(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223844
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】微生物計測システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20171023BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20171023BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20171023BHJP
G01N 21/77 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12Q1/06
C12Q1/66
G01N21/77 D
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-18568(P2014-18568)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-144581(P2015-144581A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中塚 裕太
(72)【発明者】
【氏名】森 修一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 野恵
【審査官】
白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−112495(JP,A)
【文献】
特表2003−530830(JP,A)
【文献】
特開平09−182600(JP,A)
【文献】
特開平10−028599(JP,A)
【文献】
特開2009−017852(JP,A)
【文献】
特開2009−232744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
CiNii
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象の試料中の微生物に所定の試薬を供給することによって前記微生物の細胞内のATPを発光反応させる発光反応手段と、前記発光反応させた微生物の発光強度を計測してATP量に換算する計測換算部と、前記換算されたATP量が予め設定されたATP量管理基準値を超えているかを判断する制御部を備えた微生物計測システムにおいて、
前記制御部は、
管理対象の試料に由来する同一条件下で採取されたサンプルについて一定回数測定されたCFU法とATP法による各測定値から、それぞれCFU数測定値とATP量測定値の累積確率分布を求める確率分布算出部と、
上記で求められたCFU数測定値の累積確率分布からCFU近似曲線を算出し、ATP量測定値の累積確率分布からATP近似曲線を算出する近似曲線算出部と、
上記両近似曲線に基づいて、予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を算出する管理基準値算出部を備えたことを特徴とする微生物計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物計測システムにおいて、
前記近似曲線算出部は、前記CFU数測定値の累積確率分布とATP量測定値の累積確率分布とに基づいて前記ATP近似曲線を算出することを特徴とする微生物計測システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微生物計測システムにおいて、
前記管理基準値算出部は、予め決められたCFU数管理基準値に対応する累積確率を前記CFU近似曲線から算出し、この累積確率に対応するATP量を前記ATP近似曲線から算出し、この算出されたATP量を前記ATP量管理基準値とすることを特徴とする微生物計測システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物計測システムにおいて、
前記近似曲線算出部は、前記CFU近似曲線を、ポアソン分布の式を基に算出することを特徴とする微生物計測システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物計測システムにおいて、
前記近似曲線算出部は、前記ATP近似曲線を、ポアソン分布とガンマ分布の式を基に算出することを特徴とする微生物計測システム。
【請求項6】
管理対象の試料中の微生物に所定の試薬を供給することによって前記微生物の細胞内のATPを発光反応させ、前記発光反応させた微生物の発光強度を計測してATP量に換算し、前記換算されたATP量が予め設定されたATP量管理基準値を超えているかを判断する微生物計測システムの制御方法において、
管理対象の試料に由来する同一条件下で採取されたサンプルについて一定回数測定されたCFU法とATP法による各測定値から、それぞれCFU数測定値とATP量測定値の累積確率分布を求め、
上記で求められた両累積確率分布に基づいてCFU近似曲線とATP近似曲線を算出し、
上記両近似曲線に基づいて、予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を算出することを特徴とする微生物計測システムの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の微生物計測システムの制御方法において、
前記CFU数測定値の累積確率分布とATP量測定値の累積確率分布とに基づいて前記ATP近似曲線を算出することを特徴とする微生物計測システムの制御方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の微生物計測システムの制御方法において、
予め決められたCFU数管理基準値に対応する累積確率を前記CFU近似曲線から算出し、この累積確率に対応するATP量を前記ATP近似曲線から算出し、この算出されたATP量を前記ATP量管理基準値とすることを特徴とする微生物計測システムの制御方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の微生物計測システムの制御方法において、
前記CFU近似曲線を、ポアソン分布の式を基に算出することを特徴とする微生物計測システムの制御方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の微生物計測システムの制御方法において、
前記ATP近似曲線を、ポアソン分布とガンマ分布の式を基に算出することを特徴とする微生物計測システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物計測システムおよびその制御方法に係り、特にATP法を用いた微生物管理の運用を行うための、ATP量管理基準値の設定を行うことのできる、微生物計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物数の計数は、食品衛生や医薬品環境などの分野で重要であり、高感度かつ迅速な方法を用いて、製品や環境中の微生物をオンラインで計測することが求められている。
【0003】
従来の微生物数の計測法としては、寒天培地を用いたコロニーカウント法(以下、CFU法と称する)や液体培地を用いた濁度計測法などがあるが、これらの方法では、培養に一日から数日の時間を要するという問題があり、さらに濁度計測法においては、死菌や塵埃と生菌の区別が出来ないという問題があった。
【0004】
これに対して、近年では、迅速で感度の高い微生物計測方法として、発光試薬や蛍光試薬を用いて微生物細胞の構成物を特異的に標識し、発光強度を計測して微生物を求める方法が提案されている。このうち、ATP法は、生きた細胞が必ず含有する化学物質ATP(アデノシン三リン酸)を微生物数の指標とする方法であり、数〜数十分程度で計測が可能である。
【0005】
ATP法は、生菌由来の酵素であるルシフェラーゼと、その気質タンパク質であるルシフェリンによる生物発光を利用している(例えば、特許文献1参照)。そして、微生物を含む試料からATPを抽出し、これをルシフェリン−ルシフェラーゼ混合液を添加して発光させることによって、発光強度からATP量を求める。
【0006】
また、この種の先行技術として、特許文献2にATP法を用いて不特定の微生物を計測し、管理することのできる微生物管理システムが示されている。
【0007】
この技術では、ATP法で計測された発光強度の計測値を、ATP量と任意の微生物の細胞数に換算し、ATP量換算値が単位容積当たりに許容される微生物数を超えているかを判断し、さらに、ATP量換算値の平均値に対する増減幅が所定範囲内にあるか否かを判断するようにしたもので、これによって、不特定微生物であっても、微生物の異常な増殖を検出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3070780号公報
【特許文献2】特開2009−17852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、引用文献2は、発光強度の計測値を、ATP量とサンプルの任意の微生物の細胞数に換算するものであって、従来の培養法であるCFU法で用いられていて実績のあるCFU数管理基準値に直接対応するATP量管理基準値を求めるものではない。したがって、発光の少ない微生物や、サンプルの微生物と異なる微生物では、微生物数計測の正確性が損なわれる恐れがある。因みに、微生物細胞が含有する1細胞あたりのATP量(発光強度)は、微生物の種類や微生物の活性状態によって異なる。
【0010】
本発明は、上記の従来技術の問題点にかんがみ、CFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を求めて設定することにより、微生物管理区域のATP量での管理を容易に行える微生物計測システムおよびその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明は、管理対象の試料中の微生物に所定の試薬を供給することによって前記微生物の細胞内のATPを発光反応させる発光反応手段と、前記発光反応させた微生物の発光強度を計測してATP量に換算する計測換算部と、前記換算されたATP量が予め設定されたATP量管理基準値を超えているかを判断する制御部を備えた微生物計測システムにおいて、
前記制御部は、
管理対象の試料に由来する同一条件
下で採取されたサンプルについて一定回数測定されたCFU法とATP法による各測定値から、それぞれCFU数測定値とATP量測定値の累積確率分布を求める確率分布算出部と、
上記で求められたCFU数測定値の累積確率分布からCFU近似曲線を算出し、ATP量測定値の累積確率分布からATP近似曲線を算出する近似曲線算出部と、
上記両近似曲線に基づいて、予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を算出する管理基準値算出部を備えたことを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、CFU数測定値とATP量測定値の共通パラメータである累積確率分布と近似曲線に変換して、この共通パラメータを介して予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を求めるので、微生物管理区域のATP量での管理を容易に行える。そして、管理対象領域や管理対象微生物に応じた正確なATP量管理基準値を求めることができる。
【0013】
また、上記に記載の微生物計測システムにおいて、前記近似曲線算出部は、前記CFU数測定値の累積確率分布とATP量測定値の累積確率分布とに基づいて前記ATP近似曲線を算出することを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、ATP近似曲線にCFU数測定値の累積確率分布とATP量測定値の累積確率分布とを反映させて両近似曲線の整合性を取っているので、CFU数管理基準値に正確に対応するATP量管理基準値を求めることができる。
【0015】
また、上記に記載の微生物計測システムにおいて、前記管理基準値算出部は、予め決められたCFU数管理基準値に対応する累積確率を前記CFU近似曲線から算出し、この累積確率に対応するATP量を前記ATP近似曲線から算出し、この算出されたATP量を前記ATP量管理基準値とすることを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、この共通パラメータを介して予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を容易に求めることができる。
【0017】
また、上記に記載の微生物計測システムにおいて、前記近似曲線算出部は、前記CFU近似曲線を、ポアソン分布の式を基に算出することを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、ポアソン分布の式を利用してCFU近似曲線を容易に算出することができる。
【0019】
また、上記に記載の微生物計測システムにおいて、前記近似曲線算出部は、前記ATP近似曲線を、ポアソン分布とガンマ分布の式を基に算出することを特徴とする。
【0020】
この特徴によれば、ポアソン分布の式とガンマ分布の式を利用してATP近似曲線を容易に算出することができる。
【0021】
上述の目的を達成するため、本発明は、管理対象の試料中の微生物に所定の試薬を供給することによって前記微生物の細胞内のATPを発光反応させ、前記発光反応させた微生物の発光強度を計測してATP量に換算し、前記換算されたATP量が予め設定されたATP量管理基準値を超えているかを判断する微生物計測システムの制御方法において、
管理対象の試料に由来する同一条件
下で採取されたサンプルについて一定回数測定されたCFU法とATP法による各測定値から、それぞれCFU数測定値とATP量測定値の累積確率分布を求め、
上記で求められた両累積確率分布に基づいてCFU近似曲線とATP近似曲線を算出し、
上記両近似曲線に基づいて、予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を算出することを特徴とする。
【0022】
この特徴によれば、CFU数測定値とATP量測定値の共通パラメータである累積確率分布と近似曲線に変換して、この共通パラメータを介して予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を求めるので、微生物管理区域のATP量での管理を容易に行える。そして、管理対象領域や管理対象微生物に応じて正確なATP量管理基準値を求めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、既存のFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値を算出することができるので、微生物管理区域の微生物管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る微生物計測の全体を模式的に示す構成図である。
【
図2】
図1における制御部の内部を詳細に示す構成図である。
【
図3】本発明に係る制御のフローチャート図である。
【
図4】
図4の制御フローを説明する詳細説明図(その1)である。
【
図5】
図4の制御フローを説明する詳細説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下添付図面に従って本発明に係る微生物計測システムの好ましい実施形態について説明する。
【0026】
図1は微生物計測の全体構成を模式的に示す構成図である。同図に示す微生物計測の全体構成40は、対象室30内に浮遊する浮遊微生物を測定対象とするシステムであり、対象室30の内部には、測定口31が設けられる。測定口31は、浮遊微生物をエアともに吸引するための開口であり、搬送路14を介して計測ユニット1の捕集部9に接続される。
【0027】
計測ユニット1は、捕集部9、発光反応部2、試薬供給部7、光学計測・換算部4、及び、制御部5を備えており、前述した搬送路14は捕集部9に接続される。本発明実施例に係る微生物計測システムは、計測ユニット1で構成される。
【0028】
捕集部9は、エア中に浮遊する微生物を所定の担体に捕集する装置であり、捕集された微生物はポンプ8によって供給管13に送られる。供給管13は、反応部2の反応容器3に接続されており、この反応容器3に微生物が供給されてATPが抽出される。
【0029】
反応容器3には、試薬供給部7が供給管12で接続されており、この試薬供給部7によって、ルシフェリン−ルシフェラーゼ混合液が反応容器3に添加される。これにより、反応部2では、微生物からATPが抽出されるとともに、ルシフェリン−ルシフェラーゼ混合液の添加によって生物発光反応が行われる。
【0030】
発光反応部2の反応容器3には、光学計測・換算部4が接続されており、この光学計測・換算部4によって、反応容器3内での生物発光反応の発光量が計測され、計測値のデータ(以下、発光強度Lという)からATP量に換算される。微生物1細胞あたりのATP量Bは、一般に空中浮遊菌として存在する微生物の値であり、たとえば一般的な室内環境菌であるBacillus subtilis (Bacillus spizizenii)ATCC 9372の値として7.13が適用される。
【0031】
光学計測・換算部4で発光量のデータから変換されたATP量は制御部5に入力され、制御部5内でATP量がATP量管理基準値を超えているかを判断される。ATP量管理基準値は、予め計測により求められ(後述)、または、入力機構11等によって、予め制御部5内に設定されている。そして、ATP量がATP量管理基準値を超えている場合は、浮遊微生物が基準値を超えているとして制御部5からアラームが出力され、表示部10等で表示される。
【0032】
上記のように、通常の微生物監視時には、捕集部9で捕集された浮遊微生物がATP量管理基準値を超えているか否かを制御部5内で常時判定することで、対象室41内の浮遊微生物が監視される。
【0033】
上記監視において、ATP量管理基準値は予め制御部5内に設定されるが、このATP量管理基準値は事前に計測によって求められる。
【0034】
ATP量管理基準値は、微生物管理を実施する対象室30の内部が正常状態にあって同一条件で、CFU法(培養法)とATP法によりCFU数とATP量の一定回数の測定を行い、各測定値に基づいてCFU数とATP量の共通するパラメータを求め、この共通パラメータを介して、予め決められたCFU数管理基準値に対応するATP量を算出することで求められる。
【0035】
そして、上記共通パラメータとして累積確率分布を用い、CFU数とATP量の一定回数の測定を行ってそれぞれの累積確率分布が算出される。CFU数とATP量のそれぞれの累積確率分布は、測定の回数が増加するに伴い近似してくるので、管理基準値のCFU数からATP量への変換のための共通パラメータとして適している。上記したCFU数とATP量の測定の一定回数とは、例えば、一日当たり午前と午後の2回の測定が、3カ月間行われる回数である。これ以上であれば、累積確率分布の近似性がさらに向上する。
【0036】
そして、微生物管理の対象に対し、一定期間中、同一条件で培養法とATP量測定を一定回数行い、各々の累積確率分布を求めた後、この各累積確率分布の近似式(近似曲線)を算出し、一方の近似曲線を用いてCFU数管理基準値に対応する発生確率を求め、その確率に対応するATP量を他方の近似曲線から求めて、このATP量をATP量管理基準値として設定する。
【0037】
図1において、15は、対象室30の測定口31に接続されたCFU測定部で、対象室30内に浮遊する浮遊微生物を測定口31から吸引してCFU数を一定回数測定する。この測定は寒天培地を用いたコロニーカウント法で行われる。上記CFU測定部15での測定と並行して、前記した通常の微生物監視時のATP量の計測に係る構成を用いてATP量が一定回数測定される。すなわち、対象室30の測定口31に接続された捕集部9を介して、対象室30内に浮遊する浮遊微生物を吸引し、反応部2および光学計測・換算部4によって浮遊微生物のATP量が一定回数測定される。
【0038】
図2は
図1の制御部5の内部を詳細に示す構成図である。16はCFU測定部15で測定されたCFU数の一定回数の測定値を1回毎に蓄積するCFU蓄積部であり、測定対象(測定環境)が変われば測定対象毎に蓄積する。17は光学計測・換算部4で測定されたATP量の一定回数の測定値を1回毎に蓄積するATP蓄積部であり、測定対象(測定環境)が変われば測定対象毎(測定環境毎)に蓄積する。
【0039】
18は、CFU分布算出部で、蓄積されたCFU数の測定値から測定対象(試料)中に微生物の存在する確率分布を示すCFU数の累積確率分布を算出する。19は、ATP分布算出部で、蓄積されたATP量の測定値から測定対象(試料)中に微生物に含まれるATP量の累積確率分布を算出する。
【0040】
20は、CFU分布算出部18で算出されたCFU数の累積確率分布からCFU近似曲線1を算出するCFU近似曲線算出部、21は、前記CFU数の累積確率分布とATP分布算出部19で算出されたATP量の累積確率分布とからATP近似曲線2を算出するATP近似曲線算出部である。
【0041】
22は、上記で算出された近似曲線1と2から、予め決められているCFU数管理基準値に対応するATP量を算出し、このATP量をATP量管理基準値とする管理基準値算出部である。23は、上記で算出されたATP量管理基準値が設定される設定部である。
【0042】
管理基準値算出部22は、CFU数からATP量への共通パラメータとしてCFU数とATP量のそれぞれの累積確率分布の近似曲線1、2を用い、これらの近似曲線を介して、CFU数管理基準値からATP量管理基準値が求められる。
【0043】
24は、前記の通常の微生物計測による浮遊微生物の監視において、捕集部9で捕集された浮遊微生物がATP量管理基準値を超えているか否かを常時判定する判定部である。このときのATP量管理基準値は、上記管理基準値算出部22で求められ設定部23内にあるATP量管理基準値が用いられる。
【0044】
図3は、制御部5のATP量管理基準値を求める動作と、求められたATP量管理基準値に基づいた浮遊微生物の監視動作の制御フローを示し、
図4、
図5は
図3の制御フローの詳細を分けて示している。
【0045】
先ず、同一条件で準備した正常状態の測定対象(対象室30)のCFU数とATP量を一定回数測定する。
【0046】
S1(ステップ1)では、CFU測定部15において従来法である寒天培地を用いたコロニーカウント法(CFU法)により、
図4に示すように測定の回数毎のCFU数が測定される。S2では、反応部2および光学計測・換算部4によってATP法により
図4に示すように測定の回数毎のATP量が測定される。
【0047】
次いでS3において、上記で測定されたCFU数が測定環境毎にCFU蓄積部16に蓄積され、S4において、上記で測定されたATP量が測定環境毎にATP蓄積部17に蓄積される。具体的には
図4のS3、S4に示すように、測定回数毎にそれぞれ蓄積される。
【0048】
次いでS5において、蓄積したCFU測定値から試料中に微生物の存在するCFU数の累積確率分布を算出する(蓄積したCFU測定値を試料中に微生物の存在するCFU数の累積確率分布に変更する)。なお、このCFU数の累積確率分布としてポアソン分布を用いる。CFU数の累積確率分布は、
図4に示すように、横軸に培養結果であるCFU数を、縦軸に累積確率をとって累積分布として示している。
【0049】
同時にS6において、蓄積したATP量測定値から試料中に含まれるATP量の累積確率分布を算出する(蓄積したATP量測定値をATP量の累積確率分布に変更する)。ATP量の累積確率分布は、
図4に示すように、横軸に測定値としてのATP量を、縦軸に累積確率をとって累積分布として示している。
【0050】
次いでS7において、S5で得られたCFU数の累積確率分布からCFU近似曲線1を算出する。CFU近似曲線1は、CFU数の累積確率分布(微生物の存在確率分布)からポアソン分布の式で算出され、
図4のS7に実線で示す曲線となる。ポアソン分布の式は、
図4、
図5のS7に近似曲線1として示され、式は下記のように示される。
【0052】
同時にS8において、前記S5で算出されたCFU数の累積確率分布とS6で算出されたATP量の累積確率分布とから、ATP近似曲線2を算出する。すなわち、このATP近似曲線2はポアソン分布とΓ(ガンマ)分布とを掛け合わせた式を基に算出される。
具体的には、
[CFU数の累積確率分布(ポアソン分布)]×[ATP量の累積確率分布(Γ分布)]で算出され、
図4、
図5のS8に実線で示す近似曲線2として示される。
ポアソン分布とΓ分布を掛け合せた式は、下記のように示される。
【0054】
次いで、S9においてCFU近似曲線1から、CFU数管理基準値に対応する累積確率を算出する。ここで、CFU数管理基準値は、既存の基準値として予め測定対象室30用に決められている。次いで、S10においてS9で求めた累積確率を近似曲線2に適用し、ATP近似曲線2からこの累積確率に対応するATP量を算出する。そして、この算出されたATP量をATP量管理基準値として設定する。
【0055】
具体的には、
図5のS9、S10に示すように、
(1)CFU管理基準値をCFU近似曲線1に適用し、
(2)CFU管理基準値に対応する累積確率を算出する。
(3)上記で算出した累積確率をATP近似曲線2に適用し、
(4)ATP近似曲線2から上記で算出した累積確率に対応するATP量を算出する。
(5)上記で算出したATP量をATP量管理基準値として設定する。
このときの累積確率は、1.0に近い値となる。
【0056】
S9,S10で求められたATP量管理基準値は設定部23に設定され、通常の微生物監視時に、ATP量管理基準値をもとにATP測定結果の可否の判断に用いられる。
図5のS11において、上記で設定されたATP量管理基準値とATP量測定値が比較され、ATP量測定値がATP量管理基準値より大きいとき、警報発令がなされ、それ以外のとき終了する。具体的には、光学測定・換算部4からのATP量測定値と、設定部23に設定されているATP量管理基準値とが判定部24で比較され、判定結果が表示部10に出力される。
【0057】
本実施例では、蓄積したCFU測定値から累積確率分布および近似曲線を求めるのに、ポアソン分布を用いているが、これに限定されるものではなく、二項分布等、仮定されるサンプルの捕集状態に合わせて確率分布を決めることができる。
【0058】
また、本実施例では、微生物1菌中に含まれるATP量の確率分布としてΓ分布を用いたが、これに限定されるものではなく、正規分布等、仮定される微生物1菌中に含まれるATP量の分布状態に合わせて確率分布を決めることができる。
【0059】
前記したように、CFU数とATP量の各累積確率分布は、測定の回数が増加するに伴い近似してくる。この両累積確率分布の近似性が向上すると、CFU数管理基準値に対応するATP量管理基準値の精度が向上する。したがって、算出されたATP量管理基準値に基づく通常の微生物監視中にも、並行してCFU数とATP量の測定を継続して測定結果を蓄積し、ATP量管理基準値を精度の高い値に更新することができる。
【0060】
この場合、上記のCFU数とATP量の継続測定を適当なタイミングで終了し、この測定結果と過去の測定結果(通常の微生物監視を行う前に計測された測定結果)とに基づいて、前記両累積確率分布を求め直してATP量管理基準値を算出し直し、ATP量管理基準値を更新する。
【符号の説明】
【0061】
1…計測ユニット(微生物計測システム)、2…発光反応手段、4…光学計測・換算部、5…制御部、9…捕集部、10…表示部、11…入力機構、15…CFU計測部、16…CFU蓄積部、17…ATP蓄積部、18、19…確率分布算出部、20、21…近似曲線算出部、22…管理基準値算出部、23…設定部、24…判定部、30…管理対象。