特許第6223793号(P6223793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223793
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】角速度センサ及びセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5614 20120101AFI20171023BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G01C19/5614
   H01L41/113
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-240025(P2013-240025)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-99130(P2015-99130A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(72)【発明者】
【氏名】副島 宗高
(72)【発明者】
【氏名】吉田 斉師
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−343241(JP,A)
【文献】 特開2010−181179(JP,A)
【文献】 特開2007−178248(JP,A)
【文献】 特開平10−239068(JP,A)
【文献】 特開平09−329444(JP,A)
【文献】 特開平09−178492(JP,A)
【文献】 特開2005−070030(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0037692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/56 − 19/5783
G01P 7/00 − 11/02
G01P 15/00 − 21/02
H01L 41/00 − 41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から所定の延在方向において延びる第1検出腕、第2検出腕、及び第1駆動腕〜第8駆動腕とを有する圧電体と、
前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕に電圧を印加して前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕を前記延在方向に直交する励振方向に励振する励振回路と、
前記延在方向及び前記励振方向に直交する検出方向における前記第1検出腕及び前記第2検出腕の振動によって生じる電気信号を検出する検出回路と、
を有し、
前記第1検出腕、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕は、互いに並列に延び、この順で前記励振方向において1列に配列されており、
第3駆動腕及び第4駆動腕は、前記第1検出腕に対して前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕と対称に配置されており、
第2検出腕及び第5駆動腕〜第8駆動腕は、前記基部に対して前記第1検出腕及び前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と対称に配置されており、
前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕は、前記励振方向における固有振動数が互いに同一であり、
前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕は、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、
前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕は、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、
前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と、前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕とは、前記励振方向において互いに逆側に変形するように互いに逆の位相で励振される
角速度センサ。
【請求項2】
前記基部は、前記励振方向において前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕よりも両外側に延びており、
前記圧電体は、前記基部の前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕よりも外側の両側に、前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と並列に延びる実装腕と、前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕と並列に延びる実装腕との合計4本の実装腕を更に有し、当該4本の実装腕の先端部にて支持されている
請求項に記載の角速度センサ。
【請求項3】
前記基部は、前記励振方向において前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕よりも両外側に延びており、その両外側の部分にて支持されている
請求項1に記載の角速度センサ。
【請求項4】
基部と、前記基部から所定の延在方向において延びる第1検出腕、第2検出腕、及び第1駆動腕〜第8駆動腕とを有する圧電体と、
前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕を前記延在方向に直交する励振方向に励振する電圧を印加可能に配置された複数の励振電極と、
前記延在方向及び前記励振方向に直交する検出方向における前記第1検出腕及び前記第2検出腕の振動によって生じる電気信号を検出可能に配置された複数の検出電極と、
を有し、
前記第1検出腕、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕は、互いに並列に延び、この順で前記励振方向において1列に配列されており、
第3駆動腕及び第4駆動腕は、前記第1検出腕に対して前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕と対称に配置されており、
第2検出腕及び第5駆動腕〜第8駆動腕は、前記基部に対して前記第1検出腕及び前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と対称に配置されており、
前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕は、前記励振方向における固有振動数が互いに同一であり、
前記複数の励振電極の配置及び接続関係は、
前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕を、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振し、
前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕を、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振し、
前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と、前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕とを、前記励振方向において互いに逆側に変形するように互いに逆の位相で励振する、ものとなっている
センサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサ及び当該角速度センサに好適に利用可能なセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度センサとして、いわゆる圧電振動式のものが知られている。このセンサにおいては、圧電体に交流電圧を印加して圧電体を励振する。この励振されている圧電体が回転されると、回転速度(角速度)に応じた大きさで、励振方向と直交する方向にコリオリの力が生じ、このコリオリの力によっても圧電体は振動する。そして、このコリオリの力に起因する圧電体の変形に応じて生じる電気信号を検出することにより、圧電体の角速度を検出することができる。このような角速度センサの圧電体の形状や圧電体の振動のモードについて種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1の角速度センサは、U字状の圧電体を有している。すなわち、圧電体は、基部と、基部から互いに並列に延びる検出腕及び駆動腕とを有している。駆動腕は、交流電圧が印加されて励振される。励振されている駆動腕は、回転されることにより、コリオリの力によって、励振方向と直交する検出方向に振動する。駆動腕及び検出腕は、力の相互作用を及ぼすから、作用・反作用の法則に従って、検出腕は、検出方向において、駆動腕とは反対方向に振動する(変形する)。そして、検出腕の変形に応じて生じた電気信号が検出される。
【0004】
また、例えば、特許文献2の角速度センサは、1本の検出腕と、その検出腕の両側に配置された2本の駆動腕とを有している。なお、特許文献2の角速度センサは、検出腕及び駆動腕の延びる方向と、角速度が検出される回転の軸との関係が、特許文献1の角速度センサとは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−197253号公報
【特許文献2】特開2006−125917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような圧電振動式の角速度センサは、種々の用途で用いられており、その結果、小型化も要求されている。しかし、圧電体を小型化すると、駆動腕の質量が小さくなる。コリオリの力は質量に比例するから、駆動腕の質量が小さくなると、コリオリの力が小さくなり、ひいては、検出腕の変形が小さくなる。その結果、検出感度が低下する。
【0007】
従って、小型化及び高感度化が可能な角速度センサ及びセンサ素子が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る角速度センサは、基部と、前記基部から互いに並列に延びる第1検出腕、第1駆動腕及び第2駆動腕とを有する圧電体と、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕に電圧を印加して前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕をその延在方向に直交する励振方向に励振する励振回路と、前記延在方向に直交する検出方向における前記第1検出腕の振動によって生じる電気信号を検出する検出回路と、を有し、前記第1検出腕、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕は、この順で1列に配列されており、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕は、前記励振方向における固有振動数が互いに同一であり、且つ、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。
【0009】
好適には、前記圧電体は、前記第1検出腕に対して前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕と対称に配置された第3駆動腕及び第4駆動腕と、前記基部に対して前記第1検出腕及び前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と対称に配置された第2検出腕及び第5駆動腕〜第8駆動腕と、を更に有し、前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕は、前記励振方向における固有振動数が互いに同一であり、前記第3駆動腕及び前記第4駆動腕は、前記励振回路により、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、前記第5駆動腕及び前記第6駆動腕は、前記励振回路により、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、前記第7駆動腕及び前記第8駆動腕は、前記励振回路により、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。
【0010】
好適には、前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕は、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕は、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と、前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕とは、前記励振方向において互いに逆側に変形するように互いに逆の位相で励振される。
【0011】
好適には、前記基部は、前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕の配列方向において前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕よりもこれらの配列方向の両外側に延びており、前記圧電体は、前記基部の前記第1駆動腕〜前記第8駆動腕よりも外側の両側に、前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕と並列に延びる実装腕と、前記第5駆動腕〜前記第8駆動腕と並列に延びる実装腕との合計4本の実装腕を更に有し、当該4本の実装腕の先端部にて支持されている。
【0012】
好適には、前記圧電体は、前記第1検出腕に対して前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕と対称に配置された第3駆動腕及び第4駆動腕を更に有し、前記第1駆動腕〜前記第4駆動腕は、前記励振方向に配列されており、前記励振方向における固有振動数が互いに同一であり、前記励振回路により、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。
【0013】
好適には、前記圧電体は、前記基部に対して前記第1検出腕並びに前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕と対称に配置された第2検出腕並びに第5駆動腕及び第6駆動腕を更に有し、前記第1駆動腕、前記第2駆動腕、前記第5駆動腕及び前記第6駆動腕は、前記励振方向における固有振動数が互いに同一であり、前記第5駆動腕及び前記第6駆動腕は、前記励振回路により、前記励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕と、前記第5駆動腕及び前記第6駆動腕とは、前記励振方向において互いに逆側に変形するように互いに逆の位相で励振される。
【0014】
好適には、前記励振方向は、前記第1検出腕、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕の配列方向であり、前記検出方向は、前記延在方向及び前記励振方向に直交する方向である。
【0015】
本発明のセンサ素子は、基部と、前記基部から互いに並列に延びる第1検出腕、第1駆動腕及び第2駆動腕とを有する圧電体と、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕をその延在方向に直交する励振方向に励振する電圧を印加可能に配置された励振電極と、前記延在方向に直交する検出方向における前記第1検出腕の振動によって生じる電気信号を検出可能に配置された検出電極と、を有し、前記第1検出腕、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕は、この順で1列に配列されており、前記第1駆動腕及び前記第2駆動腕は、前記励振方向における固有振動数が互いに同一である。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成によれば、小型化及び高感度化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサ素子の構成を示す斜視図。
図2図1のセンサ素子の平面図。
図3図3(a)は図2のIII−III線における断面図、図3(b)は駆動腕及び検出腕における電位等を説明する図。
図4図4(a)は全駆動腕のx軸方向における励振を説明するための模式図、図4(b)は全駆動腕及び全検出腕のz軸方向における振動を説明するための模式図。
図5図5(a)〜図5(c)は第2〜第4の実施形態に係るセンサ素子を示す平面図。
図6図1のセンサ素子の配線の一例を示す模式的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。
【0019】
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。なお、直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸及びz軸は、結晶の電気軸、機械軸及び光軸を示すとは限らない。
【0020】
同一又は類似する構成については、「第1検出腕11A」、「第2検出腕11B」のように、同一名称に対して互いに異なる番号及びアルファベットを付して呼称するこがあり、また、この場合において、単に「検出腕11」といい、これらを区別しないことがある。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ素子1の構成を示す斜視図である。図2は、センサ素子1の平面図である。
【0022】
センサ素子1は、例えば、y軸回りの角速度を検出する角速度センサ101を構成するものである。角速度センサ101は、圧電振動式のものであり、センサ素子1は、x軸方向に励振され、z軸方向にコリオリの力が生じるように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
【0023】
センサ素子1は、圧電体3と、圧電体3に電圧を印加するための第1励振電極5A及び第2励振電極5Bと、圧電体3に生じた電気信号を取り出すための第1検出電極7A及び第2検出電極7Bとを有している。
【0024】
圧電体3は、x軸方向に延びる基部9と、基部9からy軸方向の正側及び負側に延びる複数の腕部(11A、11B、13A〜13H等)を有する構成とされている。圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされており、また、x軸方向に延びる中心線(不図示)に対して線対称、且つ、y軸方向に延びる中心線(不図示)に対して線対称に形成されている。
【0025】
圧電体3は、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO)、LiTaO、LiNbO、PZTである。
【0026】
圧電体3において、電気軸乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。なお、分極軸は、所定の範囲(例えば15°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸及び光軸は、適宜な方向とされてよいが、例えば、機械軸はy軸方向、光軸はz軸方向とされている。
【0027】
基部9は、例えば、概ね直方体状とされている。基部9の3軸方向の寸法比率は適宜に設定されてよい。例えば、基部9は、x軸方向の大きさ>y軸方向の大きさ>z軸方向の大きさに設定されている。すなわち、基部9は、x軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。
【0028】
基部9からy軸方向の正側及び負側に延びる複数の腕部としては、第1検出腕11A、第2検出腕11B、第1駆動腕13A、第2駆動腕13B、第3駆動腕13C、第4駆動腕13D、第5駆動腕13E、第6駆動腕13F、第7駆動腕13G、第8駆動腕13H、第1実装腕15A、第2実装腕15B、第3実装腕15C及び第4実装腕15Dが設けられている。すなわち、2本の検出腕11、8本の駆動腕13及び4本の実装腕15が設けられている。
【0029】
駆動腕13は、電圧(電界)が印加されることによってx軸方向(以下、「励振方向」ということがある。)に励振される部分である。検出腕11は、コリオリの力によってz軸方向(以下、「検出方向」ということがある。)に振動され、角速度に応じた電気信号を生成する部分である。実装腕15は、センサ素子1を回路基板乃至は適宜な形状の実装基体に実装するために利用される部分である。これらの位置及び形状等は、例えば、以下のように設定されている。
【0030】
第1検出腕11Aは、例えば、基部9のx軸方向の中央位置にて、基部9からy軸方向の正側に延びている。第2検出腕11Bは、例えば、基部9のx軸方向の中央位置にて、基部9からy軸方向の負側に延びている。第1検出腕11A及び第2検出腕11Bは、例えば、基部9のx軸方向に延びる中心線(不図示)に対して線対称の形状とされている。
【0031】
検出腕11の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、基部9は、xz断面が矩形とされ、また、y軸方向の大きさ>x軸方向の大きさ>z軸方向の大きさに設定されている。すなわち、検出腕11は、y軸方向を長手方向とし、z軸方向を厚み方向とする概ね長方形の板状とされている。従って、検出腕11は、相対的に、励振方向(x軸方向)には振動しにくく、検出方向(z軸方向)に振動しやすくなっている。検出腕11の先端部は、幅(x軸方向)が大きくされている。ただし、検出腕11は、その長手方向の全体に亘って同一の幅であってもよい。
【0032】
第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、基部9からy軸方向の正側に延びており、ひいては、第1検出腕11Aと並列に延びている。また、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、第1検出腕11Aのx軸方向の正側に配置され、且つ、x軸方向の正側へ、第1駆動腕13A、第2駆動腕13Bの順で配列されている。第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bの形状は、例えば、互いに同一とされており、ひいては、両駆動腕13の励振方向(x軸方向)等の固有振動数は互いに同一である。
【0033】
第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dは、例えば、第1検出腕11Aを対称軸として、その配置及び形状が第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bと線対称になるように形成されている。すなわち、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dは、基部9からy軸方向の正側に延び、第1検出腕11Aのx軸方向の負側に配置され、且つ、x軸方向の負側へ、第3駆動腕13C、第4駆動腕13Dの順で配列されている。また、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dの形状は、互いに同一であるとともに、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bの形状と同一であり、ひいては、これら4本の駆動腕13の励振方向(x軸方向)等の固有振動数も互いに同一である。
【0034】
第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hは、例えば、基部9のx軸方向に延びる中心線(不図示)を対称軸として、その配置及び形状が第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dと線対称になるように形成されている。すなわち、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hは、基部9からy軸方向の負側に延びている。第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fは、第2検出腕11Bのx軸方向の正側に配置され、且つ、x軸方向の正側へ、第5駆動腕13E、第6駆動腕13Fの順で配列されている。第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hは、第2検出腕11Bのx軸方向の負側に配置され、且つ、x軸方向の負側へ、第7駆動腕13G、第8駆動腕13Hの順で配列されている。第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hの形状は、互いに同一であるとともに、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dの形状と同一であり、ひいては、これら8本の駆動腕13の励振方向(x軸方向)等の固有振動数も互いに同一である。
【0035】
駆動腕13の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、駆動腕13は、xz断面が矩形とされ、励振方向(x軸方向)の大きさ及び検出方向(z軸方向)の大きさは、長手方向(y軸方向)の全体に亘って一定とされている。ただし、励振方向及び検出方向の大きさが互いに異なり、また、駆動腕13の先端部に、検出腕11と同様に、幅(x軸方向)が大きい部分が設けられてもよい。
【0036】
駆動腕13が励振方向(x軸方向)に大きくなると励振方向における固有振動数は高くなり、駆動腕13が延在方向(y軸方向)に大きくなると励振方向における固有振動数は低くなる。従って、駆動腕13の幅(x軸方向)及び長さ(y軸方向)の寸法比率は、励振させたい周波数に応じて設定される。
【0037】
駆動腕13の長さ(y軸方向)は、検出腕11と同等であることが好ましい。この場合、駆動腕13の質量をできるだけ確保しつつ、圧電体3全体としての小型化が図られる。また、駆動腕13の幅(x軸方向)と、厚さ(z軸方向)とは同等であることが好ましい。この場合、駆動腕13の励振方向(x軸方向)の固有振動数と検出方向(z軸方向)の固有振動数とが一致する。その結果、駆動腕13の励振に起因するコリオリの力によって、駆動腕13が検出方向に好適に振動する。なお、同様に、検出腕11の検出方向の固有振動数も駆動腕13の励振方向の固有振動数と同等にされることが好ましい。
【0038】
第1実装腕15A〜第4実装腕15Dは、基部9の両端部からy軸方向の両側に延びている。すなわち、第1実装腕15Aは、基部9のx軸方向の正側の端部からy軸方向の正側に延び、第2実装腕15Bは、基部9のx軸方向の負側の端部からy軸方向の正側に延び、第3実装腕15Cは、基部9のx軸方向の正側の端部からy軸方向の負側に延び、第4実装腕15Dは、基部9のx軸方向の負側の端部からy軸方向の負側に延びている。なお、基部9の両端部は、駆動腕13の配置位置よりもx軸方向において外側に延在されており、4本の実装腕15は、全ての検出腕11及び駆動腕13よりもx軸方向において外側に位置している。
【0039】
第1実装腕15A及び第2実装腕15Bは、第1検出腕11Aを対称軸として、その配置及び形状が互いに線対称になるように形成されている。同様に、第3実装腕15C及び第4実装腕15Dは、第2検出腕11Bを対称軸として、その配置及び形状が互いに線対称になるように形成されている。第1実装腕15A及び第2実装腕15Bと、第3実装腕15C及び第4実装腕15Dとは、基部9のx軸方向に延びる中心線(不図示)を対称軸として、その配置及び形状が互いに線対称になるように形成されている。
【0040】
実装腕15の先端は、不図示の回路基板又は適宜な形状の実装基体等の支持体に固定される。これにより、圧電体3は、検出腕11及び駆動腕13が振動可能な状態で支持体に支持される。また、実装腕15の先端には、励振電極5及び検出電極7と接続されたパッド12(図6参照)が設けられている。このパッド12は、支持体に設けられたパッド12と半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と支持体との電気的な接続がなされ、また、上述の支持のための固定もなされる。
【0041】
実装腕15の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、実装腕15は、xz断面が矩形とされている。また、先端部は、内側(検出腕11)側に広くなっている。これにより、圧電体3の大型化を抑制しつつ、上述の固定が容易化されている。
【0042】
図3(a)は、図2のIII−III線における断面図である。
【0043】
図3(a)においては、第3駆動腕13C及び第1検出腕11Aの断面を示しているが、他の駆動腕13及び検出腕11の断面も同様である。
【0044】
図1図2及び図3(a)に示すように、励振電極5は、駆動腕13の表面に形成された層状電極である。また、検出電極7は、検出腕11の表面に形成された層状電極である。これらの電極は、例えば、Cu,Al等の適宜な金属によって形成されている。これらの電極の具体的な配置は、例えば、以下のとおりである。
【0045】
図3に示すように、第1励振電極5Aは、各駆動腕13において、z軸方向の正側の面及びz軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。この2つの第1励振電極5Aは、例えば、互いに接続されている。また、第2励振電極5Bは、各駆動腕13において、x軸方向の正側の面及びx軸方向の負側の面にそれぞれ設けられている。この2つの第2励振電極5Bは、例えば、互いに接続されている。これらの4つの励振電極5は、例えば、駆動腕13の各面を概ね覆うように設けられている。ただし、第1励振電極5Aと第2励振電極5Bとが短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では第1励振電極5A)は、各面よりも幅方向において小さく形成されている。
【0046】
なお、励振電極5の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。すなわち、励振電極5の付加符号A、Bは、駆動腕13毎の根元側・先端側等の向き、又は、励振電極5の8本の駆動腕13間における電位の関係に基づいて付されているのではない。従って、例えば、後述するように、一の駆動腕13の第1励振電極5Aと、他の駆動腕13の第1励振電極5Aとは同電位とは限らない。
【0047】
第1検出電極7Aは、各検出腕11において、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の正側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の負側の領域にそれぞれ設けられている。この2つの第1検出電極7Aは、例えば、互いに接続されている。第2検出電極7Bは、各検出腕11において、x軸方向の負側の面のうちのz軸方向の負側の領域、及び、x軸方向の正側の面のうちのz軸方向の正側の領域にそれぞれ設けられている。この2つの第2検出電極7Bは、例えば、互いに接続されている。第1検出電極7A及び第2検出電極7Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、検出腕11に沿って延びている。
【0048】
なお、励振電極5と同様に、検出電極7の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。すなわち、検出電極7の付加符号A、Bは、検出腕11毎の根元側・先端側等の向き、又は、検出電極7の2本の検出腕11間における電位の関係に基づいて付されているのではない。従って、例えば、後述するように、第1検出腕11Aの第1検出電極7Aと、第2検出腕11Bの第1検出電極7Aとは、(本実施形態では)同電位ではない。
【0049】
角速度センサ101は、以上に説明したセンサ素子1に加えて、励振電極5に電圧を印加する励振回路103と、検出電極7からの電気信号を検出する検出回路105とを有している。
【0050】
励振回路103は、例えば、発振回路や増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を第1励振電極5Aと第2励振電極5Bとの間に印加する。なお、周波数は、角速度センサ101内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
【0051】
検出回路105は、例えば、増幅器や検波回路を含んで構成されており、第1検出電極7Aと第2検出電極7Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいてy軸回りの角速度が特定される。また、検出回路105は、励振回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいてy軸回りの回転の向きが特定される。
【0052】
なお、励振回路103及び検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップICによって構成されており、センサ素子1が実装される回路基板又は適宜な形状の実装基体に実装されている。
【0053】
(動作説明)
図3(b)は、駆動腕13及び検出腕11における電位等を説明する図であり、図3(a)の断面に相当する駆動腕13及び検出腕11の断面図である。
【0054】
第1励振電極5Aに正の電位が付与され、第2励振電極に負の電位(又は基準電位)が付与されると、同図において矢印で示すような電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕13のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。その結果、駆動腕13のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕13は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕13は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が第1励振電極5A及び第2励振電極5Bに印加されると、駆動腕13はx軸方向において振動する。
【0055】
センサ素子1がy軸回りに回転されると、x軸方向において振動している駆動腕13には、慣性力の一つであり、その角速度に応じた大きさのコリオリの力が加わる。その結果、駆動腕13はz軸方向において振動する。駆動腕13及び検出腕11は基部9によって連結され、互いに力の相互作用を及ぼすから、作用・反作用の法則に従って、検出腕11は、z軸方向において、駆動腕13とは逆位相で振動する(駆動腕13の湾曲方向とは逆方向に湾曲する。)。
【0056】
検出腕11がz軸方向に湾曲すると、検出腕11のz軸方向の一方側部分は、y軸方向において伸長され、ひいては、x軸方向において収縮され、他方側部分は、y軸方向において収縮され、ひいては、x軸方向において伸長される。従って、図3(b)において矢印で示すように、検出腕11のz軸方向の一方側部分では分極軸の向きと同じ向きの電圧が発生し、他方側部分ではそれと逆向きの電圧が発生する。この電圧が第1検出電極7A及び第2検出電極7Bに出力される。検出腕11がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。
【0057】
図4(a)は、8本の駆動腕13のx軸方向における励振を説明するための模式的な平面図である。
【0058】
第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。例えば、第1駆動腕13Aの第1励振電極5Aと第2駆動腕13Bの第1励振電極5Aとは互いに接続され、第1駆動腕13Aの第2励振電極5Bと第2駆動腕13Bの第2励振電極5Bとは互いに接続され、これらの第1励振電極5Aと、第2励振電極5Bとの間に交流電圧が印加される。
【0059】
同様に、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。このような励振も、上記と同様に、各ペアの2本の駆動腕13間において、第1励振電極5A同士が接続され、第2励振電極5B同士が接続されることなどにより実現されてよい。
【0060】
第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bのペアと、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dのペアとは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。このような励振は、各ペアにおける2本の駆動腕13と同様に、これら2ペアの間において、第1励振電極5A同士が接続され、第2励振電極5B同士が接続されることなどにより実現されてよい。
【0061】
同様に、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fのペアと、第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hのペアとは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。このような励振は、各ペアにおける2本の駆動腕13と同様に、これら2ペアの間において、第1励振電極5A同士が接続され、第2励振電極5B同士が接続されることなどにより実現されてよい。
【0062】
第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dのグループと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hのグループとは、励振方向において互いに逆側へ変形するように互いに逆の位相(180°ずれた位相)で励振される。例えば、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dのグループの第1励振電極5Aと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hのグループの第2励振電極5Bとが接続され(第1の電極群)、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dのグループの第2励振電極5Bと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hのグループの第1励振電極5Aとが接続され(第2の電極群)、第1の電極群と第2の電極群との間に交流電圧が印加される。
【0063】
なお、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dのグループと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hのグループとは、x軸方向において逆位相で振動していることから、圧電体3全体としては、これらグループのx軸方向の力は互いに打ち消し合う。従って、検出腕11が駆動腕13との力の相互作用によってx軸方向において振動することは抑制される。
【0064】
図4(b)は、8本の駆動腕13及び2本の検出腕11のz軸方向における振動を説明するための模式的な斜視図である。より具体的には、図4(b)は、図4(a)に示したように駆動腕13が湾曲している圧電体3が、検出腕11回り(y軸回り)に矢印y5で示す方向へ回転した場合における、駆動腕13及び検出腕11の湾曲状態を示す斜視図である。
【0065】
第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、回転中心(検出腕11)に対して、その半径方向(x軸方向)の同一側に配置されている。また、両駆動腕13は、図4(a)に示したように、その半径方向(励振方向、x軸方向)において同一側へ共に湾曲するように励振される。従って、両駆動腕13においてコリオリの力の向きは互いに同一である。その結果、図4(b)に示すように、両駆動腕13はz軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。
【0066】
同様に、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dは、コリオリの力によって、z軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fは、コリオリの力によって、z軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hは、コリオリの力によって、z軸方向において同一側へ共に湾曲するように振動する。
【0067】
第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bのペアと、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dのペアとは、回転中心(検出腕11)に対して、その半径方向(x軸方向)において互いに逆側に配置されており、ひいては、回転によるz軸方向の移動の向きは互いに逆である。また、図4(a)に示したように、両ペアは、一方のペアが半径方向の内側(回転中心側)に湾曲するとき、他方のペアは半径方向の外側に湾曲するように励振される。従って、両ペアにおいてコリオリの力の向きは互いに同一となる。その結果、図4(b)に示すように、両ペアはz軸方向において同一側に共に湾曲するように振動する。
【0068】
同様に、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fのペアと、第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hのペアとは、z軸方向において同一側に共に湾曲するように振動する。
【0069】
第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bのペアと、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fのペアとは、回転中心(検出腕11)に対して、その半径方向(x軸方向)の同一側に配置されており、ひいては、回転によるz軸方向の移動の向きは互いに同一である。また、図4(a)に示したように、一方のペアが半径方向の内側(回転中心側)に湾曲するとき、他方のペアは半径方向の外側に湾曲する。従って、両ペアにおいてコリオリの力の向きは互いに逆となる。その結果、図4(b)に示すように、両ペアはz軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。
【0070】
同様に、第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dのペアと、第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hのペアとは、コリオリの力によって、z軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。
【0071】
上記のように、コリオリの力によって、検出腕11に対して互いに対称に配置されたペア同士はz軸方向において同一側に共に湾曲するように振動し、基部9に対して対称に配置されたペア同士はz軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動している。従って、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dのグループと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hのグループとは、コリオリの力によって、z軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。換言すれば、8本の駆動腕13全体を一つの部材として捉えると、この部材は、シーソーのように、基部9のx軸方向に延びる中心線(不図示)の回りに往復動する。
【0072】
駆動腕13及び検出腕11は、基部9によって連結されており、力の相互作用を及ぼす。従って、駆動腕13がz軸方向に振動されると、圧電体3全体において力が釣り合うように(作用・反作用の法則に従って)、検出腕11はz軸方向において振動する。具体的には、上述のように、8本の駆動腕13は一つのシーソーのように基部9回りに往復動するから、2本の検出腕11は、基部9回りの方向において8本の駆動腕13とは逆側へ移動するように往復動する。別の観点では、第1検出腕11Aは、z軸方向において第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dとは逆側に湾曲にするように振動し、第2検出腕11Bは、z軸方向において第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hとは逆側に湾曲にするように振動する。
【0073】
第1検出腕11A及び第2検出腕11Bは、z軸方向において互いに逆側に湾曲するように振動する。従って、両者は、z軸方向の一方側部分(又は他方側部分)において生じる電圧がx軸方向において互いに逆向きである。従って、例えば、第1検出腕11Aの第1検出電極7Aと第2検出腕11Bの第2検出電極7Bとが接続され、第1検出腕11Aの第2検出電極7Bと第2検出腕11Bの第1検出電極7Aとが接続されることにより、両検出腕11において生じた電気信号は加算される。
【0074】
(配線の一例)
上記の動作説明においては、複数の励振電極5及び複数の検出電極7の接続関係について言及した。この接続関係を実現する配線の一例を図6に示す。
【0075】
図6は、センサ素子1の斜視図である。ただし、この図は、配線を視認しやすいようにセンサ素子1を模式的に示している。例えば、圧電体3の形状は単純化されて示され、また、各種の電極は小さく示されている。
【0076】
この例において、第1実装腕15Aの端部(第1パッド12A)から延びる第1配線10A、及び、第4実装腕15Dの端部(第4パッド12D)から延びる第4配線10Dは、複数の励振電極5に電圧を印加するための配線である。また、第2実装腕15Bの端部(第2パッド12B)から延びる第2配線10B、及び、第3実装腕15Cの端部(第3パッド12C)から延びる第3配線10Cは、複数の検出電極7から信号を取り出すための配線である。
【0077】
第1配線10Aは、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dの第1励振電極5A(8枚)、及び、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hの第2励振電極5B(8枚)に接続されている。第4配線10Dは、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dの第2励振電極5B(8枚)、及び、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hの第1励振電極5A(8枚)に接続されている。
【0078】
第2配線10Bは、第1検出腕11Aの第1検出電極7A(2枚)、及び、第2検出腕11Bの第2検出電極7B(2枚)に接続されている。第3配線10Cは、第1検出腕11Aの第2検出電極7B(2枚)、及び、第2検出腕11Bの第1検出電極7A(2枚)に接続されている。
【0079】
配線10は、互いに交差しないように、基部9の6面及び各種の腕部の根元側部分及び先端側部分の4面に適宜に配置されている。
【0080】
なお、図6に示す配線は、あくまで一例であり、他の種々のパターンによって、動作説明において言及した電極の接続関係が実現されてよい。4つの実装腕15と、4種の配線の端部との組み合わせも変更されてよい。2つの配線は、絶縁体を介して互いに立体交差するように設けられてもよい。
【0081】
以上のとおり、本実施形態では、角速度センサ101は、圧電体3を有し、圧電体3は、基部9と、基部9から互いに並列に延びる第1検出腕11A、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bとを有している。また、角速度センサ101は、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bに電圧を印加してこれら駆動腕13をその延在方向(y軸方向)に直交する励振方向(x軸方向)に励振する励振回路103と、延在方向に直交する検出方向(z軸方向)における第1検出腕11Aの振動によって生じる電気信号を検出する検出回路105と、を有している。第1検出腕11A、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、この順で1列に配列されている。第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、励振方向における固有振動数が互いに同一であり、且つ、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。
【0082】
従って、例えば、第1駆動腕13Aのみが設けられている場合に比較して、第1検出腕11Aとの間で相互作用を及ぼす駆動腕13の質量が大きくなる。その結果、第1検出腕11Aに作用するコリオリの力が増加し、第1検出腕11Aの変形が大きくなる。ひいては、第1検出腕11Aにおいて発生する電荷も大きくなり、検出感度が向上する。また、従来技術における1本の駆動腕に代えて、これと同等の質量を有する2本の駆動腕13に置換したと捉えると、駆動腕の延在方向(y軸方向)において圧電体3の小型化が図られる。また、x軸方向において、第1検出腕11Aの両側に2本の駆動腕13を配置するのではなく、同一側に2本の駆動腕13を配置する発想により、駆動腕13の配置位置の設計の自由度が向上する。
【0083】
また、本実施形態では、圧電体3は、第1検出腕11Aに対して第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bと対称に配置された第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dと、基部9に対して第1検出腕11A及び第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dと対称に配置された第2検出腕11B及び第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hと、を更に有している。第1駆動腕13A〜第8駆動腕13Hは、励振方向(x軸方向)における固有振動数が互いに同一である。第3駆動腕13C及び第4駆動腕13Dは、励振回路103により、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fは、励振回路103により、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hは、励振回路103により、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。
【0084】
すなわち、2本の検出腕11に対して8本の駆動腕13が設けられている。8本の駆動腕13は、互いに同一の位相で励振されるものがペアとされ、4方に配置されている。従って、全体としてバランスよく、且つ、多くの駆動腕13を設けることができ、効果的に検出腕11をコリオリの力によって振動させ、角速度を検出することができる。
【0085】
また、本実施形態では、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dは、励振方向(x軸方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hは、励振方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hとは、励振方向において互いに逆側に変形するように互いに逆の位相で励振される。
【0086】
従って、8本の駆動腕13は、全体として、励振方向においてシーソーのように励振され、ひいては、コリオリの力によって、全体として、検出方向(z軸方向)においてシーソーのように振動する。その結果、2本の検出腕11も、全体として、検出方向においてシーソーのように振動する。従って、効果的に8本の駆動腕13の振動によって検出腕11の振動を生じさせることができると期待される。
【0087】
また、本実施形態では、基部9は、第1駆動腕13A〜第8駆動腕13Hの配列方向(x軸方向)において第1駆動腕13A〜第8駆動腕13Hよりもこれらの配列方向の両外側に延びている。圧電体3は、基部9の第1駆動腕13A〜第8駆動腕13Hよりも外側の両側に、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dと並列に延びる第1実装腕15A及び第2実装腕15Bと、第5駆動腕13E〜第8駆動腕13Hと並列に延びる第3実装腕15C及び第4実装腕15Dを更に有している。また、圧電体3は、4本の実装腕15の先端部にて支持されている。
【0088】
従って、圧電体3は、例えば、基部9の両端にて支持されるような場合に比較して、支持される部分(実装腕15の先端)が、4方に、且つ、より外側に位置する。その結果、圧電体3は、所定のxy平面に対して平行に配置されることが容易化され、ひいては、角速度の検出精度が向上する。
【0089】
(他の実施形態)
図5(a)〜図5(c)は、第2〜第4の実施形態に係るセンサ素子(圧電体)を示す平面図である。なお、各センサ素子において、励振電極5及び検出電極7の配置は、実施形態と同様であり、図示を省略する。各センサ素子は、第1の実施形態と同様に、励振電極5に接続される励振回路103(図3(a))、及び、検出電極7に接続される検出回路105(図3(a))とともに角速度センサを構成する。
【0090】
(第2の実施形態)
図5(a)に示す第2の実施形態に係るセンサ素子201(圧電体203)は、検出腕及び駆動腕として、第1の実施形態のセンサ素子1における、第1検出腕11A、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bのみを有するものである。なお、基部209は、例えば、第1の実施形態の基部9とxy平面における寸法が異なるものである。
【0091】
第1の実施形態と同様に、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bは、x軸方向(励振方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。センサ素子201がy軸回りに回転されると、2本の駆動腕13には、コリオリの力が加わる。その結果、2本の駆動腕13はz軸方向において同一側に共に変形するように振動する。そして、第1検出腕11Aは、z軸方向において駆動腕13とは逆側へ湾曲するように振動する。
【0092】
(第3の実施形態)
図5(b)に示す第3の実施形態に係るセンサ素子301(圧電体303)は、検出腕及び駆動腕として、第1の実施形態のセンサ素子1における、第1検出腕11A及び第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dのみを有するものである。なお、基部309は、例えば、第1の実施形態の基部9とxy平面における寸法が異なるものである。
【0093】
第1の実施形態と同様に、第1駆動腕13A〜第4駆動腕13Dは、x軸方向(励振方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振される。センサ素子301がy軸回りに回転されると、4本の駆動腕13には、コリオリの力が加わる。その結果、4本の駆動腕13はz軸方向において同一側に共に変形するように振動する。そして、第1検出腕11Aは、z軸方向において駆動腕13とは逆側へ湾曲するように振動する。
【0094】
(第4の実施形態)
図5(c)に示す第4の実施形態に係るセンサ素子401(圧電体403)は、検出腕及び駆動腕として、第1の実施形態のセンサ素子1における、第1検出腕11A、第2検出腕11B、第1駆動腕13A、第2駆動腕13B、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fのみを有するものである。なお、基部409は、例えば、第1の実施形態の基部9とxy平面における寸法が異なるものである。
【0095】
第1の実施形態と同様に、第1駆動腕13A及び第2駆動腕13Bはx軸方向(励振方向)において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fはx軸方向において同一側へ共に変形するように互いに同一の位相で励振され、これらのペア同士はx軸方向において互いに逆側へ変形するように互いに逆の位相で励振される。4本の駆動腕13は、全体として、基部409回りにシーソーのように振動する。そして、2本の検出腕11は、全体として、4本の駆動腕13とは逆側に、基部409回りにシーソーのように振動する。
【0096】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0097】
検出腕及び駆動腕の本数は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、1本の検出腕に対して、励振方向(実施形態ではx軸方向)における同一側に、3本以上の駆動腕が設けられてもよい。
【0098】
駆動腕の励振方向は、複数の駆動腕の配列方向ではなく、駆動腕の延在方向及び複数の駆動腕の配列方向に直交する方向(図1のz軸方向)であってもよい。また、複数の駆動腕間における位相差及び角速度が検出される回転軸も適宜に設定されてよい。
【0099】
例えば、圧電体3において、第1駆動腕13A、第2駆動腕13B、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fが同一の位相でx軸方向に励振され、これとは逆の位相で、第3駆動腕13C、第4駆動腕13D、第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hがx軸方向に励振され、検出腕11のx軸方向の変形に起因する電圧からz軸回りの回転の角速度が検出されてもよい。
【0100】
また、例えば、圧電体3において、第1駆動腕13A、第2駆動腕13B、第5駆動腕13E及び第6駆動腕13Fが同一の位相でz軸方向に励振され、これとは逆の位相で、第3駆動腕13C、第4駆動腕13D、第7駆動腕13G及び第8駆動腕13Hがz軸方向に励振され、検出腕11のx軸方向の変形に起因する電圧からx軸回りの回転の角速度が検出されてもよい。
【0101】
実装腕は、設けられなくてもよい。例えば、基部の両端にてセンサ素子の支持及び電気的な接続がなされてもよい。また、ワイヤボンディングで電気的な接続がなされるなど、センサ素子の支持と電気的な接続とは別個に行われてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…センサ素子、3…圧電体、9…基部、11A…第1検出腕、13A…第1駆動腕、13B…第2駆動腕、101…角速度センサ、103…励振回路、105…検出回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6