特許第6223779号(P6223779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000002
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000003
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000004
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000005
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000006
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000007
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000008
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000009
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000010
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000011
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000012
  • 特許6223779-光検知装置および電子機器 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223779
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】光検知装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20171023BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20171023BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G01B11/00 B
   G01J1/02 S
   G01J1/02 P
   G01V9/04 N
   G01B11/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-223509(P2013-223509)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-87123(P2015-87123A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高田 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】白坂 康之
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆行
(72)【発明者】
【氏名】重光 学道
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−233783(JP,A)
【文献】 特開2010−127635(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/280107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 −11/30
G06F 3/033−3/039
G01J 1/00 − 1/60
G01J 11/00
G01V 1/00 −99/00
H01H 35/00
H01L 31/12 −31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照度検知用受光素子群を中心として、その周囲に、被検知物の動きを検知する複数の被検知物検知用受光素子群が配された受光部と、
上記受光部を封止する透明樹脂層と、
上記被検知物による反射光および周辺光を上記受光部に入射させる第1開口部を有するとともに、上記被検知物検知用受光素子群に入射する光の一部が遮光されるように上記透明樹脂層を覆う遮光部材と、を備え、かつ、
上記第1開口部における上記透明樹脂層の表面は、少なくとも、上記照度検知用受光素子群を覆う部分が平坦であることを特徴とする光検知装置。
【請求項2】
上記被検知物検知用受光素子群は、上記照度検知用受光素子群を囲むように、互いに直交する第1方向および第2方向に、上記照度検知用受光素子群を挟んで互いに対向して設けられており、
上記第1方向に配された被検知物検知用受光素子群と上記第2方向に配された被検知物検知用受光素子群とは、受光面積が互いに異なっており、かつ、
上記照度検知用受光素子群を挟んで互いに対向する被検知物検知用受光素子群は、互いに同じ形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の光検知装置。
【請求項3】
上記照度検知用受光素子群は、赤に感度ピークを有する受光素子と、青に感度ピークを有する受光素子と、緑に感度ピークを有する受光素子と、赤外光に感度ピークを有する受光素子とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の光検知装置。
【請求項4】
上記被検知物に光を照射する発光素子と、
上記発光素子を封止する透明樹脂層と、をさらに備え、
上記遮光部材は、上記発光素子を封止する透明樹脂層をさらに覆うとともに、
上記発光素子から上記被検知物に照射される光を透過させる第2開口部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光検知装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光検知装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、被検知物の近接状態、移動方向、および周辺照度を検知するための光検知装置および該光検知装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の表示画面付きモバイル機器が広く利用されている。これらの機器では、携帯性を向上させる必要があることから、モバイル機器の表示画面には、薄くて軽い特徴を有する液晶パネルが標準的に使用されている。そして、電池寿命を延長して利便性を高めるために、周辺照度に応じた輝度で表示を行うことができるように、モバイル機器に搭載することが可能な、小型で安価な照度センサが求められている。
【0003】
このような背景から、これまで数々の照度センサが提案されている。例えば特許文献1には、表示画面の輝度を自動調整するための照度センサを搭載したモバイル機器が開示されている。
【0004】
また、液晶ディスプレイ等の表示画面を備えたモバイル機器では、機器への人体の接近具合を検出して様々な制御も行われている。
【0005】
これらの機器の表示画面は、タッチパネルとしての情報入力機能も兼ねており、電話の開始や機器をポケット等に挿入する等、何らかの物体がタッチパネルに接近した際、その機能をオフすることで誤動作を防ぐことが必要となる場合がある。また、デジタルカメラでは、ユーザが、表示画面からファインダーに目線を移す際に、自動的に表示画面の明るさを落とすといった制御が行われている。
【0006】
そこで、このような用途に向け、自らパルス発光し、対象物からの反射パルス光を検出して対象物の近接具合を判定する、小型かつ安価な光学式の近接センサの開発が進められている。
【0007】
さらに、現在では、照度センサおよび近接センサ双方の機能を兼ね備えた、小型かつ安価な光学式の近接照度センサが開発され、広く使用されている。
【0008】
このような近接照度センサは、表示画面への物体(人体、例えば耳や頬)の近接を検出するためのものである。このため、近接照度センサは、ディスプレイと同一のXY平面内に実装され、ディスプレイ面の法線方向(Z方向)への物体の近接状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−127635号公報(2010年6月10日公開)
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0280107号明細書(2012年11月8日公開)
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0280904号明細書(2012年11月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、タッチパネル機能を有するディスプレイを使用していると、操作自体による画面の汚れが避けられず、頻繁に拭き取りが必要と感じるユーザは少なくない。特に、ページ送り等の操作に用いられる、いわゆるスワイプ動作を行うと、油脂汚れが引き伸ばされ、画面の汚れが生じる。
【0011】
そこで、近接照度センサに物体(指)が接近した際、物体のXY平面内での移動方向を同時に検出する機能があれば、上記スワイプ動作をタッチレス化することが可能となる。
【0012】
しかしながら、特許文献1は、近接照度センサについて開示されてはいるが、移動方向の検知については開示がない。
【0013】
移動方向を検知するには、例えば、複数の近接センサや測距センサ、あるいはイメージングデバイスを配置する等の方法が考えられる。しかしながら、このような目的を達成するためだけに、複数の近接センサや測距センサ、あるいは高価なイメージングデバイスを配置し、情報端末が高コスト化することは望ましくない。
【0014】
このため、近接照度センサに方向検知機能を持たせ、照度センサ、近接センサ、および移動方向センサとしての機能を兼ね備えた、小型かつ安価な近接照度/移動方向センサを備えた光検知装置とすることが考えられる。
【0015】
これらのセンサを一体化する方法として考えられるのは、分割フォトダイオードを用いる方法である。
【0016】
例えば、特許文献2、3には、これらのセンサを一体化することについて何ら開示も示唆もされていないが、分割フォトダイオードを、移動方向を検知するためのセンサとして用いることが記載されている。
【0017】
分割フォトダイオードを、移動方向を検知するためのセンサとして用いることで、分割した各フォトダイオードの出力差に基づいて、フォトダイオード面上の信号光スポットの移動方向を知ることができる。
【0018】
しかしながら、分割フォトダイオードの出力を近接センサの信号光として利用する場合、分割された個々のダイオードの出力信号は、必ずそれよりも小さくなる。
【0019】
また、分割フォトダイオードを近接/移動方向センサとして用いる場合には、移動方向を判定することに加えて、XY方向の移動はないが正面からの(Z方向のみの)近接状態の変化を検出することも必要とされる。このような光検知装置では、不定状態(XY移動方向の判定結果がチャタリングする状態)を避けるために、近接検知と同様、移動方向検知に用いる信号光に対してもS/Nで閾値判定する必要がある。
【0020】
さらに、上述したように、近接検知および移動方向検知に加え、照度検知機能を付加するには、フォトダイオードの分割がさらに必要となり、それに伴い、出力信号は小さくなる。
【0021】
したがって、フォトダイオードを分割することで、照度センサ、近接センサ、および移動方向センサを一体化させる(つまり、被検知物の近接状態、移動方向、および周辺照度を検知する機能を兼ね備えた光検知装置を得る)には、フォトダイオード全体の面積を大きくするか、そうでない場合は、発光信号量を相応に大きくしなければならない。その結果、得られた光検知装置(近接センサ/照度センサ/移動方向センサ一体型のセンサ)のサイズ、消費電力およびコストは増大する。
【0022】
また、被検知物の移動方向の検知は、分割したフォトダイオード面上の信号光スポットの移動を、個々のダイオードの出力信号の変化として捉えて判定を行うため、被検知物からの反射パルス光は、被検知物の移動に伴い、フォトダイオード面上を大きく移動する方が好ましい。このためには、被検出物からの反射パルス光の角度が変わると、スポット位置が大きく変わる、反射パルス光の角度依存性が必要となる。このためには、分割フォトダイオード上に、エポキシ樹脂等で形成された、一定の曲率をもったレンズが設けられていることが望ましい。なお、実際に、被検知物の移動方向を検知する光検知装置として、フォトダイオード上にレンズを形成したパッケージが開発されている。
【0023】
ここで、フォトダイオードを用いた移動方向検知原理について説明する。
【0024】
図10の(a)〜(c)は、フォトダイオード301による移動方向検知原理を模式的に示す図であり、図10の(a)は側面図、図10の(b)は斜視図、図10の(c)は分解図である。
【0025】
なお、図10の(c)では、信号光スポットの状態を簡易的に説明するため、フォトダイオード301を2分割しているが、2分割に代えて、4分割、8分割とする等、任意の分割方法が考えられる。
【0026】
図10の(a)に示すように被検知物200が光検知装置300の上を左から右に移動する場合、被検知物200からの反射パルス光311は、図10の(b)に示すようにフォトダイオード301上に形成されたレンズ302により集光される。
【0027】
集光された反射パルス光311による信号光スポット312は、図10の(c)の左図に示すように分割したフォトダイオード301のうち右側のフォトダイオード301R上に最初に投影されて投影像として現れる。図10の(c)の中央図に示すように被検知物200がフォトダイオード301の真上にあるときは、左右のフォトダイオード301L・301Rのほぼ中心に信号光スポット312(投影像)が現れ、さらに、被検知物200が右上に移動すると、信号光スポット312(投影像)は、左側のフォトダイオード301L上に現れる。
【0028】
被検知物200の移動方向を検知する場合、このような信号光スポット312のフォトダイオード301上の移動量を顕著にすることにより、より安定した移動方向検知が可能となる。
【0029】
他方、照度検知に関しては、周辺に存在する光源が光検知装置の真上にあるとは限らず、例えば光検知装置の斜め方向から光検知装置に光が入射する場合もある。周辺の照度が同じでも、光源が光検知装置の真上に合う場合と斜めにある場合とでは、分割したフォトダイオードへの入射状態が変化する。被照射面の照度は、被照射面に入射する光の入射角のcosθに比例して変化する(コサイン特性)。このため、周辺の照度が同じでも、光源が光検知装置の真上に合う場合と斜めにある場合とでは、検出される照度値は、異なる結果となる(照度と入射角のコサイン特性)。
【0030】
さらに、図10の(a)〜(c)に示すように分割したフォトダイオード301上に、エポキシ樹脂等で形成された一定の曲率を持つレンズ302がある場合、該フォトダイオード301で検出される照度値の変化は、レンズ302がない場合と比較して大きくなる。
【0031】
図11は、フォトダイオード上に、一定の曲率を有するエポキシ製のレンズを配置したときの、該フォトダイオードへの相対的な入射光量の変化を示すグラフである。
【0032】
図11に示すように、光検知装置の真上に光源がある場合と比較し、光源を傾けると、徐々にフォトダイオードへの入射光量が減少する。しかしながら、フォトダイオード上にレンズがある場合、レンズの効果により、レンズがない場合と比較して、光源を傾けたときの入射光量の低下が顕著になる。
【0033】
したがって、被検知物の移動方向検知には、フォトダイオード上を信号光スポットがより多く移動するために、パッケージをレンズ形状とする等、フォトダイオード上にレンズが設けられていることが好ましいが、照度検知には、光量低下を抑えるために、フォトダイオード上にはレンズが設けられていないことが望ましい。
【0034】
このため、照度センサと移動方向センサとを同一のパッケージ内に収容することで照度センサと移動方向センサとが一体化された光検知装置を実現する場合、どちらかの検知性能を犠牲にするか、あるいは、照度センサ用と移動方向センサ用とに別々に開口窓(アパーチャ)を設ける必要がある。
【0035】
図12は、照度センサ用と移動方向センサ用とに別々に開口窓を設けた光検知装置400の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0036】
図12に示す光検知装置400は、移動方向検知用のフォトダイオード(図示せず)、近接検知および照度検知用のフォトダイオード(図示せず)、および発光素子(図示せず)を同一パッケージ内に封止している。
【0037】
そして、これらフォトダイオードおよび発光素子を覆う封止樹脂401に、発光素子用開口部401aを設けるとともに、開口窓として、移動方向検知用開口部401cとは別に、近接検知および照度検知用の近接/照度検知用開口部401bを設け、発光素子用開口部401aと移動方向検知用開口部401cとにのみレンズ部402を形成している。
【0038】
このようなパッケージを用いれば、光検知装置400に、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知の3つの検知機能を持たせることが可能になる。
【0039】
しかしながら、この場合、パッケージが大きくなる傾向があることに加え、フォトダイオード用の開口窓に加え、発光素子用の開口窓があるため、3眼(つまり、開口窓が3つ)となり、スマートフォン等の携帯機器に組み込む際のデザイン性の低下が懸念される。
【0040】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、受光素子用の開口部が1つでも、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知の3機能を併せ持ち、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、小型の光検知装置を提供することにある。
【0041】
また、本発明のさらなる目的は、このような光検知装置を搭載することにより、被検知物の近接検知機能および移動方向検知機能、並びに、照度検知機能を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様にかかる光検知装置は、照度検知用受光素子群を中心として、その周囲に、被検知物の動きを検知する複数の被検知物検知用受光素子群が配された受光部と、上記受光部を封止する透明樹脂層と、上記被検知物による反射光および周辺光を上記受光部に入射させる第1開口部を有するとともに、上記被検知物検知用受光素子群に入射する光の一部が遮光されるように上記透明樹脂層を覆う遮光部材と、を備え、かつ、上記第1開口部における上記透明樹脂層の表面は、少なくとも、上記照度検知用受光素子群を覆う部分が平坦である。
【0043】
また、本発明の一態様にかかる電子機器は、本発明の一態様にかかる上記光検知装置を備えている。
【0044】
また、本発明の一態様にかかる電子機器は、光検知装置の検知結果に基づいて検知画面上の被検知物の位置を入力する位置情報入力デバイスを備える電子機器であって、上記光検知装置として本発明の一態様にかかる上記光検知装置を搭載することにより、上記検知画面上での被検知物のスワイプ動作をタッチレス化している。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一態様によれば、受光素子用の開口部が1つでも、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知の3機能を併せ持ち、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、小型の光検知装置を提供することができる。
【0046】
また、本発明の一態様によれば、このような光検知装置を搭載することにより、被検知物の近接検知機能および移動方向検知機能、並びに、照度検知機能を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】(a)は、本発明の実施形態1にかかる光検知装置の概略構成を示す断面図であり、(b)は、本発明の実施形態1にかかる光検知装置の概略構成を示す平面図であり、(c)は、本発明の実施形態1にかかる光検知装置におけるセンサチップの概略構成を示す平面図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態1にかかる光検知装置における受光部側開口部近傍の概略構成を示す断面図であり、(b)は、本発明の実施形態1にかかる光検知装置における受光部側開口部近傍の概略構成を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態1にかかる光検知装置における照度検知用受光部近傍の概略構成を示す断面図である。
図4】(a)〜(c)は、被検知物が本発明の実施形態1にかかる光検知装置上を移動するときの被検知物の検知方法を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態2にかかる光検知装置における受光部の概略構成を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態3にかかる光検知装置の概略構成を示す平面図である。
図7】(a)は、光検知装置における受光部および発光素子の中心が受光部側開口部および発光素子側開口部の中心と一致している場合の発光素子の照射範囲を、該光検知装置の概略構成と併せて示す断面図であり、(b)は、光検知装置における受光部および発光素子の中心位置を受光部側開口部および発光素子側開口部の中心位置に対して偏芯させた場合の発光素子の照射範囲を、該光検知装置の概略構成と併せて示す断面図である。
図8】(a)は、本発明の実施形態4にかかる光検知装置の概略構成を示す断面図であり、(b)は、本発明の実施形態4にかかる光検知装置の概略構成を示す平面図である。
図9】(a)は、光検知装置の受光部側開口部における透明樹脂層の表面が平坦である場合の筐体反射を、該光検知装置の概略構成と併せて示す断面図であり、(b)は、光検知装置の受光部側開口部における透明樹脂層の表面が凹形状を有している場合の筐体反射を、該光検知装置の概略構成と併せて示す断面図である。
図10】(a)〜(c)は、フォトダイオードによる移動方向検知原理を模式的に示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図、(c)は分解図を示す。
図11】フォトダイオード上に、一定の曲率を有するレンズを配置したときの、該フォトダイオードへの相対的な入射光量の変化を示すグラフである。
図12】照度センサ用と移動方向センサ用とに別々に開口窓を設けた光検知装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0049】
なお、本発明は、以下に示す各実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更して得ることができることは当事者であれば容易に理解される。
【0050】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態にについて、図1の(a)〜(c)ないし図4の(a)〜(c)に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0051】
〈光検知装置100の概略構成〉
図1の(a)は、本実施形態にかかる光検知装置100の概略構成を示す断面図であり、図1の(b)は、本実施形態にかかる光検知装置100の概略構成を示す平面図であり、図1の(c)は、本実施形態にかかる光検知装置100におけるセンサチップ2の概略構成を示す平面図である。
【0052】
図1に示すように、本実施形態にかかる光検知装置100(光検知半導体装置)は、実装基板1、センサチップ2、発光素子3、透明樹脂層4、遮光樹脂層5(遮光部材、遮光手段)、および図示しないカラーフィルタおよび赤外線カットフィルタ等を備えている。
【0053】
センサチップ2および発光素子3は、それぞれ、実装基板1上に、互いに離間して実装されている。センサチップ2および発光素子3は、透明樹脂層4により個別に被覆(封止)されている。
【0054】
実装基板1上には、センサチップ2を透明樹脂層4で樹脂封止した第1パッケージ11と、発光素子3を透明樹脂層4で樹脂封止した第2パッケージ12とが形成されている。透明樹脂層4は、センサ部としての第1パッケージ11と、発光部としての第2パッケージ12とからなる別体(セパレート型)の樹脂封止パッケージを形成している。
【0055】
遮光樹脂層5は、第1パッケージ11および第2パッケージ12の周囲を被覆している。遮光樹脂層5は、第1パッケージ11および第2パッケージ12をまとめて1つのパッケージとしてモジュール化している。
【0056】
遮光樹脂層5には、図1の(a)・(b)に示すように、開口部5a(受光部側開口部、第1開口部)および開口部5b(発光素子側開口部、第2開口部)の2つの開口部(開口窓)が設けられている。
【0057】
開口部5aは、平面視で、センサチップ2に設けられた受光部21の真上に設けられており、透明樹脂層4で覆われた受光部21を露出させる。
【0058】
一方、開口部5bは、平面視で、発光素子3の真上に設けられており、透明樹脂層4で覆われた発光素子3を露出させる。
【0059】
以下に、上記各構成要素について、図1の(a)〜(c)ないし図3を参照してより詳細に説明する。
【0060】
図2の(a)は、本実施形態にかかる光検知装置100における開口部5a近傍の概略構成を示す断面図であり、図2の(b)は、本実施形態にかかる光検知装置100における開口部5a近傍の概略構成を示す平面図である。
【0061】
また、図3は、本実施形態にかかる光検知装置100における照度検知用受光部22近傍の概略構成を示す断面図である。
【0062】
〈実装基板1〉
実装基板1は、センサチップ2および発光素子3の実装用の基板である。実装基板1としては、例えば、セラミック基板やガラスエポキシ基板等の硬質基板が挙げられる。
【0063】
〈センサチップ2〉
センサチップ2は、いわゆるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサで構成されており、複数種類の受光素子群からなる受光部21と、センサ回路部24とを備えている。受光部21は、センサ回路部24を含む回路部の一部としてセンサチップ2に集積されており、受光した光(信号パルス光)を電流に変換することで、受光光量に応じた電流を発生させる。
【0064】
センサチップ2は、実装基板1に、図示しない接着剤で固着されている。上記接着剤としては。例えば、Ag(銀)ペースト等の導通性接着剤、絶縁ペースト等の絶縁性接着剤が挙げられる。
【0065】
また、センサチップ2上には、図示しないボンディングパッドが配されている。該ボンディングパッドは、図示しない金線等により、実装基板1に接続(ワイヤボンディング)されている。
【0066】
図1の(c)に示すように、受光部21は、照度の検出に用いられる、照度検知用受光素子群からなる照度検知用受光部22と、被検知物の近接やある地点から別の地点への移動(移動方向)といった被検知物の動き(被検知物の近接検知および移動方向)の検知に用いられる、近接/移動方向検知用受光素子群(検知物検知用受光素子群)からなる近接/移動方向検知用受光部23(検知物検知用受光部)とを備えている。
【0067】
受光部21におけるこれら受光素子群には、例えば、分割フォトダイードを用いることができる。
【0068】
近接/移動方向検知用受光部23は、それぞれ近接/移動方向検知用受光素子群からなる近接/移動方向検知用受光部23a〜22dの4つの領域に区分されている。
【0069】
近接/移動方向検知用受光部23a〜22dは、互いに同一形状を有し、受光部21の中心部に設けられた照度検知用受光部22の周りを取り囲むように配置されている。なお、近接/移動方向検知用受光部23a〜22dは、互いに同一形状を有していることで、互いに同一の面積を有している。
【0070】
なお、照度検知用受光部22および近接/移動方向検知用受光部23a〜22dは、それぞれ、適度に分割された受光素子を組み合わせて構成されている。
【0071】
例えば、照度検知用受光部22は、4分割や16分割等、光検知装置の特性により、分割されている。図1の(c)では、16分割された受光素子を使用した場合を例に挙げて図示している。
【0072】
図3に示すように、照度検知用受光部22は、可視光領域に感度ピークをもつ可視光用受光素子22VRと、赤外光領域に感度ピークを持つ赤外光用受光素子22IRとを備えている。
【0073】
また、可視光用受光素子22VRは、赤に感度ピークを有する赤用受光素子22R、緑に感度ピークを有する緑用受光素子22G、青に感度ピークを有する青用受光素子22Bを備えている。
【0074】
同様に、近接/移動方向検知用受光部23も複数の受光素子を組み合わせた構造となっている。近接/移動方向検知用受光部23を構成する近接/移動方向検知用受光素子(近接/移動方向検知用受光素子群)には、赤外光領域に感度ピークを持つ赤外光用受光素子が用いられる。
【0075】
なお、図1の(c)では、近接/移動方向検知用受光部23の形状の一例を示している。近接/移動方向検知用受光部23にどのような形状を使用するかは、光検知装置100の特性により選択することが望ましい。
【0076】
また、可視光用受光素子22VR(赤用受光素子22R、緑用受光素子22G、青用受光素子22B)および近接/移動方向検知用受光部23上には、カラーフィルタ41が設けられている。
【0077】
カラーフィルタ41は、赤色フィルタ部41R、青色フィルタ部41B、緑色フィルタ部41G、および黒色フィルタ部41BLを備えている。
【0078】
赤色フィルタ部41Rは、赤用受光素子22Rに重畳する領域に設けられている。また、青色フィルタ部41Bは、青用受光素子22Bに重畳する領域に設けられている。緑色フィルタ部41Gは、緑用受光素子22Gに重畳する領域に設けられている。黒色フィルタ部41BLは、赤外光用受光素子22IRおよび近接/移動方向検知用受光部23に重畳する領域に設けられている。
【0079】
なお、黒色フィルタ部41BLには、例えば、赤色フィルタおよび青色フィルタを積層した黒色フィルタが用いられる。
【0080】
このように、可視光用受光素子22VRおよび近接/移動方向検知用受光部23は、それぞれカラーフィルタ41を介して光を受光することから、それぞれの感度ピークを有することができる。
【0081】
なお、照度検知用受光部22の前方(受光面側)には、赤外線カットフィルタ42が設けられていてもよい。
【0082】
一般的に、照度センサには、人間の視感度に近い分光特性が要求される。視感度に近い分光特性とは、主に可視光域に感度を有している分光感度特性のことである。
【0083】
このため、照度検知用受光部22は、人間の視感度に近い分光特性が得られるように、赤外成分を除去し、人間の視感度特性に合わせて周囲の明るさを検出することが望ましい。一方、近接/移動方向検知用受光部23では、赤外光を利用することにより近接を検知するため、近接/移動方向検知用受光部23が受光する光には、赤外成分が選択的に含まれていることが好ましい。
【0084】
このため、赤外線カットフィルタ42は、図3に示すように、照度検知用受光部22の前方にのみ設けられる。
【0085】
また、このように照度検知用受光部22の前方に赤外線カットフィルタ42を設けることで、受光素子3から放射された赤外線が照度検知用受光部22に入射することを防止することができる。このため、発光素子3と、透明樹脂層4、照度検知用受光部22を有するセンサチップ2とを、同一実装基板1に実装し、一体型パッケージ内に収容することができるので、小型化された光検知装置100を得ることができる。
【0086】
なお、上記赤外線カットフィルタ42は、赤外線を除去する金属多層膜を備えていることが好ましい。
【0087】
金属多層膜は、可視光は透過させるが赤外線は反射する。これにより、照度検知用受光部22への赤外線の入射をさらに確実に防止することができるので、照度検知用受光部22による照度測定の精度が向上する。したがってより照度検知精度の高い光検知装置100を提供することができる。
【0088】
なお、受光部21による被検知物の検知については、後述する。
【0089】
〈発光素子〉
発光素子3は、赤外光を発光する発光源であり、いわゆるLED(発光ダイオード)チップで構成されている。発光素子3は、センサチップ2同様、実装基板1に、図示しない接着剤で固着されている。発光素子3の接着に使用される接着剤層には、例えば、Agペースト等の導通性接着剤、絶縁ペースト等の絶縁性接着剤等、センサチップ2の接着に使用される接着剤と同様の接着剤を用いることができる。
【0090】
また、発光素子3上には、図示しないボンディングパッドが配されている。該ボンディングパッドは、図示しない金線等により、実装基板1に接続(ワイヤボンディング)されている。
【0091】
〈透明樹脂層4〉
センサチップ2および発光素子3を覆っている第1の封止樹脂である透明樹脂層4に用いられる透明樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0092】
透明樹脂層4は、発光素子3側とセンサチップ2側とに分割されて第1パッケージ11と第2パッケージ12とを形成しており、発光素子3から受光部21に信号パルス光が直接侵入しない構造となっている。
【0093】
第1パッケージ11の樹脂形状、つまり、発光素子3を覆う透明樹脂層4の形状としては、発光素子3から射出される赤外光を集光するために、一定の曲率を持つレンズ形状を有していることが望ましい。このレンズ形状(レンズの曲率)、具体的には、開口部5bから露出している透明樹脂層4の表面の曲率は、光検知装置100上の被検出物の検知距離や移動方向の検知範囲により適宜変更される。
【0094】
一方、第2パッケージ12の樹脂形状、つまり、センサチップ2を覆う透明樹脂層4の形状としては、少なくとも、照度検知用受光部22に入射する信号光が通過する範囲は、完全に平坦な形状に形成される。つまり、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面は、少なくとも、照度検知用受光部22を覆う部分が平坦な形状となっている。これは、照度検知時の光源角度依存性を抑制することを目的としている。
【0095】
なお、図1の(a)および図2では、透明樹脂層4における受光部21を覆う部分が平坦であり、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面全体が平坦である場合を例に挙げて図示している。
【0096】
〈遮光樹脂層5〉
第1パッケージ11および第2パッケージ12は、その外周が、遮光樹脂層5で覆われている。遮光樹脂層5に用いられる遮光樹脂は、全波長の光を遮断する。
【0097】
これにより、遮光樹脂層5は、発光素子3から受光部21に直接入射する迷光(クロストーク)を遮断するとともに、受光部21および発光素子3への外乱光等の不要な外来光の入射を防止する。
【0098】
遮光樹脂層5に用いられる遮光樹脂としては、例えば、可視光および赤外光を遮断する染料や顔料等を含む樹脂が挙げられる。このような遮光樹脂としては、例えば、カーボンブラックを含む樹脂等が挙げられる。
【0099】
遮光樹脂層5には、前述したように、センサチップ2の受光部21および発光素子3の真上の部分の透明樹脂層4を露出させる開口部5a・5bが設けられている。
【0100】
これにより、信号パルス光が、開口部5a・5bを通じて、露出された透明樹脂層4を透過できるようになっている。具体的には、開口部5aは、被検知物による反射光(反射パルス光)および周辺光を受光部21に入射させる。また、開口部5bは、発光素子3から被検知物に照射される光を透過させる。
【0101】
なお、開口部5aは、平面視で(つまり、実装基板1の法線方向(Z方向)から見たときに)、受光部21の中心と開口部5aの中心とが一致するように形成される。また、開口部5bは、平面視で、発光素子3の中心と開口部5bの中心とが一致するように形成される。
【0102】
このように、本実施形態では、受光部21上に、遮光樹脂層5の開口部5a(アパーチャ)を設けるが、該開口部5aは、図2の(b)に示すように、受光部21の真上から光を照射したときに、近接/移動方向検知用受光部23に一定量の影31を作ることができるように形成される。なお、影31は、被検知物の移動に伴って移動する。
【0103】
このとき、近接/移動方向検知用受光部23に影31が形成されるように遮光樹脂層5が形成されていることで、被検知物が移動したときの影31の移動による、照度検知用受光部22を挟んで左右または上下に配された近接/移動方向検知用受光部23a〜22dに入射する光量の差を、センシティブに検知することが可能となる。
【0104】
なお、仮に、受光部21の真上から光を照射したときに受光部21上に影ができない程度に開口部5aが大きい場合、受光部21の真上を被検知物が移動したときに、照度検知用受光部22を挟んで左右または上下に配された近接/移動方向検知用受光部23a〜22dに入射する光量変化がない領域が発生する。
【0105】
したがって、たとえ、受光部21の真上から光を照射したときに受光部21と開口部5aから得られるスポットサイズとが同じであったとしても、製造バラツキによる移動方向検知の特性に影響が生じる。
【0106】
上述したように、開口部5aは、平面視で、受光部21の中心と開口部5aの中心とが一致するように形成されるが、±50μm程度は製造バラツキが発生する。
【0107】
このため、受光部21の中心と開口部5aの中心とが±50μm程度ずれたとしても十分に移動方向検知特性に影響が発生しない程度に、受光部21と開口部5aから得られるスポットサイズとをオーバーラップさせる必要がある。
【0108】
また、遮光樹脂層5における各開口部5a・5bは、透明樹脂層4側ほど縮径するテーパ形状を有している。すなわち、遮光樹脂層5における各開口部5a・5bの開口内壁は、庇状の傾斜面を有している。
【0109】
この理由としては、主に、以下の2つの理由が挙げられる。第1に、開口部5a・5bは、金型成型で形成され、金型から製品を離型する際には、抜きテーパが必要になるためである。また、第2に、被検知物の移動方向の検知において、検知範囲は広い方が望ましいが、開口部5aに傾斜がない場合、方向検知範囲が狭くなるためである。なお、筺体反射の影響を考慮する必要がなく、金型製造上、問題(成型不良等)がなければ、傾斜は大きくしておいた方が、検知特性が良好となる。
【0110】
図1の(a)、図2の(a)では、各開口部5a・5bにおける開口内壁に35度の傾斜をつけた場合を例に挙げて示しているが、加工の制約や、発光素子3からの筺体反射を防止するために、傾斜を変更する場合も考えられる。
【0111】
例えば、開口部5a・5bの傾斜を35度とした場合、成型不良が発生したり、筺体反射が入り込み易かったりする等のデメリットがある。そこで、この改善策として、開口部5a・5bの傾斜を、例えば10度あるいは5度程度に変更することにより、このようなデメリットを回避することができる。
【0112】
〈被検知物の近接/移動方向検知〉
ここで、近接/移動方向検知用受光部23による被検知物の近接および移動方向検知について説明する。
【0113】
光検知装置100は、センサチップ2と発光素子3とを同一のパッケージ内に備えることで、発光素子3を発光してパルス光を被検知物に照射し、該被検知物から反射または散乱(以下、「反射/散乱」と記す)された受光素子3からの信号パルス光を検出して、被検知物の近接具体を感知する。
【0114】
センサ回路部24は、近接/移動方向検知用受光部23への信号パルス光の入射量に基づいて被検知物の近接具合を判断するとともに、近接/移動方向検知用受光部23a〜22dへの入射光量の比により、被検知物の移動方向を判定する。
【0115】
センサ回路部24は、近接/移動方向検知用受光部23a〜22dでの信号パルス光の受光電流を受光電圧に変換し、この受光電圧を、予め設定された閾値電圧と比較することによって、被検知物の近接具合および被検知物の移動方向を判断する。
【0116】
より具体的には、発光素子3を発光させ、被検出物からの反射光(赤外光)を近接/移動方向検知用受光部23で検出し、被検知物で反射された赤外光による近接/移動方向検知用受光部23での受光電流と周辺照度による近接/移動方向検知用受光部23での受光電流との受光電流差を、センサ回路部24により受光電圧に変換し、該受光電圧を、予め設定された近接閾値電圧と比較することによって、被検知物の近接検知が行われる。
【0117】
また、被検知物の移動方向は、近接/移動方向検知用受光部23a〜23dにおける入射光量の比により判定される。
【0118】
以下に、近接/移動方向検知用受光部23による被検知物の移動方向の検知方法について、図4の(a)〜(c)を参照してより詳細に説明する。
【0119】
図4の(a)〜(c)は、被検知物が光検知装置100上を移動するときの被検知物の検知方法を模式的に示す図である。
【0120】
なお、図4の(a)〜(c)では、それぞれ、光検知装置100に対して被検知物が右から左に移動するときの光検知装置100における受光部21近傍の概略構成を示す断面図および平面図を並べて示している。ここで、図4の(a)は、被検知物が、受光部21に対し、左上方に位置する場合を示している。また、図4の(a)は、被検知物が、受光部21の真上に位置する場合を示している。図4の(c)は、被検知物が、受光部21の右上方に位置する場合を示している。
【0121】
図4の(a)〜(c)に示すように被検知物が、光検知装置100上の検知エリアを左から右へと移動するとき、まず、被検知物は、左側の検知エリアを照射している発光素子3から照射されたパルス光を乱反射し、反射された信号パルス光の一部は、受光部21(近接/移動方向検知用受光部23)方向に進むが、遮光樹脂層5で形成された開口部5aを通る信号パルス光のみ、受光部21(近接/移動方向検知用受光部23)に入射する。
【0122】
このとき、図4の(a)に示すように、近接/移動方向検知用受光部23aには、遮光樹脂層5により作られた庇(つまり、開口部5aの傾斜した内壁面)により、殆ど信号パルス光は入射しないが、反対側に配置された近接/移動方向検知用受光部23cには、遮光樹脂層5で信号パルス光が遮られることなく入射する。
【0123】
この信号パルス光の照射範囲は、被検知物が移動するにつれて変化する。被検知物が、受光部21の真上の検知エリアに到達したときには、図4の(b)に示すように、近接/移動方向検知用受光部23aと近接/移動方向検知用受光部23cとには、ほぼ同じ光量だけ信号パルス光が入射する。
【0124】
次いで、図4の(c)に示すように、被検知物が光検知装置100の右側の検知エリアに到達したときには、近接/移動方向検知用受光部23aに信号パルス光は多く入射するが、反面、近接/移動方向検知用受光部23cには殆ど信号パルス光が入射しなくなる。
【0125】
本実施形態では、上述したように遮光樹脂層5で信号パルス光を選択的に遮断し、4つの近接/移動方向検知用受光部23a〜23dに到達する信号パルス光の入射量により、被検知物の移動方向を判定する。なお、遮光樹脂層5で形成される開口部5aは、検出範囲により、適切な傾斜を設けることができる。
【0126】
〈照度検知〉
次に、照度検知用受光部22による照度検知方法について説明する。
【0127】
前述したように、照度検知用受光部22は、人間の視感度に近い分光特性が得られるように、赤外成分を除去し、人間の視感度特性に合わせて周囲の明るさを検出することが望ましい。
【0128】
そこで、本実施形態では、センサ回路部24により、可視光領域である可視光用受光素子22VRで受光した光量から、赤外光領域である赤外光用受光素子22IRで受光した光量を差し引くことにより、人間の視感度に合わせるように周辺照度を演算する。
【0129】
これにより、照度検知用受光部22では、可視光用受光素子22VRおよび赤外光用受光素子22IRが検出した受光電流に基づく受光信号出力を演算して周辺照度を検出し、発光素子3を発光させたときに被検出物から反射した赤外光による赤外光用受光素子22IRでの受光電流と周辺照度による赤外光用受光素子22IRでの受光電流との受光電流差に基づいて被検出物を検出する。
【0130】
〈効果〉
以上のように、本実施形態によれば、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面、特に、該表面における少なくとも照度検知用受光部22を覆う部分が平坦であることで、照度検知に際し、レンズ効果を無くすことができる。このため、入射光量の低下を抑制することができるので、照度検知用受光部22に入射する周辺光量の角度依存性を抑制することができる。
【0131】
また、このように開口部5aにおける透明樹脂層4がレンズ形状を有していないことで、レンズ効果に起因する角度依存性は無くなるが、上述したように近接/移動方向検知用受光部23に入射する信号パルス光の一部を選択的に遮断することにより、被検知物の位置変化による角度依存性を確保できる。このため、開口部5aにおける透明樹脂層4がレンズ形状を有していなくても、良好な移動方向検知特性を得ることができる。
【0132】
また、上述したように、受光部21が、照度検知用受光部22を中心として、その周囲に、近接/移動方向検知用受光部23a〜22dが配置されており、第1パッケージ11を覆う遮光樹脂層5に、開口部5aが1つだけ設けられている(言い換えれば、遮光樹脂層5に、センサチップ2に対し、1つだけ開口部が設けられている)ことで、受光素子3に対する開口部5bを含めて2眼(つまり、開口窓が2つ)の光検知装置100を実現することができる。これにより、光検知装置100をスマートフォン等の携帯機器に組み込む際のデザイン性の自由度を向上させることができる。
【0133】
したがって、本実施形態によれば、受光素子用の開口部が1つでも、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知の3機能を併せ持ち、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、小型の光検知装置を提供することができる。
【0134】
〈変形例〉
なお、本実施形態では、透明樹脂層4を覆う遮光部材として、遮光樹脂層5を例に挙げて説明した。しかしながら、該遮光部材としては、可視光および赤外光を遮光することができればよく、遮光樹脂層5に代えて、金属ケース等を用いても構わない。
【0135】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、主に、実施形態1との相違点について説明するものとし、同じ構成についてはその説明を省略する。また、実施形態1で用いた構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一部分あるいは同様の機能についての説明は省略する。また、本実施形態でも、実施形態1と同様の変形が可能であることは言うまでもない。
【0136】
〈近接/移動方向検知用受光部23の形状〉
図5は、本実施形態にかかる光検知装置100における受光部21の概略構成を示す平面図である。
【0137】
実施形態1では、照度検知用受光部22の四方に配置された近接/移動方向検知用受光部23a〜23dを何れも同一形状とした。このため、実施形態1における光検知装置100の近接/移動方向検知用受光部23a〜23dは、何れも同一面積を有していた。
【0138】
これは、前述したように、近接/移動方向検知用受光部23a〜22dに入射する信号パルス光の光量により、被検知物の移動方向を検出するためである。
【0139】
ここで、近接/移動方向検知用受光部23a〜22dへの入射光量を増やすためには、ある一定以上の受光面積を確保する必要がある。
【0140】
しかしながら、入射光量を増やすために近接/移動方向検知用受光部23a〜22dの受光面積を大きくする場合、各近接/移動方向検知用受光部23a〜22dで均一な受光面積を確保しようとすると、センサチップ2の面積は必然的に大きくなる。この結果、センサチップ2を封止している透明樹脂層4および遮光樹脂層5で構成されるパッケージの大きさも大きくなる。
【0141】
光検知装置100は、主にスマートフォンやタブレット等の携帯機器に搭載されるため、光検知装置100が大きくなった場合、実装する携帯機器等のデザイン性を損ねる可能性がある。
【0142】
このため、本実施形態では、受光面積を確保しつつ、パッケージ、言い換えれば、光検知装置100の大きさを大きくしないために、照度検知用受光部22の周辺に配置した近接/移動方向検知用受光部23a〜22d間で、その大きさを変更している。
【0143】
但し、近接/移動方向検知用受光部23aと近接/移動方向検知用受光部23cとは同じ形状を有し、互いに同じ受光面積を有している。また、近接/移動方向検知用受光部23bと近接/移動方向検知用受光部23dとは同じ形状を有し、互いに同じ受光面積を有している。
【0144】
〈効果〉
被検知物の移動方向検知は、近接/移動方向検知用受光部23aと近接/移動方向検知用受光部23cとの受光量比、および、近接/移動方向検知用受光部23bと近接/移動方向検知用受光部23dとの受光量比を比較することにより行われる。
【0145】
このため、図5に示すように、光検知装置100の短辺方向(第1方向)の移動方向検知用受光部と長辺方向(第1方向に直交する第2方向)の移動方向検知用受光部とが異なる受光面積を有する(言い換えれば、異なる形状を有する)とともに、照度検知用受光部22を挟んで向かい合う近接/移動方向検知用受光部を互いに同じ形状にして受光面積を揃えることで、入射する受光量比を正確に検出しつつ、パッケージサイズを小さくすることができる。
【0146】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図6および図7の(a)・(b)に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、主に、実施形態1との相違点について説明するものとし、同じ構成についてはその説明を省略する。また、実施形態1で用いた構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一部分あるいは同様の機能についての説明は省略する。また、本実施形態でも、実施形態1で示す変形例あるいは実施形態2と同様の変形が可能であることは言うまでもない。
【0147】
〈受光部21および発光素子3の配置〉
図6は、本実施形態にかかる光検知装置100の概略構成を示す平面図である。
【0148】
実施形態1では、平面視で、受光部21の中心と開口部5aの中心とが一致し、発光素子3の中心と開口部5bの中心とが一致するように、開口部5a・5bが形成されている場合を例に挙げて説明した。
【0149】
これに対し、本実施形態にかかる光検知装置100では、図6に示すように、平面視で、受光部21および発光素子3のそれぞれの中心位置を、開口部5a・5bのそれぞれの中心位置に対してそれぞれ同じ方向に偏芯させている。なお、図6に、平面視での開口部5a・5bのそれぞれの中心線を二点鎖線で示す。
【0150】
このように、受光部21および発光素子3のそれぞれの中心(中心位置)を、開口部5a・5bのそれぞれの中心に対して偏芯させることで、発光素子3の照射範囲(言い換えれば被検知物の検知範囲)をシフトさせることができる。
【0151】
〈検知範囲のシフト〉
ここで、本実施形態にかかる光検知装置100による検知範囲のシフトについて、図7の(a)・(b)を参照して以下に説明する。
【0152】
図7の(a)は、平面視での受光部21および発光素子3の中心が開口部5a・5bと一致している場合の発光素子3の照射範囲を、光検知装置100の概略構成と併せて示す断面図であり、図7の(b)は、平面視での受光部21および発光素子3の中心を平面視での開口部5a・5bの中心に対して偏芯させた場合の発光素子3の照射範囲を、光検知装置100の概略構成と併せて示す断面図である。なお、図7の(b)は、図6に示す光検知装置100のA−A線断面に相当する。
【0153】
平面視での受光部21および発光素子3の中心が平面視での開口部5a・5bの中心と一致している場合、図7の(a)に示すように、被検出物の移動方向検知範囲および近接/非近接検知範囲は、光検知装置100の直上の中心付近となる。
【0154】
これに対し、平面視での受光部21および発光素子3の中心を平面視での開口部5a・5bの中心に対して偏芯させた場合、被検知物の検出範囲を、該偏芯方向と逆方向に移動させることができる。
【0155】
つまり、平面視における発光素子3の中心をレンズ中心(開口部5bの中心)に対して偏芯させると、図7の(b)に示すように、発光素子3から照射された信号パルス光は、レンズにより偏芯させた方向と反対側に照射され、図7の(a)に示すように光検知装置100の真上から、一定量ずれた位置に照射される。
【0156】
〈効果〉
例えば、図6に示すように発光素子3としてLEDチップを使用し、受光部21および発光素子3を、レンズ中心(図6に示す開口部5a・5bの中心線)から短軸方向(図6中、上方向(Y方向))に75μmシフトさせると、被検知物の検知範囲は、偏芯方向(素子シフト方向)と反対側に、20mm程度シフトする。
【0157】
このことから、本実施形態にかかる光検知装置100を、例えば、タッチパネルのように光検知装置の検知結果に基づいて検知画面上の被検知物の位置を入力する位置情報入力デバイスそのもの、あるいは、該位置情報入力デバイスを備えた、スマートフォン等の、電子機器に搭載した場合、光検知装置100が搭載される位置情報入力デバイスの外周から検知画面上に、検知範囲を移動させることが可能となる。
【0158】
これにより、このような位置情報入力デバイスにおける、検知画面上での被検知物によるスワイプ動作等の位置検出を必要とする動作をタッチレス化することができるとともに、タッチレス化を図りながらも、タッチパネルと同様の操作感を得ることができる。
【0159】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について、図8の(a)・(b)および図9の(a)・(b)に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、主に、実施形態1との相違点について説明するものとし、同じ構成についてはその説明を省略する。また、実施形態1で用いた構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一部分あるいは同様の機能についての説明は省略する。また、本実施形態でも、実施形態1で示す変形例あるいは実施形態2、3と同様の変形が可能であることは言うまでもない。
【0160】
〈開口部5aにおける透明樹脂層4の表面形状〉
図8の(a)は、本実施形態にかかる光検知装置100の概略構成を示す断面図であり、図8の(b)は、本実施形態にかかる光検知装置100の概略構成を示す平面図である。
【0161】
光検知装置100は、携帯電話、スマートフォン、タブレット型情報端末、携帯型コンピュータ、デジタルカメラ等の表示画面付きモバイル機器等の電子機器に好適に搭載することができる。
【0162】
このような電子機器に光検知装置100を搭載する場合、光検知装置100上に、ガラスや樹脂等で作製された筺体(筐体カバー)が取り付けられる。
【0163】
しかしながら、このように筺体が取り付けられた状態で、発光素子3から赤外光等を発光した場合、光検知装置100上に設置された筺体により、光が反射・屈折(筺体反射)し、受光部21に入射することがある。
【0164】
従来の近接照度センサは、このような筺体反射の影響を軽減するため、検知範囲内(権利エリア内)に被検知物が存在する状態での反射光量から、検知範囲内に被検知物が存在しない状態での反射光量を差し引く対策(オフセットキャンセル)をとっている。
【0165】
しかしながら、筺体反射量が非常に多く、受光素子が飽和してしまった場合には、このような対策では不十分である。このため、筺体反射を受光素子に入射しないような対策が必要である。
【0166】
そこで、本実施形態にかかる光検知装置100では、透明樹脂層4からなる、実施形態1における受光部21上のフラットレンズ(受光素子側フラットレンズ)の表面を凹ませている。
【0167】
つまり、実施形態1〜3では、実施形態1において図1の(a)、図2、および図4の(a)〜(c)で図示したように、透明樹脂層4における受光部21を覆う部分が平坦であり、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面全体が平坦であるものとして説明した。
【0168】
これに対し、本実施形態では、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面に凹部4aを設けている。
【0169】
但し、本実施形態でも、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面における照度検知用受光部22を覆う部分(つまり、照度検知用受光部22に入射する信号光が通る範囲)は、曲率や傾斜を設けず、平坦な形状としている。
【0170】
これにより、本実施形態でも、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面における照度検知用受光部22を覆う部分が平坦であることで、照度検知に際し、レンズ効果を無くすことができる。このため、入射光量の低下を抑制することができるので、照度検知用受光部22に入射する周辺光量の角度依存性を抑制することができる。
【0171】
〈本実施形態に特有の効果〉
本実施形態によれば、上述した効果に加えて、筺体反射を受光部21から逃がすことができるため、筺体反射を大幅に減らすことが可能となり、上記オフセットキャンセル機能と併用することにより、筺体反射の影響を無くすことが可能となる。このため、電子機器への光検知装置100の搭載時の制約も少なくなる。
【0172】
以下に、図9の(a)・(b)を参照して、本実施形態にかかる光検知装置100による効果を、より詳細に説明する。
【0173】
図9の(a)は、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面が平坦である場合の筐体反射を、光検知装置100の概略構成と併せて示す断面図であり、図9の(b)は、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面が凹形状を有している場合の筐体反射を、光検知装置100の概略構成と併せて示す断面図である。
【0174】
図9の(a)・(b)に示すように、光検知装置100を備えた電子機器では、光検知装置100上に、ガラスや樹脂等で作製された筺体101(筐体カバー)が取り付けられている。すなわち、図9の(a)・(b)は、光検知装置100を備えた電子機器の要部の概略構成を示す図でもある。
【0175】
図9の(a)・(b)に示すように、光検知装置100上に筺体101(筐体カバー)が取り付けられている状態で周辺照度を検出する場合、照度検知用受光部22に入射する周辺光は、透明樹脂層4で形成された平坦な樹脂レンズ部分を通過するため、曲率を持つレンズによる集光は無く、照度値の角度依存性は、照度のコサイン特性のみに依存する。このため、周辺光量の入射角度が変化することによる検出照度値の変化は抑えられる。
【0176】
しかしながら、筺体反射を受けやすい近接/移動方向検知用受光部23、特に、発光源である発光素子3と反対側に配置されている近接/移動方向検知用受光部23aは、図9の(a)に模式的に示すように、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面が平坦である場合(フラットレンズの場合)、筺体と光検知装置100との間隔により、筺体反射によるノイズ光量が信号パルス光量よりも多くなる。このため、被検知物の近接や、ある地点から別の地点への移動(移動方向)といった被検知物の動きは、正常に検知できない場合がある。
【0177】
しかしながら、図12の(b)に模式的に示すように、開口部5aにおける透明樹脂層4の表面に凹部4aを形成して筺体反射によるノイズ光を受光部21以外の領域に逃がすことで、光検知装置100に入射する、筺体反射によるノイズ光を、受光部21の外に排除することができ、筺体反射の影響を少なくすることができる。
【0178】
これにより、本実施形態によれば、周辺光源の入射角度による照度の変化を最低限に抑えるとともに、光検知装置100上に設置する、ガラス等の筺体101による反射(筺体反射)が、受光部21に入射することによる信号光検出不可能状態を防止することができる。
【0179】
したがって、上記光検知装置100を、上述したモバイル機器等の電子機器に搭載することで、被検知物の近接検知機能および移動方向検知機能、並びに、照度検知機能を備え、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、利便性が高い電子機器を提供することができる。
【0180】
〔まとめ〕
本発明の態様1にかかる光検知装置100は、照度検知用受光素子群(照度検知用受光部22)を中心として、その周囲に、被検知物の動きを検知する複数の被検知物検知用受光素子群(近接/移動方向検知用受光部23a〜22d)が配された受光部21と、上記受光部21を封止する透明樹脂層4(第1パッケージ11を構成する透明樹脂層4)と、上記被検知物による反射光および周辺光を上記受光部21に入射させる第1開口部(開口部5a)を有するとともに、上記被検知物検知用受光素子群に入射する光の一部が遮光されるように上記透明樹脂層4を覆う遮光部材(例えば遮光樹脂層5あるいは金属カバー等)と、を備え、かつ、上記第1開口部における上記透明樹脂層4の表面は、少なくとも、上記照度検知用受光素子群を覆う部分が平坦である。
【0181】
上記の構成によれば、第1開口部における透明樹脂層4の表面、特に、該表面における少なくとも照度検知用受光素子群を覆う部分が平坦であることで、照度検知に際し、レンズ効果を無くすことができる。このため、入射光量の低下を抑制することができるので、照度検知用受光素子群に入射する周辺光量の角度依存性を抑制することができる。
【0182】
また、被検知物検知用受光素子群は、被検知物の近接や、ある地点から別の地点への移動(移動方向)といった被検知物の動きを検知するための受光素子群である。被検知物検知用受光素子群は、各被検知物検知用受光素子群への光(信号パルス光)の入射量に基づいて被検知物の近接具合を判断することができるとともに、上述したように、照度検知用受光素子群を中心として、その周囲に複数配されていることで、各被検知物検知用受光素子群における入射光量の比により、被検知物の移動方向を検知することができる。すなわち、被検知物検知用受光素子群は、被検知物の近接検知用受光素子(近接検知用受光素子群)としての機能を有するのみならず、被検知物の移動方向を検知する移動方向検知用受光素子(移動方向検知用受光素子群)としての機能を有する。
【0183】
このとき、第1開口部における透明樹脂層4が平坦であり、レンズ形状を有していないことで、レンズ効果に起因する角度依存性は無くなるが、上述したように被検知物検知用受光素子群に入射する信号パルス光の一部を選択的に遮断することにより、被検知物の位置変化による角度依存性を確保できる。このため、第1開口部における透明樹脂層4がレンズ形状を有していなくても、良好な移動方向検知特性を得ることができる。
【0184】
また、上述したように、受光部21が、照度検知用受光素子群を中心として、その周囲に、複数の被検知物検知用受光素子群が配置されており、該受光部21を封止する透明樹脂層4を覆う遮光部材に、受光部21用(受光素子用)の開口部としては第1開口部一つだけしか開口部が設けられていないことで、光検知装置100をスマートフォン等の携帯機器に組み込む際のデザイン性の自由度を向上させることができる。
【0185】
したがって、上記の構成によれば、受光素子用の開口部が1つでも、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知の3機能を併せ持ち、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、小型の光検知装置を提供することができる。
【0186】
本発明の態様2にかかる光検知装置100は、上記態様1において、上記被検知物検知用受光素子群は、上記照度検知用受光素子群を囲むように、互いに直交する第1方向および第2方向に、上記照度検知用受光素子群を挟んで互いに対向して設けられており、上記第1方向に配された被検知物検知用受光素子群と上記第2方向に配された被検知物検知用受光素子群とは、受光面積が互いに異なっており、かつ、上記照度検知用受光素子群を挟んで互いに対向する被検知物検知用受光素子群は、互いに同じ形状を有している構成であってもよい。
【0187】
例えば、平面視で、当該光検知装置100は矩形状であり、短辺方向の移動方向検知用受光素子群と長辺方向の移動方向検知用受光素子群とが異なる受光面積を有するとともに、上記照度検知用受光素子群を挟んで向かい合う移動方向検知用受光素子群の形状が同じであってもよい。
【0188】
上記の構成によれば、被検出物の移動方向を検知するための受光素子群が大きくなることによるパッケージサイズの拡大を防ぐことができる。
【0189】
本発明の態様3にかかる光検知装置100は、上記態様1または2において、上記照度検知用受光素子群は、赤に感度ピークを有する受光素子(赤用受光素子22R)と、青に感度ピークを有する受光素子(青用受光素子22B)と、緑に感度ピークを有する受光素子(緑用受光素子22G)と、赤外光に感度ピークを有する受光素子(赤外光用受光素子22IR)とを有している構成であってもよい。
【0190】
一般的に、照度センサには、人間の視感度に近い分光特性が要求される。視感度に近い分光特性とは、主に可視光域に感度を有している分光感度特性のことである。
【0191】
このため、上記照度検知用受光素子群は、人間の視感度に近い分光特性が得られるように、赤外成分を除去し、人間の視感度特性に合わせて周囲の明るさを検出することが望ましい。
【0192】
上記の構成によれば、上記照度検知用受光素子群が、可視光用受光素子として、赤に感度ピークを有する受光素子と、青に感度ピークを有する受光素子と、緑に感度ピークを有する受光素子とを有するとともに、赤外光に感度ピークを有する受光素子とを有していることで、各可視光用受光素子で受光した光量から、赤外光に感度ピークを有する受光素子で受光した光量を差し引くことにより、人間の視感度に合わせるように周辺照度を演算することができる。このため、人間の視感度に近い分光特性を得ることができる。
【0193】
本発明の態様4にかかる光検知装置100は、上記態様1〜3の何れかにおいて、上記被検知物に光を照射する発光素子3と、上記発光素子3を封止する透明樹脂層4(第2パッケージ12を構成する透明樹脂層4)と、をさらに備え、上記遮光部材は、上記発光素子3を封止する透明樹脂層4をさらに覆うとともに、上記発光素子3から上記被検知物に照射される光を透過させる第2開口部(開口部5b)を有している構成であってもよい。
【0194】
上記の構成によれば、発光素子3と、照度検知用受光素子群(照度検知用受光部22)を中心として、その周囲に、被検知物の動きを検知する複数の被検知物検知用受光素子群(近接/移動方向検知用受光部23a〜22d)が配された受光部21と、上記発光素子3および上記受光部21をそれぞれ封止する透明樹脂層4と、上記透明樹脂層4を覆うとともに、上記被検知物による反射光および周辺光を上記受光部21に入射させる第1開口部と、上記発光素子3から上記被検知物に照射される光を透過させる第2開口部とを有する遮光部材と、を備え、上記第1開口部における上記透明樹脂層4の表面は、少なくとも、上記照度検知用受光素子群を覆う部分が平坦であり、かつ、上記遮光部材は、上記被検知物検知用受光素子群に入射する上記反射光の一部が遮光されるように配されている光検知装置100を提供することができる。
【0195】
したがって、上記の構成によれば、受光素子用の開口部が1つでも、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知の3機能を併せ持ち、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑え、発光素子3および受光部21が同一パッケージ内に収容された、2眼の小型の光検知装置100を提供することができる。
【0196】
本発明の態様5にかかる光検知装置100は、上記態様4において、平面視で、上記発光素子3および受光部21の中心位置は、上記第1開口部および上記第2開口部の中心位置に対してそれぞれ同じ方向に偏芯されている構成であってもよい。
【0197】
上記の構成によれば、上記光検知装置100を、例えば、タッチパネルのように光検知装置の検知結果に基づいて検知画面上の被検知物の位置を入力する位置情報入力デバイスそのもの、あるいは、該位置情報入力デバイスを備えた、スマートフォン等の、電子機器に搭載した場合、光検知装置100が搭載される位置情報入力デバイスの外周から検知画面上に、検知範囲を移動させることが可能となる。
【0198】
したがって、上記の構成によれば、このような位置情報入力デバイスにおける、検知画面上での被検知物によるスワイプ動作等の位置検出を必要とする動作をタッチレス化することができるとともに、タッチレス化を図りながらも、タッチパネルと同様の操作感を得ることができる。
【0199】
本発明の態様6にかかる光検知装置100は、上記態様1〜5の何れかにおいて、上記第1開口部における上記透明樹脂層4の表面は凹形状を有している構成であってもよい。
【0200】
上記の構成によれば、上記光検知装置100をモバイル機器等の電子機器に搭載した場合に、光検知装置100上に設置する、ガラス等の筺体による反射(筺体反射)によるノイズ光を受光部21以外の領域に逃がすことができる、筺体反射の影響を少なくすることができる。
【0201】
これにより、上記の構成によれば、周辺光源の入射角度による照度の変化を最低限に抑えるとともに、筺体反射が、受光部21に入射することによる信号光検出不可能状態を防止することができる。
【0202】
したがって、上記の構成によれば、上記光検知装置100を、上述したモバイル機器等の電子機器に搭載することで、被検知物の近接検知機能および移動方向検知機能、並びに、照度検知機能を備え、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、利便性が高い電子機器を提供することができる。
【0203】
本発明の態様7にかかる電子機器は、上記態様1〜6の何れかに記載の光検知装置100を備えている。
【0204】
本発明の態様8にかかる電子機器は、光検知装置の検知結果に基づいて検知画面上の被検知物の位置を入力する位置情報入力デバイスを備える電子機器であって、上記光検知装置として上記態様1〜6の何れかに記載の光検知装置100を搭載することにより、上記検知画面上での被検知物のスワイプ動作をタッチレス化している。
【0205】
これら態様7または8によれば、上記光検知装置100を、上述した電子機器に搭載することで、被検知物の近接検知機能および移動方向検知機能、並びに、照度検知機能を備え、良好な被検知物の移動方向検知が可能で、かつ、照度の角度依存性を抑えた、利便性が高い電子機器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明の光検知装置は、単一の受光部を用いた簡単な構成により、被検知物の近接検知および移動方向検知、並びに、照度検知が可能な、小型かつ低コストな光検知装置であり、携帯電話、スマートフォン、タブレット型情報端末、携帯型コンピュータ、デジタルカメラ等の表示画面付きモバイル機器等の電子機器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0207】
1 実装基板
2 センサチップ
3 受光素子
4 透明樹脂層
4a 凹部
5 遮光樹脂層
5a 開口部(第1開口部)
5b 開口部(第2開口部)
11 第1パッケージ
12 第2パッケージ
21 受光部
22 照度検知用受光部
22B 青用受光素子
22G 緑用受光素子
22IR 赤外光用受光素子
22R 赤用受光素子
22VR 可視光用受光素子
23、23a〜22d 近接/移動方向検知用受光部(被検知物検知用受光素子群)
24 センサ回路部
41 カラーフィルタ
41B 青色フィルタ部
41BL 黒色フィルタ部
41G 緑色フィルタ部
41R 赤色フィルタ部
42 赤外線カットフィルタ
100 光検知装置
101 筺体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12