特許第6223762号(P6223762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223762天井落下防止用ネット及び天井落下防止構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223762
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】天井落下防止用ネット及び天井落下防止構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/04 20060101AFI20171023BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   E04C2/50 P
   E04G23/02 Z
   E04B9/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-197100(P2013-197100)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-63811(P2015-63811A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023353
【氏名又は名称】協立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 佳央
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 君至
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087530(JP,A)
【文献】 特開平06−240886(JP,A)
【文献】 米国特許第05437474(US,A)
【文献】 米国特許第06068085(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/04
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井支持部材に固定され、網目を有する天井落下防止用ネットであって、
前記網目をテープ状の芯部材に巻き付けた状態で、前記芯部材の長手方向に縫製された端部を有し、
前記端部は、前記芯部材に巻回した網目の外部にテープ状の芯補強部材を配置して縫製されていることを特徴とする天井落下防止用ネット。
【請求項2】
網目を有して、落下物を受け止める天井落下防止用ネットと、
前記天井落下防止用ネットを固定する天井支持部材とからなる天井落下防止構造であって、
前記天井落下防止用ネットが、前記網目をテープ状の芯部材に巻き付けた状態で、前記芯部材の長手方向に縫製された端部を有し、
前記端部は、前記芯部材に巻回した網目の外部にテープ状の芯補強部材を配置して縫製されていることを特徴とする天井落下防止構造。
【請求項3】
網目を有して、落下物を受け止める天井落下防止用ネットと、
前記天井落下防止用ネットを固定する天井支持部材とからなる天井落下防止構造であって、
前記天井落下防止用ネットが、前記網目をテープ状の芯部材に巻き付けた状態で、前記芯部材の長手方向に縫製された端部を有し
前記天井落下防止用ネットには、天井の吊下物の位置に対応する孔が設けられており、
前記天井落下防止用ネットは、前記孔の周囲に網目補強部材を巻回した部分を有することを特徴とする天井落下防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井支持部材に取り付けて天井面構成物の落下を防止する天井落下防止用ネット及び天井落下防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
想定外の地震により、既存の建物の天井の一部が落下してくる可能性が指摘されている。そこで、既存の天井の全体、又は一部を下方から覆う天井落下防止用ネットを設けることが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載された技術においては、既存天井に防護ネット柵を設ける。この防護ネット柵は、既存天井裏の各既存吊ボルトに連結ボルトを連結し、連結ボルトの下端部にはワイヤー通し金具が設けられている。複数のワイヤー通し金具に通し、かつワイヤーの張りを調整するネット受けワイヤーの上部に防護ネットを結束線で結ぶ。これにより、天井の下方に天井落下防止用ネットの施工を容易に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−87530号公報(第1頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井落下防止用ネットには、天井の一部が剥離して落下した場合、この落下物を受け止めるための強度や均質性が求められる。しかしながら、ネットを支持する端部にも力が加わるため、この支持部分における強度や均質性にばらつきがある場合、落下物を的確に受け止めることができない可能性がある。更に、このような天井落下防止用ネットは、多くの建物に適用する必要があり、安定した品質や量産性が求められる。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、安定した強度を確保するための天井落下防止用ネット及び天井落下防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する天井落下防止用ネットは、天井支持部材に固定され、網目を有する天井落下防止用ネットであって、前記網目をテープ状の芯部材に巻き付けた状態で、前記芯部材の長手方向に縫製された端部を有すること要旨とする。また、上記課題を解決する天井落下防止構造は、網目を有して、落下物を受け止める天井落下防止用ネットと、前記天井落下防止用ネットを固定する天井支持部材とからなる天井落下防止構造であって、前記天井落下防止用ネットが、前記網目をテープ状の芯部材に巻き付けた状態で、前記芯部材の長手方向に縫製された端部を有すること要旨とする。
【0007】
この構成によれば、天井落下防止用ネットは、網目をテープ状の芯部材に巻き付けた状態で、芯部材の長手方向に縫製された端部を有するので、安定した強度を確保することができる。
【0008】
上記天井落下防止用ネットにおいて、前記端部は、前記芯部材に巻回した網目の外部にテープ状の芯補強部材を配置して縫製されていることが好ましい。この構成によれば、巻回した網目を、芯部材だけでなく、補強部材によっても補強するため、引張強度を、更に強くすることができる。
【0009】
上記天井落下防止構造において、前記天井落下防止用ネットには、天井の吊下物の位置に対応する孔が設けられており、前記天井落下防止用ネットは、前記孔の周囲に網目補強部材を巻回した部分を有することが好ましい。この構成によれば、例えば天井からの吊下物を貫通させて接触する領域を補強することができるので、天井からの吊下物が存在した場合においても、この吊下物による無理な力を掛けることなく、天井落下防止用ネットを配置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天井落下防止用ネットにおいて、強度の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における天井落下防止構造の全体斜視図。
図2】実施形態における天井落下防止用ネットの端部を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は拡大断面図。
図3】実施形態における天井落下防止用ネットの製造方法を説明する説明図であり、(a)はネット材及び芯部材の製造する前の状態、(b)はネットを芯部材に巻回してミシン縫いした状態、(c)は芯補強部材もミシン縫いをした状態を示す。
図4】天井落下防止用ネットの取付方法を説明する図であり、(a)は取り付ける前、(b)は取り付けた後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図4に従って、本発明を具体化した一実施形態について説明する。本実施形態では、建物の天井には、天井面を支持する天井支持部材としての長尺状の金物下地が、所定の間隔で配置されている。
【0013】
図1には、本実施形態の天井落下防止構造が示されている。建物の天井において複数、配置された金物下地50のレーシングバー51には、落下防止ネット10が、レーシングロープ60によって巻回されて取り付けられている。落下防止ネット10は、例えば、幅が3.6m、長さは100m程度の大きさを有している。
【0014】
図2(a)は落下防止ネット10の要部の正面図、(b)は落下防止ネット10の端部20の拡大断面図である。
図2(a)に示すように、落下防止ネット10は、角目のネットであって、横糸11及び縦糸12が直交して編み込まれることによって格子状に網目が形成されている。横糸11及び縦糸12は、難燃性高強度繊維素材(例えばポリアリレート)で構成されている。
【0015】
図2(b)に示すように、落下防止ネット10の端部20は、テープ状の芯部材21を中心にして落下防止ネット10の横糸11を数回、巻回した状態で1度ミシン縫いされ、更に外部にテープ状の芯補強部材22を配置して、2度ミシン縫いされて構成されている。この場合、芯補強部材22は、落下防止ネット10の中央に近い側に配置されている。そして、端部20は、図2(a)に示すように、芯補強部材22が設けられた側面と反対側では、3条のミシン目(1条のミシン目23と、このミシン目23の両側の2条のミシン目24)により固定される。また、芯補強部材22が設けられた側面では、芯補強部材22に対して2条のミシン目24により固定される。この場合、ミシン目23,24は、テープ状の芯部材21及び芯補強部材22の長手方向に直線状に形成されている。
【0016】
本実施形態の芯部材21及び芯補強部材22は、幅が15mm程度、厚さが1mm程度、長さが100m程度の大きさの難燃性材料により構成されている。本実施形態のミシン目23,24は、難燃性の縫製糸によって形成されている。
【0017】
また、図2(a)に示すように、本実施形態の落下防止ネット10には、網目の一部に、補強部15が形成されている。この補強部15は、孔15hを包囲する横糸11及び縦糸12に、糸状の網目補強部材15aを巻回させた部分である。この網目補強部材15aは、横糸11及び縦糸12と同じ材料で構成されている。また、孔15hは、落下防止ネット10を天井に配置した場合に、天井からの吊下物(例えば、照明器具等)を貫通させるための特定領域である。
【0018】
次に、図3に従って、本実施形態の落下防止ネット10の製造方法について説明する。
まず、図3(a)に示すように、落下防止ネット10に用いるネット材10aの端部(端部予定部分20a)において、芯部材21を配置し、この芯部材21をネット材10aで巻き込む。
【0019】
次に、図3(b)に示すように、芯部材21にネット材10aの端部予定部分20aを巻き込んだ状態で、芯部材21の中央付近で、芯部材21の長手方向にミシン掛けを行なうことにより、芯部材21と巻回したネット材10aの端部とを一体化させる。
【0020】
次に、図3(c)に示すように、ネット材10aの、ミシン目23によって芯部材21と横糸11とが一体化された端部予定部分20aに、芯補強部材22を配置する。この場合、芯補強部材22は、ネット材10aの中央に近い側の面で、芯部材21と平行に配置する。そして、この状態で、ミシン目23の両側に、芯部材21及び芯補強部材22の長手方向にミシン掛けを行なうことにより、端部20を形成する。
【0021】
ネット材10aを配置する場所に天井からの吊下物がある場合には、ネット材10aにおいて、吊下物の貫通位置及び大きさを特定する。そして、この貫通位置において、吊下物の大きさに合わせて、必要に応じて横糸11や縦糸12を切断して孔15hを生成する。そして、孔15hの周囲の横糸11及び縦糸12に対して、網目補強部材15aを巻回する。以上により、天井落下防止用ネットとしての落下防止ネット10が完成する。
【0022】
次に、図4に従って、本実施形態の落下防止ネット10の取付方法について説明する。
図4(a)に示すように、金物下地50には、複数のアーム51aを介してレーシングバー51が取り付けられている。そこで、図4(b)に示すように、レーシングバー51に、落下防止ネット10の端部20を重ねる。この場合、補強部15の孔15hを、天井の吊下物に対応する位置に落下防止ネット10を配置する。そして、レーシングバー51と落下防止ネット10の端部20とを重ねた状態で、レーシングロープ60を螺旋状に巻き、解けないように結びつける。これにより、落下防止ネット10はレーシングバー51に固定される。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の天井落下防止用の落下防止ネット10は、芯部材21を中心にして落下防止ネット10の端部予定部分20aを数回、巻回した後、外部に芯補強部材22を配置してミシン縫いされた端部20を備える。これにより、ネット材10aの端部を芯部材21に巻き込むので、落下防止ネット10の強度の安定化を図ることができる。
【0024】
(2)本実施形態の落下防止ネット10の端部20は、ミシンによって縫製される。このため、端部20の強度の均一化を図ることができ、量産にも適する。
(3)本実施形態の落下防止ネット10の端部20は、ミシン目23によって芯部材21と横糸11とが一体化された状態で、外側に芯補強部材22を配置し、ミシン掛けされる。これにより、芯補強部材22によって端部20の強度を、更に安定化することができる。
【0025】
(4)本実施形態の落下防止ネット10の孔15hを包囲する横糸11及び縦糸12に、網目補強部材15aを巻回させた補強部15が形成されている。これにより、天井に配置される吊下物を落下防止ネット10に貫通させた場合にも、吊下物の接触に対して補強することができる。
【0026】
(5)本実施形態の落下防止ネット10は、レーシングバー51と落下防止ネット10の端部とを平行に配置した状態で、レーシングロープ60を螺旋状に巻いて固定される。これによれば、簡単に落下防止ネット10を金物下地50に取り付けることができる。
【0027】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、落下防止ネット10を、長尺状の金物下地50のレーシングバー51に取り付けた。落下防止ネット10は、天井面を支持する天井支持部材であれば、金物下地50に直接、取り付けてもよいし、金物下地50の代わりに配置されるケーブルに取り付けてもよい。ここで、1つの天井支持部材の両側にそれぞれ落下防止ネット10を取り付ける場合には、それぞれを別に取り付ける2つのレーシングバー51を設けることが好ましい。これにより、同じ部材に両側から落下防止ネット10を取り付けないので、落下防止ネット10を効率よく取り付けることができる。
【0028】
・上記実施形態において、落下防止ネット10の端部20は、ミシン目23によって芯部材21と横糸11とが一体化された状態で、外側に芯補強部材22を配置し、ミシン掛けを行なって構成した。芯補強部材22は、ミシン目23によって芯部材21と横糸11とが一体化された状態の両側に配置してもよいし、上記実施形態とは異なる側(具体的には、ネット材10aの網目に近い側の面と反対側)に配置してもよい。
また、上記実施形態では、テープ状の芯部材21に巻き付けた状態で、芯部材21の長手方向に縫製された端部20として、落下防止ネット10の長手方向に延びる端部を構成したが、落下防止ネット10の短手方向に延びる端部を、同様な構成にしてもよい。
【0029】
・上記実施形態において、落下防止ネット10の端部20は、中央にミシン目23を設け、これの両側にミシン目24を設けた。ミシン縫いの回数、すなわちミシン目(23,24)の回数はこれに限定されない。
【0030】
・上記実施形態において、落下防止ネット10に補強部15を設けた。ここで、落下防止ネット10の1つの網目に挿入可能な大きさの吊下物の場合には、横糸11及び縦糸12を切断せずに、吊下物が対応する位置の網目の横糸11及び縦糸12に、網目補強部材15aを巻回して補強してもよい。
【0031】
・上記実施形態において、落下防止ネット10の横糸11及び縦糸12は、難燃性高強度繊維素材で構成し、落下防止ネット10のミシン目23,24は、難燃性の縫製糸で構成した。これらの材料は、難燃性材料に限定されず、これらの材料として、従来からネットや縫製糸として用いられている所定以上の引張強度を有する材料(ポリエステルやポリプロピレン等)を用いてもよい。また、落下防止ネット10の芯部材21及び芯補強部材22は、難燃性材料で構成したが、これらの材料も、難燃性材料に限定されない。例えば、これらの材料として、落下防止ネット10が安定した強度を確保できるための所定以上の引張強度を有する材料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…落下防止ネット、10a…ネット材、11…横糸、12…縦糸、15…補強部、15a…網目補強部材、15h…孔、20…端部、20a…端部予定部分、21…芯部材、22…芯補強部材、23,24…ミシン目、50…金物下地、51…レーシングバー、51a…アーム、60…レーシングロープ。
図1
図2
図3
図4