(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体通路の上流側に開口する入口孔、及び、該入口孔の周囲に弁座を有する第1外端壁と、該第1外端壁と反対側の第2外端壁と、前記流体通路の下流側に開口する出口孔を有する円筒形状の外側壁とから区画された弁室と、
前記弁座に当接可能に対峙する第1内端壁、該第1内端壁と反対側の第2内端壁、及び、前記外側壁に摺動可能に支持される円筒形状の内側壁を有し、前記弁室において前記第1内端壁及び前記内側壁によって区画され、前記入口孔を介して前記流体通路の上流側圧力が作用する第1領域と、前記弁室において前記第2内端壁及び前記内側壁によって、前記第1領域と前記流体通路の下流側圧力が作用する第2領域とに区画形成し、前記第1領域と前記第2領域との圧力差に応じ前記外側壁に支持されながら移動して前記入口孔を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢するコイルバネと、
前記第2内端壁に固定された磁石と
を具備した弁機構と、
前記弁室の外方において前記磁石に対向して配設され、前記磁石の磁束密度の変化を検出する磁気検出手段と
を備え、
前記弁室は、前記第2領域と区画された収容室を有し、
前記収容室には、前記弁体に固定された前記磁石が収容され、
前記磁石は、前記弁室における前記弁体の全移動範囲において、前記収容室に収容されていることを特徴とする流量検出装置。
前記収容室は、前記第2外端壁から前記コイルバネの内側において前記第2領域側に突設される円筒形状の突側壁により形成されることを特徴とする請求項1に記載の流量検出装置。
前記弁体の前記内側壁は、前記外側壁に対し第1間隙を有して対峙する大径部と、前記大径部よりも小径であって前記突側壁に対し第2間隙を有して対峙する小径部とからなり、
前記第2内端壁に固定された前記磁石は前記小径部の内側に配設され、
前記コイルバネは、その端がそれぞれ前記第2領域において前記大径部と前記小径部との間の段差面と前記第2外端壁とに当接されており、
前記大径部が前記外側壁に所定の当接領域で当接したとき、前記弁体の移動方向に沿う中心線を跨いだ前記当接領域の反対側の対角領域においては、前記大径部が前記外側壁に非当接であり且つ前記小径部が前記突側壁に当接するべく、前記第1間隙及び前記第2間隙が調整されることを特徴とする請求項2に記載の流量検出装置。
前記突側壁は、前記コイルバネの前記第2外端壁側を前記弁体の移動方向に沿って案内し、位置決めするガイド部材であることを特徴とする請求項3に記載の流量検出装置。
前記外側壁は、前記流体通路の下流側と前記第2領域とを連通し、前記第2領域に前記流体通路の下流側圧力を作用させる連通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の流量検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている流量計測装置は、流体の差圧に応じて弁体を開閉させる弁機構が流体通路に配設されていれば、新たに絞り等の圧損要素を付加することなく、その前後の差圧を検出する圧力センサを付加すれば流量検出が可能となる。しかしながら微小差圧を検出するものであると圧力センサは高価となり、コスト的な問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に示されるように、流体の差圧に応じて動作する可動体に磁石を固定し、磁石の磁束密度の変化を磁気検出手段(ホール素子)で検出する方法がある。磁石及びホール素子による流量検出は、圧力センサを使用するより比較的安価であるので、特許文献1に示される弁体に磁石を固定し、磁石の磁束密度の変化をホール素子で検出することにより流量検出することも考えられる。
【0006】
しかしながら、このような流量検出方法では以下のような問題がある。第1に、弁体に磁石を付加するので差圧弁の軸方向の長さが長くなり、弁機構の軸方向寸法が増大して流量検出装置の装着性が悪化するおそれがある。第2に、流体通路を流れる流体には異物が含まれている場合が多く、異物によって流量検出精度が悪化するおそれがある。第3に、流体通路を流れる流体により弁体が振動して磁石の位置が安定せず、磁石の磁束密度に誤差を生じ、流量検出精度のさらなる悪化を招くおそれがある。第4に、流量検出装置で検出された冷媒流量は圧縮機の駆動トルクの推定に利用されることがあるが、流量検出精度の悪化に伴い、圧縮機の駆動トルク推定を精度良く行えないおそれがある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化及び低コスト化を図りながら、磁石が配設されている領域への異物の侵入を抑制し、高精度な流量検出及び圧縮機の駆動トルク推定を実現した流量検出装置、及びその流量検出装置を備えた圧縮機及び冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の流量検出装置は、流体通路の上流側に開口する入口孔、及び、該入口孔の周囲に弁座を有する第1外端壁と、該第1外端壁と反対側の第2外端壁と、流体通路の下流側に開口する出口孔を有する円筒形状の外側壁とから
区画された弁室と、弁座に当接可能に対峙する第1内端壁、該第1内端壁と反対側の第2内端壁、及び、外側壁に摺動可能に支持される円筒形状の内側壁を有し、弁室において第1内端壁及び内側壁によって区画され、入口孔を介して流体通路の上流側圧力が作用する第1領域と、弁室において第2内端壁及び内側壁によって
、第1領域と流体通路の下流側圧力が作用する第2領域と
に区画形成し、第1領域と第2領域との圧力差に応じ外側壁に支持されながら移動して入口孔を開閉する弁体と、弁体を弁座に向けて付勢するコイルバネと、第2内端壁に固定された磁石と
を具備した弁機構と、弁室の外方において磁石に対向して配設され、磁石の磁束密度の変化を検出する磁気検出手段とを備え、弁室は
、第2領域と区画された収容室を有
し、収容室には、弁体に固定された磁石が収容され、磁石は、弁室における弁体の全移動範囲において、収容室に収容されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明では、収容室は、第2外端壁からコイルバネの内側において第2領域側に突設される円筒形状の突側壁により形成される。
請求項3記載の発明では、弁体の内側壁は、外側壁に対し第1間隙を有して対峙する大径部と、大径部よりも小径であって突側壁に対し第2間隙を有して対峙する小径部とからなり、第2内端壁に固定された磁石は小径部の内側に配設され、コイルバネは、その端がそれぞれ第2領域において大径部と小径部との間の段差面と第2外端壁とに当接されており、大径部が外側壁に所定の当接領域で当接したとき、弁体の移動方向に沿う中心線を跨いだ当接領域の反対側の対角領域においては、大径部が外側壁に非当接であり且つ小径部が突側壁に当接するべく、第1間隙及び第2間隙が調整される。
【0010】
請求項4記載の発明では、突側壁は収容室と弁室の第2領域とを連通する絞り通路を有する。
請求項5記載の発明では、突側壁は、コイルバネの第2外端壁側を弁体の移動方向に沿って案内し、位置決めするガイド部材である。
請求項6記載の発明では、外側壁は、流体通路の下流側と第2領域とを連通し、第2領域に流体通路の下流側圧力を作用させる連通孔を有する。
【0011】
請求項7記載の発明では、連通孔は第2外端壁に面した外側壁に形成される。
請求項8記載の発明では、弁機構と磁気検出手段とは一体に構成されている。
請求項9記載の本発明の圧縮機は、上記いずれかの流量検出装置を作動流体の吐出通路又は吸入通路に設けることを特徴とする。
【0012】
請求項10記載の本発明の冷凍装置は、上記いずれかの流量検出装置を作動流体の循環通路に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明の流量検出装置によれば、この流量検出装置は第1領域と第2領域との圧力差に応じて作動する弁機構を備え、例えば圧縮機や冷凍装置に圧力差に応じて作動する弁機構が既に配設されている場合には、この弁機構に磁石と磁気検出手段とを付加するだけで、弁機構により流体の流量検出が可能となる。
【0014】
また、磁石は弁室内の収容室に収容されるため、磁石の配置に伴う弁機構の軸方向寸法の増大を抑制することができる。したがって、小型且つ低コストの流量検出装置を簡単な構成で実現することができる。
また、弁室に収容室を有することにより、磁石は第2領域と区画された収容室内の領域のみに曝されるため、たとえ第1領域から外側壁と内側壁との間の間隙を介して流体とともに第2領域に異物が侵入したとしても、磁石が配設されている領域に異物が侵入することを抑制することができる。
【0015】
また、第2領域は、流体通路(第1領域)と
区画された空間であり、緩衝室(ダンパー室)として機能させることができるため、弁体の振動を抑制して磁石の位置を安定化することが可能となる。したがって、磁石の磁束密度の誤差を効果的に排除し、流量検出精度を大幅に高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、収容室が第2外端壁からコイルバネの内側において第2領域側に突設される円筒形状の突側壁により形成されることにより、収容室をコイルバネの内側に納めて配置することができるため、収容室形成に伴う弁機構の軸方向寸法の増大を抑制することができる。したがって、流量検出装置のさらなる小型化を実現することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、大径部が外側壁に所定の当接領域で当接したとき、弁体の移動方向に沿う中心線を跨いだ当接領域とは反対側の対角領域においては、大径部が外側壁に非当接であり且つ小径部が突側壁に当接するべく、第1間隙及び第2間隙が調整される。これにより、当接領域及び対角領域の双方において大径部のみ又は小径部のみが弁室の側壁(外側壁又は突側壁)に当接されることが防止される。このような大径部のみ又は小径部のみの2点支持を防止することにより、中心線に対する弁体の過度な傾斜が抑制され、弁室における弁体の移動をさらに円滑に行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、突側壁は収容室と弁室とを連通する絞り通路を有することにより、収容室がこれに収容される小径部によって密閉状態となることが防止され、収容室の内圧によって弁体の移動が阻害されることが防止される。
また、絞り通路の開口面積を調整することにより、弁体の移動に伴う緩衝作用(ダンパー効果)を収容室に持たせることができるため、弁体の振動をさらに抑制して磁石の位置を安定化することが可能となる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、コイルバネの第2外端壁側を弁体の移動方向に沿って案内し、位置決めするガイド部材として突側壁を利用することにより、コイルバネのガイド部材を別途設ける必要が無いため、流量検出装置のさらなる低コスト化を実現することができる。
請求項6記載の発明によれば、第1領域から第2領域に侵入する流体中の異物は、大径部と外側壁との間隙から外側壁に沿って侵入する流体の流れ(漏れ)に含まれている。しかし、外側壁が流体通路の下流側と第2領域とを連通する連通孔を備えることにより、第2領域に流体通路の下流側圧力を作用させながら、外側壁に沿って侵入した異物を流体の流れ(漏れ)により外側壁の連通孔から効率的に排出することができるため、収容室への異物の侵入をさらに抑制することができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、第2領域に侵入した異物は流体の流れ(漏れ)に押しやられて第2外端壁近傍に集まり易いため、連通孔が第2外端壁に面した外側壁に形成されていることにより、異物を連通孔からさらに効率的に排出することができ、収容室への異物の侵入をさらに抑制することができる。
【0020】
請求項8記載の発明によれば、弁機構と磁気検出手段とが一体に構成されていることにより、流量検出装置の小型化に貢献するのみならず、設置対象となる装置への装着性を高めることができ、また、流量検出装置の出力校正を容易に行うことができるため、流量検出装置のさらなる小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0021】
請求項9記載の本発明の圧縮機によれば、上記いずれかの流量検出装置を圧縮機の吐出通路又は吸入通路に設けることにより、流量検出装置による高精度となる作動流体の流量検出値を圧縮機の駆動トルク推定に使用することができるため、駆動トルクの推定精度を大幅に高めることができる。
請求項10記載の本発明の冷凍装置によれば、上記いずれかの流量検出装置を冷凍装置の循環通路に設けることにより、流量検出装置によって冷凍回路における作動流体の循環流量を容易に且つ高精度に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように可変容量圧縮機100は、車両エアコンシステムに使用されるクラッチレス圧縮機であって、複数のシリンダボア101aを備えたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端にバルブプレート103を介して設けられたシリンダヘッド104とを備えている。
【0024】
シリンダブロック101とフロントハウジング102とによってクランク室140が規定され、クランク室140内には駆動軸110が延設されている。駆動軸110の周囲には斜板111が配置され、斜板111は駆動軸110に固定されたロータ112とリンク機構120とを介して駆動軸110に連結され、斜板111の傾角は駆動軸110に沿って変更可能となっている。
【0025】
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端側が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに対して回動自在に連結され、他端側が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに対して回動自在に連結されたリンクアーム121とから構成されている。
【0026】
斜板111の貫通孔111bは、斜板111が最大傾角と最小傾角との範囲で傾動可能となるよう形状とされており、貫通孔111bには駆動軸110と当接する最小傾角規制部が形成されている。駆動軸110に対して直交する斜板111の傾角を0°とした場合、貫通孔111bの最小傾角規制部は斜板111をほぼ0°まで傾角変位可能なように形成されている。
【0027】
ロータ112と斜板111との間には斜板111を最小傾角に向けて最小傾角に至るまで付勢する傾角減少バネ114が装着され、また、斜板111とバネ支持部材116との間には斜板111の傾角を増大する方向に付勢する傾角増大バネ115が装着されている。最小傾角において傾角増大バネ115の付勢力は傾角減少バネ114の付勢力より大きく設定されているので、駆動軸110が回転していないときは、斜板111は傾角減少バネ114と傾角増大バネ115との付勢力がバランスする傾角に位置する。
【0028】
駆動軸110の外端は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通して外側に突出され、図示しない動力伝達装置に連結されている。なお、駆動軸110とボス部102aとの間には、軸封装置130が挿入され、フロントハウジング102の内部と外部とを遮断している。 駆動軸110とロータ112との連結体は、ラジアル方向において軸受131、132で支持され、スラスト方向において軸受133及びスラストプレート134で支持されている。なお、スラストプレート134と駆動軸110の内端との隙間は調整ネジ135により所定の隙間に調整されている。したがって、外部駆動源からの動力が動力伝達装置に伝達されると、駆動軸110は動力伝達装置と同期して回転可能となっている。
【0029】
シリンダボア101a内には、ピストン136が配置され、クランク室140側に突出したピストン136の端部の内側空間には斜板111の外周部が収容されている。斜板111は一対のシュー137を介してピストン136と連動し、斜板111の回転によりピストン136がシリンダボア101a内を往復動することが可能となる。
【0030】
シリンダヘッド104には、中央部に配置された吸入室141と、吸入室141を環状に取り囲む吐出室142とが形成されている。吸入室141は、バルブプレート103に設けられた連通孔103aと、吸入弁形成板に形成された吸入弁(図示せず)とを介してシリンダボア101aと連通している。吐出室142は、吐出弁形成板に形成された吐出弁(図示せず)と、バルブプレート103に設けられた連通孔103bとを介してシリンダボア101aと連通している。
【0031】
フロントハウジング102、シリンダブロック101、バルブプレート103、シリンダヘッド104が、図示しないセンターガスケット、シリンダガスケット、ヘッドガスケットを介して複数の通しボルト105によって締結されて圧縮機ハウジングが形成される。
シリンダヘッド104には、冷凍装置を構成する車両エアコンシステムの低圧領域の外部配管と吸入室141とを連通する吸入通路(流体通路)104aと、高圧領域の外部配管と吐出室142とを連通する吐出通路(流体通路)104bとが形成されている。シリンダヘッド104には吐出通路104bを開閉する弁機構を備えた後述する流量検出装置200が配設されている。
【0032】
シリンダヘッド104にはさらに制御弁300が設けられている。制御弁300は吐出室142とクランク室140とを連通する圧力供給通路145の開度を調整し、クランク室140への吐出ガス導入量を制御する。また、バルブプレート103にはオリフィス103cが形成され、クランク室140内の冷媒は、連通路101c、空間101d、オリフィス103cから構成された放圧通路146を介して吸入室141へ流れる。
【0033】
したがって、制御弁300によりクランク室140の圧力を変化させ、斜板111の傾斜角、つまりピストン136のストロークを変化させることにより、可変容量圧縮機100の吐出容量を可変制御することができる。
エアコン作動時、つまり可変容量圧縮機100の作動状態では、外部信号に基づいて制御弁300に内蔵されるソレノイドの通電量が調整され、吸入室141の圧力が所定値になるように吐出容量が可変制御される。制御弁300は、外部環境に応じて、吸入圧力を最適制御することができる。また、エアコン非作動時、つまり可変容量圧縮機100の非作動状態では、制御弁300は、制御弁300に内蔵されるソレノイドの通電をOFFすることにより圧力供給通路145を強制開放し、可変容量圧縮機100の吐出容量を最小に制御する。
【0034】
図2に示すように、流量検出装置200は、弁体210と、圧縮コイルバネ(コイルバネ)220と、第1ハウジング230と、第2ハウジング240と、磁気検出手段250と、2つのOリング260、261とから構成されている。
弁体210は、流量検出装置200から見て冷媒の上流側に位置する吐出室142に面した端壁(第1内端壁)211aと、端壁211aと連続して形成される円筒状の側壁(内側壁)211bとを有する第1部材211と、第1部材211に固定されて弁体210の第1部材211とは反対側に突出し、第1部材211の円筒状の側壁211bより小径の円筒状の側壁(内側壁)212a、及び第1部材211の端壁211aと反対側に位置する端壁(第2内端壁)212eを有する第2部材212と、第2部材212の端壁(第1内端壁)212eに露出して収容固定された磁石213とから構成されている。
【0035】
弁体210の側面は側壁211bからなる大径部214と側壁212aからなる小径部215とから構成されている。第1部材211と第2部材212とで区画される弁体210の内部空間は、第2部材212に形成された連通孔212bにおいて弁体210の外部と連通している。なお、第1部材211及び第2部材212は金属材料(例えばアルミ系材料)、あるいは樹脂材料で形成されている。
【0036】
第1ハウジング230は、円筒状の側壁(外側壁)231と、円筒状の側壁231の一端側の端壁(第1外端壁)232とを有し、側壁231の他端側は第1ハウジング230においては開放されている。第1ハウジング230の内部には弁体210が配設され、弁体210の大径部214が摺動可能に支持される円筒状の弁室233が形成されている。端壁232には弁体210の端壁211aに対峙した弁座232aが形成されている。弁座232aの内側には弁室233と吐出室142とを連通する入口孔232bが形成されており、換言すると、端壁211aには、吐出通路104bの上流側に開口された入口孔232bと、入口孔232bの周囲に形成された弁座232aとが形成されている。
【0037】
さらに側壁231には弁室233と吐出通路104bとを連通する出口孔231aが形成されており、出口孔231aは吐出通路104bの下流側に開口されている。
端壁232は、入口孔232b及び弁座232aが形成された金属材料(例えば黄銅系材料)からなる弁座部材であって、円筒状の側壁231は、この金属製の端壁232をインサート成形した樹脂材料により形成されている。なお、第1ハウジング230をすべて金属材料で形成しても良い。
【0038】
第1ハウジング230に、側壁231の端壁232側から弁室233内に弁体210と圧縮コイルバネ220とを収容し、側壁231の他端側を第2ハウジング240の一端側に嵌合固定することで弁室233が閉塞される。
第2ハウジング240は円筒状の側壁241と、円筒状の側壁241の他端側を閉塞する端壁(第2外端壁)242とを有し、第2ハウジング240は金属材料(例えばアルミ系材料)で形成されている。
【0039】
このように、弁室233は、端壁232、端壁232と反対側に位置する端壁242、及び側壁231により画定される。
図3に示すように、弁体210の大径部214と弁室233における側壁231の内周面との第1間隙G1は、例えば数十ミクロン〜200ミクロン程度の微小隙間に管理され、さらに弁体210の端壁211aと側壁211bとによって、弁室233は圧力供給通路145の一部を成す第1領域233aと、第1領域233aと画成された第2領域233bとに区画されている。
【0040】
第1ハウジング230の側壁231には第2領域233bと吐出通路104bの下流側とを連通する連通孔231bが形成されている。連通孔231bは側壁231の端壁242に面した位置に形成され、換言すると弁座232aから最も離れた第2領域233bの端に形成されている。
圧縮コイルバネ220は弁室233の第2領域233bに配設され、圧縮コイルバネ220の一端は第2ハウジング240の端壁242に当接している。一方、圧縮コイルバネ220の他端は弁体210の側壁211bの端面、換言すると、大径部214と小径部215とを画成する段差面211eに当接している。これより圧縮コイルバネ220は、弁体210を弁座232aに向けて付勢し、弁体210が弁座232aに着座している状態においても付勢力を有している。弁体210の小径部215の側壁212aは圧縮コイルバネ220の内側において第2領域233bに突出して位置付けられ、端壁212eに磁石213が露出して収容固定されている。
【0041】
このように、弁体210は、弁座232aに当接可能に対峙する端壁211a、端壁211aと反対側に位置する端壁212e、及び、側壁231に摺動可能に支持される円筒形状の側壁211bを有している。
また、弁体210は、弁室233において端壁211a及び側壁211bによって区画され、換言すると、大径部214によって画定される第1領域233aを形成し、第1領域233aには入口孔232bを介して吐出通路104bの上流側圧力が作用する。
【0042】
一方、弁体210は、弁室233において端壁212e及び側壁212aによって区画されるとともに第1領域233aと画成され、換言すると、小径部215によって画定される第2領域233bを形成し、第2領域233bには連通孔231bを介して吐出通路104bの下流側圧力が作用する。そして、弁体210は、側壁211bに支持されながら、第1領域233aと第2領域233bとの圧力差に応じ圧縮コイルバネ220の付勢力に抗して移動して入口孔232b及び出口孔231aを開閉する。
【0043】
詳しくは、弁体210と、圧縮コイルバネ220と、第1ハウジング230と、第2ハウジング240とで構成される弁機構は圧縮機100の既存の逆止弁200´であって、逆止弁200´は第1領域233aと第2領域233bとの圧力差が所定値より小さい場合は圧縮コイルバネ220の付勢力により吐出通路104bを遮断し、圧力差が所定値を超えると圧縮コイルバネ220の付勢力に抗して吐出通路104bを開放する。
【0044】
また、磁気検出手段250は、ホール素子251と、その出力信号を出力する電子回路252と、電子回路252と接続された入出力用コネクタ端子253とを樹脂材料にインサート成形して形成され、磁気検出手段250は第2ハウジング240の端壁242側に収容固定されている。ホール素子251は第2ハウジング240の端壁242を挟んで磁石213に対向するように配設されている。
【0045】
第1ハウジング230及び第2ハウジング240の外周部にはOリング260、261が配設される溝がそれぞれ形成されており、Oリング260は吐出室142と吐出通路104bとを気密にシールし、Oリング261は吐出通路104bと磁気検出手段250側のシリンダヘッド104の外部(大気側)とを気密にシールする。なお、Oリング261が配設されている溝は第1ハウジング230の開放端に形成されているフランジ231cが第2ハウジング240の側壁241に嵌合固定されることにより形成されている。
【0046】
図4に示すように、流量検出装置200は、第1ハウジング230のフランジ231cのOリング261側とは反対側の端面がシリンダヘッド104の収容孔104cを形成する段差部の端面に位置決めされている。磁気検出手段250は、そのシリンダヘッド104の外部側の一端面がスナップリング270で抜け止めされてシリンダヘッド104に収容されている。これによって吐出通路104bの下流側から第1ハウジング230に背圧が作用しても第1ハウジング230が第2ハウジング240からシリンダヘッド104の外部に抜け出ることを防止しながら、逆止弁200´と磁気検出手段250とが一体に構成される。
【0047】
ここで、流量検出装置200は、弁室233の第2領域233bにさらに円筒形状の収容室243を設け、この収容室243に弁体210の側壁212a、すなわち小径部215を収容している。
図2は弁体210が弁座232aに着座している状態を示し、このとき磁石213はホール素子251から最も遠ざかった位置にある。一方、
図3は弁体210が弁座232aから最も遠ざかった状態を示し、弁体210が最大に開いている。
【0048】
収容室243は、端壁242から圧縮コイルバネ220の内側において円筒形状の側壁(突側壁)244を第2領域233bに向けて突設することで形成されている。
図3の状態のとき、第2部材212の側壁212aに形成された段差面212dが側壁244の先端面244bに当接することにより弁体210の移動が規制され、このとき磁石213はホール素子251に最も近づいた位置にある。
【0049】
弁体210の側壁212aは収容室243の側壁244に摺動可能に支持され、弁体210の端壁212eに露出して収容固定された磁石213は弁体210とともに収容室243内を移動可能となっている。側壁212aは弁体210の全可動範囲において収容室243の側壁244に摺動可能に支持されている。
【0050】
収容室243内において磁石213の露出した端面と収容室243の底壁との間に区画される空間は第2領域233bと区画され、この空間は絞り通路244aによって第2領域233bと連通している。これにより、弁体210に収容室243の空間による所定圧力によって緩衝作用(ダンパー効果)を持たせることができる。
【0051】
また、側壁244は、圧縮コイルバネ220の端壁242側を弁体210の移動方向に沿って案内し、位置決めするガイド部材としての役割をも担っている。
弁体210の小径部215と収容室243における側壁244の内周面との第2間隙G2は、大径部214と側壁231との第1間隙G1と同様に、例えば数十ミクロン〜200ミクロン程度の微小隙間に管理されている。これより弁体210は、大径部214においては第1間隙G1を有して弁室233に収容され、小径部215においては第2間隙G2を有して収容室243に収容されている。
【0052】
これら第1間隙G1及び第2間隙G2は、例えば大径部214が側壁231に所定の当接領域で当接したとき、弁体210の移動方向に沿う中心線を跨いだ当接領域の反対側の対角領域においては、大径部214が側壁231に非当接であり且つ小径部215が側壁244に当接するべく、予め調整されている。
【0053】
弁体210は、吐出通路104bの冷媒の上流側圧力(吐出室142の圧力)と下流側圧力(吐出通路104b側の圧力)との圧力差に応じて移動して位置が変化し、吐出通路104bを流れる冷媒が増加すれば弁体210は弁座232aから遠ざかり、吐出通路104bを流れる冷媒が減少すれば弁体210は弁座232aに近づく。したがって、弁体210の開度(位置)をホール素子251で検出することにより吐出通路104bを流れる冷媒循環量を測定できる。可変容量圧縮機100の駆動トルク推定に流量検出装置200の出力値を使用することによりトルク推定精度が向上する。
【0054】
図4に示すように、出口孔231aは第1ハウジング230の側壁231に複数設けられ、出口孔231aは、平面視において頂角が弁座232a側に向いた略三角形をなす領域を有している。これにより吐出通路104bを流れる流量が小さい場合には、この略三角形の領域を冷媒が流れ、冷媒流量の増大に追従して弁体210の移動が徐々に行われ、弁体210がばたつくことなく安定して移動するため、冷媒の低流量域における弁体210のハンチング動作が回避され、流量検出装置200における安定した流量検出が可能となる。
【0055】
以上のように本実施形態の流量検出装置200は、第1領域233aと第2領域233bとの圧力差に応じて作動する弁機構を備え、この弁機構は吐出通路104bに配設された既存の逆止弁200´であるため、逆止弁200´に磁石213と磁気検出手段250を付加するだけで、逆止弁200´により冷媒の流量検出が可能となる。
【0056】
また、磁石213は弁室233内の収容室243に収容されるため、磁石213の配置に伴う逆止弁200´の軸方向寸法の増大を抑制することができる。したがって、小型且つ低コストの流量検出装置200を簡単な構成で実現することができる。
また、弁室233に収容室243を有することにより、磁石213は第2領域233bと区画された収容室243内の領域のみに曝されるため、たとえ第1領域233aから側壁231と側壁212aとの間の間隙を介して冷媒とともに第2領域233bに異物が侵入したとしても、磁石213が配設されている領域に異物が侵入することを抑制することができる。
【0057】
また、第2領域233bは、吐出通路104b(第1領域233a)と画成された空間であり、緩衝室(ダンパー室)として機能させることができるため、弁体210の振動を抑制して磁石213の位置を安定化することが可能となる。したがって、磁石213の磁束密度の誤差を効果的に排除し、流量検出精度を大幅に高めることができる。
【0058】
また、収容室243が端壁242から圧縮コイルバネ220の内側において第2領域233b側に突設される円筒形状の側壁244により形成されることにより、収容室243を圧縮コイルバネ220の内側に納めて配置することができるため、収容室243形成に伴う逆止弁200´の軸方向寸法の増大を抑制することができる。したがって、流量検出装置200のさらなる小型化を実現することができる。
【0059】
また、大径部214が側壁231に所定の当接領域で当接したとき、弁体210の移動方向に沿う中心線を跨いだ当接領域とは反対側の対角領域においては、大径部214が側壁213に非当接であり且つ小径部215が側壁244に当接するべく、第1間隙G1及び第2間隙G2が調整される。これにより、当接領域及び対角領域の双方において大径部214のみ又は小径部215のみが弁室233の側壁211bや収容室243の側壁244に当接されることが防止される。このような大径部214のみ又は小径部215のみの2点支持を防止することにより、中心線に対する弁体210の過度な傾斜が抑制され、弁室233における弁体210の移動をさらに円滑に行うことができる。
【0060】
また、側壁244は収容室243と弁室233とを連通する絞り通路244aを有することにより、収容室243がこれに収容される小径部215によって密閉状態となることが防止され、収容室243の内圧によって弁体210の移動が阻害されることが防止される。
また、絞り通路244aの開口面積を調整することにより、弁体210の移動に伴う緩衝作用(ダンパー効果)を収容室243に持たせることができるため、弁体210の振動をさらに抑制して磁石の位置を安定化することが可能となる。
【0061】
また、圧縮コイルバネ220の端壁242側を弁体210の移動方向に沿って案内し、位置決めするガイド部材として側壁244を利用することにより、圧縮コイルバネ220のガイド部材を別途設ける必要が無いため、流量検出装置200のさらなる低コスト化を実現することができる。
また、第1領域233aから第2領域233bに侵入する流体中の異物は、大径部214と側壁231との間の第1間隙G1から側壁231に沿って侵入する冷媒の流れ(漏れ)に含まれている。しかし、側壁231が吐出通路104bの下流側と第2領域233bとを連通する連通孔231bを備えることにより、第2領域233bに吐出通路104bの下流側圧力を作用させながら、側壁231に沿って侵入した異物を冷媒の流れ(漏れ)により側壁231の連通孔231bから効率的に排出することができるため、収容室243への異物の侵入をさらに抑制することができる。
【0062】
また、第2領域233bに侵入した異物は冷媒の流れ(漏れ)に押しやられて端壁242近傍に集まり易いため、連通孔231bが端壁242に面した側壁231に形成されていることにより、異物を連通孔231bからさらに効率的に排出することができ、収容室243への異物の侵入をさらに抑制することができる。
【0063】
また、逆止弁200´と磁気検出手段250とが一体に構成されていることにより、流量検出装置200の小型化に貢献するのみならず、設置対象となる装置への装着性を高めることができ、また、流量検出装置200の出力校正を容易に行うことができるため、流量検出装置200のさらなる小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0064】
また、流量検出装置200を圧縮機100の吐出通路104bに設けることにより、流量検出装置200による高精度となる冷媒の流量検出値を圧縮機100の駆動トルク推定に使用することができるため、駆動トルクの推定精度を大幅に高めることができる。
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0065】
例えば
図5に示すように、弁体210の側壁211bに環状溝211cを形成しても良い。冷媒流の主流は入口孔232bから出口孔231aを経由して下流側に流れるが、一部は弁体210の側壁211bと側壁231内の弁室233の円筒面との微小な隙間から第2領域側233bに漏れる。この流れに沿って異物が第2領域233bに侵入するおそれがあるので、これを抑制すべく側壁211bの中間に異物を出口孔231aに導く環状溝211cを形成することが望ましい。
【0066】
また、
図6に示すように、弁体210の一端面211aの外周端部に環状に段差211dを設け、この環状の段差211dを流路として異物を出口孔231aに導くようにしても良い。なお、段差でなく傾斜面としても良い。
また、逆止弁200´と磁気検出手段250は一体化されているが、分離して配設するようにしても良い。
【0067】
また、流量検出装置200は吐出通路104bに配設されているが、これを吸入通路104aに配設しても良い。
また、絞り通路244aは収容室243の側壁244を貫通する貫通孔としているが、これに限定されない。例えば収容室243の円筒面又は側壁212aに溝を形成して絞り通路としても良い。
【0068】
また、逆止弁200´は吐出通路104bを閉鎖するものであるが、吐出通路104bを完全に閉鎖せず、最小開口を有するものであっても良い。
また、圧縮機100は可変容量圧縮機であるが、これに限らず、本発明は他の種々の圧縮機に適用可能である。
また、流量検出装置200は圧縮機100に備えられているが、これを図示しない冷凍装置の圧縮機と凝縮器との間の冷媒の循環通路又は蒸発器と圧縮機との間の冷媒の循環通路に備えるようにしても良い。
【0069】
また、流量検出装置200は圧縮機100や冷凍装置等の冷媒流量を検出するものであるが、対象とする流体は冷媒に限定されない。