(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、説明の便宜上、ピンの振動方向を「上下方向」とし、チャンバの吐出口に対してピン側を上として、各部の形状、位置関係、および動作を説明する。ただし、本発明に係る液剤吐出装置を実際に動作させる際には、鉛直上下方向に限らず、任意の姿勢に液剤吐出装置を配置して、動作させることが可能である。
【0014】
また、本願において「平面視」とは、上記定義における上または下から、ピンの中心軸方向に見た状態を指す。なお、本願で「平面視」を用いて説明するときは、他の部材に隠れて実際には見えない部材も、ピンの中心軸方向に投影して得られた二次元図形として「平面視」できるものとする。
【0015】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液剤吐出装置1Aの構成を示した図である。液剤吐出装置1Aは、対象物90Aへ向けて、液剤9Aを断続的に吐出する装置である。
図1に示すように、液剤吐出装置1Aは、チャンバ20Aと、ピン30Aと、加振機構40Aとを有する。
【0016】
チャンバ20Aは、内部に空隙21Aを有する。空隙21Aは、チャンバ20Aの内部において、上下方向に延びている。液剤吐出装置1Aの動作時には、空隙21Aの内部に、液剤9Aが貯留される。また、チャンバ20Aは、排出口22Aと吐出口23Aとを有する。排出口22Aは、空隙21Aの下方向側端部に位置する。吐出口23Aは、排出口22Aよりも下側に位置する。空隙21Aは、排出口22Aおよび吐出口23Aを介して、チャンバ20Aの外部空間に通じる。
【0017】
ピン30Aの下部の先端は、空隙21A内に収容される。加振機構40Aは、ピン30Aを、
図1中に破線で示した第1位置と、
図1中に実線で示した第2位置との間で振動させる。ピン30Aが第1位置に配置されたときには、ピン30Aの下部の先端が、排出口22Aの周縁または内周面に接する。一方、ピン30Aが第2位置に配置されたときには、ピン30Aの下部の先端が、排出口22Aから上側に離れる。このように、ピン30Aを第1位置と第2位置との間で振動させることにより、吐出口23Aから液剤9Aが断続的に吐出される。
【0018】
加振機構40Aは、第1位置から第2位置へ向かうプル方向にピン30Aを加速させるプル機能と、第2位置から第1位置へ向かうプッシュ方向にピン30Aを加速させるプッシュ機能とを有する。そして、少なくともプッシュ機能には、電磁的に生じる駆動力が利用される。このように、ピン30Aのプッシュ方向の駆動に、電磁的に生じる駆動力を利用すれば、液剤9Aに対して、当該駆動力に応じた吐出力を付与できる。
【0019】
<2.第2実施形態>
<2−1.液剤吐出装置1の構成>
図2は、本発明の第2実施形態に係る液剤吐出装置1の縦断面図である。この液剤吐出装置1は、ピン30の駆動により、対象物の表面へ向けて、液剤9を断続的に吐出する装置である。液剤吐出装置1は、例えば、自動車、電子機器、通信機器、フラットパネルディスプレイ、光ディスク、二次電池等の製造工程において、種々の対象物の表面に、接着剤、オイル、グリス等の液剤9を塗布するために使用される。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の液剤吐出装置1は、シリンジ10、チャンバ20、ピン30、加振機構40、回路基板50、および枠体60を有する。
【0021】
シリンジ10は、吐出前の液剤9を貯留する容器である。シリンジ10は、給液配管11を介して、チャンバ20と接続されている。また、シリンジ10の上端部には、気体の導入口12が設けられている。
図2中に概念的に示したように、導入口12は、給気配管13を介して、気体供給部14に接続される。気体供給部14を動作させると、清浄空気や窒素ガス等の気体が、給気配管13および導入口12を通って、シリンジ10の内部へ導入される。ここで、給気配管13から供給される気体は、大気圧より高い圧力に加圧されている。液剤吐出装置1の使用時には、当該気体の圧力により、シリンジ10の内部に貯留された液剤9が、給液配管11を通って、チャンバ20へ供給される。すなわち、本実施形態では、シリンジ10が、チャンバ20内の空隙21に加圧された液剤9を供給する液剤供給部となっている。
【0022】
チャンバ20は、シリンジ10から供給された液剤9を内部に貯留するとともに、対象物90へ向けて液剤9を吐出する部位である。チャンバ20は、内部に液剤9が貯留される空隙21を有する。また、チャンバ20の下面には、吐出口23が設けられている。液剤吐出装置1の動作時には、チャンバ20内の空隙21に貯留された液剤9が、吐出口23から下方へ向けて吐出される。チャンバ20のより詳細な構成については、後述する。
【0023】
ピン30は、上下に延びる略柱状の部材である。ピン30の径は、下方へ向かうにつれて、段階的に小さくなっている。ピン30の材料には、例えば鉄合金等の金属が使用される。ピン30の表面は、耐摩耗性の向上のために、焼き入れされていることが好ましい。ただし、ピン30の材料に、金属以外の材料が使用されていてもよい。例えば、ピン30の材料に、液剤の種類に応じた耐腐食性の高い樹脂が用いられてもよい。ピン30は、チャンバ20の上部に配置されたガイド61に沿って、上下に振動する。ピン30の下部の先端は、チャンバ20内の空隙21に収容される。一方、ピン30の上部は、ガイド61より上方において、加振機構40に接続される。
【0024】
また、ピン30は、リング状のマグネット31を有する。本実施形態では、ガイド61より上側、かつ、加振機構40より下側に、マグネット31が配置される。ピン30が上下に振動すると、ピン30とともに、マグネット31も上下に振動する。
【0025】
加振機構40は、ピン30を上下に振動させる機構である。本実施形態では、加振機構40にリニア振動アクチュエータを用いている。リニア振動アクチュエータは、入力される電気信号に応じた磁束を発生させ、それにより生じる電磁的な駆動力により、ピン30を振動させる。リニア振動アクチュエータの中でも、特に、リニア共振アクチュエータを用いれば、加振機構40の駆動時の騒音を抑制しやすい。ただし、本発明の加振機構は、電磁的に駆動力を生じさせるものであればよい。例えば、リニア振動アクチュエータに代えて、リニアモータ、ボイスコイルモータ、ステッピングモータ、またはサーボモータが、加振機構として用いられてもよい。
【0026】
回路基板50は、加振機構40を動作制御する制御部である。回路基板50は、ホール素子501を含む複数の電子部品により構成された制御回路を有する。ホール素子501は、マグネット31から生じる磁束を検出することにより、マグネット31の上下方向の位置、すなわち、ピン30の上下方向の位置を検出する。そして、ホール素子501は、ピン30の上下方向の位置に応じた検出信号を出力する。回路基板50は、ホール素子501から出力された検出信号に基づいて、加振機構40に駆動信号を供給する。これにより、加振機構40の動作が制御される。
【0027】
枠体60は、チャンバ20の上部に位置する筐体である。上述した加振機構40、回路基板50、およびガイド61は、枠体60の内部に収容されている。また、シリンジ10、チャンバ20、加振機構40、回路基板50、およびガイド61は、枠体60に対して、それぞれ、直接的または間接的に固定されている。これにより、シリンジ10、チャンバ20、加振機構40、回路基板50、およびガイド61の相互の位置が定められている。
【0028】
<2−2.チャンバの詳細な構成>
続いて、チャンバ20のより詳細な構成について、説明する。
図3は、チャンバ20付近における液剤吐出装置1の部分縦断面図である。
【0029】
上述の通り、チャンバ20は、内部に液剤9が貯留される空隙21を有する。
図3に示すように、空隙21は、横空隙211と縦空隙212とを有する。縦空隙212は、チャンバ20の内部において、上下方向に延びている。ピン30の下部の先端は、縦空隙212内に収容される。横空隙211は、給液配管11と縦空隙212とを、略水平方向に繋いでいる。
【0030】
また、チャンバ20は、Oリング24を有する。Oリングの材料には、例えば、エラストマーが用いられる。Oリング24は、縦空隙212の上端部に位置し、チャンバ20を構成する部材と、ピン30との間に介在する。これにより、Oリング24より上側への液剤9の漏れ出しが、防止される。ピン30は、Oリング24と接触しながら、上下に振動する。ピン30の外周面が、予め焼き入れされていれば、Oリング24との接触によるピン30の摩耗を抑制できる。
【0031】
また、本実施形態のチャンバ20は、ヒータ25および断熱部材26を有する。ヒータ25には、例えば、セラミックヒータが用いられる。ヒータ25に通電すると、ヒータ25が発熱する。ヒータ25から生じた熱は、チャンバ20を構成する部材を通って、空隙21内の液剤9へ伝導する。これにより、空隙21内の液剤9の温度低下が抑制される。液剤9の温度低下が抑制されれば、液剤9の粘度の上昇が抑制される。その結果、液剤9を、吐出口23からより精度よく断続的に吐出できる。
【0032】
断熱部材26は、空隙21およびヒータ25の上部を覆っている。断熱部材26には、チャンバ20を構成する他の部材より熱伝導率の低い材料が用いられる。断熱部材26は、ヒータ25から生じた熱が、ホール素子501や加振機構40へ伝導することを、抑制する。これにより、加熱による駆動の誤差を抑制できる。また、ヒータ25から生じた熱の上方への漏れが抑制されるため、空隙21内の液剤9が、より効率よく加熱される。
【0033】
図4および
図5は、吐出口23の付近における液剤吐出装置1の部分縦断面図である。
図4および
図5に示すように、液剤吐出装置1の使用時には、チャンバ20の下側に、対象物90が配置される。吐出口23を有するチャンバ20の下面と、対象物90の表面とは、隙間を介して上下に対向する。
【0034】
本実施形態のチャンバ20は、底板部27を有する。底板部27は、チャンバ底部71、ダンパ72、およびワッシャ73を有する。チャンバ底部71は、チャンバ20に対して着脱可能に取り付けられたノズル部材28の一部である。チャンバ底部71は、縦空隙212の下側において、略水平に広がる。また、チャンバ底部71は、上下に貫通する第1円孔81を有する。第1円孔81の下側の開口は、上述した吐出口23である。
【0035】
ダンパ72は、チャンバ底部71の上部に配置される。ダンパ72の材料には、例えば、ノズル部材28より弾性の大きい樹脂が使用される。また、ダンパ72は、上下に貫通する第2円孔82を有する。第1円孔81と第2円孔82とは、互いに軸方向に連通する。また、本実施形態では、第1円孔81および第2円孔82の周囲において、チャンバ底部71の上面とダンパ72との間に、隙間84が介在する。
【0036】
ワッシャ73は、ダンパ72の上部に配置される。ワッシャ73の材料には、例えば、ダンパ72より弾性の小さい金属が使用される。また、ワッシャ73は、上下に貫通する第3円孔83を有する。第1円孔81および第2円孔82と、第3円孔83とは、互いに軸方向に連通する。本実施形態では、第3円孔83の上側の開口が、液剤9の排出口22となる。排出口22は、縦空隙212の下方向側端部に位置する。また、上述した吐出口23は、排出口22より下側に位置する。
【0037】
このように、本実施形態の底板部27は、第1円孔81、第2円孔82、および第3円孔83が上下方向に連なって形成された貫通孔80を有する。貫通孔80は、チャンバ底部71、ダンパ72、およびワッシャ73を、上下方向に貫通する。貫通孔80の上側開口は排出口22であり、貫通孔80の下側開口は吐出口23である。当該貫通孔80は、排出口22と吐出口23とを、上下に繋ぐ。排出口22は、貫通孔80を介して、空隙21の外部に通じる。
【0038】
また、チャンバ20は、図示を省略したエア抜き機構を有する。液剤9の吐出処理を行う前には、シリンジ10からチャンバ20内の空隙21へ液剤9を圧送しながら、エア抜き機構により、空隙21からチャンバ20の外部へ空気を排出する。これにより、チャンバ20内の空隙21に、液剤9が充填される。
【0039】
加振機構40を動作させると、ピン30が、第1位置(
図4の位置)と、第1位置より上側の第2位置(
図5の位置)との間で、振動する。すなわち、ピン30は、第1位置から第2位置へ向かうプル方向と、第2位置から第1位置へ向かうプッシュ方向とに、交互に移動する。ピン30が第1位置に配置されたときには、ピン30の下部の先端が、ワッシャ73の上面のうち、排出口22の周縁部分に接する。これにより、排出口22が塞がれる。一方、ピン30が第2位置に配置されたときには、ピン30の下部の先端が、排出口22から上側に離れる。これにより、排出口22が開放されて、縦空隙212と貫通孔80とが、連通する。
【0040】
このように、ピン30を振動させると、縦空隙212内の液剤9が、吐出口23から下方へ、断続的に吐出される。液剤9は、ピン30の振動の一周期ごとに分断されて、液滴となる。そして、当該液滴が、吐出口23から下方へ飛翔し、対象物90の表面に付着する。特に、本実施形態では、ピン30による押し出しの圧力だけではなく、シリンジ10からの液剤9の圧力を利用して、吐出口23から液剤9が吐出される。これにより、液剤9の吐出力が高められる。また、シリンジ10からの圧力が無い場合と比べて、粘性の高い液剤9を、安定して吐出できる。
【0041】
液剤9の吐出の際には、ピン30の下部の先端が、底板部27の上面に、断続的に接触する。このとき、ダンパ72が収縮することによって、ピン30の衝撃が吸収される。その結果、ピン30および底板部27の損傷が抑制される。ただし、仮に、ピン30の下部の先端を、ダンパ72に直接接触させたとすると、貫通孔80の周囲において、ダンパ72が極端に変形する。これにより、第1位置におけるピン30の制動時間が長くなる。しかしながら、本実施形態では、ダンパ72の上部に、ワッシャ73が配置されている。したがって、ピン30の下部の先端は、ダンパ72ではなく、ワッシャ73の上面に接触する。これにより、貫通孔80の周囲におけるダンパ72の極端な変形が抑制される。また、これにより、第1位置におけるピン30の制動時間が短縮される。
【0042】
<2−3.加振機構の駆動制御について>
続いて、上述した液剤吐出装置1において液剤9を吐出する際の、加振機構40の駆動制御について、説明する。
図6は、回路基板50に搭載される制御回路500の構成図である。
図7および
図8は、制御回路500の各部における信号の時間的変化を示したタイムチャートである。
【0043】
図6に示すように、本実施形態の制御回路500は、ホール素子501、差動アンプ502、プル側包絡線検波器503、プッシュ側包絡線検波器504、上死点設定部505、下死点設定部506、プル側積分器507、プッシュ側積分器508、プル側プリセット設定部509、プッシュ側プリセット設定部510、プル側加算器511、プッシュ側加算器512、三角波発生器513、プル側コンパレータ514、プッシュ側コンパレータ515、ドライブ回路516、および5つのスイッチSW1〜SW5を有する。
【0044】
スイッチSW1は、プル側積分器507と並列に配置される。スイッチSW2は、上死点設定部505と、アース端子との間に介在する。スイッチSW3は、プッシュ側積分器508と並列に配置される。スイッチSW4は、下死点設定部506と、アース端子との間に介在する。また、スイッチSW5は、三角波発生器513と、プル側コンパレータ514およびプッシュ側コンパレータ515との間に介在する。
【0045】
この制御回路500は、スイッチSW5をON側(
図6における白丸側)に切り替えることにより、能動化される。また、プル側積分器507の動作は、スイッチSW1,SW2をON側(
図6における白丸側)に切り替えることにより、能動化される。また、プッシュ側積分器508の動作は、スイッチSW3,SW4をON側(
図6における白丸側)に切り替えることにより、能動化される。
図7および
図8には、各スイッチSW1〜SW5をON側へ切り替えるタイミングが示されている。
【0046】
ホール素子501は、マグネット31から生じる磁束を検出することにより、マグネット31の上下方向の位置、すなわち、ピン30の上下方向の位置を検出する。そして、ホール素子501は、ピン30の上下方向の位置に応じた検出信号を出力する。
図7の(0)は、ホール素子501から出力される検出信号の例を示す。この例では、一部の期間において、ピン30の位置がプル方向に変位している。ピン30の位置がプル方向に変位する要因としては、例えば、液剤9の粘性による抵抗が考えられる。ホール素子501の検出信号は、差動アンプ502に入力される。
【0047】
差動アンプ502は、ホール素子501の検出信号を増幅させる。
図7の(A)は、増幅後の検出信号を示す。増幅後の検出信号は、差動アンプ502から、プル側包絡線検波器503とプッシュ側包絡線検波器504とに、それぞれ入力される。
【0048】
プル側包絡線検波器503は、増幅後の検出信号から、プル側の包絡線信号を抽出する。
図7の(B1)は、プル側包絡線検波器503において抽出されたプル側の包絡線信号を示す。プル側の包絡線信号は、プル側積分器507の一方の入力端子に入力される。
【0049】
プッシュ側包絡線検波器504は、増幅後の検出信号から、プッシュ側の包絡線信号を抽出する。
図7の(B2)は、プッシュ側包絡線検波器504において抽出されたプッシュ側の包絡線信号を示す。プッシュ側の包絡線信号は、プッシュ側積分器508の一方の入力端子に入力される。
【0050】
上死点設定部505は、プル方向の駆動の目標位置に対応した一定電圧の上死点信号を出力する。液剤吐出装置1のユーザは、上死点設定部505において、任意の目標位置を設定できる。上死点設定部505は、設定された目標位置に対応する上死点信号を、プル側積分器507の他方の入力端子に対して、出力する。
図7の(C1)は、上死点設定部505から出力される上死点信号を示す。
【0051】
下死点設定部506は、プッシュ方向の駆動の目標位置に対応した一定電圧の下死点信号を出力する。液剤吐出装置1のユーザは、下死点設定部506において、任意の目標位置を設定できる。下死点設定部506は、設定された目標位置に対応する下死点信号を、プッシュ側積分器508の他方の入力端子に対して、出力する。
図7の(C2)は、下死点設定部506から出力される下死点信号を示す。
【0052】
プル側積分器507は、プル側の包絡線信号と上死点信号との差分をとり、当該差分を積分した積分信号を出力する。
図7の(B1−C1)は、プル側の包絡線信号と上死点信号との差分を示す。
図7の(D1)は、プル側積分器507から出力されるプル側の積分信号を示す。当該プル側の積分信号は、プル側加算器511に入力される。
【0053】
プッシュ側積分器508は、プッシュ側の包絡線信号と下死点信号との差分をとり、当該差分を積分した積分信号を出力する。
図7の(B2−C2)は、プッシュ側の包絡線信号と下死点信号との差分を示す。
図7の(D2)は、プッシュ側積分器508から出力されるプッシュ側の積分信号を示す。当該プッシュ側の積分信号は、プッシュ側加算器512に入力される。
【0054】
プル側プリセット設定部509は、最終的なプル側のパルス信号が適切なデューティ比となるように、プル側の積分信号に加算する一定電圧のバイアス信号を出力する。
図8の(E1)は、プル側プリセット設定部509から出力されるプル側のバイアス信号を示す。当該バイアス信号は、プル側加算器511に入力される。
【0055】
プッシュ側プリセット設定部510は、最終的なプル側のパルス信号が適切なデューティ比となるように、プッシュ側の積分信号に加算する一定電圧のバイアス信号を出力する。
図8の(E2)は、プッシュ側プリセット設定部510から出力されるプッシュ側のバイアス信号を示す。当該バイアス信号は、プッシュ側加算器512に入力される。
【0056】
プル側加算器511は、プル側の積分信号とプル側のバイアス信号とを加算して、後述する三角波信号との比較に用いられる比較信号を出力する。
図8の(F1)は、プル側加算器511から出力されるプル側の比較信号を示す。当該比較信号は、プル側コンパレータ514の一方の入力端子に入力される。
【0057】
プッシュ側加算器512は、プッシュ側の積分信号とプッシュ側のバイアス信号とを加算して、後述する三角波信号との比較に用いられる比較信号を出力する。
図8の(F2)は、プッシュ側加算器512から出力されるプッシュ側の比較信号を示す。当該比較信号は、プッシュ側コンパレータ515の一方の入力端子に入力される。
【0058】
三角波発生器513は、一定の周期で電圧の増加と減少とを繰り返す三角波信号を出力する。
図8の(G)は、三角波発生器513から出力される三角波信号を示す。当該三角波信号は、プル側コンパレータ514の他方の入力端子と、プッシュ側コンパレータ515の他方の入力端子とに、それぞれ入力される。
【0059】
プル側コンパレータ514は、プル側の比較信号と三角波信号とに基づいて、プル側のパルス信号を出力する。具体的には、プル側コンパレータ514は、三角波信号が比較信号より大きい期間には、プラスの電圧を出力し、三角波信号が比較信号以下の期間には、0ボルトを出力する。
図8の(H1)は、プル側コンパレータ514から出力されるプル側のパルス信号を示す。当該パルス信号は、ドライブ回路516に入力される。
【0060】
プッシュ側コンパレータ515は、プッシュ側の比較信号と三角波信号とに基づいて、プッシュ側のパルス信号を出力する。具体的には、プッシュ側コンパレータ515は、三角波信号が比較信号より小さい期間には、プラスの電圧を出力し、三角波信号が比較信号以下の期間には、0ボルトを出力する。
図8の(H2)は、プッシュ側コンパレータ515から出力されるプッシュ側のパルス信号を示す。当該パルス信号は、ドライブ回路516に入力される。
【0061】
ドライブ回路516は、プル側のパルス信号と、プッシュ側のパルス信号とに基づいて、ON/OFFの切り替えが行われる複数のスイッチを有する。プル側のパルス信号がプラスの電圧であり、プッシュ側のパルス信号が0ボルトのときには、ドライブ回路516は、加振機構40に対して、+Vボルトの駆動信号を出力する。一方、プル側のパルス信号が0ボルトであり、プッシュ側のパルス信号がプラスの電圧のときには、ドライブ回路516は、加振機構40に対して、−Vボルトの駆動信号を出力する。また、プル側のパルス信号およびプッシュ側のパルス信号の双方が0ボルトのときには、ドライブ回路516は、加振機構40に対して、0ボルトの駆動信号を出力する。
図8の(J)は、ドライブ回路516から出力される駆動信号を示す。
【0062】
加振機構40に+Vボルトの駆動信号が入力されると、加振機構40は、電磁的に生じる駆動力により、ピン30をプル側へ加速させる。また、加振機構40に−Vボルトの駆動信号が入力されると、加振機構40は、電磁的に生じる駆動力により、ピン30をプッシュ側へ加速させる。
【0063】
この制御回路500では、ピン30が、駆動の目標位置よりプル側に変位すると、
図8の(J)のように、プル側のパルス信号のデューティ比が小さくなり、プッシュ側のパルス信号のデューティ比が大きくなる。したがって、ピン30の位置が、プッシュ側へ補正される。反対に、ピン30が、駆動の目標位置よりプッシュ側に変位すると、プル側のパルス信号のデューティ比が大きくなり、プル側のパルス信号のデューティ比が小さくなる。したがって、ピン30の位置が、プル側へ補正される。このように、この制御回路500は、ホール素子501からの検出信号および目標位置に基づいて、プッシュ方向およびプル方向の各パルス信号のデューティ比を、それぞれ変更する。これにより、ピン30の動作範囲が補正される。
【0064】
以上のように、この液剤吐出装置1の加振機構40は、プル方向にピン30を加速するプル機能と、プッシュ方向にピン30を加速するプッシュ機能とを有する。そして、プル機能とプッシュ機能との双方に、電磁的に生じる駆動力が利用されている。プッシュ方向へのピン30の駆動に電磁力を利用することにより、液剤9に対して電磁力に応じた吐出力を付与できる。また、プッシュ方向にピン30を加圧するための弾性部材を用いることなく、または、当該弾性部材の力を弱めながら、排出口22を閉鎖できる。
【0065】
また、この液剤吐出装置1では、上死点設定部505において、プル方向の駆動の目標位置を、任意に設定できる。したがって、プル側の積分信号の値を増減できる。これにより、第1位置と第2位置との間において、ピン30がプル方向に移動する駆動力を調整できる。また、この液剤吐出装置1では、下死点設定部506において、プッシュ方向の駆動の目標位置を、任意に設定できる。したがって、プッシュ側の積分信号の値を増減できる。これにより、第1位置と前記第2位置との間において、ピン30がプッシュ方向に移動する駆動力を調整できる。
【0066】
制御回路500は、ホール素子501からの検出信号、上死点設定部505において設定されたプル方向の駆動の目標位置、および、下死点設定部506において設定されたプル方向の駆動の目標位置に基づいて、加振機構40を制御する。すなわち、本実施形態では、ホール素子501、上死点設定部505、および下死点設定部506を含む制御回路500が、駆動力調整部として機能している。これにより、液剤9の粘度やピン30の振動条件に応じて、プッシュ方向およびプル方向の各駆動力を調整できる。その結果、排出口22の閉塞および開放を、確実に行うことができる。
【0067】
また、上述の通り、この液剤吐出装置1は、パルス信号の幅を変調することにより加振機構40の駆動力を制御する、いわゆるPWM制御を行っている。PWM制御を用いれば、パルス信号の電圧±Vを、常に加振機構40の定格電圧とすることができる。このため、電圧の変調により駆動力を制御する場合よりも、制御回路500を簡略に構成できる。
【0068】
なお、仮に、加振機構にピエゾ素子を用いたとすると、ピエゾ素子から一次的に得られる振幅が小さいため、当該振幅を増幅させる機構が必要となる。これに対し、本実施形態の液剤吐出装置1は、加振機構として、電磁的に駆動力を生じさせるアクチュエータを用いている。このため、加振機構40から一次的に得られる振幅が、ピエゾ素子の場合より大きい。したがって、加振機構40とピン30との間に、増幅機構を設ける必要がない。すなわち、ピン30の振幅が、加振機構40により一次的に生じる振動の振幅と、略同一またはそれより小さくなる。このように、増幅機構を省略すれば、液剤吐出装置1をより小型化できる。
【0069】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0070】
図9は、一変形例に係る制御回路500Bの構成図である。
図9の制御回路500Bは、上死点設定部、下死点設定部、プル側積分器、プッシュ側積分器、プル側プリセット設定部、プッシュ側プリセット設定部、プル側加算器、プッシュ側加算器、三角波発生器、プル側コンパレータ、およびプッシュ側コンパレータに代えて、マイクロコントローラ517Bを有する。そして、マイクロコントローラ517Bが、上死点設定部、下死点設定部、プル側積分器、プッシュ側積分器、プル側プリセット設定部、プッシュ側プリセット設定部、プル側加算器、プッシュ側加算器、三角波発生器、プル側コンパレータ、およびプッシュ側コンパレータの動作に相当する演算処理を行う。このように、制御回路の一部分を、マイクロコントローラにより実現してもよい。
【0071】
図10は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Cの縦断面図である。
図10の例では、加振機構40Cを支持する支持部材41Cが、枠体60Cに設けられたレール62Cに、組み付けられている。これにより、枠体60Cに対して、支持部材41Cおよび加振機構40Cが、上下に移動可能となっている。支持部材41Cは、図示しないばねによって、上方へ加圧されている。また、
図10の液剤吐出装置1Cは、位置決め部としてのマイクロメータ42Cを有する。
図10の例では、マイクロメータ42Cの本体が、枠体60Cに固定されている。また、マイクロメータ42Cの可動軸421Cの下端は、支持部材41Cの上面に接触する。このため、マイクロメータ42Cの可動軸421Cを上下方向に変位させることにより、支持部材41Cおよび加振機構40Cを、上下方向に位置決めできる。その結果、排出口22Cに対する加振機構40Cの相対位置を調整できる。
【0072】
なお、マイクロメータ42Cの本体は、必ずしも枠体60Cに固定されていなくてもよい。例えば、
図11のように、マイクロメータ42Cの本体が、加振機構40C側に固定されていてもよい。この場合、マイクロメータ42Cの可動軸421Cの下端を、枠体60Cまたは枠体60Cに固定された部材に対して、接触させる。このような形態であっても、マイクロメータ42Cを操作して、マイクロメータ42Cの本体と可動軸421Cとの相対位置を変化させることにより、マイクロメータ42Cの本体および加振機構40Cを、上下方向に位置決めできる。その結果、排出口22Cに対する加振機構40Cの相対位置を調整できる。
【0073】
図10および
図11の例では、このように、加振機構40Cの上下方向の位置を調整することにより、ピン30Cのプッシュ方向の駆動力を調整する。具体的には、ピン30Cのプッシュ方向の駆動力を強めたいときには、マイクロメータ42Cを操作して、加振機構40Cを下降せる。また、ピン30Cのプッシュ方向の駆動力を弱めたいときには、マイクロメータ42Cを操作して、加振機構40Cを上昇させる。このように、マイクロメータ42Cを、駆動力調整部として機能させてもよい。
【0074】
図12は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Dの縦断面図である。
図12の例では、加振機構40Dとピン30Dとの間に、弾性部材32Dが介在する。弾性部材32Dには、例えば、ばねを用いることができる。ピン30Dが第1位置に配置された状態において、弾性部材32Dの長さは、自然長以下であることが好ましい。このようにすれば、弾性部材32Dからピン30Dに対して、プッシュ方向の圧力を与えることができる。したがって、加振機構40Dに対して通電されていない時においても、ピン30Dにより排出口22Dを閉鎖できる。
【0075】
ただし、弾性部材32Dがピン30Dに与えるプッシュ方向の弾性力は、加振機構40Dがピン30Dに与えるプッシュ方向の最大駆動力より、小さいことが好ましい。すなわち、液剤9Dを吐出するときには、主として加振機構40Dの駆動力で、ピン30Dをプッシュ方向に移動させることが好ましい。
【0076】
なお、加振機構40Dと弾性部材32Dとの間に、さらに他の部材が介在していてもよい。すなわち、ピン30Dと、加振機構40Dにより振動させられる部材との間に、弾性部材32Dが介在していてもよい。
【0077】
図12の弾性部材32Dは、ピン30Dと、加振機構40Dまたは加振機構40Dにより振動させられる部材と、の間の相対距離が変動可能な状態で、双方を結合している。ここで、加振機構40Dは、ピン30Dの質量および結合力に伴うバネ定数によって定まる共振周波数とは異なる周波数で、加振駆動を行うことが好ましい。このようにすれば、ピン30Dと排出口22Dとの衝突の衝撃を和らげつつ、共振点を避けることで、ピン30Dの振動位置の補正を、迅速に行うことができる。
【0078】
図13は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Eの縦断面図である。
図13の例では、
図12の弾性部材に代えて、加振機構40Eとピン30Eとの間に、磁気部品33Eが介在する。磁気部品33Eは、ピン30Eとの間で、磁気的に生じる力を発生させる。具体的には、ピン30Eが第1位置に配置された状態において、磁気部品33Eは、ピン30Eに対して、排出口22Eへ向かう力を加える。このようにすれば、磁気部品33Eからピン30Eに対して、プッシュ方向の圧力を与えることができる。したがって、加振機構40Eに対して通電されていない時においても、ピン30Eにより排出口22Eを閉鎖できる。
【0079】
なお、加振機構40Eと磁気部品33Eとの間に、さらに他の部材が介在していてもよい。すなわち、ピン30Eと、加振機構40Eにより振動させられる部材との間に、磁気部品33Eが介在していてもよい。
【0080】
図13の磁気部品33Eは、ピン30Eと、加振機構40Eまたは加振機構40Eにより振動させられる部材と、の間の相対距離が変動可能な状態で、双方を結合している。ここで、加振機構40Eは、ピン30Eの質量および結合力に伴う磁気的バネ定数によって定まる共振周波数とは異なる周波数で、加振駆動を行うことが好ましい。このようにすれば、ピン30Eと排出口22Eとの衝突の衝撃を和らげつつ、共振点を避けることで、ピン30Eの振動位置の補正を、迅速に行うことができる。
【0081】
図14は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Fの部分縦断面図である。
図14の例では、ダンパ72Fとピン30Fとの間にワッシャが介在していない。したがって、ピン30Fを振動させると、ピン30Fの下面が、ダンパ72Fに直接接触する。
図14のダンパ72Fは、凸部721Fとフランジ部722Fとを有する。凸部721Fは、第2円孔82Fを環状に取り囲む。凸部721Fの上面723Fは、ダンパ72Fのピン30Fの下面に対向する領域において、軸方向に最も高い場所に位置する。フランジ部722Fは、凸部721Fの外周面から、ピン30Fの振動方向に対して垂直に広がる。
【0082】
図14の例では、ダンパ72Fの第2円孔82Fの上側の開口が、液剤9Fの排出口22Fとなる。ピン30Fが第1位置に配置されたときには、
図14のように、ピン30Fの下面と、ダンパ72Fの上面723Fとが、互いに接触する。これにより、排出口22Fが塞がれる。このように、ピン30Fの下面を、弾性体であるダンパ72Fに直接接触させれば、ピン30Fと底板部27Fとの密着性が高まる。したがって、より精度よく液剤9Fを吐出できる。
【0083】
また、
図14の例では、ダンパ72Fの凸部721Fは、上面723Fの外側に、傾斜面724Fを有する。傾斜面724Fの高さは、上面723Fの外周縁から、径方向外側へ向かうにつれて低下する。ダンパ72Fにピン30Fが接触したときには、ダンパ72Fが弾性変形することによって、傾斜面724Fの内周部付近の一部分にも、ピン30Fの下面が接触する。これにより、ピン30Fとダンパ72Fとの接触面積が、より広くなる。その結果、液剤9Fの吐出をより確実に停止させることができる。なお、
図14の例では、傾斜面724Fが、縦断面において曲線状となっているが、傾斜面724Fは、縦断面において直線状であってもよい。
【0084】
図15は、ピン30Fの下面図である。
図15では、ダンパ72Fと接触する部分が、クロスハッチングで示されている。
図14および
図15に示すように、ピン30Fは、下面と外周面との境界に位置する環状のエッジ34Fを有する。この液剤吐出装置1Fでは、平面視において、ダンパ72Fの凸部721Fの上面723Fの外周縁が、ピン30Fのエッジ34Fより内側に位置する。このため、
図15のように、ダンパ72Fは、ピン30Fのエッジ34Fに接触しない。このようにすれば、ピン30Fのエッジ34Fによって、ダンパ72Fが損傷することを、防止できる。
【0085】
なお、ダンパ72Fの凸部721Fの上面の外周縁は、平面視において、ピン30Fのエッジ34Fと同位置であってもよい。また、ダンパ72Fにピン30Fが接触したときに、ダンパ72Fが弾性変形することによって、ピン30Fのエッジ34Fが、ダンパ72Fの傾斜面724Fに、軽く接触してもよい。すなわち、ダンパ72Fの表面にピン30Fのエッジ34Fが接触したとしても、当該接触による圧力が低減されていればよい。そして、エッジ34Fとの接触によるダンパ72Fの損傷が軽減されていればよい。
【0086】
また、
図14のチャンバ20Fは、環状のリング部材74Fを有する。リング部材74Fは、凸部721Fの周囲に位置する。また、リング部材74Fの下面は、フランジ部722Fの上面と接触する。
図14の例では、リング部材74Fの下面が、フランジ部722Fの上面の上側に位置する対向面となる。液剤9Fの粘性が高い場合には、ピン30Fが第1位置から第2位置へ上昇するときに、ダンパ72Fを上方へ引き上げる力が生じる。しかしながら、
図14の例では、フランジ部72Fの上面とリング部材74Fの下面とが接触することによって、ダンパ72Fの浮き上がりが防止される。
【0087】
なお、リング部材74Fの下面は、必ずしもフランジ部72Fの上面に、常時接触していなくてもよい。例えば、リング部材74Fの下面が、フランジ部72Fの上面から、間隔をあけて上側に位置していてもよい。また、リング部材74Fが省略され、ノズル部材28F等のチャンバ20Fを構成する部材が、フランジ部722Fの上側に位置する対向面を有していてもよい。すなわち、ダンパ72Fに上方へ向かう力が作用したときに、フランジ部722Fの上面が対向面に接近または接触することによって、ダンパ72Fの浮き上がりが制限されればよい。
【0088】
図16は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Gの部分縦断面図である。
図14の例と比較すると、
図16のチャンバ20Gは、リング部材を有していない。また、
図16のダンパ72Gは、フランジ部を有していない。このような形態であっても、例えば、チャンバ底部71Gに対して、ダンパ72Gが接着剤等で固定されることにより、ダンパ72Gの浮き上がりが防止されていればよい。
【0089】
図17は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Hの部分縦断面図である。
図14の例と比較すると、
図17の例では、ダンパ72Hの凸部721Hが、傾斜面に代えて、略円筒状の段差面725Hを有する。段差面725Hは、凸部721Hの上面723Hの外周縁から、下方へ向けて延びる。このようにすれば、ダンパ72Hにピン30Hが接触したときに、ダンパ72Hが弾性変形したとしても、ピン30Hのエッジ34Hが、ダンパ72Hに接触することはない。したがって、エッジ34Hによるダンパ72Hの損傷を、より防止できる。
【0090】
図18は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Jの部分縦断面図である。
図14の例と比較すると、
図18の例では、ダンパ72Jが、凸部721Jの上面723Jより高い場所に位置する環状の上面726Jを有する。環状の上面726Jは、平面視において、ピン30Jのエッジ34Jより外側に位置する。このように、ピン30Jの下面と接触する上面723Jは、必ずしも、ダンパ72Jの中で最も高い場所に位置する面でなくてもよい。すなわち、ピン30Jの下面と接触する上面723Jは、ダンパ72Jのピン30Jの下面に対向する領域において、軸方向に最も高い場所に位置していればよい。
【0091】
なお、
図14〜
図18の例では、ピンの下面が平坦面であったが、ピンの下面は、必ずしも平坦面でなくてもよい。例えば、ピンの下面は、凹面や凸面であってもよく、下方へ向けて収束する略円錐状の尖端面であってもよい。また、
図14〜
図18の例では、ピンの下面と外周面とが隣接し、それらの境界がエッジとなっていた。しかしながら、ピンの下面と外周面との境界に、テーパ面や曲面(R面)が介在していてもよい。その場合には、当該テーパ面や曲面の内側の縁、すなわち、ピンの下面の外側の縁を、本発明における「エッジ」とする。
【0092】
また、液剤吐出装置の細部の構成については、本願の各図に示された構成と、相違していてもよい。例えば、ピンが第1位置に配置されたときに、ピンの先端が排出口の内側に嵌り、ピンの先端が排出口の内周面に接することで、排出口が閉塞される構造であってもよい。
【0093】
また、制御回路において、ホール素子および差動アンプを、ホールICに置き換えてもよい。また、ホール素子に代えて、フォトセンサ等の他の種類のセンサが、検出部として用いられてもよい。ただし、それらセンサは、上下方向の位置を検出できるものである必要があり、例えば逆起電力を計測することにより、アクチュエータの振動速度を計測するタイプのセンシング方式は、単独では使用できない。ただし、そのような場合でも、制御の目標位置を検出するセンサを組み合わせて使用すれば、本願発明の液材吐出装置を実現することが可能である。また、PWM制御に代えて、電圧の変調により、加振機構の駆動を制御してもよい。
【0094】
また、シリンジからの液剤の加圧が無く、ピンによる押し出しの圧力のみで、チャンバから液剤が吐出される構造であってもよい。
【0095】
また、本発明の加振機構は、少なくともプッシュ機能に、電磁的に生じる駆動力を利用していればよい。したがって、プル機能には、ばね等の弾性体の弾性力を利用し、プッシュ機能のみに、電磁的に生じる駆動力を利用していてもよい。
【0096】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【0097】
<4.本願の第2発明に関する補足>
なお、上頁では、
図14〜
図18の構造を変形例として説明したが、本願の第2課題を解決するための第2発明においては、
図14〜
図18において例示された、「チャンバの底板部は、チャンバ底部と、チャンバ底部の上に配置された弾性体であるダンパと、を備え、底板部に設けられた貫通孔の上側開口が排出口であり、貫通孔の下側開口が吐出口であり、ダンパのピンの下面に対向する領域において、軸方向に最も高い場所に位置する上面をダンパは有し、ピンが第1位置に配置された状態において、ピンの下面と、ダンパの上面とが接触し、平面視において、ダンパの上面の外周縁は、ピンの下面とピンの外周面との境界に位置する環状のエッジと同位置またはエッジより内側に位置する」ことが必須の要件となる。また、本願の第2発明においては、「加振機構が、ピンを第1位置から第2位置へ向かうプル方向に加速するプル機能と、第2位置から第1位置へ向かうプッシュ方向に加速するプッシュ機能とを有し、少なくともプッシュ機能は電磁的に生じる駆動力を利用する」ことは、必須の要件とならない。
【0098】
また、この第2発明に、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。