特許第6223819号(P6223819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧 ▶ 日邦産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6223819-機能性成形部品 図000002
  • 特許6223819-機能性成形部品 図000003
  • 特許6223819-機能性成形部品 図000004
  • 特許6223819-機能性成形部品 図000005
  • 特許6223819-機能性成形部品 図000006
  • 特許6223819-機能性成形部品 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223819
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】機能性成形部品
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/24 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   H01R43/24
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-271541(P2013-271541)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-125966(P2015-125966A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227711
【氏名又は名称】日邦産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 常之
(72)【発明者】
【氏名】木ノ本 晃也
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓也
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−324323(JP,A)
【文献】 特開平08−323806(JP,A)
【文献】 特開2010−218780(JP,A)
【文献】 特開2010−052365(JP,A)
【文献】 特開平09−323337(JP,A)
【文献】 特開2012−245665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/24
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状の金属体の長手方向の両端を除く部位で全周に熱可塑性樹脂を成形して、前記金属体の長手方向の両端を除く部位で全周を前記熱可塑性樹脂によって包囲される機能性成形部品であって、
前記金属体と前記熱可塑性樹脂との境界部位に成形可能な弾性を有する接着剤が介挿され、該接着剤は、前記金属体の外表面で前記熱可塑性樹脂によって取り囲まれて、所定の圧縮応力が付与された状態とされており、
前記熱可塑性樹脂は、前記接着剤に対し融点が高く、前記成形の工程で溶融、相溶化可能な熱可塑性樹脂であることを特徴とする機能性成形部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体の表面に熱可塑性樹脂を成形して構成される機能性成形部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数の単電池間を金属体により電気的に接続する二次電池が示され、金属体の表面には樹脂製の支持体が一体に設けられ、この支持体により金属体を電池のケーシングに固定している。ここで、金属体と支持体との間の微小隙間から互いに隣接する電池内部同士間で液やガスが漏れることを防止するためにシール構造を採用している。この場合、単電池間の環境は互いに類似しており、シール性の要求レベルは高くない。
しかし、シール構造の両側の空間の環境が大きく違い、一方の空間の液やガスが他方の空間に漏れることを高レベルで防止したい場合には、高いシール性能が要求される。そこで、一部では、例えば、金属体の外周円上に凹溝を形成し、この凹溝にシール材を嵌め、その金属体をインサート材として樹脂のインサート成形を行ってシール構造が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−120963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記シール構造でも、車両用部品のように使用温度域が広範囲等、使用環境が厳しい場合には、必要なシール性を維持できない場合がある。
このような問題に鑑み本発明の課題は、金属体の表面に熱可塑性樹脂を成形して構成される機能性成形部品において、シール性を要求される金属体表面へのシール材の密着力を高めることにより、金属体の表面と熱可塑性樹脂との間のシール性能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明は、金属体の表面に熱可塑性樹脂を成形して、前記金属体の周囲を前記熱可塑性樹脂によって包囲される機能性成形部品であって、前記金属体と前記熱可塑性樹脂との境界部位に成形可能な弾性を有する接着剤が介挿され、該接着剤は、前記金属体の外表面で前記熱可塑性樹脂によって取り囲まれて、所定の圧縮応力が付与された状態とされていることを特徴とする。
第1発明によれば、接着剤に圧縮応力が付与されていることにより金属体表面と接着剤との間、並びに接着剤と熱可塑性樹脂との間は圧着状態とされ、金属体表面と熱可塑性樹脂との間のシール性は、使用環境が厳しい場合でも高レベルに維持することができる。
【0006】
第2発明は、上記第1発明において、前記熱可塑性樹脂は、前記接着剤に対し融点が高く、前記成形の工程で溶融、相溶化可能な熱可塑性樹脂であることを特徴とする。
第2発明によれば、熱可塑性樹脂と接着剤とは相溶化により一体化され、金属体表面と熱可塑性樹脂との間のシール性は、更に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の正面図である。
図2】上記実施形態の平面図である。
図3】上記実施形態の側面図である。
図4図1のIV−IV線断面図である。
図5】上記実施形態において熱可塑性樹脂のインサート成形が行われる前の仕掛品の正面図である。
図6】上記実施形態において図5と同様の仕掛品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜4は、本発明の一実施形態として、オイルを含んだ環境下で使用される電気モータ(不図示)の電気配線部の導電体部分(本発明の機能性成形部品に相当)を示している。この導電体部分は、アルミニューム製の平板形状の導電体(本発明の金属体に相当)10の表面にポリフェニレン・サルファイト(PPS)樹脂(本発明の熱可塑性樹脂に相当)30をインサート成形して、導電体10の長手方向中央部の周囲をPPS樹脂30によって包囲して構成されている。導電体10の長手方向両端部には、図示を省略したが、それぞれ圧着端子(不図示)が締結され、電気モータの電気配線が行われている。
電気モータのケーシング(不図示)の外側又は内側はオイルを含んだ環境下に曝されており、PPS樹脂30は、電気モータの電気配線部を成す電気モータのケーシングの開口部に気密性及び液密性を保つように固定されている。なお、PPS樹脂30は耐熱性と電気絶縁性を備える点で、この実施形態における使用環境に適するものとして選定されている。また、PPS樹脂30は、ケーシングの開口部に固定されるのに好適な形状に形成されても良い。
【0009】
導電体10とPPS樹脂30との境界部位には、ポリエステルエラストマー系ホットメルト接着剤(本発明の接着剤に相当する。以下、接着剤という)20が介挿されている。該接着剤20は、図5、6にも示すように導電体10の長手方向の中央部外表面上を取り囲んで接着されている。この部分の導電体10には2個の貫通孔11が穿設されており、これらの貫通孔11内にも接着剤20が充填されている。また、接着剤20の外表面形状は、両側縁部が裾広がりの形状に形成されている。このため、PPS樹脂30をインサート成形する際、接着剤20の表面上を導電体10の長手方向に沿ってPPS樹脂30bが流動することになるが、接着剤20は両側縁部が裾広がりの形状に形成されているため、係る裾広がりの形状が形成されていない場合に比べて、PPS樹脂30の流動圧力を受ける程度が抑制される。これによりPPS樹脂30のインサート成形時に接着剤20が流されることが抑制される。しかも、貫通孔11内にも接着剤20が充填されているため、更に接着剤20は流され難くされている。この場合、接着剤20としては、東洋紡株式会社のバイロショット(登録商標)の高接着グレード(GM−955−RK20)を用いている。この接着剤20は、結晶化が遅く、常温でも柔軟性が高く、導電体10表面への密着力が部分的にではなく均一に高い性質を備える。また、PPS樹脂30は、接着剤20に対し融点が高く、インサート成形の工程で溶融、相溶化可能な熱可塑性樹脂である。
【0010】
次に製造方法について説明する。
図5、6のように導電体10の外表面に接着剤20を接着させた仕掛品をインサート成形の型内に入れて溶融状態のPPS樹脂を50メガパスカル程度の圧力で充填して、図1〜4に示されるようにPPS樹脂30の成形を行う。この成形の過程では、溶融状態のPPS樹脂が型内で冷却固化されてもPPS樹脂30内の接着剤20に所定の圧力を維持するようにされ、接着剤20は、導電体10の外表面でPPS樹脂30によって取り囲まれて、所定の圧縮応力が付与された状態とされている。また、PPS樹脂30は冷却される際に僅かに収縮され、接着剤20は収縮されたPPS樹脂30によって導電体10表面上にOリングのように押し付けられる。
インサート成形の過程で接着剤20とPPS樹脂30が接触すると、両者は相溶化して分子結合される。
【0011】
以上の実施形態によれば、接着剤20に圧縮応力が付与されていることにより導電体10の表面と接着剤20との間、並びに接着剤20とPPS樹脂30との間は圧着状態とされる。そのため、電気モータがオイルを含んだ環境下で使用されても、導電体10の表面とPPS樹脂30との間のシール性は高レベルに維持することができる。更に、PPS樹脂30と接着剤20とは相溶化により一体化され、導電体10表面とPPS樹脂30との間のシール性は、更に高められる。従って、オイルが電気モータの空間内又は電気モータの外側に漏れることを防止することができる。
【0012】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.本発明の機能性成形部品としては、上記実施形態のような電気モータの電気配線部の導電体部分に限定されない。オイル部と空気部のように2種類の異なる空間をシールする必要がある部品に適用でき、絶縁部と導電部材から成る防水コネクタ、コンピュータ内蔵筐体の端子部、バッテリの電極部等に広く適用できる。部品が電気部品である場合、通電する電流は、電気信号を伝達する微弱電流からモータ駆動用の強電流まで特に限定されない。
2.上記実施形態では、接着剤20としてポリエステルエラストマー系ホットメルト接着剤を使用したが、ポリアミド系の接着剤を使用しても良い。
3.熱可塑性樹脂としては、上記PPS樹脂の他に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフタルアミド(PPA)、又はシンジオタクチックポリスチレン(SPS)等の樹脂、或いは液晶ポリマーでも良い。
4.上記実施形態では、導電体10に貫通孔11を設けたが、貫通孔11は無くても良い。
5.接着剤20は、導電体10の長手方向に分割されて複数列に形成されても良い。
【符号の説明】
【0013】
10 導電体(金属体)
11 貫通孔
20 ポリエステルエラストマー系ホットメルト接着剤(接着剤)
30 ポリフェニレン・サルファイト(PPS)樹脂(熱可塑性樹脂)
図1
図2
図3
図4
図5
図6