(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動モータと、直動機構と、前記電動モータと直動機構を接続する減速機構と、前記電動モータの回転により減速機構を介して駆動される直動機構に装着され、ブレーキロータに押し付けられる摩擦部材とで構成される電動ブレーキと、前記減速機構に係合部材をDCソレノイドのプランジャーの作動により係合させてロックするパーキング手段とで構成される電動パーキングブレーキ装置において、
前記ソレノイドへ直流電流を供給する電源手段と、その電源手段の供給する直流電流に重畳する交流成分を出力する発振手段と、前記電源手段からソレノイドへ供給する直流電流をオン・オフする第1のスイッチ手段と、その第1のスイッチ手段がソレノイドへ供給した直流電流に、前記発振手段が出力する交流成分を前記係合部材が減速機構にロックしたタイミングで印加する第2のスイッチ手段と、前記交流成分の印加されたソレノイドコイルの両端の検出値の変化からソレノイドのプランジャーの位置あるいは変位を推定する処理手段を設けたことを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
上記ソレノイドがプランジャーを起動位置に復元するための弾性機構を備えたものとし、前記ソレノイドの駆動電流をI1とし、前記起動後のプランジャーを弾性機構に抗して保持する保持電流をI2(I1>I2)として、上記発振手段出力の印加後の実効電流の低下量をΔIとすると、ΔI<I1−I2とすることを特徴とする請求項1に記載の電動パーキングブレーキ装置。
上記係合部材が減速機構にロックするタイミングでタイムアップして第2のスイッチ手段を作動するタイマ手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動パーキングブレーキ装置。
上記ソレノイドに印加する交流成分の周波数が、上記ソレノイドの動作周波数に対して少なくとも同等以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動パーキングブレーキ装置。
上記ソレノイドの動作前と動作後のプランジャーの移動差から係合部材の突出量を推定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動パーキングブレーキ装置。
上記パーキング手段の作動前に、ソレノイドへプランジャーが移動しない測定用電流を入力し、そのときの測定値に基づきコイルの温度を算出し、その算出した前記コイルの温度に基づいて係合部材の推定位置を校正する請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パーキングブレーキ装置。
上記電動ブレーキが動作中で、かつ、パーキング手段が非作動時に、一定時間ごとにソレノイドのプランジャーの位置を算出し、その算出位置から、係合部材の減速機構からの離反状態の維持を確認することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電動パーキングブレーキ装置。
上記電動ブレーキが非動作で、かつ、パーキング手段が作動中に、一定時間ごとにソレノイドのプランジャーの位置を算出し、その算出位置から、係合部材の減速機構との係合状態の維持を確認することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電動パーキングブレーキ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように別途センサを設ける方法では、2次コイルをソレノイドのコイルと同軸上の限られた場所に配置する必要がある。そのため、設置スペースの確保が必要になる問題や、配線系統の取り回しが複雑化するなどの問題が考えられる。
また、センサを付加したことで、部品数が増加するため、故障のリスクも増加する。
【0008】
この問題を解決する方法として、例えば、ソレノイドへ交流電圧を印加し、プランジャーの変位によって生じるインダクタンスの変化を検出することが考えられる。
すなわち、ソレノイドは、交流電源eを接続すると、
e=(r+jωL)×i
である。ここで、交流電源を出力抵抗r<<|jωL|とすれば、
e=ωLi(i:交流電源の定電流)
したがって、
L=e/ωi=e/2πfi
となり、インダクタンスLを検出できる。
このとき、ソレノイドのインダクタンスLは、鎖交する磁束数に比例する。そのため、インダクタンスLは、ソレノイドの中を移動する磁性体であるプランジャーの変位に応じて変化する。よって、インダクタンスLを検出することでプランジャーの変位が検出できる。このように、センサを設けることなくプランジャーの変位を検出したり、検出した変位から位置を算出したりできる。
【0009】
ところで、上記の方法では、検出のためにソレノイドへ交流電圧を印加する。ところが、ソレノイドがDCソレノイドの場合、交流電圧を印加してもソレノイドとして機能しない。
そのため、DCソレノイドでは、例えば、直流電流と交流電圧を切り替えて、時分割により変位を検出するという制御を行えば、ソレノイドを機能させながら、変位を検出できる。
【0010】
しかしながら、上記の方法では、時分割により、直流電流と交流電圧を切り替えてソレノイドに供給するため、短時間での切り換えが難しい。また、切り換えによるノイズの発生も考えられる。
さらに、交流電圧を供給する電圧源は、検出に適した振幅と周波数を備えた交流電圧を出力しなければならないので、変換に伴う損失が発生する問題もある。特に、車両の場合は、バッテリーで駆動することになるので、これらの損失を少なくしたい問題がある。
しかも、このように損失が発生すると、損失を放熱するためのヒートシンクも備えなければならないスペースや、交流電圧源の回路を搭載するためのスペースも必要になる。
【0011】
そこで、この発明の課題は、センサを設けることなく、プランジャーの位置あるいは変位を検出して動作不良を発見できるようにすることである。そして、その際、損失を少なく、搭載スペースも小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明では、電動モータと、直動機構と、前記電動モータと直動機構を接続する減速機構と、前記電動モータの回転により減速機構を介して駆動される直動機構に装着され、ブレーキロータに押し付けられる摩擦部材とで構成される電動ブレーキと、前記減速機構に係合部材をDCソレノイドのプランジャーの作動により係合させてロックするパーキング手段とで構成される電動パーキングブレーキ装置において、前記ソレノイドへ直流電流を供給する電源手段と、その電源手段の供給する直流電流に重畳する交流成分を出力する発振手段と、前記電源手段からソレノイドへ供給する直流電流をオン・オフする第1のスイッチ手段と、その第1のスイッチ手段がソレノイドへ供給した直流電流に、前記発振手段が出力する交流成分を前記係合部材が減速機構にロックしたタイミングで印加する第2のスイッチ手段と、前記交流成分の印加されたソレノイドコイルの両端の検出値の変化からソレノイドのプランジャーの位置あるいは変位を推定する処理手段を設けた構成を採用したのである。
【0013】
このような構成を採用することにより、電動パーキングブレーキ装置では、パーキング手段が作動すると、第1のスイッチ手段をオンにして直流電流をソレノイドへ印加して係合部材を減速機構にロックする。次に、第2のスイッチ手段を作動して、ロック後のソレノイドの供給電流へ交流成分を重畳する。そして、ソレノイドのプランジャーの位置あるいは変位を検出して所定の位置に達しているか推定する。
すなわち、ソレノイドは、コイルとコイル内部のプランジャーの位置関係が変化すると、コイルのインピーダンスは変化する。このとき、コイルのインピーダンスは、XL=r+jωL(L:コイルのインダクタンス)で表される。そのため、ソレノイドの入力に所要周波数の交流成分を重畳し、ソレノイドコイルの両端の検出値の変化(例えば、自己共振点の変化)を検出すれば、センサを設けることなくプランジャーの位置あるいは変位を推定することができる。
このとき、交流成分を重畳すると、例えば、車載バッテリーのような定電圧電源では、電源電圧を超える電圧をソレノイドコイルに印加できないことから、交流成分の波形ひずみによる変位検出精度の低下を回避するため、少なくとも交流成分の振幅以上に直流成分を低下させた上で交流成分を重畳する必要があり、出力電流が低下する。このことから、所定の吸着力を得ることができず、プランジャー突出不良に対する安全率に影響を与えてしまうことが考えられる。そのため、まず、第1のスイッチ手段をオンにし、電流が低下しないようにして、交流成分を重畳せずにソレノイドを作動する。そして、プランジャーがストロークしてインダクタンスが増加することによる吸引力の増加が、前記出力電流の低下による吸引力の低下分を上回る状態となったのち、交流成分を重畳することで、所定の吸着力が得られるようにする。この結果、交流成分の重畳で低下する電流値を補うためにソレノイドコイルの巻回数を増やしたり、電源を増強したりしなくても良くなるため、コイルや電源の小型化が可能になる。
また、直流に発振出力を重畳して、ソレノイドコイルの両端の検出値の変化(例えば、自己共振点の変化)を検出するため、発振出力には大きな電力を必要とせず、損失も少なく、設置スペースも要しない。
【0014】
このとき、上記ソレノイドがプランジャーを起動位置に復元するための弾性機構を備えたものとし、前記ソレノイドの駆動電流をI1とし、前記起動後のプランジャーを弾性機構に抗して保持する保持電流をI2(I1>I2)として、上記発振手段出力の印加後の実効電流の低下量をΔIとすると、ΔI<I1−I2とする構成を採用することができる。
【0015】
このような構成を採用することにより、ソレノイドのプランジャーの吸着(ロックピンのロック)と復帰(ロックピンの離反)には、プランジャーの吸着に伴うソレノイドコイルのインダクタンスの増加により、駆動電流I1と保持電流I2との間にI1>I2とするヒステリシスが形成される。このI1−I2とするヒステリシス内に交流成分の重畳による実効電流の低下量ΔIを収めることで、交流成分の重畳による吸着力の低下の影響を保障して変位や位置を検出することができる。
【0016】
また、このとき、上記係合部材が減速機構にロックするタイミングでタイムアップして第2のスイッチ手段を作動するタイマ手段を備えた構成を採用することができる。
【0017】
このような構成を採用することにより、プランジャーのストロークが係合部材をロックする長さに達したことを、ソレノイドの起動(電流の印加)からの時間の経過で判別することにより、第2のスイッチ手段を作動して発振手段の出力を直流電流に重畳する。このように、タイマを使った軽便な方法で発振手段出力の印加を制御することができる。
【0018】
また、このとき、上記ソレノイドに印加する交流成分の周波数が、上記ソレノイドの動作周波数に対して少なくとも同等以上であるという構成を採用することができる。
【0019】
このような構成を採用することにより、交流成分の周波数をソレノイドが応答できる周波数よりも高く設定することで、交流成分の判別が容易になるので、短時間での変位や位置の検出が可能になる。また、交流成分の波長が短くなるので、検出の分解能を高くして検出の制度を向上できる。さらに、ソレノイドは、交流成分の周波数に応答できなくなるので、前記成分がソレノイドの動作に影響を与えないようにできる。
【0020】
また、上記ソレノイドの動作前と動作後のプランジャーの移動差から係合部材の突出量を推定するという構成を採用することができる。
【0021】
このような構成を採用することにより、係合部材の突出量を推定できるので、例えば、その推定値から係合部材の係合具合を算出すれば、パーキングブレーキの作動状態が判定できる。
【0022】
また、このとき、上記パーキング手段の作動前に、ソレノイドへプランジャーが移動しない測定用電流を入力し、そのときの測定値に基づきコイルの温度を算出し、その算出した前記コイルの温度に基づいて係合部材の推定位置を校正するという構成を採用することができる。
【0023】
このような構成を採用することにより、プランジャーが変位を生じない程度の微小な測定用電流を入力することよって、例えば、そのときの測定電圧からコイルの抵抗値を算出する。そして、その抵抗値から、銅の温度係数を利用した抵抗法などを用いて通電後のコイルの内部温度を推定し、この推定温度によるコイルの吸引力・保持力の低下を加味してプランジャーの推定位置を校正することができる。
【0024】
また、このとき、上記電動ブレーキが動作中で、かつ、パーキング手段が非作動時に、一定時間ごとにソレノイドのプランジャーの位置を算出し、その算出位置から、係合部材の減速機構からの離反状態の維持を確認するという構成を採用することができる。
【0025】
このような構成を採用することにより、パーキング手段が非作動時も一定時間ごとに、プランジャーの位置を検出して、係合部材の減速機構からの離反状態を逐次検出する。こうして、前記離反状態からパーキング手段の誤動作による係合状態を常に確認することで、安全性を担保できる。
【0026】
また、上記電動ブレーキが非動作で、かつ、パーキング手段が作動中に、一定時間ごとにソレノイドのプランジャーの位置を算出し、その算出位置から、係合部材の減速機構との係合状態の維持を確認するという構成を採用することができる。
【0027】
このような構成を採用することにより、ソレノイドの作動周期より短い一定時間ごとの周期でプランジャーの位置を検出して、係合部材と減速機構との係合状態を逐次検出する。こうすることで、係合部材と減速機構との係合状態を常に確認することができるので、安全性を担保できる。
【0028】
このとき、上記第1のスイッチ手段が第2のスイッチ手段を兼ねるようにすれば、スイッチ手段が一つで済むため、小型化、損失の低減及びコストの低減が図れる。
【発明の効果】
【0029】
この発明は、上記のように構成したことにより、プランジャーの検出からロックピンの変位や位置の検出ができるので、ロックピンの突出状態や前記ピンのロックの状態の検出ができる。そのため、ソレノイドの動作不良による事故を未然に防止することができる。また、その際、別途センサを設けることなく位置または変位の検出を行うことができるので、サイズ、コストの低減が実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
この形態の電動パーキングブレーキ装置は、
図1に示すように、自動車用の電動式ディスクブレーキ1と、ソレノイド9を用いたパーキング手段2とで構成されている。
【0032】
電動式ディスクブレーキ1は、電動モータ3と直動機構4が減速機構5を介して接続され、前記直動機構4に装着したブレーキパッド6aをブレーキロータ7に押し付ける構造となっている。
【0033】
電動モータ3は、ここでは、直流モータを採用しており、電動モータ3の可逆運転が電源の極性を反転させるだけで簡単にできるようにしてある。
【0034】
直動機構4は、
図2に示すように、外輪部材11と軸受部材12及びキャリア13で構成され、円筒状のハウジング14に収容されている。また、円筒状のハウジング14の一端には、
図1に示すように、径方向外方に向けてベースプレート15が設けられ、そのベースプレート15の外側面及びハウジング14の一端の開口がカバー16によって被われる構造となっている。さらに、ベースプレート15には電動モータ3が取り付けられ、電動モータ3の回転は、前記カバー16内に組み込まれた減速機構5によって回転軸17に伝達されるようになっている。
一方、ハウジング14の他端部には、
図1に示すように、キャリバボディ18が一体に取り付けられている。このキャリバボディ18は、外周部の一部が配置されたブレーキロータ7の両側に、固定ブレーキパッド6bと可動ブレーキパッド6aを設け、その可動ブレーキパッド6aを外輪部材11の他端部に連結して一体化した構造となっている。
【0035】
外輪部材11は、スライド部材として組み込まれたもので、回り止めされてハウジング14の内径面に沿って軸方向へ移動自在となっている。また、その内径面には、
図2に示すように、断面がV字形で螺旋状の突条19が設けられている。
【0036】
軸受部材12は、
図2に示すように、中央部にボス部を設けた円盤状の部材で、先の外輪部材11の軸方向の一端側に組み込まれている。また、この軸受部材12の中央部のボス部内には、一対の転がり軸受20が間隔を置いて組み込まれており、その転がり軸受20によって外輪部材11の軸心上に配置された回転軸17を回動自在に支持する。この組み込まれた軸受部材12は、ハウジング14の内周面に取り付けたストッパリング21により、ハウジング14の開口端を覆うカバー16側への移動が防止されている。
【0037】
キャリア13は、
図2、
図3に示すように、軸方向で対向する一対のディスク13a、13bと複数の間隔調整部材13c及び複数のローラ軸13dで構成されている。複数のローラ軸13dには、遊星ローラ13eが回動自在に支持されており、外輪部材11の内側に回転軸を中心にして回転可能に組み込まれている。
すなわち、キャリア13は、一方のディスク13aの片面外周部に他方のディスク13bに向けて複数の間隔調整部材13cが周方向に間隔を置いて設けられたもので、その間隔調整部材13cの端面にねじ込まれるネジの締め付けによって対向する一対のディスク13a、13bを連結したものである。
この一対のディスク13a、13bのうち、軸受部材12側に位置するインナー側ディスク13bは、回転軸17との間に組み込まれたすべり軸受22によって回動自在に、かつ、軸方向へ移動自在に支持されている。
一方、アウター側ディスク13aは、中心部に段付き孔からなる軸挿入孔23が形成され、その軸挿入孔23内に嵌合されたすべり軸受24によって、回転軸17に対し回動自在に支持されている。この回転軸17には、すべり軸受24のアウター側端面に隣接してスラスト荷重を受ける金属ワッシャ25が嵌合されており、そのワッシャ25は回転軸17の軸端部に取り付けられた止め輪26によって抜け止めされている。
【0038】
また、複数のローラ軸13dは、それぞれ、一対のディスクに形成された長孔からなる軸挿入孔27内に軸端部が挿入されて径方向に移動自在に支持されたもので、そのローラ軸13dを巻き込むようにして架け渡された弾性リング28によって径方向に向けて付勢されている。この複数のローラ軸13dのそれぞれには、遊星ローラ13eが回動自在に支持されている。
【0039】
遊星ローラ13eは、
図3に示すように、それぞれ、回転軸17の外径面と外輪部材11の内径面間に配置され組み込まれる構成となっており、先述したとおり、外輪部材11の内径面間に組み込まれたローラ軸13dは、その両軸端部に掛け渡された弾性リング28によって回転軸17の外径面に押し付けられて弾性接触するようになっている。そのため、上記回転軸17が回転すると、その回転軸17の外径面に対する接触摩擦によって回転するようになっている。
また、遊星ローラ13eの外径面には、
図2に示すように、断面V字状で複数の螺旋溝29が軸方向に等間隔に形成されている。この螺旋溝29のピッチは、先述した外輪部材11に設けられた螺旋突条19のピッチと同一となっており、その螺旋突条19に螺合している。なお、螺旋溝29に替えて、複数の円周溝を螺旋突条19と同一ピッチで軸方向に等間隔に形成してもよい。
【0040】
これらの遊星ローラ13eとキャリア13のインナー側ディスク13bの軸方向の対向部間には、
図2のように、ワッシャ30およびスラスト軸受31が組み込まれている。さらに、キャリア13と軸受部材12の軸方向の対向部間には、環状のスラスト板32が組み込まれ、そのスラスト板32と軸受部材12間にスラスト軸受33が組み込まれている。
【0041】
外輪部材11のハウジング14の他端部の開口から外部に位置する他端の開口は、シールカバー34の取り付けにより閉塞され、内部に異物が侵入するのを防止するようになっている。
【0042】
減速機構5は、
図1に示すように、電動モータ3のロータ軸に取り付けられた入力ギヤの回転を一次減速ギヤ列G1→二次減速ギヤ列G2→三次減速ギヤ列G3により、順次減速して回転軸17の輪端部に取り付けられた出力ギヤ35へ伝達し、回転軸17を回転させる。
この減速機構5に、電動モータ3のロータ軸をロック及びアンロック可能なパーキング手段2が設けられている。
【0043】
パーキング手段2は、係合部材8であるロックピン8とピン駆動用のソレノイド9とで構成されている。ピン駆動用のソレノイド9は、
図4に示すように、リニアソレノイド(DC:直流)にリターンスプリング36を内蔵してプッシュ型としたアクチュエータで、プランジャー10の先端に、係合部材8としてロックピン8を装着した構造となっている。
その結果、ソレノイド9に通電すると、コイル37にターンオン電流が流れて、プランジャー10は吸引される。すると、リターンスプリング36に抗して先端のロックピン8がソレノイド9(ボビン)から突出する。
また、通電を停止すると、プランジャー10はスプリング36に引っ張られるため、プランジャー10先端のロックピン8はソレノイド9(ボビン)に収容される。
【0044】
このソレノイド9は、フロントプレート38にロックピン8をスライド自在に支持するピン孔39が形成された保護カバー40に収容されていて、
図1のように、ベースプレート15に支持されてハウジング14と電動モータ3間に配置されている。
【0045】
このように、ソレノイド9は、ハウジング14と電動モータ3間に配置することで、プランジャー10の先端のロックピン8が、二次減速ギヤ列G2の出力側の中間ギヤ41に対して進退可能になっている。
この中間ギヤ41は、
図5(a)に示すように、側面に複数の係止孔42が等間隔で同一円状に設けられたもので、その複数の係止孔42に対してロックピン8をソレノイド9で進退させるのである。そして、
図5(b)に示すように、係止孔42に対するロックピン8の係合によって、中間ギヤ41をロックする構造としている。
図5(b)は
図5(a)のb−b断面図である。
なお、この形態では、プランジャー10の先端に係合部材8としてロックピンを設けたものについて述べたが、プランジャー10とロックピン8は一体にして係合部材8としても良い。また、プランジャー10自体を係合部材8として使用しても良いことは明らかである。
【0046】
この電動パーキングブレーキ装置には、
図6に示すように、ソレノイド変位検出手段50が設けられている。
ソレノイド変位検出手段50は、
図6の模式図に示すように、ソレノイド9とスイッチ手段(ここでは、NPNトランジスタ)51を直列に接続して電源52と接続したパーキングブレーキ装置のソレノイド9の駆動回路53に、共振回路用コンデンサ54と変位検出装置55および電流検出手段56と制御装置57を設けた構成になっている。
【0047】
ここで、ソレノイド9は、先述のように、コイル37とコイル37に挿通されたプランジャー10とからなるものである。また、電源52は、
図6のように、直流電源58で、例えば、車載バッテリーで構成される。
【0048】
スイッチ手段51は、ソレノイド9とグランド間にNPNトランジスタを設けたエミッタ接地回路からなるソレノイド駆動用のトランジスタスイッチで、電源52からソレノイド9へ供給する直流電流をオン・オフする第1のスイッチ手段51aと、前記第1のスイッチ手段51aがソレノイドへ供給する直流電流に、後述の発振手段が出力する交流成分を印加する第2のスイッチ手段51bとを兼ねたものである。
なお、ここでは、スイッチ手段51に、NPNトランジスタを使用した例を示しているが、PNPトランジスタを使用することもできる。その場合、PNPトランジスタは、電源52とソレノイド9間に配置する。また、トランジスタに換えて、FET(MOS型含む)を使うことも可能である。
【0049】
電流検出手段56は、例えば、前記スイッチ手段51のトランジスタのエミッタとグランド間に挿入された電流検出用抵抗器からなり、その抵抗器によって生じる電位差からソレノイド9のコイル37に流れる電流を検出する。ここでは、電流検出手段56に電流検出用の抵抗器を使用したが、これに限定されるものではない。これ以外に非接触式の直流電流センサ(例えば、ホール素子型、マグアンプ型、磁気マルチバイブレータ型、フラックスゲート型、光学素子を使用したもの、等々)なども使用することは可能である。
【0050】
共振回路用コンデンサ54は、
図6のように、ソレノイド9のコイル37と並列に接続して、共振回路(並列共振回路)を形成する。このような並列共振回路を採用することでコイル37と共振回路用コンデンサ54の位相差により電流を打ち消しあって共振回路の外へ共振電流が流れないようにしてある。
なお、ソレノイド9のコイル37の浮遊容量が共振用コンデンサ54として機能するように設計して、前記コンデンサ54を省略することも考えられる。
【0051】
制御装置57は、ECU(Engine Control Unit)などのマイクロコントローラで、発振回路、A/D変換器、入出力回路、タイマ回路などの周辺回路を備えている。
この制御装置57の入力には、電流検出手段56の検出出力が接続されている。また、制御装置57の出力は、スイッチ手段51のトランジスタと接続されており、電流制御ループを形成するようになっている。
このため、車両のバッテリーのような定電圧源でもソレノイド9を直接駆動することができるのである。
一方、制御装置57は、前記スイッチ手段51の開閉を電流検出手段の出力に基づき、第1のスイッチ手段51aとしてソレノイド9をオン・オフ制御(飽和領域)する。同時に、制御手段57は、プランジャー10の変位や位置を検出するため、スイッチ手段51の開度を制御して非飽和領域によるスイッチングを行うことにより、
図7のような駆動電流をソレノイド9へ印加する。そのため、この形態では、制御装置57は、内部の発振回路の出力を例えば、プリスケーラを使用してスイッチング信号を生成し、発振手段59出力としてスイッチ手段51へ入力する。
【0052】
このスイッチ手段51によるソレノイド9への駆動電流は、
図7に示すように、直流成分だけの直流部分60と直流に交流成分61を重畳した交流部分61aで構成されている。
この交流成分61の重畳は、ソレノイド9に直流電流が印加され、ソレノイド9のプランジャー10が移動を始めて、その先端のロックピン8が減速機構5にロックしたタイミングで行う。このようなタイミングで交流成分61を印加して重畳を行うのは、以下のような理由からである。
【0053】
すなわち、直流電流が印加され鉄芯の飽和しているソレノイド9に、位置検出を行うために交流成分61を印加(重畳)すると、コイル37に、起電力(自己誘導)が発生する。この起電力は、例えば、車載バッテリーのような定電圧電源の印加可能な電流を低下させる。そのため、所定の吸引力を発揮させようとすると、ソレノイドコイル37の卷回数の増加や永久磁石の使用などを考慮しなければならず、形状の大型化やコストアップにつながる問題が生じる。
【0054】
ここで、ソレノイド9のコイル37に一定の電流を印加した際のロックピン8の突出量(保護カバー40からの)とロックピン8の突出力(吸引力)及び、前記突出量とリターンスプリング36の反力(引っ張り張力)とに着目すると、これらの間に
図9で示す相関がある。このことから、例えば、
図6の場合、ロックピン8の突出量に比例してギャップgが縮小し、コイル37の磁路の磁気抵抗は単調減少するため、突出力の増加量を張力の増加量に対して大きくする。
【0055】
また一方、
図10は、上記の構成を適用した場合のソレノイド9のコイル37の駆動電流と、ロックピン8の突出量の相関を示したものである。この図から、リターンスプリング36の引張り張力を上回る突出力が発生した後は、ロックピン8が突出するのに従って、突出力が前記張力を上回る増加量を示す。そのため、ロックピン8は、矢印Yのように、突出が完了するまで動作する。次に、駆動電流を減少すると、駆動電流が減少してもロックピン8は、リターンスプリング36の引張り張力に抗して突出状態を維持する。そして、電流が突出する前と比較して明らかに少ない電流I2まで減少すると、ロックピン8は、リターンスプリング36の張力に引っ張られて矢印Zのように下降を開始する。そして、ロックピン8は、電流印加前の保護カバー40に収容された状態に戻ることになる。
これは、
図6から解るように、磁気回路中のギャップgを閉じるよう摺動するソレノイド9では、ロックピン8は、突出すればするほど、プランジャー10と固定鉄芯66間のギャップgが閉じるため、単位電流当たりの吸引力は強くなる。
そのため、突出後の駆動電流I1は、
図10の駆動電流I1を下回っても保持電流I2までの電流値であれば、ロックピン8はリターンスプリング36によって引き戻されることはない(残存吸着力)。
このことから、ロックピン9が突出を開始するために必要な駆動電流I1と、突出したロックピン9を保持する保持電流I2との間には、I1>I2の関係があって、前記交流成分61の重畳に伴う実効電流の低下量ΔIと、前記I1、I2との間にΔI<I1−I2の関係があれば、交流成分61の重畳による電流の低下に関係なくロックピン8は、ロックを続けることができる。
【0056】
依って、前記動作による電流低下を考慮したヒステリシスを設け、例えば、図中Y→Zで示す電流の範囲内で交流成分61の振幅を設定して検出を行うようにすれば、上記問題を解決できる。
ちなみに、交流成分61の振幅の調整は、定電流ループを用いて制御する。そのため、例えば、制御装置57に定電流制御用のプログラムを備え、電流値を設定するだけで電流を変更できるようにすれば良い。
そして、このようなヒステリシスループに基づくタイミング動作は、この形態では、タイマ手段62を用いることで実現している。
【0057】
タイマ手段62は、ここでは、制御装置57のタイマ回路を用いて実現しており、例えば、ソレノイド9が作動して、ロックピン8が減速機構5にロックするのに十分な時間をプログラムにより動作環境に応じて設定できるようにしている。こうすることで、タイマ手段62は、制御装置57がスイッチ手段51を作動してソレノイド9へ駆動電流の直流部分60を印加するのと同時に計時を開始し、プランジャー10のストロークがロックピン8を減速機構5にロックする長さに達する時間が経過するとタイムアップする。すると、タイムアップと同時に、制御装置57は、スイッチ手段51を作動して交流成分61を重畳する。
なお、この形態では、タイマ手段62は、制御装置57に内蔵のものを使用したが、これに限定されるものではない。タイマ手段62は、制御装置57と別に設けても良いことは明らかである。
【0058】
また、これら以外に、制御装置57には、パーキングスイッチ(図示せず)、ECU(図示していない他のECU)、が接続されており、前記パーキングスイッチ、前記ECUからの入力に基づいてパーキングブレーキの動作を制御する。
さらに、制御装置57には、変位検出装置55が接続されており、後述するように、ソレノイド9のプランジャー10の動作状態を推定するようになっている。
【0059】
変位検出装置55は、
図8に示すように、フィルタ回路63と整流回路(検波)64及び増幅回路65とで構成されており、ソレノイド9の両端に接続されている。フィルタ回路63は、前記コイル37と共振用コンデンサ54で構成される共振回路の共振周波数を中心周波数とするバンドバスフィルタでノイズ対策としても使用する。
整流回路64は、平滑回路を備えたもので、フィルタ出力を整流して平滑することで直流電圧レベルとして出力する。増幅回路65は、検出感度を向上させるために設けたものである。
したがって、変位検出装置は、周波数成分を含む電流が印加されているときのみ機能する。
ちなみに、平滑回路に替えてピークホールド回路を設け、一定周期でリセットを行うことで、共振出力を直流電圧のレベルとして出力するようにしても良い。
【0060】
次に、交流部分61aに重畳される交流成分61の周波数について述べる。前記周波数は、ソレノイド9のコイル37と共振回路用コンデンサ54で形成される共振周波数を位置検出用の周波数成分として供給するためのものである。
そのため、この周波数は、ソレノイド9の動作周波数と同等以上とし、好ましくは、動作周波数より十分に高く設定することにより、駆動電流との弁別を容易にできる。その結果、検出時間を短縮することができる。また、周波数が高く波長が短くなれば、位置検出の分解能を向上してソレノイド9のプランジャー10のストロークより小さくすることができる。
【0061】
さらに、このとき、例えば、ソレノイド9のプランジャー10がリターンスプリング36に引っ張られてコイル(ボビン)37の外(最外点)にあるときのインダクタンスを基準として、前記共振周波数を設定すれば、共振周波数からの周波数のズレを用いて最外点からの位置を推定できる。そのために最適な周波数に合わせて共振用コンデンサ54の値を決める。
【0062】
この形態は上記のように構成されており、いま、上記の範囲で交流成分61の周波数と振幅の値を制御装置57に設定する。
こうすることで、制御装置57は、ソレノイド9にスイッチ手段51を介し、
図7に示す駆動電流I1を印加する。そして、駆動電流I1を印加すると同時に、タイマ手段62の計時を開始する。
そのため、ソレノイド9は、駆動電流I1の直流部分60によって作動を開始し、リターンスプリング36に抗してプランジャー10をコイル37内へ吸引することで、ロックピン8が突出する。そして、タイマ手段62がタイムアップすると、制御装置27は、プランジャー10のストロークがロックピン(係合部材)8を減速機構5へロックする長さに達したとして、スイッチ手段53の開度を制御したスイッチング(非飽和)により、
図7に示す交流部分61aを印加する。
この状態で、ソレノイド9に交流成分61が印加されると、プランジャー10のコイル37に対する位置関係(コイル(ボビン)37の外(最外点)にあるときに比べて)が変化しているため、コイル37のインダクタンスも変化している。
このため、変化したインダクタンスによってコイル37と共振用コンデンサ54とで構成される共振回路の共振周波数も変わる。例えば、プランジャー10がコイル37(ボビン)内に収容されるとインダクタンスは増加するため、
図11のように、共振点ω0が、ω0→ω0´のように低下する。すると、共振周波数の特性は(α)から(β)のように移動することになる。
その結果、変位検出装置55で検出していた共振点ω0のゲインは、例えば、
図11のAからBのように低下するため、ゲインの変化からプランジャー10の変位を算出することができる。
【0063】
このように、ソレノイド9に入力可能な最大電流を印加し、ロックピン8を突出させてから、交流成分61をロックピン8が復帰しない程度に印加して検出を行うので、正常動作に影響を与えずにチェックができる。その際、吸引力の低下を最小にしてプランジャー10の位置を推定することができるので、ソレノイド9がオン(スイッチ手段51がオン)のとき推定したプランジャー10の位置とソレノイド9がオフ(スイッチ手段51がオフ)のとき推定したプランジャー10の位置を記憶してその差を算出すれば、プランジャー10の変位(ロックピン8の突出量)が推定できる。さらに、プランジャー10の変位が推定できれば、その推定値から、例えば、プランジャー10先端のロックピン8がロックできたかどうか、また、ロック状態を維持できているかどうかなどの係合状態を判定できる。
このように、センサを設けることなくプランジャー10の位置あるいは変位からロックピン8の係合状態を推定できる。
このため、ソレノイドの動作不良による事故を未然に防止することができる。また、別途センサを設けることなく検出ができるので、センサの設置スペースも要しないため、ソレノイド9のコイル37の小型化が図れ、コストの低減が図れる。
なお、係合状態が不良の場合は、例えば、警報を発するなどにより報知すれば、ソレノイド9の動作不良による事故を未然に防止できる。
また、このように発振出力を重畳するので、直流電流と交流電圧を切り換える場合のようなノイズの問題を生じない。さらに、直流電流に発振出力を重畳して、ソレノイドコイル37の両端の検出値の変化(共振点の変化)を検出するため、発振出力には大きな電力を必要とせず、損失も少ない。
【実施例1】
【0064】
この実施例1は、上記作用効果に加えて、ソレノイド9の温度上昇に関するもので、温度上昇による磁界の減少を補償してプランジャー10の位置や変位を推定する際の精度を向上できることについて述べる。
すなわち、ソレノイド9は、コイル37に銅線を使用している。この銅線には直流抵抗があって、その直流抵抗はプラスの温度係数を有している。したがって、温度の上昇(周囲温度も含む)でコイル37の直流抵抗が増加すると、励磁電流が減少し、起磁力が低下する。
ここで、
図6のものでは、ソレノイド9の駆動に電流制御ループを使用しているため、温度が変化しても一定の電流を供給するように制御すると考えられる。
しかしながら、一般に、コイル37の直流抵抗と温度係数の関係は、20℃を1として正規化した場合、銅線の各温度における抵抗比と電流比は、例えば、100℃のコイルの吸引力は、20℃のコイルの56%程度と大きく変化すると言われている。このため、制御に誤差を生じる場合も考えられるため、プランジャー10の位置を算出して推定する際に、コイル37の温度を基に校正することで、推定精度を向上させるのである。
【0065】
そこで、実施例1では、パーキングブレーキ動作の前に、制御装置57がソレノイド9にロックピン8が変位を生じない測定用の電流を流して電圧を測定し、その電流と電圧の測定結果からコイル37の抵抗値を算出し、その抵抗値から温度を算出する。そして、その温度に基づき磁界の減少を加味してプランジャー10の位置の推定を行うのである。
そのための構成として、例えば、
図6の破線67で示すように、制御装置57のA/D変換入力をソレノイド9の端子に接続して電圧を測定する。また、制御装置57は、スイッチ手段51のトランジスタを非飽和で駆動して、コイル37に測定用電流(ソレノイド9のプランジャー10が変位を生じない電流値)を入力するものとする。
【0066】
このように構成される実施例1のパーキングブレーキ装置では、例えば、銅の抵抗温度係数を使用した周知の抵抗法により、コイル37の温度を検出する。
すなわち、抵抗法計算式は、
R2/R1=(234.5+t1)/(234.5+t2)
となり、上式から通電後の温度t2は、
t2=R2/R1(234.5+t1)−234.5
となる。
ここで、t1:通電前の温度(周囲温度)(℃)、t2:通電後の温度(℃)、
R1:通電前の抵抗(常温値)(Ω)、R2:通電後の抵抗(Ω)
である。
このようにすれば、コイル37の温度が推定できるので、この推定した温度に基づいてコイル37に流れる電流の減少量が算出できる。
したがって、前記電流の減少量から起磁力の低下を予想してパーキングブレーキ動作時のプランジャー10の推定位置を校正する。こうすることで、プランジャー10の位置を推定する際の精度を向上させることができる。
よって、精度を向上することにより、プランジャー10の動作不良をより精密に検出できるので、動作不良に依る事故を未然に防止できる。
【実施例2】
【0067】
この実施例2は、上記作用効果に加えて、パーキングブレーキ装置の状態を定期的に確認(チェック)して、安全性を向上することについて述べる。
すなわち、パーキングブレーキ装置がオフの場合と、パーキングブレーキ装置が作動中の場合のソレノイド9のプランジャー10の位置を推測して確認する。
【0068】
このパーキングブレーキ装置がオフの場合とは、ブレーキペダルを操作してサービスブレーキ(フットブレーキ)作動中の場合で、サービスブレーキの動作に支障が無いように、ロックピン8が中間ギヤ41の係止孔42から離反しているか否かを確認する。そのため、この確認は、実施形態および実施例1の方法を用いて、ソレノイド9の作動周期よりも短い一定時間ごとに逐次ソレノイド9のプランジャー10の位置を推定することで常時行う。このようにすることで、動作不良を検出する。
この形態では、
図6のように、プランジャー10がリターンスプリング36によりコイル37(ボビン)から引き出された位置にあることを推定して確認する。その結果、ロックピン8が離反していない場合は、例えば、警報を発するなどして故障を報知することで安全性を担保する。
【0069】
一方、パーキングブレーキ装置が作動中とは、駐車や停車中でサービスブレーキが解放されている場合で、ロックピン8が中間ギヤ41の係止孔43に嵌合しているか否かを確認する。この確認も、実施形態および実施例1の方法を用いて、ソレノイド9の作動周期よりも短い一定時間ごとに逐次ソレノイド9のプランジャー10の位置を推定することで常時行う。そして、ソレノイド9のプランジャー10の位置を推定することにより確認する。このようにすることで、動作不良を検出できる。
この形態では、プランジャー10がリターンスプリング36に抗してコイル37(ボビン)内に吸引された位置にあることを推定して確認する。そして、ロックピン8が中間ギヤ41の係止孔43に嵌合状態でないことが検出された場合は、例えば、警報を発するなどして安全性を担保する。
このように確認することで、動作不良で車が無制動状態となることを防止する。
ちなみに、この確認は、一定の間隔で間歇的に行っているのは、推定処理を間歇的に行うことで、推定処理に対する電力消費を少なくできるからである。
【0070】
なお、実施形態では、スイッチ手段51として第1スイッチ手段51aと第2スイッチ手段51bを兼ねたものについて述べたが、例えば、
図12のように、第1スイッチ手段51aと第2スイッチ手段51bを直列に設けるようにしても良い。この場合、第2のスイッチ手段51aは、通常オン状態として、交流成分を印加する際にスイッチング(非飽和)を行うようにする。
【0071】
また、実施形態及び実施例1〜2では、ピン駆動用のソレノイド9は、プッシュ型のアクチュエータを用いたが、これに限定されるものではない。回路を工夫してプル型のアクチュエータを使用することも可能である。
【0072】
また、実施形態及び実施例1〜2では、発振手段59とタイマ手段62を制御装置57の機能を使用して構成したが、これに限定されるものではない。発振手段59やタイマ手段62は、制御装置57と別回路として設けることができることは明らかである。