(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合していない水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の結合剤(B)中の合計含有量が、(B)の重量を基準として10〜2000ppmである請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ電池正極用結合剤(B)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアルカリ電池正極用結合剤(B)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)を必須構成単位とする重合体(A)を含んでなる結合剤(B)である。
【0009】
本発明において、水溶性ビニルモノマー(a1)とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。
重合体(A)の必須構成単量体である水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)としては特に限定がないが、例えば、特開2005−075982号公報に記載の水溶性ラジカル重合単量体等が挙げられる。これらのうち、放電特性の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、さらに好ましくはアニオン性ビニルモノマー{アニオン性基(カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基及び水酸基等)を有するビニルモノマー}、特に好ましくは炭素数3〜30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩){(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等};不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等}、次に好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0010】
なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、カリウム、ナトリウム及びリチウム等のアルカリ金属塩並びにカルシウム等のアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0011】
重合体(A)に含まれる水溶性ビニルモノマー(a1)単位がアニオン性ビニルモノマーの場合、これは未中和体であっても、中和体(水溶性ビニルモノマー塩単位)であっても構わないが、重合体(A)の粘着性低減や分散性改良、重合体(A)を製造する上での作業性の改良等の目的で水溶性ビニルモノマー(a1)単位の一部又は全てを中和して水溶性ビニルモノマー塩単位とするのが好ましい。
【0012】
(a1)としてアニオン性ビニルモノマーを使用した場合に、(A)に含まれるアニオン性ビニルモノマー由来のアニオン部分を中和物としたい場合は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属又はこれらの水溶液を、重合前のモノマー段階、あるいは重合後の含水ゲルに添加すれば良い。
しかしながら、重合体(A)においては、後述する非加水分解性架橋剤(b2)の水溶性が乏しいため、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度が高い状態で重合すると、所定量の架橋剤(b2)を添加しても架橋剤(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えず規定の物性の重合体(A)が得られない場合がある。そこで、この架橋剤(b2)の分離を抑制する観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度を0〜30モル%としておいて、架橋剤(b2)を含有させて重合を行った後、必要により含水ゲルに水酸化アルカリ金属を添加して中和度を調整する方がより好ましい。
【0013】
重合体(A)の水溶性ビニルモノマー(a1)として、アニオン性ビニルモノマー{最も好ましくはアクリル酸(塩)}を使用する場合、アニオン性ビニルモノマーの最終的な中和度{アニオン性ビニルモノマーのアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、0〜40が好ましく、さらに好ましくは0〜35、特に好ましくは0〜30である。この範囲であると、アルカリ電池の放電特性がさらによくなる。なお、アニオン塩基とは中和されたアニオン基を意味する。
【0014】
重合体(A)において、(A)を構成する構成単量体中の水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計の重量は、結合剤(B)の吸収能の観点から、(a1)、(a2)、(a3)及び架橋剤(b){(b1)及び(b2)}の合計重量に対して、99.0〜100.0重量%が好ましく、さらに好ましくは99.2〜99.95重量%、特に好ましくは99.5〜99.93重量%である。
【0015】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又はビニルモノマー(a2)は、それぞれ、単独で構成単量体としてもよく、2種以上を構成単量体としてもよい。
【0016】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又はビニルモノマー(a2)のうち、結合剤(B)の吸収能の観点から、(a1)が好ましく、さらに好ましくは(a1)を単独で構成単量体とすることである。
水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の両方を構成単量体とする場合、これらのビニルモノマー単位のモル比{(a1)/(a2)}は、アルカリ電池の放電特性の観点から、75/25〜99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15〜98/2、最も好ましくは90/10〜95/5である。
【0017】
重合体(A)の構成単量体として、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)を使用することができる。
【0018】
共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)としては特に限定はなく公知{特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報及び特開2005−95759号公報等}の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、例えば、下記の(i)〜(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8〜30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2〜20の脂肪族エチレン性モノマー
アルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等];並びにアルカジエン[ブタジエン及びイソプレン等]等。
(iii)炭素数5〜15の脂環式エチレン性モノマー
モノエチレン性不飽和モノマー[ピネン、リモネン及びインデン等];並びにポリエチレン性ビニル重合性モノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0019】
その他のビニルモノマー(a3)を構成単量体とする場合、その他のビニルモノマー(a3)の割合(モル%)は、反応性の観点から、(a1)及び(a2)の合計モル数に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3、次に好ましくは0.08〜2、特に好ましくは0.1〜1.5である。なお、吸収特性の観点から、その他のビニルモノマー(a3)の含有量が0モル%であることが最も好ましい。
【0020】
本発明において、重合体(A)は、架橋剤(b)を構成単位として含んでもよい。(A)において、架橋剤(b)は、加水分解性架橋剤(b1)又は非加水分解性架橋剤(b2)の1種を構成単量体としてもよく、(b1)及び(b2)からなる群より選ばれる2種以上を構成単量体としてもよい。
【0021】
加水分解性架橋剤(b1)とは、アルカリ性で加水分解する架橋剤である。「アルカリ性で加水分解する」とは、重合体(A)において(b)に由来する単位が加水分解性結合を有することを意味する。加水分解性結合は、架橋剤(b1)がもともと分子内に有する結合であってもよいし{この場合の架橋剤を分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b11)とする}、重合体(A)を構成する他の単量体{(a1)又は(a2)}と架橋反応して生成する結合が加水分解するものであってもよい{この場合の架橋剤を架橋反応して生成する結合が加水分解性である架橋剤(b12)とする}。結合剤(B)の粘度安定性の観点から、加水分解性架橋剤(b1)に由来する加水分解性結合が、25℃で40重量%水酸化カリウム水溶液中に結合剤(B)を1重量%添加し、1時間攪拌したときに50重量%以上が分解することが好ましい。
加水分解性結合としてはエステル結合及びアミド結合等が含まれる。
【0022】
分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b11)としては、分子内に2〜10のエチレン性不飽和結合を有する共重合性架橋剤が含まれ、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアクリレート等が挙げられる。
【0023】
架橋反応して生成する結合が加水分解性である架橋剤(b12)としては、(a1)としてカルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を有するアニオン性ビニルモノマーを使用した場合に、このモノマー由来のカルボキシル基又はカルボキシレート基と反応する反応型架橋剤が含まれる。(b2)として、例えば、多価グリシジル化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル等)、多価イソシアネート化合物(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等)、多価アミン化合物(エチレンジアミン等)及び多価アルコール化合物(グリセリン等)等が挙げられる。反応型架橋剤は、カルボキシル基又はカルボキシレート基を有するアニオン性ビニルモノマー{(メタ)アクリル酸(塩)等}と反応してエステル結合又はアミド結合を形成することができる。
【0024】
加水分解性架橋剤(b1)は、2種以上を併用してもよい。
加水分解性架橋剤(b1)のうち、結合剤(B)の粘度安定性の観点から、架橋剤(b11)及び多価グリシジル化合物が好ましく、さらに好ましくはN,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及び多価グリシジル化合物であり、次にさらに好ましくはN,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテルであり、特に好ましくはN,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0025】
架橋剤(b12)を使用した場合は、架橋剤添加後、任意の段階で、100〜230℃に加熱し架橋反応を進行させるのが好ましく、より好ましくは120〜160℃に加熱し架橋反応を進行させる。また、架橋剤(b12)は、所定量の範囲で2種以上、更には架橋剤(b11)と併用しても良い。
【0026】
非加水分解性架橋剤(b2)は、アルカリ性で加水分解しない架橋剤であり、加水分解性結合を分子内に有さず、かつ、架橋反応により加水分解性結合を生成しない架橋剤である。このような架橋剤(b2)としては、2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b21)及び2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)等が挙げられる。反応性等の観点から、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)が好ましい。
【0027】
2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b21)としては、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル(重合度2〜5)、ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ソルビトールトリビニルエーテル及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)としては、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b221)、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(b222)、分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b223)、分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(b224)等が挙げられる。分子内に水酸基を含むと、ビニルモノマー(a1)及び/又は(a2){特に(メタ)アクリル酸(塩)}との相溶性が良く、架橋の均一性が高くなるので結合剤(B)の密着性が向上し、アルカリ電池正極の強度がさらに優れる。
【0029】
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b221)としては、ジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールジアリルエーテル及びポリエチレングリコール(重量平均分子量:100〜4000)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(b222)としては、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度2〜5)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b223)としては、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(b224)としては、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアリルエーテル等が挙げられる。
【0030】
非加水分解性架橋剤(b2)は2種以上を併用してもよい。
架橋剤(b2)のうち、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)が好ましく、さらに好ましくは分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(b222)及び分子内にアリル基えお3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(b224)、特に好ましくは分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(b224)、最も好ましくはソルビトールトリアリルエーテル及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。これらの架橋剤を用いると、水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)との相溶性が良く効率的な架橋が行えるので好ましい。
【0031】
重合体(A)において、架橋剤(b1)及び(b2)を使用する場合は、(b2)の量は(b1)の量よりも少ないことが必要である。架橋剤(b2)の使用量は架橋剤(b1)及び(b2)の合計重量に対して、アルカリ電池正極の強度の観点から、0〜49重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜45重量%、特に好ましくは0〜40重量%である。
【0032】
重合体(A)において、電池作成直後の放電特性(放電持続性)の観点から、架橋剤(b)を用いないことが好ましい。また、重合体(A)において、架橋剤(b)を用いる場合は、構成単量体中の(b1)及び(b2)の合計含有量は、架橋剤(b1)及び(b2)の種類、重量平均分子量にもよるが、結合剤(B)の吸収能の観点から、(a1)、(a2)、(a3)、(b1)及び(b2)の合計重量に対して、0.01〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.8重量%、特に好ましくは0.07〜0.5重量%である。
【0033】
本発明のアルカリ電池正極用結合剤(B)は、上記重合体(A)を含むものであり、下記(1)及び(2)の要件を具備するものである。
要件(1)は、放電特性の向上に必要な要件である。
また、要件(2)は、アルカリ電池の正極の強度を高くするために必要な要件である。
【0034】
要件(1):結合剤(B)の水可溶性成分量が結合剤(B)の重量を基準として50〜95重量%であること。
要件(2):40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤(B)2重量部を撹拌混合して調製し、40℃で24時間放置した後の配合物(C)の粘度(25℃)(V24)が5〜50Pa・sであること。
【0035】
要件(1)において、結合剤(B)の水可溶性成分量は結合剤(B)の重量を基準として50〜95重量%であるが、放電特性の観点から、55〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは60〜80重量%である。水可溶性成分量が、50重量%未満では電池作成直後の放電特性(放電持続性)が悪くなり、95重量%を超えると二酸化マンガン及び黒鉛との均一混合が難しくなる。
【0036】
なお、上記の水可溶性成分量は以下の方法で測定する。
<水可溶性成分量の測定方法>
2000mlのビーカーに結合剤(B)を約1g{小数点以下4桁までを測定し(W
0)とする}とイオン交換水1000gを入れ、マグネティックスターラーを用いて300rpmで24時間攪拌した。攪拌した溶液を濾紙(東洋濾紙社製、No.2タイプ)でろ過し、ろ液を採取した。ろ液をエバポレーターで濃縮した後、乾燥機を用いて120℃で蒸発乾固させ、蒸発残分の重量(W
1)gを測定した。下式−(1)により、結合剤(B)のイオン交換水への水可溶性成分量(%)を算出した。
水可溶性成分量(%)=(W
1)×100/(W
0) 式−(1)
【0037】
水可溶性成分量を、上記要件(1)の範囲に調整する方法としては、重合体(A)製造時のラジカル重合開始剤の量が水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計重量に対して、0.001〜3.0重量%を満たすとよい。もし、水可溶性成分量が高かった場合は、前記範囲内で開始剤の量を減らし、水可溶性成分量が低かった場合は、前記範囲内で開始剤の量を増やすこと水可溶性成分量を上記数値範囲とすることができる。
【0038】
要件(2)において、配合物(C)の粘度(25℃)は5〜50Pa・sであるが、アルカリ電池の正極強度の向上観点から、10〜45Pa・sが好ましく、特に好ましくは15〜40Pa・sである。50Pa・sを超えると二酸化マンガン及び黒鉛と分散性が悪くなり、5Pa・s未満であると二酸化マンガン及び黒鉛との結合性が悪くなる。
【0039】
配合物(C)の粘度(V24)は、40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤(B)2重量部を撹拌混合して調製し、40℃で24時間放置した後の配合物の25℃における粘度である。
【0040】
この配合物(C)の粘度(V24)は以下の方法で測定する。
<配合物(C)の粘度(V24)の測定方法>
デジタル粘度計DV−II+Pro(ブルックフィールド社製)を用いて、40℃で24時間放置した後の配合物(C)の粘度を、測定温度25℃で、JIS−K7117−1:1999に準拠して測定し、配合物(C)の粘度(V24)とする。なお、ローターNo.64を使用し、回転数3rpmで測定する。
【0041】
配合物(C)の粘度(V24)を上記要件(2)の範囲に調整する方法としては、粘度が高かった場合は、前記範囲内で開始剤の量を増やすことで調整することができる。また粘度が低かった場合は、前記範囲内で開始剤の量を減らすことで調整することができる。また、架橋剤(b)を使用する場合は、架橋剤(b2)の使用量が架橋剤(b1)及び(b2)の合計重量に対して、0〜49重量%を満たすとよい。
【0042】
配合物(C)の粘度比(V24)/(V1)は0.3〜20であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10、特に好ましくは0.6〜8、最も好ましくは0.8〜6である。この範囲であるとアルカリ電池正極の強度を維持することできるため、長期に亘る放電特性がさらに優れる。
【0043】
配合物(C)の粘度(V1)は、40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤(B)2重量部を撹拌混合して調製し、40℃で1時間放置した後の配合物の25℃における粘度である。
【0044】
この配合物(C)の粘度(V1)は以下の方法で測定する
<配合物(C)の粘度(V1)の測定方法>
デジタル粘度計DV−II+Pro(ブルックフィールド社製)を用いて、40℃で1時間放置した後の配合物(C)の粘度を、測定温度25℃で、JIS7117−1:1999に準拠して測定し、配合物(C)の粘度(V1)とする。なお、ローターNo.64を使用し、回転数3rpmで測定する。
【0045】
配合物(C)の粘度比(V24)/(V1)は下式−(4)より算出する。
粘度比(V24)/(V1)=配合物(C)の粘度(V24)/配合物(C)の粘度(V1) 式−(4)
【0046】
配合物(C)の粘度比(V24)/(V1)を上記の範囲にする方法としては、粘度比が高かった場合は、前記範囲内で開始剤量を増やし、粘度比が低かった場合は、前記範囲内で開始剤量を減らすことで調整することができる。また、架橋剤(b)を使用する場合は、架橋剤(b2)の使用量が架橋剤(b1)及び(b2)の合計重量に対して、0〜49重量%を満たすとよい。
【0047】
結合剤(B)の10%水酸化カリウム水溶液中での可溶性成分量は、50〜100重量%であることが好ましく、さらに好ましくは55〜95重量%、特に好ましくは60〜95重量%、最も好ましくは60〜90重量%である。この範囲であるとアルカリ電池正極の強度を維持することができるため、長期に亘る放電特性がさらに優れる。
【0048】
なお、上記の10%水酸化カリウム水溶液中での可溶性成分量は以下の方法で測定する。
<10%水酸化カリウム水溶液中での可溶性成分量の測定方法>
500mlのビーカーに結合剤(B)を約1g{小数点以下4桁までを測定し(W
0)とする}と10%水酸化カリウム水溶液200gを入れ、マグネティックスターラーを用いて300rpmで24時間攪拌した。攪拌した溶液をブフナー型ガラス濾過器(相互理化学硝子製作所社製、No.1タイプ)で濾過し、濾液を採取した。濾液20gに10%硫酸水溶液を添加してpHを7.0に調整し、エバポレーターで濃縮した後、乾燥機を用いて120℃で蒸発乾固させ、蒸発残分の重量(W
2)gを測定した。ブランクとして、使用した10%の水酸化カリウム水溶液20gに10%硫酸水溶液を添加し、pHを7.0に調整したブランク溶液をエバポレーターで濃縮した後、乾燥機を用いて120℃で蒸発乾固させ、蒸発残分の重量(W
3)gを測定した。下式−(2)により、結合剤(B)の10%水酸化カリウム水溶液への可溶性成分量(%)を算出した。
10%水酸化カリウム水溶液への可溶性成分量(%)={(W
2)−(W
3)}×100/(W
0)×D 式−(2)
D:希釈倍率(D=200/20=10)
【0049】
10%水酸化カリウム水溶液への可溶性成分量を、上記の範囲に調整する方法としては、重合体(A)製造時のラジカル重合開始剤の量が水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計重量に対して、0.001〜3.0重量%を満たすとよい。もし、10%水酸化カリウム水溶液への可溶性成分量が多かった場合は、前記範囲内で開始剤の量を減らし、10%水酸化カリウム水溶液中での可溶性成分量が少なかった場合は、前記範囲内で開始剤の量を増やすこと10%水酸化カリウム水溶液中での可溶性成分量を上記数値範囲とすることができる。
【0050】
本発明の結合剤(B)における、重合していない水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計含有量は(B)の重量を基準として10〜2000ppmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜1000ppm、特に好ましくは30〜500ppm、最も好ましくは40〜300ppmである。この範囲であると放電の持続時間(長期に渡る放電特性)がさらに優れる。
【0051】
なお、重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量とは、重合体(A)の構成単位として含有する(a1)及び(a2)の合計含有量を意味するのでは無い。重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量は、特開2006−219661号公報に記載されている以下の方法で測定、算出する。
【0052】
<重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量測定方法>
300mlのビーカーに、結合剤(B)1.0g及び0.9重量%食塩水249.0gを加えて、20〜30℃で3時間攪拌した後、不溶分をろ別してろ液を得る。このろ液を高速液体クロマトグラフィー法(以下の条件)により既知濃度のビニルモノマー又は架橋剤を用いて作成した検量線を使用して、(a1)及び(a2)の合計含有量を求める。
測定条件
カラム:SCR−101H(長さ0.3m×内径7.9mm、株式会社島津製作所製)
展開溶液:0.015重量%リン酸水溶液
流速:0.5ml/min
サンプル注入量:100μl
検出器:UV検出器、波長195nm
カラム温度:40℃
【0053】
後述の水溶液重合の場合、結合剤(B)中の重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量を、(B)の重量を基準として10〜2000ppmの範囲にする方法としては、特開平1−62317号公報に記載の還元性物質や特開平8−157737号公報に記載の水溶性チオール化合物(例えば、亜硫酸ナトリウム等)等を水溶液又は水分散体として、重合体(A)に添加、混合する方法が挙げられる。これらは一種類の方法のみでもよいし、二種類以上の方法を併用してもよい。
【0054】
還元性物質又は水溶性チオール化合物の添加量は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の合計量に対して0.01〜5.0重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜4.0重量%、特に好ましくは0.03〜3.0重量%、最も好ましくは0.05〜2.0重量%の範囲を満たすと良い。
もし、重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量が上述の範囲を満たさない場合は、特開平1−62317号公報及び特開平8−157737号公報記載の添加方法において、必要により還元性物質又は水溶性チオール化合物水溶液又は水分散体として、後述の(A)の含水ゲルをアルカリで中和する工程の際に混合することで満たすことができる。
【0055】
後述の逆相懸濁重合の場合、重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量を、(B)の重量を基準として10〜2000ppmの範囲にする方法としては、特開2006−131767号公報に記載の(a1)及び(a2)の重合時の供給を調整する方法が挙げられる。
【0056】
(a1)及び(a2)の供給は、一定速度で連続的に行うことが好ましいが、供給速度を変化させてもよく、また途中で(a1)及び(a2)の供給を一時中断することもできる。(a1)及び(a2)の供給速度は、その全量を30〜180分で供給することが好ましく、さらに好ましくは45〜120分、特に好ましくは60〜80分の範囲を満たすと良い。
もし、重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量が上述の範囲を満たさない場合は、特開2006−131767号公報記載の重合方法において、必要により熟成工程を行うことで満たすことができる。
【0057】
次に、本発明の結合剤(B)の製造方法について説明する。
重合体(A)を得るための重合方法としては公知の重合方法が適用でき、たとえば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合又は乳化重合のいずれでもよい。
【0058】
これらの重合方法のうち、結合剤(B)の吸収能の観点から、溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合及び乳化重合が好ましく、さらに好ましくは溶液重合、逆相懸濁重合及び乳化重合、特に好ましくは溶液重合及び逆相懸濁重合である。これらの重合には、公知の重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は溶媒等が使用できる。
最も好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)を主体とするモノマー水溶液に架橋剤(b1)及び/又は架橋剤(b2)を添加溶解し重合する水溶液重合法、並びに分散剤の存在下、疎水性有機溶媒(例えばヘキサン、トルエン、キシレン等)中に同様なモノマー水溶液を分散・懸濁して重合する逆相懸濁重合法である。これらの重合方法であると、放電特性に優れた結合剤を得ることができる。
【0059】
(メタ)アクリル酸(塩)を水溶液重合法又は逆相懸濁重合法で重合する方法は、公知の方法で良く、例えばラジカル重合開始剤を用いて重合する方法、放射線、紫外線、電子線等を照射する方法があげられる。
【0060】
ラジカル重合開始剤を用いる場合、この開始剤としては、アゾ化合物[アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等]及びレドックス開始剤[アルカリ金属塩の亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸等の還元剤と、アルカリ金属塩の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の過酸化物の組み合わせ]等が挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
長期に亘る放電特性の観点から、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、過酸化水素、過硫酸カリウム及びレドックス開始剤(L−アスコルビン酸と過酸化水素水)が好ましい。
【0061】
重合温度は使用する開始剤の種類等によっても異なるが、ポリマーの重合度を高くする観点から、−10℃〜100℃が好ましく、より好ましくは−10℃〜80℃である。
【0062】
開始剤は、特に限定はないが、水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計重量に対して、アルカリ電池の放電持続性の観点及びポリマーの重合度を高くする観点から、0.001〜3.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0063】
水溶液重合法で重合体(A)を重合する場合、水溶液中の単量体{(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)の合計}の重合濃度(重量%)は、他の重合条件によっても種々異なるが、(a1)が(メタ)アクリル酸(塩)である場合は、重合濃度を高くすると重合反応と並行してモノマー自体の架橋(自己架橋)が起こり易く、吸収量の低下やポリマーの平均重合度の低下を招き、また重合時の温度コントロールも行いづらくポリマーの平均重合度の低下やオリゴマー成分の増加を招きやすい。このようなことから、重合濃度は、10〜40重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。
また、水溶液重合法の重合温度は、ポリマーの平均重合度の観点から、−10〜100℃が好ましく、より好ましくは−10〜80℃である。
重合時の溶存酸素量に関しては、ラジカル開始剤の添加量等にもよるが、ポリマーの平均重合度の観点から、0〜2ppm(2×10
-4重量%以下)が好ましく、より好ましくは0〜0.5ppm(0.5×10
-4重量%以下)である。これらの範囲であると、吸収倍率に優れた重合体(A)を製造することができる。
【0064】
(a1)として(メタ)アクリル酸を使用する場合、重合時の(メタ)アクリル酸の中和度は、所定量の加水分解性架橋剤(b1)又は非加水分解性架橋剤(b2)がモノマー水溶液に完全に溶解できる中和度が好ましい。(b1)に比べて、(b2)は水溶性が乏しく、また特に(メタ)アクリル酸(塩)水溶液に対する溶解度は極めて低い。そのため、重合体(A)を重合する場合、所定量の(b2)を添加しても(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えない場合がある。したがって、重合体(A)を重合する場合、(b2)の溶解度の観点から、重合時の(メタ)アクリル酸の中和度は、0〜30モル%で重合を行ない、必要により重合後に更に中和するのが好ましく、より好ましくは未中和の状態で重合した後必要により重合後に中和することである。
また、(メタ)アクリル酸は、同一条件で重合を行った場合、中和度が低い方が重合度(吸収倍率)が上がりやすい。したがって、重合体(A)を重合する場合、ポリマーの重合度を大きくするためにも、中和度が低い状態で重合を行った方が好ましい。
【0065】
逆相懸濁重合法は、ヘキサン、トルエン、キシレン等に代表される疎水性有機溶媒中で単量体含有の水溶液を、分散剤の存在下、懸濁・分散して重合する重合法であるが、この重合法においても上記水溶液重合法と同様に、水溶液中の単量体の合計濃度は10〜40重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。この範囲であると、高重合度の重合体(A)を製造することができる。
【0066】
尚、この逆相懸濁重合法においては、重合時に分散剤を使用してもよい。分散剤としては、公知の分散剤が使用でき、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が3〜8のソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖ジステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤;エチレン/アクリル酸共重合体のマレイン化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体のマレイン化物、スチレンスルホン酸(塩)/スチレン共重合体等の分子内に親水性基を有し、かつ、モノマー水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤(親水性基;0.1〜20重量%、重量平均分子量;1,000〜1,000,000)等を例示できる。分散剤としては高分子分散剤を使用した方が、溶媒中でのモノマー水溶液の懸濁粒子の大きさを調整しやすく、必要とする粒子径の重合体(A)の含水ゲルを作成できるので好ましい。
【0067】
分散剤の添加量は、アルカリ電池の放電特性の観点から、疎水性有機溶媒の重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。
逆相懸濁重合におけるモノマー水溶液と疎水性有機溶媒との重量比(W/O比)は、0.1〜2.0が好ましく、より好ましくは0.3〜1.0である。これらの範囲であると、重合体(A)の粒子径が調整しやすい。
【0068】
重合体(A)の製造において、架橋剤を用いている場合は架橋剤を使用しない以外は全く同じ条件で重合体を製造した場合のポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略記する)が、200,000〜1,500,000であることが好ましく、より好ましくは400,000〜1,200,000、さらに好ましくは700,000〜1,000,000である。
上記Mwが、200,000以上となる条件で重合を行うと、正極活物質(二酸化マンガン)及び導電剤(黒鉛)との分散性が良く、アルカリ電池正極の強度を維持することできるため、長期に亘る放電特性がさらに優れる。また、上記Mwが1,500,000以下であると、アルカリ電池正極の強度を維持することできるため、長期に亘る放電特性がさらに優れる。
なお、重合体(A)を構成する水溶性ビニルモノマー(a1)がアクリル酸である場合は、上記Mwは下記により求める。
<Mwの測定>
重合体(A)について、架橋剤を用いない以外は全く同じ条件で重合体(X)を製造する。
40重量%水酸化カリウム水溶液を下記量と、重合体(X)を下記量を撹拌混合して調製し、40℃で24時間放置した後の配合物(C’)の25℃における粘度(25℃)を測定する。
重合体(X)の量(重量部)=1.64/72×〔[72×{1−0.01×(重合体(X)の中和率(%))}]+[94×0.01×{重合体(X)の中和率(%)}]〕
40重量%水酸化カリウム水溶液の量(重量部)=100−[重合体(X)の量(重量部)]
また、40重量%水酸化カリウム水溶液を98.36重量部と、Mwが既知のポリアクリル酸(和光純薬社製ポリアクリル酸、Mw:25,000、250,000、1,000,000を用いる)を1.64重量部、撹拌混合して調製し、40℃で24時間放置した後の配合物の粘度(25℃)から、検量線を作成し、配合物(C’)の粘度を検量線に当てはめて、Mwを算出する。
【0069】
水溶液重合又は逆相懸濁重合等により得た重合体(A)は、水を含むゲル(含水ゲル)として得られる。含水ゲルは、通常乾燥した後に結合剤(B)として使用する。
水溶液重合の場合の含水ゲルの乾燥方法としては、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機でゲルをある程度細分化(細分化のレベルは0.5〜20mm角程度)あるいはヌードル化し、必要により水酸化アルカリ金属等を添加して含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、強制的に50〜150℃の熱風を通気させて乾燥する等)や通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気・循環させ乾燥、ロータリーキルンの様な機械で更にゲルを細分化しながら乾燥する)等の方法を例示できる。これらの中で、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるため好ましい。
一方、逆相懸濁重合の場合の含水ゲルの乾燥方法としては、重合した含水ゲルと有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度;圧力が100〜50,000Pa程度)又は通気乾燥を行うのが一般的である。
【0070】
上記以外の水溶液重合における含水ゲルの乾燥方法としては、例えば、ドラムドライヤー上に含水ゲルを圧縮延伸して乾燥する接触乾燥法等があるが、含水ゲルは熱伝導が悪いため、乾燥を行うためにドラム上等に含水ゲルの薄膜を作成する必要がある。しかし、通常市販のドラムドライヤーの材質は、鉄、クロム及びニッケル等の亜鉛よりイオン化傾向の低い金属で形成されているのが一般的であり、含水ゲルを薄膜とした場合、含水ゲルあたりのドラム金属面と接触する頻度が極めて高くなる。そのため、含水ゲルがポリ(メタ)アクリル酸(塩)の含水ゲルである場合、該含水ゲルは粘着性が高いため、ナイフの様なものをドラムドライヤーに接触させて乾燥物をドラムドライヤーから剥離させる必要があり、ドラムとナイフの機械的摩耗のためドラムあるいはナイフの金属面が摩耗し、金属が乾燥物中に混入することにより、結合剤中の亜鉛よりイオン化傾向の低い金属元素の含有量が多くなる。以上の様に、ドラムドライヤー等の接触乾燥法を利用すると、結合剤中に金属イオンや金属粉末が混入しやすく、これら亜鉛よりイオン化傾向の低い金属(標準電極電位が亜鉛よりも低い金属のことで、Cr、Fe、Ni、Sn、Pb、Cu、Hg及びAg等の原子記号で表せる金属)イオンや金属粉末をかなり多量に含有することになる。これらの結合剤をアルカリ電池用の結合剤として使用すると、電池中の亜鉛粉末が亜鉛よりイオン化傾向の低い金属イオン又は金属粉末との間で電池を形成するため、電気分解により水素ガスが発生し、それにより電池内部の圧力が上昇し、さらにはアルカリ電解液の流出やひどい場合は電池の破損を引き起こす場合がある。更に、含水ゲルをドラムドライヤー上等で圧縮延伸して乾燥した薄膜フィルム状乾燥物は、その後粉砕を行い乾燥物の粒径を所望の粒径に調整しても粒子が鱗片状となっているため、透気乾燥法や通気乾燥法でブロック状の乾燥物の粉砕物と比較すると遙かに強度が弱く、高濃度のアルカリ水溶液中で膨潤させ亜鉛粉末と機械的に攪拌混合すると、膨潤したゲルが破壊されてしまいゲルが小さくなる。従って、ドラムドライヤー等の接触乾燥法を利用しないのが好ましい。
【0071】
重合体(A)の含水ゲルは、乾燥時に必要により乾燥助剤を含んでも良い。乾燥助剤としては特に限定はなく公知{特開2006−160774号公報、特開2007−71415号公報及び特開2010−185029号公報等}のHLB値1〜10の疎水性物質等が使用できる。なお、HLB値は、親水性−疎水性バランス(HLB)値を意味し、小田法(新・界面活性剤入門、197頁、藤本武彦、三洋化成工業株式会社発行、1981年発行)により求められる。
重合体(A)の含水ゲルと乾燥助剤との混合方法としては、混合されれば特に制限がないが、乾燥助剤は重合体(A)の乾燥体ではなく、(A)の含水ゲル又は(A)を重合する前の重合液と混合されることが、(A)に均一に含有される観点から、好ましく、さらに好ましくは(A)の含水ゲルと混合されることである。なお、混合は、練り込むように均一混合することが好ましい。
【0072】
水溶液重合法により重合体(A)を得るとき、乾燥助剤と(A)とを混合又は混練するタイミングとしては特に制限はないが、重合工程中、重合工程直後、含水ゲルの破砕(ミンチ)中及び含水ゲルの乾燥中、含水ゲルの乾燥後等が挙げられる。これらのうち、重合工程直後及び含水ゲルの破砕(ミンチ)工程中に混練することが好ましく、さらに好ましくは含水ゲルの破砕(ミンチ)工程中に混練することである。
逆相懸濁重合法又は乳化重合により重合体(A)を得るとき、乾燥助剤と(A)とを混合するタイミングとしては特に制限はないが、重合工程中、重合工程直後、脱水工程中(水分10重量%前後まで脱水する工程中)、脱水工程直後、重合に用いた有機溶媒を分離留去する工程中、含水ゲルの乾燥中等が挙げられる。これらのうち、重合工程中、重合工程直後、脱水工程中、脱水工程直後、重合に用いた有機溶媒を分離留去する工程中が好ましく、さらに好ましくは重合工程中、重合工程直後である。
なお、混合温度(℃)は20〜100が好ましく、さらに好ましくは40〜90、特に好ましくは50〜80である。
【0073】
含水ゲル乾燥時の乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、50〜150℃が好ましく、より好ましくは80〜130℃である。乾燥温度が、150℃以下であると乾燥時の熱によりポリマーが架橋しにくく、熱架橋により架橋度が上がりすぎることがなく、吸収量が低下しないし、アルカリ電池正極の強度が低下しない。50℃以上であると乾燥に長時間を要さず効率的である。乾燥時間は、使用する乾燥機の機種及び乾燥温度等により異なるが、5〜300分が好ましく、より好ましくは5〜120分である。
【0074】
このようにして得られた重合体(A)の乾燥物は、必要により粉砕して粉末化する。粉砕方法は、通常の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル及びACMパルペライザー等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。
【0075】
粉末化した重合体(A)は、必要により所望のスクリーンを備えたフルイ機(振動フルイ機及び遠心フルイ機等)を用いて、所望の粒子径の乾燥粉末を採取することができる。
尚、乾燥後の任意の段階で、磁気を利用した除鉄機を用いて混入した鉄等の金属粉末を除去するのが好ましい。しかし、除鉄機を用いてかなり精密に除鉄を行っても、除鉄機では磁性のない金属を除去するのは困難であり、また磁性のある金属に関しても、乾燥したポリマー粒子内部に含まれているものや乾燥粒子に付着しているものは除去できないので、初めからこれら金属が混入しないように、生産設備に関しても、十分に配慮することが望ましい。
【0076】
重合体(A)の粒子径は特に限定されないが、正極の破断強度の観点から、重量平均粒子径が1〜500μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜450μm、特に好ましくは10〜400μm、最も好ましくは15〜350μmである。
【0077】
本発明の結合剤(B)は重合体(A)以外に正極の作製時の流動性改善等を目的として、作業性や電池特性に問題が起こらない範囲で、必要により他の添加剤を含んでも良い。
他の添加剤としては、放電特性向上剤等が挙げられる。
【0078】
放電特性向上剤としては、TiO
2、Bi
2O
3、CuO、In
2O
2、SnO
2、Nb
2O
3、二酸化珪素、珪酸カリウム、シリコーン及びフッ素系化合物などの公知の化合物が挙げられる。
放電特性向上剤を含有する場合の含有量は、重合体(A)の合計重量に基づいて、0〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜3.0重量%である。
【0079】
他の添加剤を含有する場合の合計含有量は、重合体(A)の重量に対して、0〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜3.0重量%である。
【0080】
放電特性向上剤の添加方法は、本発明の結合剤(B)と放電特性向上剤とを予めドライブレンドした後他の正極物質とブレンドする方法を例示することができるが、必要により所定量の結合剤(B)を添加できる方法であればいずれでも良い。
【0081】
本発明のアルカリ電池正極用結合剤(B)を用いた場合、少量の結合剤で強度の高い正極を作成することができる。また、本発明の結合剤(B)を用いたアルカリ電池は、放電の持続時間が長く、極めて優れたアルカリ電池を作成することができる。また、電解液の吸液量が小さく、電解液の吸液量にバラツキが少なく、大量生産時もアルカリ電池の電解液量の偏りが小さく均一な品質を有するアルカリ電池を生産できる。
【0082】
本発明のアルカリ電池正極は、上記アルカリ電池正極用結合剤(B)を使用し、さらに二酸化マンガン及び黒鉛を含有するアルカリ電池正極である。
本発明のアルカリ電池正極の作成方法は、結合剤、二酸化マンガン及び黒鉛を使用して、アルカリ電池正極を作成する通常の作成方法を使用できる。例えば、本発明の結合剤(B)、正極活物質(二酸化マンガン)、導電剤(黒鉛)及び必要により他の添加剤(放電特性向上剤)を事前混合した後、アルカリ電解液(例えば水酸化カリウム水溶液)を混合して正極合剤を作成し、続いて圧延、成型することにより作成できる。作成したアルカリ電池正極は、アルカリ電池に充填する。
【0083】
上記アルカリ電池正極に使用する結合剤(B)の量は、正極活物質及び導電剤の種類によっても異なるが、正極の重量に対して0.03〜1.0重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。添加量がこの範囲であると、アルカリ電池正極の強度が高くなり、長期間に亘って、放電特性が優れる。
【0084】
本発明の結合剤(B)を使用したアルカリ電池正極を適用できるアルカリ電池としては特に限定されず、通常のアルカリ電池、例えばLR−20(単1型アルカリ電池)、LR−6型(単3型アルカリ電池)はもとより、その他各種のアルカリ電池に適用できる。アルカリ電池は、通常、外装缶の中に正極、集電棒及びゲル負極が封入された構造を有し、正極とゲル負極とはセパレーター等により分離されている。
【0085】
本発明のアルカリ電池は、上記アルカリ電池正極と、亜鉛又は亜鉛粉末を含んでなる負極と、水酸化カリウム水溶液を含んでなる電解液とを有してなるアルカリ電池である。
本発明のアルカリ電池の作成方法としては、正極端子板、収縮チューブ、正極、外装缶、セパレーター、集電棒、ガスケット、負極端子板及びゲル負極を使用して、アルカリ電池を作成する通常の作成方法を使用できる。
【0086】
本発明のアルカリ電池の代表的な例の断面構造を
図1に示した。
図1において、1は正極端子板、2は収縮チューブ、3は正極、4は外装缶、5はセパレーター、6は集電棒、7はガスケット、8は負極端子板、9はゲル負極を示している。上述したように外装缶4の中に正極3、集電棒6及びゲル負極9が封入された構造を有し、正極3とゲル負極9とはセパレーター5で分離されている。
特に限定するものではないが、正極端子板1の材質としては、例えばニッケルメッキ鋼板等が挙げられる。収縮チューブ2の材質としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリエステル樹脂等の熱収縮性樹脂のチューブが挙げられる。正極3は、本発明の結合剤(B)、正極活物質(二酸化マンガン)、導電剤(黒鉛)、アルカリ電解液(水酸化カリウム水溶液)及び必要により他の添加剤(放電特性向上剤)が添加された正極物質が用いられる。外装缶4の材質としては、例えばニッケルメッキ鋼板等が挙げられる。セパレーター5の材質としては、耐アルカリ性セルロース、ナイロン、ポリオレフィン、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体、ポリビニルアルコール又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。集電棒6の材質としては、スズめっきした黄銅製の棒や鉄製の棒等が挙げられる。ガスケット7の材質としては、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。負極端子板8の材質としては、たとえばニッケルメッキ鋼板等が挙げられる。ゲル負極9は、アルカリ電解液(水酸化カリウム水溶液など)、亜鉛粉末又は亜鉛粉末及び必要によりゲル化剤又は増粘剤が添加された負極物質が用いられる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%、イオン交換水は電気伝導率1.0μS/cm以下の水を示す。
【0088】
実施例1
[重合体(A1)の製造]
2リットルのビーカーに、アクリル酸300g及びイオン交換水700gを入れて撹拌混合してアクリル酸水溶液を調整し、4℃に冷却した。
アクリル酸水溶液を1.5リットルの断熱重合槽に入れ、水溶液に窒素を通じてアクリル酸水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。この断熱重合層に、0.1%過酸化水素水8.0g、0.1%L−アスコルビン酸水溶液8.0g及び2%2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、商品名:VA−086)水溶液5.0gを添加し、重合が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。重合が開始し、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止して6時間重合し、重合体(J1)を得た。なお、打点温度計で重合時のアクリル酸水溶液の温度を測定したところ、最高到達温度は、97℃であった。
ブロック状の重合体(J1)の含水ゲルを断熱重合槽から取り出し、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いてゲルを3〜10mmの太さのヌードル状になるように細分化し、重合体(A1)の含水ゲルを得た。
含水ゲルを、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機(井上金属株式会社製)を用いて120℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて、含水ゲルを乾燥した。
乾燥物をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて32〜500μm(400メッシュ〜40メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(1)を得た。
尚、上記重合体(A1)を重合体(X1)として用いて、下記のMwの測定に従ってMwを求めたところ、Mwは約700,000であった。
【0089】
<Mwの測定>
重合体(A1)を重合体(X1)として用いた。
40%水酸化カリウム水溶液98.36部及び重合体(X1)1.64部を撹拌混合して配合物(C’1)を調製し、40℃で24時間放置した後の配合物(C’1)の粘度(25℃)を、デジタル粘度計DV−II+Pro(ブルックフィールド社製)を用いて、測定温度25℃で、JIS7117−1:1999に準拠して測定した。なお、ローターNo.64を使用し、回転数3rpmで測定した。
また、40%水酸化カリウム水溶液98.36部及びMwが既知のポリアクリル酸(和光純薬社製ポリアクリル酸、Mw:25,000、250,000、1,000,000)の1.64部を撹拌混合して調製し、上記と同様にして、40℃で24時間放置した後の配合物の粘度(25℃)を測定し、検量線を作成し、配合物(C’1)の粘度を検量線に当てはめて、Mwを算出した。
【0090】
実施例2
実施例1において、「アクリル酸300g及びイオン交換水700g」に代えて、「アクリル酸300g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.3g(架橋剤、対アクリル酸0.1%)及びイオン交換水700g」、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いて細分化したゲルに、40%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液125g(アクリル酸の中和度30モル%相当)を加え含水ゲルを中和した以外は、実施例1と同様にして、重合体(A2)を製造し、本発明の結合剤(2)を得た。Mwは約700,000であった。
【0091】
<Mwの測定>
重合体(A2)の製造において、架橋剤を用いない以外は同様にして重合体(X2)を製造した。
実施例1のMwの測定において、40%水酸化カリウム水溶液を「98.36部」に代えて「98.21部」用いて、「重合体(X1)1.64部」に代えて「重合体(X2)1.79部」を用いる以外は同様にして(C’2)を調製し粘度(25℃)測定し検量線に当てはめて、Mwを算出した。
【0092】
実施例3
実施例2において、中和した含水ゲルに、10.0重量%亜硫酸ナトリウム水溶液45.2g{アクリル酸(塩)と架橋剤との合計重量に対して1.5重量%}を加え、前記小型ミートチョッパーで含水ゲルに均一混錬した以外は、実施例2と同様にして、重合体(A3)を製造し、本発明の結合剤(3)を得た。Mwは約650,000であった。
【0093】
<Mwの測定>
重合体(A3)の製造において、架橋剤を用いない以外は同様にして重合体(X3)を製造した。
実施例1のMwの測定において、40%水酸化カリウム水溶液を「98.36部」に代えて「98.21部」用いて、「重合体(X1)1.64部」に代えて「重合体(X3)1.79部」を用いる以外は同様にして(C’3)を調製し粘度(25℃)測定し検量線に当てはめて、Mwを算出した。
【0094】
実施例4
実施例1において、「アクリル酸300g、イオン交換水700g、0.1%過酸化水素水8.0g、0.1%L−アスコルビン酸水溶液8.0g及び2%2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、商品名:VA−086)水溶液5.0g」に代えて、「アクリル酸200g、イオン交換水800g、0.1%過酸化水素水2.7g、0.1%L−アスコルビン酸水溶液5.3g及び10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−50)水溶液2.0g」とした以外は、実施例1と同様にして、重合体(A4)を製造し、本発明の結合剤(4)を得た。Mwは約1,200,000であった。
【0095】
<Mwの測定>
重合体(A4)を重合体(X4)として用いた。
実施例1のMwの測定と同様にして(C’4)を調製し粘度(25℃)測定し検量線に当てはめて、Mwを算出した。
【0096】
実施例5
実施例4において、細分化した含水ゲルに、10.0%亜硫酸ナトリウム水溶液40g{アクリル酸(塩)に対して2.0%}を加え、前記小型ミートチョッパーで含水ゲルに均一混錬した以外は、実施例4と同様にして、重合体(A5)を製造し、本発明の結合剤(5)を得た。Mwは約1,000,000であった。
【0097】
<Mwの測定>
重合体(A5)を重合体(X5)として用いた。
実施例1のMwの測定と同様にして(C’5)を調製し粘度(25℃)測定し検量線に当てはめて、Mwを算出した。
【0098】
実施例6
実施例1において、「アクリル酸300g、イオン交換水700g、0.1%過酸化水素水8.0g、0.1%L−アスコルビン酸水溶液8.0g及び2%2,2’−アゾビス
[2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、商品名:VA−086)水溶液5.0g」に代えて「アクリル酸200g、メチレンビスアクリルアミド0.1g(架橋剤、対アクリル酸0.05%)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.04g(架橋剤、対アクリル酸0.02%)、イオン交換水800g、0.1%過酸化水素水2.7g、0.1%L−アスコルビン酸水溶液5.3g及び10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−50)水溶液2.0g」とし、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いて細分化したゲルに、40%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液97g(アクリル酸の中和度35モル%相当)を加え、前記小型ミートチョッパーで均一混練し、含水ゲルを中和し、さらに10.0%亜硫酸ナトリウム水溶液40g{アクリル酸(塩)に対して2.0%}を加え、前記小型ミートチョッパーで含水ゲルに均一混練した以外は実施例1と同様にして、重合体(A6)を製造し、本発明の結合剤(6)を得た。Mwは約1,000,000であった。
【0099】
<Mwの測定>
重合体(A6)の製造において、架橋剤を用いない以外は同様にして重合体(X6)を製造した。
実施例1のMwの測定において、40%水酸化カリウム水溶液を「98.36部」に代えて「98.18部」用いて、「重合体(X1)1.64部」に代えて「重合体(X6)1.82部」を用いる以外は同様にして(C’6)を調製し粘度(25℃)測定し検量線に当てはめて、Mwを算出した。
【0100】
実施例7
実施例6で得られた結合剤(6)をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて45μm以下(350メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(7)を得た。
【0101】
実施例8
実施例6で得られた結合剤(6)をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて20μm以下(635メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(8)を得た。
【0102】
実施例9
実施例6において、前記小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いて細分化したゲルに、40%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液97g(アクリル酸の中和度35モル%相当)を加え、前記小型ミートチョッパーで均一混練し、含水ゲルを中和し、次に10.0%亜硫酸ナトリウム水溶液40g{アクリル酸(塩)に対して2.0%}を加え、前記小型ミートチョッパーで含水ゲルに均一混練し、さらに乾燥助剤[リョートーシュガーエステルS−770、HLB値7、三菱化学フーズ社製]0.04gを加え、前記小型ミートチョッパーで含水ゲルに均一混練した以外は、実施例6と同様にして、重合体(A9)を製造し、本発明の結合剤(9)を得た。Mwは約1,000,000であった。
【0103】
実施例10
実施例9で得られた結合剤(9)をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて20μm以下(635メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(10)を得た。
【0104】
比較例1
市販のポリアクリル酸(Mw:25,000、和光純薬株式会社製)を比較用の結合剤(H1)とした。
【0105】
比較例2
実施例2において、トリメチロールプロパントリアクリレートに替えてペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を9.0g(対アクリル酸3.0%)とした以外は、実施例2と同様にして、重合体(A’1)を製造し、比較用の結合剤(H2)を得た。
【0106】
実施例1〜10で作成した結合剤(1)〜(10)及び比較例1〜2で作成した比較の結合剤(H1)〜(H2)の(1)水可溶性成分量、(2)配合物(C)の粘度(V24)、(3)配合物(C)の粘度比{(V24)/(V1)}、(4)10%水酸化カリウム水溶液への可溶性成分量並びに(4)重合していない(a1)及び(a2)の合計含有量を前述した方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
さらに、本発明の結合剤(1)〜(10)及び比較の結合剤(H1)〜(H2)を用いて、正極及び電池をそれぞれ作成し、(1)正極の破断強度及び(2)電池の持続時間を下記の方法で測定した。その結果を表2に示す。
【0109】
(1)正極の破断強度の測定方法
容量1リットルの2軸のニーダー(入江商会社製、品名:PNV−1)に、二酸化マンガン200g、黒鉛10g、結合剤0.6gを添加し、50rpmの回転速度で60分間混合した。続いてその混合物に40%水酸化カリウム水溶液5.3gを添加し、再び50rpmの回転速度で60分間混合した。次にこの混合物をプレス機にて圧延した後、粉砕機にて粒径100〜1000μm程度に粉砕、篩い分けした。さらにプレス機にて環状に成形し、正極を得た。
この作成した正極の加圧試験を行い、破損したときの圧力を測定し、これを破断強度とした。なお、表2においては実施例1の破断強度を100とした相対比を示した。
【0110】
(2)電池の持続時間の測定方法
容量1リットルの2軸のニーダー(入江商会社製、品名:PNV−1)に、二酸化マンガン200g、黒鉛10g、結合剤0.6gを添加し、50rpmの回転速度で60分間混合した。続いてその混合物に40%水酸化カリウム水溶液5.3gを添加し、再び50rpmの回転速度で60分間混合した。次にこの混合物をプレス機にて圧延した後、粉砕機にて粒径100〜1000μm程度に粉砕、篩い分けした。さらにプレス機にて環状に成形し、正極を得た。
この正極10gを、LR−6型のモデル電池の正極容器内に注入し、モデル電池を作成した。
なお、ここで、モデル電池の正極以外の各部位の構成材料としては、収縮チューブの材質としてはポリエチレン、ゲル負極の材質としては亜鉛粉末4.0g、40%水酸化カリウム水溶液2.0g、ゲル化剤0.04g及び増粘剤0.04gからなる配合物、外装缶の材質としては、ニッケルメッキ鋼板、セパレーターの材質としては、ポリオレフィン、集電棒の材質としては、スズめっきした黄銅製の棒、ガスケットの材質としては、ポリオレフィン系樹脂、負極端子板の材質としては、ニッケルメッキ鋼板を用いた。
作成したモデル電池に、室温(20〜25℃)で2Ωの外部抵抗を接続して、連続放電し、電圧が0.9Vに低下するまでの時間を電池の持続時間(hour)とした。
モデル電池作成後、60℃の恒温槽で60日間放置したモデル電池に関しても同様な操作を行い、電池の持続時間を測定した。
【0111】
【表2】
【0112】
表1の結果から分かるように、本発明の実施例1〜10の結合剤は、本発明の要件(1)及び(2)を満たす。一方、比較例1〜2の結合剤は、本発明の要件(1)及び要件(2)の少なくとも1つを満たさない。
これらの結合剤を使用した表2の結果から、正極の強度並びに作成直後及び60℃×60日後の電池の持続時間の全ての項目において、本発明の結合剤を使用したものが優れることが分かる。
すなわち、本発明の結合剤を用いたアルカリ電池は、放電特性の維持に優れることが分かる。