(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の走行方向において該車両の走行路の互いに異なる3以上の測定位置のそれぞれに設けられ該車両のそれぞれの車軸ごとに左右の輪重を略同時かつ個別に測定する左右一対の輪重計と、
それぞれの上記輪重計による上記輪重の測定値である輪重測定値に基づいて上記車軸の重量の最終的な測定値である軸重最終測定値を求める軸重演算手段と、
上記それぞれの輪重計による上記輪重測定値に基づいていずれかの該輪重計に異常が発生していないかどうかを判定する異常判定手段と、
を具備し、
上記軸重演算手段は、
上記異常判定手段によって上記異常が発生していないと判定されているときには、全ての上記輪重計それぞれによる上記輪重測定値に基づいて上記軸重最終測定値を求め、
上記異常判定手段によって上記異常が発生したと判定されたときには、該異常が発生した上記輪重計を無効輪重計とすると共に該無効輪重計以外の上記輪重計を有効輪重計として該無効輪重計の配置を含む異常態様とそれぞれの該有効輪重計による上記輪重測定値とに基づいて上記軸重最終測定値を求め、
上記異常判定手段は、上記異常が発生したと判定したときには、さらに、上記異常態様と上記それぞれの有効輪重計による上記輪重測定値とに基づいていずれかの該有効輪重計に異常が発生していないかどうかを判定する
軸重測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、
図1〜
図15を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る軸重測定装置10は、車両100が走行する直線状の走行路200に設置される計量部20と、この計量部20(厳密には計量部20を構成する後述の各輪重計22,22,22,24,24および24)が接続される指示計30と、を備えている。なお、
図1において、車両100は、白矢印300で示される方向に走行し、つまり左側から右側に向かって走行する。また、
図1からは分からないが(後述の
図2および
図3から分かるように)、走行路100の路面は、水平である。このような軸重測定装置10は、例えば高速道路の料金所ゲートに適用される。
【0020】
計量部20は、複数台の、例えば3台の、左側輪重計22,22および22と、これら各左側輪重計22,22および22と対を成す3台の右側輪重計24,24および24と、を有している。即ち、左右一対の輪重計22および24が、合計3組設けられている。なお、これら各輪重計22,22,22,24,24および24は、互いに同一仕様のものである。
【0021】
このうちの一対(1組)の左右各輪重計22および24は、走行路200の或る第1の測定位置P1において、それぞれの上面(荷重印加面)が当該走行路200の路面の一部を形成すると共に、当該走行路200を走行する車両100のそれぞれの車軸ごとに、左側車輪102が左側輪重計22の上面を必ず通過し、右側車輪104が右側輪重計24の上面を必ず通過するように、配置されている。具体的には、左側輪重計22は、
図2に示すように、その上面を形成する概略矩形平板状の計量台22aと、この計量台22aを支持する1以上の、例えば3つの、荷重検出手段としての荷重センサ22b,22bおよび22bと、これら各荷重センサ22b,22bおよび22bを間に挟んで計量台22aと概略対称的(面対称的)に設けられた基部としての概略矩形平板状の基台22cと、を有している。各荷重センサ22b,22bおよび22bは、互いに同一仕様のものであり、計量台22aの上面(および基台22cの下面)の長手方向に沿って等間隔に配置されている。これら各荷重センサ22b,22bおよび22bとしては、それぞれの荷重検出部にロードセルが採用されたものが適当であるが、それ以外のもの、例えば当該荷重検出部に水晶圧電式センサが採用されたもの、であってもよい。そして、当該左側輪重計22は、その(計量台22aの)上面が上述の如く走行路200の路面の一部を形成し、言い換えれば当該上面が走行路200の路面と同じ高さとなり、かつ、当該上面の長手方向が車両100の走行方向300に対して直角を成すように、配置されており、詳しくは当該走行路200に形成された概略矩形凹状のピット202内に設置されている。この左側輪重計22と同一仕様の右側輪重計24もまた同様に、計量台24aと、3つの荷重センサ24,24および24と、基台24と、を有している。そして、当該右側輪重計24は、その(計量台24aの)上面が走行路200の路面の一部を形成し、かつ、当該上面の長手方向が車両100の走行方向300に対して直角を成すように、配置されており、詳しくは当該走行路200に形成された概略矩形凹状のピット204内に設置されている。なお、左側輪重計22の上面の一方長辺と、右側輪重計24の上面の一方長辺とは、同一直線上にあり、当該左側輪重計22の上面の他方長辺と、右側輪重計24の上面の他方長辺とは、別の同一直線上にある。そして、左側輪重計22の上面の一方短辺と、右側輪重計24の上面の一方短辺とは、互いに適当な距離を置いて平行を成しており、当該左側輪重計22の上面の他方短辺と、右側輪重計24の上面の他方短辺ともまた、互いに距離を置いて平行を成している。
【0022】
この第1測定位置P1に配置された左側輪重計22は、自身の上面を通過する左側車輪102の重量、つまり左側輪重wL、を測定し、厳密には自身の上面に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重信号を出力する。より厳密に言えば、上述の3つの荷重センサ22b,22bおよび22bの各出力信号が互いに合成されて、当該アナログ荷重信号として出力される。一方、第1測定位置P1に配置された右側輪重計24は、自身の上面を通過する右側車輪104の重量、つまり右側輪重wR、を測定し、厳密には自身の上面に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重信号を出力する。より厳密に言えば、上述の3つの荷重センサ24b,24bおよび24bの各出力信号が互いに合成されて、右側輪重計24のアナログ荷重信号として出力される。この第1測定位置P1に配置された左右各輪重計22および24には、個別の識別符号(ID)が付されており、例えば左側輪重計22には、S1Lという識別符号が付されており、右側輪重計24には、S1Rという識別符号が付されている。これ以降、当該第1測定位置P1に配置された左右各輪重計22および24については、それぞれの識別符号S1LおよびS1Rを用いて表現することがある。
【0023】
この第1測定位置P1に配置されたのとは別の一対の左右各輪重計22および24は、走行路200の当該第1測定位置P1とは異なる位置、例えば当該第1測定位置P1から車両100の走行方向300に向かって所定の距離D12を置いた第2測定位置P2、に配置されている。この第2測定位置P2に配置された左右各輪重計22および24もまた、第1測定位置P1に配置されているのと同様に、それぞれの上面が走行路200の路面の一部を形成すると共に、当該走行路200を走行する車両100のそれぞれの車軸ごとに、左側車輪102が左側輪重計22の上面を必ず通過し、右側車輪104が右側輪重計24の上面を必ず通過するように、配置されている。そして、この第2測定位置P2に配置された左側輪重計22は、車両100の左側輪重wLを測定し、厳密には自身の上面に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重信号を出力する。一方、当該第2測定位置P2に配置された右側輪重計24は、右側輪重wRを測定し、厳密には自身の上面に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重信号を出力する。この第2測定位置P2に配置された左右各輪重計22および24についても、個別の識別符号が付されており、例えば左側輪重計22には、S2Lという識別符号が付されており、右側輪重計24には、S2Rという識別符号が付されている。これ以降、当該第2測定位置P2に配置された左右各輪重計22および24についても、それぞれの識別符号S1LおよびS1Rを用いて表現することがある。
【0024】
さらに、残りの一対の左右各輪重計22および24は、走行路200の第1測定位置P1および第2測定位置P2とは異なる位置、例えば第2測定位置P2から車両100の走行方向300に向かって所定の距離D23を置いた第3測定位置P3、に配置されている。この第3測定位置P3に配置された左右各輪重計22および24もまた、それぞれの上面が走行路200の路面の一部を形成すると共に、当該走行路200を走行する車両100のそれぞれの車軸ごとに、左側車輪102が左側輪重計22の上面を必ず通過し、右側車輪104が右側輪重計24の上面を必ず通過するように、配置されている。そして、この第3測定位置P3に配置された左側輪重計22は、車両100の左側輪重wLを測定し、厳密には自身に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重信号を出力する。一方、当該第3測定位置P3に配置された右側輪重計24は、右側輪重wRを測定し、厳密には自身に印加された荷重の大きさを表すアナログ荷重信号を出力する。この第3測定位置P3に配置された左右各輪重計22および24についても、個別の識別符号が付されており、例えば左側輪重計22には、S3Lという識別符号が付されており、右側輪重計24には、S3Rという識別符号が付されている。これ以降、当該第3測定位置P3に配置された左右各輪重計22および24についても、それぞれの識別符号S3LおよびS3Rを用いて表現することがある。
【0025】
なお、第1測定位置P1および第2測定位置P2の相互間距離D12と、第2測定位置P2および第3測定位置P3の相互間距離D23とは、互いに等価(D12=D23)であってもよいし、相違(D12≠D23)してもよい。これらの相互間距離D12およびD23としては、例えば1[m]〜十数[m]程度が適当である。
【0026】
また、本実施形態における各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rは、輪重測定に際して車両100が走行状態にあることが必要とされる、言わば動的測定方式のものである。具体的には、
図3に示すように、車両100の走行方向300における当該各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rそれぞれの上面の寸法Daが、当該車両100の個々の車輪102または104の接地長Dbよりも短い(Da<Db)。これに対して、車両100の走行方向300における上面の寸法が、当該車両100の個々の車輪102また104の接地長Dbよりも長い、言わば静動両測定方式の輪重計が知られている。この静動両測定方式の輪重計によれば、車両100が走行状態にある必要はなく、例えば当該車両100が静止している場合や極めて低速度で走行している場合にも、対応することができる。ただし、静動両測定方式の輪重計は、動的測定方式のものに比べて、高価である。即ち、本実施形態によれば、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rとして、静動両測定方式のものよりも安価な動的測定方式のものが採用されることによって、当該各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rを含む軸重測定装置10全体の低コスト化が図られている。因みに、動的測定方式の輪重計による輪重測定要領については、例えば上述の特許文献1(特に明細書の第0040段落〜第0042段落)に開示されており、公知であるので、ここでは、その説明を省略する。また、静動両測定方式の輪重計による輪重測定要領についても、当該特許文献1(特に明細書の第0032段落〜第0039段落)に開示されており、公知である。
【0027】
上述したように計量部10は、指示計30に接続され、厳密には各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが、当該指示計30内の増幅部32に接続される。増幅部32は、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのそれぞれに対応する図示しない増幅回路を有しており、これらの増幅回路によって、当該各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rからの各アナログ荷重信号を増幅する。そして、この増幅部32(各増幅回路)による増幅後の各アナログ荷重信号は、A/D変換部34に入力される。なお、増幅部32の入力側または出力側には、当該増幅部32への入力信号または当該増幅部32の出力信号としての各アナログ荷重信号のそれぞれに含まれる比較的に高い周波数(例えば100[Hz]以上)のノイズ成分を減衰させるためのアナログフィルタ回路が設けられてもよい。
【0028】
A/D変換部34は、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのそれぞれに対応する図示しないA/D変換回路を有しており、これらのA/D変換回路によって、増幅部32からの各アナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換する。そして、このA/D変換部34(各A/D変換回路)による変換後の各デジタル荷重信号は、演算部36に入力される。
【0029】
演算部36は、A/D変換部34からの各デジタル荷重信号のそれぞれに対して当該各デジタル荷重信号のそれぞれに含まれる比較的に低い周波数(例えば数十[Hz]程度)のノイズ成分を減衰させるための移動平均処理等の適当なデジタルフィルタリング処理を施す。その上で、演算部36は、このデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、後述する如く軸重wXの最終的な測定値WXを求める。
【0030】
なお、この軸重最終測定値WXの演算を含む演算部36による各種処理は、当該演算部36を構成する図示しないCPU(Central Processing Unit)が担う。そして、このCPUの動作は、当該演算部36を構成する図示しないメモリに記憶されている制御プログラムによって制御される。また、演算部36(CPU)には、これに各種命令を入力するための命令入力手段としての操作部38と、当該演算部36による制御に応じて各種情報を表示する情報出力手段としての表示部40と、が接続されている。これらの操作部38と表示部40とは、互いに一体化されたものであってもよく、例えばタッチスクリーンであってもよい。
【0031】
さて、本実施形態において、車両100が走行路200を通行すると、当該車両100のそれぞれの車軸ごとに、まず、左側車輪102が第1測定位置P1に配置された左側輪重計S1L上を通過し、これと(基本的に)同時に、右側車輪104が当該第1測定位置P1に配置された右側輪重計S1R上を通過する。その後、左側車輪102が第2測定位置P2に配置された左側輪重計S2L上を通過し、これと同時に、右側車輪104が当該第2測定位置P2に配置された右側輪重計S2R上を通過する。さらにその後、左側車輪102が第3測定位置P3に配置された左側輪重計S3L上を通過し、これと同時に、右側車輪104が当該第3測定位置P3に配置された右側輪重計S3R上を通過する。そして次の要領で、軸重最終測定値WXが求められる。
【0032】
即ち、左側車輪102が第1測定位置P1の左側輪重計S1L上を通過したときの当該左側輪重計S1Lに対応する上述のデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、当該左側輪重計S1Lによる左側輪重wLの測定値W1Lが求められる。そして、右側車輪104が第1測定位置P1の右側輪重計S1R上を通過したときの当該右側輪重計S1Rに対応する上述のデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、当該右側輪重計S1Rによる右側輪重wRの測定値W1Rが求められる。これと同様に、左側車輪102が第2測定位置P2の左側輪重計S2L上を通過したときの当該左側輪重計S2Lに対応する上述のデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、当該左側輪重計S2Lによる左側輪重wLの測定値W2Lが求められる。そして、右側車輪104が第2測定位置P2の右側輪重計S2R上を通過したときの当該右側輪重計S2Rに対応する上述のデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、当該右側輪重計S2Rによる右側輪重wRの測定値W2Rが求められる。さらに、左側車輪102が第3測定位置P3の左側輪重計S3L上を通過したときの当該左側輪重計S3Lに対応する上述のデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、当該左側輪重計S3Lによる左側輪重wLの測定値W3Lが求められる。そして、右側車輪104が第3測定位置P3の右側輪重計S3R上を通過したときの当該右側輪重計S3Rに対応する上述のデジタルフィルタリング処理後のデジタル荷重信号に基づいて、当該右側輪重計S3Rによる右側輪重wRの測定値W3Rが求められる。なお、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのそれぞれについては、予めゼロ調整やスパン調整等の必要な諸調整が適切に成されているものとする。
【0033】
その上で、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lによる左側輪重測定値W1Lと、当該第1測定位置P1の右側輪重計S1Rによる右側輪重測定値W1Rと、の和によって、つまり次の式1に基づいて、当該第1測定位置P1における軸重測定値W1Xが求められる。
【0035】
これと同様に、第2測定位置P2の左側輪重計S2Lによる左側輪重測定値W2Lと、当該第2測定位置P2の右側輪重計S2Rによる右側輪重測定値W2Rと、の和によって、つまり次の式2に基づいて、当該第2測定位置P2における軸重測定値W2Xが求められる。
【0037】
さらに、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lによる左側輪重測定値W3Lと、当該第3測定位置P3の右側輪重計S3Rによる右側輪重測定値W3Rと、の和によって、つまり次の式3に基づいて、当該第3測定位置P3における軸重測定値W3Xが求められる。
【0039】
そして、これら式1に基づく第1測定位置P1における軸重測定値W1Xと、式2に基づく第2測定位置P2における軸重測定値W2Xと、式3に基づく第3測定位置P2における軸重測定値W3Xと、の平均によって、つまり次の式4に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる。求められた軸重最終測定値WXは、表示部40に表示される。また、当該軸重最終測定値WXは、上述したメモリに記憶されると共に、必要に応じて、図示しない外部装置に出力される。
【0040】
《式4》
WX=(W1X+W2X+W3X)/3
【0041】
このように本実施形態によれば、互いに異なる第1〜第3の3つの測定位置P1,P2およびP3で得られた3つの軸重測定値W1X,W2XおよびW3Xの平均値が軸重最終測定値WXとされることで、上述の振動力による影響が抑制された精確な当該軸重最終測定値WXが得られ、つまり走行状態にある車両の軸重wXの精確な測定が実現される。この振動力による影響の抑制効果について、次のように検証する。
【0042】
まず、比較対照用として、走行路200の或る位置に、本実施形態におけるのと同様の一対の左右各輪重計SLおよびSRのみが設けられた構成を、仮想する。この構成においては、当該一対の左右各輪重計SLおよびSRによる左右各輪重wLおよびwRの測定値WLおよびWRの和が、軸重最終測定値WXとされる。即ち、次の式5に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる。
【0044】
ここで例えば、上述の振動力が左右各輪重計SLおよびSRによる左右各輪重測定値WLおよびWRのそれぞれにa・sin(ω・t)という正弦波のノイズとして現れる、とする。なお、aは、振幅であり、ωは、角周波数であり、tは、時間(タイミング)である。そして、或るタイミングt=t0で得られた左右各輪重測定値WLおよびWRが式5に適用される、とすると、当該式5は、次の式6のように表される。
【0045】
《式6》
WX={wL+a・sin(ω・t0)}+{wR+a・sin(ω・t0)}
=(wL+wR)+2・a・sin(ω・t0)
∵ WL=wL+a・sin(ω・t0)
WR=wR+a・sin(ω・t0)
【0046】
ここで仮に、振動力ノイズa・sin(ω・t)の周波数f(=ω/(2・π))が一定である、としても、走行路200を走行する車両100の速度によって、左右各輪重測定値WLおよびWRのそれぞれに現れる当該振動力ノイズa・sin(ω・t)の位相tが変わり、つまり軸重最終測定値WX(式6)に含まれる振動力ノイズ成分2・a・sin(ω・t0)の大きさが変わる。特に、上述した高速道路の料金所ゲートへの適用においては、車両100の走行速度が数[km/h]〜数十[km/h]という比較的広範囲に及ぶ。これらのことを鑑みると、当該振動力ノイズa・sin(ω・t)は、一種のランダムノイズである、と見なすことができる。
【0047】
その上で例えば、振動力ノイズa・sin(ω・t)のバラツキ量nbの標準偏差σがσ=2・αである、とすると、式6(式5)に基づく比較対照用の構成における軸重最終測定値WXの当該振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量Nbは、左右各輪重計SLおよびSRのそれぞれに加わる当該振動力ノイズa・sin(ω・t)の位相tが互いに同じ(t=t0)であることから、当該振動力ノイズa・sin(ω・t)のバラツキ量nbの標準偏差σの総和(2倍)となり、つまり次の式7の如くNb=4・αとなる。
【0048】
《式7》
Nb=2・(2・α)=4・α
【0049】
このことを踏まえて、改めて本実施形態に注目すると、本実施形態における上述の式4に基づく軸重最終測定値WXは、次の式8のように表される。なお、この式8において、t1は、第1測定位置P1の左右各輪重計S1LおよびS1Rによる左右各輪重測定値W1LおよびW1Rの取得タイミングであり、t2は、第2測定位置P2の左右各輪重計S2LおよびS2Rによる左右各輪重測定値W2LおよびW2Rの取得タイミングtであり、t3は、第3測定位置P3の左右各輪重計S3LおよびS3Rによる左右各輪重測定値W3LおよびW3Rの取得タイミングtである。
【0050】
《式8》
WX=[{wL+a・sin(ω・t1)}+{wR+a・sin(ω・t1)}+{wL+a・sin(ω・t2)}+{wR+a・sin(ω・t2)}+{wL+a・sin(ω・t3)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/3
=(wL+wR)+{2・a・sin(ω・t1)+2・a・sin(ω・t2)+2・a・sin(ω・t3)}/3
∵ W1L=wL+a・sin(ω・t1)
W1R=wR+a・sin(ω・t1)
W2L=wL+a・sin(ω・t2)
W2R=wR+a・sin(ω・t2)
W3L=wL+a・sin(ω・t3)
W3R=wR+a・sin(ω・t3)
【0051】
そうすると、この式8(式4)に基づく本実施形態における軸重最終測定値WXの振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量Nbは、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3における当該振動力ノイズa・sin(ω・t)の位相tが互いに異なる(t=t1,t=t2およびt=t3)ことから、次の式9の如くNb≒2.309・αとなる。
【0052】
《式9》
Nb=[{2・(2・α)}
2+{2・(2・α)}
2+{2・(2・α)}
2]
1/2/3
≒2.309・α
【0053】
この式9と上述の式7との比較から明らかなように、一対の左右各輪重計SLおよびSRのみが設けられた比較対照用の構成によれば、軸重最終測定値WXの振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量NbがNb=4・αであるのに対して、本実施形態によれば、当該バラツキ量NbがNb=2.309・αという十分に小さい値に抑えられる。これは即ち、本実施形態においては、互いに異なる第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3で得られる各軸重測定値W1X,W2XおよびW3Xのそれぞれについては、振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量NbがNb=4・αであるものの、これら各軸重測定値W1X,W2XおよびW3Xの平均値が軸重最終測定値WXとされることで、当該軸重最終測定値WXの振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量NbがNb≒2.309・αにまで抑制されることを、意味する。そして、この抑制効果により、上述の如く精確な軸重測定が実現される。
【0054】
ところで、本実施形態における各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3R(特に各荷重センサ22b,22b,…および24b,24b,…)は、経時劣化等の様々な要因によって上述したスパン異常や故障等の異常を発生することがある。そこで、本実施形態では、軸重測定と並行して、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれかに異常が発生していないかどうかの異常診断を行うと共に、当該異常が発生したときには、当該異常の状況に応じた要領で軸重最終測定値WXを求める、という言わば暫定的に軸重測定を継続する機能が、備えられている。
【0055】
この機能を実現するために、本実施形態においては、上述の演算部36によって
図4に示すような6つのシフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rが構成される。これらのシフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rは、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rに対応しており、それぞれM(M:自然数)軸分の輪重測定値W1L[1]〜W1L[M],W2L[1]〜W2L[M],W3L[1]〜W3L[M],W1R[1]〜W1R[M],W2R[1]〜W2R[M]およびW3R[1]〜W3R[M]を記憶するためのM個の記憶領域を有している。例えば、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに対応するシフトレジスタSR1Lに注目すると、このシフトレジスタSR1Lの各記憶領域には、当該左側輪重計S1Lによって新たな左側輪重測定値W1Lが取得されるたびに、
図4の左側から右側に向かって先入れ先出し(FIFO:First-In First-Out)方式で当該左側輪重測定値W1Lが記憶される。即ち、このシフトレジスタSR1Lの各記憶領域のうち一番左端の記憶領域に、最新の左側輪重測定値W1L[1]が記憶され、一番右端の記憶領域に、最古の左側輪重測定値W1L[M]が記憶される。他の各シフトレジスタSR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rについても、同様である。また、これら各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rに記憶される各輪重測定値W1L[1]〜W1L[M],W2L[1]〜W2L[M],W3L[1]〜W3L[M],W1R[1]〜W1R[M],W2R[1]〜W2R[M]およびW3R[1]〜W3R[M]は、個々の車軸mに対応するものごとに互いに関連付けられる。そして、これら各輪重測定値W1L[1]〜W1L[M],W2L[1]〜W2L[M],W3L[1]〜W3L[M],W1R[1]〜W1R[M],W2R[1]〜W2R[M]およびW3R[1]〜W3R[M]に基づいて、異常診断が行われる。因みに、上述の式1〜式3を含む式4に基づく軸重最終測定値WXの演算においては、これら各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rに記憶されている最新の各輪重測定値W1L[1],W2L[1],W3L[1],W1R[1],W2R[1]およびW3R[1]が適用される。
【0056】
例えば今、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれにも異常が発生しておらず、つまり当該各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rの全てが正常である、とする。この場合、左側の各輪重計S1L,S2LおよびS3Lに対応する各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3Lに記憶されている各左側輪重測定値W1L[1]〜W1L[M],W2L[1]〜W2L[M],W3L[1]〜W3L[M]に基づいて、厳密には最新の各左側輪重測定値W1L[1],W2L[1]およびW3L[1]を含む直近の各N(N:N<Mを満足する自然数)軸分の左側輪重測定値W1L[1]〜W1L[N],W2L[1]〜W2L[N]およびW3L[1]〜W3L[N]に基づいて、当該左側の各輪重計S1L,S2LおよびS3Lについての異常診断が行われる。具体的にはまず、当該各N軸分の左側輪重測定値W1L[1]〜W1L[N],W2L[1]〜W2L[N]およびW3L[1]〜W3L[N]それぞれの平均値W1LA,W2LAおよびW3LAが、次の式10,式11および式12の如く求められる。
【0057】
《式10》
W1LA=ΣW1L[n]/N where n=1〜N
【0058】
《式11》
W2LA=ΣW2L[n]/N where n=1〜N
【0059】
《式12》
W3LA=ΣW3L[n]/N where n=1〜N
【0060】
これら各平均値W1LA,W2LAおよびW3LAは、互いに同じ対象(N軸分の左側輪重wL)についての測定結果であるので、例えば全ての左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lが正常であるときには、上述の振動力による影響を除くと(言わば理想的には)互いに同じ値になる。一方、各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれかに異常が発生したときには、当該異常が発生した左側輪重計S1L,S2LまたはS3Lに対応する平均値W1LA,W2LAまたはW3LAが異常値となり、つまり各各平均値W1LA,W2LAおよびW3LAが不均一となる。従って、これら各平均値W1LA,W2LAおよびW3LAの相互比較から、各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれかに異常が発生していないかどうかの判定が可能であり、当該異常が発生したときには、当該異常が各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれに発生したのかの判定が可能である。この判定のために、次の式13,式14および式15に基づいて、これら各平均値W1LA,W2LAおよびW3LAの相互差E12L,E23LおよびE31Lが求められる。
【0061】
《式13》
E12L=|W1LA−W2LA|
【0062】
《式14》
E23L=|W2LA−W3LA|
【0063】
《式15》
E31L=|W3LA−W1LA|
【0064】
そして、これら各相互差E12L,E23LおよびE31Lのそれぞれが、予め設定された許容値WEと比較される。ここで例えば、各相互差E12L,E23LおよびE31Lがいずれも許容値WE以下(E12L≦WE,E23L≦WEおよびE31L≦WE)である場合には、各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれにも異常が発生していない、つまり全ての左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lが正常である、という判定が成される。そして、各相互差E12L,E23LおよびE31Lのうち第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに関係する2つの相互差E12LおよびE31Lのそれぞれが許容値WEよりも大きく(E12L>WEおよびE31L>WE)、かつ、当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに無関係な他の相互差E23Lが許容値WE以下(E23L≦WE)である場合には、当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに異常が発生した、という判定が成される。さらに、第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに関係する2つの相互差E12LおよびE23Lのそれぞれが許容値WEよりも大きく(E12L>WEおよびE23L>WE)、かつ、当該第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに無関係な他の相互差E31Lが許容値WE以下(E31L≦WE)である場合には、当該第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに異常が発生した、という判定が成される。また、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに関係する2つの相互差E23LおよびE31Lのそれぞれが許容値WEよりも大きく(E23L>WEおよびE31L>WE)、かつ、当該第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに無関係な他の相互差E12Lが許容値WE以下(E12L≦WE)である場合には、当該第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生した、という判定が成される。このような要領で各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lについての異常診断が行われ、特に上述の振動力による影響を受け難い精確な当該異常診断が実現される。
【0065】
なお、上述のNの値は、操作部38による操作によって任意に変更可能とされている。このNの値が大きいほど、振動力による影響が抑制され、つまり異常診断の精度が向上し、その反面、異常が発生してから当該異常が検知されるまでの期間が長くなり、言わば応答性が低下する。一方、当該Nの値が小さいほど、異常診断の応答性が向上し、その反面、当該異常診断の精度が低下する。これらの兼ね合いを考慮して、当該Nの値が適宜に設定される。また、上述の許容値WEについても、操作部38による操作によって任意に変更可能とされている。因みに、この許容値WEが大きい値であるほど、振動力による影響を受け難く、その反面、異常が検知され難くなり、言わば異常診断の感度が低下する。一方、当該許容値WEが小さい値であるほど、異常診断の感度が向上し、その反面、振動力による影響を受け易くなる。これらの兼ね合いを考慮して、当該許容値WEもまた適宜に設定される。
【0066】
これと同様の要領で、各右側輪重計S1R,S2RおよびS3Rについても、異常診断が行われる。ただし、その詳細な説明は、省略する。
【0067】
このような要領による各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rについての異常診断は、例えば最新の各輪重測定値W1L[1],W2L[1],W3L[1],W1R[1],W2R[1]およびW3R[1]が得られるたびに、つまり第3測定位置P3の左右各輪重計S3LおよびS3Rによる最新の各輪重測定値W3L[1]およびW3R[1]が得られるたびに、行われる。
【0068】
この異常診断によって、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれかに異常が発生したことが判明すると、その旨を表す警報が出力され、例えば表示部40に所定のメッセージが表示される。このメッセージには、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれに異常が発生したのかを表す言わば異常輪重計情報(例えば識別符号や配置位置)が含まれてもよい。また、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rを含む計量部30の外観(特に平面図)を模擬した模擬図が表示部40に表示され、この模擬図上で当該各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれに異常が発生したのか等の当該異常の状態(態様)が表現されてもよい。
【0069】
ここで例えば
図5に示すように、第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに異常が発生したとする。この場合、異常が発生した第2測定位置P2の左側輪重計S2L(による左側輪重測定値W2L)が、無効化される。そして、それ以外の正常な各輪重計S1L,S3L,S1R,S2RおよびS3R(による各輪重測定値W1L,W3L,W1R,W2RおよびW3R)のみが、有効とされ、この有効とされた各輪重計S1L,S3L,S1R,S2RおよびS3R(による各輪重測定値W1L,W3L,W1R,W2RおよびW3R)のみを用いて、つまり無効とされた第2測定位置P2の左側輪重計S2Lを除外して、軸重測定が行われ、言わば暫定的に当該軸重測定が継続される。具体的には、次の式16に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる。求められた軸重最終測定値WXは、表示部40に表示され、とりわけ暫定的な軸重測定によって得られたものであることが分かるような態様で表示される。また、当該軸重最終測定値WXは、上述したメモリに記憶されると共に、必要に応じて、上述した外部装置に出力される。
【0070】
《式16》
WX=(W1L+W3L)/2+(W1R+W2R+W3R)/3
【0071】
なお、この式16は、上述の式8に倣って、次の式17のように表される。
【0072】
《式17》
WX=[{wL+a・sin(ω・t1)}+{wL+a・sin(ω・t3)}]/2+[{wR+a・sin(ω・t1)}+{wR+a・sin(ω・t2)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/3
=(wL+wR)+(5/6)・a・sin(ω・t1)+(1/3)・a・sin(ω・t2)+(5/6)・a・sin(ω・t3)
【0073】
そうすると、この式17(式16)に基づく軸重最終測定値WXの振動力による影響を表すバラツキ量Nbは、次の式18の如くNb≒2.450・αとなる。
【0074】
《式18》
Nb=[{(5/6)・(2・α)}
2+{(1/3)・(2・α)}
2+{(5/6)・(2・α)}
2]
1/2
≒2.450・α
【0075】
このNb≒2.450・αというバラツキ量Nbは、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときのバラツキ量Nb≒2.309・α(式9参照)よりも僅かに大きいものの、上述の比較対照用の構成によるバラツキ量Nb=4・α(式7参照)よりも十分に小さい。要するに、式16(式17)に基づく軸重最終測定値WXの演算によれば、振動力による影響が十分に抑制された当該軸重最終測定値WXが得られる。
【0076】
なお、式16に基づく軸重最終測定値WXの演算に代えて、次のような演算によって、当該軸重最終測定値WXが求められてもよい。
【0077】
まず、左右一対の輪重計22および24の両方が正常な第1測定位置P1の当該左右一対の輪重計S1LおよびS1Rに注目して、これら各輪重計S1LおよびS1Rによる各輪重測定値W1LおよびW1Rの相互差W1Dが次の式19の如く求められる。
【0079】
因みに、この式19に基づく相互差W1Dは、次の式20のように表される。
【0080】
《式20》
W1D={wL+a・sin(ω・t1)}−{wR+a・sin(ω・t1)}
=wL−wR
【0081】
この式20から分かるように、当該式20(式19)に基づく相互差W1Dは、振動力による影響が排除された言わば真の左側軸重wLと真の右側軸重wRとの真の相互差(=wL−wR)である。従って、この相互差W1Dを含む次の式21によって、第2測定位置P2における輪重測定値W2Xを求めることができる。即ち、異常が発生した第2測定位置P2の左側輪重計S2Lを用いることなく、当該第2測定位置P2における輪重測定値W2Xを求める(言わば推定する)ことができる。
【0082】
《式21》
W2X=2・W2R+W1D
=2・{wR+a・sin(ω・t2)}+(wL−wR)
={wL+a・sin(ω・t2)}+{wR+a・sin(ω・t2)}
=W2L+W2R
【0083】
そうすると、上述の式4に準拠する次の式22に基づいて、軸重最終測定値WXを求めることができる。
【0084】
《式22》
WX=(W1X+W2X+W3X)/3
{(W1L+W1R)+(2・W2R+W1D)+(W3L+W3R)}/3
【0085】
これと同様に、左右一対の輪重計22および24の両方が正常な第3測定位置P3の当該左右一対の輪重計S3LおよびS3Rにも注目して、これら各輪重計S3LおよびS3Rによる各輪重測定値W3LおよびW3Rの相互差W3Dが次の式23の如く求められる。
【0087】
この式23に基づく相互差W1Dは、次の式24のように表される。
【0088】
《式24》
W3D={wL+a・sin(ω・t3)}−{wR+a・sin(ω・t3)}
=wL−wR
【0089】
この式24から分かるように、当該式24(式23)に基づく相互差W3Dもまた、振動力による影響が排除された真の左側軸重wLと真の右側軸重wRとの真の相互差である。従って、この相互差W3Dを含む次の式25によって、異常が発生した第2測定位置P2の左側輪重計S2Lを用いることなく、当該第2測定位置P2における輪重測定値W2Xを求めることができる。
【0090】
《式25》
W2X=2・W2R+W3D
=2・{wR+a・sin(ω・t2)}+(wL−wR)
=W2L+W2R
【0091】
そうすると、上述の式22と同様の次の式26に基づいて、軸重最終測定値WXを求めることができる。
【0092】
《式26》
WX=(W1X+W2X+W3X)/3
{(W1L+W1R)+(2・W2R+W3D)+(W3L+W3R)}/3
【0093】
そこで、上述の式19(式20)に基づく相互差W1Dと、式23(式24)に基づく相互差W3Dと、の平均である平均相互差WDが、次の式27の如く求められる。この平均相互差WDは、振動力以外の様々なノイズ(特に微小なランダムノイズ)による影響が抑制された値となる。
【0094】
《式27》
WD=(W1D+W3D)/2
=wL−wR
【0095】
そして、上述の式21ならびに式25に準拠する次の式28に基づいて、第2測定位置P2における輪重測定値W2Xが求められる。
【0096】
《式28》
W2X=2・W2R+WD
=2・{wR+a・sin(ω・t2)}+(wL−wR)
=W2L+W2R
【0097】
さらに、上述の式22ならびに式26と同様の次の式29に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる。
【0098】
《式29》
WX=(W1X+W2X+W3X)/3
{(W1L+W1R)+(2・W2R+WD)+(W3L+W3R)}/3
【0099】
この式29に基づく軸重最終測定値WXは、次の式30のように表される。
【0100】
《式30》
WX=[{wL+a・sin(ω・t1)}+{wR+a・sin(ω・t1)}+2・{wR+a・sin(ω・t2)}+(wL−wR)+{wL+a・sin(ω・t3)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/3
=(wL+wR)+{2・a・sin(ω・t1)+2・a・sin(ω・t2)+2・a・sin(ω・t3)}/3
【0101】
この式30から分かるように、当該式30(式29)に基づく軸重最終測定値WXは、結果的に、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときの上述の式8(式4)に基づく輪重最終測定値WXと同じになる。従って、当該式29に基づく軸重最終測定値WXの上述した振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量Nbは、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときと同じNb=2.309・α(式9参照)となる。即ち、この式29に基づく演算によれば、振動力による影響に対して、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときと同程度の抑制効果が得られる。このことを鑑みると、より精確な軸重最終測定値WXを得るには、上述の式16に基づく演算よりも、この式29に基づく演算の方が、好適である。
【0102】
なお、第2測定位置P2の左側輪重計S2L以外のいずれか1台の輪重計S1L,S3L,S1R,S2RまたはS3Rに異常が発生した場合も、当該第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに異常が発生した場合と同様の要領で軸重最終測定値WXが求められる。
【0103】
さらに、本実施形態では、この暫定的な軸重測定が行われているときにも、つまり例えば
図5に示した如く第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに異常が発生しているときにも、当該暫定的な軸重測定に用いられている有効(正常)な各輪重計S1L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rについて、異常診断が行われる。
【0104】
具体的には、有効な各輪重計S1L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのうちの右側の各輪重計S1R,S2RおよびS3Rについては、上述と同じ要領で異常診断が行われる。一方、左側の各輪重計S1LおよびS3Lについては、上述の要領による異常診断が不可能であるので、別の要領で当該異常診断が行われる。
【0105】
まず、診断対象である各左側輪重計S1LおよびS3Lの両方に関係する上述の式15に基づく相互差E31L(=|W3LA−W1LA|)と、上述の許容値WEと、の比較が成される。ここで例えば、当該相互差E31Lが許容値WE以下(E31≦WE)である場合には、これら各左側輪重計S1LおよびS3Lはいずれも正常である、と判定される。これとは反対に、当該相互差E31Lが許容値WEよりも大きい(E31>WE)場合には、各左側輪重計S1LおよびS3Lのいずれかに異常が発生したものと、判定される。ただしこの時点では、当該各左側輪重計S1LおよびS3Lのいずれに異常が発生したのかは不明である。そこで、もう片側の、つまり右側の、各輪重計S1R,S2RおよびS3Rによる各輪重測定値W1R,W2RおよびW3Rを利用して、当該各左側輪重計S1LおよびS3Lのいずれに異常が発生したのかの判定が成される。
【0106】
そのために、各左側輪重計S1LおよびS3Lに対応する上述の各シフトレジスタSR1L(
図4(a)参照)およびSR3L(
図4(c)参照)に記憶されている各M軸分(つまり全て)の左側輪重測定値W1L[1]〜W1L[M]およびW3L[1]〜W3L[M]それぞれの平均値W1LA’およびW3LA’が、次の式31および式32の如く求められる。
【0107】
《式31》
W1LA’=ΣW1L[m]/M where m=1〜M
【0108】
《式32》
W3LA’=ΣW3L[m]/M where m=1〜M
【0109】
併せて、各左側輪重計S1LおよびS3Lと対を成す右側の各輪重計S1RおよびS3Rに対応するシフトレジスタSR1R(
図4(d)参照)およびSR3R(
図4(f)参照)に記憶されている各M軸分の右側輪重測定値W1R[1]〜W1R[M]およびW3R[1]〜W3R[M]それぞれの平均値W1RA’およびW3RA’が、次の式33および式34の如く求められる。
【0110】
《式33》
W1RA’=ΣW1R[m]/M where m=1〜M
【0111】
《式34》
W3RA’=ΣW3R[m]/M where m=1〜M
【0112】
ここで例えば、第1測定位置P1の左右各輪重計S1LおよびS1Rに対応する各平均値W1LA’およびW1RA’に注目すると、これら各平均値W1LA’およびW1RA’は、M軸という複数の車軸分の左右各輪重測定値W1L[1]〜W1L[M]およびW1R[1]〜W1R[M]それぞれの平均であることから、個々の車軸mの左右各輪重wLおよびwRに多少の差異があるとしても、互いに略等価となる。従って、上述の如く各左側輪重計S1LおよびS3Lのいずれかに異常が発生した場合には、これら各平均値W1LA’およびW1RA’の相互比較から、当該各左側輪重計S1LおよびS3Lのうちの少なくとも第1測定位置P1の左側輪重計S1Lについて異常が発生していないかどうかを判定することができる。そのために、次の式35に基づいて、当該各平均値W1LA’およびW1RA’の相互差E1LR’が求められる。
【0113】
《式35》
E1LR’=|W1LA’−W1RA’|
【0114】
そして、この式35に基づく平均値E1LR’は、予め設定された許容値WE’と比較される。その結果、当該平均値E1LR’が許容値WE’以下(E1LR’≦WE’)である場合には、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lは正常である、と判定される。これとは反対に、当該平均値E1LR’が許容値WE’よりも大きい(E1LR’>WE’)場合には、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに異常が発生したものと、判定される。
【0115】
これと同様に、第3測定位置P3の左右各輪重計S3LおよびS3Rに対応する各平均値W3LA’およびW3RA’の相互差E3LR’が、次の式36に基づいて求められる。
【0116】
《式36》
E3LR’=|W3LA’−W3RA’|
【0117】
そして、この式36に基づく平均値E3LR’もまた、上述の許容値WE’と比較される。その結果、当該平均値E3LR’が許容値WE’以下(E3LR’≦WE’)である場合には、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lは正常である、と判定される。これとは反対に、当該平均値E3LR’が許容値WE’よりも大きい(E3LR’>WE’)場合には、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生したものと、判定される。
【0118】
なお、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lについての異常診断に関して、上述の式33ならびに式34に準拠する次の式37に基づいて、第2測定位置P2の右側輪重計S2Rに対応する平均値W2RA’が求められ、この式37に基づく平均値W2RA’と、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに対応する上述の式31に基づく平均値W1LA’と、の相互比較から、当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lについての異常診断を行うこともできる。
【0119】
《式37》
W2RA’=ΣW2R[m]/M where m=1〜M
【0120】
しかし、この式37に基づく平均値W2RA’と、上述の式31に基づく平均値W1LA’とは、第1測定位置P1および第2測定位置P2という互いに異なる位置で得られた各左側輪重測定値W1LおよびW2Lに基づくものであるので、上述した振動力による影響を多少なりとも受ける。従って、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lについての異常診断に関しては、上述の如く当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに対応する式31に基づく平均値W1LA’と、当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lと対を成す第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに対応する式33に基づく平均値W1RA’と、の相互比較から行われるのが、望ましい。このことは、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lについての異常診断に関しても、同様である。
【0121】
また例えば、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに対応する式31に基づく平均値W1LA’は、上述の式10に基づく平均値W1LAに比べて、M軸という(N軸よりも)多数の車軸分の左側輪重測定値W1L[1]〜W1L[M]の平均であるので、振動力による影響がさらに抑制されている。この第1測定位置P1の左側輪重計S1Lと対を成す第1測定位置P1の右側輪重計W1Rに対応する式33に基づく平均値W1RA’についても、同様である。従って、これら各平均値W1LA’およびW1RA’の相互比較から第1測定位置P1の左側輪重計S1Lについての異常診断が行われることで、より精確な当該異常診断が実現される。なお、式10に基づく平均値W1LAと、当該式10に準拠する第1測定位置P1の右側輪重計W1Rに対応する平均値W11RA(=ΣW1R[n]/N)と、の相互比較から第1測定位置P1の左側輪重計S1Lについての異常診断が行われてもよい。ただし、この場合は、振動力による影響が多少大きくなる。このことは、第3測定位置P2の左側輪重計S3Lについての異常診断に関しても、同様である。また、ここで言う許容値WE’も、操作部38による操作によって任意に変更可能とされている。
【0122】
この異常診断によって例えば、有効な各輪重計S1L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれかに異常が発生したことが判明すると、その旨を表す警報が出力される。なお、この言わば新たな異常が発生していない場合には、そのまま上述の要領による暫定的な軸重測定が継続される。
【0123】
ここで例えば、
図6に示すように、第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに新たな異常が発生した、つまり先に異常が発生した第2測定位置P2の左側輪重計S2Lと合わせて2台の左側輪重計S1LおよびS2Lに異常が発生した、とする。この場合も、異常が発生した各左側輪重計S1LおよびS2Lを除外して、暫定的な軸重測定の継続が試みられる。具体的には例えば、次の式38に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる、とする。
【0124】
《式38》
WX=W3L+(W1R+W2R+W3R)/3
【0125】
なお、この式16は、次の式39のように表される。
【0126】
《式39》
WX={wL+a・sin(ω・t3)}+[{wR+a・sin(ω・t1)}+{wR+a・sin(ω・t2)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/3
=(wL+wR)+(1/3)・a・sin(ω・t1)+(1/3)・a・sin(ω・t2)+(4/3)・a・sin(ω・t3)
【0127】
そうすると、この式39(式38)に基づく軸重最終測定値WXの振動力による影響を表すバラツキ量Nbは、次の式40の如くNb≒2.828・αとなる。
【0128】
《式40》
Nb=[{(1/3)・(2・α)}
2+{(1/3)・(2・α)}
2+{(4/3)・(2・α)}
2]
1/2
≒2.828・α
【0129】
このNb≒2.828・αというバラツキ量Nbは、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときのバラツキ量Nb≒2.309・α(式9参照)よりも大きく、ゆえに、式38(式39)に基づく演算では、振動力による影響を十分に抑制することができない、と思われる。そこで、次の演算が採用される。
【0130】
即ち、左右一対の輪重計22および24の両方が正常な第3測定位置P3の当該左右一対の輪重計S3LおよびS3Rに注目して、これら各輪重計S3LおよびS3Rによる各輪重測定値W3LおよびW3Rの相互差W3Dが、上述の式23に基づいて求められる。そして、上述の式25に準拠する次の式41に基づいて、第1測定位置P1における軸重測定値W1Xが求められる。
【0131】
《式41》
W1X=2・W1R+W3D
=2・{wR+a・sin(ω・t1)}+(wL−wR)
=W1L+W1R
【0132】
併せて、上述の式25に基づいて、第2測定値P2における軸重測定値W2Xが求められる。その上で、上述の式26と同様の次の式42に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる。
【0133】
《式42》
WX=(W1X+W2X+W3X)/3
={(2・W1R+W3D)+(2・W2R+W3D)+(W3L+W3R)}/3
【0134】
この式42に基づく軸重最終測定値WXは、次の式43のように表される。
【0135】
《式43》
WX=[2・{wR+a・sin(ω・t1)}+(wL−wR)+2・{wR+a・sin(ω・t2)}+(wL−wR)+{wL+a・sin(ω・t3)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/3
=(wL+wR)+{2・a・sin(ω・t1)+2・a・sin(ω・t2)+2・a・sin(ω・t3)}/3
【0136】
この式43から分かるように、当該式43(式42)に基づく軸重最終測定値WXは、結果的に、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときの上述の式8(式4)に基づく輪重最終測定値WXと同じになる。従って、当該式42に基づく軸重最終測定値WXの振動力ノイズa・sin(ω・t)によるバラツキ量Nbは、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときと同じNb=2.309・α(式9参照)となる。即ち、この式42に基づく演算によれば、振動力による影響に対して、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときと同程度の抑制効果が得られる。ゆえに、当該式42に基づく演算によって、軸重最終測定値WXが求められ、つまり暫定的な軸重測定が継続される。そして、この暫定的な軸重測定により求められた軸重最終測定値WXは、表示部40に表示され、とりわけ当該暫定的な軸重測定によるものであることが分かる態様で表示される。また、当該軸重最終測定値WXは、上述の如くメモリに記憶されると共に、必要に応じて、図示しない外部装置に出力される。
【0137】
なお、第1測定位置P1の左側輪重計S2Lではなく、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生した場合にも、つまり第2測定位置P2および第3測定位置P3の各左側輪重計S2LおよびS3Lに異常が発生した場合にも、同様の要領で軸重最終測定値WXが求められる。また、左側の全ての輪重計S1L,S2LおよびS3Lが正常であり、右側の各輪重計S1R,S2RおよびS3Rのうちの2台に異常が発生した場合にも、同様の要領で軸重最終測定値WXが求められる。さらに、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3のいずれか1箇所において、左右各輪重計22および24の両方が正常であり、他の1箇所において、左輪重計22に異常が発生し、さらに他の1箇所において、右輪重計24に異常が発生した場合にも、同様の要領で軸重最終測定値WXが求められる。要するに、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3のいずれか1箇所において、左右各輪重計22および24の両方が正常であり、残りの2箇所のそれぞれにおいて、左右各輪重計22および24のいずれか一方に異常が発生した場合にも、同様の要領で暫定的な軸重測定が行われる。
【0138】
そして、この状態で暫定的な軸重測定が行われているときにも、つまり例えば
図6に示した如く第1測定位置P1および第2測定位置P2の2台の左側輪重計S1LおよびS2Lに異常が発生しているときにも、当該暫定的な軸重測定に用いられている有効な各輪重計S3L,S1R,S2RおよびS3Rについて、異常診断が行われる。
【0139】
具体的には、有効な各輪重計S3L,S1R,S2RおよびS3Rのうちの右側の各輪重計S1R,S2RおよびS3Rについては、上述と同じ要領で異常診断が行われる。一方、左側の正常な輪重計S3Lについては、次の要領で異常診断が行われる。
【0140】
即ち、上述の式32に基づいて、診断対象である左側輪重計S3Lに対応する平均値W3LA’が求められる。併せて、上述の式34に基づいて、当該診断対象である左側輪重計S3Lと対を成す第3測定位置P3の右側輪重計S3Rに対応する平均値W3RA’が求められる。そして、これら各平均値W3LA’およびW3RA’の相互差E3LR’が、上述の式36に基づいて求められる。
【0141】
併せて、他の右側輪重計S1LおよびS2Lの一方、例えば第1測定位置P1の右側輪重計S1L、に対応する平均値W1RA’が、上述の式33に基づいて求められる。そして、この式33に基づく平均値W1RA’と、診断対象である左側輪重計S3Lに対応する上述の式32に基づく平均値S3LA’と、の相互差E31LR’が、上述の式36に準拠する次の式44に基づいて求められる。
【0142】
《式44》
E31LR’=|W3LA’−W1RA’|
【0143】
そして、この式44に基づく相互差E31LR’と、上述の式36に基づく相互差E3LR’と、のそれぞれが、上述した許容値WE’と比較される。この比較において例えば、これら各相互差E3LR’およびE31LR’の両方がいずれも許容値WE’よりも大きい(E3LR’>WE,E31LR’>WE)場合に、診断対象である左側輪重計S3Lに異常が発生した、と判定される。因みに、これら各相互差E3LR’およびE31LR’の両方がいずれも許容値WE’以下(E3LR’≦WE,E31LR’≦WE)である場合には、少なくとも診断対象である左側輪重計S3Lについては正常であることになる。また、当該各相互差E3LR’およびE31LR’の一方、例えば式36に基づく相互差E3LR’が、許容値WE’よりも大きく(E3LR’>WE’)、かつ、他方の、つまり式44に基づく、相互差E31LR’が、許容値WE’以下(E31LR’≦WE’)である場合には、第3測定位置P3の右側輪重計S3Rに異常が発生したことになる。そして、式36に基づく相互差E3LR’が許容値WE’以下(E3LR’≦WE’)であり、かつ、式44に基づく相互差E31LR’が許容値WE’よりも大きい(E31LR’>WE’)場合には、第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに異常が発生したことになる。なお、式44に代えて、第2測定位置P2の右側輪重計S2Rに対応する上述の式37に基づく平均値W2RA’と、診断対象である左側輪重計S3Lに対応する上述の式32に基づく平均値W3LA’と、の相互差E32LR’を求めるための次の式45が採用されてもよい。
【0144】
《式45》
E32LR’=|W3LA’−W2RA’|
【0145】
この異常診断によって例えば、有効な各輪重計S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれかに異常が発生したことが判明すると、その旨を表す警報が出力される。なお、新たな異常が発生していない場合には、以前と同じ要領で暫定的な軸重測定が継続される。
【0146】
ここで例えば、
図7に示すように、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに新たな異常が発生した、つまり先に異常が発生した第1測定位置P1および第2測定位置P2の各左側輪重計S1LおよびS2Lと合わせて第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3の全ての左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lに異常が発生した、とする。この場合は、左側輪重wLを測定することができないので当然に、精確な軸重最終測定値WXを求めることができない。従って、即座に軸重測定が停止される。併せて、上述の警報として、軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む当該警報が出力される。
【0147】
このことは、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3の全ての右側輪重計S1R,S2RおよびS3Rに異常が発生した場合も、同様である。即ち、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3の全ての左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lに異常が発生するか、若しくは、当該第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3の全ての右側輪重計S1R,S2RおよびS3Rに異常が発生した場合には、即座に軸重測定が停止されると共に、軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む警報が出力される。
【0148】
図6に戻って、当該
図6に示す状態から、例えば
図8に示すように、第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに異常が発生した、つまり第1測定位置P1の左右各輪重計S1LおよびS1Rの両方に異常が発生した、とする。この場合は、当該第1測定位置P1において左右各輪重wLおよびwRを測定することができず、つまり当該第1測定位置P1における軸重測定値W1Xを求めることができないので、精確な軸重最終測定値WXを求めることができない。例えば、次の式46に基づいて、軸重最終測定値WXが求められることを、想定する。
【0149】
《式46》
WX=W3L+(W2R+W3R)/2
【0150】
この式46は、次の式47のように表される。
【0151】
《式47》
WX={wL+a・sin(ω・t3)}+[{wR+a・sin(ω・t2)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/2
=(wL+wR)+(1/2)・a・sin(ω・t2)+(3/2)・a・sin(ω・t3)
【0152】
そうすると、この式47(式46)に基づく軸重最終測定値WXの振動力による影響を表すバラツキ量Nbは、次の式48の如くNb≒3.162・αとなる。
【0153】
《式48》
Nb=[{(1/2)・(2・α)}
2+{(3/2)・(2・α)}
2]
1/2
≒3.162・α
【0154】
このNb≒3.162・αというバラツキ量Nbは、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときのバラツキ量Nb≒2.309・α(式9参照)よりもかなり大きい。従って、式46(式47)に基づく演算では、振動力による影響を十分に抑制することができない。
【0155】
これとは別の演算として、例えば上述の式23に基づいて、第3測定位置P3の左右各輪重計S3LおよびS3Rによる各輪重測定値W3LおよびW3Rの相互差W3Dが求められ、さらに、この相互差W3Dを含む上述の式25に基づいて、第2測定位置P2における軸重測定値W2Xが求められる、とする。併せて、上述の式3に基づいて、第3測定位置P3における軸重測定値W3Xが求められる、とする。その上で、これら第2測定値P2における軸重測定値W2Xと第3測定位置P3における軸重測定値W3Xとの平均によって、つまり次の式49に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる、とする。
【0156】
《式49》
WX=(W2X+W3X)/2
={(2・W2R+W3D)+(W3L+W3R)}/2
【0157】
この式49に基づく軸重最終測定値WXは、次の式50のように表される。
【0158】
《式50》
WX=[2・{wR+a・sin(ω・t2)}+(wL−wR)+{wL+a・sin(ω・t3)}+{wR+a・sin(ω・t3)}]/2
=(wL+wR)+a・sin(ω・t2)+a・sin(ω・t3)
【0159】
そうすると、この式50(式49)に基づく軸重最終測定値WXの振動力による影響を表すバラツキ量Nbは、次の式51の如くNb≒2.828・αとなる。
【0160】
《式51》
Nb=[(2・α)
2+(2・α)
2]
1/2
≒2.828・α
【0161】
このNb≒2.828・αというバラツキ量Nbもまた、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときのバラツキ量Nb≒2.309・α(式9参照)よりも大きい。従って、式49(式50)に基づく演算によっても、振動力による影響を十分に抑制することができない。
【0162】
このことは、
図6に示す状態から、第2測定位置P2の右側輪重計S2Rに異常が発生した場合、つまり当該第2測定位置P2の左右各輪重計S2LおよびS2Rの両方に異常が発生した場合、も同様である。また、第3測定位置P3の左右各輪重計S3LおよびS3Rの両方に異常が発生した場合も、同様である。即ち、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3の少なくとも1箇所において、左右各輪重計22および24の両方に異常が発生した場合には、精確な軸重測定を行うことができない。従って、この場合も、
図7に示した状態のときと同様に、即座に軸重測定が停止されると共に、軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む警報が出力される。
【0163】
改めて
図6に戻って、当該
図6に示す状態から、例えば
図9に示すように、第3測定位置P3の右側輪重計S3Rに異常が発生した、つまり先に異常が発生した第1測定位置P1および第2測定位置P2の各左側輪重計S1LおよびS2Lに加えて、当該第3測定位置P3の右側輪重計S3Rに異常が発生した、とする。この場合も、異常が発生した各輪重計S1L,S2LおよびS3Rを除外して、暫定的な軸重測定の継続が試みられる。具体的には例えば、次の式52に基づいて、軸重最終測定値WXが求められる。
【0164】
《式52》
WX=W3L+(W1R+W2R)/2
【0165】
なお、この式52は、次の式53のように表される。
【0166】
《式53》
WX={wL+a・sin(ω・t3)}+[{wR+a・sin(ω・t1)}+{wR+a・sin(ω・t2)}]/2
=(wL+wR)+(1/2)・a・sin(ω・t1)+(1/2)・a・sin(ω・t2)+a・sin(ω・t3)
【0167】
そうすると、この式53(式52)に基づく軸重最終測定値WXの振動力による影響を表すバラツキ量Nbは、次の式54の如くNb≒2.449・αとなる。
【0168】
《式54》
Nb=[{(1/2)・(2・α)}
2+{(1/2)・(2・α)}
2+(2・α)
2]
1/2
≒2.449・α
【0169】
このNb≒2.499・αというバラツキ量Nbは、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときのバラツキ量Nb≒2.309・α(式9参照)よりも僅かに大きいものの、上述の比較対照用の構成によるバラツキ量Nb=4・α(式7参照)よりも十分に小さい。即ち、式52(式53)に基づく軸重最終測定値WXの演算によれば、振動力による影響が十分に抑制された当該軸重最終測定値WXが得られる。
【0170】
従って、
図9に示す状態にあるときには、式52に基づいて、軸重最終測定値WXが求められ、つまり暫定的な軸重測定が継続される。そして、この暫定的な軸重測定により求められた軸重最終測定値WXは、表示部40に表示され、とりわけ当該暫定的な軸重測定によるものであることが分かる態様で表示される。また、当該軸重最終測定値WXは、上述の如くメモリに記憶されると共に、必要に応じて、図示しない外部装置に出力される。
【0171】
なお、
図9に示す状態に限らず、例えば当該
図9に示す状態とは反対に、第1測定位置P1および第2測定位置P2の各右側輪重計S1RおよびS2Rに異常が発生すると共に、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生した場合も、同様の要領で暫定的な軸重測定が行われる。要するに、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3のそれぞれにおいて、左右各輪重計22および24のいずれか一方に異常が発生し、言い換えれば当該左右各輪重計22および24のいずれか一方が正常であり、かつ、全ての左側輪重計22,22および22のうちの少なくとも1台が正常であると共に、全ての右側輪重計24,24および24のうちの少なくとも1台が正常である場合に、同様の要領で軸重測定が行われる。
【0172】
そして、この状態で暫定的な軸重測定が行われているときにも、つまり例えば
図9に示すように第1測定位置P1および第2測定位置P2の各左側輪重計S1LおよびS2Lに異常が発生すると共に、第3測定位置P3の右側輪重計S3Rに異常が発生している状態にあるときにも、当該暫定的な軸重測定に用いられている有効な各輪重計S3L,S1RおよびS2Rについて、異常診断が行われる。
【0173】
具体的には、上述の式32,式33および式37に基づいて、診断対象である各輪重計S3L,S1RおよびS2Rに対応する各平均値W3LA’,W1RA’およびW2RA’が求められる。そして、式32に基づく平均値W3LA’と式33に基づく平均値W1RA’との相互差E31LR’が、上述の式44に基づいて求められる。併せて、式32に基づく平均値W3LA’と式37に基づく平均値W2RA’との相互差E32LR’が、上述の式45に基づいて求められる。さらに、式33に基づく平均値W1RA’と式37に基づく平均値W2RA’との相互差E12Rが、次の式55に基づいて求められる。
【0174】
《式55》
E12R’=|W1RA’−W2RA’|
【0175】
その上で、これら式44,式45および式55に基づく各相互差E31LR’,E32LR’およびE12R’のそれぞれが、上述の許容値WE’と比較される。ここで例えば、各相互差E31LR’,E32LR’およびE12R’がいずれも許容値WE’以下(E31LR’≦WE’,E32LR’≦WE’およびE12R’≦WE’)である場合には、診断対象である各輪重計S3L,S1RおよびS2Rのいずれにも異常が発生していない、つまり当該各輪重計S3L,S1RおよびS2Rの全てが正常である、という判定が成される。そして、各相互差E12L,E23LおよびE31Lのうち第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに関係する2つの相互差E31LR’およびE32LR’のそれぞれが許容値WE’よりも大きく(E31LR’>WE’およびE32LR’WE’)、かつ、当該第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに無関係な他の相互差E12R’が許容値WE’以下(E12R’≦WE’)である場合には、当該第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生した、という判定が成される。さらに、第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに関係する2つの相互差E31LR’およびE12R’のそれぞれが許容値WE’よりも大きく(E31LR’L>WE’およびE12R’>WE’)、かつ、当該第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに無関係な他の相互差E32LR’が許容値WE’以下(E32LR’≦WE’)である場合には、当該第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに異常が発生した、という判定が成される。また、第2測定位置P2の右側輪重計S2Rに関係する2つの相互差E32LR’およびE12R’のそれぞれが許容値WE’よりも大きく(32LR’>WE’およびE12R’>WE’)、かつ、当該第2測定位置P2の右側輪重計S2Rに無関係な他の相互差E31LR’が許容値WE’以下(E31LR’≦WE’)である場合には、当該第2測定位置P2の左側輪重計S2Rに異常が発生した、という判定が成される。このような要領で診断対象である各輪重計S3L,S1RおよびS2Rについての異常診断が行われる。
【0176】
この異常診断によって、診断対象である各輪重計S3L,S1RおよびS2Rのいずれかに異常が発生したことが判明した場合、例えば第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生した場合は、
図7に示した状態と同様、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3の全ての左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lに異常が発生したことになるので、精確な軸重測定を行うことができず、ゆえに、即座に軸重測定が停止されると共に、軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む警報が出力される。そして例えば、第1測定位置P1の右側輪重計S1Rに異常が発生した場合には、
図8に示した状態と同様、第1測定位置P1の左右各輪重計S1LおよびS1Rの両方に異常が発生したことになるので、やはり精確な軸重測定を行うことができず、ゆえに、即座に軸重測定が停止されると共に、軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む警報が出力される。さらに、第2測定位置P2の右側輪重計S2Rに異常が発生した場合も同様に、当該第2測定位置P2の左右各輪重計S2LおよびS2Rの両方に異常が発生したことになるので、即座に軸重測定が停止されると共に、軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む警報が出力される。
【0177】
以上のように、本実施形態によれば、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときには、これら全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rを用いて精確な軸重測定が実現される。そして、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rに多少の異常が発生したとしても、所定の条件が満足されるとき、詳しくは第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3のそれぞれにおいて、左右各輪重計22および24のいずれか一方が正常であり、かつ、全ての左側輪重計22,22および22のうちの少なくとも1台が正常であると共に、全ての右側輪重計24,24および24のうちの少なくとも1台が正常である、という条件が満足されるときには、暫定的に軸重測定が継続される。しかも、当該暫定的であろうとも、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるとき、つまり正常時、と略同程度に精確な軸重測定が実現される。
【0178】
正常時の軸重測定を含む本実施形態の一連の機能を実現するべく、上述した演算部36(CPU)は、上述の制御プログラムに従って、
図10に示す演算タスクを実行する。
【0179】
即ち、
図4に示した各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rの記憶内容(W1L[1]〜W1L[M],W2L[1]〜W2L[M],W3L[1]〜W3L[M],W1R[1]〜W1R[M],W2R[1]〜W2R[M]およびW3R[1]〜W3R[M])が更新されると、つまり各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rによる最新の各輪重測定値W1L[1],W2L[1],W3L[1],W1R[1],W2R[1]およびW3R[1]が得られると、演算部36は、ステップS1に進む。そして、このステップS1において、所定のフラグFがF=0であるか否かを判定する。このフラグFは、今現在、暫定的な軸重測定が行われている状態にあるか否かを表すものであり、例えば当該フラグFがF=0である場合には、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常である正常時の軸重測定が行われていること、言わば正常稼働中であること、を表す。一方、当該フラグFがF=1である場合には、暫定的な軸重測定が行われていること、言わば暫定稼働中であること、を表す。なお、軸重測定装置10(指示計30)の起動直後に、当該フラグFにその初期値としての“0”が設定される。併せて、当該軸重測定装置10の起動直後に、各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rが初期化され、つまりそれぞれの記憶内容がクリアされる。
【0180】
ステップS1において、例えばフラグFがF=0であるとき、つまり正常稼働中であるとき、演算部36は、ステップS3に進む。そして、このステップS3において、各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rの記憶内容に基づいて、異常診断を行う。なお、このステップS3においては、全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるので、当該全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常であるときの要領で異常診断が行われる。
【0181】
ステップS3における異常診断の後、演算部36は、ステップS5に進み、当該ステップS3における異常診断の結果を判定する。ここで例えば、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれにも異常が発生していない、つまり全ての輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rが正常である、という判定結果が得られたき、演算部36は、ステップS7に進む。そして、このステップS7において、異常データと、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのうちの正常なものによる輪重測定値W1L,W2L,W3L,W1R,W2RおよびW3Rと、に基づいて、軸重最終測定値WXを求める。なお、ここで言う異常データとは、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのうちのいずれに異常が発生しているのかを表すデータであり、例えば上述したメモリに記憶されている。また、当該異常データは、軸重測定装置10の起動直後にクリアされる。
【0182】
そして、演算部36は、ステップS9に進み、上述のステップS7で求められた軸重最終測定値WXをディスプレイ40に表示する。また、当該軸重最終測定値WXは、上述の如くメモリに記憶されると共に、必要に応じて、図示しない外部装置に出力される。そして、演算部36は、一旦、この演算タスクを終了する。
【0183】
一方、上述のステップS5において、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれかに異常が発生した、という判定結果が得られると、演算部36は、ステップS11に進む。そして、このステップS11において、上述のフラグFに“1”を設定する。これにより、これから暫定稼働に入ることが表される。
【0184】
さらに、演算部36は、ステップS13に進み、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのいずれに異常が発生したのかを上述の異常データに記憶し、つまり当該異常データを更新する。そして、ステップS15に進み、当該異常データに応じた警報を出力した後、ステップS17に進む。
【0185】
ステップS17において、演算部36は、暫定稼働が可能であるか否かを判定する。即ち、第1〜第3の各測定位置P1,P2およびP3のそれぞれにおいて、左右各輪重計22および24のいずれか一方が正常であること、併せて、全ての左側輪重計22,22および22のうちの少なくとも1台が正常であると共に、全ての右側輪重計24,24および24のうちの少なくとも1台が正常であること、という上述した条件が満足されているか否かを判定する。そして例えば、当該条件が満足されている場合に、暫定稼働が可能であると判定して、ステップS7に進む。一方、当該条件が満足されない場合には、暫定稼働が不可能であると判定して、ステップS19に進む。なお、軸重測定装置10の起動後に初めてステップS17に進んだ場合には、基本的に(いずれかの左右一対の輪重計22および24が同時に異常を発生しない限り)当該条件が満足されるので、当該ステップS19からステップS7に進むことになる。
【0186】
ステップS19において、演算部36は、即座に軸重測定を停止すると共に、当該軸重測定が不可能であることを表す情報や早急なる修理を促す情報等を含む警報を出力する等、軸重測定装置10の主たる稼働を停止するための所定の処理を行う。そして、この演算タスクを終了する。
【0187】
さらに、上述のステップS1において、フラグFがF=1であるとき、つまり暫定稼働中であるとき、演算部36は、当該ステップS1からステップS21に進む。そして、このステップS21において、上述の異常データと、各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rの記憶内容と、に基づいて、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのうちの当該暫定稼働に用いられている有効なものについての異常診断を行う。
【0188】
このステップS21における異常診断の後、演算部36は、ステップS23に進み、当該ステップSS21における異常診断の結果を判定する。ここで例えば、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rのうちの有効なものに新たな異常が発生していない、という判定結果が得られたき、上述のステップS7に進む。一方、当該新たな異常が発生した、という判定結果が得られたときは、上述のステップS13に進む。
【0189】
このような演算タスクが実行されることによって、本実施形態の一連の機能が実現される。
【0190】
なお、本実施形態において説明した内容は、飽くまでも本発明を実現するための1つの具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0191】
例えば、異常診断については、本実施形態において説明した内容に限らない。一例として、上述した式13,式14および式15に代えて、次の式56,式57および式58に基づく相互比率R12L,R23LおよびR31Lが求められてもよい。
【0192】
《式56》
R12L=|(W1LA/W2LA)−1|
【0193】
《式57》
R23L=|(W2LA/W3LA)−1|
【0194】
《式58》
R31L=|(W3LA/W1LA)−1|
【0195】
そして、これら各相互比率R12L,R23LおよびR31Lのそれぞれと、予め設定された許容値WRと、の比較によって、各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれかに異常が発生していないかどうか、当該異常が発生した場合には、当該異常が各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれに発生したのか、の判定が成されてもよい。即ち例えば、各相互比率R12L,R23LおよびR31Lがいずれも許容値WR以下(R12L≦WR,R23L≦WRおよびR31L≦WR)である場合には、各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lのいずれにも異常が発生していない、つまり全ての左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lが正常である、という判定が成される。そして、各相互比率R12L,R23LおよびR31Lのうち第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに関係する2つの相互比率R12LおよびR31Lのそれぞれが許容値WRよりも大きく(R12L>WRおよびR31L>WR)、かつ、当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに無関係な他の相互比率R23Lが許容値WR以下(R23L≦WR)である場合には、当該第1測定位置P1の左側輪重計S1Lに異常が発生した、という判定が成される。さらに、第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに関係する2つの相互比率R12LおよびR23Lのそれぞれが許容値REよりも大きく(R12L>WRおよびR23L>WR)、かつ、当該第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに無関係な他の相互比率R31Lが許容値WR以下(R31L≦WR)である場合には、当該第2測定位置P2の左側輪重計S2Lに異常が発生した、という判定が成される。また、第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに関係する2つの相互比率R23LおよびR31Lのそれぞれが許容値WRよりも大きく(R23L>WRおよびR31L>WR)、かつ、当該第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに無関係な他の相互比率R12Lが許容値WR以下(R12L≦WR)である場合には、当該第3測定位置P3の左側輪重計S3Lに異常が発生した、という判定が成される。このような要領で各左側輪重計S1L,S2LおよびS3Lについての異常診断が行われてもよい。このことは、各右側輪重計S1R,S2RおよびS3Rについての異常診断に関しても、同様である。
【0196】
そして、
図4に示した各シフトレジスタSR1L,SR2L,SR3L,SR1R,SR2RおよびSR3Rに係るMおよびNの値は、互いに等価(M=N)であってもよい。
【0197】
さらに、左右一対の輪重計22および24の数(組数)は、合計3組に限らず、それ以上であってもよい。なお、この左右一対の輪重計22および24の数が多いほど、軸重測定の精度が向上するが、その反面、これら各輪重計22および24を含む軸重測定装置10全体の構成が複雑化し、かつ、高コスト化する。
【0198】
また、各輪重計S1L,S2L,S3L,S1R,S2RおよびS3Rとして、動的測定方式のものが採用されることとしたが、静動両測定方式のものが採用されてもよいし、これらの両方が適宜に混在する構成とされてもよい。