(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に発電プラントにおける監視システムは、複数台の制御ユニットから構成されており、プロセス信号や各機器の稼働状態を監視するための画面を、制御ユニット毎に表示することができる。
また、これらの画面は、制御ユニットごとに異なる画面で構成される場合や制御ユニットに共通した画面で構成される場合がある。
そして、規模が大きな発電プラントシステムの表示画面は、数百種類にものぼる。
【0003】
このようなプラントシステムの表示画面の内容の確認試験では、試験員が試験手順書を元にして、各画面を操作し試験条件を設定して画面の表示内容を確認する方法が一般的である。
また、品質要求の高いプラント監視システムでは、試験結果のエビデンスとして確認した画面をすべて保管する必要がある。
【0004】
これらの画像データを保管するために、試験において表示した画面のハードコピーを印刷している。
また、画面確認試験に限らず、機能試験などのその他の試験においても、試験結果のエビデンスとして画面のハードコピーを保管している。
また、現地でのハードウェアの復元確認試験やケーブル接続確認試験等においても撮影した写真やその他データを記録する場合がある。
このような状況において、試験における表示画面の確認作業を効率化する技術が開発されている(例えば、特許文献1,2,3)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係るプラント監視システムの試験支援装置10(以下、単に「支援装置10」ともいう)は、複数の試験項目及びその試験順番に関する情報が少なくとも記述された試験リスト(
図2)を保持するリスト保持部11と、接続される複数の機器12(12a,12b…12z)を制御する制御ユニット13の出力信号14に基づいて提供される表示画面15を生成する画面生成部17と、試験リスト(
図2)の試験順番に基づいて表示画面15の画像データ18の取得を指示するデータ取得指示部19と、取得した画像データ18を試験リスト(
図2)の試験項目にリンクさせるデータリンク部21と、を備えている。
【0015】
原子力発電プラントのような複雑なプロセスプラントでは、数千点にもおよぶ複数の機器12(例えば、ポンプ、温度計、開閉弁等)に出入力するプロセス信号24が、複数台の制御ユニット13に集約されている。
各々の制御ユニット13は、共通のネットワークに接続され、中央管理室においてオペレータが機器12を操作したりプロセス信号24を監視したりできるように構成される。
【0016】
この中央管理室に設置されるスクリーンには、プロセス信号24に基づいて、デジタル表示、バーチャート表示、トレンドグラフ表示等といった表示方法に則ってレイアウトされる表示画面が表示される。
そして、オペレータは、入力端末を操作して表示画面を切り替えたりコマンドを入力したりして、プラント状態に関する所望の情報を得たり、プラント状態を変化させたりする。
【0017】
このように原子力発電プラントに設置されている複数の制御ユニット13のそれぞれは、操作信号の入力端末22と画面表示部16とを外付けできる仕様になっている。
これにより制御ユニット13は、プラント停止時や工場出荷時等の検査時において、ネットワークから切り離して単独で試験できるように設計されている。
【0018】
図2に示される試験リストのデータシートは、それぞれの試験順番に対して試験項目が記述されたセル、判定結果を入力するセル、画像データ18をリンクするセルが割り付けられている。また、それぞれの試験項目に対応して、判定基準(図示略)を記述したセルが割り付けられる場合もある。
【0019】
制御ユニット13には、制御対象である複数の機器12(12a,12b…12z)が接続されているとともに、操作信号23の入力端末22も接続されている。
例えば、機器12が開閉弁であれば、入力端末22の操作により制御ユニット13は、プロセス信号24を送信してこの開閉弁を開状態/閉状態に切り替えることができる。
さらにこの開閉弁の開状態/閉状態を検知したプロセス信号24が制御ユニット13において受信される。
【0020】
制御ユニット13において受信されたプロセス信号24は、ネットワークで伝送可能な出力信号14として出力される。
画面生成部17は、制御ユニット13から受信した出力信号14に基づいて、デジタル表示、バーチャート表示、トレンドグラフ表示等がレイアウトされた表示画面15を生成し、表示部16に表示させる。
【0021】
データ取得指示部19は、リスト保持部11から試験リスト(
図2)を読み込んで、それぞれの試験順番において表示部16に表示された表示画面15のハードコピー(画像データ18)を取ることを画面生成部17に指示する。
この表示画面15の画像データ18は、試験リストの試験順番に関連付けた識別IDが付与されたうえで、蓄積部20に蓄積される。
【0022】
データリンク部21は、蓄積部20に蓄積されている画像データ18を、付与されている識別IDをキーとして試験リスト(
図2)の試験項目にリンクさせる。
試験員は、試験リスト(
図2)を閲覧して、試験項目(場合によってはさらに判定基準)とリンクされている画像データ18とを確認し、判定結果の欄に試験の合否を記録する。
【0023】
このように、第1実施形態では、制御ユニット13の試験において、この制御ユニット13にインストールされているソフトウェアやデータベースに変更やアクセスを行うことない。さらに、試験のエビデンスとなる表示画面の画像データ18を取得して、試験リストにおける各試験項目に自動的にリンクさせて保管することができる。
【0024】
これにより、表示されている表示画面のハードコピーを、試験確認結果のエビデンスとして、その都度印刷する必要はなくなり、印刷した画像データを試験項目にリンクさせる手間も省けることになる。
つまり、設定した試験順番に沿って試験項目を実施する度に、自動的に表示画面の画像データが試験項目にリンクされて記録されるため、試験作業の効率が向上する共に画面ハードコピーの取り漏れによる後戻り作業を防止することができる。
さらに、試験後の画面ハードコピーと試験順番とのリンクを人手で実施する必要がなくなるため、データ整理の作業効率の向上と人間系によるミスの防止を図ることができる。
【0025】
(第2実施形態)
図3に示すように第2実施形態に係るプラント監視システムの試験支援装置10では、画面生成部17(17a,17b)は複数の制御ユニット13(13a,13b)のそれぞれに対応して設けられ、試験リスト(
図4)には試験対象となる制御ユニット13がさらに記述され、データ取得指示部19はそれぞれの画面生成部17(17a,17b)が生成した表示画面15(15a,15b)の画像データ18(18a,18b)を試験リスト(
図4)の試験順番に基づいて取得させる。
なお、
図3において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。また、
図3において試験対象となる制御ユニット13は、二台のみ記載されているが、その台数に特に制限はない。
【0026】
このように構成されることにより、画面生成部17は、試験対象となる制御ユニット13の台数に応じて設けられる。
そして、データ取得指示部19は、読み込んだ試験リスト(
図4)の試験順番に沿って対応する制御ユニット13の表示画面の画像データ18(18a,18b)を蓄積部20に蓄積していく。
なお、それぞれの試験順番において試験対象となる制御ユニット13の台数は、一つに限定されることはない。そして、一つの試験順番で複数の制御ユニット13が試験対象となる場合は、一つの試験項目にリンクされる画像データ18は、複数となる。
【0027】
これにより、複数の制御ユニット13(13a,13b)の試験を連続して実施し、一つの試験リストで管理することができる。
または、ネットワーク上で自律分散的に繋がる複数の制御ユニット13の試験を、オフライン状態で実施し、そのエビデンスを記録することができる。
【0028】
(第3実施形態)
図5に示すように第3実施形態に係るプラント監視システムの試験支援装置10では、表示画面15の基礎となる出力信号14を取得する出力信号取得部25をさらに備え、データリンク部21は、取得した出力信号14を試験リスト(
図6)の試験項目にリンクさせる。
なお、
図5において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。また、
図5において試験対象となる制御ユニット13は、一台のみ記載されているが、その台数に特に制限はない。
【0029】
ここで出力信号14は、制御ユニット13の側で定義された固有の識別IDが付与されており、各機器12のON/OFF情報、警報有無に関するデジタル情報、各プロセス信号24(温度、圧力、流量など)に関する数値情報等が具体的に挙げられる。
表示画面15に表示されるパラメータ値やON/OFF情報等の中には、この画面には表示されないいくつかの出力信号14に基づいて計算されるかもしくは論理条件に基づいて表示されるものがある。
【0030】
そこで、データ取得指示部19は、表示部16の画像データ18の取得を指示するのと同期して、取得部25に対してこの画像データ18の基礎となる出力信号14の取得を指示する。このようにして取得された出力信号14は、試験リストの試験順番に関連付けた識別IDが付与されたうえで、蓄積部26に蓄積される。
そして、データリンク部21は、蓄積部26に蓄積されている出力信号14を、付与されている識別IDをキーとして試験リスト(
図6)の試験項目にリンクさせる。
【0031】
このように構成されることにより、それぞれの試験項目において、表示画面15を生成する基礎となった出力信号14を一括してエビデンスとして併せて記録し管理することができる。
これにより、試験結果が異常を示す場合、この試験結果の基礎となる制御ユニット13の出力信号14が記録されているため、原因究明の手掛かりが与えられる。
【0032】
このように制御ユニット13の出力信号14が記録されていない場合は、原因究明にあたり、試験結果の異常時が内部信号の模擬値に問題があるのか、又は画面表示の論理条件や計算方法に問題があるのか、問題を切り分けるための再現確認試験の実施が要求されてしまう。
【0033】
(第4実施形態)
図7に示すように第4実施形態に係るプラント監視システムの試験支援装置10では、データ取得指示部19は、試験リストの試験順番に基づいてカメラ27による撮影データ28の取得を指示し、データリンク部21は、取得した撮影データ28を試験リスト(
図8)の試験項目にリンクさせる。
カメラ27で撮影された静止画や動画といった撮影データ28は、蓄積部29において蓄積される。
なお、
図7において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。また、
図7において試験対象となる制御ユニット13は、一台のみ記載されているが、その台数に特に制限はない。
【0034】
このように構成されることにより、プラントに設けられているランプの点灯状態等といったハードウェア状態の確認試験や現地におけるハードウェア復元試験を、カメラ27による撮影データ28で管理することができる。
ここで、カメラ27は、支援装置10とは別個独立の機器である場合や、支援装置10をモバイル端末としてこのモバイル端末に組み込まれたものとする場合がある。
【0035】
カメラ27が携帯可能である場合は、データ取得指示部19は、読み込んだ試験リスト(
図8)の試験順番に沿って、カメラ27による撮影対象の撮影を試験員に指示する。
カメラ27が撮影対象の近傍に固定されている場合は、データ取得指示部19は、読み込んだ試験リスト(
図8)の試験順番に沿って、カメラ27のシャッターを切るか又は録画を行う。
【0036】
このようにして撮影された撮影データ28は、試験リストの試験順番に関連付けた識別IDが付与されたうえで、蓄積部29に転送され蓄積される。
そして、データリンク部21は、蓄積部29に蓄積されている撮影データ28を、付与されている識別IDをキーとして試験リスト(
図8)の試験項目にリンクさせる。
【0037】
これにより、単に試験員による目視確認とその記憶に頼るだけでなく、プラントに設けられているハードウェア状態の試験のエビデンスを記録することができる。
さらに、撮影データ28の整理を時間をかけることなく効率的に管理することができ、試験結果のトレーサビリティの向上を図ることができる。
また、現地でのハードウェア復元試験においては、現地にて、他の制御装置からの外線ケーブルが制御ユニットに接続され、図面通りに接続されていることの確認のエビデンスが、画像により残される。
【0038】
(第5実施形態)
図9に示すように第5実施形態に係るプラント監視システムの試験支援装置10では、リスト保持部11は、制御ユニット13の操作情報が記述された操作リスト(
図10)を試験項目に対応させて保持し、操作情報から変換した操作信号23を試験リスト(
図4)の試験順番に基づいて制御ユニット13に入力する信号制御部31をさらに備えている。
なお、
図9において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。また、
図9において試験対象となる制御ユニット13は、一台のみ記載されているが、その台数に特に制限はない。
【0039】
このように構成されることにより、第1実施形態から第4実施形態において試験員が入力端末22で行っていた操作信号23の入力が、第5実施形態では操作リスト(
図10)に基づいて自動化される。
【0040】
図10に示すように、操作リストには、それぞれの試験項目における入力端末(マウス、キーボード等)の操作を特定するための操作情報(マウスID、指定座標、クリック情報、キーボードID、入力情報等)が試験項目毎に記述されている。
信号制御部31は、リスト保持部11から読み込んだ試験リスト(
図2)の試験順番に従って、対応する操作情報を、操作リスト(
図10)から読み込んで、変換部32に転送する。
操作信号変換部32では、転送された操作情報を、制御ユニット13が読み取り可能な操作信号23に変換し、制御ユニット13に送信する。
【0041】
なお、データ取得指示部19は、指定された試験順番に対し、信号制御部31と同期して動作するために、操作リスト(
図10)の操作情報に従って表示された表示画面15の画像データ18が、この指定された試験順番にリンクされる。
【0042】
これにより、表示画面の確認試験における制御ユニット13の操作(画面上のボタン操作、キーボード入力)は自動的に実行され試験員が実施することがなくなる。
例えば8台の制御ユニット13の確認試験を行う場合、従来であれば8人の試験員が各制御ユニット13を操作して、表示画面の表示内容を確認する必要があったが、第5実施形態によれば、1人の試験員により、8台の制御ユニット13をまとめて操作して確認試験を実施することができる。
したがって、試験員の人員の大幅削減が可能となり、各試験員の目視確認における見逃しや見誤りの発生を防止することができる。
【0043】
(第6実施形態)
図11に示すように第6実施形態に係るプラント監視システムの試験支援装置10では、リスト保持部11は、複数の機器12(
図1参照)のプロセス信号24を模擬的に出入力する模擬デバイス33の動作情報が記述された動作リスト(図示略)を試験項目に対応させて保持し、信号制御部31は試験リスト(
図4)の試験順番に基づいて動作情報を模擬デバイス33に出力しプロセス信号24を出入力させる。
なお、
図11において
図9と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。また、
図11において試験対象となる制御ユニット13は、一台のみ記載されているが、その台数に特に制限はない。
【0044】
このように構成されることにより、第1実施形態から第5実施形態において制御ユニット13に機器12を実際に接続して行っていたプロセス信号24の出入力が、第6実施形態では動作リスト(図示略)に基づいて動作する模擬デバイス33を接続して行なわれることになる。
【0045】
動作リスト(図示略)には、それぞれの試験項目における模擬デバイス33の動作を特定するための動作情報(温度信号、圧力信号、弁の開閉信号、ポンプの動作信号等)が試験項目毎に記述されている。
信号制御部31は、リスト保持部11から読み込まれた試験リスト(
図2)の試験順番に従って、対応する動作情報を、動作リスト(図示略)から読み込んで、模擬デバイス33に転送する。
模擬デバイス33は、転送された操作情報を、制御ユニット13が読み取り可能な操作信号23に変換し、制御ユニット13に送信する。
【0046】
なお、データ取得指示部19及び操作信号変換部32は、指定された試験順番に対し、模擬デバイス33と同期して動作するために、動作情報に従って表示された表示画面15の画像データ18が、この指定された試験順番にリンクする。
これにより、模擬デバイス33の操作を含めて自動化を図ることができるため、試験員の作業を単純化し試験時間の短縮を図ることができる。
【0047】
図12のフローチャートに基づいてプラント監視システムの試験支援方法を説明する。
まず、試験リスト(
図2)から試験順番n(=1)の試験項目を起動する(S11,S12)。そして、動作リスト(図示略)からこの試験項目に対応する動作情報を起動し(S13)、機器12(又は模擬デバイス33)と制御ユニット13とがプロセス信号24の交信を開始する(S14)。
【0048】
さらに、操作リスト(
図10)からこの試験項目に対応する操作情報を起動し(S15)、制御ユニット13が操作信号23を入力する(S16)。
制御ユニット13の出力信号14を受信して(S17)、表示画面15(監視画面)を生成して表示する(S18)。
【0049】
一方において、この表示画面15(監視画面)のハードコピーをとり、その画像データ18を蓄積し(S19)、試験リスト(
図2)の試験順番n(=1)にリンクさせる(S20)。
試験番号nを更新して(S12)から(S20)のフローを繰り返し(S21 No)、全ての試験項目を終了する(S21 Yes,END)。
【0050】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のプラント監視システムの試験支援装置によれば、表示画面の画像データを試験リストの試験項目に自動的にリンクさせることにより、高品質でバラツキ無い試験結果を効率的に得ることが可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
また、プラント監視システムの試験支援装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、プラント監視システムの試験支援プログラムにより動作させることが可能である。