動可能に支持される回動軸と、回動軸から径方向に延びる閉塞板部とを備えており、回動軸周りに回動させてケーシング内の空気通路を開閉することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−25928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のダンパによって空気の流れを切り替える場合に、閉塞板部で一方の空気通路を閉じ、他方の空気通路を開けたとき、他方の空気通路を流れる空気の流れがダンパの閉塞板部に衝突するようになることがある。こうなると、通気抵抗が増大して空調性能が低下するとともに、騒音が発生して車室内の静粛性が保たれなくなる。また、ダンパの操作性も悪化することが考えられる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダンパによって空気の流れを切り替える場合に、通気抵抗を抑制するとともに、騒音を低減し、さらにダンパの操作性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、ダンパの閉塞板部が空気の流れに沿うようにした。
【0008】
第1の発明は、内部に空調用機器を収容するとともに第1空気通路及び第2空気通路が形成されたケーシングと、
上記ケーシング内に配設されて上記第1空気通路及び第2空気通路を開閉するダンパとを備えた車両用空調装置において、
上記ケーシングの内面には、上記第1空気通路の上流端開口部が開口する傾斜面と、上記第2空気通路の上流端が開口する傾斜面とが、鉛直線に対する傾斜角度が等しくなるように形成され、
上記ダンパは、上記第1空気通路の上流端開口部が開口する傾斜面と、上記第2空気通路の上流端開口部が開口する傾斜面との中間位置で上記ケーシングに回動可能に支持されるとともに水平方向に延びる支軸と、該支軸の径方向に延びる閉塞板部とを備え、上記支軸は上記閉塞板部よりも上方に位置するように配設され、該閉塞板部は、上記支軸と共に回動することにより、上記第1空気通路の上流端開口部を開き、かつ、上記第2空気通路の上流端開口部を閉じる第1空気通路開放位置と、上記第1空気通路の上流端開口部を閉じ、かつ、上記第2空気通路の上流端開口部を開く第2空気通路開放位置とに切り替えられ、
上記閉塞板部は、第1空気通路開放位置にあるときに、上記第1空気通路の空気の流れに沿うように、かつ、第2空気通路開放位置にあるときに、上記第2空気通路の空気の流れに沿うように形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、閉塞板部が第1空気通路開放位置となるようにダンパを回動させると、閉塞板部が第2空気通路を閉じて、第1空気通路の空気の流れに沿うように位置することになる。よって、第1空気通路の空気の流れが閉塞板部に衝突するようになることはなく、通気抵抗が抑制されるとともに、騒音が低減され、操作性も良好になる。
【0010】
また、閉塞板部が第2空気通路開放位置となるようにダンパを回動させた場合には、第2空気通路の空気の流れに沿うように位置することになるので、同様に通気抵抗が抑制されるとともに、騒音が低減され、操作性も良好になる。
【0011】
さらに、重力以外の力が作用していない自由状態のときに静止したダンパの位置を基準にしたとき、閉塞板部が第1空気通路開放位置となるようにダンパを回動させる場合と、第2空気通路開放位置となるようにダンパを回動させる場合とで、略同じ角度だけ回動させることになるので、いずれの位置まで回動させる場合も操作力が略等しくなる。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、閉塞板部が、第1空気通路開放位置にあるときに第1空気通路の空気の流れに沿うように、かつ、第2空気通路開放位置にあるときに第2空気通路の空気の流れに沿うように形成されているので、ダンパによって空気の流れを切り替える場合に、通気抵抗を抑制できるとともに、騒音を低減することができ、しかもダンパの操作力低減による操作性の向上を図ることができる。
【0013】
また、ダンパの自由状態における静止位置を基準にして第1空気通路開放位置までの回動角度と、第2空気通路開放位置までの回動角度とを略等しくしたので、いずれの位置まで回動させる場合も操作力を略等しくすることができ、操作性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の内部構造を示す図である。
図2】デフロスタモードにある場合の図1相当図である。
図3】ベントモードにある場合の図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の内部構造を示す図である。この車両用空調装置1は、例えば自動車の車室内に搭載されるものであり、ケーシング10と、エバポレータ(空調用機器)11と、ヒータコア(空調用機器)12と、エアミックスダンパ13と、ヒートダンパ14と、デフ/ベントダンパ15とを備えている。
【0017】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0018】
ケーシング10は、樹脂材を成形してなるものであり、複数に分割されたケーシング構成部材をビス等の締結部材を用いて一体化してなるものである。ケーシング10の内部には、上記エバポレータ11、ヒータコア12、エアミックスダンパ13、ヒートダンパ14及びデフ/ベントダンパ15が収容されている。
【0019】
また、ケーシング10の側壁部の前端部には、空気導入口10aが形成されている。この空気導入口10aには図示しない送風ユニットが接続されている。送風ユニットから送風される空調用空気は、空気導入口10aからケーシング10の内部に導入されるようになっている。尚、この送風ユニットは車両用空調装置1の一部である。
【0020】
ケーシング10の上壁部には、デフロスタ口10b及びベント口10cが形成されている。さらに、ケーシング10の下部には、ヒート口10dが形成されている。デフロスタ口10bは、主にフロントガラスの内面に空調風を供給するためのものであり、図示しないが、インストルメントパネルの前端部に設けられたデフロスタノズルに対してデフロスタダクトを介して接続されている。ベント口10cは、主に前席乗員の上半身に空調風を供給するためのものであり、インストルメントパネルに設けられたベントノズルに対して図示しないベントダクトを介して接続されている。ヒート口10dは、主に乗員の足下近傍に空調風を供給するためのものであり、図示しないヒートダクトに接続されている。
【0021】
ケーシング10の内部には、空気通路Rが形成されている。空気通路Rの上流端は、ケーシング10の前部に位置しており、上記空気導入口10aで構成されている。空気通路Rの下流端は、ケーシング10の後部に位置しており、デフロスタ口10b、ベント口10c及びヒート口10dで構成されている。
【0022】
空気通路Rは、空気導入口10aから後側へ延びる冷風生成通路R1と、冷風生成通路R1から分岐して下方へ延びる温風生成通路R2と、冷風生成通路R1及び温風生成通路R2が連通するエアミックス空間R3と、デフロスタ通路(第1空気通路)R4と、ベント通路(第2空気通路)R5と、ヒート通路R6とで構成されている。
【0023】
冷風生成通路R1は、ケーシング10内において前部から後方へ延びている。冷風生成通路R1には、エバポレータ11が該冷風生成通路R1を横切るように配置されている。エバポレータ11は、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。エバポレータ11は、冷凍サイクル装置の一要素である蒸発器によって構成されており、チューブアンドフィンタイプの熱交換器である。冷風生成通路R1を流れる空調用空気の全量がエバポレータ11を通過するようになっている。
【0024】
冷風生成通路R1の下流側は上下に2つに分岐しており、上側の下流端は上側開口部20であり、下側の下流端は下側開口部21である。下側開口部21は温風生成通路R2に接続されている。上側開口部20はエアミックス空間R3に接続されている。
【0025】
一方、温風生成通路R2は、下方へ向けて後側へ延びた後、下流側が上方へ延びるように略U字状に湾曲形成されている。温風生成通路R2の下流端は開口部22である。温風生成通路R2の下流側の断面積は上流側の断面積に比べて狭くなっており、温風生成通路R2は下流側が絞られた形状である。これにより、エアミックス空間R3に流入する温風の風速を高めることができる。
【0026】
温風生成通路R2には、ヒータコア12が該温風生成通路R2を横切るように配置されている。ヒータコア12は、その空気通過面が上側に行くほど後に位置するように傾斜配置されている。ヒータコア12は、図示しないエンジンの冷却水が循環するように構成されたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。温風生成通路R2を流れる空調用空気の全量がヒータコア12を通過するようになっている。
【0027】
エアミックス空間R3は、冷風生成通路R1の後方で、かつ、温風生成通路R2の上方に位置している。温風生成通路R2の下流端開口部22はエアミックス空間R3の下部に連通している。冷風生成通路R1の上側開口部20はエアミックス空間R3の前側に連通している。従って、温風生成通路R2からエアミックス空間R3に流入する温風の流れと、冷風生成通路R1からエアミックス空間R3に流入する冷風の流れとは、交差する関係となるので、エアミックス空間R3において温風と冷風とを衝突させて良好に混合させることができるようになっている。
【0028】
デフロスタ通路R4は、ケーシング10の上壁部に形成されている。デフロスタ通路R4の上流端は開口部25であり、エアミックス空間R3の上部に連通している。デフロスタ通路R4の上流端開口部25は、上下方向から見て、温風生成通路R2の下流端開口部22に重なるように配置されている。また、デフロスタ通路R4の上流端開口部25は、下に行くほど前側に位置するように傾斜した傾斜面30に開口している。デフロスタ通路R4は、全体として上側へ行くほど前に位置するように傾斜して延びている。デフロスタ通路R4の下流端は、デフロスタ口10bであり、デフロスタ通路R4の上流端開口部25よりも前方に位置している。
【0029】
ベント通路R5は、ケーシング10の上壁部においてデフロスタ通路R4よりも後側に形成されている。ベント通路R5の上流端は開口部26であり、エアミックス空間R3の上部においてデフロスタ通路R4の上流端開口部25よりも後側の部位に連通している。ベント通路R5の上流端開口部26は、下に行くほど後側に位置するように傾斜した傾斜面31に開口している。
【0030】
ベント通路R5の上流端開口部26と、デフロスタ通路の上流端開口部25とは、上に行くほど互いに接近するように形成されている。また、デフロスタ通路の上流端開口部25が形成された傾斜面30と鉛直線とのなす角度α1と、ベント通路R5の上流端開口部26が形成された傾斜面31と鉛直線とのなす角度α2とは、略同じに設定されている。
【0031】
ヒート通路R6の上流端は開口部27であり、エアミックス空間R3の後部においてベント通路R5の上流端開口部26よりも下方の部位に連通している。ヒート通路R6は、ケーシング10の後壁部に沿って該ケーシング10の下端部近傍まで延びている。
【0032】
エアミックスダンパ13は、回動軸13aと、回動軸13aの外面から径方向に延びる閉塞板部13bと、閉塞板部13bの周縁部に設けられたシール材13cとを有する片持ちタイプの板ダンパである。回動軸13aは、左右方向に延びており、両端部はケーシング10の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。この回動軸13aは、冷風生成通路R1の下側開口部21の後部近傍に位置している。閉塞板部13bは、冷風生成通路R1の上側開口部20と、冷風生成通路R1の下側開口部21とを開閉するためのものであり、これら開口部20,21よりも大きく形成され、回動軸13aから前方へ向けて延びている。シール材13cは、例えば発泡ウレタン等で構成されたものであり、冷風生成通路R1の上側開口部20の周縁部と閉塞板部13bの周縁部との間、及び冷風生成通路R1の下側開口部21の周縁部と閉塞板部13bの周縁部との間をそれぞれシールすることができるものである。
【0033】
図1及び図3に示すように、エアミックスダンパ13を下方へ回動させて冷風生成通路R1の下側開口部21を全閉にすると、冷風生成通路R1の上側開口部20が全開になる。この状態では、冷風生成通路R1の冷風は全量がエアミックス空間R3に流入することになるので、最も低温の空調風が得られる。
【0034】
図2に示すように、エアミックスダンパ13を上方へ回動させて冷風生成通路R1の上側開口部20を全閉にすると、冷風生成通路R1の下側開口部21が全開になる。この状態では、冷風生成通路R1の冷風は全量が温風生成通路R2に流入して加熱された後、エアミックス空間R3に流入することになるので、最も高温の空調風が得られる。
【0035】
エアミックスダンパ13を中間回動位置にすると、冷風生成通路R1の上側開口部20及び下側開口部21の両方が開いた状態になる。この状態では、上側開口部20及び下側開口部21の開度に応じて、冷風生成通路R1の冷風のエアミックス空間R3への流入量と、温風生成通路R2への流入量とが設定される。これら流入量の割合により、エアミックス空間R3で生成される空調風の温度を変更することが可能になっている。
【0036】
エアミックスダンパ13は、図示しない空調制御装置によって制御されるアクチュエータで作動させることもできるし、車室内に配設された温度コントロールレバーやダイヤルとエアミックスダンパ13とを操作用ワイヤで連結して乗員が手動操作することもできる。
【0037】
ヒートダンパ14は、回動軸14aと、回動軸14aから径方向に離れて設けられた閉塞板部14bと、閉塞板部14bの周縁部に設けられたシール材14cとを有するロータリーダンパである。回動軸14aは、左右方向に延びており、両端部はケーシング10の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。この回動軸14aは、温風生成通路R2の下流端開口部22の前部近傍に位置している。閉塞板部14bは、ヒート通路R6の上流端開口部27を開閉するためのものであり、上流端開口部27よりも大きく形成されている。シール材14cは、エアミックスダンパ13のシール材13cと同様なものである。
【0038】
図1に示すように、ヒートダンパ14が上方へ回動してヒート通路R6を全開にすると、デフロスタ通路R4及びベント通路R5へ空調風が殆ど流れなくなる。一方、図2図3に示すように、ヒートダンパ14が下方へ回動してヒート通路R6を全閉にすると、略全量の空調風がデフロスタ通路R4及びベント通路R5へ流れるようになる。
【0039】
デフ/ベントダンパ15は、回動軸15aと、回動軸15aの外面から径方向に延びる閉塞板部15bと、閉塞板部15bの周縁部に設けられたシール材15cとを有する片持ちタイプの板ダンパである。回動軸15aは、左右方向に延びており、両端部はケーシング10の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。この回動軸15aは、デフロスタ通路R4の上流端開口部25と、ベント通路R5の上流端開口部26との間において、傾斜面30,31の上部近傍に位置している。閉塞板部15bは、デフロスタ通路R4の上流端開口部25と、ベント通路R5の上流端開口部26とを開閉するためのものであり、開口部25,26よりも大きく形成されている。シール材15cは、エアミックスダンパ13のシール材13cと同様なものである。
【0040】
閉塞板部15bは、傾斜面30、31に沿うように形成された平板状のものであり、図2に示すように、デフ/ベントダンパ15を後方へ回動させてベント通路R5の上流端開口部26を全閉にすると、デフロスタ通路R4の上流端開口部25が全開になる。このとき、ヒートダンパ14によってヒート通路R6が閉じられていると、エアミックス空間R3の空調風の略全量がデフロスタ通路R4に流入するデフロスタモードとなる。
【0041】
デフロスタモードは、通常、フロントガラスの曇りを晴らすために暖房時に選択されるモードであるため、エアミックスダンパ13は、図2に示すように上方へ回動させて冷風生成通路R1の下側開口部21を全開にする。冷風生成通路R1の下側開口部21を全開にすると、冷風生成通路R1の冷風は温風生成通路R2及びエアミックス空間R3を順に経て、デフロスタ通路R4の上流端開口部25に向けて流入する。このときの空調風の主流の流れは、図2に矢印Xで示すようになる。この実施形態では、デフロスタモードにあるデフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bが矢印Xに沿うように、即ち、閉塞板部15bが矢印Xで示す空気の流れと略平行になるように形成されている。
【0042】
また、図3に示すように、デフ/ベントダンパ15を前方へ回動させてデフロスタ通路R4の上流端開口部25を全閉にすると、ベント通路R5の上流端開口部26が全開になる。このとき、ヒートダンパ14によってヒート通路R6が閉じられていると、エアミックス空間R3の空調風の略全量がベント通路R5に流入するベントモードとなる。
【0043】
ベントモードは、通常、冷房時に選択されるモードであるため、エアミックスダンパ13は、図3に示すように下方へ回動させて冷風生成通路R1の上側開口部20を全開にする。冷風生成通路R1の上側開口部20を全開にすると、冷風生成通路R1の冷風はエアミックス空間R3を経て、ベント通路R5の上流端開口部26に向けて流入する。このときの空調風の主流の流れは、図3に矢印Yで示すようになる。この実施形態では、ベントモードにあるデフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bが矢印Yに沿うように、即ち、閉塞板部15bが矢印Yで示す空気の流れと略平行になるように形成されている。
【0044】
空調風の吹出モードは、上記したデフロスタモードやベントモード以外にも、例えば、デフ/ヒートモードや、ベント/ヒートモード等に切り替えることもできる。デフ/ヒートモードは、ヒートダンパ14によってヒート通路R6を開くとともに、デフ/ベントダンパ15によってデフロスタ通路R4も開く。また、ベント/ヒートモードは、ヒートダンパ14によってヒート通路R6を開くとともに、デフ/ベントダンパ15によってベント通路R5も開く。
【0045】
この実施形態では、デフ/ベントダンパ15は手動式である。すなわち、車室内に配設された吹出方向切替レバーやダイヤルと、デフ/ベントダンパ15とを操作用ワイヤ(図示せず)で連結して乗員が手動操作するようにしている。
【0046】
デフ/ベントダンパ15が自由状態にあるときには、閉塞板部15bの重量により、図1に実線で示すように閉塞板部15bが鉛直に延びる回動位置で静止する。デフ/ベントダンパ15の自由状態とは、デフ/ベントダンパ15に重力以外の外力、例えば吹出方向切替レバーやダイヤルによる操作力が一切作用していない状態のことである。デフ/ベントダンパ15の自由状態における静止位置を基準にして、静止位置から図2に示すデフロスタ通路開放位置(第1空気通路開放位置)までの回動角度と、静止位置から図3に示すベント通路開放位置(第2空気通路開放位置)までの回動角度とが略等しくなるように設定している。これは、デフロスタ通路R4の上流端開口部25が開口する傾斜面30と、ベント通路R5の上流端開口部26が開口する傾斜面31との鉛直線に対する傾斜角度が等しく設定されていることと、回動軸15aが両傾斜面30,31の中間部分に位置付けられていることとによる。
【0047】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。送風ユニットから送風された空調用空気は、ケーシング10の空気導入口10aからケーシング10内の冷風生成通路R1に流入する。このとき、図2に示すように吹出モードとしてデフロスタモードが選択され、エアミックスダンパ13が冷風生成通路R1の上側開口部20を全閉にしている場合には、空調風の主流の流れがデフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bに沿う方向となる。これにより、デフロスタ通路R4に向かう空調風の流れがデフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bに衝突することはないので、通気抵抗が抑制されるとともに、騒音が低減される。
【0048】
また、図3に示すように吹出モードとしてベントモードが選択され、エアミックスダンパ13が冷風生成通路R1の下側開口部21を全閉にしている場合にも、空調風の主流の流れがデフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bに沿う方向となる。これにより、ベント通路R5に向かう空調風の流れがデフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bに衝突することはないので、通気抵抗が抑制されるとともに、騒音が低減される。
【0049】
また、デフ/ベントダンパ15を回動させる際、閉塞板部15bが図2に示すデフロスタ通路開放位置となるように回動させる場合と、図3に示すベント通路開放位置となるように回動させる場合とがある。このとき、どちら側に回動させる場合も、デフ/ベントダンパ15の静止位置を基準として見たとき、略同じ角度だけ回動させることになるので、いずれの位置まで回動させる場合も操作力が略等しくなる。よって、乗員による操作性が良好になる。
【0050】
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、デフ/ベントダンパ15の閉塞板部15bがデフロスタ通路開放位置にあるときにデフロスタ通路R4の空気の流れに沿うように、かつ、ベント通路開放位置にあるときにベント通路R5の空気の流れに沿うように形成されているので、デフ/ベントダンパ15によって空気の流れを切り替える場合に、通気抵抗を抑制できるとともに、騒音を低減することができ、しかも、デフ/ベントダンパ15の操作性を良好にすることができる。
【0051】
また、デフ/ベントダンパ15の自由状態における静止位置を基準にしてデフロスタ通路開放位置までの回動角度と、ベント通路開放位置までの回動角度とを略等しくしたので、いずれの位置まで回動させる場合も操作力を略等しくすることができ、操作性を良好にすることができる。
【0052】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば、自動車に搭載することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用空調装置
10 ケーシング
11 エバポレータ(空調用機器)
12 ヒータコア(空調用機器)
15 デフ/ベントダンパ
15a 支軸
15b 閉塞板部
R4 デフロスタ通路(第1空気通路)
R5 ベント通路(第2空気通路)
図1
図2
図3