【実施例】
【0054】
以下の典型的な実験方法およびデータは本発明の様々な態様をよりよく説明するために示されるが、いかなる場合も本発明の範囲を限定すると見なされてはならない。
【0055】
実施例1 − 1−F79の安定性試験
ヒト抗体1−7F9の生物物理学的特性および安定性は、以下のように試験した。タンパク質の折りたたみ二次構造を円二色性(CD)によって試験し、オリゴマー化および凝集を動的光散乱(DLS)によって試験した。5℃における2年間の貯蔵条件を模倣するために、タンパク質を振とうさせながら37℃で14日間のインキュベーションにさらした。
【0056】
材料および方法
サンプル調製。(a)50mMのリン酸Na、0.001%のポリソルベート80(シグマ(Sigma)、P8074)、pH7.0、(b)50mMのリン酸Na、0.001%のポリソルベート80、pH7.0、0.5mMのスクロース、(c)50mMのクエン酸塩、0.001%のポリソルベート80、pH3.0、およびd)50mMのトリス、0.001%のポリソルベート80、pH8.5中で、2mg/mlの1−7F9を調製した。
【0057】
円二色性(CD)。CD測定は、温度制御のためのペルチェ要素を備えたChirascan円二色性分光計(アプライド・フォトフィジクス(Applied Photophysics))において、25℃で、2.0mg/mlのタンパク質濃度により実施した。1−7F9サンプルは、0.1mmの経路長を有する円筒形の石英セル中に入れた。バッファ走査を記録しおよび各サンプルスペクトルについて差し引いた。
【0058】
動的光散乱(DLS)。DLSは、Dynapro 99温度制御DLS装置(プロテイン・ソリューション社(Protein Solution Inc.))を用いて、25℃で、2.0mg/mlのタンパク質濃度により実施した。データ分析は、この装置と共に提供されるDynamicsソフトウェアを用いて行った。
【0059】
結果
14日間のインキュベーションの後、DLSで評価されるように、pH7.0のサンプルの場合には分子サイズは変化しなかったが、pH3.0およびpH8.5で処方したサンプルはいずれも14日間の間に多量に凝集した。
【0060】
CD測定は全てのベータ構造の特徴を示し、賦形剤としてポリソルベート80だけを含有するサンプルについてはシグナルのわずかな低下があったが、加速された試験の間中、pH7.0で処方されたサンプルがその二次構造を保持することが判明した。スペクトルの全体的な形は変化しないので、これは、サンプルの少量の沈殿による可能性がある。スクロースを含有するサンプルは、時間が経過してもこのような低下は少しも示さなかった。pH3.0および8.5で処方したサンプルのCD測定は、恐らくアンフォールディングまたは他のコンホメーション変化の結果として、時間が経過するとスペクトル特徴の激しい変化を示し、これは、非機能性の1−7F9タンパク質をもたらし得る。変化は即時に観察され、pH3.0で最も著しかった。
【0061】
全体としては、賦形剤としてポリソルベート80およびスクロースを用いるpH7.0におけるストレス条件(37℃で振とう)下で、1−7F9はその物理特性を保持し、安定であった。
【0062】
実施例2 − 溶解度スクリーニング
抗KIRヒトIgG4抗体1−F79を含有する製剤において、1μlの液滴中で88個の異なる条件を試験する微小製剤スクリーンを実施した。スクリーンの条件は、3〜10の間のpH範囲およびいくつかの既知の賦形剤の添加を含んだ。沈殿について全ての製剤を目視検査した(生成物の透明性、色、および粒子/繊維の存在の評価)。視覚的評価のために、2人にオペレータによって独立して、黒色および白色の背景で日光(通常)または一般的な実験室の照明に対して外観を査定した。pH溶解度試験からの結果は
図2に与えられ、種々の賦形剤に関連する沈殿分析の結果は
図3に示される。
【0063】
この分析の結果は、pH6.0および7.4と比較してpH7.0ではより少ない沈殿が生じ、pH5.0、3.0、および8.5ではさらにより少ない沈殿が生じたことを示す。
図2で与えられるデータから、0.5Mのスクロース製剤は、検出可能な沈殿物を生じなかった(また、グリセロール製剤は、比較的低レベルの沈殿物に関連した)ことが分かる。
【0064】
実施例3 − 製剤試験
4つの異なる温度で3ヶ月までの貯蔵期間にわたって表3のスケジュールに従って、1−F79(10mg/mL)の12個の異なる製剤を、pH、外観、GP HPLC、SDS−PAGE、およびIEFに基づいて分析した。試験した製剤は表4に示される。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
使用した特定の方法は、簡潔に、以下の通りであった(外観試験は上記に記載される)。
【0068】
標準化TSK SWXL G3000カラムを用いるAgilent 1100 HPLCシステムにおいて、ゲル浸透(GP)HPLCを行った。移動相は、1.0mL/分の流速のpH7.0の0.2Mのリン酸ナトリウムであった。サンプル注入容積は50μLであった。250μgのタンパク質負荷を単一の決定を用いて分析した(%モノマー、%断片、および%断片は、各サンプルに対して決定した)。全てのサンプルは、最初は1.8%〜2.3%の間の凝集体レベルを有すると決定された。
【0069】
SDS PAGEを実施して、生成物の均質性および純度を試験した。還元および非還元サンプルのSDS PAGEは、Novexプレキャスト4%および20%(w/v)アクリルアミド勾配ゲルを用いて実施し、色素の先端がゲルの底の1cm以内に移動するまで、ゲルごとに125Vの限定条件で電気泳動させた。非還元条件の場合には4μgおよび還元条件の場合には10μgのタンパク質負荷を用いた。クーマシーブリリアントブルー(Coomassie Brillian Blue)R250染色を用いて、室温でゲルを染色した。Novex MK12分子量マーカーを各ゲルにおいてインキュベートして、6kDa〜200kDaのMW範囲を包含した。還元条件の場合には、インキュベーションは、2−メルカプトエタノールを含有するpH8.0のサンプル緩衝液を用いた。非還元条件の場合には、インキュベーションは、2−メルカプトエタノールを含まないpH7.1のサンプル緩衝液を用いた。還元および非還元サンプルは、汚染を防止するために、別々に調製して別々のゲルで分析した。それぞれのエンドポイントで単一の試験を実施した。各サンプルのバンディングプロファイルは、非還元および還元サンプルについて視覚的に、そして還元サンプルの各バンドの相対的なパーセント純度を決定するためにレーザーデンシトメトリーによって分析した。
【0070】
市販のアガロース等電点電気泳動ゲル(pH3〜pH10)を用いてIEFを実施し、タンパク質の等電点電気泳動パターンおよび等電点範囲を決定した。各サンプル10μgを5μLの容積でゲルのカソード端部に添加した。1500ボルト時に焦点を合わせた後、クーマシーブリリアントブルーR250染色でゲルを染色し、各サンプルの焦点パターンをT=0のプロファイルと視覚的に比較して、タンパク質の変化アイソフォームにおける変化を同定した。各ゲルにおいて適切なpIマーカーをインキュベートし、製造業者によって供給されるpH値に基づいて同定した。各サンプルを各時点で1回試験した。
【0071】
12個の製剤における平均の抗体タンパク質濃度は10.61mg/mLであり、全てのサンプルは、この値の3%以内のタンパク質濃度を有した。
【0072】
これらの試験に基づいて、これらの時点の微粒子に関して様々な製剤をスコア化し(0スコアは最良であり、14スコアは最悪である)、分析の一環として実施した他のアッセイ(HPLC、IEF、SDS、および外観分析)については、安定性に関する3点スケール(0は最悪であり、1は「最有力候補」の特性を有する可能性のある製剤を示し、そして2は「最有力候補」の品質を有する製剤を示す)においてスコア化した。この試験から得られた結果は、表5および表6で提供される。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
具体的な特定の結果は以下を含む。GP HPLCデータは、試験における他の製剤と比較して、pH5.5の酢酸およびクエン酸緩衝液を含有する製剤では、時間が経つと約25℃および約40℃でモノマーレベルの著しい低下(例えば、凝集/多量体化を示す)および/または断片レベルの増大(例えば、タンパク質の分解を示す)があることを示した。また、SDS PAGE結果は、より高い温度では特に、他の製剤と比較して高いレベルの断片化のために、少なくともクエン酸および酢酸製剤のほとんどがIgG4抗KIR抗体の長期貯蔵のために不適切であり得ることを示した。より低いpHの製剤は、一般に、より高いレベルの断片化(タンパク質の分解)にも関連した。
【0076】
また、凍結融解条件にさらされ得る製剤の能力は、この実験および他の実験の一環として評価した。一般に、製剤は適切な凍結融解特性を示したが、製剤の少なくともいくつかでは、氷点下条件における貯蔵は最適でないと考えられた。製剤F6は、凍結融解ストレスによって、氷点下温度における長期貯蔵のためには不適切であると見なされた。スクロースおよび/または塩化ナトリウムなどの適切な浸透圧調節剤を包含させることは、抗体製剤の氷点下条件における貯蔵および/または凍結融解のために重要であり得る。一般に、約5℃において製剤を液体として提供、貯蔵および取り扱うことが推奨される。凍結が必要とされる場合には、比較的少量のリン酸ナトリウム(包含される場合)が使用され、浸透圧調節剤の濃度/選択は適切に調整されるべきである。
【0077】
全体として、この分析から得られた結果は、ポリソルベート80(Tween80)を含有するヒスチジン、トリス、およびリン酸系の製剤が様々な温度条件にわたって最良の特性を示すことを示唆する。表4に示されるように、IEF、HPLC、およびSDS PAGE分析によって最良であると見なされた製剤は、ヒスチジン、塩化ナトリウム、およびポリソルベート80を含有した。しかしながら、これらの特定の製剤は沈殿物を含有し、粒子形成(特に、より高い温度における)の観点から不適切であると考えられた。残りのデータから、ポリソルベート80(Tween80)と、浸透圧調節剤として塩化ナトリウムまたはスクロースのいずれかと、を含有するpH7のリン酸製剤は、最適な抗KIR IgG4製剤を提供し得ると決定された。
【0078】
実施例4 − 野生型抗KIR1 7F9および抗KIR1 7F9 S241Pの組換えKIR2DL3に対する結合の表面プラズモン共鳴試験
1−7F9 S241P変異形は、Quick−Change変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene))、ならびにプライマーP1:5’−cccccatgcccaccatgcccagcacctgag(配列番号4)およびP2:5’−ctcaggtgctgggcatggtgggcatggggg(配列番号5)を用いて、部位特異的変異誘発の適用によって発生させた。変異は、配列決定によって確認した。
【0079】
表面プラズモン共鳴試験は、「野生型」抗KIR1 7F9および抗KIR1 7F9 S241Pの固定化KIR2DL3への結合を検証および比較するために、Biacore 3000装置(スウェーデン国ウプサラのビアコアAB(Biacore AB))において実施した。
【0080】
組換えKIR2DL3の固定化は、製造業者(ビアコアAB)によって記載されるように、標準的なアミンカップリングを用いて、CM5センサーチップ(ビアコアAB)において行った。
【0081】
ランニング緩衝液として、そして全ての希釈のために、HBS−EP緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005%のポリソルベート20(v/v))を用いた。センサーチップの再生は、(15ul、流量30ul/分)10mMのグリシン−HCl pH1.8の短いパルスによって実施した。
【0082】
流速10ul/分、25℃で実験を実施した。Biaevaluation 4.1ソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0083】
抗KIR1 7F9 S241Pを発現したCHO細胞の6つの異なるバッチと、野生型抗KIR1 7F9を発現した1つのハイブリドーマバッチとを試験した。全てのサンプルは、HBS−EP中で100nMに希釈した。個々のサンプルに固定化KIR2DL3上を3分間通過させた後、10分間の解離段階を行った。
【0084】
全てのサンプルは、固定化KIR2DL3への結合を明示した。Langmuir 1:1結合モデルを用いて個々のサンプルのオフレート(off−rate)を決定した。全てのサンプルは、ほぼ同一のオフレートを明示した(表7)。
【0085】
【表7】
【0086】
同一の結合パターンおよびオフレートに基づいて、これらのデータは、KIR2DL3への結合に関して、野生型抗KIR1 7F9と、抗KIR1 7F9 S241Pとの間に差異を示さない。
【0087】
実施例5 − S241P 1−F79における半抗体形成の低減
1−F79の重鎖配列中のS241P変異の導入によって半抗体の形成が低減されたかどうかを評価するために、以下の実験を実施した。
【0088】
MabSelect
TMSuReタンパク質Aカラムにおいて、組換え発現S241 1−F79 IgG4変異形を精製した。添加した後、10カラム容積のPBS緩衝液で媒体カラムを洗浄し、100mMのグリシン、100mMのNaCl緩衝液pH3.0を用いて溶出させ後、HighTrap
TM脱塩カラムを用いて、PBS緩衝液への緩衝液交換を行った。全ての操作は、GEヘルスケア・アマシャム・バイオサイエンシーズAB(GE Healtcare Amersham Biosciences AB)からのAktaxpressシステムによって制御した。
【0089】
抗体の不均一性および半抗体の含量の推定は、フォルラー(Forrer)、Analytical.Biochemistry 334.1(2004年):81およびワシーリエワ(Vasilyeva)、Electrophoresis 25.21−22(2004年):3890に記載される方法を用いて、Agilent 2100バイオアナライザーによって分析した。ジスルフィド結合を安定にするためにN−エチルマレイミドを添加して、非還元条件下でサンプルを調製した。
【0090】
発現した抗Kir1−7F9 S241P変異体は、タンパク質Aを用いて精製し、PBS緩衝液中に脱塩した(
図4)。
図4において、タンパク質Aから溶出した材料は、ピークスタート(保持(「R.」)容積−14mL)およびピークエンド(R.容積−12mL)注釈が付けられており、脱塩カラムに注入する前にループ内に貯蔵した。脱塩の後に画分を収集し、A2およびA3の注釈を付けた画分を貯蔵してさらなる分析のために使用した。
【0091】
精製に続いて、上記のフォルラーおよびワシーリエワによって既に記載された方法を用いて、組成物中に存在する半抗体の量を分析した。半抗体の分析は、半抗体の形成がS241P変異によって抑制されることを明示した(
図5および表8(以下)を参照)。
図5は、ハイブリドーマ細胞において発現される抗KIR(1−7F9)(左側)パネルおよびCHOK1細胞において発現される抗KIR(1−7F9)右側パネルの分析からの電気泳動図および積分表を示す。表8は、CHOK1細胞において発現される野生型(WT)1−F79およびS241P抗KIR(1−F79)の両方について検出された半抗体の形成量を反映する。
【0092】
【表8】
【0093】
これらの結果は、抗KIR(1−7F9)重鎖におけるSer−241のプロリン置換が、著しく少ない「半抗体」副産物に関連する抗KIR IgG4抗体産物を生じることを明示する。
【0094】
実施例6 − KIR遺伝子導入マウスにおけるインビボ試験に基づいた抗KIR(1−7F9)のヒトPK/PDの予測
この実施例は、ヒトの用量試験において抗KIR(1−7F9)の開始用量の選択のための薬物動態学的(PK)/薬力学的(PD)に基づいた理論的根拠を説明しており、検出可能な飽和度(>20%)を生じるが、最大飽和時のヒトにおけるKIR受容体の完全な飽和度(<95%)を生じないであろう用量を予測する。
【0095】
具体的には、野生型およびKIR遺伝子導入マウスにおける抗KIR(1−7F9)のPK特性を捉えるために、PKモデルを開発した。PKモデルに基づいて、KIR遺伝子導入マウスにおけるKIR占有率と血漿濃度との関係のためのPK/PDモデルを確立した。次に、ヒトにおける抗KIR(1−7F9)のPKプロファイルを予測およびシミュレートし、マウスPK/PDモデルを予測ヒトPKプロファイルと組み合わせることによってヒトにおけるKIR占有率のためのPK/PDモデルを考案した。
【0096】
材料および方法
データソース。KIR遺伝子導入マウスにおけるPK/PDモデルは、単一用量として静脈内投与された様々な用量レベルの抗KIR(1−7F9)についてインビボのKIR受容体の飽和度と血漿濃度との関係が決定された試験からのデータに基づいた。0.0004mg/kg〜4mg/kgの用量範囲を用いた。3の異なる系統のマウスを用いた。野生型B6(C57BL/6)マウスはKIR受容体を発現せず、2つのKIR遺伝子導入マウス系統において可能性のある標的媒介性のクリアランスの大きさを評価するための基準として使用した。ヒトで見られるパターンと同様にNK細胞およびT細胞のサブセットにおいてヒトKIR2DL2受容体を発現するマウス系統は、KIR遺伝子導入II(KIR−tgII)と命名した。このモデルでは、KIRの発現レベルは、正常なヒトNK細胞におけるKIRよりもわずかに低い。標的媒介性のクリアランスのために利用可能なKIR受容体の総数の観点から、最悪の場合のモデルとして、KIR遺伝子導入I(KIR−tgI)と命名したマウス系統を選択した。KIR−tgIマウスはKIR受容体を激しく過剰発現し、ヒトで見られるパターンを反映することは期待されない。
【0097】
単一の静脈内用量の抗KIR(1−7F9)に続いて、マウスのグループ(n=3)を屠殺し、7日間にわたって種々の時点で、蛍光標識細胞分取(FACS)によってKIR受容体の飽和度を決定するために血液および脾臓を収集した。各マウスに対して、屠殺の前の1つの時点、および飽和度を決定する時点で有効なELISA法を用いて抗KIR(1−7F9)の濃度を決定した。受容体の占有率は、遊離KIRを検出するための直接接合した抗KIR(1−7F9)と、結合した抗KIR(1−7F9)を測定するための抗IgG4抗体との両方を用いて、FACSによって測定した。このようにして、注入されるmAbの用量を増大させて(これは、結合抗KIR(1−7F9)の量の増大に相関する)、遊離KIRの消失を追跡することが可能であった。
【0098】
モデリングにおいて、受容体の内部移行は無視し、NK細胞の表面に存在する受容体の飽和度だけを考慮に入れた。標識化NK細胞の蛍光強度中央値(MFI)の測定を用いて、受容体の占有率および他の特徴を評価した。ヒトPKパラメータの予測は、PK−PD試験からのマウスPKデータ、以前の試験からのサルPKデータ、および様々な文献源からのヒトIgG PKパラメータに基づいた。
【0099】
アッセイ。有効なELISAに基づいたアッセイを用いてマウスおよびサルの血漿濃度を査定した。定量限界は、マウス血漿アッセイでは2.5ng/ml、そしてサル血漿アッセイでは0.5ng/mlであった。
【0100】
KIR遺伝子導入マウスにおいて、抗KIR(1−7F9)による受容体の占有率は、遊離KIRを検出するための直接接合した抗KIR(1−7F9)と、結合した抗KIR(1−7F9)を測定するための抗IgG4抗体との両方を用いて、FACSによって測定した。このようにして、注入される抗体の用量を増大させて(これは、結合抗KIR(1−7F9)の量の増大に相関する)、遊離KIRの消失を追跡することが可能であった。
【0101】
KIR受容体の%飽和度を計算するために、2つの測定からの合計の蛍光強度中央値(MFI)を以下のように用いた。
【0102】
ソフトウェア。最終データファイル作成のために以下のソフトウェアを使用した:
S−plus、バージョン6.1、米国ワシントン州シアトルのインサイトフル・コーポレーション(Insightful Corporation)。
【0103】
非直線性の混合効果(mixed−effects)モデリングのために以下のソフトウェアを使用した:
Compaq Visual Fortran、バージョン6.6a、米国カリフォルニア州パロアルトのヒューレット−パッカード・カンパニー(Hewlett−Packard Company)、
NONMEM V,バージョン1.1、米国メリーランド州ハノーバーのGloboMax、
Visual−NM、バージョン5、仏国モンペリエのRDPP。
【0104】
ソフトウェアの設置/検証は以下の方法で実行した:
NONMEMの機能性は、現在の部門別手順(departmental procedure)を用いて検証した。
他のソフトウェアは、製造業者によって推奨されるように設置した。
【0105】
データファイル
フォーマット作成手順。PKおよびPDデータをエクセルファイルとして初めに作成した。続いて、S−PLUSを用いて、NONMEMおよびNM−TRANによる使用のためにPKおよびPDデータを結合および作成した。
【0106】
PKモデルの作成のために最終データファイルを用いた。個々のPK推定値を有するPKモデルからの出力は、無関係のB6マウスデータを排除し、ヒトにおける各用量レベルの集団平均をシミュレートする目的のためにシミュレーション記録を追加した後、PDモデルのために用いた。
【0107】
欠側値およびLOQよりも低い値の取扱い。KIR−tgIIマウスでは、3μgグループの2匹のマウスについてのFACS分析は失敗し、データはデータファイルに見られなかった。PKデータ:BLQ値を0に設定し、モデルの構築から排除したが、PKモデルを用いて血漿濃度を予測するためにその時点はデータファイル内に保持した。
【0108】
偶然の異常値の取扱い。KIR−tgIIマウスの0.1μgグループにおける血漿濃度は偶然の異常値であると考え、PKモデルのパラメータ推定中に除外した。予測される血漿濃度を有するグループはPK−PDモデル中に含めた。
【0109】
モデルの開発に続いて、重み付き残差の数値が4未満でなければならないという判断基準に基づいて、4つの異常値を同定および除去した。
【0110】
点検手順。マウスPK/PDモデルについては、全ての個体の%結合および体重ならびに3個体の血漿濃度に関して、NONMEMのために使用される最終データファイルを生データエクセルファイルに対して点検した。サルPKモデルについては、データファイル内の記録数を、生データにおける記録数に対して点検した。
【0111】
モデルの開発
モデルにおいて示されるように、NONMEMの一次条件付き(FOCE)推定法は、INTERACTIONの有無に関係なく、モデルの開発のために使用した。中間モデル評価およびその間の識別は、目的関数値および標準グラフィック評価法に基づいた。
【0112】
目的関数値に関して、この値の変化はχ
2分散される(入れ子モデルについて)と考えられ、モデルを拡張するための判断基準は、それに応じて定義および使用した。
【0113】
構造モデルおよび誤差モデル。全ての動物のPKモデルに対して、個体間の変動性(IIV)について指数関数的誤差モデルを調べた。PKモデル(応答として濃度を用いる)のために、比例的および結合した誤差モデルを個体内の変動性について調べた。PDモデル(応答として%結合を用いる)のためには、追加的誤差モデルを使用した。
【0114】
シミュレートしたヒトPKプロファイルについては、個体内または個体間の変動性は考慮に入れなかった。
【0115】
点検手順。最終モデル(すなわち、NONMEM制御ストリーム)を十分に校正して正確さを保証した。
【0116】
共変動分析。マウスにおけるPKモデルに対して、全てのPKパラメータの共変動として体重(BW)を調べた。
【0117】
評価手順。最終モデルの評価は、標準グラフィック評価法によって実施した。
【0118】
結果および考察
1)野生型B6のみに対して、2)B6およびKIR−tgIIマウスの組み合わせに対して、および3)KIR−tgIマウスに対して、マウス系統における3つのPKモデルを開発した。
【0119】
野生型B6の分析。野生型B6からのPKデータの分析から、高投与グループと低投与グループの間の差異を説明するために非直線性が必要とされることが分かった。選択モデルは、分布容積のみが非直線性であり、クリアランスはそうでないマーガー(Mager)&ジャスコ(Jusko)の標的媒介性の薬物動態(TMDD)モデルの特別な場合(マーガーおよびジャスコ、J Pharmacokinet Pharmacodyn 2001年、28(6):507−532頁)を使用した(
図6の概略図を参照)。あるいは、2コンパートメントのミカエリス・メンテンモデル(すなわち、飽和性クリアランスを有する)はPKプロファイルを説明し得る。従って、PKデータにおいて観察される非直線性の基礎となる生理学的メカニズムに関して決定的であることが不可能になる。TMDDモデルを用いることによって、マウスモデルにおけるクリアランスに対して妥当な推定値を得ることができ、これはミカエリス−メンテンモデルでは不可能であろう。従って、TMDDモデルを最終モデルとして採用した。
【0120】
B6およびKIR−tgIIマウスの共同分析。野生型B6およびKIR−tgIIマウスの共同分析のために、TMDDモデルは、データにおいて観察される非直線性を説明するために好ましいモデルであることが再度分かった。PKが2つのマウス系統において異なると結論され得るかどうかを調べるために、2つの系統に対して同一のパラメータを有するか、あるいは2つの系統において異なるパラメータを有するデータを説明することを試みた。視覚的なモデルの適合性はこれらの2つの方法により事実上同一であったので、2つの系統のPKに差異は見られないと結論付けた。しかしながら、目的関数値(OFV)の著しい差異が見られたことに注意されたい(ΔOFV=28.4)。
【0121】
B6/KIR−tgIIマウスにおける最終モデルのための評価プロットは、利用可能なデータの量を考慮して、モデルの質が完全に容認できることを示した(
図7および8)。より具体的には、個々のレベルおよび集団平均レベルの両方において観察される濃度と予測される濃度の一致は完全に容認できた。最終モデルのパラメータ推定値は、B6/KIR−tgIIおよびKIR−tgIマウスについてそれぞれ表1および表2に示される。
【0122】
KIR−tgI遺伝子導入マウスの分析。KIR−tgI遺伝子導入マウスの薬物動態は、2つの他の系統とは著しく異なることが分かった。非直線性ははるかに大きく、データはTMDDモデルに適合しなかったが、飽和性排除のためのミカエリス−メンテンモデルは成功であった。平均予測PKプロファイルは、
図9のKIR−TGI遺伝子導入マウスの平均実測値と比較される。
【0123】
【表9】
【0124】
【表10】
【0125】
抗KIR(1−7F9)のためのヒトPKデータは利用できなかったが、抗KIR(1−7F9)は完全にヒトIgG4であるので、抗体はヒトの内在性IgG4と同様の薬物動態特性を示すことが予期された。標的媒介性のクリアランスの影響を受けにくいIgGのPKプロファイルは、通常、
図10に示されるように2コンパートメントモデルによって説明されることが十分に容認された(ゲティ(Ghetie)およびウォード(Ward)、Immunol Res 2002年、25:97−9113頁を参照)。
【0126】
抗KIR(1−7F9)のための最もありそうなヒトPKパラメータを予測するために、以下の3つのセクションに記載されるように3つの異なる方法を比較した。
【0127】
(1)ヒトIgGの典型的なパラメータ
内在性IgGおよびモノクローナル抗体のPKについての文献には大量の情報が存在する。文献調査を行って、ヒトのIgGのための2コンパートメントモデルを定義するパラメータ(CL、V1、V2およびQ)の典型的な値を同定した。PKパラメータは、ヒトにおけるヒトIgGの一般的なPK特徴と一致しなければならない。初期中心容積はほぼ血漿量(すなわち、3リットル)であり、分布容積は中心容積と同様であるかあるいはわずかに大きく、平均末端半減期は20〜23日である(ゲティおよびウォード、Immunol Res 2002年、25:97−9113頁、モレル(Morell)ら、J Clin Invest 1970年、49:673−80頁、ロスコス(Roskos)ら、Drug Dev Res 2004年、61:108−20頁、ロボ(Lobo)ら、J Pharm Sci 2004年、93:2645−68頁)。
【0128】
これらの一般的な特徴を、様々な文献源からの個々のヒトおよびヒト化抗体についての文献データと組み合わせた。一般に、実証された標的媒介性のクリアランスまたは内在性IgGと一致しないPK特性を有するmAbは排除されている。引用されるクリアランス値はRESシステムを介する一般的な用量依存性のクリアランスメカニズムを反映することが予想される。
【0129】
予想通りに、ほとんどのmAbは、血漿量(約40ml/kg)に近似される中心容積を有し、末梢の分布容積はこれと同様であるかまたはわずかに大きい。続いてヒトPKのシミュレーションのために使用されるPKパラメータは、表10に示されている。これらは、文献調査中に見られる一般的な特徴および特異的なパラメータの両方の反映として選択された。これらのパラメータを使用する末端半減期は20日である。
【0130】
【表11】
【0131】
最小データで支持されるパラメータは、コンパートメント間クリアランスQであり、このために、標的媒介性のクリアランスの有無に関係なくヒト化およびヒト抗体からのデータを使用することが必要であった。中心容積および末梢容積間の移動のための微小定数が示される場合、Qは、V
1×k
12(コンパートメント1と2の間の移動のための速度定数)として計算した。1ml/h/kgのコンパートメント間クリアランスおよび40ml/kgの中心容積は、1〜3日の分布相と一致し、mAbに対して観察されることが多い。
【0132】
ヒトにおいてIgG血漿の半減期を調節する重要なメカニズムの1つは、ヒトFcRn(Brambell)受容体への結合であり(ロボら、J Pharm Sci 2004年93:2645−68)、そして、抗KIR(1−7F9)は、内在性IgG4抗体と同様のFcRn受容体に対する親和性を有することが予想される。
【0133】
最も知られているヒトまたはヒト化モノクローナル抗体は、IgG1またはIgG2サブタイプを有する。抗KIR(1−7F9)はIgG4であるが、内在性IgGサブクラスの比較によって査定されるように、PKパラメータはIgG1および−2と同様であることが予想される(モレルら、J Clin Invest 1970年、49:673−80頁)。従って、抗KIR(1−7F9)は、ヒトにおいて、例えば、CP−675206、アダリムマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、ペルツズマブおよびABX−IL8に酷似したPK特性を示すことが予測される。
【0134】
サルPKパラメータに関して、以前のNCA試験は、カニクイザルにおける抗KIR(1−7F9)のAUCが、調査範囲0.1〜1mg/kgにおいて用量直線性であることを示した。
【0135】
集団PKモデルのために、2コンパートメントモデルは、静脈内投与の後の血漿濃度の二重指数関数的(bi−exponential)な低下を適切に説明することが分かった。4つのパラメータのいずれかにおける個体間の変動は有意ではない(p−レベル<0.01において)。これは恐らく高い個体内変動のためであり、実際の血漿濃度を時間に対してプロットすると明らかであった。モデルの残留誤差は許容可能であった(29%)。
【0136】
【表12】
【0137】
表11に示されるように、NCAおよび集団PKモデルは、一貫して、抗KIR(1−7F9)のクリアランスが、サルにおいて他のヒト抗体について報告されたクリアランスと比較していくらか高い(2〜3倍)ことを示す。しかしながら、分布容積も2〜3倍高いので、末端半減期(t1/2)は8〜11日であった(これは、サルに投与されたヒト抗体についての予想に従う)(ハルパーン(Halpern)ら、Toxicol Sci 2006年、91(2):586−599頁、ゴブル(Gobburu)ら、J Pharmacol Exp Ther 1998年、286(2):925−930頁)。暴露は用量に比例することが観察され、クリアランスに重要な飽和メカニズムの表示は観察されなかった。
【0138】
いくつかの例はサルPKパラメータを直接ヒトに転移可能であり得ると示しているが、例えばFcRn親和性における種差はクリアランスの種差を生じ得るので、これは注意して行わなければならない(ロボら、J Pharm Sci 2004年、93:2645−68頁)。
【0139】
相対成長スケーリング。2つの種(すなわち、マウスおよびサル)(0.025および2.5kgの体重)において集団PKモデル(上記を参照)から得られた4つの構造PKパラメータを用いて、ヒト(70kg)に対する相対成長スケーリングを実施した。問題となっているPKパラメータを体重(BW)に対してプロットした。得られた直線は、以下の式のAおよびBを決定する(ロボら、J Pharm Sci 2004年、93:2645−68頁、タブリージ(Tabrizi)ら、「乾癬およびメラノーマ患者における可溶性および膜結合型の抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体の薬物動態および免疫原性プロファイル(Pharmacokinetics and immunogenicity profiles for fully human monoclonal antibodies against soluble and membrane bound antigens in patients with psoriasis and melanoma)」Poster on ASCPT 2004年)。
クリアランス=A
*(体重)
B
【0140】
4つ全てのパラメータ(CL、V1、V2、およびQ)を同様の方法で計算した。分布容積のスケーリングのためには、マウスモデルからのV1およびV2のみを考慮した。mAbのヒトPK(直線的であると考えられる)について、また非常に低濃度についてはあまり実証されていないので、例えば非特異的な結合に関連する第3の飽和性コンパートメントは無視した。
【0141】
【表13】
【0142】
相対成長スケーリングを用いるmAbのためのPKの種間外挿の例はほんの少ししか存在しない(タブリージら、上記、リヒター(Richter)ら、Drug Metab Dispos 1999年、27:21−5頁、リン(Lin)ら、J Pharmacol Exp Ther 1999年、288(1):371−378頁)。一般に、このアプローチを用いるヒトPKの予測はうまくいくと思われるが、クリアランスの過剰予測が存在すると思われる(タブリージら、上記、リンら、上記)。ABX−IL8の場合のように、抗KIR(1−7F9)の相対成長スケーリングのために2種だけを使用したが、正式には、2点を結ぶ直線についての統計的根拠が乏しい。しかしながら、関係からの潜在的な異常値はパラメータの変動性を反映するのではなく、排除メカニズム、特にFcRn受容体に対する親和性の種差を反映し得るので、より多くの種を含むことは必ずしも予測を改善しないであろう。マウスおよびカニクイザルFcRnのための抗KIR(1−7F9)の親和性は不明であり、従って、相対成長スケーリングは注意して使用されなければならない(ロボら、J Pharm Sci2004年、93:2645−68頁)。
【0143】
結論として、ヒトPKの予測において、抗KIR(1−7F9)は完全にヒトIgGなので、抗体はヒトの内在性IgGと同様の薬物動態特性を示し得ることが予想される。相対成長スケーリングおよびサルのクリアランスに基づいて、ヒトのクリアランスは、0.46〜0.64ml/h/kgであると推定され、ヒトにおけるヒトIgGのクリアランスの典型的な値(0.12ml/h/kg)と比較して高い。このアプローチは最低のクリアランス、従ってヒトにおける最高の潜在的暴露を推定したので、ヒトPK−PDモデルの開発のために文献の予測を用いた。
【0144】
KIR−tgIIマウスにおけるKIR受容体の飽和のためのPK/PDモデル
PD応答データ(MFI)の定義。このアプローチのための本質的な仮定は、蛍光強度中央値(MFI)データによって%結合の妥当な値を計算/定義できることである。スクリーニング時および測定時の両方で、対照動物および処置動物に対していくつかの異なるMFI測定を使用した。これらには:
対照動物に対するMFI
MFI
.free.control : 遊離受容体に関連するMFI(PBMC)、
MFI
.max.bound.control : 1−7F9と共にインキュベートすることによる、1−7F9に結合した受容体に関連する最大MFI(PBMC)、
MFI
.free.backgr : 遊離受容体を査定する場合の背景MFI、
MFI
.bound.backgr : 結合受容体を査定する場合の背景MFI、
スクリーニング時の処置動物に対するMFI
MFI
.free.screen : 遊離受容体に関連するMFI(PBMC)(一部の動物についてだけ査定)
実験の時点における処置動物に対するMFI
MFI
.free : 遊離受容体に関連するMFI(PBMC)
MFI
.bound : 結合受容体に関連するMFI(PBMC)
MFI.
bound.spleen : 結合受容体に関連するMFI(脾臓からの細胞)(一部の動物についてだけ査定)
MFI
max.bound.spleen : 結合受容体に関連するMFI(脾臓からの細胞)(一部の動物についてだけ査定)
が含まれる。
【0145】
KIR受容体の%飽和度の計算。対照、背景、および脾臓における最大結合を用いて、3つの正規化MFI値を処置動物に対して計算することができる。
【数1】
【0146】
MFIが関連する受容体の数と共に直線的に増大するという仮定の下で、これらの正規化MFI値を用いて、%結合および%遊離受容体を計算することができる。MFI.free.normおよびMFI.bound.normに対する個々のMFI値において高い変動性が見られた。この変動がKIR受容体の数における個体間の変動によるものであり、MFI.free.normおよびMFI.bound.normが両方ともKIR受容体の数に比例するという仮定の下で%結合は、
【数2】
のように計算することができ、これはPK/PDモデルのために選択される方法であった。
【0147】
一部の動物のために、追加的なサンプルを採取して、MFI.max.bound.spleenおよびMFI.bound.spleenを評価し、動物をその最大レベルで使用して正規化することを可能した。これらの動物については、MFI.bound.norm.owncontrolを使用して%結合受容体を計算することが可能であった。このアプローチは、15分サンプルを除いて、良好な一致を提供することが分かった。抗KIR(1−7F9)は血液に到達するよりも後で脾臓に到達するので、この差異はPBMCと脾臓細胞との間の差異によるものであろうと考えられる。
【0148】
%結合のモデリング。KIR−tgIIマウスにおける抗KIR(1−7F9)の血漿濃度と、パーセント受容体飽和度との間の関係を説明するためにPK/PDモデルを開発した。飽和度は全ての時点で血漿濃度と平衡にあるわけではなかったので、受容体におけるオンレートおよびオフレート(k
onおよびk
off)を血漿濃度Cpの時間による変化と連結する動的な結合式を使用することが必要であった。結合受容体Bの総数を説明する式は:
【数3】
であり、同等に、パーセント結合%Bを説明する式:
【数4】
も見出した。
【0149】
解離定数Kdは、Kd=k
off/k
onによってモデルで得られるkonおよびkoffの値から計算した。
【0150】
それぞれの時点における血漿濃度に対するパーセント結合KIR受容体のプロットを調べると、24時間前の時点では、受容体を飽和させるためにその後の時点よりも少ない抗KIR(1−7F9)が必要とされるようであった。見かけの親和性の低下の種々の経験的な実現は一貫した結果を明示した。
【0151】
非常に低い用量(≦0.0004mg/kg以下)の場合、モデル予測によって抗KIR(1−7F9)の血漿濃度はほぼ定量限界以下であると示されているので、これらは測定しなかった。モデルにおいて測定された%結合を包含するために、PK部分をより高い用量から外挿した。この外挿の結果として、最高の初期親和性Kd1の正確な値はいくらか不確かであり、引き続いて、最終モデルはKd1〜0.004μg/mlを使用した。親和性の低下は24〜48時間後に見られ、後の時点ではKd2〜0.1μg/mlであり、血漿濃度は測定可能な範囲内であった。測定した飽和度とモデル化された飽和度との間の良好な一致は、最終アプローチによって得られるであろう。この最終モデルは、
【数5】
で表すことができ、パラメータ値は表13に与えられ、k
offは一定に保持され、k
onはk
on=k
off/Kdで計算される。T50は、Kdの50%の変化が生じたときである。
【0152】
抗KIR(1−7F9)は2つの結合部位を有するので、観察される親和性の低下は、2価および1価の結合様式またはその混合物を示すと解釈されている。いくつかの実験的設定において、抗KIR(1−7F9)の2つの異なるKd値が観察された。インビボでの2価から1価への結合様式の変化についての可能性のある説明は、膜内の受容体の内部移行または他の再編成によるKIR受容体の表面密度の低減であり、個々の受容体間により大きいスペーシングをもたらし得る。抗体の両方の結合部位の同時関与の可能性は、表面密度および膜結合型標的抗原の近接に強く依存するので、これは強力な2価の結合を低減し得る(ラルソン(Larsson)ら、Molecular Immunology 26、735−739頁)。
【0153】
【表14】
【0154】
マウスPK/PDモデルのヒトへの外挿。NONMEMでは、基本的には、入力のPD構造を保持しながらNONMEM入力ファイル中のマウスPKパラメータを表12に記載されるヒトPKパラメータと交換することによって、ヒトPK/PDモデルを実行した(表13)。この様式を用いて、様々な用量および13週までの時点をシミュレートした。
【0155】
シミュレーションでは、構造パラメータの集団平均だけを考慮した。すなわち、PKまたはPDパラメータの個体間または個体内の変動は包含しなかった。
【0156】
KIR−tgIIマウスおよびヒトからの様々な細胞型のインビトロの結合曲線は
図11に示される。これらの結果は、血漿濃度と飽和度の関係が、ヒトおよびKIR遺伝子導入マウスに対してインビボで同程度であることを支持する。従って、ヒトの血漿濃度の時間経過はマウスとは異なり得るが、PK/PDモデルを使用して、ヒトの所与の血漿濃度に対して、そして投与後の所与の時点で飽和度を予想することができる。
【0157】
親和性の同様のインビトロ−インビボの比較は、チンパンジーおよびヒトにおいて抗CD11a mAb hu1124を比較することによってうまく行われた(バウアー(Bauer)ら、J Pharmacokinet Biopharm 1999年、27:397−420頁)。
【0158】
最終モデルの適用、最大飽和度の予測および飽和の持続時間。ヒトの抗KIR(1−7F9)のための最終予測PK/PDモデルを用いて、ヒトの抗KIR(1−7F9)の種々の用量について時間に対するパーセント受容体占有率のシミュレーションを実施し、最大KIR占有率および占有の持続時間を低下させた(表14)。潜在的な活性化を過小推定しないために、最大の潜在的活性化を予想するようにモデル推定値を選択した。すなわち、モデルは、1)PKモデルから予測される最高の潜在的暴露、2)PKと飽和度の間の高親和性の関係(低Kd)、および3)NK細胞の最大の潜在的活性化の尺度としてのパーセントKIR占有率に基づく。
【0159】
ヒトにおいて測定可能であるが完全な飽和ではない抗KIR(1−7F9)の検出可能な血漿濃度を生じることが予測される用量は0.0003mg/kgであると特定し、FHD試験における開始用量を提示した。
【0160】
【表15】
【0161】
従って、シミュレーションモデルは、ヒトにける抗KIR(1−7F9)の用量、得られる血漿濃度プロファイルおよびKIR受容体占有率の関係を予想するように開発された。このモデルは、ヒトのIgGのための典型的なPKモデルを、血漿濃度とKIR受容体占有率との関係のためのモデルと組み合わせることによって構築した。後者のモデルは、KIR−tgIIマウス試験からのデータを用いて開発した。
【0162】
モデルの開発中、最大の潜在的な占有を予想することを目的として、慎重な原理を用いた。このモデルに基づいて、0.0003mg/kgの用量は検出可能(>20%)であるが完全ではない飽和度(<95%)を生じ得ることが予測された。用量は、Cmaxで約60%までのKIR占有率をもたらすことが予期される。
【0163】
実施例7 − 臨床AML試験
単一用量の増大試験は、導入および強化化学療法後の最初の完全寛解状態にあり、骨髄移植に不適格な高齢のAML患者(60歳よりも高齢)において行われる。標準3+3設計が適用され、全計7つの用量レベルが探索されることが予定され、用量は0.0003mg/kg〜3mg/kgの範囲である。投与に続いて、KIR占有がもはや検出可能でなくなるまで、患者は安全性、PKおよびKIR占有についてモニターされる。
【0164】
延長試験も行われる。用量増大試験が完了し、まだ完全寛解状態にあるAML患者は延長試験に参加することができ、患者は月1回ベースで6回まで投与され得る。患者は前回の試験で受けた用量と同じ用量が投与される。
【0165】
患者、材料および方法
両方の試験において、その最初の完全寛解(CR)状態にあり、移植に不適格な高齢のAML患者(60歳よりも高齢)は、試験に適格であった。用量増量試験におけるスクリーニングにおいて、化学療法の最後の用量からの時間は、少なくとも30日であり、120日を超えない。他の適格性の判断基準としては、NK細胞におけるKIR2DL1および2/3の発現、ECOG状態0〜2、および前回の治療からの全ての毒性からの回復があった(しかし、これらに限定されなかった)。延長試験につては、許容可能な安全性プロファイルと共に用量増大試験が完了することが追加の適格性判断基準であった。
【0166】
試験設計
用量増大試験は、多施設オープンラベルの単一用量−増大の安全性および耐容性試験である。7つの用量レベルが探索されることが予定され、0.0003mg/kg、0.003mg/kg、0.015mg/kg、0.075mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgである。一般的な(3+3)設計がこの試験のために選択される。それぞれの患者は1つの用量に割り当てられ、患者NK細胞において検出可能なKIR占有が存在しなくなるまで、安全性、薬物動態、および薬力学についてモニターされる。安全性、PKおよびKIR占有率は進行中に分析される。各用量グループから投与後の最初の4週間の間に得られるデータは、通常、用量増大の決定の基礎を成す。
【0167】
延長試験は、繰り返し投与、多施設、オープンラベル、安全性および耐容性として設計される。個々の患者に与えられる用量は、単一用量試験で投与される患者と同じである。患者は4週間の間隔で6回の投与を受けることができる。すなわち、6回の投与サイクルは最大6ヶ月の期間を有する。各投与サイクルは、投与来診および安全性モニター来診からなる。最後の投与の後、患者NK細胞において検出可能なKIR占有が存在しなくなるまで、患者は安全性についてモニターされる。この安全性追跡期間の持続はおそらく投与される用量に依存し、最後の投与の最大24週間後であることが予期される。
【0168】
抗KIR(1−7F9)投与に対する安全性(すなわち、観察される毒性)は、米国国立癌研究所の有害事象の共通用語規準(US National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events、CTCAE)バージョン3.0を用いて査定される。薬物動態学的なエンドポイント、KIR占有、NK細胞およびT細胞の活性化のマーカー、WT−1腫瘍マーカー、無進行生存および全生存も評価される。
【0169】
結果
報告される有害事象(AE)および実験室パラメータに基づいて、抗KIR(1−7F9)は、これまで試験した用量(0.0003mg/kg、0.003mg/kg、0.015mg/kg)において十分に耐容性であった。試験で報告されるSAEはこれまで全て試験薬物に関係ないまたは関係しそうにないとみなされている。投与後に生じる重症度グレード1の軽度の皮膚反応(背側の紅斑、そう痒および皮膚発疹)は、3人の患者において報告されている。これらの反応は重篤でなく、おそらく試験薬物に関係すると評価され、患者はほとんど数日以内に回復した。
【0170】
実施例8 − 臨床的な多発性骨髄腫試験
用量増大試験は、再発性または難治性の多発性骨髄腫(MMy)患者においても行われ、患者は、月1回ベースで4回投与され得る。(すなわち、約4週間の投与間隔)。適格な患者は18歳以上である。
【0171】
標準3+3設計が適用され、全計7つの用量レベルが探索されることが予定され、用量は、0.0003mg/kg〜3mg/kg(0.0003mg/kg、0.003mg/kg、0.015mg/kg、0.075mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kgおよび3.0mg/kg)の範囲である。投与に続いて、KIR占有がもはや検出可能でなくなるまで、患者は安全性、PKおよびKIR占有についてモニターされる。
【0172】
実施例9 − 患者における薬物動態
方法
抗KIR(1−7F9)の血漿濃度は、以下に簡単に説明されるようにELISAによって決定される。
【0173】
プレートをKIR2DL3コーティング液(100μl/ウェル)で被覆し、約+4℃で一晩インキュベートする。次に、自動プレート洗浄機を用いて、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄する(400μl/ウェル)。遮断緩衝液を添加し(200μl/ウェル)、室温で約2時間、プレートをプレートシェーカー上でインキュベートする。この後、もう一度プレートを洗浄緩衝液(400μl/ウェル)で3回洗浄する。
【0174】
標準物、品質対照およびサンプルをプレートに添加してから(100μl/ウェル)、室温で約2時間、プレートシェーカー上でインキュベーションを行う。マウス抗ヒトIgG4:ペルオキシダーゼ作用液(100μl/ウェル)を添加する前に、プレートをさらに3回洗浄する(上記のように)。次に、室温で約2時間、プレートをプレートシェーカー上でもう一度インキュベートし、その後もう一度洗浄する。
【0175】
TMBをプレートに添加し(100μl/ウェル)、次に、室温で約30分間、プレートシェーカー上でインキュベートする。停止溶液(50μl/ウェル)の添加により酵素反応を終結する。450nm(基準フィルタ650nm)で吸光度を読み取る。
【0176】
この試験の定量の下限は5.000ng/mLであり、この試験の定量の上限は110.0ng/mLである。
【0177】
結果
これまで、用量増大試験において9人のAML患者に、0.0003、0.003および0.015mg/kgの3つの用量レベルの抗KIR mAbが静脈内投与されたが、4人のMMy患者には、0.0003mg/kgの抗KIRが投与された。AML患者において今まで得られた血漿データから、3つの最低用量の間の暴露において用量の直線的な増大があると思われる(
図12)。MMy患者において観察される濃度は、AML患者のものと十分に適合する。0.015mg/kgの用量の後、測定可能な抗KIRの血漿濃度は、用量投与の後4週間まで検出された。これまで記録された最高の血漿暴露は、0.015mg/kgの用量の後、約400ng/mLに近づいた。
【0178】
実施例10 − KIR占有率アッセイ
このアッセイでは、受容体の占有は、4色蛍光分析によってヒト全血サンプルにおいて評価される。簡単に、遊離および結合KIR2D受容体レベルは、EDTA抗凝固剤処置された末梢血中のTおよびNKリンパ球において査定される。遊離部位アッセイは、KIR2D分子に結合するPE接合1−7F9で染色することによって、非結合KIR2Dを査定し得る。結合部位アッセイは、KIR2D受容体に結合した1−7F9を認識するPE接合マウス抗ヒトIgG4モノクローナル抗体で染色することによって、1−7F9により占有されたKIR2D受容体を査定し得る。遊離および結合アッセイは、1−7F9−PEまたは抗hIgG4−PEについてパーセント陽性染色および蛍光強度[MESF]の両方の評価を可能にし得る。以下の2つのアッセイにおいて以下の接合抗体の組み合わせが使用される:
遊離部位アッセイ:CD3/1−7F9/CD45/CD56
結合アッセイ:CD3/□hIgG4/CD45/CD56
【0179】
サンプルは、Becton Dickinson FACScaliburにおいて、Becton Dickinson Cellquestソフトウェアを用いて分析される。T細胞はCD45+CD3+リンパ球と定義され、NK細胞はCD45+CD3−CD56+細胞と定義される。
【0180】
実施例11 − PK/PDモデルのヒトへの翻訳
1−7F9による3つの進行中の臨床試験(実施例7および8を参照)からのデータを使用して、実施例6に記載される前臨床PK/PDモデルを、実施例9および10に記載されるように得られた薬物動態学的なKIR占有率のデータを用いて検証および更新した。
【0181】
実施例7および8に記載されるように、患者は0.0003、0.003または0.015mg/kg体重の用量で受けた。患者の一部は、4週間の間隔で同じ用量レベルの繰り返しの投与を受けたが、これらの低用量では占有率に対する影響は投与イベント間での持ち越しはほとんどないか限られているので、以下の計算のためにこれらの用量は非依存性の単一用量として処理された。
【0182】
占有率の計算
KIR占有率の計算のために、各患者は彼/彼女自身の対照としての役割を果たすので、前臨床PK/PDモデルで使用される複雑な式の使用は必要でなかった。同様に、検証によってこのアッセイはより頑強であることが示されたので、遊離KIR受容体の数を査定するアッセイだけを使用した。NK細胞の等価可溶性蛍光色素の分子(Molecules of Equivalent Soluble Fluorochrome、MESF)値(MESF)で表される標準化蛍光を計算のために使用した:
【数6】
【0183】
0よりも低い占有率の値は定義により0に設定した。アッセイにおける日々の変動を説明するために、有意なKIR占有率のためのカットオフを30%に設定した。
【0184】
データ分析
試験からのPKおよびPDデータに探索的分析を行い、1−7F9の血漿濃度に対してKIR占有率をプロットして、データの傾向を観察した。説明のために、簡単な1価の結合等温線(isoterm)をこれらのプロット上に重ね合わせた。前臨床モデルから、親和性(Kd)は特定の時間枠内で一定であると仮定することが妥当であると分かり、従って、それぞれの時間枠のKIR占有率は、式10:
【数7】
を用いて計算した。
【0185】
またこれは、結合が血漿濃度と瞬間的な平衡状態にあると仮定され得ることも暗示した。前臨床PK/PDモデルから、これは妥当な仮定であることが分かった。
【0186】
さらに、前臨床PK/PDモデルによって予測されるPKおよびPDパラメータのいくつかを、進行中の臨床試験の間中、実際の観察と比較した。
【0187】
集団PK
集団モデリングのために利用可能なPKデータを用いて、ヒトにおける1−7F9のための予備的なPKモデルを作成したが、PK/PDの関係は探索的分析に基づいた。
【0188】
ソフトウェア。最終データファイル作成のために以下のソフトウェアを使用した:
S−plus、バージョン6.1、米国ワシントン州シアトルのインサイトフル・コーポレーション。
【0189】
非直線性の混合効果モデリングのために以下のソフトウェアを使用した:
Compaq Visual Fortran、バージョン6.6a、米国カリフォルニア州パロアルトのヒューレット−パッカード・カンパニー、
NONMEM V,バージョン1.1、米国メリーランド州ハノーバーのGloboMax、
Visual−NM、バージョン5、仏国モンペリエのRDPP。
【0190】
ソフトウェアの設置/検証は以下の方法で実行した:
NONMEMの機能性は、現在の部門別手順(departmental procedure)を用いて検証した。
他のソフトウェアは、製造業者によって推奨されるように設置した。
【0191】
モデルの開発:モデル開発のために、相互作用を有するNONMEMの一次条件付き(FOCE)推定法を使用した。中間モデルの評価およびその間の識別は、目的関数値および標準グラフィック評価法に基づいた。
【0192】
目的関数値に関して、この値の変化はχ
2分散される(入れ子モデルについて)と考えられ、モデルを拡張するための判断基準は、それに応じて定義および使用した。
【0193】
LOQよりも低い値の取扱い:
LOQよりも低い値はモデリングから排除したが、その時点は予測値を得るためにデータファイル内に保持した。
【0194】
構造モデルおよび誤差モデル。比例的および結合した誤差モデルを個体内の変動性について調べた。
【0195】
点検手順。最終モデル(すなわち、NONMEM制御ストリーム)を十分に校正して正確さを保証した。
【0196】
共変動分析。患者の数が少ないために共変動分析は実施しなかった。
【0197】
評価手順。最終モデルの評価は、標準グラフィック評価法によって実施した。
【0198】
構造モデル:標準1および2コンパートメントモデルを調べた。さらに、飽和性のクリアランスおよび/または分布を含むモデルを試験した。
【0199】
結果
前臨床PK/PDモデルの予測値。静脈内投与の後すぐ(10分)に、一般的なヒトIgGパラメータ(表15参照)を用いてPKモデルで1−7F9の血漿濃度を正確に予測した。最大血漿濃度は主として中心容積の大きさに関係し、これは、ヒトについてはかなり十分に確定されているので、このパラメータは最も確かに予測されるものであり得ることが予期される。後の時点での予測については、動力学的プロセス(クリアランス、分布)が作用しているので、観察されるようにあまり確かな予測は期待できない(以下を参照)。
【0200】
【表16】
【0201】
同様に、最大占有率(投与の2時間後)をモデルによって十分に予測した(表16)。ほぼ同じ時点での血漿濃度およびKIR占有率がいずれも十分に予測されれば、前臨床PK/PDモデルに含まれる高い初期親和性は、ヒトにおける投与後の早期の時点でKIR占有率を予測するために実際に適切であると結論付けることができる。
【0202】
【表17】
【0203】
ヒトにおける初期KIR親和性は、多くのデータポイントの1−7F9血漿濃度がLOQよりも低かったので、データから近似されるだけであろう。しかしながら、占有率データは、
図13(投与の2時間後のKIR占有率を1−7F9の血漿濃度に対して示す)に見られるように、初期親和性が4ng/mlの予測される値に近いことを示した。前臨床PK/PDモデルは、親和性は時間と共に減少し得ると予測した。これまでわずかなデータポイントにしか基づいていないが、投与の24時間後から6週間後までに得られる占有率データについて、このような傾向は実際に観察された(
図14)。20ng/mlのKdとの一時的な適合がプロット上に重ね合わせられた。前臨床モデルは、プロットにも示されるように、24時間におけるKdを9ng/mlであると予測した。
【0204】
投与後の最初の数日、KIR受容体の不飽和化の時間経過は、前臨床PK/PDモデルによって十分に記載された。その後の時点における中程度の逸脱は恐らく、血漿濃度が、ヒトPKを予測するために使用される一般的なIgGPKパラメータから予期されるよりもいくらか速く低下するためであった。それでもやはり、最大占有率については、基礎を成す血漿濃度はモデルによって十分に予測された。
【0205】
集団PKモデル。モノクローナル抗体について予期されるように、血漿濃度の時間経過は二重指数関数パターンに従った。従って、2コンパートメントモデルは、1コンパートメントモデルよりも良く、データへのより良い適合を与えた。
【0206】
分布相において用量比例性でない傾向が見られ、より低い用量は高用量よりも急速に分配された。この更新モデルのためのPKパラメータは表17に示される。
【0207】
【表18】
【0208】
これまで得られたデータから、クリアランスは、前臨床PK/PDモデルで使用した0.12ml/h/kgのヒトIgGの一般的なものよりも高い(約4倍)ようであった。理論に拘束されないが、この矛盾は、膜結合型標的に結合する抗体の場合に観察されることが多いように1−7F9が標的媒介性の処分を受けることを示唆し、1−7F9のクリアランスがより高い用量で飽和性であり得ることを暗示し、従ってより長い末端半減期をもたらし得る。分布容積についても同じ考察が適用され、これは予測されるよりもわずかに高くなるであろう。しかしながら、上記の探索的分析によっても示されるように、中心分布容積の大きさはかなり十分に予測される(0.047対0.04l/kg)。
【0209】
結論
全体として、前臨床PK/PDモデルによって予測される特徴は、これまで得られた臨床データにおいても観察された。最大占有率および最大1−7F9血漿濃度は十分に予測された。モデルによっても予測されたように、親和性は時間と共に変化し得る。
【0210】
実施例12 − 更新PK/PDモデルに基づいた投与計画
前の実施例で記載したように得られたPKパラメータを適用して、臨床試験で使用される抗KIR(1−7F9)用量レベルの最適な投与頻度を決定した。
【0211】
1−7F9を用いる臨床治療における投与頻度は、飽和に必要とされる定常状態の血漿濃度と、1−7F9のクリアランスおよび分布容積とに依存する。
【0212】
最大占有率は、初めは高親和性(予備的な結果は約4ng/mlを示す)によって支配されるが、その後飽和を維持するために必要とされる血漿濃度はより高い(予備的な結果は約20ng/mlを示唆する)。
【0213】
95%よりも高い占有率を得るために必要とされる濃度(本明細書ではSatConcと呼ばれる)は、結合のためのKdよりも約20倍高い(式10を参照)。投与間隔を決定するために、血漿濃度は、95%よりも高いKIR占有率を維持するために間欠期においていつもSatConcよりも高くなければならないと仮定した。
【0214】
投与間隔の計算は式11に基づいた(ガブリエルソン(Gabrielsson)J & ウェイナー(Weiner)D、Pharmacokinetic and pharmacodynamics data analysis.第3版、Taylor & Francis 2000年)。
【数8】
式中、V
dは定常状態の分布容積であり(表17のV1+V2)、Dは用量であり、Cl=クリアランスであり、tau=投与間隔である。再編成によって、tauは、
【数9】
であることが分かる。
【0215】
tauは、表17からのPKパラメータおよびSatConc=400ng/mlを用いて、0.015mg/kgよりも高い用量について決定した。より低い用量に対しては、式12は、投与の24時間後に現れるより低いKdに基づいているので使用できなかった。代わりに、投与間隔は、データの外挿およびスタッガリングによって、繰り返し投与されて(そうであってもなくてもよい)親和性がその初期の高親和性に保持され得ると仮定して近似した。結果は表18および19に示される。
【0216】
【表19】
【0217】
【表20】
【0218】
計算は、用量直線性のPKパラメータの仮定に基づいた。あるいは、観察された非直線性を含む(集団)PK/PDモデルからのシミュレーションを用いて、KIR飽和血漿レベルを与える用量が代わりに見出されてもよい。
【0219】
実施例13 − ヒト癌患者におけるNK細胞の抗KIR媒介性の活性化
NKおよびT細胞に媒介される腫瘍細胞の死滅において、細胞溶解性顆粒の膜の内側を覆うリソソーム膜タンパク質1(LAMP−1またはCD107a)は、NKおよびT細胞表面上に露出される(ベッツ(Betts)ら、J Immunol Method 2003年、281:65−78頁)。臨床試験において、NK細胞におけるCD107aの発現の査定は、NK細胞に媒介される腫瘍細胞の死滅の可能で信頼できるマーカーであると示された(コッホ(Koch)ら、Ann Surg 2006年、244:986−92頁)。
【0220】
AML患者の抗KIR治療を調べる進行中の臨床試験では、フローサイトメトリーによってCD107aを査定した。血液サンプルを採取し、赤血球を溶解し、末梢血細胞を洗浄し、続いて、CD3、CD45、CD56、およびCD107aに対する抗体で染色した。データは、BD FACSDivaソフトウェアを有するBD FACScantoにおいて獲得した。
【0221】
結果は、NK細胞におけるCD107aのクリアアップ−調節を示したが、T細胞では示さなかった。単一の抗KIR(1−7F9)用量(0.0003、0.003および0.015mg/kg)で治療した8人の患者のうち合計6人において、投与の24時間後にNK細胞においてCD107aレベルを増大させた(
図15)。
【0222】
さらに、多サイクルの抗KIR(1−7F9)(上記と同じ用量、最大6回までの繰り返しの用量で与えられる)で治療したAML患者において、繰り返しの投与の後に、CD107aレベルの増大が観察された。腫瘍細胞による患者NK細胞のエキソビボ刺激によって、CD107aのレベルの増大は、腫瘍細胞の死滅の増大と一致する。多発性骨髄腫の患者において、抗KIR(1−7F9)の投与の際のCD107aの上方制御は、5人の患者の中の合計4人で観察された。
【0223】
CD107aに加えて、MIP−1β(マクロファージ炎症性タンパク質−1β)も、NK細胞活性化の頑強なマーカー、ならびにNK細胞媒介性の抗腫瘍効果の強力なNK細胞化学誘引物質および刺激物質であることが示されている(ハンナ(Hanna)ら、J Immunol 2004年、173:6547−63頁、ルオ(Luo)ら、Cell Mol Immunol.2004年、1:199−204頁)。1−7F9の投与時、MIP−1βの血清レベルの増大は、AMLおよび多発性骨髄腫における試験を受けた12人の患者の中の合計11人で観察された。
【0224】
まとめると、これらの結果は、癌患者の抗KIR治療が、急速にそして反復して、NK細胞活性化および腫瘍細胞の死滅を可能にすることを明示した。
【0225】
実施例14 − 抗KIR媒介性の腫瘍マーカーの低減
急性骨髄性白血病(AML)において、微小残存病変の検出は、リスク層別化および再発の早期発見のために重要性が高まっている。ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT−1)転写物は、骨髄性白血病の90%よりも多くで過剰発現されることが示されている。WT−1は腫瘍量と十分に相関し、AMLにおける治療に対する応答をモニターする分子のための価値のある手段であることが証明されている。さらに、WT−1レベルの増大は、臨床的な再発に先行する(キローニ(Cilloni)ら、Acta Haematol.2004年、112:79−8頁)。
【0226】
AML患者の抗KIR(1−7F9)治療を調べる進行中の臨床試験において、骨髄および血液サンプルにおいてWT−1レベルを測定した。WT−1レベルは、製造業者の指示に従ってIpsogenからのqRT−PCRアッセイ(PQPP−01)によって査定した。抗KIR(1−7F9)の投与の際、骨髄または血液のいずれかのWT−1レベルの低下は、6人の患者のうち合計4人において観察された。
【0227】
多発性骨髄腫は、骨髄中の悪性血漿細胞のモノクローナル増殖を特徴とする悪性のB細胞障害である。疾患の特徴は、血清および/または尿中の高レベルのモノクローナル(M)免疫グロブリン(Mタンパク質)である。臨床試験において、治療に対する応答を有するマーカーとしてMタンパク質を日常的にモニターすることは、標準的な臨床業務である(プリンス(Prince)ら、Leuk Lymphoma.2007年、48:46−55頁)。
【0228】
多発性骨髄腫患者の抗KIR(1−7F9)治療を調べる進行中の臨床試験において、尿Mタンパク質は、製造業者の指示に従ってHelena Laboratoriesからのゲル電気泳動アッセイ(3398)によって査定した。抗KIR(1−7F9)の投与の際、尿Mタンパク質の低下は、4人の評価可能患者のうち合計2人において観察された。
【0229】
まとめると、これらの結果は、癌患者の抗KIR(1−7F9)治療が、抗腫瘍応答を誘発できることを明示した。
【0230】
実施例15 − 製剤試験
この実施例では、6ヶ月の安定性の設定において5つの異なる1−7F9製剤を試験した。
【0231】
材料および方法
1−F79の5つの異なる製剤(10mg/mLの1−7F9、10〜50mMのリン酸ナトリウム、160〜240mMのスクロース、0.1〜0.5mg/mlのポリソルベート80、pH7.0)は、表20のスケジュールに従って、3つの異なる温度において6ヶ月までの貯蔵期間にわたって、pH、概観、GP HPLC、SDS−PAGE、およびIEFに基づいて分析した。製剤についての詳細は表21に提供される。
【0232】
Waters 2695システムにおいてゲル浸透GP HPLCを実行し、移動相が1.0mL/分の流速のpH7.0の0.1Mのリン酸ナトリウムであることを除いて、本質的に実施例3に記載されるとおりに分析を実施した。Chirascan CD(Applied Photophysics)において円二色性を行った。
【0233】
【表21】
【0234】
【表22】
【0235】
結果
結果は、表22A〜C、23A〜C、24A〜C、および25A〜Cに示される。
【0236】
【表23】
【0237】
【表24】
【0238】
【表25】
【0239】
【表26】
【0240】
6ヶ月後、5つの異なる製剤間で実質的な差異は観察できず、これらは全て抗体医薬品に適した高品質であることが示され、pH、概観、GP−HPLC、生物活性によって分析されたときに、実質的な差異は示さなかった。円二色性によっても差異は検出できなかった。さらに、この実験で試験したポリソルベート80の濃度(0.010〜0.050%は、以前の設定よりも10〜50倍高いにもかかわらず、試験パラメータに対する実際のポリソルベート濃度の実際の影響は検出できなかった。しかしながら、20mMのリン酸ナトリウム、220mMのスクロース、0.001%のポリソルベート80(pH7.0)を含む製剤は、優れた安定特性に加えて、低リン酸含量および正しい容量オスモル濃度の両方を有することの利点を有した。
【0241】
本明細書で引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は参照によってその全体が本明細書に援用され、本明細書中のどこか他のところで成された特定の文書の援用が離れて提供されることに関係なく、あたかも各参考文献が参照によって援用されると個々にそして明確に示され、その全体が本明細書で説明されたかのように同じ程度まで援用される(法律で許される最大範囲まで)。
【0242】
「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示語の使用は、本発明を説明するという状況では、本明細書において他で指示されない限り、または文脈により明らかに否定されない限りは、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0243】
他で規定されない限り、本明細書において提供される全ての正確な値は、対応する概略値を代表する(例えば、特定の因子または測定に関して提供される全ての正確な典型的な値は、必要に応じて「約」によって修飾される対応する概略測定値も提供すると考えることができる)。さらに、どの群の値における「約」という用語の使用も、他で指示されない限りは、このような群のそれぞれの値に対する支持を提供する(本明細書中のこのような使用法における矛盾にかかわらず)ことが意図される(例えば、約1、2、または3という語句は、「約1」、「約2」、および「約3」に対する支持を提供すると解釈されるべきである。)。
【0244】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、本明細書において他で指示されない限りは、その範囲の下端点と同じ桁および同じレベルの有意性(すなわち、全て同様の有効数字)内にある範囲の中に含まれる別々の各値を個々に指す簡単な方法としての機能を果たすことだけが意図され、別々の各値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように本明細書に援用される。従って、例えば、本明細書における1〜100の範囲は、1〜100の間の(および1、10を含む)それぞれの整数(すなわち、1、2、3、4、...98、99、および100)に対する支持を提供し、0.1〜1の範囲は、これらの端点の間および端点を含む、0.1と同じ桁およびレベルの優位性の各値(すなわち、0.1、0.2、0.3、...0.9、1.0)に対する支持を提供する。
【0245】
1つまたは複数の要素に関して「含む」、「有する」、「包含する」、または「含有する」などの用語を用いて本発明の任意の態様または実施形態を本明細書中で説明することは、他で規定されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限りは、その特定の1つまたは複数の要素「からなる」、「から本質的になる」、または「実質的に含む」本発明の同様の態様または実施形態に対する支持を提供することが意図される(例えば、本明細書において特定の要素を含むと説明される組成物は、他で規定されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限りは、その要素からなる組成物も説明すると理解されるべきである)。
【0246】
本明細書において提供されるいずれかおよび全ての例、または例となる言葉(例えば、「such as(など)」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することだけが意図され、他で主張されない限りは、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言葉は、特許請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されてはならない。
【0247】
本発明は、適用法令によって認められるように、本明細書に包含される特許請求の範囲および/または態様において列挙される主題の全ての変更および等価物を含む。
【0248】
本発明の例示的な実施形態
本明細書に記載される本発明をより良く説明するために、ここで本発明の例示的な実施形態および特徴の非限定的なリストが提供される。これらの実施形態は、本明細書で提供される発明を実施するための形態においてより詳しく説明されており、本発明の追加的な実施形態、特徴、および利点はそれから明らかであろう。
【0249】
以下の実施形態は、NK細胞活性の調節を必要としている患者においてNK細胞活性を調節するための組成物に関する。
1. NK細胞活性の調節を必要としている患者においてNK細胞活性を調節する方法であって、少なくとも1つのヒト阻害性KIRに結合する抗体を、約0.0003〜約3mg/kgの範囲の用量で患者に投与することを含む方法。
2. 用量が約0.075〜約3mg/kgの範囲である、実施形態1の方法。
3. 用量が、約0.0003、約0.003、約0.015、約0.075、約0.3、約1、および約3mg/kgから選択される、実施形態2の方法。
4. 投与を少なくとも1回繰り返すことを含む、実施形態1の方法。
5. 1日3回〜2ヶ月間に1回の範囲の投与頻度で投与が繰り返される、実施形態1の方法。
6. 用量が少なくとも3回投与される、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
7. 用量が少なくとも6回投与される、実施形態14の方法。
8. 抗体が静脈内に投与される、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
9. NK細胞の表面における阻害性KIRへの抗体の結合が、NK細胞の細胞障害活性を増強する、先行する実施形態のいずれかの方法。
10. 抗体が交差反応性の抗KIR抗体である、先行する実施形態のいずれかの方法。
11. 抗体が、
(a)約2〜約6ng/mlの高親和性Kd、
(b)約10〜約30ng/mlの低親和性Kd、
(c)約0.25〜約0.75ml/h/kgのクリアランス、および
(d)約50ml/kg〜約175ml/kgの分布容積
のうちの1つまたは複数の特性を有する、先行する実施形態のいずれかの方法。
12. 抗体が(a)〜(d)の特性を全て有する、実施形態11の方法。
13. 抗体が、抗体1−7F9の可変重(配列番号3)領域配列および可変軽(配列番号2)領域配列を含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
14. 抗体が、配列番号1の配列を含む重鎖を含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
15. 最初の用量の24時間後に患者から採取した血液サンプル中のNK細胞において、患者が増大したCD107aレベルを有する、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
16. 血液サンプル中のT細胞において増大したCD107aレベルを有さない、先行する請求項のいずれかの方法。
17. NK細胞における少なくとも約50%のKIR占有率をもたらす、先行する実施形態のいずれかの方法。
18. 少なくとも約90%のNK細胞におけるKIR占有率をもたらす、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0250】
以下の実施形態は、患者の癌の治療方法および関連事項に関する。
1. 血液中のNK細胞において少なくとも約3ヶ月間少なくとも約95%のKIR占有率を達成する用量および投与頻度で抗KIR抗体を投与することを含む、患者の癌の治療方法。
2. 用量が、約0.003〜約3mg/kgの範囲である、実施形態1の方法。
3. 用量が、約0.075〜約3mg/kgの範囲である、実施形態1の方法。
4. 用量が、約0.0003、約0.003、約0.015、約0.075、約0.3、約1、および約3mg/kgから選択される、実施形態2の方法。
5. 投与頻度が、1日1回〜2ヶ月間に1回の範囲である、実施形態1の方法。
6. 投与頻度が、1週間に約1回〜2ヶ月間に約1回の範囲である、実施形態5の方法。
7. 投与頻度が、1ヶ月に約1回である、実施形態6の方法。
8. 投与頻度が、1日に約3回、約2回、および約1回、1週間に約5回、約4回、約3回、および約2回、ならびに2、4、および6週間に約1回から選択される、実施形態5の方法。
9. 約0.075〜約0.3mg/kgの用量が、1週間に約2回〜1ヶ月に約1回投与される、実施形態1の方法。
10. 約0.3〜約1mg/kgの用量が、1ヶ月に約1回〜約2回投与される、実施形態1の方法。
11. 約1〜約3mg/kgの用量が、1ヶ月に約1回〜2ヶ月間に約1回投与される、実施形態1の方法。
12. 投与頻度が、1ヶ月に約1回である、実施形態10および11のいずれかの方法。
13. 用量および投与頻度が、以下の組み合わせのいずれか1つから選択される、実施形態1の方法。
【0251】
【表27】
【0252】
14. 用量が少なくとも3回投与される、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
15. 用量が少なくとも6回投与される、実施形態14の方法。
16. 血液中のNK細胞において少なくとも約6ヶ月間少なくとも約95%のKIR占有率を達成する用量および投与頻度で抗KIR抗体を投与することを含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
17. 癌が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MMy)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、結腸直腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、または悪性メラノーマである、先行する実施形態のいずれかの方法。
18. 抗体が静脈内に投与される、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
19. NK細胞の表面における阻害性KIRへの抗体の結合が、NK細胞の細胞障害活性を増強する、先行する実施形態のいずれかの方法。
20. 抗体が交差反応性の抗KIR抗体である、先行する実施形態のいずれかの方法。
21. 抗体が、
(a)約2〜約6ng/mlの高親和性Kd、
(b)約10〜約30ng/mlの低親和性Kd、
(c)約0.25〜約0.75ml/h/kgのクリアランス、および
(d)約50ml/kg〜約175ml/kgの分布容積
のうちの1つまたは複数の特性を有する、先行する実施形態のいずれかの方法。
22. 抗体が(a)〜(d)の特性を全て有する実施形態21の方法。
23. 抗体が、抗体1−7F9の可変重(配列番号3)領域配列および可変軽(配列番号2)領域配列を含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
24. 抗体が、配列番号1の配列を含む重鎖を含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
25. 最初の用量の約24時間後に患者から採取した血液サンプル中のNK細胞において、患者が増大したCD107aレベルを有する、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
26. 血液サンプル中のT細胞において増大したCD107aレベルを有さない、先行する請求項のいずれかの方法。
27. 患者がAMLを患っており、1回または複数回の抗KIR抗体の用量の後に、血液および/または骨髄中のウィルムス腫瘍遺伝子1転写物のレベルが低下される、先行する実施形態のいずれかの方法。
28. 患者がMMyを患っており、1回または複数回の抗KIR抗体の用量の後に、尿中のMタンパク質のレベルが低下される、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0253】
以下の実施形態は、本発明に従う典型的な製品(例えば、キット)を説明する。
1. (a)抗KIR抗体を含む容器と、
(b)患者の癌を治療するための説明書を含む添付文書と、
を含む製品であって、説明書には、約0.003〜約3mg/kgの抗KIR抗体の用量が1日に約1回〜2ヶ月間に約1回の頻度で患者に投与されることが示されている製品。
2. 用量が約0.075〜約0.3mg/kgであり、投与頻度が1週間に約2回〜1ヶ月に約1回である、実施形態1の製品。
3. 用量が約0.3〜約1mg/kgであり、投与頻度が1ヶ月に約1〜約2回である、実施形態1の製品。
4. 用量が約1mg/kg〜約3mg/kgであり、投与頻度が1ヶ月に約1回〜2ヶ月間に約1回である、実施形態1の製品。
5. 投与頻度が1ヶ月に約1回である、実施形態30および31のいずれかの製品。
6. 用量および投与頻度が、以下の組み合わせのいずれか1つから選択される、実施形態1の製品。
【0254】
【表28】
【0255】
7. 第2の薬剤を含む容器をさらに含み、添付文書が第2の薬剤で患者を治療するための説明書をさらに含む、実施形態1の製品。
8. 第2の薬剤が、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生薬、アポトーシス剤、阻害性KIRに結合する二次抗体、抗感染症薬、標的剤、および抗CD20抗体である、実施形態7の製品。
【0256】
本発明の以下の実施形態は、抗KIR抗体の医薬品製剤に関する。
1. (a)約0.05mg/mL〜約10mg/mLのIgG4抗体と、(b)約10〜50mMのリン酸ナトリウムと、(c)約160〜250mMのスクロースまたは約100mMのNaClと、(d)約7のpHのポリソルベート80と、を含む、薬学的に許容可能で活性な製剤。
2. 抗体が、中和抗KIR抗体である、実施形態1の製剤。
3. 抗体が、交差反応性の抗KIR抗体である、実施形態2の製剤。
4. 抗体が、配列番号3に従う重鎖配列を含む、実施形態3の製剤。
5. 抗体が、配列番号2に従う軽鎖配列を含む、実施形態4の製剤。
6. 重鎖配列が配列番号1を含む、実施形態5の製剤。
7. IgG4抗体分子の濃度が約1〜10mg/mlである、実施形態1〜3のいずれかの製剤。
8. IgG4抗体の濃度が10mg/mlである、実施形態7の製剤。
9. 約20〜50mMのリン酸ナトリウム、約220〜250mMのスクロース、および約0.001%のポリソルベート80を含む、実施形態1〜8のいずれかの製剤。
10. 約20mMのリン酸ナトリウムおよび約220mMのスクロースを含む、実施形態9の製剤。
11. (a)配列番号1に従う重鎖および配列番号2に従う軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、約0.05mg/mL〜約10mg/mLのIgG4抗体分子と、(b)約50mMのリン酸ナトリウムと、(c)約250mMのスクロースと、(d)約7のpHの約0.001%のポリソルベート80とを含む、薬学的に許容可能で活性な製剤。
12. (a)配列番号3に従う重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号2に従う軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、約0.05mg/mL〜約10mg/mLのIgG4抗体分子と、(b)約50mMのリン酸ナトリウムと、(c)約250mMのスクロースまたは約100mMの塩化ナトリウムと、(d)約0.001%のポリソルベート80を含み、約7のpHを有する薬学的に許容可能で活性な製剤。
13. (a)配列番号1に従う重鎖および配列番号2に従う軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、約0.05mg/mL〜約10mg/mLのIgG4抗体分子と、(b)約20mMのリン酸ナトリウムと、(c)約220mMのスクロースと、(d)約7のpHの約0.001%のポリソルベート80とを含む、薬学的に許容可能で活性な製剤。
14. (a)配列番号3に従う重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号2に従う軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、約0.05mg/mL〜約10mg/mLのIgG4抗体分子と、(b)約20mMのリン酸ナトリウムと、(c)約220mMのスクロースまたは約100mMの塩化ナトリウムと、(d)約0.001%のポリソルベート80とを含み、約7のpHを有する薬学的に許容可能で活性な製剤。
15. 抗体が1−F79である、実施形態1〜14のいずれかの製剤。
16. 製剤中の抗体の濃度が、約10mg/mLである実施形態1〜15のいずれか1つに記載の製剤。
17. 製剤中の抗体の濃度が、約0.05mg/mLである、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の製剤。
18. (a)製剤中の抗体の濃度が約10mg/mLであるような量の、配列番号3に従う重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号2に従う軽鎖可変領域を含む軽鎖を含むIgG4抗体分子と、(b)約8.4mg/mLのリン酸水素ナトリウム(七水和物)と、(c)約2.6mg/mLのリン酸二水素ナトリウムと、(d)約85mg/mLのスクロースと、(e)約0.01mg/mLのポリソルベート80とを含む成分の混合物から調製され、約7のpHを有する薬学的に許容可能で活性な製剤。
19. 抗体が、配列番号1に従う重鎖を含む実施形態18の製剤。
20. 抗体が1−F79である、実施形態19の製剤。
21. 製剤が、約5℃における約1ヶ月までの貯蔵中に約10%未満の不純物含量を有する、実施形態1〜20のいずれか1つの製剤。
22. 製剤が、約5℃における約3ヶ月までの貯蔵中に、約5%未満の高分子量タンパク質不純物含量を有する、実施形態21の製剤。
23. (a)配列番号3に従う重鎖可変領域を含む重鎖および配列番号2に従う軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、約0.05mg/mL〜約10mg/mLのIgG4抗体分子と、(b)約5〜20mMのリン酸ナトリウムと、(c)約180〜約250mMのスクロースと、(d)約0.001〜0.1%のポリソルベート80とを含み、約7のpHを有する薬学的に許容可能で活性な製剤。
24. 製剤が、約200mMのスクロースを含む、実施形態21に従う製剤。
25. 製剤が、約5℃における約1ヶ月までの貯蔵中に、約10%未満の不純物含量を有する、実施形態23または実施形態24の製剤。
26. 製剤が、約5℃における約3ヶ月までの貯蔵中に、約5%未満の高分子量タンパク質不純物含量を有する、実施形態23〜25のいずれか1つの製剤。
27. 製剤が等張性である、実施形態23〜26のいずれか1つの製剤。
28. 製剤中の抗体の濃度が、約10mg/mLである、実施形態23〜27のいずれか1つの製剤。
29. 製剤中の抗体の濃度が、約0.05mg/mLである、実施形態23〜77のいずれか1つの製剤。
30. 製剤中の抗体の濃度が、約0.1mg/mLである、実施形態23〜27のいずれか1つの製剤。
31. 製剤中の抗体の濃度が、約1mg/mLである、実施形態23〜27のいずれか1つの製剤。
32. 静脈内注射によるヒト投与のための薬学的に許容可能な製剤の調製方法であって、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の濃縮製剤を約5℃からの温度で貯蔵することと、実施形態1の成分(b)〜(d)(しかし、抗体が欠けている)を含む溶液中に濃縮製剤を希釈して、すぐに投与できる(希釈)生成物を生じさせることと、すぐに投与できる生成物を、投与前の約24時間までの間、約5℃からの温度で貯蔵することとを含む方法。
33. 濃縮生成物が約1mg/mL〜約10mg/mLの抗体濃度を有し、希釈生成物が約0.05mg/mLの抗体濃度を有する、実施形態32の方法。
34. 静脈内注射によるヒト投与のための薬学的に許容可能な製剤の調製方法であって、実施形態21〜31のいずれか1つに記載の濃縮製剤を約5℃からの温度で貯蔵することと、濃縮製剤を滅菌等張生理食塩水中に希釈して、すぐに投与できる(希釈)生成物を生じさせることと、すぐに投与できる生成物を、投与前の約24時間までの間、約5℃からの温度で貯蔵することとを含む方法。
35. 濃縮生成物が約1mg/mL〜約10mg/mLの抗体濃度を有し、希釈生成物が約0.05mg/mLの抗体濃度を有する、実施形態34の方法。
36. 約3mL〜約30mLの容積の、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の製剤を含む貯蔵容器を含む医薬品。
37. 容器が、約5mLまたは約10mLの製剤を含む、実施形態36の医薬品。
38. 約3mL〜約30mLの容積の、実施形態23〜31のいずれか1つに記載の製剤を含む貯蔵容器を含む医薬品。
39. 容器が、約5mLまたは約10mLの製剤を含む、実施形態38の医薬品。
40. NK細胞活性の増強を必要としている患者においてNK細胞活性を増強する方法であって、実施形態1〜31のいずれか1つに記載の製剤を、約0.0003mg/kg(患者の体重)〜約3mg/kgの抗体投与量で患者に投与することを含む方法。
41. 投与量が、約0.001mg/kg〜約3mg/kgである、実施形態40の方法。
42. 患者が、癌と診断された患者である、実施形態40または実施形態41の方法。
43. 患者が、急性骨髄性白血病と診断された患者である、実施形態42の方法。
44. 患者が、慢性骨髄性白血病と診断された患者である、実施形態42の方法。
45. 患者が、多発性骨髄腫と診断された患者である、実施形態42の方法。
46. 患者が、非ホジキンリンパ腫と診断された患者である、実施形態42の方法。
47. 患者が、結腸直腸癌と診断された患者である、実施形態42の方法。
48. 患者が、腎臓癌と診断された患者である、実施形態42の方法。
49. 患者が、卵巣癌と診断された患者である、実施形態42の方法。
50. 患者が、肺癌と診断された患者である、実施形態42の方法。
51. 患者が、乳癌と診断された患者である、実施形態42の方法。
52. 患者が、悪性メラノーマと診断された患者である、実施形態42の方法。
53. 患者が、感染症と診断された患者である、実施形態40または41の方法。
54. 方法が、約0.0003mg/kg〜約3mg/kgの1回または複数回の追加の投与量を、前回の投与の少なくとも約6時間後に患者に投与することを含む、実施形態40〜53のいずれか1つの方法。
55. 薬剤の調製における、実施形態1〜31のいずれか1つに記載の製剤の使用。
56. 癌または感染症の治療のための薬剤を調製するための、実施形態1〜31のいずれか1つに記載の製剤の使用。
57. 癌の治療のための薬剤として、約0.0003mg/kg〜約3mg/kgの抗体投与量を提供する量における、実施形態1〜31のいずれか1つに記載の製剤の使用。
58. 癌または感染症の治療において使用するための実施形態1〜31のいずれか1つに記載の製剤。
59. 癌の治療において使用するための実施形態1〜31のいずれか1つに記載の製剤。