特許第6223786号(P6223786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223786
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】硬脆材料用研磨液組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20171023BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20171023BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20171023BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550Z
   C09G1/02
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-234190(P2013-234190)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-93932(P2015-93932A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】細川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/141111(WO,A1)
【文献】 特開2001−342455(JP,A)
【文献】 特開2004−327614(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 37/00
C09G 1/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が80〜500nmである大粒径シリカ粒子(成分A)と、平均一次粒子径が5〜70nmである小粒径シリカ粒子(成分B)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを混合してなり、
前記大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)が、0.6〜1.4であり、
前記大粒径シリカ粒子と前記小粒径シリカ粒子のSiO2換算モル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Aと成分Bのモル数の合計)が0.0005〜0.01である、硬脆材料用研磨液組成物。
【請求項2】
上記有機酸及び/又はキレート剤(成分C)が、1分子内に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸である、請求項1に記載の硬脆材料用研磨液組成物。
【請求項3】
25℃におけるpHが9.0〜11.5である、請求項1又は2に記載の硬脆材料用研磨液組成物。
【請求項4】
流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒中に分散された、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm以上の粒子のみを沈殿可能とする遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子(成分X)と、前記遠心条件で遠心分離を行っても沈殿しない浮遊シリカ粒子(成分Y)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを含み、
前記沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)と前記浮遊シリカ粒子の分散粒径(d)との比(d/p)が、0.5〜1.05であり、
前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子のモル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Xと成分Yのモル数の合計)が0.0005〜0.01である、硬脆材料用研磨液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む、硬脆材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む、硬脆材料の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬脆材料用研磨液組成物及びそれを用いた硬脆材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア、窒化ガリウム、炭化珪素、タンタル酸リチウム等の硬脆材料は、光学材料、電子材料又は機械材料として必要不可欠である。
【0003】
例えば、人工サファイア板は、集積回路基盤、赤外線探知用レンズ、時計等のさまざまな用途の材料として用いられている。特に、LED照明の急速な普及に伴い、その基板材料として利用されるサファイア基板の需要が急増している。LEDは、サファイア基板上に窒化ガリウム(GaN)層をエピタキシャル成長させた後、更に発光層を積層させることにより製造されているが、サファイア基板の表面平滑性がLEDの性能に大きく影響する。
【0004】
サファイア基板等の硬脆材料の表面平滑性を満足させるために、シリカ粒子を含む研磨液組成物を用いた仕上げ研磨が行われている。サファイア(α−アルミナ、モース硬度9)基板よりも低硬度であるシリカ(モース硬度7)粒子を砥粒に用いることにより、サファイア基板表面にピットやスクラッチが発生しないようにしている。しかしながら、サファイアは、機械的、化学的、熱的安定性に優れてはいるものの、シリカ粒子を用いた仕上げ研磨において、研磨速度が低いという問題がある。
【0005】
この問題に対し、例えば、特許文献1には、研磨液組成物のpHを制御してシリカ粒子とサファイア基板とのゼータ電位を反対符号にすることにより、研磨速度が向上することが開示されている。特許文献2には、塩基性pHを有する研磨液組成物中に塩化合物を溶解させることにより、シリカ粒子とサファイア基板との静電的反発を低減し、研磨速度が向上することが開示されている。また、特許文献3には、サファイア基板用の研磨液組成物ではなく、酸化セリウム砥粒を用いたガラス基板用の研磨液組成物であるが、アルミニウムと錯体を形成する有機酸及び/又はキレート剤を含有させることにより研磨速度が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−211178号公報
【特許文献2】特表2008−531319号公報
【特許文献3】特開平7−70553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、いずれの従来技術でも、サファイア基板等の硬脆材料の研磨速度が不十分であり、硬脆材料の生産性が低い。
【0008】
本発明は、研磨速度が大きく、且つ、研磨速度の低下をより長期に渡り抑制可能とする、硬脆材料用研磨液組成物、及びそれを用いた硬脆材料の製造方法並びに硬脆材料の研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬脆材料用研磨液組成物は、
平均一次粒子径が80〜500nmである大粒径シリカ粒子(成分A)と、平均一次粒子径が5〜70nmである小粒径シリカ粒子(成分B)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを混合してなり、
前記大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)が、0.6〜1.4であり、
前記大粒径シリカ粒子と前記小粒径シリカ粒子のSiO2換算モル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Aと成分Bのモル数の合計)が0.0005〜0.01である。
【0010】
また、本発明の硬脆材料用研磨液組成物は、
流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒中に分散された、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm以上の粒子を沈殿可能とする遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子(成分X)と、前記遠心条件で遠心分離を行っても沈殿しない浮遊シリカ粒子(成分Y)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを含み、
前記沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)と前記浮遊シリカ粒子の分散粒径(d)との比(d/p)が、0.5〜1.05であり、
前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子のモル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Xと成分Yのモル数の合計)が0.0005〜0.01である。
【0011】
本発明の硬脆材料の製造方法は、本発明の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む。
【0012】
本発明の硬脆材料の研磨方法は、本発明の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨速度が大きく、且つ、研磨速度の低下をより長期に渡り抑制可能とする、硬脆材料用研磨液組成物、及びそれを用いた硬脆材料の製造方法並びに硬脆材料の研磨方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、大粒径シリカ粒子とは、小粒径シリカ粒子よりも平均一次粒子径が相対的に大きいシリカ粒子を意味し、小粒径シリカ粒子とは、大粒径シリカ粒子よりも平均一次粒子径が相対的に小さいシリカ粒子を意味する。
【0015】
本発明において、「流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒中に分散された、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm以上の粒子を沈殿可能とする遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子」とは、流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒と当該分散媒中に分散され、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm以上の粒子とを含む、仮想の粒子分散液において、粒子径が80nm以上の粒子のみを遠心分離により、沈殿させることができる条件と同じ遠心条件で、水系媒体と当該水系媒体に分散されたシリカ粒子とを含む硬脆材料用研磨液組成物に対して遠心分離を行った場合に沈殿するシリカ粒子を意味する。これに対して浮遊シリカ粒子とは、前記遠心条件で遠心分離を行っても沈殿しないシリカ粒子を意味する。
【0016】
水中に分散されたシリカ粒子を乾燥させて得られる乾燥凝集体は、乾燥凝集体を構成する一次粒子間に複数の細孔を有しており、本発明において、シリカ粒子の「乾燥粒子間空隙径」とは、当該乾燥凝集体における、粒子間空隙の大きさであって、前記細孔径を意味でする。その値は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。硬脆材料用研磨液組成物を被研磨硬脆材料と研磨パッドとの間に供給し、被研磨硬脆材料と研磨パッドとを接触させながら、研磨パッド及び/又は被研磨硬脆材料を動かすことにより被研磨硬脆材料を研磨する最中、被研磨硬脆材料と研磨パッドとの間では、硬脆材料用研磨液組成物に荷重がかかってシリカ粒子濃度が高くなっている。このような状態のシリカ粒子は、乾燥凝集体と同様に、隣り合うシリカ粒子同士が接した状態になっており、粒子間空隙径も乾燥粒子間空隙径に近い値となっているものと推察される。
【0017】
本発明は、平均一次粒子径が80〜500nmである大粒径シリカ粒子(成分A)と、平均一次粒子径が5〜70nmである小粒径シリカ粒子(成分B)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを混合してなり、前記大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)が、0.6〜1.4であり、前記大粒径シリカ粒子と前記小粒径シリカ粒子のモル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Aと成分Bのモル数の合計)が0.0005〜0.01である、ことにより、研磨速度が向上し、且つ、研磨速度の低下をより長期に渡り抑制可能とする、という知見に基づく。また、本発明は、流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒中に分散された、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm以上の粒子を沈殿可能とする遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子(成分X)と、前記遠心条件で遠心分離を行っても沈殿しない浮遊シリカ粒子(成分Y)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを含み、前記沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)と前記浮遊シリカ粒子の分散粒径(d)との比(d/p)が、0.5〜1.05であり、前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子のモル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Xと成分Yのモル数の合計)が0.0005〜0.01であることにより、研磨速度が向上し、且つ、研磨速度の低下をより長期に渡り抑制可能とする、という知見に基づく。
【0018】
各々が特定の構造を持つ2種のシリカ粒子を特定の量だけ混合することにより研磨速度が向上する理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0019】
一般に、粒径が異なる複数種のシリカ粒子を混合し粒径分布を広げることにより、シリカ粒子の充填率が向上し、シリカ粒子と被研磨対象物との接触面積が向上する結果、研磨速度が向上すると考えられている。一方、シリカ粒子よりも高硬度な硬脆材料を研磨する場合においては、小粒径(浮遊)のシリカ粒子単独では、切削力が弱く研磨速度が低いため、充填率を向上させるために小粒径シリカ粒子の割合を増やしすぎると、逆に研磨速度が低下してしまう。すなわち、硬脆材料の研磨速度を向上させるためには、大粒径のシリカ粒子の構造に適した特定の構造を持つ小粒径シリカ粒子を最適な量だけ混合する必要がある。
【0020】
大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)が、0.6〜1.4であれば、研磨の最中に、大粒径シリカ粒子の粒子間空隙に小粒径シリカ粒子が効率良く充填されて、シリカ粒子全体の充填率が向上するため、シリカ粒子と被研磨対象物との総接触面積が増大し、その結果、研磨速度が向上したと推察される。また、本発明の硬脆材料用研磨液組成物に対して特定の遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子(成分X)の乾燥粒子間空隙(p)と浮遊シリカ粒子(成分Y)の分散粒径(d)との比(d/p)が、0.5〜1.05であれば、研磨の最中に、沈殿シリカ粒子の粒子間空隙に小粒径シリカ粒子が効率良く充填され、シリカ粒子全体の充填率が向上するため、研磨速度が向上したと推察される。
【0021】
一方、シリカ粒子を用いた硬脆材料の研磨においては、研磨時間が長いため、研磨液組成物は循環使用される。その結果、硬脆材料の研磨に伴い溶出する金属イオン種がシリカ粒子同士の架橋サイトとなり、シリカ粒子の凝集を引き起こす。特に、上記の大粒径(沈殿)シリカ粒子の構造に適した特定の構造を持つ小粒径(浮遊)シリカ粒子を混合した場合、循環研磨に伴い、大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子が不均一に凝集するため、研磨速度向上という、大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子の混合による効果が、経時的に損なわれ易い。このような研磨条件において、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)をシリカ粒子と共存させることにより、硬脆材料から溶出される金属イオン種を有機酸及び/又はキレート剤(成分C)が捕捉し、シリカ粒子の不均一凝集が抑制される。故に、大粒径(沈殿)シリカ粒子と小粒径(浮遊)シリカ粒子の混合により研磨速度が向上するという効果が、より長時間に亘って維持可能となったと推察される。但し、本発明はこれらの推定に限定されるものではない。
【0022】
<シリカ粒子>
本発明の硬脆材料用研磨液組成物(以下「本発明の研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれる大粒径シリカ粒子(成分A)及び小粒径シリカ粒子(成分B)はともに、砥粒として作用するシリカ粒子である。これらのシリカ粒子としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、研磨された被研磨対象物の平滑性向上の観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0023】
前記シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子がコロイダルシリカである場合、製造容易性および経済性の観点から、コロイダルシリカは、水ガラスやアルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましく、水ガラスから得たものであることがより好ましい。水ガラスから得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0024】
前記シリカ粒子は、粒子表面をシランカップリング剤などで表面処理されたシリカ粒子であってもよいが、研磨速度向上の観点から、表面処理されていないシリカ粒子が好ましい。前記シリカ粒子には、AlやZrなどのSi以外の無機元素が含まれていても良いが、研磨速度向上の観点から、固形分の主成分がSiO2であると好ましく、無水酸化物換算でSiO2が90質量%以上であると好ましく、95質量%以上であるとより好ましく、99質量%以上であると更に好ましい。
【0025】
本発明の研磨液組成物中の前記全シリカ粒子(大粒径シリカ粒子(成分A)と小粒径シリカ粒子(成分B)の合計)の濃度は、研磨速度向上の観点から、SiO2換算濃度で、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また、本発明の研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の濃度は、研磨液組成物のコスト低減及び保存安定性の向上の観点から、SiO2換算濃度で、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。
【0026】
本発明の研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の分散粒径は、研磨速度向上の観点から、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましく、研磨された被研磨対象物の平滑性向上の観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。
【0027】
本発明の研磨液組成物中の前記全シリカ粒子のBET比表面積は、研磨速度向上の観点から10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、40m2/g以上が更に好ましく、同様の観点から、200m2/g以下が好ましく、100m2/g以下がより好ましく、60m2/g以下が更に好ましい。
【0028】
[大粒径シリカ粒子(成分A)]
本発明の研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子の質量の合計)に対する大粒径シリカ粒子の質量の割合は、研磨速度向上の観点から、45質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が更により好ましく、同様の観点から、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0029】
大粒径シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(P)は、充填率を高めて研磨速度を向上させる観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、同様の観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下が更により好ましく、30nm以下が更に好ましい。尚、大粒径シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径は水銀圧入法によって得ることができる平均的な空隙部分の大きさを示す。
【0030】
本発明の研磨液組成物の製造に用いられる大粒径シリカ粒子(成分A)の平均一次粒子径は、研磨された基板表面の平滑性向上の観点から、500nm以下であり、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましく、大きい研磨速度を担保する観点から、80nm以上であり、100nm以上が好ましい。尚、本発明の研磨液組成物の製造に用いられる大粒径シリカ粒子(成分A)の平均一次粒子径は、後述する実施例に記載のとおり、電子顕微鏡(TEM)観察画像において円相当径として求められる粒子径の数平均である。
【0031】
大粒径シリカ粒子の一次粒子径の下記変動係数は、充填率を高めて研磨速度を向上させる観点から、1〜50%であると好ましく、1〜30%であるとより好ましく、1〜10%であると更に好ましい。
変動係数=(標準偏差/平均一次粒子径)
【0032】
本発明の研磨液組成物に含まれる大粒径シリカ粒子(成分A)の粒子形状は、球状、金平糖型、会合型等の異形形状等いずれでもよいが、研磨速度向上の観点から、球状又は金平糖型が好ましく、金平糖型がより好ましい。
【0033】
[小粒径シリカ粒子(成分B)]
本発明の研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子の質量の合計)に対する小粒径シリカ粒子の質量の割合は、研磨速度向上の観点から、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、同様の観点から、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が更により好ましい。
【0034】
本発明の研磨液組成物の製造に用いられる小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)は、充填率を高めて研磨速度を向上させる観点から、5nm以上であり、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、同様の観点から、70nm以下であり、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。尚、本発明の研磨液組成物の製造に用いられる小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)は、後述する実施例に記載のとおり、電子顕微鏡(TEM)観察画像において円相当径として求められる粒子径の数平均である。
【0035】
小粒径シリカ粒子の一次粒子径の変動係数は、充填率を高めて研磨速度を向上させる観点から、1〜50%であると好ましく、1〜30%であるとより好ましく、1〜10%であると更に好ましい。
【0036】
大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)は、大粒径シリカ粒子の粒子間空隙に小粒径シリカ粒子を効率良く充填させ、シリカ粒子全体の充填率を向上させる観点から、0.6以上であり、0.7以上であると好ましく、1.0以上であるとより好ましく、1.1以上であると更に好ましい。また、同様の観点から、(D/P)は、1.4以下であり、1.3以下であると好ましい。
【0037】
[有機酸及び/又はキレート剤(成分C)]
本発明の研磨液組成物に含まれる有機酸及び/又はキレート剤(成分C)は、被研磨対象物が例えば被研磨サファイア基板である場合、Al23がアルカリ加水分解することによって生じたAlイオン種を捕捉して、Alイオン種のシリカ粒子への吸着に起因するシリカ粒子の不均一凝集を抑制しているものと推察される。
【0038】
有機酸は、水系媒体に対する溶解性が高い塩の形で研磨液組成物の製造に用いられるのが好ましく、アルカリ金属塩等が好ましく用いられる。有機酸のアルカリ金属塩としては、例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、ニコチン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、グルコン酸のアルカリ金属塩が挙げられるが、これらの中でも、研磨速度向上の観点から、1分子内に2個以上のカルボキシル基有する有機酸塩が好ましく、クエン酸トリナトリウム又はマレイン酸ジナトリウムがより好ましく、クエン酸トリナトリウムが更に好ましい。
【0039】
キレート剤としては、水系媒体に対する溶解性が高い塩の形で研磨液組成物の製造に用いられるのが好ましく、アルカリ金属塩等が好ましく用いられ、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二酢酸、イミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ノルロイシンアミノ酢酸等の、アルカリ金属塩が挙げられるが、中でも、研磨速度向上の観点から、エチレンジアミン四酢酸テトラナトリムが好ましい。
【0040】
本発明の研磨液組成物中の有機酸及び/又はキレート剤(成分C)の濃度は、研磨速度向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、本発明の研磨液組成物中の成分Cの濃度は、同様の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましい。
【0041】
本発明の研磨液組成物中の、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数(N1)と、全シリカ粒子(大粒径シリカ粒子及び小粒径シリカ粒子)のSiO2換算モル数(N2)との比(N1/N2)は、研磨速度向上の観点から、0.0005以上が好ましく、0.0008以上がより好ましく、0.001以上が更に好ましく、0,002以上が更により好ましく、同様の観点から、0.01以下が好ましく、0.008以下がより好ましく、0.005以下が更に好ましく、0,004以下が更により好ましい。
【0042】
[水系媒体(成分D)]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体(成分D)としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本発明の成分Dが、水と溶媒との混合媒体である場合、成分Dである混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましく、100質量%が更により好ましい。
【0043】
本発明の研磨液組成物における水系媒体(成分D)の含有量は、特に限定されるわけではなく、成分A、成分B、成分C及び後述する任意成分の残余であってよい。
【0044】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、被研磨対象物のアルカリ加水分解が進行して研磨速度を向上させる観点から、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。また、本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、シリカ粒子(成分A)のアルカリ溶解を抑制して、シリカ粒子を砥粒として被研磨対象物に十分作用させて研磨速度を向上させる観点から、12以下が好ましく、11.5以下がより好ましい。
【0045】
本発明の研磨液組成物は、その使用用途に応じて、従来から公知の任意成分を更に含んでいてもよい。本発明の研磨液組成物が、例えば、半導体素子等の電子部品用サファイア基板用研磨液組成物(例えば、LED用サファイア基板用研磨液組成物)である場合は、本発明の研磨液組成物は、界面活性剤、防錆剤、分散剤、pH調整剤等を更に含んでいてもよい。
【0046】
[研磨液組成物の調製方法]
本発明の研磨液組成物は、各成分を公知の方法で混合することにより、調製することができる。研磨液組成物は、経済性の観点から、通常、濃縮液として製造され、これを使用時に希釈する場合が多い。前記研磨液組成物は、そのまま使用してもよいし、濃縮液であれば希釈して使用すればよい。濃縮液を希釈する場合、その希釈倍率は、特に制限されず、前記濃縮液における各成分の濃度(研磨材の含有量等)や研磨条件等に応じて適宜決定できる。
【0047】
前記[研磨液組成物の調製方法]により得られた本発明の研磨液組成物の一例のシリカ粒子の組成は、下記遠心条件で遠心分離を行うことにより、研磨液組成物自体から特定することもできる。
【0048】
[遠心条件]
本発明の研磨液組成物の一例に適用される前記遠心条件として、流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒と当該分散媒中に分散され、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm(8×10-5cm)以上の粒子とを含む、仮想の粒子分散液において、粒子径が80nm以上の粒子のみを遠心分離により沈殿させることができる遠心力及び遠心時間を採用する。遠心力と遠心時間は、遠心分離に使用する遠心分離機のスペック(最大遠心力、遠沈管の容量)や遠沈管におけるシリカ粒子分散液の液面の高さに左右されるが、所定値の遠心力をシリカ粒子分散液の遠心分離に適用する場合、下記のストークスの式から、粒子の沈降速度vsを決定でき、当該沈降速度vsと遠沈管におけるシリカ粒子分散液の液面の高さから遠心時間を決定できる。
【0049】
【数1】
vs :沈降速度[cm/s]
Dp :粒子径[cm]
ρp :粒子密度[g/cm3]
ρf :流体密度[g/cm3]
g :重力加速度[cm/s2]
η:流体粘度[Pa・s]
【0050】
尚、粒子径(Dp)80nmは、本発明の研磨液組成物の調製に用いられる大粒径シリカ粒子の平均一次粒子径の下限と等しく、前記遠心条件で遠心分離を行えば、沈殿シリカ粒子と浮遊シリカ粒子とをきれいに分離できる。
【0051】
本発明の研磨液組成物の一例は、下記の遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子と、前記遠心条件で遠心分離を行っても沈殿しない浮遊シリカ粒子と、有機酸及び/又はキレート剤と、水系媒体とを含む。
(遠心条件)
前記研磨液組成物を容量50mlの遠沈管内に液面高さが10cmになるまで入れ、当該遠沈管内の研磨液組成物に対して、遠心力2150G(回転速度3500rpm)で3時間遠心分離を行う。
【0052】
前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子はともにシリカ粒子であり、粒子の密度も同じであるため、沈殿シリカ粒子は浮遊シリカ粒子よりも、その粒径が相対的に大きく、故にBET比表面積は小さい。
【0053】
前記沈殿シリカ粒子及び浮遊シリカ粒子を含む研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の濃度は、研磨速度向上の観点から、SiO2換算濃度で、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また、前記研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の濃度は、研磨液組成物のコスト低減及び保存安定性の向上の観点から、SiO2換算濃度で、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。
【0054】
[沈殿シリカ粒子]
沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)は、充填率を高めて研磨速度を向上させる観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、同様の観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましく、30nm以下が更により好ましい。沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)は、大粒径シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(P)の測定方法と同じ方法で測定できる。
【0055】
沈殿シリカ粒子のBET比表面積は、研磨速度向上の観点から、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、30m2/g以上が更に好ましく、同様の観点から、100m2/g以下が好ましく、80m2/g以下がより好ましく、50m2/g以下が更に好ましく、40m2/g以下が更により好ましい。
【0056】
前記沈殿シリカ粒子及び浮遊シリカ粒子を含む研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(沈殿シリカ粒子と浮遊シリカ粒子の質量の合計)に対する沈殿シリカ粒子の質量の割合は、研磨速度向上の観点から、45質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が更により好ましく、研磨速度向上の観点から、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0057】
[浮遊シリカ粒子]
前記沈殿シリカ粒子及び浮遊シリカ粒子を含む研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(沈殿シリカ粒子と浮遊シリカ粒子の質量の合計)に対する浮遊シリカ粒子の質量の割合は、研磨速度向上の観点から、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、同様の観点から、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が更により好ましい。
【0058】
前記沈殿シリカ粒子及び浮遊シリカ粒子を含む研磨液組成物中の浮遊シリカ粒子の分散粒径は、充填率を高めて研磨速度を向上させる観点から、70nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましく、30nm以下が更により好ましく、同様の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、20nm以上が更により好ましい。尚、浮遊シリカ粒子の分散粒径は、後述する実施例に記載のとおり、動的光散乱粒度分布計を用いて測定した体積換算平均粒径である。
【0059】
沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)と浮遊シリカ粒子の分散粒径(d)との比(d/p)は、研磨最中において、沈殿シリカ粒子の粒子間空隙に浮遊シリカ粒子を効率良く充填させシリカ粒子全体の充填率を向上させる観点から、0.5以上であり、0.80以上であると好ましく、0.85以上であるとより好ましく、0.87以上であると更に好ましい。また、同様の観点から、(D/P)は、1.05以下であり、1.03以下であると好ましい。
【0060】
次に、本発明の研磨液組成物を用いた、本発明の硬脆材料の製造方法の一例、及び本発明の硬脆材料の研磨方法の一例について説明する。
【0061】
[被研磨硬脆材料]
本発明の硬脆材料の製造方法及び本発明の硬脆材料の研磨方法における被研磨硬脆材料(被研磨対象物)としては、例えば、サファイア基板が挙げられる。被研磨対象の形状について特に制限はなく、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状のみならず、レンズ等の曲面部を有する形状であってもよい。また、前記被研磨対象物は、集積回路基盤、赤外線探知用レンズ、時計等に用いられるサファイアガラス、LED用サファイア基板等さまざまであるが、本発明の研磨液組成物は、中でも、高い平滑性が要求される半導体素子等の電子部品用サファイア基板、さらには、LED用サファイア基板の製造方法の研磨工程で使用される研磨液組成物として適している。
【0062】
故に、本発明の硬脆材料の製造方法の一例は、半導体素子等の電子部品用サファイア基板の製造方法であって、本発明の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨サファイア基板を研磨する工程を含む。また、本発明の硬脆材料の研磨方法の一例は、半導体素子等の電子部品用サファイア基板の研磨方法であって、本発明の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨サファイア基板を研磨する工程を含む。
【0063】
前記被研磨サファイア基板を研磨する工程は、サファイア単結晶インゴットを薄円板状にスライスして得たウェーハを平面化する第一研磨工程(粗研磨工程)と粗研磨されたウェーハをエッチングした後、ウェーハ表面を鏡面化する第二研磨工程(仕上げ研磨)に分かれるが、本発明の研磨液組成物は、第一研磨工程及び第二研磨工程のいずれにも使用できる。しかし、本発明の研磨液組成物は、サファイア基板の表面平滑性及び生産性の観点から、第二研磨工程に使用するのが好ましい。
【0064】
本発明の硬脆材料の製造方法の一例(「本発明の製造方法の一例」と略称する場合もある。)及び本発明の硬脆材料の研磨方法の一例(「本発明の研磨方法の一例」と略称する場合もある。)で用いる研磨装置としては、特に制限はなく、被研磨硬脆材料(被研磨サファイア板)を保持する冶具(キャリア:アラミド製等)と研磨布(研磨パッド)とを備える研磨装置を用いることができ、両面研磨装置及び片面研磨装置のいずれであってもよい。
【0065】
前記研磨パッドは、特に制限されず、従来公知のものが使用できる。研磨パッドの材質としては、有機高分子等が挙げられ、前記有機高分子としては、ポリウレタン等が挙げられる。前記研磨パッドの形状は、不織布状が好ましい。例えば、不織布研磨パッドとしてSUBA800(ニッタハース製)が好適に用いられる。
【0066】
該研磨装置を用いる、本発明の硬脆材料の製造方法の一例及び本発明の硬脆材料の研磨方法の一例では、被研磨硬脆材料(例えば、被研磨サファイア基板)をキャリアで保持し研磨パッドを貼り付けた研磨定盤で挟み込み、本発明の研磨液組成物を研磨パッドと被研磨硬脆材料(例えば、被研磨サファイア基板)との間に供給し、被研磨硬脆材料(例えば、被研磨サファイア基板)と前記研磨パッドとを接触させながら、研磨パッド及び/又は被研磨硬脆材料(例えば、被研磨サファイア基板)を動かすことにより、被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む。
【0067】
本発明の製造方法の一例及び研磨方法の一例における研磨荷重は、研磨速度向上の観点から、50g/cm2以上が好ましく、100g/cm2以上がより好ましく、150g/cm2以上が更に好ましく、200g/cm2以上が更により好ましい。また、前記研磨荷重は、装置、パッドなどの耐久性を考慮すると、400g/cm2以下が好ましく、350g/cm2以下がより好ましい。前記研磨荷重の調整は、定盤や被研磨硬脆材料等への空気圧や重りの負荷によって行うことができる。研磨荷重は、研磨時に被研磨硬脆材料の研磨面に加えられる定盤の圧力を意味する。
【0068】
本発明の研磨液組成物の供給方法は、予め研磨液組成物の構成成分が十分に混合された状態で研磨パッドと被研磨硬脆材料の間にポンプ等で供給する方法、研磨の直前の供給ライン内等で前記構成成分を混合して供給する方法、大粒径シリカ粒子を含む大粒径シリカスラリーと小粒径シリカ粒子を含む小粒径シリカスラリーとを別々に研磨装置に供給する方法等を用いることができる。研磨速度向上の観点及び装置負荷低減の観点から、予め研磨液組成物の構成成分が十分に混合された状態で、研磨液組成物を、研磨パッドと被研磨硬脆材料の間にポンプ等で供給する方法が好ましい。
【0069】
研磨液組成物の供給速度は、コスト低減の観点から、被研磨硬脆材料1cm2あたり20mL/分以下が好ましく、10mL/分以下がより好ましく、5mL/分以下が更に好ましい。また、前記供給速度は、研磨速度向上の観点から、被研磨硬脆材料1cm2あたり0.01mL/分以上が好ましく、0.1mL/分以上がより好ましく、0.5mL/分以上が更に好ましい。
【0070】
本発明の製造方法の一例及び本発明の研磨方法の一例では、本発明の研磨液組成物を用いているので、被研磨サファイア板等の被研磨硬脆材料の研磨速度が速く、硬脆材料の生産性を高めることができる。
【0071】
本発明は、更に以下<1>〜<29>を開示する。
【0072】
<1> 平均一次粒子径が80〜500nmである大粒径シリカ粒子(成分A)と、平均一次粒子径が5〜70nmである小粒径シリカ粒子(成分B)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを混合してなり、
前記大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)が、0.6〜1.4であり、
前記大粒径シリカ粒子と前記小粒径シリカ粒子のSiO2換算モル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数(N1)/成分Aと成分Bのモル数の合計(N2))が0.0005〜0.01である、硬脆材料用研磨液組成物。
<2> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の全シリカ粒子(大粒径シリカ粒子(成分A)と小粒径シリカ粒子(成分B)の合計)の濃度は、SiO2換算濃度で、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい、前記<1>に記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<3> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の全シリカ粒子の質量(大粒径シリカ粒子と小粒径シリカ粒子の質量の合計)に対する前記大粒径シリカ粒子の質量の割合は、45質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が更により好ましく、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい、前記<1>又は<2>に記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<4> 前記大粒径シリカ粒子の前記乾燥粒子間空隙径(P)は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下が更により好ましく、30nm以下が更に好ましい、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<5> 前記硬脆材料用研磨液組成物の製造に用いられる前記大粒径シリカ粒子(成分A)の平均一次粒子径は、500nm以下であり、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましく、80nm以上であり、100nm以上が好ましい、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<6> 前記大粒径シリカ粒子の一次粒子径の下記変動係数は、1〜50%であると好ましく、1〜30%であるとより好ましく、1〜10%であると更に好ましい、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<7> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(前記大粒径シリカ粒子と前記小粒径シリカ粒子の質量の合計)に対する前記小粒径シリカ粒子の質量の割合は、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が更により好ましい、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<8> 前記硬脆材料用研磨液組成物の製造に用いられる前記小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)は、5nm以上であり、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、70nm以下であり、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい、前記<1>〜<7>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<9> 前記小粒径シリカ粒子の一次粒子径の変動係数は、1〜50%であると好ましく、1〜30%であるとより好ましく、1〜10%であると更に好ましい、前記<1>〜<8>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<10> 前記大粒径シリカ粒子(成分A)の前記乾燥粒子間空隙径(P)と前記小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D)との比(D/P)は、0.6以上であり、0.7以上であると好ましく、1.0以上であるとより好ましく、1.1以上であると更に好ましく、1.4以下であり、1.3以下であると好ましい、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<11> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の有機酸及び/又はキレート剤(成分C)の濃度は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましい、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<12> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数(N1)と、全シリカ粒子(前記大粒径シリカ粒子及び前記小粒径シリカ粒子の合計)のSiO2換算モル数(N2)との比(N1/N2)は、0.0005以上であり、0.0008以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0,002以上が更に好ましく、0.01以下であり、0.008以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0,004以下が更に好ましい、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<13> 上記有機酸及び/又はキレート剤(成分C)が、好ましくは1分子内に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸であり、より好ましくはクエン酸トリナトリウム及びマレイン酸ジナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはクエン酸トリナトリウムである、前記<1>〜<12>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<14> 上記キレート剤は、好ましくは、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二酢酸、イミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、及びノルロイシンアミノ酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属塩であり、より好ましくはエチレンジアミン四酢酸ジナトリムである、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<15> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の全シリカ粒子(前記大粒径シリカ粒子(成分A)と前記小粒径シリカ粒子(成分B)の合計)の分散粒径は、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましく、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<16> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の全シリカ粒子(前記大粒径シリカ粒子(成分A)と前記小粒径シリカ粒子(成分B)の合計)のBET比表面積は、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、40m2/g以上が更に好ましく、200m2/g以下が好ましく、100m2/g以下がより好ましく、60m2/g以下が更に好ましい、前記<1>〜<15>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<17> 流体密度が1.0g/cm3、流体粘度が1cpsの分散媒中に分散された、粒子密度が2.2g/cm3、粒子径が80nm以上の粒子を沈殿可能とする遠心条件で遠心分離を行った場合に沈殿する沈殿シリカ粒子(成分X)と、前記遠心条件で遠心分離を行っても沈殿しない浮遊シリカ粒子(成分Y)と、有機酸及び/又はキレート剤(成分C)と、水系媒体(成分D)とを含み、
前記沈殿シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径(p)と前記浮遊シリカ粒子の分散粒径(d)との比(d/p)が、0.5〜1.05であり、
前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子のモル数の合計に対する有機酸及び/又はキレート剤(成分C)のモル数の比(成分Cのモル数/成分Xと成分Yのモル数の合計)が0.0005〜0.01である、硬脆材料用研磨液組成物。
<18> 前記沈殿シリカ粒子の前記乾燥粒子間空隙径(p)は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましく、30nm以下が更により好ましい、前記<17>に記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<19> 前記沈殿シリカ粒子のBET比表面積は、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、30m2/g以上が更に好ましく、100m2/g以下が好ましく、80m2/g以下がより好ましく、50m2/g以下が更に好ましく、40m2/g以下が更により好ましい、前記<17>又は<18>に記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<20> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子の質量の合計)に対する前記沈殿シリカ粒子の質量の割合は、45質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が更により好ましく、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい、前記<17>〜<19>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<21> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の前記全シリカ粒子の質量(前記沈殿シリカ粒子と前記浮遊シリカ粒子の質量の合計)に対する前記浮遊シリカ粒子の質量の割合は、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が更により好ましい、前記<17>〜<20>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<22> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の前記浮遊シリカ粒子の分散粒径は、70nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましく、30nm以下が更により好ましく、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、20nm以上が更により好ましい、前記<17>〜<21>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<23> 前記沈殿シリカ粒子の前記乾燥粒子間空隙径(p)と前記浮遊シリカ粒子の分散粒径(d)との比(d/p)は、0.5以上であり、0.80以上であると好ましく、0.85以上であるとより好ましく、0.87以上であると更に好ましく、1.05以下であり、1.03以下であると好ましい、前記<17>〜<22>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<24> 前記硬脆材料用研磨液組成物中の全シリカ粒子(沈殿シリカ粒子(成分X)と浮遊シリカ粒子(成分Y)の合計)の濃度は、SiO2換算濃度で、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい、前記<17>〜<23>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<25> 25℃におけるpHが9.0〜11.5である、前記<1>〜<24>のいずれかに記載の硬脆材料用研磨液組成物。
<26> 前記<1>〜<25>のいずれかの項に記載の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む、硬脆材料の製造方法。
<27> 前記硬脆材料が、好ましくは電子部品用サファイア基板であり、さらに好ましく端LED用サファイア基板である、前記<26>に記載の硬脆材料の製造方法。
<28> 前記<1>〜<25>のいずれかの項に記載の硬脆材料用研磨液組成物を用いて被研磨硬脆材料を研磨する工程を含む、硬脆材料の研磨方法。
<29> 前記硬脆材料が、好ましくは電子部品用サファイア基板であり、さらに好ましく端LED用サファイア基板である、前記<28>に記載の硬脆材料の研磨方法。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明の一例をより具体的に説明する。
【0074】
<実施例1>
室温下、水496gに有機酸(成分C)としてクエン酸トリナトリウム二水和物(磐田化学製)2.55gを溶解した後、更に48%水酸化ナトリウム水溶液1.31gを溶解させることにより、有機酸ナトリウム水溶液500gを調製した。
【0075】
次に、室温下、大粒径シリカ粒子(成分A)を含むコロイダルシリカ水分散液(カタロイドCO−80A、SiO2=40質量%、平均一次粒子径130nm、変動係数5%、粒子形状金平糖、日揮触媒化成製)400g、小粒径シリカ粒子(成分B)を含むコロイダルシリカ水分散液(カタロイドSI−40W、SiO2=40質量%、平均一次粒子径23nm、変動係数8%、粒子形状球状、日揮触媒化成製)100g、を混合し、コロイダルシリカ混合水分散液500gを調製した。
【0076】
室温、撹拌下、上記の有機酸ナトリウム水溶液500gに、上記のコロイダルシリカ混合水分散液500gを均一に混合することにより、研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。全シリカ粒子に対する大粒径シリカ粒子(成分A)の割合は80質量%、小粒径シリカ粒子(成分B)の割合は20質量%であった。研磨液組成物中の有機酸ナトリウム濃度は、0.22質量%であり、全シリカ粒子のSiO2に対する有機酸ナトリウム(成分C)のモル比は、0.0026であった。
【0077】
大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P)は20nmであり、小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒径(D)との比(D/P)は、1.2であった。
【0078】
<実施例2>
有機酸(成分C)としてクエン酸トリナトリウムニ水和物(磐田化学製)2.55gの代わりに1.28gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。研磨液組成物中の有機酸ナトリウム濃度は、0.11質量%であり、全シリカ粒子のSiO2に対する有機酸ナトリウム(成分C)のモル比は、0.0013であった。
【0079】
<実施例3>
有機酸(成分C)としてクエン酸トリナトリウム二水和物(磐田化学製)2.55gの代わりにマレイン酸ジナトリウム(和光純薬製)1.39gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH11)を製造した。研磨液組成物中の有機酸ナトリウム濃度は、0.14質量%であり、全シリカ粒子のSiO2に対する有機酸ナトリウムのモル比は、0.0026であった。
【0080】
<実施例4>
キレート剤(成分C)としてクエン酸トリナトリウム二水和物(磐田化学製)2.55gの代わりにエチレンジアミン四酢酸テトラナトリウム(和光純薬製)3.30gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。研磨液組成物中のキレート剤濃度は、0.33質量%であり、全シリカ粒子のSiO2に対するキレート剤のモル比は、0.0026であった。
【0081】
<実施例5>
実施例1において、全シリカ粒子に対する大粒径シリカ粒子(成分A)の割合を70質量%、小粒径シリカ粒子(成分B)の割合を30質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH11)を製造した。
【0082】
<実施例6>
実施例1において、小粒径シリカ粒子(成分B)の供給源として、コロイダルシリカ水分散液(カタロイドSI−30W、SiO2=30質量%、平均一次粒子径16nm、変動係数10%、粒子形状球状、日揮触媒化成製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0083】
大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P=20nm)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D=16nm)との比(D/P)は0.8であった。
【0084】
<実施例7>
実施例1において、全シリカ粒子に対する大粒径シリカ粒子(成分A)の割合を50質量%、小粒径シリカ粒子(成分B)の割合を50質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0085】
<比較例1>
実施例1において、有機酸塩(成分C)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0086】
<比較例2>
実施例1において、小粒径シリカ粒子(成分B)を混合せず全シリカ粒子に対する大粒径シリカ粒子(成分A)の割合を100質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0087】
<比較例3>
実施例1において、大粒径シリカ粒子(成分A)を混合せず全シリカ粒子に対する小粒径シリカ粒子(成分B)の割合を100質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0088】
<比較例4>
実施例6において、大粒径シリカ粒子(成分A)を混合せず全シリカ粒子に対する小粒径シリカ粒子(成分B)の割合を100質量%としたこと以外は、実施例6と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0089】
<比較例5>
実施例1において、有機酸(成分C)としてクエン酸トリナトリウム二水和物(磐田化学製)2.55gの代わりに12.8gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。研磨液組成物中の有機酸ナトリウム濃度は、1.1質量%であり、全シリカ粒子のSiO2に対する有機酸ナトリウム(成分C)のモル比は、0.013であった。
【0090】
<比較例6>
実施例1において、小粒径シリカ粒子(成分B)を含むコロイダルシリカ水分散液(カタロイドSI−22PW、SiO2=40質量%、平均一次粒子径30nm、変動係数8%、粒子形状球状、日揮触媒化成製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0091】
大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P=20nm)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D=30nm)との比(D/P)は、1.5であった。
【0092】
<比較例7>
実施例1において、小粒径シリカ粒子(成分B)を含むコロイダルシリカ水分散液(カタロイドSI−550W、SiO2=20質量%、平均一次粒子径8nm、変動係数15%、粒子形状球状、日揮触媒化成製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして研磨液組成物(全シリカ粒子の濃度(SiO2換算濃度)20質量%、pH=11)を製造した。
【0093】
大粒径シリカ粒子(成分A)の乾燥粒子間空隙径(P=20nm)と小粒径シリカ粒子(成分B)の平均一次粒子径(D=8nm)との比(D/P)は、0.4であった。
【0094】
<粒子の形状、平均一次粒子径の測定>
シリカ粒子の形状は、一又は複数の実施形態において、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察写真及びそれを用いた分析で判別されうる分類である。「金平糖型シリカ粒子」とは、球状の粒子表面に特異な疣状突起を有するシリカ粒子をいう。金平糖型シリカ粒子は、一又は複数の実施形態において、粒径が5倍以上異なる2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状の粒子をいう。「球状シリカ粒子」とは、真球に近い球形状の粒子(一般的に市販されているコロイダルシリカ)をいう。
【0095】
前記平均一次粒子径は、下記の通り、電子顕微鏡(TEM)観察画像において測定される円相当径として求められる粒子径の数平均である。シリカ粒子を日本電子製透過型電子顕微鏡(TEM)(商品名「JEM-2000FX」、80kV、1〜5万倍)で観察した写真をパソコンにスキャナで画像データとして取込み、解析ソフト「WinROOF(Ver.3.6)」(販売元:三谷商事)を用いて1000〜2000個のシリカ粒子データについて1個1個のシリカ粒子の円相当径として求められる粒子径を求め、数平均により平均一次粒子径及び変動係数を求めた。
【0096】
<乾燥粒子間空隙径の測定>
シリカ粒子の乾燥粒子間空隙径は、100℃で24時間乾燥させた粉末サンプルについて、細孔径測定装置(マイクロメリティック自動ポロシメーター オートポアIV9500、島津製作所製)を用いて、水銀圧入法により、1.5〜60000psiの圧力範囲での乾燥粒子間空隙径の分布を得、当該分布のピークを乾燥粒子間空隙径とした。
【0097】
<BET比表面積の測定>
シリカ粒子の比表面積は、100℃で24時間乾燥させた粉末サンプルについて、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に200℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0098】
<分散粒径の測定>
実施例1〜7、比較例1〜7の研磨組成物中のシリカ粒子の分散粒径、及び上澄み液中の浮遊シリカ粒子の分散粒径は、動的光散乱(DLS)粒度分布計(マルバーン社製、ゼータサイザーナノS)を用い、溶媒:水(屈折率1.333)、粒子:コロイダルシリカ(屈折率1.45、減衰係数0.02)、測定温度:25℃の条件で測定し、体積換算平均粒径を分散粒径として求めた。
【0099】
<研磨液組成物のpH測定>
pHメーター(東亜電波工業社製、HM−30G)を用い、25℃にて研磨液組成物のpHを測定した。
【0100】
<研磨液組成物の遠心分離法による分析>
水希釈した研磨液組成物(SiO2=5質量%)に対して下記のとおり遠心分離を行って、沈殿シリカ粒子と浮遊シリカ粒子とを分離した。遠沈管(旭硝子製、イワキ2345−050、容量50mL)に水希釈した研磨液組成物(SiO2=5質量%)を液面高さ10cmまで入れ密栓後、卓上遠心分離機(コクサン製、H−28F、ローターRF−120)を用いて3500rpm(2150G)で3時間遠心分離を行った。デカンテーションにより、沈殿シリカ粒子(X)を含んだ沈殿物と浮遊シリカ粒子(Y)を含んだ上澄み液とを分離した後、各々を、すぐに80℃で3日間乾燥させ、沈殿物中の沈殿シリカ粒子(X)の濃度及び上澄み液中の浮遊シリカ粒子(Y)の濃度を求めた後、求めた各濃度から沈殿シリカ粒子(X)と浮遊シリカ粒子(Y)の質量の合計に対する沈殿シリカ粒子(X)の質量割合、沈殿シリカ粒子(X)と浮遊シリカ粒子(Y)の質量の合計に対する浮遊シリカ粒子(Y)の質量割合を求め、表1に示した。
【0101】
また、沈殿シリカ粒子(X)の、乾燥粒子間空隙径(p)、BET比表面積、及び上澄み液中の浮遊シリカ粒子(Y)の分散粒径(d)は、上記<乾燥粒子間空隙径の測定>、<BET比表面積の測定>、<分散粒径の測定>の各々に記載の方法により測定し、表1及び表2に示した。
【0102】
<研磨評価>
2インチのサファイア基板(c面)に対して下記の研磨条件で、実施例1〜7、比較例1〜7の研磨液組成物を用いて、1時間および3時間循環研磨を行った。そして、サファイア基板の研磨前後の重量変化を求め、サファイア密度(3.98g/cm3)、サファイア基板面積(20.3cm2)から研磨速度(μm/h)を算出し、表1に示した。
【0103】
(研磨条件)
片面研磨機(テクノライズ製TR15M−TRK1、定盤径38cm)
不織布研磨パッド(ニッタハース製SUBA800)
研磨荷重300g/cm2
定盤回転数120rpm
キャリア回転数120rpm
研磨液流量80mL/min(循環)
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示されるように、実施例1〜7の研磨液組成物を用いた場合、研磨開始1時間後の研磨速度はいずれも3.0(um/h)以上であり研磨速度は速かった。また、実施例1〜7の研磨液組成物を用いた場合、研磨開始3時間後の研磨速度は、いずれも研磨開始1時間後のそれより速かった。これに対して、比較例1〜7の研磨液組成物を用いた場合、研磨開始1時間後の研磨速度が3.0(um/h)を超える場合もあるが、研磨開始3時間後において、研磨速度が既に研磨開始1時間後のそれよりも遅くなっていた。このように、実施例の研磨液組成物では、研磨速度が速く、且つ、研磨速度の経時的な低下が防止されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明した通り、本発明の研磨液組成物を用いた被研磨硬脆材料の研磨において、研磨速度が速く、且つ、研磨速度についてその経時劣化が抑制されている。したがって、本発明の研磨液組成物を用いれば、電子部品用サファイア基板等の硬脆材料の生産性が向上する。