特許第6223820号(P6223820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223820
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ポリマーセメントグラウトモルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20171023BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20171023BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20171023BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20171023BHJP
   C04B 14/10 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 18/08 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 18/14 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 22/06 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 22/14 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 24/04 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 24/12 20060101ALN20171023BHJP
   C04B 111/70 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B24/26 E
   C04B24/22 C
   C04B24/38 D
   C04B24/26 G
   C04B28/02
   C04B14:10 B
   C04B18:08 Z
   C04B18:14 A
   C04B18:14 Z
   C04B22:06 Z
   C04B22:14 A
   C04B22:14 B
   C04B24:04
   C04B24:12 Z
   C04B24:22 C
   C04B24:26 E
   C04B24:26 G
   C04B24:38 D
   C04B111:70
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-273633(P2013-273633)
(22)【出願日】2013年12月28日
(65)【公開番号】特開2015-127283(P2015-127283A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜中 昭徳
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082416(JP,A)
【文献】 特開平10−017342(JP,A)
【文献】 特開平11−343159(JP,A)
【文献】 特開2007−045650(JP,A)
【文献】 特開2008−230890(JP,A)
【文献】 特開平05−345652(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059605(WO,A1)
【文献】 特開2011−241095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径2.5〜5.0mmの骨材を10〜50質量%含有し、更に、セメント、減水剤、増粘剤、ポリマーディスパージョンを含有するポリマーセメントグラウトモルタル。
【請求項2】
更に、高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,メタカオリンから選ばれる1種又は2種以上を3〜20質量%含有する請求項1に記載のポリマーセメントグラウトモルタル。
【請求項3】
更に、シリカフュームを0.5〜5質量%含有する請求項1又は2に記載のポリマーセメントグラウトモルタル。
【請求項4】
更に、膨張材、石膏、アルカリ金属硫酸塩、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、尿素、セルロース微粉末から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜3の何れかに記載のポリマーセメントグラウトモルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーセメントグラウトモルタルに関する。詳しくは、コンクリートに接合させたときに、コンクリートとの一体性が高いポリマーセメントグラウトモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの表面又は内部にモルタルを被覆、充填又は配設し、コンクリートとモルタルを接合させることが行われている。例えば、劣化したコンクリート構造物(鉄筋コンクリート構造物を含む。)をモルタルで補修する場合においても、コンクリートにモルタルを接合させることが行われる(例えば、特許文献1〜3参照)。コンクリート構造物の劣化した部分をコンクリートの健全な部分が露出するまでコンクリートハンマーで斫り取る等して除去する。その後、除去したコンクリートの代わりに補修用モルタルを配設(打設)する。また、コンクリート構造物の耐震補強工事においても、コンクリートにモルタルを接合することが行われている。更に、補修工事や補強工事だけではなく、新設のコンクリート製構造物においても、コンクリートにモルタルを接合することが行われている。コンクリート構造物の補修や補強に用いられるモルタルとして、コンクリート躯体と同程度の圧縮強度のモルタルを選定されることも多い。
【0003】
ところで、受ける外力に対して、コンクリートと接合したモルタルが一体となり、同じ挙動を示すことが望まれる。しかし、同一強度のコンクリートとモルタルを比較した場合に、外力に対する変形性能、歪応答性に違いが生じる。外力が硬化体の最大耐力のおよそ30%を超え50%に至る付近においては粗骨材とモルタル界面の境界付着層に微細ひび割れが発生しひずみが増大する。また最大耐力の70%を超えるとモルタル中の細骨材とセメントペースト界面の境界付着層に微細ひび割れが発生する。コンクリートの構造にかかわる部位の一部を同一強度のモルタルで修復した場合、最大耐力の30%を超える外力が加わるとコンクリートのひずみ量に対しモルタルのひずみ量は小さくなる。即ち、モルタル部分に荷重集中が起こり、最悪の場合はモルタルが損傷を受ける。またコンクリートとモルタルの挙動の差から、両者の界面付近に大きなストレスが生じ、繰返しによりひび割れや界面剥離が起こる。従って、コンクリートと接合させたときに、コンクリートとより一体化することのできるモルタル、特に、外力を受けてもコンクリートと一体化を維持できるモルタルが望まれていた。
【0004】
上記のコンクリートと接合させるモルタルとして、コンクリートとの接着強度が高いことから、ポリマーセメントモルタルが用いられことがある。また、施工の行い易さ及びコンクリートとの接着強度が高いことから、コンクリートと接合させるモルタルとして、ポリマーセメントモルタルからなるグラウト材、即ち、ポリマーセメントグラウトモルタル(充填用ポリマーセメントモルタル)が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−177567号公報
【特許文献2】特開2005−090219号公報
【特許文献3】特開2003−013608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、コンクリートと接合させたときに、コンクリートとの一体性に優れるポリマーセメントグラウトモルタルを提供することを目的とする。また、本発明は、コンクリートと接合させたときに、外力を受けてもコンクリートと一体性を維持できるポリマーセメントグラウトモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、セメントと、特定の粒度の骨材を特定量含有させ、更に特定の混和材料を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)で表すプレミックスグラウト組成物である。
(1)粒径2.5〜5.0mmの骨材を10〜50質量%含有し、更に、セメント、減水剤、増粘剤、ポリマーディスパージョンを含有するポリマーセメントグラウトモルタル。
(2)更に、高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,メタカオリンから選ばれる1種又は2種以上を3〜20質量%含有する上記(1)のポリマーセメントグラウトモルタル。
(3)更に、シリカフュームを0.5〜5質量%含有する上記(1)又は(2)のポリマーセメントグラウトモルタル。
(4)更に、膨張材、石膏、アルカリ金属硫酸塩、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、尿素、セルロース微粉末から選ばれる1種又は2種以上を含有する上記(1)〜(3)の何れかのポリマーセメントグラウトモルタル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートと接合させたときに、コンクリートとの一体性に優れるポリマーセメントグラウトモルタルが得られる。本発明によれば、コンクリートと接合させたときに、外力を受けてもコンクリートと一体化を維持できるポリマーセメントグラウトモルタルが得られる。また、本発明によれば、コンクリートと接合するポリマーセメントグラウトモルタルとの一体性に優れるので、耐久性に優れるコンクリート構造物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルは、粒径2.5〜5.0mmの骨材を10〜50質量%含有し、更に、セメント、減水剤、増粘剤、ポリマーディスパージョンを含有する。ここで、粒径2.5〜5.0mmの骨材とは、公称呼び寸法2.5mm(公称目開き(以下「目開き」と云う。)2.36mm)の篩に留まり且つ目開き4.75mmの篩を通過する骨材を云う。また、本発明で云う「質量%」は、特段断らない限りにおいては、ポリマーセメントグラウトモルタルの質量から水及び液状混和材料の合計質量を除いた質量を100質量%(基準)としたときの質量%を云い、ポリマーセメントグラウトモルタルがプレミックスモルタルのときは、プレミックスモルタルの全質量(セメント、粉体混和材料及び絶乾状態の骨材の合計質量)を100質量%(基準)としたときの質量%を云う。
【0010】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルは、粒径2.5〜5.0mmの骨材(以下、「准粗骨材」と云うことがある。)を10〜50質量%含有することで、外力に対する歪の挙動が、一般的なモルタル(骨材として粒径2.5mm以下の骨材のみ含むモルタル、以下「一般モルタル」と云うことがある。)よりもコンクリートに近く、コンクリートの接合面(本発明のポリマーセメントグラウトモルタルとの界面)における密着性が高く、且つポンプ圧送性にも優れる。また、骨材の沈降も起こり難い。准粗骨材が50質量%を超えると、骨材の沈降が起こる虞があり、又ポンプによる圧送性が低下するため、施工性に難がある。また、。准粗骨材が10質量%未満であると、准粗骨材を含有する効果が乏しく、一般モルタルと変わらない。本発明のポリマーセメントグラウトモルタルにおいて、准粗骨材の含有率を好ましくは15〜46質量%とすることが好ましく、更に好ましくは20〜46質量%とする。
【0011】
本発明に用いる准粗骨材としては、上記粒径の骨材であればよく、例えば、玉砂利、川砂利、砕石、珪石、川砂、砕砂、珪砂、スラグ骨材、再生骨材等が好ましい例として挙げられ、これらのうち上記粒径のものが使用でき、2種以上を併用してもよい。また、コンクリート用粗骨材や道路用砕石の篩い分けの際に得られる「びり」と呼ばれる粒径5.0mm以下の小砂利は、准粗骨材として好適である。また、用いる准粗骨材の形状としては、球形に近いものがより好適である。
【0012】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルには、骨材として准粗骨材以外の骨材が含まれていてもよい。粒径5.0mmを超える骨材、即ち目開き4.75mmの篩に留まる骨材を含有するときは、目開き13.2mmの篩通過する骨材を用いることが、小型のスクイズポンプで圧送できることから好ましい。また、粒径5.0mmを超える骨材の含有量は、ポンプ圧送性に優れることから、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは7質量%以下とする。また、粒径2.5mm以下の骨材、即ち目開き2.36mmの篩を通過する骨材を含有することが、コンクリートの接合面における密着性が高く、ポンプ圧送性にも優れ且つ骨材の沈降も起こり難いことから好ましく、粒径2.5mm以下の骨材の含有率は5〜80%とすることが好ましく、10〜60質量%とすることがより好ましい。
【0013】
本発明に用いるセメントは、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、エコセメント及びポルトランドセメントに含まれないビーライトセメント等のケイ酸カルシウム鉱物を主成分とするセメント(ケイ酸カルシウム鉱物を50質量%以上含むセメント)、並びに、これらのケイ酸カルシウム鉱物を主成分とするセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ粉末、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、太平洋セメント社製「スーパージェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。ワービリティを損ない難く可使時間が長く確保し易いことから、各種ポルトランドセメント、エコセメント、ポルトランドセメントに含まれないビーライトセメント及び各種混合セメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0014】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルにおいて、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、メタカオリン、シリカフューム等のポゾラン又はスラグ粉末から選ばれる1種又は2種以上を含むことで、准粗骨材を所定量含有しても骨材沈降・材料分離が生じ難く且つコンクリート構造物の大断面修復に用いても必要な均一性が得られ易いことから好ましい。高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,メタカオリンから選ばれる1種又は2種以上を用いる場合は3〜20質量%とすることが好ましく、シリカフュームを用いる場合は0.5〜5質量%とすることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる増粘剤としては、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のヒドロキシアルキルセルロース、或いは、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等の水溶性セルロース;アルギン酸、β−1,3グルカン、プルラン、ウェランガム等の多糖類;アクリル樹脂やポリビニルアルコール等のポリビニル化合物;メチルスターチ,エチルスターチ,プロピルスターチ又はメチルプロピルスターチ等のアルキルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ又はヒドロキシプロピルスターチ等のヒドロキシアルキルスターチ、或いは、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等のヒドロキシアルキルアルキルスターチ等スターチエーテル等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能である。また、本発明に用いる増粘剤としては、プレミックスし易いことから、粉末のもの(粉末増粘剤)が好ましい。増粘剤の含有率は0.005〜1質量%とすることが流動性の確保及び材料分離抵抗性が得られることから好ましい。更に好ましくは0.02〜0.5質量%とする。少ないと材料分離・骨材沈降、多すぎると流動性低下、ポンプ圧送性低下の虞がある。
【0016】
また、本発明に用いる減水剤としては、特に限定されず、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のセメント分散剤を用いることができ、例えば、ポリカルボン酸塩系セメント分散剤、ナフタレンスルホン酸塩系セメント分散剤、メラミンスルホン酸塩系セメント分散剤及びリグニンスルホン酸塩系セメント分散剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。用いる減水剤としては、粉末状高性能減水剤又は粉末状高性能AE減水剤を用いると、高い付着強度を得易いことから好ましい。また、本発明に用いる減水剤としては、プレミックスし易いことから、粉末のもの(粉末減水剤)が好ましい。減水剤の含有率は、0.01〜5質量%とすることが高い流動性が得られ且つ材慮分離し難いことから好ましい。より高い流動性が得られ易く且つ骨材沈降が起こり難く材料分離抵抗性に優れることから、減水剤の含有率は、0.05〜2質量%とすることがより好ましい。
【0017】
本発明におけるポリマーディスパージョンとしては、通常ポリマーセメントモルタルに用いられるものであれば何れも使用可能であり、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル共重合系樹脂、スチレン・ブタジエン共重合系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル・ベオバ共重合系樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びこれらの変性樹脂のポリマーディスパージョンが挙げられる。変性樹脂とは、例えばカルボキシル変性、エポキシ変性、シリコン変性等された樹脂をいう。ポリマーディスパージョンは、上記樹脂を水に乳化して安定化された液体状のもの、又は水により再乳化するものであれば粉末状(再乳化型粉末樹脂)でもよく、何れか1種又は2種以上を併用してもよい。ポリマーディスパージョンの含有率は、不揮発成分換算で1〜12質量%が好ましく、2〜8質量%が更に好ましい。少ないと付着強度の低下の虞があり、多過ぎると強度低下、骨材沈降・材料分離及びポンプ圧送性の低下の虞がある。
【0018】
更に、本発明に膨張材を含有することがコンクリートとの長期的な一体化の点で好ましい。本発明に用いる膨張材としては、水和により例えば水酸化カルシウムやエトリンガイト等の水和物の結晶が成長し、嵩体積が大きくなる物質を主要成分とするものであれば何れのものでも良く、具体的には、生石灰、カルシウムサルホアルミネート、無水石膏、マグネシア、石灰系膨張材、エトリンガイト系膨張材等が好適な例として挙げられ、これら又はこれらに類する物質の一種又は二種以上を使用することが可能である。膨張材の含有率は、好ましくは0.5〜4質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%とする。少ないと効果なく、多いと過膨張による破壊の虞がある。膨張材がブレーン比表面積3500cm/g以上の石灰系膨張材を含有し且つ石膏及びアルカリ金属硫酸塩を含有するとさらに好ましい。石膏としては無水石膏及び/または半水石膏を主成分とするものが好ましく、石膏の含有率は0.2〜10質量%,さらに好ましくは0.8〜7質量%とすることが好ましい。アルカリ金属硫酸塩は好ましくは0.08〜0.8質量%,さらに好ましくは0.1〜0.5質量%。これらは少ないと効果がなく,多いと遅れ膨張による破壊の虞がある。
【0019】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルには、ギ酸カルシウム,酢酸カルシウム,乳酸カルシウム,尿素から選ばれる1種又は2種以上を含有することが、コンクリートとの長期的な一体化の点及び骨材沈降を抑制する点で更に好ましい。これらの好ましい含有率は0.01〜4質量%、更に好ましくは0.05〜2質量%とする。少ないと効果はほとんど得られず,多いとギ酸カルシウム,酢酸カルシウム,乳酸カルシウムではシマリが早く可使時間が確保できなくなり、尿素が多いと再結晶膨張圧での破壊の虞がある。
【0020】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルには、セルロース微粉末を含有することが、材料分離抵抗性に優れ、圧送管の管壁との滑りが向上しポンプ圧送性が向上し施工性に優れることから好ましい。セルロース微粉末の好ましい含有率は0.05〜1質量%、更に好ましくは0.1〜0.5質量%とする。少ないと効果はほとんど得られず,多すぎると、コンクリートとの付着力が低下する虞がある。
【0021】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルには、上記のセメント、ポゾラン、スラグ粉末及び膨張材を合わせた結合材を、10〜45質量%含有することがコンクリートとの一体性を得る点、骨材沈降・材料分離を抑制する点等から好ましく、更に、20〜40質量%とする。結合材が少ないと強度の低下、耐久性の低下等が起こる虞がある。
【0022】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルには、上記のセメント、骨材及び混和材料以外に、他の混和材料から選ばれる一種又は二種以上を本発明の効果を実質損なわない範囲で併用することができる。この混和材料としては、例えば消泡剤、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、上記以外の繊維、撥水剤、発泡剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、空気連行剤、表面硬化剤等が挙げられる。また、本発明で使用される混和材料は、粉末状でも液状でも使用可能であるが、液状の混和材料の場合には、他の粉体又は顆粒状の成分(担体)に吸着させ見かけ上粉体状又は顆粒状とした上で用いることが好ましい。ここで用いる担体としては、シリカ粉末等の他、セメント、骨材或いは粉末状又は顆粒状の混和材料を用いてもよい。
【0023】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルは、含まれる結合材の質量100質量部に対し、30〜60質量部の水と混練して用いることが好ましい。即ち、水結合材比(W/B)30〜60%とすることが好ましい。このときの水量は、水性の液状混和材料(例えば液体減水剤やゴムラテックス。)を添加する場合は、ポリマーセメントグラウトモルタルに添加する水性の液状混和材料に含まれる水の量も考慮する。また、混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることが量を多く混練できるので好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【0024】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルが、混練直後のJIS A 1150に準じて測定したスランプフローの値が50cm以下であると、材料が均一性を得られながら流動性、充填性に優れることから好ましい。より好ましいスランプフローの値は30〜50cm、更に好ましいスランプフローの値は32〜46cmである。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
以下に示す材料を用いて表1に示す配合割合のポリマーセメントグラウトモルタルを、グラウトミキサを用い2分間混合することで12種類(実施品1〜7及び参考品1〜5)作製した。
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント,太平洋セメント社製,密度 3.16 g/cm

減水剤1: ポリカルボン酸系粉末高性能減水剤,太平洋マテリアル社製,NF-200(商品名)

減水剤2: ナフタレンスルホン酸系粉末高性能減水剤,花王社製,マイティ100(商品名)

高炉スラグ微粉末: 新日鉄住金社製,スピリッツ4000(商品名),ブレーン比表面積 4000 cm/g

フライアッシュ: 常磐火力産業社製,JIS II種
メタカオリン: BASF社製,MetaMax HRM(商品名),平均粒径 1.2μm

シリカフューム: チェルヤビンスク製,フェロシリコン副生シリカフューム,BET比表面積 19 m/g

膨張材1:低ブレーンタイプ 太平洋マテリアル製石灰系膨張材,ブレーン比表面積 2300 cm/g

膨張材2:高ブレーンタイプ 太平洋マテリアル製石灰系膨張材,ブレーン比表面積 4600 cm/g

無水石膏:フッ酸副生II型無水石膏,ブレーン比表面積 7000 cm/g

無水硫酸ナトリウム: 一級試薬

ギ酸カルシウム:一級試薬

酢酸カルシウム:一級試薬

乳酸カルシウム:一級試薬

尿素:一級試薬

細骨材1(≦2.5mm):愛知県三河産珪砂,絶乾砂,F.M.;2.5

准粗骨材(2.5〜5.0mm):茨城県鹿島産珪石,絶乾砂

粗骨材1,2:茨城県桜川産砕石,表乾密度 2.64 g/cm

増粘剤1:セルロースエーテル,松本油脂社製,マーポローズ90MP-4T(商品名)
増粘剤2:スターチエーテル BASF社製,Starvis SE25F (商品名)

繊維: 東和織物社製,タフバインダー(商品名)5mm

セルロース微粉末:レッテンマイヤー社製,Arbocel PWC500 (商品名)
ポリマーディスパージョン1:スチレンアクリル系再乳化型ポリマーディスパージョン,BASF社製,Acronal S430P(商品名)

ポリマーディスパージョン2:SBR系ポリマーエマルション,太平洋マテリアル製,太平洋CX-B(商品名),不揮発成分45質量%

減水剤3:ポリカルボン酸系高性能減水剤(液体),太平洋マテリアル製,コアフローNF-200L(商品名)
【0026】
【表1】
【0027】
作製したポリマーセメントグラウトモルタルについて、以下に示す品質評価試験を行った。その結果を表2に示した。
<品質試験方法>
・流動性試験
JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じて、スランプフローを測定した。
・准粗骨材の分布(骨材沈降の有無確認、材料の不分離性の確認)
練上り直後に土木学会規準JSCE-F 522に定めるブリーディング測定用のポリエチレン袋に20cm高さまで断面修復材(ポリマーセメントグラウトモルタル)を流し込む。30分間静置の後、10cm高さにて袋を捻じり上下を分ける。袋を切り出しそれぞれの中身を取り出し重量を測定する。水篩いにて粒径2.5〜5.0mmの骨材を洗い出し、含有量の差を評価した。上下の差が5%以上を以って骨材の分布に均一性が欠如していると判定した。
・密実性評価、着試験用試験体の作製
下面をサンドブラストしたコンクリート板(長さ500×幅300×幅100mm)に下方に、注入箇所が100mm厚となるよう塗装合板による型枠を設置、注入孔を下方の一角にとり、空気抜き孔をその対角となる界面にとる。断面修復材を充填し、施工後3日で型枠を除去する。その後屋外にて材齢28日まで置いた後、φ50mmのコアドリルにてコアリングし、密実性評価と付着試験に供した。
・密実性評価
上述のコア試験体を顔料で青く着色した水に24時間浸漬する。その後割裂し、付着界面部分に着色した隙間幅をクラックゲージにて読み取る。0.05mm以上を以って一体に施工されていると評価した。
・付着試験
上記のコア試験体に鋼製治具を取り付けてアムスラー型万能試験機にて付着強度を測定。付着強度は1.5 N/mm以上を以って合格とし、その際の破断箇所の評価は、躯体コンクリート/断面修復材界面の破断を非とする。
・負荷試験体
厚さ200mm,幅300mm,長さ2200mm,使用鉄筋D10 SD345,鉄筋比0.5とした鉄筋コンクリート製模擬スラブを基材とする。長さ方向の中央部800mmの下面厚さ100mmを切欠き、表面をサンドブラスト処理を行う。同箇所にそれぞれの断面修復材にて断面修復を行う。屋外にて材齢3か月まで置いた後、試験に供した。
・負荷試験
同試験体を断面修復部を下側とし、支店間距離2000mmとして設置する。その中央部に振幅0.3mm,振動周波数4Hzで下向きに振動負荷を与える。期間は7日間とした。
・負荷後の付着試験
断面修復部について上述と同様の方法にて試験を実施。評価も同様とする。
・吸水によるひび割れ幅の確認
断面修復部を付着試験同様にコアリングし、顔料で青く着色した水に24時間浸漬する。その後割裂し、付着界面部分に着色したひび割れ幅をクラックゲージにて読み取る。0.05mm以上を以って一体性が低下していると評価した。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明の実施例に当たるポリマーセメントグラウトモルタル(本発明品1〜6)を用い混練することで作製したグラウト材(グラウトモルタル)は、何れもスランプフロー値がスランプフローの値は32〜46cmであった。また、本発明の実施例に当たるポリマーセメントグラウトモルタル(本発明品1〜6)を用い混練することで作製したグラウト材(グラウトモルタル)は、何れも付着試験(材齢28日、負荷後ともに)2N/mm以上と値が高く、且つコンクリートとグラウト材の界面での破断は見られず、優れた結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のポリマーセメントグラウトモルタルは、コンクリート製土木構造物やコンクリート製建築構造物の構築又は補修、或いは機械の設置等に用いることができる。また、本発明のポリマーセメントグラウトモルタルは、コンクリート構造物の大断面補修にも好適に用いることができる。