特許第6223829号(P6223829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223829生物学的製剤の個別生成および体細胞を再プログラム化するための方法
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  • 特許6223829-生物学的製剤の個別生成および体細胞を再プログラム化するための方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223829
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】生物学的製剤の個別生成および体細胞を再プログラム化するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20171023BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20171023BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20171023BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20171023BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C12N5/0789
   C12P21/02 C
   C12P21/08
   C12N9/00
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-547725(P2013-547725)
(86)(22)【出願日】2012年1月3日
(65)【公表番号】特表2014-501118(P2014-501118A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】US2012020084
(87)【国際公開番号】WO2012094321
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年11月13日
(31)【優先権主張番号】61/431,376
(32)【優先日】2011年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/429,409
(32)【優先日】2011年1月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513164509
【氏名又は名称】エーブイエム・バイオテクノロジー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】デイシェアー、テレサ・ディー.
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/117464(WO,A1)
【文献】 特開2002−262879(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/091543(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0274125(US,A1)
【文献】 特開2010−268789(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/022194(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 5/0789
C12P 21/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患を治療するための単離された治療用組み換え生物学的ポリペプチドまたはタンパク質を生成するための方法であって、合成により生成した多能性幹細胞(spPSC)を、前記ポリペプチドまたはタンパク質が前記spPSCによって発現する条件下で、前記治療用組み換え生物学的ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸で遺伝子導入することを含み、その後前記ポリペプチドまたはタンパク質は前記spPSCから単離され、前記spPSCが動物の細胞から生成され、合成により生成した多能性幹細胞(spPSC)は、誘発された多能性幹細胞、体細胞核移植により生成された多能性幹細胞(SCNT多能性幹細胞)、改変核移植卵母細胞補助再プログラム化により生成された多能性幹細胞(ANT−OAR多能性幹細胞)、および単為生殖により生成された多能性幹細胞(PGA多能性)からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記治療用生物学的ポリペプチドまたはタンパク質は、エリスロポエチン、第VIII因子、第IX因子、トロンビン、抗体もしくは抗体断片、αインターフェロン、インターフェロンα−2Aおよび2B、βインターフェロン、成長ホルモン、抗血友病因子、G−CSF、GM−CSF、可溶性受容体、TGF−β、骨形態形成タンパク質(BMP)、TGFα、インターロイキン2、β−グルコセレブロシダーゼもしくはその類似体、α1−プロテイナーゼ阻害剤、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子、イミグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ラロニダーゼ、グルコシダーゼα、サイロトロピンα、ならびにチモシンαからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体または抗体断片は、ターゲットに結合し、前記ターゲットは、腫瘍壊死因子(TNF)分子、腫瘍壊2死因子受容体(TNFR)、成長因子受容体、血管内皮成長因子(VEGF)分子、インターロイキン1、インターロイキン4、インターロイキン6、インターロイキン11、インターロイキン12、γインターフェロン、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)、およびBlysからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可溶性受容体は、TNFα、TNFβ、およびBlysからなる群から選択されるターゲットに結合される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子導入したspPSCの不死化をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記治療用組み換え生物学的ポリペプチドまたはタンパク質は、成長ホルモン、細胞毒性生物学的製剤、およびモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2011年1月3日に出願された米国仮特許出願第61/429,409号、2011年1月10日に出願された米国仮特許出願第61/431,376号に対して優先権を主張する。前述の全出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
現在、多くの疾患を治療するために使用される多くの組み換えポリペプチドおよびタンパク質が存在する。これらの組み換えポリペプチドおよびタンパク質は全て、ヒト以外またはヒトのいずれかの一次連続2倍体細胞系を使用して商業的に製造される。例えば、一部は大腸菌等の細菌を使用して製造され、一方、他は酵母または動物由来の様々な卵巣細胞系を使用して製造される。特にグリコシル化パターンおよび他のタンパク質修飾が生物学的製剤の生物学的受容体結合親和性、生物学的活性、生体分布、もしくは薬物動態、またはレシピエント免疫認識に関して重要であるとき、細菌は一部のポリペプチドおよびタンパク質の製造に使用することができない。グリコシル化が重要な変数であるとき、現在、生物学的製剤の製造において最も一般的に使用される細胞系のうちの1つは、チャイニーズハムスターの卵巣細胞である。
【0003】
残念ながら、長期間の、または慢性療法における組み換えポリペプチドまたはタンパク質の使用の必要性は、患者の生成物に対する中和抗体の発現をもたらし得、薬物に対して患者の反応を弱め得る、または反応を無くし得る。いくつかの場合において、患者は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、およびクローン病等の疾患を日常的に治療するために使用されるEnbrel(エタネルセプトとしても知られる)、Remicaide(インフリキシマブとしても知られる)、Certolizumab、およびHumira(D2E7としても知られる)等の様々な抗TNF生物学的製剤等の、同類の別の薬物に切り替えることができる。しかしながら、一般に、1つの特定の抗TNF生物学的製剤に対する中和抗体の生成は、患者が別の抗TNF生物学的生成物に対する中和抗体を最終的に生成する素因となる。場合によっては、患者にとって代替治療がなく、そのため、この中和抗体の形成は、患者に治療選択肢を与えない。適切な治療選択肢があるときでも、同類の他の薬物に対する中和抗体を発現させる素因は、最終的に、これらの患者が治療選択肢を与えられない可能性を意味する。
【0004】
ヒト抗体により中和され得る他の生物学的生成物は、ナタリズマブまたは多発性硬化症の新たな療法であるタイサブリ、および核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)に対する完全ヒトモノクローナル抗体であるデノスマブ(骨粗鬆症および化学療法による骨折の治療に承認されており、HRTおよびホルモン避妊薬によって生じる乳癌を治療するために使用される可能性がある)を含む。アバタセプト(Abatecept)は、抗TNF療法に難治性となった関節リウマチ患者における使用に承認されているCTLA−4融合タンパク質である。その使用は新しいためアバタセプトに誘発された中和抗体についての証拠がないが、ヒト抗体の中和抗体反応を誘発する可能性もある。
【0005】
抗体および融合タンパク質系薬物以外の他のポリペプチドおよびタンパク質は、長期治療による免疫応答を引き起こすことも示されてきた。例えば、組み換えヒトエリスロポエチンは、その有効性を減少させ、稀な無形成症候群をもたらす可能性がある中和抗体形成を引き起こす。また、血友病の凝固因子療法に対する抗体の生成は、患者の25〜30%という高率にもなる。これは、凝固因子に関する一般的な問題である。癌およびB型肝炎の組み換えインターフェロンα2a療法も、治療に対する中和抗体の生成によって妨げられる。低身長の子供に関する長期成長ホルモン療法に対する不応性も問題がある。いくつかのインスリン生成物に対する中和抗体形成の報告がある。
【0006】
中和抗体を引き起こす可能性がある他の生物学的薬物は、全血、血清、血漿プール、または他の一次生物学的供給源、例えばヒトアルブミン、ヒトα1−プロテイナーゼ阻害剤、ヒト抗血友病因子/フォンビルブランド因子複合体、BabyBig ボツリヌス症の静脈注射用免疫グロブリン、C1エステラーゼ阻害剤、フィブリンシーラント、フィブリノーゲン、静脈注射用免疫グロブリン、皮下注射用免疫グロブリン、タンパク質C濃縮物、静脈注射用Rho(D)免疫グロブリン、トロンビン、フォンビルブランド因子/凝固VIII因子複合体を含む。
【0007】
組み換えポリペプチドおよびタンパク質は、生物学的治療の時間枠、反復療法の間隔、生物学的製剤のアミノ酸組成物、ならびにグリコシル化、メチル化、ニトロシル化、シアル化、リン酸化、硫酸化、プレニル化、セレン化(selenation)、ユビキチン化、ビタミン依存修飾、タンパク質結合会合、アシル化、糖化、3次元構成、および超らせん等の生物学的製剤に対する修飾を含む、複数の特徴に基づく免疫応答および中和抗体生成を引き起こす。よって、生物学的生成物で治療される動物において、減少した抗原性レベルを有するポリペプチドタンパク質生成物を生成する方法の必要性が存在する。
【0008】
本明細書に引用される全ての参照文献の教示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明の詳細な説明】
【0009】
[発明を実施するための形態]
本発明は、合成により生成された多能性幹細胞(spPSC)または内因性多能性幹細胞(ePSC)を遺伝子導入または形質転換することにより、ポリペプチドまたはタンパク質、核酸、ウイルス、およびワクチン等の生物学的製剤を生成するための方法を提供することによりこの必要性を満たす。これらの細胞は、治療される種に由来し、所望の生物学的製剤を発現し、遺伝子導入された、または形質転換されたspPSCまたはePSCによる生物学的生成物の発現を誘発するベクターを遺伝子導入される。
【0010】
本発明は、組み換えポリペプチドまたはタンパク質を生成するための方法をさらに提供し、成体細胞からspPSCを生成する、または動物のePSCを単離することと、ポリペプチドもしくはタンパク質が前述の幹細胞によって発現する条件下で、前述のspPSCまたはePSCを、前述のポリペプチドもしくはタンパク質をコードする核酸で遺伝子導入する、または形質転換することとを含む。
【0011】
本発明の代替的な実施形態では、組み換えポリペプチドまたはタンパク質を投与される個人と同じ民族の細胞から、spPSCは生成され、またはePSCは単離される。異なる民族は、異なるグリコシル化パターン、および集団ごとに異なる多型を有し得る。民族は、同じ血液型または組織型を有する集団である。よって、本発明によると、組み換えポリペプチドおよびタンパク質は、ePSCまたはspPSCがポリペプチドもしくはタンパク質を投与される個人と同じ民族から単離された細胞から生成されるspPSCまたはePSCから生成される。個人は、個人が属する民族に属する細胞から、spPSCが製造される、またはePSCが単離されるspPSCまたはePSCから生成される組み換えポリペプチドもしくはタンパク質を投与される。
【0012】
本発明は、ポリペプチドもしくはタンパク質を個々の動物に投与する方法をさらに提供し、前述の動物の前述の細胞から誘発した多能性幹細胞(iPSC)等のspPSCを生成する、またはePSCを単離することと、ポリペプチドもしくはタンパク質が前述の多能性幹細胞によって発現する条件下で、前述のspPSCもしくはePSCを、前述のポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸で遺伝子導入する、または形質転換することと、前述のポリペプチドもしくはタンパク質を前述の誘発した多能性幹細胞から単離することと、前述の単離したポリペプチドもしくはタンパク質を前述の個人に投与することとを含む。
【0013】
本発明は、ポリペプチドまたはタンパク質治療薬を個別生成するための方法を提供し、それによってspPSCまたはePSCを商業的に実現可能かつ有用なものにする。本発明は、長期もしくは慢性使用のためのポリペプチドまたはタンパク質において一般的に生じる中和抗体形成の問題を克服するために、患者特異的ポリペプチドまたはタンパク質を製造するための患者特異的spPSCまたはePSCの作製方法に関する。患者は、あらゆる動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトであり得る。本発明は、所望の核酸またはウイルスが生成される条件下で、spPSCまたはePSCをベクターで遺伝子導入する、または形質転換することからなる、核酸もしくはウイルスを生成するための方法も提供する。
【0014】
さらに、本発明は、治療的使用のための密接に一致する翻訳後修飾された生物学的製剤を生成するために、患者特異的、および器官または細胞型特異的細胞系を誘導するための方法を提供する。患者特異的幹細胞は、SCNT、誘発した再プログラム化、単為生殖、またはANT−OAR再プログラム化法を使用して誘導されるか、またはターゲット患者から単離され得る。よって、誘導または単離された多能性幹細胞は、目的の治療薬を発現させるために、標準的な分子バイオテクノロジー手順を使用して、例えば挿入またはエピソーム発現ベクターまたは相同組み換え法を使用して遺伝的に修飾され得る。遺伝的に修飾された細胞系は、培養物中で増殖され、生成された生物学的製剤の貯蔵寿命に基づき計画されるであろう周期的な生物学的製剤の生成作業のために保存される(実施例2)。別の方法としては、誘導された患者特異的幹細胞は、培養物中で、通常最高レベルの所望の治療用タンパク質を発現する細胞型に分化され、次いで生物学的製剤の製造のために使用され得る。分化は、それぞれの生成作業に関して実行されるか、または大規模で行われ、分化された患者特異的細胞系は、生成された治療薬の貯蔵寿命に基づき、後続の生成作業のために保存される(実施例3)。
【0015】
加えて、グリコシル化パターンおよび他の翻訳後修飾は、組織および細胞型によって異なることが知られているため、患者特異的幹細胞系は、器官もしくは生物学的製剤を内因的に発現する細胞型の中から単離された成体もしくは体細胞から調製され得る。例として、次いで、SCNT、PGA、ANT−OAR、または再プログラム化技法が生物学的製剤の生成のための多能性細胞系を誘導するために適用され得る。よって、誘導または単離された多能性幹細胞は、目的の治療薬を発現させるために、標準的な分子バイオテクノロジー手順を使用して遺伝的に修飾され得る。遺伝的に修飾された細胞系は、培養物中で増殖され、生成された生物学的製剤の貯蔵寿命に基づき計画されるであろう周期的な生物学的製剤の生成作業のために保存される(実施例4を参照)。再プログラム化細胞(iPS細胞)の「記憶」特性をさらにうまく利用して、患者および組織もしくは細胞型特異的iPS細胞は、内因性翻訳後修飾を可能にする細胞系をより完全に作製するために、その起始細胞型に分化し戻るように誘発され得る。iPS細胞は、元の単離された細胞型に再分化する前に、または元の細胞型に再分化した後に目的の治療薬を発現するように遺伝的に修飾され得る(実施例5を参照)。
【0016】
例えば、成長ホルモンは、通常、下垂体前葉内のソマトトロピン細胞によって最も高度に生成され、胎盤(栄養膜)内の細胞ならびに舌および外陰または肛門皮膚で高度に発現する。Human Protein Atlasによると、第VIII因子タンパク質発現は、腎臓内の尿細管細胞で高く、多組織および細胞型により適度に発現する。抗体は、典型的に、脾臓および他のリンパ器官の胚中心で成熟するB細胞によって生成される。高レベルの抗体依存細胞媒介細胞毒性(ADCC)を有する抗体の治療薬の生成は、製造細胞系に存在するIgG1亜型抗体の2等分位置にN−アセチルグルコサミン(GlcNac)を置くことができるGDP−D−マンノース−4,6−デヒドラターゼ(GMD)のレベルにより決定される(J Biol Chem.,Vol.273,pp.14582−14587,1998およびBMC Biotechnol.,7:84−97(2007)。CHO製造細胞系を使用する高ADCC活性を有する抗体の生成は、常に最適ではない(J Biol Chem.278:3466−3473,2003)。本発明は、製造した抗体、融合タンパク質、および細胞の細胞毒性生物学的製剤の最適なADCC活性に関する新規哺乳類細胞系を提供する。
【0017】
患者特異的細胞系からの発現レベルを最適化するために、高レベルの生物学的製剤の生成と関連することが知られる転写因子が、目的の遺伝子を用いて同時導入される。例えば、高レベルのPit−1発現は、細胞型において高プロラクチン発現をもたらし、一方で、成長ホルモンの発現を遮断または防止することができる(Genes Dev,3:946−958 1989)。
【0018】
モノクローナル抗体の生成は、中華人民共和国のSino Biological Incによって開発されたもの等の系、モルフォジェニクス(morphogenics)(Proc Natl Acad Sci,103:3557−3562,2006)、または他の標準的なバイオテクノロジー法を使用して、遺伝子コドンを最適化することによって強化され得る。
【0019】
<合成により生成された多能性幹細胞の生成>
本発明の個別生物学的製剤を生成するために、あらゆる種類の合成により生成された多能性幹細胞を使用することができる。2つの主なカテゴリーは、誘発または再プログラム化した多能性幹細胞(iPSC)と、核移植(SCNT)、ANT−OAR、および単為生殖によって生成された幹細胞である。
【0020】
細胞核移植(SCNT)は、成体体細胞の核を用いて除核卵を注入し、調製されたレシピエントの子宮内に移植して、完全な核遺伝クローンを得る出生をもたらす技術である。加えて、多能性幹細胞は培養物中でSCNT法から誘導された(Cell Reprogram.12:105−113,2010およびGenome Res.,19:2193−2201,2009)。
【0021】
改変核移植卵母細胞補助再プログラム化(ANT−OAR)は、SCNTに類似する技術であるが、ドナー核は、レシピエント卵内に注入される前に遺伝的に改変されるため、ANT卵母細胞の分化および完全な生物形成が防止される(Genome Res.19:2193−2201,2009)。
【0022】
多能性幹細胞を生成するために、帯なし核移植、単為生殖活性化等の技術を使用する単為生殖(PGA)も使用され、SCNTおよび単為生殖(PGA)等のクローン技術も再プログラム化多能性幹細胞を生成するために使用されてきた(Cell Reprogram.,12:105−113,2010およびNature,450:497−502 2007)。
【0023】
これらの多能性幹細胞は、多少の長期不定期間の間培養物中で維持することができ、組み換えタンパク質、DNA、およびウイルス等の生物学的製造の供給源となり得る。
【0024】
<誘発したまたは再プログラム化したspPSC>
誘発した多能性幹細胞は、特定の幹細胞遺伝子およびタンパク質の発現、クロマチンメチル化パターン、倍加時間、胚様体形成、奇形腫形成、実行可能なキメラ形成、ならびに発生能および分化能(differentiability)等の多くの点で、胚幹(ES)細胞等の天然の多能性幹細胞に類似する。
【0025】
一般にiPS細胞またはiPSCと省略される誘発した多能性幹細胞は、特定の遺伝子の「強制的」発現を誘発することにより、非多能性細胞、典型的には成体の体細胞から人工的に誘導された多能性幹細胞の種類である(Nature Reports Stem Cells.2007)。
【0026】
誘発した多能性幹細胞(iPSC)は、特定の幹細胞関連遺伝子を非多能性細胞内に遺伝子導入することにより生成される。誘発した多能性幹細胞は、典型的に、特定の幹細胞関連遺伝子を成体の線維芽細胞等の非多能性細胞内に遺伝子導入することによって誘導される。遺伝子導入は、典型的に、レトロウイルスまたはレトロトランスポゾン等のウイルスベクターを通して達成される。他の遺伝子が誘導の効率を強化することが示唆されているが、遺伝子導入された遺伝子は、主要転写調節因子Oct−3/4(Pou5f1)およびSox2を含む。3〜4週間後、少数の遺伝子導入された細胞は、形態学的および生化学的に多能性幹細胞に類似し始め、典型的に、形態選択、倍加時間を通して、またはレポーター遺伝子および抗生物質選択を通して単離される。
【0027】
胚性幹細胞由来の線維芽細胞および成体の線維芽細胞ならびに他の細胞は、胚性幹細胞との融合により(Cell.126:652−655,2006およびStem Cell Rev,2:331−340,2006)、レトロウイルス遺伝子導入法を使用して4つの遺伝子を付加することにより(Cell.126:663−676,2006)、単一カセットまたは双シストロン性レンチウイルス遺伝子導入法により[Stem Cells.,27:543−549,2009およびStem Cells.,27:1042−1049,2009]、および多能性が要求される転写因子の内因性刺激により(Stem Cells.,27:3053−3062,2009)多能性状態に再プログラム化されてきた。多能性の誘発は、ゲノムのメチル化またはポリアデニル化状態を修飾することにより(PLoS One.,4:e8419,2009)、マイクロRNA(Dev Biol.,344:16−25,2010)、要求される転写因子の小分子活性化因子、後成的な再プログラム化により(Regen Med.,2:795−816,2007)、タンパク質に基づく再プログラム化により(Blood 116:386−395,2010)、培養物中の多能性細胞からの培養上清または細胞抽出物の添加により、多能性遺伝子を再活性化するための化学もしくは放射または他の手段の遺伝的突然変異により、および成長因子もしくはサイトカインまたは内因性多能性状態を誘発する、または維持する細胞シグナル伝達部分の付加により達成することもできる。
【0028】
細胞を多能性状態に再プログラム化するためのレトロウイルスの使用は、免疫不全の遺伝子療法試験を想起する危険を示す。Cre−lox等の切除術は、良好な再プログラム化後にレトロウイルスを排除するために使用され、piggyBacトランスポゾン法は、レトロウイルスの必要性を完全に排除する(Curr Opin Biotechnol.,20:516−521,2009)。
【0029】
ヒトiPSCは、レトロウイルス系を用いた4つの中枢遺伝子であるOct3/4、Sox2、Klf4、およびc−Mycを使用して、ヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換することにより生成されてきた。ヒトiPSCはまた、レンチウイルス系を使用して、OCT4、SOX2、NANOG、および異なる遺伝子LIN28を使用して生成されてきた。アデノウイルスもマウスの皮膚および肝細胞のDNA内に4つの必須の遺伝子を移送するために使用され、胚性幹細胞と同一の細胞をもたらした(Science322(5903):945−949,2008)。成体細胞のiPSCへの再プログラム化は、いずれのウイルス遺伝子導入系を全く用いずにプラスミドを介して達成することもできる(Science 322(5903):949−953,2008)。iPSCは、piggy bacトランスポゾン系、ミニサークル(mini circle)技術、タンパク質刺激または調整培地刺激再プログラム化を使用して生成されてきた。
【0030】
iPS細胞の生成は、誘発に使用された遺伝子に非常に依存する。Oct−3/4およびいくつかのSox遺伝子ファミリー(Sox1、Sox2、Sox3、およびSox15)は、その不在が誘発を不可能にする誘発プロセスに関与する重要な転写調節因子と同定された。しかしながら、誘発の効率を増加させるいくつかのKlfファミリー(Klf1、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリー(C−myc、L−myc、およびN−myc)、Nanog、およびLIN28を含むさらなる遺伝子が同定された。
【0031】
○ Oct−3/4(Pou5f1)(Bioclone,San Diego CAから入手可能なcDNA)(Nucleic Acids Res.20(17):4613−20,1992):Oct−3/4は、八量体(「Oct」)転写因子のファミリーのうちの1つであり、多能性の維持に重要な役割を果たす。卵割球および胚性幹細胞等のOct−3/4細胞におけるOct−3/4の不在は、自発的な栄養膜分化をもたらし、よって、Oct−3/4の存在は、胚性幹細胞の多能性および分化の可能性をもたらす。Oct−3/4の類縁物であるOct1およびOct6を含む「Oct」ファミリーの他の様々な遺伝子は、誘発を引き起こすことができず、よって、誘発プロセスに対してOct−3/4の排他性を示す。
【0032】
○ Soxファミリー:Soxファミリーの遺伝子は、多能性幹細胞でのみ発現するOct−3/4とは対照的に、多能性および単能性幹細胞と関連するが(Dev Biol.227(2):239−55,2000)、Oct−3/4に類似して、多能性の維持と関連する。Sox2(Bioclone,San Diego,CAから入手可能なcDNA)は、誘発に使用された最初の遺伝子であったが(Mamm.Genome 5(10):640−642,1995)、Soxファミリーの他の遺伝子も誘発プロセスにおいて機能することが分かった。Sox1(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)は、Sox2と類似する効率でiPS細胞を生じ、Sox3遺伝子(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なヒトcDNA)、Sox15、およびSox18も、効率は減少するが、iPS細胞を生成する。
【0033】
○ Klfファミリー:Klfファミリーの遺伝子のKlf4は、マウスiPS細胞の生成因子である。Klf2(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)およびKlf4(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)は、iPS細胞の生成を可能にする因子であり、関連遺伝子のKlf1(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)およびKlf5(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)も、効率は減少するが、iPS細胞の生成を可能にする。
【0034】
○ Mycファミリー:Mycファミリーの遺伝子は、癌に関与する癌原遺伝子である。C−myc(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)は、マウスiPS細胞の生成に関与する因子である。しかしながら、c−mycは、ヒトiPS細胞の生成に不要であり得る。iPS細胞の誘発における「myc」ファミリーの遺伝子の使用は、c−myc誘発したiPS細胞を移植されたマウスの25%が致命的な奇形腫を発症したため、臨床療法としてのiPS細胞の最終的状況に支障をきたす。N−myc(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)およびL−mycは、c−mycの代わりに、類似する効率で誘発することが確認されている。
【0035】
○ Nanog:(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)胚性幹細胞において、Oct−3/4およびSox2と共にNanogは、多能性の促進に必要である(Cell113(5):643−55,2003)。
【0036】
○ LIN28:(Bioclone,Inc.,San Diego,CAから入手可能なcDNA)LIN28は、分化および増殖と関連する胚性幹細胞および胚性癌細胞で発現するmRNA結合タンパク質である(Dev Biol258(2):432−42,2003)。
【0037】
<合成により生成された多能性幹細胞の同一性>
生成したspPSCは、以下の点において、天然に単離された多能性幹細胞(マウスおよびヒトの胚性幹細胞(ESC)、それぞれmESCおよびhESCなど)と非常に類似しており、よって、天然に単離された多能性幹細胞に対するspPSCの同一性、確実性、および多能性を裏付ける。
【0038】
細胞の生物学的特性:
○ 形態学:iPSCは、形態学的にESCに類似する。それぞれの細胞は、形状が丸く、大型の核小体、およびわずかな細胞質を有する。iPSCのコロニーも、ESCに類似する。ヒトiPSCはhESCに類似し、縁が鋭利で平らな密集したコロニーを形成し、マウスiPSCはmESCに類似し、hESCよりあまり平らではなく、より凝集したコロニーを形成する。
【0039】
○ 成長特性:倍加時間および有糸分裂活性は、幹細胞がその定義の一部として自己再生でなければならないため、ESCの基礎である。iPSCは、有糸分裂的に活性であり、ESCと等しい速度で活発に自己再生し、増殖し、分裂する。
【0040】
○ 幹細胞マーカー:iPSCは、ESC上で発現するのと同じ細胞表面抗原マーカーを発現する。ヒトiPSCは、hESCに特異的なマーカーを発現し、これにはSSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60、TRA−1−81、TRA−2−49/6E、およびNanogが含まれる。マウスiPSCは、SSEA−1を発現したが、SSEA−3またはSSEA−4を発現せず、mESCと類似する。
【0041】
○ 幹細胞遺伝子:iPSCは、未分化ESCにおいて発現する遺伝子を発現し、これにはOct−3/4、Sox2、Nanog、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4、およびhTERTが含まれる。
【0042】
○ テロメラーゼ活性:テロメラーゼは、約50細胞分裂のヘイフリック限界により制限されない細胞分裂を維持するために必要である。hESCは、自己再生および増殖を維持するために高いテロメラーゼ活性を発現し、iPSCも高いテロメラーゼ活性を示し、テロメラーゼタンパク質複合体において必要な構成要素であるhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)を発現する。
【0043】
多能性:iPSCは、ESCに類似する様式で、完全に分化した組織に分化することができる。
【0044】
○ 神経分化:iPSCは、ニューロン、発現βIIIチューブリン、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、DAT、ChAT、LMX1B、およびMAP2に分化することができる。カテコールアミン関連酵素の存在は、hESCと同様、iPSCがドーパミン作動性ニューロンに分化可能であり得ることを示し得る。幹細胞関連遺伝子は、分化後下方制御される。
【0045】
○ 心臓分化:iPSCは、自発的に拍動し始める心筋細胞に分化することができる。心筋細胞は、TnTc、MEF2C、MYL2A、MYHCβ、およびNKX2.5を発現した。幹細胞関連遺伝子は、分化後下方制御された。
【0046】
○ 奇形腫形成:免疫不全マウスに注入されたiPSCは、9週間後に、自発的に奇形腫を形成する。奇形腫は、内胚葉、中胚葉、および外胚葉の3つの胚葉に由来する組織を含む多系列の腫瘍であり、これは、典型的に単一の細胞型のみのものである他の腫瘍と異なる。奇形腫形成は、多能性の画期的な試験である。
【0047】
○ 胚様体:培養物中のhESCは、「胚様体」と呼ばれるボールの様な胚の様な構造を自発的に形成し、これは、有糸分裂的に活性で分化しているhESCのコアと、3つ全ての胚葉から完全に分化した細胞の周縁からなる。iPSCは、胚様体も形成し、周縁分化細胞を有する。
【0048】
○ 4倍体相補性:4倍体胚盤胞内に注入されたマウス胎児線維芽細胞からのiPS細胞(それ自体は胚体外組織のみを形成することができる)は、成功率は低いが、全非キメラ受精マウスを形成することができる。4倍体相補性アッセイは、生物学において、2つの哺乳類胚の細胞を組み合わせて新しい胚を形成する技法である。遺伝的に修飾された生物を構築するため、胚発達における特定の突然変異の因果関係を研究するため、および多能性幹細胞の研究のために使用される。
【0049】
誘発した多能性幹細胞(iPS)は、腸管腸間膜細胞(Cell Reprogram.,12:237−247,2010)、網膜色素上皮細胞(Stem Cells.,28:1981−1991,2010)、羊膜細胞(Differentiation.,80:123−129,2010)、線維芽細胞(J Vis Exp.,8:1553,2009)、成体神経細胞(Nature.,Vol.454,pp.646−650,2008)、歯髄(J Dent Res,Vol.89,pp.773−778,2010)、脂肪細胞(Cell Transplant.,19:525−536,2010)、卵巣(J Reprod Dev.,56:481−494,2010)、および胚、胎児、および成体供給源からの他の多くの細胞から生成されている。iPS細胞は、理論的に、あらゆる細胞型から生成され得るが、身体の全220の細胞型は、まだ系統的に検証されていない。最近のいくつかの研究は、iPS細胞がその起始細胞型に関する「記憶」を維持することを示した。これは、iPS細胞が培養物中で時折自発的に最も容易にその起始細胞型に好んで再分化すると理解される。
【0050】
<内因性幹細胞の単離>
内因性多能性幹細胞(ePSC)を含む幹細胞は、その表面上に発現する特定の抗原を特徴とし、それによって単離され得る。多能性幹細胞は、他の方法の中でも、段階特異的胚抗原(SSEA)、転写因子Oct4およびNanogならびに他のマーカーの発現を特徴とし得る。今まで単離されてきた内因性多能性幹細胞の主な型は、非常に小さい胚様(VSEL)幹細胞である。
【0051】
VSELは小さく(マウスにおいては直径3〜5ミクロン、ヒトに関しては直径3〜7ミクロン)、核対細胞質比は高い。VSELは、SSEA1、Oct4、Nanog、Rex1および他の多能性幹細胞マーカー、ならびにCD133、CD34、AP、cMet、LIF−R、およびCXCR4に関して陽性である(J Am Coll Cardiol 53(1):10−20,2009、Stem Cell Rev4:89−99,2008)。これらはCD45に関して陰性である。VSELはHSCより小さく(3〜6vs.6〜8μm)、核/細胞質比がより高い。VSEL核は大きく、開口型クロマチンを含み、多数のミトコンドリアを有する細胞質の細い縁によって囲まれる。したがって、その形態は、原子的なPSCと一致する。
【0052】
PBにおける循環VSELの絶対数は、例外的に低く(定常状態条件下の1mLの血液中に1〜2細胞)、よって、特別なフローサイトメトリープロトコルがその同定および単離に適用されなければならない。VSELを同定するために使用される表現型マーカーは、CD45(マウスおよびヒト)の陰性発現、Sca−1(マウス)、CXCR4、CD133、およびCD34(マウスおよびヒト)の陽性発現、前駆体幹細胞マーカー(つまり、Oct−4、Nanog、およびSSEA)に関して陽性を含み、胚盤葉上層/生殖系幹細胞のいくつかのマーカー特徴を発現する。
【0053】
VSELの蛍光活性化細胞選別単離のみを利用することにより、100mLのUCB中に存在する全VSELの選別は、4作業日内で完了し得る。より効率的で経済的な3工程単離プロトコルは、Lin−/CD45−/CD133thorn UCB−VSELの初期数の60%の回収率を可能にする。プロトコルは、低張塩化アンモニウム溶液中への赤血球の溶解、免疫磁気ビーズによるCD133thorn細胞選択、およびサイズマーカービーズ制御を伴うFACSによるLin−/CD45−/CD133thorn細胞の選別を含む。単離した細胞は、小さい高度に原始的なLin−/CD45−/CD133thorn細胞のOct−4thornおよびSSEA−4thorn集団に高度に濃縮される。
【0054】
VSELを選別する別の方法は、いくつかの表面マーカーの存在および細胞の直径に基づく。簡潔に、初期工程は、有核細胞の画分を得るための赤血球の溶解である。赤血球溶解緩衝液は、フィコール遠心分離の代わりに使用され、これは、後者の手法が非常に小さい細胞の集団を除去する可能性があるためである。続いて、細胞をSca−1(マウスVSEL)またはCD133(ヒトVSEL)に対する抗体、全血球増殖性抗原(CD45)、造血系列マーカー(lin)、およびCXCR4で染色し、多重パラメータ生減菌細胞選別システム(MoFlo, Beckman Coulter;FACSAria,Beckton Dickinson)を使用して選別する。この方法は、約95%のVSELを含む直径2〜10μmの事象を含むように、「拡張リンパ球ゲート」を使用する。
【0055】
内因性幹細胞は、骨髄、全血、さい帯血、脂肪組織、または他の供給源からの単核球画分内に含まれるか、またはそれらは、CD34、CD133、CD105、CD117、SSEA1−4、色素排除、もしくは他の特定の幹細胞抗原の選択により精製され得る。幹細胞は、フィコールハイパックまたは他の商業的に利用可能な勾配を使用して密度勾配遠心分離により、全血、骨髄、さい帯血、脂肪組織、嗅粘膜からの組織剥離物、およびさい帯血等の単一細胞懸濁液中に解離され得る他の幹細胞供給源から単離され得る。幹細胞は、そのような手順から得られる単核球の画分から回収され得る。別の方法としては、幹細胞は、密度勾配遠心分離後に他の画分内で発見され得る(Stem Cells Dev.2011[印刷前の電子出版])。例えば、さい帯血は、PBS中に1:1に希釈され、Histopaque1077(Sigma)上に慎重に重ねられ、室温で30分間、1500rpmで遠心分離され得る。示されるように得られた層は、幹細胞単離のためにさらに処理され得る。層1は血小板層であり、層2は単核球を含むバフィーコートであり、層3はフィコール層であり、層4はVSELも含む赤血球ペレット層である。層1、2、および3が回収され、FBSを含む、または含まないDMEM F12等の適切な培地で希釈され、細胞ペレットを得るために再度遠心分離され得る。層4は、DMEM F12等の適切な培地で希釈され、標準的な卓上遠心分離器で、室温で15分間、800rpmで遠心分離され得る。幹細胞は、上記に概説するフローサイトメトリー法の種類の後に、主に層2(バフィーコート)および層4(RBCペレット)から回収され得る。図1は、全血の勾配遠心分離によって得られる典型的な層の図を示す。1は血小板を示す。2はMNCおよび幹細胞を有するバフィーコートを示す。3はフィコールを示す。4はRBCペレットおよび幹細胞を示す。
【0056】
加えて、グリコシル化パターンおよび他の翻訳後修飾は、組織および細胞型によって異なってもよいため、患者特異的幹細胞系は、器官または生物学的製剤を内因的に発現する細胞型の中から単離された成体もしくは体細胞から調製され得る。Rajpert−De Meyts E,et al.“Changes in the profile of simple mucin−type O−glycans and polypeptide GalNAc−transferases in human testis and testicular neoplasms are associated with germ cell maturation and tumour differentiation”.,Virchows Arch,Vol.451:805−814 (2007)を参照。Pevalova M.,et al.“Post−translational modifications of tau protein”.Bratisl Lek Listy,107:346−353(2006)を参照。
【0057】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
<不死化spPSCおよびePSCの生成>
本発明の好ましい実施形態では、spPSCおよびePSCは、典型的にはポリオーマサルウイルス40(SV40)を使用して、好ましくは大型T抗原の非ウイルス誘発を通して不死化される。Rose,M.R.et al.,(1983).“Expression of the Large T Protein of Polyoma Virus Promotes the Establishment in Culture of “Normal” Rodent Fibroblast Cell Lines”.PNAS 80:4354−4358(1983)およびHofmann,M.C.et al.“Immortalization of germ cells and somatic testicular cells using the SV40 large T antigen”Experimental Cell Research,201:417−435(1992)を参照。
【0058】
<合成により生成された、好ましくは誘発した多能性幹細胞、より好ましくは単離した内因性多能性幹細胞を使用した実施形態の概要>
好ましい実施形態において、
1.内因性多能性幹細胞が単離される。
【0059】
2.ePSCが不死化される。
【0060】
3.不死化したePSCは、非ウイルス技術を使用して、目的の遺伝子、ウイルス、または核酸を遺伝子導入される。
【0061】
4.遺伝子導入した不死化ePSCは、次いで、より効率的な様式で核酸生成物を発現することができるように、生殖系細胞、好ましくは卵巣細胞に分化するように誘発される。
【0062】
5.分化した細胞は、ここで、目的の核酸を含む、前に遺伝子導入したベクターから目的の核酸生成物を発現するように誘導され得る。
【0063】
別の好ましい実施形態では、
1.体細胞が単離される。
【0064】
2.体細胞が、誘発した多能性幹細胞(iPS細胞)に形質転換される。
【0065】
3.iPS細胞が不死化される。
【0066】
4.不死化したiPS細胞は、目的の遺伝子、ウイルス、または核酸を含むベクターを遺伝子導入される。
【0067】
5.遺伝子導入した不死化iPS細胞は、次いで、より効率的な様式でタンパク質を発現することができるように、体細胞に再分化するように誘発される。
【0068】
6.再分化した細胞は、ここで、目的の遺伝子を含む、前に遺伝子導入したベクターから目的のタンパク質を発現するように誘発され得る。
【0069】
さらにより好ましい実施形態では、
1.内因性多能性幹細胞が単離される。
【0070】
2.不死化したePSCは、非ウイルス技術を使用して、目的の遺伝子、ウイルス、または核酸を遺伝子導入される。
【0071】
3.遺伝子導入した不死化ePSCは、次いで、より効率的な様式で核酸生成物を発現すること発ができるように、生殖系細胞、好ましくは卵巣細胞に分化するように誘発される。
【0072】
4.分化した細胞は、ここで、目的の核酸を含む、前に遺伝子導入したベクターから目的の核酸生成物を発現するように誘導され得る。
【0073】
本発明の好ましい実施形態を達成するための方法は、当業者に周知である。
【0074】
代替えの実施形態では、ePSCまたはspPSCは、不死化される前に目的の核酸を含むベクターを遺伝子導入され得る。Du C. et al.“Generation of Variable and Fixed Length siRNA from a novel siRNA Expression Vector”,Biomed.&Biophys.Res.Comm.345:99−105(2006)、2008年11月21日に出願されたYork Zhuの米国特許出願第12/313,554号を参照。あるいは、ePSCまたはspPSC細胞は、再分化するように誘発され得、次いで、細胞は不死化され得、不死化した再分化細胞は、目的の核酸を含むベクターを遺伝子導入され得る。別の可能性は、ePSCまたはspPSC細胞が再分化されるように誘導され得、再分化した細胞は目的の核酸を遺伝子導入され得、再分化した遺伝子導入した細胞が不死化され得る。
【0075】
ePSCまたはspPSC細胞が再分化前に培養物中で、好ましくは自己ヒト血清および幹細胞因子もしくは白血病阻害因子を含む細胞培養培地中で増殖されることが好ましい。
【0076】
生成されるポリペプチドまたはタンパク質は、いずれのポリペプチドまたはタンパク質であり得る。特に関心があるものは、エリスロポエチン、第VIII因子、第IX因子、トロンビン、抗体もしくは抗体断片、αインターフェロン、インターフェロンα2Aおよび2B(米国特許第4,810,645号および同第4,874,702号を参照)、βインターフェロン(米国特許第4,738,931号を参照)、コンセンサスインターフェロン(米国特許第5,661,009号を参照)、成長ホルモン、抗血友病因子、G−CSF、GM−CSF、可溶性受容体、可溶性受容体の免疫グロブリン(Ig)の定常領域への融合等の融合タンパク質(米国特許第5,155,027号を参照)、TGF−β、骨形態形成タンパク質(BMP)、TGFα、インターロイキン2、β−グルコセレブロシダーゼもしくはその類似体、α1−プロテイナーゼ阻害剤、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子、イミグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ラロニダーゼ、アルグルコシダーゼα、アルグルコシダーゼα、サイロトロピンα、およびチモシンαからなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質である。
【0077】
本発明のプロセスにより、あらゆる抗体または抗体断片が生成され得る。特に関心があるものは、ターゲットに結合するそれらの抗体または抗体断片であり、前述のターゲット
は、腫瘍壊死因子(TNF)分子、成長因子受容体、血管内皮成長因子(VEGF)分子、インターロイキン1、インターロイキン4、インターロイキン6、インターロイキン11、インターロイキン12、γインターフェロン、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)、およびBlysからなる群から選択される。
【0078】
<幹細胞の分化の誘発>
目的のタンパク質の生成を最適化するために、遺伝子導入されたePSCまたはspPSC細胞は、体細胞に分化するように誘発されるべきである。
【0079】
代替えの実施形態では、ePSCまたはspPSC細胞の集団が増殖され得、分化が誘発され得、次いで、分化した細胞が、目的の核酸を遺伝子導入され得る。幹細胞は、細胞生物学および細胞分化の分野の者に公知である他の方法の中でも、様々な成長因子を培養物に添加することにより(Blood.,85:2414−2421,1995)、培養培地中の栄養素を変更することにより、酸素分圧(BMC Cell Biol.11:94,2010)もしくは温度等の培養条件を操作することにより、または幹細胞を様々な細胞外マトリックス上で培養することにより、培養物中で体細胞型に分化するように誘発され得る。例えば、レチノイン酸、TGF−β、骨形態形成タンパク質(BMP)、アスコルビン酸、およびβ−グリセロリン酸塩は、骨芽細胞の生成をもたらし、インドメタシン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、インスリン、およびトリヨードサイロニン(T3)は、脂肪細胞の生成をもたらし、αFGF、βFGF、ビタミンD3、TNF−β、およびレチノイン酸は、筋細胞の生成をもたらす(CARDIAC−DERIVED STEM CELLS.(国際公開第1999/049015号)1998年3月)。生殖細胞は、単層培養、胚様体(EB)の形成、BMP4生成細胞との共凝集、および精巣もしくは卵巣細胞調整培地の使用、または組み換えヒト骨形態形成タンパク質(BMP)を用いたEB形成を使用して、多能性幹細胞から生成されている(PLoS One.2009;4(4):e5338)。生殖細胞マーカー遺伝子は、ZNFドメインを伴う1を含むPRドメイン(PRDM1、BLIMP1としても知られる)、14を含むPRドメイン(PRDM14)、タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ5(PRMT5)、DPPA3、IFITM3、GDF3、c−KIT、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)受容体4(CXCR4)、NANOS1−3、DAZL、VASA、PIWIファミリー遺伝子(PIWIL1およびPIWIL2、それぞれ、ヒトにおいてHIWIおよびHILIとしても知られる)、Mut−L Homologue−1(MLH1)、シナプトネマ複合タンパク質1(SCP1)、およびSCP3を含む。得られた生殖細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞および他の現在使用されている製造細胞系の使用に類似して、目的の遺伝子またはタンパク質生成物を発現するように遺伝的に修飾され得る。様々な段階の幹細胞から様々な体細胞系を得るための分化戦略は、幹細胞生物学の分野の者に周知である。
【0080】
患者特異的細胞系からの発現レベルを最適化するために、高レベルの生物学的製剤の生成と関連することが知られる転写因子が、目的の遺伝子を用いて同時導入される。例えば、高レベルのPit−1発現は、細胞型において高プロラクチン発現をもたらし、一方で、成長ホルモンの発現を遮断または防止することができる(Genes Dev,3:946−958 1989)。
【0081】
モノクローナル抗体の生成は、Sino Biological Incによって開発されたもの等の系、モルフォジェニクス(morphogenics)、または他の標準的なバイオテクノロジー法を使用して、遺伝子コドンを最適化することにより強化され得る。
【0082】
本発明によると、組み換えポリペプチドおよびタンパク質は、ePSCおよびspPSCにおいて生成され、spPSCおよびePSCは、動物の特定の種のいくつかの血統または民族が特定の血統または民族により生成されたポリペプチドまたはタンパク質において異なるグリコシル化パターンを有するという事実により、特定の血統または民族の細胞から生成または単離される。本発明によると、民族は、そのメンバーが共通の遺伝形質により相互に認め合う、多くの場合、祖先または同族結婚(特定の集団内での結婚の習慣、例えばアシュケナージ系ユダヤ人)からなる人の集団である。一般に、高度に生物学的に自己永続的な集団である。ポリペプチドおよびタンパク質における異なるグリコシル化パターンを有し得る民族の例は、Levinson,David(1998),Ethnic Groups Worldwide:A Ready Reference Handbook,Greenwood Publishing Groupに示されている。
【0083】
<幹細胞療法のための方法およびシステム>
本発明は、奇形腫を形成することなく、幹細胞療法を促進するための方法も含む。本発明は、本明細書において、より大きな治療利益のために、上記に定義される合成により生成された多能性幹細胞(spPSC)と呼ばれる、観察された「記憶」または再プログラム化体細胞をどのように有利に利用するかを教示する。再プログラム化の前に起始細胞型に再分化する選好を付与するspPSCの記憶は、再生医療においてspPSCの安全かつ治療的有用性を強化するための手段を提供する。
【0084】
一般的な工程
本発明は、
1.目的の体細胞、特に再生したい体細胞の単離、
2.体細胞の、合成により生成された多能性幹細胞(spPSC)、特に上述のように誘発した多能性幹細胞(iPSC)への体細胞の形質転換、
3.spPSCが体細胞の固有の後成的記憶を維持する、spPSCの集団の増殖、
4.培養物中のspPSCの、元の体細胞型を有する再分化した体細胞への再分化、および
5.細胞型が望まれる身体の領域内への再分化した体細胞の投与または送達、を伴う。
【0085】
最近のいくつかの研究は、spPSC細胞がその起始細胞型の「記憶」を維持することを示した(Stem Cells.28:1981−1991,2010)、(Nature,467(7313):285−90,2010)、(Nat Biotechnol,28,:848−855,2010)、および(Mol Hum Reprod.,16:880−885,2010)。これは、spPSCが培養物中で時折自発的に最も容易に起始細胞型に好んで再分化すると理解される。科学者および臨床科学者は、決然と、臨床療法、薬剤開発、疾患モデル、または毒性スクリーニング(Curr Opin Biotechnol.,20:516−521,2009)に有用である可能性がある多能性幹細胞の生成に重点を置き、多能性幹細胞の記憶態様が安全なヒト療法を提供する治療利点を見逃した。実際、再プログラム化多能性幹細胞の「記憶」態様に関するデータを公開した科学者は、このspPSC細胞の特性が療法に生じる限界に重点を置き、これらの細胞の治療的有用性を提供するためのこの特性の重要性を見逃した。
【0086】
spPSCの記憶態様は、複数の起源の体細胞から観察されている。例えば、一次胎児網膜上皮細胞は、OCT4、SOX2、LIN28、およびNanogのレンチウイルス発現を使用して、iPSCに再プログラム化され(Stem Cells.28:1981−1991,2010)、多能性に関する標準的な試験に合格し、それらは、奇形腫を形成し、多能性幹細胞マーカーを発現した。成長培地からの塩基性FGFの除去後、網膜spPSC系の一部が、自発的に網膜上皮細胞系列に再分化し戻った。ヒト胎児肺線維芽細胞からのspPSC、ヒト包皮線維芽細胞、またはヒトESC細胞からの5〜16%の網膜上皮細胞と比較して、自発的にヒトの胎児網膜上皮spPSC細胞から分化する約60%の細胞は、網膜上皮細胞である。しかしながら、ヒト胎児網膜上皮細胞からのspPSC細胞の3つのうちの1つは、網膜上皮細胞に分化することが全くできなかった。Kimら(Nature,467(7313):285−90,2010)は、Oct4、Sox2、Klf4、およびMycのレトロウイルス導入を使用して、加齢マウスからの骨髄前駆体細胞および真皮線維芽細胞を再プログラム化した。それらの得られた全ての幹細胞系は、ヒトサンプルに典型的に適用される基準に基づく多能性を示した。それらの再プログラム化多能性幹細胞の後の分化は、造血源が線維芽細胞源より容易に造血系列に再分化し、同様に、線維芽細胞源が造血源より容易に間葉系列に再分化したことを示した。著者は、その起始体細胞系列に好んで分化するこの傾向が、造血系列への分化、続いて再度の多能性の再プログラム化、次いでさらなる分化により一部克服され得ることも示した。例えば、神経前駆体細胞に由来する再プログラム化細胞は、造血系列に分化した後、多能性に再プログラム化され、造血コロニーの形成が、神経細胞に分化され、再プログラム化された後、造血細胞に分化された神経前駆体より高いことを示した。
【0087】
ヒト胎児神経前駆体細胞の非ウイルス性再プログラム化を使用して、再プログラム化した細胞がその起始細胞型に好んで再分化する同様の知見がなされている(PLoS One.,4:e7076−e7088,2009)。得られた再プログラム化した細胞は、いくつかの多能性のマーカー(3つ全ての生殖層に関するマーカー)を発現し、胚様体を培養物中でおよび奇形腫を形成することができたが、著者は、GeneChip分析を用いて、再プログラム化した神経前駆体細胞が神経幹細胞遺伝子の発現を一部維持したことを示した。Poloら(Nat Biotechnol,28,:848−855,2010)は、マウス尾端部由来線維芽細胞、脾臓B細胞、骨髄顆粒球、および骨格筋前駆体から多能性再プログラム化細胞を誘導した。自己分化研究は、脾臓B細胞および骨髄顆粒球再プログラム化spPSC細胞が線維芽細胞または骨格筋由来spPSC細胞より効率的に造血前駆体を生じることを示した。興味深いことに、これらの様々なspPSC細胞の連続継代は、継代16までに遺伝子およびメチル化の相違の抑止をもたらし、細胞は、次いで、より初期の継代4での結果とは対照的に、分化の効率が等しいことも示した。興味深いことに、この差次的な分化の可能性の現象は、再プログラム化した体細胞に限定されず、異なる遺伝標識を有し、特定の細胞系列に自発的に好んで分化することが分かった胚性幹細胞系においても観察されている(Nat Biotechnol.,26:313−315,2008)(Hum Reprod Update.,13:103−120,2007)(Dev Biol.,307:446−459,2007)(BMC Cell Biol,10:44,2009)。
【0088】
本発明の好ましい実施形態が図示され、説明されてきたが、上述のように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。代わりに、本発明は、続く特許請求の範囲を全面的に参照することにより決定されるべきである。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
組み換えポリペプチドまたはタンパク質を生成するための方法であって、合成により生成した多能性幹細胞(spPSC)または内因性多能性幹細胞(ePSC)を、前記ポリペプチドまたはタンパク質が前記幹細胞によって発現する条件下で、前記ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸で遺伝子導入することを含み、前記spPSCまたはePSCが動物の細胞から生成される、または単離される、方法。
[2]
前記ポリペプチドまたはタンパク質は、エリスロポエチン、第VIII因子、第IX因子、トロンビン、抗体もしくは抗体断片、αインターフェロン、インターフェロンα−2Aおよび2B、βインターフェロン、成長ホルモン、抗血友病因子、G−CSF、GM−CSF、可溶性受容体、TGF−β、骨形態形成タンパク質(BMP)、TGFα、インターロイキン2、β−グルコセレブロシダーゼもしくはその類似体、α1−プロテイナーゼ阻害剤、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子、イミグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ラロニダーゼ、グルコシダーゼα、サイロトロピンα、ならびにチモシンαからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[3]
前記抗体または抗体断片は、ターゲットに結合し、前記ターゲットは、腫瘍壊死因子(TNF)分子、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、成長因子受容体、血管内皮成長因子(VEGF)分子、インターロイキン1、インターロイキン4、インターロイキン6、インターロイキン11、インターロイキン12、γインターフェロン、核因子カッパB活性化受容体リガンド(RANKL)、およびBlysからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[4]
前記可溶性受容体は、TNFα、TNFβ、およびBlysからなる群から選択されるターゲットに結合される、[1]に記載の方法。
[5]
前記遺伝子導入したspPSCの不死化をさらに含む、[1]に記載の方法。
[7]
前記遺伝子導入し、不死化したspPSCの分化を誘発することをさらに含む、[5]に記載の方法。
[8]
前記遺伝子導入したspPSCまたはePSCの分化を誘発することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[9]
前記遺伝子導入し、分化した細胞を不死化することをさらに含む、[7]に記載の方法。
[10]
前記spPSCは、誘発された多能性幹細胞、体細胞核移植により生成された多能性幹細胞(SCNT多能性幹細胞)、改変核移植卵母細胞補助再プログラム化により生成された多能性幹細胞(ANT−OAR多能性幹細胞)、および単為生殖により生成された多能性幹細胞(PGA多能性)からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
【0089】
主に、これらの幹細胞がヒトの再生医療の療法に適切であることを願って、多能性幹細胞の様々な供給源を発見するために大量の資源(経済、知識、および労力)が注ぎ込まれてきた。残念なことに、成体VSELを除き(Stem Cell Rev4:89−99,2008)、今までに単離された全ての多能性幹細胞は、奇形腫形成、腫瘍形成、およびさらには腫瘍特性の問題のため阻まれる。したがって、過去15年ほどにわたって行われてきた経済、知識、および労力の投資を生かすために、多能性幹細胞のある程度の有用性が必要とされる。
【0090】
幹細胞は、細胞生物学および細胞分化の分野の者に公知である他の方法の中でも、様々な成長因子を培地に添加することにより(Blood85:2414−2421,1995)、培養培地中の栄養素を変更することにより、酸素分圧(BMC Cell Biol.11:94,2010)もしくは温度等の培養条件を操作することにより、または幹細胞を様々な細胞外マトリックス上で培養することにより、培養物中で体細胞型に分化するように誘発され得る。例えば、レチノイン酸、TGF−β、骨形態形成タンパク質(BMP)、アスコルビン酸、およびβ−グリセロリン酸塩は、骨芽細胞の生成をもたらし、インドメタシン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、インスリン、およびトリヨードサイロニン(T3)は、脂肪細胞の生成をもたらし、aFGF、bFGF、ビタミンD3、TNF−β、およびレチノイン酸は筋細胞の生成をもたらす(国際公開第1999/049015号)1998年3月)。様々な段階の幹細胞から様々な体細胞系を得るための分化戦略は、幹細胞生物学の分野の者に周知である。
【0091】
幹細胞療法は、多くのヒト疾患の治療のために検証され、改良されている。NIHウェブサイトwww.clinicaltrials.govに含まれる臨床試験の情報は、3000を超える幹細胞の検証を列挙している。評価中の疾患は、血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、癌、大理石骨病、再生不良性貧血、および血球減少症、鎌状赤血球疾患およびサラセミア、角膜縁幹細胞欠損、乳癌、急性心筋梗塞、冠動脈疾患、末梢血管病、心不全、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、脳卒中、脊髄損傷、神経芽細胞腫、多発性硬化症、全身性硬化症、紅斑性狼瘡、慢性創傷治癒、火傷、骨折治癒、軟骨修復、CNS腫瘍、変形性関節炎、腎不全、パーキンソン病、骨髄腫、糖尿病性足病変、肝臓および胆汁性肝硬変、拡張型心筋症、貧血、網膜色素変性症、クローン病、糖尿病性神経障害、肥満細胞症、卵巣癌、癲癇、重症筋無力症、自己免疫疾患、肉芽腫性疾患、骨壊死、肝不全、PMD疾患、リポジストロフィー、脱髄性疾患、軟骨欠損、網膜症、ループス腎炎、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、肉腫、筋炎、高血糖、黄斑変性症、潰瘍性大腸炎、筋変性等を含む。
【0092】
幹細胞は、当業者に公知の様々なマーカーを使用して単離され得る。例えば、一般的な幹細胞マーカーのリストは、http://stemcells.nih.gov/info/scireport/appendixe.asp#eiiで見つけることができる。神経幹細胞はCD133を使用して、間葉幹細胞および前駆体細胞は骨形態形成タンパク質受容体(BMPR)を使用して、造血幹細胞はCD34により、間葉幹細胞はCD34+Sca1+Lin−マーカーの組み合わせにより、造血幹細胞および間葉幹細胞はckit、Stro1、またはThy1により、神経前駆体および膵臓前駆体はネスチンにより、外胚葉、神経前駆体および膵臓前駆体はビメンチンにより、ならびに他のマーカーにより単離され得る。
【0093】
本発明は、再生医療に関して、体細胞を安全に再プログラム化し、再分化するための方法をさらに提供する。有用な体細胞は、完全に分化した体細胞、前駆体細胞、またはより原始的な幹細胞を含み得る。再生療法を必要とする器官により、より原始的な幹細胞が器官穿刺、生検、剥離、または外科的アクセスにより、大体は利用可能であり得る。より原始的な幹細胞の使用は、これらの幹細胞へのアクセスが可能である場合、好ましい。あまり好ましくないが、完全に分化した体細胞より好ましいのは、前駆体細胞の使用である。
【0094】
治療のターゲットとされる特定の器官からの体細胞の単離、これらの体細胞の再プログラム化、spPSCの固有の「記憶」が維持されると仮定する培養物中での短期間の増殖、続いて培養物中での起始細胞型への分化、その後の治療への適用は、多能性幹細胞法が腫瘍または奇形腫形成の危険を減少させながら患者を治療するために使用されることを可能にする。
【0095】
再プログラム化体細胞は、継代1から12の間で、最も好ましくは継代4で使用され得る。再プログラム化体細胞は、標準的な細胞生物学および分化法により、所望の再生のために、細胞型に分化され得る。得られた治療用細胞は、静脈内、動脈内、筋肉内、またはNOGAStarまたはMyoStar注入カテーテルもしくは他の承認されたカテーテル注入装置等のカテーテルを含み得る標準的な注入法を使用する他の注入法により投与され得る。別の方法としては、治療用細胞は、低侵襲性またはより侵襲性の外科手術法によりターゲット組織に施されてもよい。治療用細胞は、0〜15%、より好ましくは5%の自己ヒト血清アルブミンを含む緩衝組成物において投与され得る。中枢神経系の疾患の治療において、治療用細胞は、好ましくは自己脳脊髄液を使用して緩衝される。治療用細胞はまた、コラーゲン、フィブリノーゲン、または他の細胞外マトリックスもしくは細胞外マトリックスの組み合わせ等の足場の使用を通して、または細胞を適所に保ち、再生修復を必要とする器官との接触を保持するために、アルギニン酸塩等を使用して作製された縫合糸または他の標準的な方法を使用することにより施されてもよい。
【0096】

好ましくは、最低500個の治療用細胞が投与され、一般的には、細胞療法は1500万〜5憶個の細胞を利用する。より好ましくは、1500万〜1憶個の細胞が最適効果のために投与される。
【0097】
例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、ハンチントン病、多発性硬化症、麻痺、および中枢神経系(CNS)の他の疾患等の神経疾患の細胞療法においては、好ましくは、公開(J Spinal Cord Med.29:191−203,2006)されるように、剛性内視鏡を使用して、嗅粘膜を単離する。神経幹細胞および前駆体細胞もしくは嗅神経鞘細胞は、再生医療の分野の当業者に周知の方法により嗅粘膜から単離される。別の方法としては、神経冠幹細胞は、ヒトの毛嚢から単離され得る(Folia Biol.56:149−157,2010)。最も好ましくは、神経幹細胞は、特定の因子の付加により再プログラム化され、4継代に増殖および継代され、特定の因子の付加により特定の中枢神経系細胞型に再分化され、次いで再生療法のために患者に投与される。
【0098】
本発明は、再生医療に関して、体細胞を安全に再プログラム化し、再分化するための方法を提供する。有用な体細胞は、完全に分化した体細胞、前駆体細胞、またはより原始的な幹細胞を含み得る。再生療法を必要とする器官により、より原始的な幹細胞が器官穿刺、生検、剥離、または外科的アクセスにより、大体は利用可能であり得る。より原始的な幹細胞の使用は、これらの幹細胞へのアクセスが可能である場合、好ましい。あまり好ましくないが、完全に分化した体細胞より好ましいのは、前駆体細胞の使用である。
【0099】
脊髄損傷の修復において、嗅粘膜が剛性内視鏡により除去され、神経幹細胞が1992年にReynoldsおよびWeissにより最初に説明された神経球アッセイを使用して単離され(Science,255:1707−1710,1992)、上皮成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)が神経球成長を刺激するために嗅粘膜の培養物中で数日生存する細胞に添加され、神経幹細胞は、7〜10日以内の培養で回復可能である。得られた神経幹細胞は、5〜7日の間、ハイグロマイシン選択を伴うOCT4およびNANOGの送達のためのエピソームベクターの付加により再プログラム化される。細胞は、自己脳脊髄液または特定の因子を使用して、継代され、遺伝子挿入のない(integration−free)コロニーを得るために継代4まで増殖された後、嗅神経鞘細胞および幹様神経前駆体細胞に分化される。標準的な正中切開および後方正中脊髄切開術を使用して、損傷した脊髄を手術中露出させ、許容できる瘢痕組織を除去し、治療用細胞を自己脳脊髄液に懸濁し、生理活性足場上に播種し、損傷した脊髄に直接適用する。
【実施例】
【0100】
<実施例1>
組み換えタンパク質生成のための合成により生成された患者特異的多能性幹細胞の遺伝子修飾
患者からのSCNTもしくはPGAもしくはANT−OARもしくはiPSC等の合成により生成された多能性幹細胞(spPSC)は、生物学的製剤の生成を誘発するための遺伝子修飾に使用される。SCNT由来幹細胞は、患者の細胞の核を調製した除核卵母細胞内に移植することにより調製される。ANT−OAR由来細胞は、修飾した核を、除核し、調製した卵母細胞内に移植する前に患者の核DNAを遺伝的に修飾することにより調製される。iPSC由来幹細胞は、遺伝子修飾、多能性転写因子の活性化因子、後成的修飾、または上述の当該技術分野に公知の他の方法を使用して、患者の細胞を再プログラム化することにより調製される。得られた合成により生成された患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の生成における後の遺伝的修飾のために、マスターセルバンク(master cell bank)およびワーキングバンク(working bank)として「保存される」。
【0101】
生殖細胞は、単層培養、胚様体(EB)の形成、BMP4生成細胞との共凝集、精巣もしくは卵巣細胞調整培地の使用、または組み換えヒト骨形態形成タンパク質(BMP)を用いたEB形成を使用して、多能性幹細胞から生成される。生殖細胞は、ZNFドメインを伴う1を含むPRドメイン(PRDM1、BLIMP1としても知られる)、14を含むPRドメイン(PRDM14)、タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ5(PRMT5)、DPPA3、IFITM3、GDF3、c−KIT、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)受容体4(CXCR4)、NANOS1−3、DAZL、VASA、PIWIファミリー遺伝子(PIWIL1およびPIWIL2、それぞれ、ヒトにおいてHIWIおよびHILIとしても知られる)、Mut−L Homologue−1(MLH1)、シナプトネマ複合タンパク質1(SCP1)、およびSCP3を含み得るマーカー遺伝子の発現により同定される。得られた生殖細胞は、組み換え第VIII因子の製造に一般的に使用される方法により、第VIII因子等の目的の遺伝子を遺伝子導入される。
【0102】
<実施例2>
組み換えインスリン生成のための合成により生成された患者特異的多能性幹細胞の遺伝子修飾
患者からのSCNTもしくはPGAもしくはANT−OARもしくはiPSC由来幹細胞等の合成により生成された多能性幹細胞(spPSC)は、生物学的製剤の生成を誘発するための遺伝子修飾に使用される。SCNT由来幹細胞は、患者の細胞の核を調製した除核卵母細胞内に移植することにより調製される。ANT−OAR由来細胞は、修飾した核を、除核し、調製した卵母細胞内に移植する前に患者の核DNAを遺伝的に修飾することにより調製される。iPSC由来幹細胞は、遺伝子修飾、多能性転写因子の活性化因子、後成的修飾、または上述の当該技術分野に公知の他の方法を使用して、患者の細胞を再プログラム化することにより調製される。得られた合成により生成された患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の生成における後の遺伝的修飾のために、マスターセルバンクおよびワーキングバンクとして「保存される」。
【0103】
患者特異的幹細胞におけるインスリン前駆体の発現は、出芽酵母におけるインスリンの製造に一般的に使用される方法[Kjeldsen T.,et al.,“Engineering−enhanced protein secretory expression in yeast with application to insulin”.21,May 2002,J Biol Chem.,277:18245−18248(May 2002)、Zhang B.,et al.,“Intracellular retention of newly synthesized insulin in yeast is caused by endoproteolytic processing in the Golgi complex”.,J Cell Biol.,153:1187−1198(June 2001)、およびKristensen C.et al.,“Alanine scanning mutagenesis of insulin”.,J Biol Chem.,272:12978−12983(May 1997)]またはE. Coli [Son YJ.,et al.“Effects of beta−mercaptoethanol and hydrogen peroxide on enzymatic conversion of human proinsulin to insulin”.,J.Microbiol Biotechnol.,18:983−989(May 2008)]により行われた後、標準的な方法により処理され、精製される。患者特異的細胞系を発現するインスリン前駆体は、後のインスリン生成のためにマスターセルバンクおよびワーキングセルバンクとして「保存される」。
【0104】
<実施例3>
合成により生成された患者特異的多能性幹細胞の遺伝的修飾を使用したインスリン生成のためのβ細胞の生成
インスリンを生成するために、患者からの体細胞をspPSCを生成するための遺伝的修飾に使用し、これらは生物学的製剤の生成を誘発するために使用される。spPSC由来幹細胞は、遺伝的修飾、多能性転写因子の活性化因子、後成的修飾、または当該技術分野に公知の他の方法を使用して、患者の細胞を再プログラム化することにより調製される。得られた患者特異的幹細胞系は、生物学的製剤の生成における後の遺伝的修飾のために、マスターセルバンクおよびワーキングバンクとして「保存される」。あるいは、内因性多能性幹細胞(ePSC)は、上述の技法により単離されて、保存され得る。
【0105】
患者特異的幹細胞におけるインスリン前駆体の発現は、上述のように、出願酵母または大腸菌におけるインスリンの製造に一般的に使用される方法により行われる。適切なインスリン遺伝子構築物を遺伝子導入した後、細胞は、[Shi,Y.,et.Al.“Inducing embryonic stem cells to differentiate into pancreatic beta cells by a novel three−step approach with activin A and all−trans retinoic acid”.Stem Cells.,23:656−662(2005)またはTateishi,K.,et.Al.“Generation of insulin−secreting islet−like clusters from human skin fibroblasts”.,J Biol Chem.,283:31601−31607(2008)] of the Beta Cell Biology Consortium,http://www.protocolonline.org/prot/Cell_Biology/Stem_Cells/Differentiation_of_Stem_Cell/index.html.Protocol Online.[オンライン][2010年12月19日に引用。]に見出される標準的なプロトコルに従い、β細胞系列に分化される。
【0106】
次いで、標準的な方法により、得られた発現した生物学的製剤の生成物を処理し、精製する。幹細胞系を発現する得られた患者特異的インスリン前駆体は、生物学的製剤の生成における後の遺伝的修飾のために、マスターセルバンクおよびワーキングバンクとして「保存される」。
【0107】
別の方法としては、得られた患者特異的幹細胞は、Beta Cell Biology Consortium同上のShi et.Al.同上またはTateishi et.Al.同上に見出される標準的なプロトコルに従い、β細胞系列に分化される。一旦分化されると、患者特異的幹細胞におけるインスリン前駆体の発現は、上述の出芽酵母または大腸菌におけるインスリンの製造に一般的に使用される方法により行われる。次いで、標準的な方法により、得られた発現した生物学的生成物を処理し、精製する。
【0108】
<実施例4>
再プログラム化および遺伝子導入して生物抗体治療薬を生成するための成体(体細胞)抗体生成細胞の単離
抗体生成B細胞は、患者特異的製造細胞系を生成し、治療用抗体生物学的製剤を生成する目的のために末梢血、骨髄、および他の容易に利用可能な造血細胞源から単離される。B細胞は、CD19発現に基づき利用可能なキット(StemCell Technologies)を利用して単離される。最高レベルの免疫グロブリン(Ig)を生成する細胞を選択するために、限界希釈法または細胞選別法が利用され得る。簡単な増殖の後、高Ig生成クローナル細胞は、標準的な再プログラム化法を使用して、多能性または前駆体状態に再プログラム化される。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な分子生物学技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物を形質導入される。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能であるか、抗体治療薬の事項の組成物の所有者により内密に維持されるかどうかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。所望の精製された抗体生成物を得るための方法は、イオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0109】
<実施例5>
体細胞抗体生成細胞への再分化を伴う再プログラム化および遺伝子導入して生物学的抗体治療薬を生成するための成体(体細胞)抗体生成細胞の単離
抗体生成B細胞は、患者特異的製造細胞系を生成し、治療用抗体生物学的製剤を生成する目的のために、末梢血、骨髄、および他の容易に利用可能な造血細胞源から単離される。最高レベルの免疫グロブリン(Ig)を生成する細胞を選択するために、限界希釈法または細胞選別法が利用され得る。簡単な増殖の後、高Ig生成クローナル細胞は、標準的な再プログラム化法を使用して、多能性または前駆体状態に再プログラム化される。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物を形質導入される。遺伝子修飾後、多能性患者特異的細胞系は、CD40L、BAFF、toll様受容体活性化(TLR)の存在下での培養[Hayashi E.A.,et al.“TLR4 promotes B cell maturation: independence and cooperation with B lymphocyte−activating factor”.,J Immunol.,184:4662−4672(2010)、またはB細胞受容体(BCR)活性化およびノッチ受容体リガンドファミリー活性化等の当該技術分野に公知の他のB細胞成熟因子[Palanichamy A.et al.“Novel human transitional B cell populations revealed by B cell depletion therapy”.10,May 2009,J Immunol.,Vol.182,pp.5982−5993(2009)、Thomas M.D.et al.,“Regulation of peripheral B cell maturation”.,Cell Immunol.,239:92−102(2006)により成熟抗体生成B細胞に分化される。
【0110】
治療用抗体の力価および親和性は、Li J.,et al.,“Human antibodies for immunotherapy development generated via a human B cell hybridoma technology”.,Proc Natl Acad Sci,103:3557−3562(2006)に記載されるように、形態形成法等の方法を使用することにより改善され得る。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能であるか、抗体治療薬の事項の組成物の所有者により内密に維持されるかどうかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。
【0111】
別の方法としては、多能性患者特異的幹細胞は、CD40L、BAFF、toll様受容体活性化(Hayashi,et al.同上を参照)の存在下での培養、またはB細胞受容体(BCR)活性化およびノッチ受容体リガンドファミリー活性化等の当該技術分野に公知の他のB細胞成熟因子により成熟抗体生成B細胞に分化される(Palanichamy A.et al.同上,およびThomas,M.D.et al.同上を参照)。治療用抗体の力価および親和性は、記載される形態形成法等の方法を使用することにより改善され得る(Li,et al.同上を参照)。
【0112】
得られた患者特異的抗体生成細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物を形質導入される。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能であるか、抗体治療薬の事項の組成物の所有者により内密に維持されるかどうかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。
【0113】
<実施例6>
高活性ADCC抗体生成のための患者特異的細胞系の生成
免疫グロブリンのN−アセチルグルコサミン(GlcNac)翻訳後修飾は抗体依存細胞媒介毒性(ADCC)において重要であり、フコシル化されないGlcNac残基はFcγ受容体に対して最高の親和性を有する。Mori K.,et al.,“Non−fucosylated therapeutic antibodies:the next generation of therapeutic antibodies”.,Cytotechnology.,55:109−114(2007)。
【0114】
したがって、高レベルのADCCを有する抗体治療薬が所望されるとき、適切なレベルでGlcNacを伝達し、GlcNacをフコシル化しない患者特異的細胞系が望ましい。癌細胞は、高レベルのGMDを発現することが知られており、したがって、癌幹細胞および多能性細胞は、類似する遺伝標識を有するため、多能性細胞も、翻訳後GlcNac結合に関与する酵素である高レベルのGMDを発現することが推測され得る。正常な組織では、結腸および膵臓が最高レベルのGMDを発現する。抗体をフコシル化する酵素に関与するFUT8の欠損は、リツキシマブまたはハーセプチン等の、有効性に関してADCC活性に依存する治療用抗体生成のための患者特異的幹細胞系において望ましいであろう。例えば、ラットハイブリドーマYB2/0細胞において生成されたモノクローナル抗体は、CHO細胞を使用して生成された同じモノクローナル抗体よりADCC活性が50倍高い。脂肪由来幹細胞および生殖細胞系ならびにB細胞リンパ腫は、平均レベルより高いFUT8を発現し、一方、造血性幹細胞(HSC)、未成熟B細胞、正常な骨格筋は、平均より低いFUT8を発現する。
【0115】
造血性幹細胞は、幹細胞動員剤による前処置を伴ってまたは伴わずに、標準的な方法により骨髄穿刺液から、または全血アフェレーシス法により単離される。単離したHSCは、続いて前述のように多能性に再プログラム化される。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物を形質導入される。遺伝子導入後、多能性患者特異的細胞系は、CD40L、BAFF、toll様受容体活性化(TLR)の存在下での培養(Hayashi E.A.,et al.,同上を参照)、またはB細胞受容体(BCR)活性化,およびノッチ受容体リガンドファミリー活性化等の当該技術分野に公知の他のB細胞成熟因子により成熟抗体生成B細胞に分化される(Palanichamy A.et al.同上,およびThomas,M.D.et al.同上を参照)。治療用抗体の力価および親和性は、記載される形態形成法等の方法を使用することにより改善され得る(Li,et al.同上を参照)。得られた発現抗体治療薬は、公的に入手可能であるか、抗体治療薬の事項の組成物の所有者により内密に維持されるかどうかに関わらず、現状技術のバイオテクノロジー法により処理され、精製される。
【0116】
別の方法としては、抗体生成B細胞は、患者特異的製造細胞系を生成し、治療用抗体生物学的製剤を生成する目的のために、末梢血、骨髄、および他の容易に利用可能な造血細胞源から単離される。最高レベルの免疫グロブリン(Ig)を生成する細胞を選択するために、限界希釈法または細胞選別法が利用され得る。簡単な増殖の後、高Ig生成クローナル細胞は、標準的な再プログラム化法を使用して、多能性または前駆体状態に再プログラム化される。得られた患者特異的幹細胞は、標準的な技法および方法を使用して、所望の抗体遺伝子構築物を形質導入される。遺伝子修飾後、多能性患者特異的細胞系は、フコースが低い、またはそれを欠損する治療用抗体の生成ために、HSC、未成熟B細胞、または骨格筋細胞に分化される。
【0117】
本発明の好ましい実施形態が図示され、説明されてきたが、上述のように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。代わりに、本発明は、続く特許請求の範囲を全面的に参照することにより決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】全血の勾配遠心分離から得られた層を示す。
図1