(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レベルシフト素子のシフト電圧が、前記ノーマリーオフトランジスタのオン時に印加されるゲート電圧と、前記ノーマリーオフトランジスタのオン抵抗と定格電流の積との差よりも小さい請求項1記載の半導体装置。
前記レベルシフト素子が第1のツェナーダイオードであって、前記第1のツェナーダイオードのアノードが前記第2のゲートに接続され、前記第1のツェナーダイオードのカソードが前記ゲート端子に接続される請求項1または請求項2記載の半導体装置。
前記レベルシフト素子が第1のダイオードであって、前記第1のダイオードのアノードが前記ゲート端子側に接続され、前記第1のダイオードのカソードが前記第2のゲート側に接続され、前記ゲート端子と前記第2のゲートとの間に、前記第1のダイオードと並列に第2のダイオードが設けられ、前記第2のダイオードのアノードが前記第2のゲートに接続され、前記第2のダイオードのカソードが前記ゲート端子に接続される請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
前記レベルシフト素子のシフト電圧が、前記ノーマリーオフトランジスタのオン時に印加されるゲート電圧と、前記ノーマリーオフトランジスタのオン抵抗と定格電流の積との差から5V減じた電圧よりも大きい請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
前記ノーマリーオフトランジスタのオフ時の前記第1のソースと前記第1のドレイン間の耐圧が、前記ノーマリーオントランジスタの前記第2のソースと前記第2のゲート間の耐圧よりも低い請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体装置。
前記第1のソースに接続されるアノードと、前記第1のドレインおよび前記第2のソースに接続されるカソードを有し、ツェナー電圧が前記ノーマリーオフトランジスタのアバランシェ降伏電圧よりも低い第3のツェナーダイオードを、さらに備える請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
前記レベルシフト素子のシフト電圧が、前記ノーマリーオフトランジスタのオン時に印加されるゲート電圧と、前記ノーマリーオフトランジスタのオン抵抗と定格電流の積との差よりも小さい請求項13記載の半導体装置。
前記ツェナーダイオードと前記放電端子との間に、前記ツェナーダイオードのアノードに接続されるアノードと、前記放電端子に接続されるカソードを有するダイオードを、さらに備える請求項12ないし請求項14いずれか一項記載の半導体装置
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0011】
また、本明細書中、半導体装置とは、ディスクリート半導体等の複数の素子が組み合わされたパワーモジュール、または、ディスクリート半導体等の複数の素子にこれらの素子を駆動する駆動回路や自己保護機能を組み込んだインテリジェントパワーモジュール、あるいは、パワーモジュールやインテリジェントパワーモジュールを備えたシステム全体を包含する概念である。
【0012】
また、本明細書中、ノーマリーオントランジスタとは、ソースとゲートが同電位の際に、チャネルがオン状態となり、ソースとドレイン間に電流が流れるトランジスタを意味するものとする。また、本実施形態において、ノーマリーオフトランジスタとは、ソースとゲートが同電位の際に、チャネルがオフ状態となり、ソースとドレイン間に電流が流れないトランジスタを意味するものとする。
【0013】
また、本明細書中、レベルシフト素子とは、素子の両端の電圧を所定量だけシフトさせる機能を備える素子を意味する。そして、素子の両端の電圧差をシフト電圧と称するものとする。
【0014】
また、本明細書中、GaN系半導体とは、窒化物半導体のうち、GaN、および、GaNとAlN、InNの中間の組成を備えるAl
XGa
1−XN、InGa
1−XN等の総称である。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ソース端子、ゲート端子およびドレイン端子を備える。そして、ソース端子に接続される第1のソース、第1のドレイン、ゲート端子に接続される第1のゲートを有するノーマリーオフトランジスタと、第1のドレインに接続される第2のソース、ドレイン端子に接続される第2のドレイン、ゲート端子に接続される第2のゲートを有するノーマリーオントランジスタと、を備える。
【0016】
図1は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、例えば、定格電圧が600Vや1200Vのパワーモジュールである。
【0017】
本実施形態の半導体装置は、電子をキャリアとするn型チャネルのノーマリーオフトランジスタ10と、電子をキャリアとするn型チャネルのノーマリーオントランジスタ20が直列に接続されてパワーモジュールを構成する。ノーマリーオフトランジスタ10は、例えば、Si(シリコン)の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。また、ノーマリーオントランジスタ20は、例えば、GaN(窒化ガリウム)系半導体のHEMTである。ノーマリーオントランジスタ20は、ゲート絶縁膜を備える。
【0018】
なお、ノーマリーオフトランジスタ10は、図示しない寄生ボディダイオードを備えている。
【0019】
ノーマリーオフトランジスタ10は、ノーマリーオントランジスタ20に比較して、素子耐圧が低い。ノーマリーオフトランジスタ10の素子耐圧は、例えば、10〜30Vである。また、ノーマリーオントランジスタ20の素子耐圧は、例えば、600〜1200Vである。
【0020】
半導体装置は、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備える。そして、ノーマリーオフトランジスタ10は、ソース端子100に接続される第1のソース11と、第1のドレイン12、ゲート端子300に接続される第1のゲート13を有する。
【0021】
また、ノーマリーオントランジスタ20は、第1のドレイン12に接続される第2のソース21、ドレイン端子200に接続される第2のドレイン22、ゲート端子300に接続される第2のゲート23を有する。一般に、第2のソース21よりも高電圧が印加されるノーマリーオントランジスタ20の第2のドレイン22は、高い耐圧を備えるようデバイス設計がなされる。例えば、ゲート電極とドレイン電極間の距離を、ゲート電極とソース間の距離よりも長くするよう設計される。
【0022】
本実施形態の半導体装置は、上記構成により、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備えるノーマリーオフトランジスタとして機能する。
【0023】
すなわち、半導体装置のオフ時には、ソース端子100およびゲート端子300は、グラウンド電位に固定される。そして、ドレイン端子200には、例えば、600〜1200Vの電圧が印可される。この際、ノーマリーオフトランジスタ10は、第1のソース11と第1のゲート13との間の電位差が、閾値以下の0Vであるためオフ状態となる。一方、ノーマリーオントランジスタ20は、第2のソース21の電位が持ち上がることで第2のソース21と第2のゲート23間の電位差が閾値以下となりオフ状態となる。したがって、半導体装置全体がオフ状態となる。
【0024】
半導体装置のオン時には、ソース端子100は、グラウンド電位に固定される。そして、ゲート端子300には、正のゲート電圧、例えば、5V〜15Vのゲート電圧が印加される。この際、ノーマリーオフトランジスタ10は、第1のソース11と第1のゲート13との間の電位差が閾値以上になりオン状態となる。一方、ノーマリーオントランジスタ20は、第2のゲート23に正の電圧が印加されることで第2のソース21と第2のゲート23間の電位差が閾値以上になりオン状態となる。したがって、半導体装置がオン状態となる。
【0025】
図2は、比較形態の半導体装置の回路図である。この半導体装置も、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備える。そして、ノーマリーオフトランジスタ10は、ソース端子100に接続される第1のソース11と、第1のドレイン12、ゲート端子300に接続される第1のゲート13を有する。また、ノーマリーオントランジスタ20は、第1のドレイン12に接続される第2のソース21、ドレイン端子200に接続される第2のドレイン22、ソース端子100に接続される第2のゲート23を有する。
【0026】
比較形態の半導体装置も、上記構成により、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備えるノーマリーオフトランジスタとして機能する。もっとも、
図2の構成では、第2のゲート23がソース端子100に接続されるため、ゲートにオーバードライブ、すなわち、正の電圧を印加することができない。半導体装置のオン時には、第2のソース21が、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流の積で表される電圧分だけ、電位が上昇するため、実効的にゲート電圧が負となる。このため、オン電流が十分に引けないおそれがある。
【0027】
本実施形態では、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のゲート13と、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23がともにゲート端子300に接続されている。したがって、半導体装置のオン時に、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23にオーバードライブ、すなわち、正の電圧を印加することが可能となる。このため、オン時のチャネル抵抗が低減する。よって、大きなオン電流を得ることが可能となる。
【0028】
本実施形態の半導体装置では、ノーマリーオフトランジスタ10のオフ時の第1のソース11と第1のドレイン間12の耐圧が、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と第2のゲート23間の耐圧よりも低い。具体的には、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧が、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧よりも低くなるよう設計されている。
【0029】
ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生ボディダイオードの耐圧、または、チャネル部のパンチスルー耐圧で規定される。ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は、例えば、ノーマリーオフトランジスタ10を形成する不純物層の不純物濃度や不純物プロファイルを調整することにより調整が可能である。
【0030】
ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧やノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧は、例えば、ノーマリーオフトランジスタ10やノーマリーオントランジスタ20の電極に、測定針をあてて直接評価することが可能である。
【0031】
ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20が直列に接続された回路構成では、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の接続部(以下、単に接続部とも称する)、すなわち、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のドレイン12、または、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21に、デバイス動作中に過電圧が生じるおそれがある。過電圧は、例えば、半導体装置がオン状態からオフ状態に移行する際に、ソース端子100とドレイン端子200との間に印加されている高電圧が、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の寄生容量の比で分圧されることによって生じ得る。あるいは、半導体装置のオフ時に、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20それぞれのリーク電流比で、ソース端子100とドレイン端子200との間に印加されている高電圧が分圧されることにより生じ得る。
【0032】
過電圧が生じると、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と、第2のゲート23との間に高電圧が印加される。この過電圧が、ゲート絶縁膜の耐圧以上となると、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流が増大する、あるいは、破壊されるおそれがある。ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流が増大する、あるいは、ゲート絶縁膜が破壊されると半導体装置が動作不良となる。このため、半導体装置の信頼性が低下する。
【0033】
また、ゲート絶縁膜に問題が生じない場合であっても、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と、第2のゲート23との間に高電圧が印加されることで、第2のソース21側に電荷がトラップされる。これにより、電流コラプスが生じるおそれがある。電流コラプスが生じるとオン電流が低下するため動作不良となる。したがって、半導体装置の信頼性がやはり低下する。
【0034】
本実施形態では、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧が、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧よりも低くなるよう設計される。これにより、ノーマリーオフトランジスタのオフ時の第1のソースと第1のドレイン間の耐圧を、ノーマリーオントランジスタの第2のソースと第2のゲート間の耐圧よりも低くする。
【0035】
したがって、例え接続部に過電圧が生じた場合であっても、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏が生じることにより、接続部の電荷を逃がすことができる。したがって、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と、第2のゲート23との間に印加される電圧を、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧より低くすることが可能となる。したがって、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。
【0036】
なお、一般に、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧は30Vを超える。したがって、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は30V以下であることが望ましい。
【0037】
また、アバランシェ降伏電圧は、ノーマリーオントランジスタ20の閾値(Vth)の絶対値よりも十分高いことが望ましい。ノーマリーオントランジスタ20を確実にオフできるようにするためである。この観点からノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は、ノーマリーオントランジスタ20の閾値(Vth)の絶対値+5V以上あることが望ましい。仮に、Vth=−10Vの場合、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は、15V以上であることが望ましい。
【0038】
また、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流との積は、2V以下であることが望ましい。2V程度であれば、ノーマリーオフトランジスタ10で生じる電圧降下によりノーマリーオントランジスタ20のゲートバイアスが低下することを十分抑制できる。したがって、ゲートバイアスの低下による電流損失が最小限に抑制できる。
【0039】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子と第2のゲートとの間に、第2のゲート側の電圧を低下させるレベルシフト素子を、さらに備える点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0040】
図3は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ゲート端子300と第2のゲート23との間に、第2のゲート23側の電圧を低下させるレベルシフト素子を備えている。本実施形態では、レベルシフト素子としてツェナーダイオード(第1のツェナーダイオード)130が設けられる。
【0041】
ツェナーダイオード130のアノードは第2のゲート23に接続され、カソードはゲート端子300に接続される。
【0042】
本実施形態では、第1の実施形態と同様、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のゲート13と、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23がともにゲート端子300に接続されている。したがって、半導体装置のオン時に、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23にオーバードライブ、すなわち、正の電圧を印加することが可能となる。
【0043】
もっとも、第2のゲート23に印加される正のゲート電圧が高すぎると、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜に印加される電界が大きくなり、ゲート絶縁膜の信頼性不良が生じるおそれがある。特に、上述のようにノーマリーオントランジスタ20のソース側は高耐圧構造になっていないため、ゲート絶縁膜の信頼性不良が生じやすい。例えば、第2のソース21と第2のゲート23間に印加される電圧が5V以上になると、ゲート絶縁膜の信頼性不良が生じるおそれがある。
【0044】
本実施形態では、ゲート端子300に正のゲート電圧が印加される場合、第2のゲート23に印加される電圧は、ツェナーダイオード130のツェナー電圧分低下する。したがって、半導体装置のオン時に第2のソース21と第2のゲート23間に印加される電圧が低減される。よって、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の信頼性が向上する。
【0045】
ツェナーダイオード130のシフト電圧、すなわち、ツェナー電圧が、ノーマリーオフトランジスタ10のオン時に印加されるゲート電圧、すなわち、ゲート端子300に印加される電圧と、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流の積との差よりも小さいことが望ましい。ここで、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流の積は、半導体装置のオン時の第1のドレイン12および第2のソース21の電圧を表す。
【0046】
ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗は、例えば、ノーマリーオフトランジスタ10の電極に、測定針をあてて直接評価することが可能である。
【0047】
例えば、ゲート端子300に印加される電圧が10Vとする。そして、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗(Ron)が0.1Ω、定格電流(ドレイン電流)が10Aとする。この場合、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流の積、すなわち、第1のドレイン12および第2のソース21の電圧が1Vとなる。そうすると、ツェナーダイオード130のツェナー電圧は9V(=10V−1V)よりも小さいことが望ましい。
【0048】
上記関係を充足することにより、半導体装置のオン時に、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と第2のゲート23の間にオーバードライブ、すなわち、正の電圧を印加することが保証される。よって、半導体装置のオン電流が大きくなる。
【0049】
ツェナーダイオードは、ツェナー電圧が動作状態、動作環境に関わらず安定である。したがって、シフト電圧が安定し、安定した回路動作を実現することが可能となる。また、ツェナーダイオードでは、幅広い範囲のツェナー電圧を備える製品が存在するため、所望のシフト電圧を1個の部品で実現できるという利点がある。
【0050】
また、ツェナーダイオード130のツェナー電圧が、ノーマリーオフトランジスタ10のオン時に印加されるゲート電圧と、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流の積との差から、5V減じた電圧よりも大きいことが望ましい。この5Vは、ゲート絶縁膜の信頼性を確保されるために許容される電圧である。
【0051】
例えば、ゲート端子300に印加される電圧が10V、ノーマリーオフトランジスタ10のオン抵抗と定格電流の積、すなわち、第1のドレイン12および第2のソース21の電圧が1Vとする。この場合、ツェナーダイオード130のツェナー電圧は4V(=(10V−1V)−5V)以上であることが望ましい。
【0052】
上記関係を充足することにより、半導体装置のオン時に、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と第2のゲート23の間に印加される電圧、すなわちゲート絶縁膜に印加される電圧が5V以下になり、ゲート絶縁膜の信頼性が向上する。
【0053】
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、レベルシフト素子が第1のダイオードであって、第1のダイオードのアノードがゲート端子側に接続され、第1のダイオードのカソードが第2のゲート側に接続され、ゲート端子と第2のゲートとの間に、第1のダイオードと並列に第2のダイオードが設けられ、第2のダイオードのアノードが第2のゲートに接続され、第2のダイオードのカソードがゲート端子に接続される点で、第1および第2の実施形態と異なっている。第1および第2の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0054】
図4は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、直列接続される3個のダイオード(第1のダイオード)140a、140b、140cと、ダイオード(第2のダイオード)150を備えている。本実施形態では、3個のダイオード140a、140b、140cがレベルシフト素子である。
【0055】
3個のダイオード(第1のダイオード)140a、140b、140cのアノードがゲート端子300側に接続され、カソードが第2のゲート23側に接続される。そして、ダイオード(第2のダイオード)150は、ゲート端子300と第2のゲート23との間に、3個のダイオード140a、140b、140cと並列に設けられる。ダイオード150のアノードが第2のゲートに接続され、カソードがゲート端子300に接続される。
【0056】
本実施形態では、ゲート端子300に正のゲート電圧が印加される場合、第2のゲート23に印加される電圧は、3個のダイオード140a、140b、140cの順方向降下電圧(Vf)分だけ低下する。したがって、半導体装置のオン時に第2のソース21と第2のゲート23間に印加される電圧が低減される。よって、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の信頼性が向上する。
【0057】
第2のゲート23間に印加される電圧は、直列に接続するダイオードの数を最適化することにより調整できる。
図4では、ダイオードの数が3個の場合を例示したが、この個数に限られるものではない。
【0058】
半導体装置をオフ状態にする場合、ゲート端子300に、例えば、0Vが印加される。この際、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23に蓄積されていた正電荷は、ダイオード150を介して、ゲート端子300に引き抜かれる。ダイオード150が設けられることで、オン状態からオフ状態へのスイッチングが速やかに行われる。
【0059】
ダイオード(第1のダイオード)140a、140b、140c、およびダイオード(第2のダイオード)150は、例えば、PINダイオードまたはショットキーバリアダイオードである。PINダイオードは、ショットキーバリアダイオードと比較して順方向降下電圧(Vf)が大きいため、シフト電圧を大きくする場合には望ましい。一方、ショットキーバリアダイオードはスイッチング速度が速いため、回路動作スピードを向上させる観点から望ましい。
【0060】
(第4の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子と第2のソースとの間に直列接続される第3のダイオードと第2のツェナーダイオードをさらに備え、第3のダイオードのカソードがゲート端子に接続され、第2のツェナーダイオードのカソードが第2のソースに接続される。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0061】
図5は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ゲート端子300とノーマリーオントランジスタ20の第2のソース23との間に、直列接続されるダイオード(第3のダイオード)210とツェナーダイオード(第2のツェナーダイオード)220をさらに備える。そして、ダイオード(第3のダイオード)210のカソードがゲート端子300に接続され、ツェナーダイオード(第2のツェナーダイオード)220のカソードが第2のソース21に接続される。また、ダイオード(第3のダイオード)210のアノードと、ツェナーダイオード220のアノードが接続される。
【0062】
上述のように、ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20が直列に接続された回路構成では、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21に、デバイス動作中に過電圧が生じるおそれがある。本実施形態では、第2のソース21に、過電圧が生じた場合、ダイオード210に順方向電流が流れ、第2のソース21の電圧を低下させることが可能となる。したがって、ゲート絶縁膜の破壊が生じにくくなり、半導体装置の信頼性が向上する。
【0063】
もっとも、半導体装置をオフさせる際には、第2のソース21の電圧が一定以上上昇し、ノーマリーオントランジスタ20をオフ状態にすることが必要である。本実施形態では、ツェナーダイオード220を設けることにより、半導体装置をオフさせる際、ゲート端子300が0Vとなったとしても、ツェナーダイオード220のツェナー電圧までは、第2のソース21の電圧が上昇する。よって、ノーマリーオントランジスタ20をオフ状態にすることが可能となる。
【0064】
本実施形態によれば、第2のソース21に過電圧が印加された際に、ゲート絶縁膜の信頼性を左右する第2のソース21と、第2のゲート23との間にかかる電圧を直接制御することが可能となる。したがって、信頼性にばらつきのない安定した特性の半導体装置を実現することが可能となる。
【0065】
なお、ダイオード(第3のダイオード)210は、例えば、PINダイオードまたはショットキーバリアダイオードである。
(第5の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオントランジスタがソースフィールドプレート(以下SFPとも記述)を有する。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0066】
図6は、本実施形態のノーマリーオントランジスタの模式断面図である。ノーマリーオントランジスタは、GaN(窒化ガリウム)系半導体の、ゲート絶縁膜を備えるHEMTである。
【0067】
このノーマリーオントランジスタ20(
図1)は、基板160上の窒化物半導体層161上に形成されている。基板160は、例えば、シリコン(Si)である。
【0068】
基板160と窒化物半導体層161との間には、バッファ層(図示せず)が設けられる。バッファ層は基板160と窒化物半導体層161との間の格子不整合を緩和する機能を備える。バッファ層は、例えば、窒化アルミニウムガリウム(Al
xGa
1−xN(0<x<1))の多層構造で形成される。
【0069】
また、窒化物半導体層161は、動作層(チャネル層)161aと障壁層(電子供給層)161bとの積層構造を備える。動作層161aは、例えば、窒化ガリウム(GaN)であり、障壁層161bは、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である。
【0070】
動作層161aと障壁層161bの間に、ヘテロ接合界面が形成されている。
【0071】
窒化物半導体層161上には、第1の窒化珪素膜162を間に挟んで、ゲート電極164が形成される。第1の窒化珪素膜162はゲート絶縁膜として機能する。ゲート電極164は、例えば、金属電極である。金属電極は、例えば、ニッケル(Ni)電極、チタン(Ti)電極またはアルミニウム(Al)電極である。
【0072】
また、窒化物半導体層161上には、ゲート電極164を間に挟んで、ソース電極166とドレイン電極168が設けられる。ソース電極166とドレイン電極168はそれぞれゲート電極164と離間している。
【0073】
ソース電極166とゲート電極164との間、および、ドレイン電極168とゲート電極164との間の窒化物半導体層161上には、第2の窒化珪素膜170が形成される。第2の窒化珪素膜170は窒化物半導体層161の表面に接して形成されている。第2の窒化珪素膜170は、ゲート電極164とソース電極166、ゲート電極164とドレイン電極168との間の窒化物半導体層161の表面を保護する表面保護膜(またはパッシベーション膜)として機能する。
【0074】
ソース電極166は、第2の窒化珪素膜170上でドレイン電極168側に伸長する2段のソースフィールドプレート部166a、166bを備える。ソースフィールドプレート部166a、166bが、ノーマリーオントランジスタ20がオンした際に、ソースフィールドプレートとして機能する。
【0075】
ソースフィールドプレート部166a、166bは、ソース電極166とゲート電極166間のソース領域およびゲート電極164とドレイン電極168間のドレイン領域での電界を緩和し、電流コラプスを抑制する機能を備える。同様の機能を果たす構造として、ゲート電極164をドレイン電極168側に伸長させるゲートフィールドプレート(以下GFPとも記述)がある。
【0076】
一般に、動作速度の低下や損失の増大を避ける観点からトランジスタの寄生容量は小さい方が望ましい。特に、ドレイン−ゲート間容量(Cgd)容量は寄生発振やスイッチング速度への影響が大きいため、小さいことが望ましい。
【0077】
したがって、本実施形態の半導体装置、すなわち、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20を直接接続し、それぞれのゲート電極が共通化される構成では、ゲート−ドレイン間容量(Cgd)が小さくなるSFPが、GFPよりもコラプス低減を実現する構造として望ましい。
【0078】
本実施形態によれば、第1の実施形態同様の信頼性向上効果に加え、SFPによりデバイス特性に対する寄生容量の影響を抑えて電流コラプスを抑制することが可能になる。したがって、さらに信頼性の向上した半導体装置が実現される。
【0079】
なお、SFPについて、ソース電極166自体がドレイン側に伸長する構造を例に説明したが、例えば、ソース電極166と同電位のSFP電極を、ソース電極166と別途設ける構成であってもかまわない。また、ソースフィールドプレート部の数は2個に限らず、1個であっても、3個以上であってもかまわない。
【0080】
(第6の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、基板、ソースのリード線、ドレインのリード線、ゲートのリード線をさらに備える。そして、基板上に、ノーマリーオフトランジスタ、ノーマリーオントランジスタ、ツェナーダイオードが実装される。ソースのリード線側からドレインのリード線側に向けて、ノーマリーオフトランジスタ、ノーマリーオントランジスタの順に配置される。また、ソースのリード線側からドレインのリード線側に向けて、第1のツェナーダイオード、ノーマリーオントランジスタの順に配置される。さらに、ソースのリード線と、第1のソースが接続され、ドレインのリード線と、第2のドレインが接続され、ゲートのリード線と第1のゲートおよび第1のツェナーダイオードのカソードが接続される
る。
【0081】
本実施形態は、第2の実施形態の回路構成を、パワーモジュールとして具体化した形態である。以下、第2の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0082】
図7は、本実施形態の半導体装置の上面模式図である。
【0083】
本実施形態の半導体装置は、基板90、ソースのリード線91、ドレインのリード線92、ゲートのリード線93、を備える。ソースのリード線91がソース端子100、ドレインのリード線92がドレイン端子200、ゲートのリード線93がゲート端子300に対応する。
【0084】
基板90の少なくとも表面には、例えば、金属の第1の導電体95および第2の導電体96が存在する。第1の導電体95および第2の導電体96は、物理的に分離されている。
【0085】
基板90上の第1の導電体95上に、ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20が実装される。また、基板90上の第2の導電体95上に、ツェナーダイオード130が実装される。ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20、ツェナーダイオード130は、例えば、半導体チップであり、例えば、導電性ペーストやハンダにより基板の第1および第2の導電体95、96上に実装される。
【0086】
そして、ソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置される。また、基板90のソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ツェナーダイオード130、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置される。
【0087】
そして、ソースのリード線91と、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のソース11が接続される。そして、ドレインのリード線92と、第2のドレイン22が接続される。ゲートのリード線93と第1のゲート13、および、ツェナーダイオード130のカソードと同電位となる第2の導電体96が接続される。
【0088】
また、ツェナーダイオード130のアノード130aとノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23が接続される。そして、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のドレインと同電位となる第1の導電体95とノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21が接続される。
【0089】
各接続は、例えば、ワイヤボンディングにより行われる。ワイヤボンディングには、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の材料が用いられる。
【0090】
本実施形態によれば、ソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置される。これにより、半導体装置のオン電流が流れる経路を短くすることができる。この配置によりオン電流の経路の寄生インダクタンスが極力排除され、導通損失が低減される。
【0091】
以上、本実施形態によれば、第2の実施形態の効果に加え、各デバイスを適切に配置、接続することにより、特性に優れた半導体装置を実現できる。
【0092】
本実施形態において、ツェナーダイオード130とノーマリーオントランジスタ20との距離が、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20との距離よりも長いことが望ましい。一般にダイオードの方がトランジスタよりも熱的な影響を受けやすい。そして、ノーマリーオントランジスタ20は大きな電力を消費するため発熱量が大きい。したがって、ツェナーダイオード130とノーマリーオントランジスタ20の距離を離すことにより、半導体装置の発熱による特性変動を抑制することが可能となる。
【0093】
(第7の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のソースに接続されるアノードと、第1のドレインおよび第2のソースに接続されるカソードを有し、ツェナー電圧がノーマリーオフトランジスタのアバランシェ降伏電圧よりも低い第3のツェナーダイオードを、さらに備える点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0094】
図8は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10に対して並列にツェナーダイオード(第3のツェナーダイオード)230が設けられる。
【0095】
ツェナーダイオード230のアノードは、第1のソース11に接続される。また、カソードは、第1のドレイン12および第2のソース21に接続される。
【0096】
ツェナーダイオード230のツェナー電圧が、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも低くなるよう設定される。また、ツェナー電圧は、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧より低く設定される。これにより、ノーマリーオフトランジスタ10のオフ時の第1のソース11と第1のドレイン12間の耐圧が、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と第2のゲート23間の耐圧よりも低くなる。
【0097】
本実施形態の半導体装置では、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の接続部に過電圧が生じた場合、過電圧がツェナー電圧に達した時点で、電荷がツェナーダイオード230に逃がされ、ソース端子100へと抜ける。したがって、接続部の電圧上昇が抑制され、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。
【0098】
ツェナーダイオード230のツェナー電圧は、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも精度よく制御できる。したがって、本実施形態の半導体装置では、ツェナーダイオード230を用いることにより、第1の実施形態よりも安定して接続部の過電圧を抑制することが可能となる。また、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のドレイン12にノイズ等の予期せぬ高電圧が印加された場合であっても、ツェナーダイオード230により電荷を逃がすことができるため、ノーマリーオフトランジスタ10の保護にも寄与する。
【0099】
(第8の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のドレインと第3のツェナーダイオードとの間に設けられ、第1のドレインに接続されるアノードと、第3のツェナーダイオードのカソードに接続されるカソードを有する第4のダイオードと、第3のツェナーダイオードのカソードと、第1のソースとの間に、第3のツェナーダイオードと並列に設けられるコンデンサを、さらに備える点で、第7の実施形態と異なっている。第7の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0100】
図9は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10のドレイン側にダイオード(第4のダイオード)240が設けられる。そして、ノーマリーオフトランジスタ10に並列にツェナーダイオード(第3のツェナーダイオード)230が設けられる。さらに、ツェナーダイオード(第3のツェナーダイオード)230と並列にコンデンサ250が設けられる。
【0101】
ダイオード240は、第1のドレイン12および第2のソース21とツェナーダイオード230との間に設けられる。ダイオード240のアノードは、第1のドレイン12および第2のソース21に接続される。また、ダイオード240のカソードは、ツェナーダイオード230のカソードに接続される。
【0102】
また、コンデンサ250は、ダイオード240のカソードおよびツェナーダイオード230のカソードと、第1のソース11との間に、ツェナーダイオード230と並列に設けられる。
【0103】
ダイオード240は、コンデンサ250側からの電荷の逆流を防止する。ダイオード240は、例えば、PINダイオードまたはショットキーバリアダイオードである。
【0104】
本実施形態によれば、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の接続部に過電圧が生じた場合、その電荷をコンデンサ250に一旦蓄積する。そして、蓄積した電荷をツェナーダイオード230によりソース端子100側に逃がす。これにより、接続部の電圧上昇が抑制され、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。
【0105】
本実施形態では、電荷をコンデンサ250に一旦蓄積するため、ツェナーダイオード230を安価な寄生容量の小さなダイオードとすることが可能である。したがって、半導体装置を安価にできる。
【0106】
また、コンデンサ250の容量は、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のソース11と第2のソース12間で、ダイオード240の容量との直列接続となる。また、ダイオード240は、ツェナーダイオードのみで構成する場合に比べ寄生容量が格段に小さい品種を選ぶことができる。したがって、ダイオード240の容量をコンデンサ250の容量に対し十分小さくすることで、コンデンサ250の容量は、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生容量としての寄与が小さくなる。したがって、寄生容量の増大によるノーマリーオフトランジスタ10の動作速度の低下や、損失の増加を抑制することができる。
【0107】
また、コンデンサ250を設けることで、第7の実施形態のようなツェナーダイオードのみの構成より、ツェナーダイオード230のサイズを小さくできる。このため、ツェナーダイオード230のリーク電流が小さくできる。したがって、低消費電力の半導体装置が実現される。
【0108】
また、コンデンサ250を設けることで、ツェナーダイオード230に対する応答速度の要求が緩和される。したがって、ツェナーダイオード230を、熱源であるノーマリーオントランジスタ20から距離的に遠ざけて配置することが可能となる。したがって、ツェナーダイオード230の温度が高温になり特性が変動することを抑制できる。
【0109】
(第9の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のソースに接続されるアノードと、第1のドレインに接続されるカソードを有し、順方向降下電圧が、ノーマリーオフトランジスタの寄生ボディダイオードの順方向降下電圧よりも低く、第1のソースと第1のドレインとの間に、第3のツェナーダイオードと並列に設けられるショットキーバリアダイオードを、さらに備える点で第7の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第7の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0110】
図10は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10に対して並列にツェナーダイオード(第3のツェナーダイオード)230が設けられる。さらに、ツェナーダイオード230と並列にショットキーバリアダイオード260が設けられる。
【0111】
ショットキーバリアダイオード260のアノードは第1のソース11に接続される。また、ショットキーバリアダイオード260のカソードは、第1のドレイン12および第2のソース21に接続される。
【0112】
ショットキーバリアダイオード260の順方向降下電圧(Vf)は、ノーマリーオフトランジスタの寄生ボディダイオード(図示せず)の順方向降下電圧(Vf)よりも低い。そして、ショットキーバリアダイオード260は、第1のドレイン12および第2のソース21と、第1のソース11との間に、ツェナーダイオード(第3のツェナーダイオード)230と並列に設けられる。
【0113】
第7の実施形態のように、ショットキーバリアダイオード260を設けない場合には、ソース端子100がドレイン端子200に対し正の電圧となる還流モード時に、電流はノーマリーオフトランジスタ10の寄生ボディダイオードを流れる。本実施形態では、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生ボディダイオードの順方向降下電圧(Vf)よりも低い順方向降下電圧(Vf)を有するショットキーバリアダイオード260を設ける。これにより、還流モード時に電流はショットキーバリアダイオード260を流れる。
【0114】
ショットキーバリアダイオードは、PINダイオードと異なり多数キャリアのみを用いて動作する。したがって、PINダイオードと比較してリカバリー特性に優れる。よって、本実施形態では、第7の実施形態の効果に加え、還流モード時のリカバリー特性を向上させることが可能となる。よって、信頼性およびリカバリー特性に優れた半導体装置を実現できる。耐圧の大半はノーマリーオントランジスタ20が担うためショットキーバリアダイオード260は低耐圧の品種を選ぶことができる。これにより、低耐圧品種と同様のVf特性・リカバリー特性を備えつつ高耐圧のボディダイオード動作を達成できる。
【0115】
また、順方向降下電圧(Vf)が小さいため、還流モード時の導通損失やスイッチング損失も低減することが可能である。また、ショットキーバリアダイオード260の寄生容量により、接続部での過電圧の印加が抑制される。また、ショットキーバリアダイオード260のリーク電流によって、接続部から電荷を逃すことできるため、接続部の過電圧の印加が抑制される。したがって、さらに信頼性の向上した半導体装置が実現される。
【0116】
なお、ショットキーバリアダイオードは、アバランシェ降伏に対する保証がないため、ショットキーバリアダイオード260の耐圧は、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも高いことが望ましい。
【0117】
(第10の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ソース端子に接続される第1のソース、第1のドレイン、ゲート端子に接続される第1のゲートを有するノーマリーオフトランジスタと、第1のドレインに接続される第2のソース、ドレイン端子に接続される第2のドレイン、ゲート端子に接続される第2のゲートを有するノーマリーオントランジスタと、放電端子に接続されるアノードと、第1のドレインに接続されるカソードを有し、ツェナー電圧がノーマリーオントランジスタの第2のソースと第2のゲート間の耐圧よりも低く、ツェナー電圧がノーマリーオフトランジスタのアバランシェ降伏電圧よりも低いツェナーダイオードを備える。
【0118】
図11は、本実施形態の半導体装置の回路図である。ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20が直列接続されてパワーモジュールを構成する点については、第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0119】
本実施形態の半導体装置は、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300と、放電端子400とを備える。そして、ノーマリーオフトランジスタ10は、ソース端子100に接続される第1のソース11と、第1のドレイン12、ゲート端子300に接続される第1のゲート13を有する。また、ノーマリーオントランジスタ20は、第1のドレイン12に接続される第2のソース21、ドレイン端子200に接続される第2のドレイン22、ゲート端子300に接続される第2のゲート23を有する。
【0120】
さらに、ツェナー電圧がノーマリーオントランジスタ20の第2のソースと第2のゲート間の耐圧よりも低いツェナーダイオード70を備える。また、ツェナー電圧は、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも低い。
【0121】
ツェナーダイオード70のアノードは、放電端子400に接続される。ツェナーダイオード70のカソードは、第1のドレイン12および第2のソース21に接続される。
【0122】
また、放電端子400には、ダイオード80を介して、電源500が接続される。ダイオード80は、例えば、PINダイオードである。電源500は、例えば、直列接続されるノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20を制御する制御回路の電源である。
【0123】
ダイオード80のアノードは放電端子400に接続される。また、ダイオード80のカソードは電源500に接続される。ダイオード80は、接続部に電源500側から電流が流れ込むことを抑制する。
【0124】
本実施形態によれば、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の接続部に過電圧が生じた場合、過電圧がツェナー電圧に達した時点で、電荷がツェナーダイオード70に逃がされ、放電端子400へと抜ける。したがって、接続部の電圧上昇が抑制され、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。また、過電圧により接続部に生じた電荷を、電源500に入れて回生することにより、半導体装置のシステム全体の省エネルギー化が実現される。
【0125】
なお、ツェナー電圧は、電源500の電圧と接続部に許容される電圧の値によって最適化されることが望ましい。例えば、電源500の電圧が5Vであり、接続部に許容される電圧が20Vである場合には、ツェナー電圧を15V程度に調整すればよい。
【0126】
(第11の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ツェナーダイオードと放電端子との間に、ツェナーダイオードのアノードに接続されるアノードと、放電端子に接続されるカソードを有するダイオードを、さらに備えること以外は、第10の実施形態と同様である。以下、第10の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0127】
図12は、本実施形態の半導体装置の回路図である。
【0128】
本実施形態の半導体装置は、第10の実施形態と異なり、ダイオード80が放電端子400と、ツェナーダイオード70との間に設けられる。例えば、
図12の点線枠内を1個の半導体パッケージとすることが出来る。
【0129】
本実施形態によっても、第10の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、逆流防止用のダイオード80を、半導体パッケージ内に実装することで、よりコンパクトなシステムを実現することが可能となる。
【0130】
以上、実施形態においては、ノーマリーオフトランジスタ10について、Si(シリコン)の縦型MOSFET、ノーマリーオントランジスタ20について、GaN(窒化ガリウム)系半導体のnチャネル型HEMTを例に説明したが、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20はこれらに限定されるものではない。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換えまたは変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。