【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る吸気ダクトを有するガスタービンを表す概略構成図である。
図2は、実施例1の吸気ダクトを模式的に示す断面図である。
図3は、実施例1の吸気ダクトの壁体を示す模式図である。
図4及び
図5は、実施例1の吸気ダクトの壁体の一例を示す二面図である。
【0019】
実施例1のダクトは、タービン設備であるガスタービン1の吸気側に接続される吸気ダクト20に適用されている。なお、実施例1では、ガスタービン1の吸気ダクト20に適用して説明するが、ガスタービン1の排気側に接続されるダクトに適用してもよい。また、タービン設備として、ガスタービン1に適用して説明するが、蒸気タービンに適用してもよく、特に限定されない。
【0020】
ガスタービン1は、
図1に示すように、圧縮機11と燃焼器12とタービン13とを含んで構成されている。このガスタービン1には、図示しない発電機が連結されており、発電可能となっている。
【0021】
圧縮機11は、空気を取り込む吸気ダクト20を有し、圧縮機車室21内に入口案内翼(IGV)22が配設されると共に、複数の静翼23と動翼24が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されており、その外側に抽気室25が設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、点火することで燃焼可能となっている。タービン13は、タービン車室26内に複数の静翼27と動翼28が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されている。このタービン車室26の下流側には、排気車室29を介して排気室30が配設されており、排気室30は、タービン13に連続する排気ディフューザ31を有している。
【0022】
また、圧縮機11、燃焼器12、タービン13、排気室30の中心部を貫通するようにロータ(回転軸)32が位置している。ロータ32は、圧縮機11側の端部が軸受部33により回転自在に支持される一方、排気室30側の端部が軸受部34により回転自在に支持されている。そして、このロータ32は、圧縮機11にて、各動翼24が装着されたロータディスク35が複数重ねられて固定され、タービン13にて、各動翼28が装着されたロータディスク36が複数重ねられて固定されている。ロータ32は、圧縮機11側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0023】
そして、このガスタービン1は、圧縮機11の圧縮機車室21が脚部37に支持され、タービン13のタービン車室26が脚部38により支持され、排気室30が脚部39により支持されている。
【0024】
従って、圧縮機11の吸気ダクト20から取り込まれた空気が、入口案内翼22、複数の静翼23と動翼24を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、燃焼される。そして、この燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13を構成する複数の静翼27と動翼28を通過することでロータ32を駆動回転させ、このロータ32に連結された図示しない発電機を駆動する。一方、排気ガス(燃焼ガス)は、排気室30の排気ディフューザ31により圧力に変換され減速されてから大気に放出される。
【0025】
次に、
図2を参照して、吸気ダクト20について説明する。
図2に示すように、吸気ダクト20は、吸気ダクト本体41と、吸気口42とを有している。吸気ダクト本体41は、所定長さを有し、所定形状に屈曲された形状をなし、一端部に吸気口42が形成される一方、他端部が圧縮機車室21(
図1参照)に連通されている。吸気ダクト本体41は、周囲の壁体43によって内部に空気流路(内部流路)Ainが形成され、この空気流路Ainには、吸気口42から取り込まれた空気(流体)が流通する。なお、壁体43は、単層の板材(例えば、鉄板)によって構成されてもよいし、基層、断熱層及び化粧層等の複層の構造材によって構成されていてもよい。このように、吸気ダクト20は、吸気口42から空気を取り込み、取り込んだ空気を、吸気ダクト本体41内の空気流路Ainに沿って圧縮機11へ向けて流通させることができる。
【0026】
上述したように、
図1に示す圧縮機車室21において、複数の静翼23と動翼24が前後方向に交互に配設されている。そして、
図2に示すように、吸気ダクト20の内部では、圧縮機11の動翼24の回転によって、特定の周波数成分の音波U2が発生している。この特定の周波数成分の音波U2は、ガスタービン1の圧縮機11の回転によって発生する基本周波数と倍音が主成分となる。このとき、ガスタービン1は、ロータ32の回転数がほぼ一定の運転とされることが多いことから、基本周波数は、所定の周波数に維持される。なお、特定の周波数成分の基本周波数は、ロータ32の回転数×動翼24の翼枚数に比例する。
【0027】
この特定の周波数成分の音波U2は、吸気ダクト20の吸気口42から音波U1として放出される。また、この特定の周波数成分の音波U2は、吸気ダクト本体41の壁体43に伝播し、壁体43が振動して外部に放出されることから、壁体43の固体伝播が生じる。このため、実施例1では、吸気ダクト本体41の壁体43に、位相領域E1と、逆位相領域E2とを形成している。
【0028】
次に、
図3を参照して、位相領域E1及び逆位相領域E2について説明する。位相領域E1は、空気流路Ainの内部において伝播する特定の周波数成分の音波U2によって、所定の位相で振動する領域となっている。一方で、逆位相領域E2は、空気流路Ainの内部において伝播する特定の周波数成分の音波U2によって、位相領域E1とは逆位相で振動する領域となっている。
【0029】
位相領域E1は、壁体43に対して複数形成され、また、逆位相領域E2は、壁体43に対して複数形成されている。複数の位相領域E1及び複数の逆位相領域E2は格子状に配置されると共に、各位相領域E1と各逆位相領域E2とが相互に隣接して設けられている。なお、位相領域E1及び逆位相領域E2は、吸気ダクト本体41を構成する壁体43の全ての領域に形成してもよいし、一部の領域に形成してもよく、特に限定されない。
【0030】
位相領域E1及び逆位相領域E2は、凹部及び凸部の少なくとも一方を、プレス加工等によって壁体43に形成することで、各領域を形成している。例えば、位相領域E1は、単一の凹部及び凸部の一方によって形成し、逆位相領域E2は、単一の凹部及び凸部の他方によって形成してもよい。また、位相領域E1及び逆位相領域E2は、全てを凹部によって形成してもよいし、全てを凸部によって形成してもよい。
【0031】
このとき、位相領域E1及び逆位相領域E2は、壁体43の外壁面に凹部及び凸部を形成し、壁体43の内壁面を平坦に形成してもよい。また、位相領域E1及び逆位相領域E2は、壁体43の外壁面を平坦に形成し、壁体43の内壁面に凹部及び凸部を形成してもよい。さらに、位相領域E1及び逆位相領域E2は、壁体43自体を凹凸形状に変形させることで、凹部及び凸部を形成してもよい。
【0032】
次に、
図4及び
図5を参照して、吸気ダクト20の壁体43の一例について説明する。なお、
図4に示す壁体43は、位相領域E1及び逆位相領域E2が、壁体43の表面を見たときの平面視における形状が四角形状の凸部45aとなっている。また、
図5に示す壁体43は、位相領域E1及び逆位相領域E2が、壁体43の表面を見たときの平面視における形状が円形状の凸部45bとなっている。先ず、
図4に示す壁体43について説明する。
【0033】
図4に示すように、位相領域E1及び逆位相領域E2は、平面視正方形となる凸部45aを格子状に配置することで構成される。この凸部45aは、その四辺の長さが、例えば、100mm〜300mmとなっており、隣接する他の凸部45aとは、所定の間隔を空けて配置されている。凸部45aは、壁体43の外壁面から突出して形成され、壁体43の内壁面は平坦となっている。
【0034】
壁体43の内壁面には、吸気ダクト20の静的な強度を確保するための補強リブ47が設けられている。補強リブ47は、一方向に複数並ぶ所定の一列の凸部45aと、所定の一列の凸部45aに隣接する他の一列の凸部45aとの間に設けられ、一方向に延びて設けられる。この補強リブ47は、内壁面から突出して設けられていることから、凸部45aと補強リブ47とは、壁体43を挟んで相互に反対側に突出している。
【0035】
次に、
図5に示す壁体43について説明する。
図5に示すように、位相領域E1及び逆位相領域E2は、平面視円形となる凸部45bを格子状に配置することで構成される。この凸部45bは、その直径が、例えば、100mm〜300mmとなっており、隣接する他の凸部45aとは、所定の間隔を空けて配置されている。凸部45bは、凸部45aと同様に、壁体43の外壁面から突出して形成され、壁体43の内壁面は平坦となっている。壁体43の内壁面には、
図4と同様に、吸気ダクト20の静的な強度を確保するための補強リブ47が設けられている。なお、この補強リブ47は、
図4と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
以上のように、実施例1によれば、空気流路Ainを伝播する音波U2によって、吸気ダクト本体41の壁体43が振動しても、壁体43に形成される位相領域E1を介して放出された音波と、壁体43に形成される逆位相領域E2を介して放出された音波とは、相互に逆位相となるため、重ね合わされた音波同士が相殺される。このため、吸気ダクト本体41の壁体43から外部へ音波が放出されても、音波同士が相殺されることから、吸気ダクト本体41の外部へ放出される騒音を抑制することができる。
【0037】
また、実施例1によれば、位相領域E1と逆位相領域E2とを隣接させることにより、位相領域E1を介して放出された音波と、逆位相領域E2を介して放出された音波との相殺を効率良く行うことができるため、吸気ダクト本体41の外部へ放出される騒音をより好適に抑制することができる。
【0038】
また、実施例1によれば、位相領域E1及び逆位相領域E2を、凹部及び凸部によって形成することができる。このため、吸気ダクト本体41の壁体43を、例えば、プレス加工によって凹凸を形成することで、位相領域E1及び逆位相領域E2を簡単に形成することができる。
【0039】
また、実施例1によれば、ガスタービン1の圧縮機11において、ロータ32を軸として動翼24が回転しても、吸気ダクト20の外部に放出される騒音を抑制することができる。
【0040】
なお、実施例1では、位相領域E1及び逆位相領域E2を、単一の凹部及び凸部により形成したが、
図6に示す変形例1の構成としてもよい。
図6は、変形例1の吸気ダクトの壁体を示す模式図である。
図6に示すように、変形例1における位相領域E1及び逆位相領域E2は、複数の凹部及び複数の凸部により形成されている。つまり、位相領域E1は、凹部及び凸部を複数混在させて領域を形成してもよいし、複数の凹部によって領域を形成してもよいし、複数の凸部によって領域を形成してもよい。同様に、逆位相領域E2は、凹部及び凸部を複数混在させて領域を形成してもよいし、複数の凹部によって領域を形成してもよいし、複数の凸部によって領域を形成してもよい。
【実施例2】
【0041】
次に、
図7を参照して、実施例2に係る吸気ダクト50について説明する。
図7は、実施例2の吸気ダクトの壁体を示す模式図である。なお、実施例2では、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分について説明し、実施例1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例2に係る吸気ダクト50では、位相領域E1及び逆位相領域E2が、リブ部51によって形成されている。
【0042】
図7に示すように、位相領域E1及び逆位相領域E2は、リブ部51を壁体43に複数取り付けることで、各領域を形成している。各リブ部51は、一方向に延在して形成されており、複数のリブ部51は、格子状に配置されている。つまり、複数のリブ部51のうち、一部の複数のリブ部51を平行に並べて設け、残りの複数のリブ部51を、一部の複数のリブ部51に直交させ、平行に並べて設けている。このリブ部51によって区画された複数の区画領域は、複数の位相領域E1と複数の逆位相領域E2とが混在して配置されている。なお、複数の区画領域は、複数のリブ部51が格子状に設けられていることから、格子状に配置されている。
【0043】
各位相領域E1は、単一の区画領域によって形成され、各逆位相領域E2は、各位相領域E1と同様に、単一の区画領域によって形成されている。なお、複数の位相領域E1及び複数の逆位相領域E2は、実施例1と同様に、格子状に配置されると共に、各位相領域E1と各逆位相領域E2とが相互に隣接して設けられている。
【0044】
このとき、リブ部51は、壁体43の外壁面に設けてもよい。また、リブ部51は、壁体43の内壁面に設けてもよい。さらに、リブ部51は、壁体43の外壁面及び内壁面の両面に設けてもよい。なお、このリブ部51は、吸気ダクト50の静的な強度を確保するための
図4及び
図5に示す補強リブ47とは異なっており、補強リブ47よりも小さく形成されている。
【0045】
以上のように、実施例2によれば、位相領域E1及び逆位相領域E2を、リブ部51によって形成することができる。このため、吸気ダクト本体41の壁体43にリブ部51を取り付けるだけで、位相領域E1及び逆位相領域E2を簡単に形成することができる。
【0046】
なお、実施例2では、位相領域E1及び逆位相領域E2を、リブ部51で囲まれた単一の区画領域により形成したが、
図8に示す変形例2の構成としてもよい。
図8は、変形例2の吸気ダクトの壁体を示す模式図である。
図8に示すように、変形例2における位相領域E1及び逆位相領域E2は、複数の区画領域により形成されている。