(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪1.水硬性材料用添加剤≫
本発明の水硬性材料用添加剤は、水硬性材料に用いる添加剤であって、上記化合物(G)及び上記分散剤(J)を含む。
【0020】
<1.化合物(G)>
本発明の水硬性材料用添加剤は、オキシアルキレン基と第2級アミノ基とを有する化合物(G)を含む。化合物(G)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0021】
化合物(G)は、上記一般式(1)で表される。
【0022】
上記一般式(1)におけるR
1は炭素原子数1〜12の炭化水素基であれば良い。炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、炭素原子数1〜12のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環族アルキル基)、炭素原子数6〜12のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基が好適である。R
1においては、炭化水素基の炭素原子数が大きくなるに従って疎水性が大きくなり相溶性が低下するが、炭素原子数が小さいと収縮低減性が低下するため、R
1の炭素原子数としては、1〜8が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6が更に好ましく、3〜5が特に好ましい。また、炭素原子数4の場合が最も好ましい。
【0023】
上記一般式(1)におけるXは、炭素原子数2〜4のアルキレン基であれば良い。Xは1種のみのアルキレン基であっても良いし、2種以上のアルキレン基であっても良い。Xは、好ましくは、プロピレン基又はエチレン基であり、より好ましくは、エチレン基である。
【0024】
上記一般式(1)中、mは0〜10であれば良い。mは、好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0又は1である。
【0025】
上記一般式(1)におけるY
1Oは、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であれば良い。Y
1Oは1種のみのオキシアルキレン基であっても良いし、2種以上のオキシアルキレン基であっても良い。Y
1Oが2種以上のオキシアルキレン基である場合、(Y
1O)
nはランダム配列であっても良いし、ブロック配列であっても良い。Y
1Oは、好ましくは、オキシプロピレン基又はオキシエチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基である。
【0026】
上記一般式(1)中、nはY
1Oの平均付加モル数を表し、nは1〜50であれば良い。nは、好ましくは1〜20であり、より好ましく1〜10であり、更に好ましくは1〜5であり、特に好ましくは、1〜3であり、最も好ましくは1である。
【0027】
上記一般式(1)におけるR
2は、水素原子又は、炭素原子数1〜12の炭化水素基であれば良い。R
2が炭化水素基の場合は、R
2は、炭素原子数1〜12のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環族アルキル基)、炭素原子数6〜12のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基が好適である。R
2においては、炭化水素基の炭素原子数が大きくなるに従って疎水性が大きくなり相溶性が低下するため、炭化水素基の場合の炭素原子数としては、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。また、R
2が水素原子の場合が最も好ましい。
【0028】
本発明の水硬性材料用添加剤中の化合物(G)の含有割合は、水硬性材料(Z)に対して、固形分換算で、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜8質量%であり、さらに好ましくは0.3〜5質量%であり、特に好ましくは0.5〜3質量%である。本発明の水硬性材料用添加剤中の化合物(G)の含有割合が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用添加剤を水硬性材料(Z)と組み合わせた場合に、収縮低減機能及び流動性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0029】
化合物(G)としては、例えば、炭素原子数1〜12のモノアルキルアミン1モルに、エチレンオキシドを1モル反応させた化合物があり、具体的には、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−sec−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−ペンチルエタノールアミン、N−ヘキシルエタノールアミン、N−ヘプチルエタノールアミン、N−オクチルエタノールアミン、N−2−エチルヘキシルエタノールアミン、N−ノニルエタノールアミン、N−デシルエタノールアミン、N−ラウリルエタノールアミン等がある。
【0030】
これらの中でも、水硬性材料(Z)と組み合わせた場合に、優れた収縮低減機能及び優れた流動性を付与でき、かつ、コストも抑えることができるという点から、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−sec−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−ペンチルエタノールアミン、N−ヘキシルエタノールアミンが好ましく、N−プロピルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−sec−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミンがより好ましく、N−n−ブチルエタノールアミンが特に好ましい。
【0031】
<2.分散剤(J)>
本発明の水硬性材料用添加剤は、分散剤(J)を含む。分散剤(J)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0032】
分散剤(J)は、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0033】
リグニンスルホン酸塩としては、任意の適切なリグニンスルホン酸塩を採用し得る。このようなリグニンスルホン酸塩としては、例えば、リグニンスルホン酸の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。
【0034】
ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体としては、任意の適切なポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体を採用し得るが、中でも、分散性能が特に高い観点から、下記一般式(2):
【0035】
(式中、R
3は水素原子又はメチル基を表す。R
4は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Y
2Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。pは、0、1又は2である。qは、0又は1である。rはY
2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2〜300の数である。)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構成単位(A)と、
下記一般式(3−1)〜(3−3):
【0036】
(式中、R
5及びR
6は、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基又は−COOM
2基を表す。R
7は、水素原子又はメチル基を表す。M
1及びM
2は、同一若しくは異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。なお、R
5及びR
6は、同時に−COOM
2基を表さない。また、R
6が−COOM
2基を表す場合、R
6と−COOM
1基とが酸無水物基を形成していても良い。)
【0037】
(式中、R
8は水素原子又はメチル基を表す。M
3は、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【0038】
(式中、R
9は水素原子又はメチル基を表す。Y
3は炭素原子数2〜12のアルキレン基を表す。sは1〜30の数を表す。M
4及びM
5は、同一若しくは異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
の中から選ばれる、少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体(b)由来の構成単位(B)とを含む、ポリアニオン系共重合体であることが好適である。
【0039】
上記ポリアニオン系共重合体は、後述する他の単量体(c)由来の構造単位(C)を更に含んでいても良い。また、ポリアニオン系共重合体における各構成単位は、それぞれ1種であっても良いし、2種以上であっても良い。
【0040】
上記一般式(3−1)で表される単量体(b−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体またはこれらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等);などが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸またはこれらのアルカリ金属塩である。
【0041】
上記一般式(3−2)で表される単量体(b−2)としては、例えば、(メタ)アリルスルホン酸またはこれらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等)が挙げられる。
【0042】
上記一般式(3−3)で表される単量体(b−3)としては、例えば、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。なかでも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0043】
上記一般式(3−3)で表される単量体(b−3)において、sは1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0044】
上記ポリアニオン系共重合体において、構成単位(A)及び(B)が占める割合としては、全構成単位100質量%に対し、それぞれ1質量%以上であることが好適である。構成単位(A)及び構成単位(B)が1質量%以上であると、セメント分散性能がより充分に発揮できる。構成単位(A)及び(B)の合計量100質量%中に占める構成単位(A)の含有割合としては、好ましくは50〜97質量%、より好ましくは65〜97質量%、更に好ましくは70〜96質量%、特に好ましくは75〜96質量%である。また、構成単位(A)及び(B)の合計量100質量%中に占める構成単位(B)の含有割合としては、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは3〜35質量%、更に好ましくは4〜30質量%、特に好ましくは4〜25質量%である。
【0045】
ここで、本明細書中、上記アニオン性基を有する単量体(b)由来の構成単位(B)の割合を計算する場合は、構成単位(B)が、完全に中和された単量体(塩)由来の構成単位であるとして計算するものとする。例えば、上記単量体(b)としてアクリル酸を用い、重合反応において水酸化ナトリウムで完全中和する場合には、単量体(b)としてアクリル酸ナトリウムを用いたとして、質量割合(質量%)の計算をする。
【0046】
上記ポリアニオン系共重合体の中でも、アニオン性基を有する単量体(b)が、上記一般式(3−1)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b−1)である、ポリカルボン酸系共重合体であることが好ましい。このようなポリカルボン酸系共重合体を用いると、不飽和カルボン酸系単量体(b−1)に由来するカルボキシル基がセメント粒子に吸着する作用を有し、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)に由来するポリアルキレングリコール鎖がセメント粒子を分散させる分散基として作用するため、より高い分散性能を発揮できる。
【0047】
ポリカルボン酸系共重合体
次に、ポリカルボン酸系共重合体を構成する単量体成分について、更に説明する。なお、各単量体は、各々1種又は2種以上を使用することができる。
(不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a))
上記単量体(a)は、上述した一般式(2)で表される単量体であるが、上記単量体(a)由来の構成単位(A)とは、単量体(a)が有する不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)部分が、単結合となった構造を意味する。
【0048】
上記一般式(2)において、Y
2Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。中でも、炭素数2〜8のオキシアルキレン基が好ましく、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。より好ましくは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、特に好ましくはオキシエチレン基である。また(Y
2O)
rで表されるポリアルキレングリコール鎖は、2種以上のオキシアルキレン基により形成されるものであってもよく、この場合は、2種以上のオキシアルキレン基がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であっても良い。
【0049】
上記一般式(2)では、全オキシアルキレン基100モル%中に占めるオキシエチレン基の割合が、50モル%以上であることが好適である。これによって、充分な分散性を発揮できる。より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%、すなわちオキシエチレン基のみによって、(Y
2O)
rで表されるポリアルキレングリコール鎖が形成されることである。また、2種以上のオキシアルキレン基を有する場合の組み合わせとしては、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基、オキシブチレン基)、(オキシエチレン基、オキシスチレン基)が好適である。中でも、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)がより好ましい。
【0050】
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数(ポリアルキレングリコール鎖の平均鎖長)rは、2〜300の数である。ポリカルボン酸系共重合体による分散性能の向上の観点から、rの下限値としては、次の順で特定値以上であることが好ましい。すなわち、5以上、10以上が好ましい。また、rが300を超えると、共重合性が充分とはならず、分散性の保持性能を充分に発揮できなくなるおそれがある。よって、rの上限値としては、次の順で特定値以下であることが好ましい。すなわち、250以下、200以下、160以下が好ましい。rの好適範囲としては、5〜250、5〜200、10〜160が挙げられる。また、rの値が異なる複数の単量体(a)を用いても良い。なお、ポリアルキレングリコール鎖の平均鎖長(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、ポリカルボン酸系共重合体が有する、上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)に由来するポリアルキレングリコール鎖1モル中に付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0051】
上記一般式(2)中、R
4は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表すが、炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が充分とはならないため、炭化水素基の炭素原子数としては1〜20が好ましい。より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。上記炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール等が好適である。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)が好ましい。上記R
4として特に好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0052】
上記一般式(2)において、qは0又は1であるが、qが0を表す場合は、上記一般式(2)で表される単量体(a)は、エーテル構造を有する単量体(エーテル系単量体)となり、qが1を表す場合には、エステル構造を有する単量体(エステル系単量体)となる。
【0053】
上記一般式(2)で表される単量体(a)がエーテル系単量体である場合、該単量体の具体例としては、不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物、すなわち不飽和基を有するアルコール(不飽和アルコール)にポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応して得ることができる。
【0054】
上記不飽和アルコールとしては、不飽和結合を有する基及び水酸基を有するものであれば特に限定されないが、二重結合を有する基と水酸基とを有するものが好ましく、二重結合を有する基と水酸基とをそれぞれ1つずつ有するものがより好ましい。
【0055】
上記不飽和アルコールとしては、例えば、メタリルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等が好適である。
【0056】
上記一般式(2)で表される単量体(a)がエステル系単量体である場合、該単量体の具体例としては、ポリアルキレングリコールエステル系単量体、すなわち不飽和基とポリアルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する化合物が挙げられ、例えば、不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物が好適である。中でも、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適であり、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0057】
(不飽和カルボン酸系単量体(b−1))
上記単量体(b−1)としては、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩とを含む単量体である。なお、不飽和カルボン酸系単量体(b−1)由来の構成単位(B−1)とは、単量体(b−1)が有する不飽和二重結合部分が、単結合となった構造を意味する。ここで、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩を含むとは、−COOM(Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)で表される基を、1分子中に1個又は2種以上有することを意味する。金属原子としては、ナトリウム、カリウム、等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アンモニウム基を形成する有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン等が挙げられる。上記カルボン酸塩としては、これらの中でも、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。
【0058】
上記不飽和カルボン酸系単量体(b−1)としては、1分子内に不飽和二重結合と1つのカルボキシル基又はカルボン酸塩とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体や、1分子内に不飽和二重結合と2つのカルボキシル基又はカルボン酸塩とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体が好適である。
【0059】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和カルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。
【0060】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩、及び、これらの無水物等が挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの塩が好適である。中でも、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩がより好ましい。すなわち、上記カルボン酸系単量体(b−1)としては、(メタ)アクリル酸又はその塩を含むことが好適である。(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構造を含むことによって、得られるポリカルボン酸系共重合体が、より少量で更に優れた分散性を発揮することが可能になる。なお、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」という。
【0061】
(その他の単量体(c))
上記ポリアニオン系共重合体は、必須単量体成分である上記(a)及び(b)以外のその他の単量体(c)に由来する構成単位(C)を含むものであっても良い。このような単量体(c)は、上記単量体(a)及び/又は(b)と共重合可能な単量体であればよく、例えば、下記化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0062】
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類。
【0063】
ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類。
【0064】
次に、上記ポリカルボン酸系共重合体を得る方法について、説明する。上記ポリカルボン酸系共重合体を得る方法としては、重合開始剤を用いて、単量体(a)及び単量体(b)、並びに、必要に応じて単量体(c)を含む単量体成分を共重合させれば良いが、ポリカルボン酸系共重合体を構成する構成単位が上述した範囲内となるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することが好ましい。すなわち、上記ポリカルボン酸系共重合体を構成する構成単位の割合が上述した好適な範囲となるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することが好ましい。したがって、上記ポリカルボン酸系共重合体を得るために使用される全単量体成分100質量%に対し、単量体(a)及び(b)のそれぞれの含有量を1質量%以上とすることが好適である。また、単量体(a)及び(b)の合計量100質量%中に占める単量体(a)の含有割合としては、好ましくは50〜97質量%、より好ましくは65〜97質量%、更に好ましくは70〜96質量%、特に好ましくは75〜96質量%である。また、単量体(a)及び(b)の合計量100質量%中に占める単量体(b)の含有割合としては、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは3〜35質量%、更に好ましくは4〜30質量%、特に好ましくは4〜25質量%である。
【0065】
また上記単量体(a)及び(b)の合計の比率(質量%)としては、全単量体成分100質量%に対し、70〜100質量%であることが好適である。すなわち、他の単量体(c)の含有割合は、全単量体成分100質量%に対し、0〜30質量%であることが好ましい。全単量体成分100質量%中の単量体(a)及び(b)の合計の比率としてより好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。また分散性の高いポリカルボン酸系共重合体を高収率で得るためには、全単量体成分100モル%に対して単量体(a)の占める割合が、50モル%以下であることが好適である。より好ましくは48モル%以下である。
【0066】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、公知の方法で製造できる。例えば、特開昭58−74552号公報、特開2001−220417号公報に記載の溶液重合法が挙げられ、水や炭素数1〜4の低級アルコール中、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の重合開始剤存在下、必要に応じてL−アスコルビン酸等の還元剤、メルカプトプロピオン酸等の連鎖移動剤を添加し、30〜100℃で0.5〜10時間反応させればよい。
【0067】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、そのままでも分散剤の主成分として用いることもできるが、取り扱い性の観点からは、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。pH5未満で共重合反応を行うことが好ましく、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行なうことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。また、上記ポリカルボン酸系共重合体は、水溶液の形態でそのまま分散剤の主成分として使用しても良いし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用しても良い。
【0068】
上記ポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量(Mw)としては、その取り扱い性やセメント組成物の保持性等を考慮すると、質量平均分子量(Mw)が50万以下であることが好適である。より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、特に好ましくは10万以下である。また、ある程度セメント粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは3000以上であることが好ましい。より好ましくは5000以上、更に好ましくは7000以上、特に好ましくは1万以上、最も好ましくは2万以上である。なお、上記ポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
【0069】
分散剤(J)は、その他の任意の適切な減水剤を含有していても良い。このような減水剤としては、例えば、ポリオール誘導体、グルコン酸などのオキシカルボン酸及びその一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0070】
分散剤(J)がリグニンスルホン酸塩を含む場合、本発明の水硬性材料用添加剤中の該リグニンスルホン酸塩の含有割合は、水硬性材料(Z)に対して、固形分換算で、好ましくは0.01〜0.8質量%であり、より好ましくは0.02〜0.6質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.1〜0.3質量%である。本発明の水硬性材料用添加剤中のリグニンスルホン酸塩の含有割合が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用添加剤を水硬性材料(Z)と組み合わせた場合に、水硬性材料(Z)の分散性に影響を及ぼすことから、収縮低減機能及び流動性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0071】
分散剤(J)がポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体を含む場合、本発明の水硬性材料用添加剤中の該ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体の含有割合は、水硬性材料(Z)に対して、固形分換算で、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.03〜0.5質量%である。本発明の水硬性材料用添加剤中のポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体の含有割合が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用添加剤を水硬性材料(Z)と組み合わせた場合に、水硬性材料(Z)の分散性に影響を及ぼすことから、収縮低減機能及び流動性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0072】
<3.消泡剤(D)>
本発明の水硬性材料用添加剤は、好ましくは消泡剤(D)を含む。消泡剤(D)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0073】
消泡剤(D)としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。消泡剤(D)としては、例えば、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤などが挙げられる。これらの中でも、オキシアルキレン系消泡剤が好ましい。
【0074】
鉱油系消泡剤としては、例えば、燈油、流動パラフィンなどが挙げられる。油脂系消泡剤としては、例えば、動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。脂肪酸系消泡剤としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどが挙げられる。アルコール系消泡剤としては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などが挙げられる。アミド系消泡剤としては、例えば、アクリレートポリアミンなどが挙げられる。リン酸エステル系消泡剤としては、例えば、リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどが挙げられる。金属石鹸系消泡剤としては、例えば、アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどが挙げられる。シリコーン系消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などが挙げられる。
【0075】
オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数8以上の高級アルコールや炭素数12〜14の2級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;などが挙げられる。
【0076】
本発明の水硬性材料用添加剤に消泡剤(D)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用添加剤中の消泡剤(D)の含有割合は、水硬性材料(Z)に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001〜1質量%であり、より好ましくは0.000005〜0.5質量%であり、更に好ましくは0.00001〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.00001〜0.05質量%であり、特に好ましくは0.00005〜0.01質量%である。
【0077】
<4.その他の成分>
本発明の水硬性材料用添加剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を含んでいても良い。その他の成分としては、例えば、水、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、pH調整剤、遅延剤、早強剤・促進剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、他の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏などが挙げられる。このようなその他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0078】
しかしながら、本発明の水硬性材料用添加剤は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価であり、また、水硬性材料(Z)と組み合わせた場合に、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた流動性を付与できるという効果を発現できる。したがって、上記に挙げたようなその他の成分は、水を除いて、必要でなければ、特に用いなくても良い。
【0079】
(水硬性材料用添加剤の調製)
本発明の水硬性材料用添加剤は、任意の適切な方法で調製すれば良い。例えば、化合物(G)及び分散剤(J)を必須に用い、これと、必要に応じて、消泡剤(D)、及び任意の他の成分から選ばれる少なくとも1種を、任意の適切な方法で混合すれば良い。混合の順序は、任意の適切な順序を採用し得る。また、化合物(G)と分散剤(J)は、予め混合した後に水硬性材料(Z)に混合しても良いし、水硬性材料(Z)に各々別々に添加して混合しても良い。
【0080】
化合物(G)と分散剤(J)との質量比は、固形分換算で(G)/(J)=1/1〜99/1の範囲であれば良く、好ましくは、1/1〜90/1、より好ましくは、1/1〜80/1である。
【0081】
本発明の水硬性材料用添加剤は、水硬性材料(Z)と組み合わせた場合に、優れた収縮低減機能と優れた流動性を併せ持つ。本発明の水硬性材料用添加剤は、化合物(G)を高濃度に含有し、化合物(G)の経時安定性が優れており、分離沈殿することなく相溶性に優れ、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(質量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
【0082】
≪2.水硬性材料組成物≫
本発明の水硬性材料組成物は、本発明の水硬性材料用添加剤と水硬性材料(Z)とを含む。
【0083】
水硬性材料(Z)は、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントから選択される少なくとも1種のセメントなどが挙げられる。水硬性材料(Z)がセメントである場合、本発明の水硬性材料組成物は、コンクリート組成物であってもよい。
【0084】
上記水硬性材料組成物とは、最終的に、本発明の水硬性材料用添加剤の各構成成分と水硬性材料(Z)を含む組成物となっていれば、その調製過程は問わない。すなわち、水硬性材料組成物を構成する各構成成分(本発明の水硬性材料用添加剤の各構成成分、水硬性材料(Z)、及び、必要に応じてその他の成分)から選ばれる一部を予め混合した後に残りを混合して調製しても良いし、水硬性材料組成物を構成する各構成成分の全部を一括で混合しても良い。
【0085】
上記水硬性材料組成物は、好ましくは、骨材及び水を含む。骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。なお、セメント、細骨材及び水を含み、粗骨材を含まない水硬性材料組成物を、「モルタル」と称することがある。
【0086】
上記細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。
【0087】
上記粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。
【0088】
水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
【0089】
また、上記水硬性材料組成物は、以下の(1)〜(12)に例示するような他の公知の水硬性材料添加剤(材)を含有することができる。
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(6)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(7)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(8)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(9)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(10)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0090】
その他の公知の水硬性材料添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知の水硬性材料添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0091】
上記水硬性材料組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0092】
上記水硬性材料組成物は、そのままコンクリート(フレッシュコンクリート)等として用い得る。
【0093】
上記水硬性材料組成物における、本発明の水硬性材料用添加剤の添加量は、目的に応じて任意の適切な量を採用し得る。例えば、水硬性材料(Z)に対し、固形分換算で、0.5〜10.0質量%とすることが好ましい。また、上記水硬性材料組成物中の水硬性材料(Z)の容量が14容量%を超える場合は、水硬性材料(Z)に対し、固形分換算で、好ましくは0.5〜10.0質量%であり、より好ましくは0.5〜6.0質量%である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部及び%は質量基準である。
【0095】
<GPC分子量測定条件>
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
【0096】
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、質量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
【0097】
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
モルタル物性の評価
<モルタルの混練>
表1に示す所定量の水硬性材料用添加剤と消泡剤を秤量、水で希釈し、水/セメント比(W/C)が50%では希釈後の合計質量が225g、W/Cが45%では202.5gとなるように調整したものを、ホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)に入れる。次に、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント450gを低速回転でモルタルミキサーへ投入する。投入後、30秒低速で混練し、次にセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを低速で30秒間で入れ、高速回転で30秒間混練し、回転を停止する。モルタルを掻き落し1分30秒間静置した後、高速回転で1分間混練する。
【0098】
<モルタル空気量の測定>
モルタル空気量の測定は、500mlメスシリンダーを用い、JIS−A1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法))に準拠して実施した。
【0099】
<フロー値の測定>
上記の混練で得たモルタルを、フローコーン(JIS R 5201−1997に記載)に2層に分けて詰め、コーンを引き上げ、直ちに15秒間に15回の落下運動を与え、モルタルの15打フローを測定し、これを15打フロー値とした。フロー値の測定は、JIS R 5201−1997に準じて行った。
【0100】
15打フロー値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0101】
<収縮低減性の評価>
モルタルの混練を上記と同様に実施した。次に、収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成を、JIS−A1129に従って実施した。型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し、20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースを、たわしを用いて水で洗浄し、続いて、20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。JIS−A1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用し、静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。なお、水硬性材料用添加剤を添加していないモルタルを基準モルタルとした。この際、長さ変化比は、下記式で示されるように、基準モルタルの収縮量に対する水硬性材料用添加剤添加モルタルの収縮量の比とし、値が小さいほど、収縮を低減できることを示す。
【0102】
長さ変化比
={(水硬性材料用添加剤添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100
〔製造例1〕:共重合体(1)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を14.66質量部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体(IPN50)を49.37質量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液2.39質量部を添加し、アクリル酸3.15質量部及びイオン交換水0.79質量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.13質量部、L−アスコルビン酸0.06質量部及びイオン交換水15.91質量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、質量平均分子量が37700の共重合体(1)の水溶液を得た。
【0103】
実施例、比較例で用いる各種成分
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4で用いる化合物(G)、分散剤(J)、消泡剤(D)を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
ここで、化合物(G)の中で、MBMは、N−n−ブチルエタノールアミン、BMEAは、N−t−ブチルエタノールアミン、BAAEは、2−((2−(ブチルアミノ)エチル)アミノ)エタノール、MBDは、N−n−ブチルジエタノールアミン、EAは、N−(β−アミノエチル)エタノールアミンである。また、分散剤(J)中で、分散剤(1)はリグニンスルホン酸系AE減水剤(BASFジャパン社製、商品名「ポゾリスNo.70」)である。さらに、消泡剤(D)のLG299は、オキシアルキレン系消泡剤(ADEKA社製、商品名「アデカノールLG299」)である。
【0106】
表1より、実施例1〜実施例6では、いずれもモルタルの15打フロー値が150mm以上であり、分散剤(J)を使用しない比較例1と比べると流動性が良好であり、さらには、比較例3、4と比べると、格段に長さ変化比が小さい。よって、本発明の水硬性材料用添加剤は、優れた流動性と収縮低減性を示すことが判る。比較例1では、モルタルの流動性が小さく、収縮低減性評価の供試体の作製ができなかった。また、消泡剤を使用しない比較例2では、モルタルの空気量が8.5%となり、実施例1〜6に比べて空気量が非常に多くなったので、フロー及び、収縮低減性の評価は行わなかった。