特許第6223764号(P6223764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223764
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】水性ボールペン用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   C09D11/18
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-202104(P2013-202104)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-95070(P2014-95070A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2016年4月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-227001(P2012-227001)
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 容治
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄介
(72)【発明者】
【氏名】坂根 範子
(72)【発明者】
【氏名】花谷 沙希
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−194261(JP,A)
【文献】 特開昭54−143340(JP,A)
【文献】 特開2002−103876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00− 11/54
B43K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水と着色剤(但し、アルミニウム粉顔料を除く)と、ポリビニルアルコール及び/又は多糖類と、ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種とを含有し、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有することを特徴とする水性ボールペン用インク組成物。
【請求項2】
剪断速度383s−1(25℃)の粘度が5〜150mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水性ボールペン用インク組成物を搭載したことを特徴とする水性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字となるシャープできれいな描線が筆記できる水性ボールペン用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゲルインクボールペンは、剪断減粘性をもつインクの特性を利用している。このようなボールペン用インク組成物としては、剪断減粘性を示す増粘剤(ゲル化剤)を含有するものであり、例えば、1)キサンタンガムを0.20〜0.45重量%含有することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物(例えば、特許文献1参照)、2)必須成分として(イ)着色剤、(ロ)グルコース/ガラクトース/ピルビン酸又はその塩/こはく酸又はその塩/酢酸がモル比5〜8/1〜2/0.5〜2/0.5〜2/0.5〜1で構成されている基本単位からなる平均分子量約100万乃至約800万の有機酸修飾ヘテロ多糖体、及び(ハ)水と水溶性有機溶剤を含み、水が50重量%以上を占める水性媒体を含有してなるボールペンに好適な筆記具用水性インキ組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
これらの剪断減粘性をもつ従来のゲルインクは、図1に示すように、筆記していない時(非筆記時)はインクの粘度が高く(インクの)ボタ落ちを抑制し、筆記している時(高剪断時)は、ボール回転の作用などで粘度が下がり、滑らかに筆記が出来るという特徴を有するものであり、剪断速度が高くなるにつれ、粘度が漸次減少する粘度フローカーブとなるものである。
【0004】
しかしながら、このような粘性挙動をもつ従来のゲルインクは、書き出し部においては、筆記感が重く、カスレ易くボテ易いという課題がある。また、筆記中は粘度が極端に下がることで、トメの部分の濃度が薄くなる、ハライの部分の描線が割れたようになるなどの課題があり、シャープな描線が得られにくい傾向があった。
【0005】
一方、ポリビニルアルコールを用いたマーキングペン、ボールペンなどの筆記具用インキとしては、例えば、酸化チタンと、体質顔料と、分散剤と、重合度が200〜1000のポリビニルアルコール及び/又はスチレン・アクリル系共重合体のエマルジョンと、水とを少なくとも含むことを特徴とする水性顔料インキ(例えば、特許文献3参照)が知られている。
他方、ホウ酸アルカリ金属塩を用いた水性インキ組成物等としては、ペン先部分の超硬合金製ボールについての耐腐食性を改良するために、ケイ酸アルカリ金属塩及び/又はホウ酸アルカリ金属塩を含むことを特徴とする水性インキ組成物とそれを備えた水性ボールペン(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献3の筆記具用インキにおけるポリビニルアルコールは凍結解凍における顔料分散安定性を向上するために使用するものであり、本発明とはその目的、課題が相違するものであり、しかも、ダイラタント流体特性を有するインクについては全く記載や認識もないものである。
また、上記特許文献4の水性インキ組成物におけるホウ酸アルカリ金属塩はボールに当該ホウ酸アルカリ金属塩の薄膜を形成して、ボールやチップホルダーの腐食を妨げるために使用するものであり、本発明とはその目的、課題が相違するものであり、しかも、ダイラタント流体特性を有するインクについては全く記載や認識もないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−74175号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平6−88050号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2000−345090号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2002−338869号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字となるシャープできれいな描線が筆記できる水性ボールペン用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、水性ボールペン用インク組成物において、特定の剪断速度の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有するインクは、筆記する際に筆記先端部にかかる剪断力によって、粘度が高まった履歴を有し、書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字となるシャープできれいな描線が筆記できることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1) 少なくとも水と着色剤を含有し、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有することを特徴とする水性ボールペン用インク組成物。
(2) 剪断速度383s−1(25℃)の粘度が5〜150mPa・sであることを特徴とする上記(1)記載の水性ボールペン用インク組成物。
(3) ポリビニルアルコール及び/又は多糖類と、ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の水性ボールペン用インク組成物。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物を搭載したことを特徴とする水性ボールペン。
【0011】
本発明において、「ダイラタント流体特性」とは、剪断速度の増大とともに粘度が大きくなる流体の状態をいう。また、「少なくとも(剪断速度の)一部の領域」とは、本発明では、基準となる任意の剪断速度とその1.2倍の剪断速度までの領域を示す。
従って、本発明において、「剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性をもたせる」とは、例えば、30s−1を基準の剪断速度としたとき、30s−1とその1.2倍の36s−1の粘度を比較し、36s−1の粘度の方が30s−1よりも高ければ、「少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を示す」ことをいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字となるシャープできれいな描線が筆記できる水性ボールペン用インク組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のゲルインクと本発明の水性ボールペン用インク組成物における、剪断速度とインク粘度との関係を示す特性図(粘度フローカーブ)である。
図2】実施例1〜10の各水性ボールペン用インク組成物における、剪断速度1〜383s−1(25℃)におけるインク粘度の特性図(粘度フローカーブ:実施例)である。
図3】比較例1〜5の各水性ボールペン用インク組成物における、剪断速度1〜383s−1(25℃)におけるインク粘度の特性図(粘度フローカーブ:比較例)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、少なくとも水と着色剤を含有し、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有することを特徴とするものである。
【0015】
図1は、従来のゲルインクと本発明の水性ボールペン用インク組成物において、剪断速度とインク粘度との関係を示す特性図(粘度フローカーブ)である。
本発明では、図1に示すように、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有するものとすることにより、従来の剪断速度が高くなるにつれ、粘度が漸次減少する粘度フローカーブとなる従来のゲルインクよりも書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字等となるシャープできれいな描線が筆記できる水性ボールペン用インク組成物が初めて得られることとなる。
【0016】
本発明において、一部の領域でダイラタント流体特性を有する「好ましい状態」としては、剪断速度1〜383s−1(25℃)の全て領域で、ダイラタント流体状態(383s−1まで連続的に粘度が高まっているインクでも良いが、好ましくは、剪断速度1〜200s−1の範囲内で粘度の極大値(ピーク値)をもつもの、更に好ましくは、剪断速度10〜150s−1の範囲内で粘度の極大値(ピーク値)をもつものが望ましい。
ダイラタント流体からある剪断速度を境に疑塑性流体に変化するもの、すなわち、速書筆記をすると、インクにかかる剪断速度は高くなり、383s−1を超えてもダイラタント流体状態を維持しているものは、疑塑性に変化するものと比べると、インクの流出性が若干低下する傾向にある。好ましくは、剪断速度10〜150s−1において、疑塑性流体に変化するものが望ましい。
このように、図1に示す、本発明のダイラタント流体特性を有する特殊なレオロジーカーブを実現させるためには、適切な粘度調整剤(増粘剤)を選定・組み合わせ等することにより行うことができる。
【0017】
本発明では、少なくとも水と着色剤を含有した上で、例えば、ポリビニルアルコール及び/又は多糖類と、ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種とを含有することにより、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有する状態に調整しやすくなる。
【0018】
本発明に用いることができるポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」と略記する)は、一般式、−〔CH−CH(OH)〕m−〔CH−CH(OCOCH〕n−で表されるものであり、インクの経時安定性、粘度付与性の点から、そのケン化度{〔m/(m+n)〕×100}は、好ましくは、50mol%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、75mol%以上であることが望ましい。
また、上記ケン化度のPVAにおいて、筆記感、着色性を損なうことなく、トメ、ハネ、ハライなど美文字感を高める点から、その重合度(m+n)は、好ましくは、300以上、更に好ましくは、300〜3000、特に好ましくは、300〜2000が望ましい。
具体的に用いることができるPVAとしては、市販の日本合成化学工業社製のG型ゴーセノールシリーズ、K型ゴーセノールシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のJポバールシリーズ(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のKURARAYポバールPVAシリーズ(クラレ社製の商品名)等が挙げられる。
これらのケン化度、重合度を有するPVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、本発明のPVAには、変性PVA、好ましくは、上記重合度範囲、ケン化度となる変性PVAも使用することができる。用いることができる変性PVAとしては、PVAの水酸基、酢酸基をカルボキシル基、スルホン酸基、エチレンオキサイド基などの変性基に変性したもの、または、PVAの側鎖に上記の変性基を有するものが挙げられる。また、部分けん化PVAにアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合したPVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体も本発明の変性PVAとして使用することができる。
具体的に用いることができる変性PVAとしては、市販の日本合成化学工業社製のゴーセネックスLシリーズ、ゴーセネックスWOシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のアニオン変性PVA(Aシリーズ)(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のエクセバール1713(クラレ社製の商品名)等が挙げられる。また、PVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重体としては、大同化成工業社製のPOVACOAT(大同化成工業社製の商品名)等が挙げられる。
これらの変性PVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
このようなPVA、変性PVAの合計含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、0.2〜8質量%(以下、単に「%」と略記する。)、更に好ましくは、0.4〜5%、特に好ましくは、1〜4%であることが望ましい。
この含有量が0.2%未満では、粘度付与性能が充分でなく、描線の滲み耐性が低下するなどの、一方、8%を越えると、粘度が高すぎてインクの追従性能が低下し、好ましくない。
【0021】
本発明に用いることができる多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの多糖類は、粘度調整を補う材料として有用であり、その含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、0.03〜1.5%、更に好ましくは、0.05〜0.8%が望ましい。
この含有量が0.03%未満では、粘度付与性能が充分でなく、描線の滲み耐性が低下するなどの、一方、1.5%を越えると、粘度が高すぎてインクの追従性能が低下しやすくなり好ましくない。
【0022】
本発明に用いることができるホウ酸及びその塩としては、ホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム)、ホウ酸のアンモニウム塩などが挙げられ、例えば、ホウ酸(HBO)、三酸化二ホウ酸(B)、メタホウ酸ナトリウム(NaBO)、二ホウ酸ナトリウム(Na)、四ホウ酸ナトリウム(Na)、五ホウ酸ナトリウム(NaB)、六ホウ酸ナトリウム(Na10)、八ホウ酸ナトリウム(NaB13)、ホウ酸アンモニウム〔(NHO・5B〕、並びに、これらの水和物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
好ましくは、インク成分に対する溶解性や汎用性の点から、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、三酸化二ホウ酸の使用が望ましい。
【0023】
これらのホウ酸及びその塩の合計含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜1質量%、更に好ましくは、0.1〜1質量%とすることが望ましい。
このホウ酸及びその塩の含有量が0.01質量%未満であると、粘度付与性が充分でなく、一方、1質量%を超えると、インク粘度の経時安定性が低下するなどの不具合を招くことがある。
【0024】
本発明の水性ボールペン用インク組成物では、上述のダイラタント流体特性を有すると共に、少なくとも、着色剤、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、更に、水性ボールペン用に通常用いられる各成分、例えば、水溶性有機溶剤、上記PVA、多糖類、ホウ酸塩以外の粘度調整剤、分散剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤、pH調整剤などを本発明の効果を損なわない範囲で、適宜含有することができる。
【0025】
本発明に用いる着色剤としては、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0026】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの色材の含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.1〜40質量%に範囲で適宜調整することが可能である。
【0027】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類などが挙げられ、これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、3〜30質量%とすることが望ましい。
【0028】
用いることができる粘度調整剤としては、例えば、合成高分子、セルロースからなる群から選ばれた少なくとも一種が望ましい。具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0029】
分散剤としては、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物などの少なくとも1種が挙げられる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、リン酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
【0030】
この水性ボールペン用インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、少なくとも着色剤、水を含有した上で、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有するように、例えば、PVA及び/又は多糖類と、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよく、また、脱泡、加熱、冷却しながら作製してもよいものである。
【0031】
本発明の水性ボールペン用インク組成物において、383s−1(25℃)における粘度が、好ましくは、5〜150mPa・s、更に好ましくは、10〜100mPa・sであることが望ましい。
この粘度が5mPa・s未満であると、滲みが生じやすく、筆記描線が醜くなることがあり、一方、150mPa・sを超えて上回ると、ボールペンの仕様によっては、追従性が低下し、筆記描線がかすれやすくなることがある。
なお、上記粘度の調整は、用いる各インク成分やその各含有量を好適に組み合わせることにより、調整することができる。
【0032】
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、金属チップ、樹脂チップなどのペン先部を備えたボールペンに搭載して使用に供することができる。
用いることができる水性ボールペンは、上記組成となる水性ボールペン用インク組成物を搭載したものであり、好ましくは、金属ボール等を回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は中継部材を介して挿着したパイプ又はパイプ形状の成形物等からなるインク収容管内に上記特性のインク組成物を充填し、かつ、該インク組成物後端面にインク追従体を配設してなる構成となるものが望ましい。インク追従体としては、インク収容管内に収容された水性ボールペン用インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性ボールペン用インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。
なお、ボールペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の水性ボールペン用インク組成物を充填したコレクター構造(インキ保持機構)を備えた直液式のボールペンであってもよいものである。
【0033】
このように構成される本発明の水性ボールペン用インク組成物が、何故書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字となるシャープできれいな描線が筆記できる機能を発現するのかは下記のように推測することができる。
すなわち、本発明の水性ボールペン用インク組成物では、図1に示すように、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有することにより、従来の剪断速度が高くなるにつれ、粘度が漸次減少する粘度フローカーブとなる従来のゲルインクよりも書き出し部でもカスレにくくなり、滑らかな書き味を有するものとなると共に、トメ、ハネ、ハライ部分での筆記速度や筆記圧が変動する範囲において、好適なインク流動特性を発現するためと推測される。
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、本発明の効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れており、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更に水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
【0034】
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、上述の如く、少なくとも水と着色剤を含有し、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有することを要旨とするものであり、上記ダイラタント流体特性を発揮せしめるために、好ましい形態として、PVA及び/又は多糖類と、ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種とを含有する形態(PVA+ホウ酸及びその塩、多糖類+ホウ酸及びその塩、PVA+多糖類+ホウ酸及びその塩)を例示したが、他の粘度調整剤(増粘剤)を使用することなどにより、本発明で見出した図1に示す、ダイラタント流体特性を有するレオロジーカーブを実現できれば、上記実施形態に限定されるものでない。
【実施例】
【0035】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1〜10及び比較例1〜5〕
下記表1に示す配合処方にしたがって、常法により各水性ボールペン用インク組成物を調製した。
得られた各水性ボールペン用インク組成物(全量100質量%)について、下記測定方法により、剪断速度1〜383s−1(25℃)におけるインク粘度を測定した。
また、得られた各水性ボールペン用インク組成物(全量100質量%)について、下記方法により水性ボールペンを作製し、下記各評価方法により、トメ、ハネ、ハライ、初筆性能及び描線の滲みとカスレについて評価した。
下記表1に実施例1〜10及び比較例1〜5の配合処方とその各評価結果を示し、下記表2に、剪断速度1〜383s−1(25℃)におけるインク粘度値を示す。また、図2及び図3に、表2に基づく実施例1〜10及び比較例1〜5の剪断速度1〜383s−1(25℃)におけるインク粘度の各特性図(粘度フローカーブ:実施例、比較例)を示す。
【0037】
(インク粘度値の測定方法)
E型回転粘度計〔VISCOMETER RE215(東機産業社製)〕を用いて、コーン:1°34’*R24、測定モード:スロープ測定、スタート回転速度:0rpm、トップ回転速度:100rpm(383s−1)、上昇時間設定:56sec、測定温度:25℃で各剪断速度のインク粘度(mPa・s)を測定した。
【0038】
(水性ボールペンの作製)
ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM−100〕の軸を使用し、内径4.0mm、長さ113mmのポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.7mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各インクを充填し、インク後端にポリブテンからなるインク追従体を装填し、水性ボールペンを作製した。
【0039】
(トメの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、1画目の点の滲み、ボテの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:滲み、ボテがほとんどなし。
△:滲み、またはボテが若干ある。
×:滲みやボテがひどく、描線が醜い。
【0040】
(ハネの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、2画目の終筆部のハネの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:終筆部の描線が非常に細く、カスレもなく、きれいな描線が表現できている。
△:描線が多少カスレており、描線濃度がうすい。
×:描線が酷くカスレており、描線が醜い。
【0041】
(ハライの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、5画目の品位を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:描線の割れが全くなく、きれいな描線が表現できている。
△:描線の割れが多少あり、描線濃度がうすい。
×:描線の割れがあり、描線が醜い。
【0042】
(初筆性能の評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、1画目の点のインク出性能の状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:カスレがほとんどなく、きれいに点がうてる。
△:カスレが若干あり、描線がうすい。
×:カスレがひどく、点がほとんど判読できない。
【0043】
(描線の滲みとカスレの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、2画目の終筆部のハネの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:終筆部の描線が非常に細く、カスレも滲みもなく、きれいな描線が表現できている。
△:描線が多少カスレており、描線濃度がうすい。もしくは、若干の滲みが認められる。
×:描線が酷くカスレている若しくは滲みが大きく、描線が醜い。
【0044】
【表1】
【0045】
上記表1中の*1〜*11は下記のとおりである。
*1:カーボンブラックMA−100(三菱化学社製)
*2:JONCRYL 61J(BASF JAPAN社製)
*3:G型ゴーセノール GL−05(日本合成化学工業社製)、ケン化度86.5〜89.0mol%、重合度500
*4:Jポバール JF−05(日本酢ビ・ポバール社製)、ケン化度98〜99mol%、重合度500
*5:Jポバール JF−17(日本酢ビ・ポバール社製)、ケン化度98〜99mol%、重合度1700
*6:プライマルTT−935(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)
*7:プライマルTT−615(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)
*8:ジャガーHP(三晶社製)
*9:スピノガム(扶桑化学工業社製)
*10:リン酸エステル RS−610(東邦化学工業社製)
*11:ベストサイド600(日本曹達社製)
【0046】
【表2】
【0047】
上記表2は、表1における実施例1〜10及び比較例1〜5の配合処方における、剪断速度(ずり速度)1〜383s−1(25℃)におけるインク粘度値を示すものである。
表2を考察すると、実施例1〜10において、実施例1では、剪断速度(ずり速度)68(s−1)で粘度182mPa・sの極大値(ピーク値)を有している〔この表記を「ピーク粘度値182mPa・s、68(s−1)」とする〕。以下、実施例2〜10を上記表記でみると、実施例2では「ピーク粘度値93mPa・s、137〜150(s−1)」、実施例3では「ピーク粘度値206mPa・s、61(s−1)」、実施例4では「ピーク粘度値157mPa・s、96(s−1)」、実施例5では「ピーク粘度値163mPa・s、20(s−1)」、実施例6では「ピーク粘度値406mPa・s、27(s−1)」、実施例7では「ピーク粘度値237mPa・s、20(s−1)」、実施例8では「ピーク粘度値220mPa・s、27(s−1)」、実施例9では「ピーク粘度値151mPa・s、82(s−1)」、実施例10では「ピーク粘度値385mPa・s、34(s−1)」を有しており、これを境にして疑塑性流体に変化するものとなっている。また、剪断速度383s−1(25℃)の粘度も5〜150mPa・sの好ましい範囲となるものである。
これに対して、比較例1〜5では、表2及び該表2をグラフ化した図3の特性図(粘度フローカーブ:比較例)に示すように、ピーク粘度値を有することなく、剪断速度が高くなるにつれ、粘度が漸次減少する粘度フローカーブ(従来のゲルインク等)となるものである。
上記表1及び表2、並びに、図1図3の結果等を綜合的に考察すると、本発明をサポートする実施例1〜10の水性ボールペン用インク組成物では、表2及び該表2をグラフ化した図2の特性図(粘度フローカーブ:実施例)に示すように、剪断速度1〜383s−1(25℃)の少なくとも一部の領域でダイラタント流体特性を有することにより、従来の剪断速度が高くなるにつれ、粘度が漸次減少する比較例1〜5の粘度フローカーブ(図3)となるインクよりも書き出し部でもカスレにくく、滑らかな書き味を有し、トメ、ハネ、ハライが明瞭で、美しい文字等となるシャープできれいな描線が筆記できる水性ボールペン用インク組成物が初めて得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0048】
水性のボールペンに好適な水性ボールペン用インク組成物が得られる。
図1
図2
図3