特許第6223859号(P6223859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223859
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】過給機及びモータ冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/10 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   F02B37/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-32907(P2014-32907)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-158161(P2015-158161A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】辻 剛志
(72)【発明者】
【氏名】白石 啓一
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−049299(JP,U)
【文献】 実開昭57−191895(JP,U)
【文献】 特開2013−019355(JP,A)
【文献】 特開2005−315218(JP,A)
【文献】 特開2013−142373(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0239568(US,A1)
【文献】 米国特許第6305169(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/10
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ部に接続されたロータ軸の端部に、内部に冷却用空気を導入する開口部を備えるモータが取り付けられた過給機であって、
イレンサの径方向から前記サイレンサと前記コンプレッサ部との接続部に向けて吸込空気主流が流れ込むように前記サイレンサに形成された吸入空気導入路と、
前記サイレンサにおいて少なくとも出口が前記ロータ軸の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路と、を備えることを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記吸入空気導入路は、前記吸込空気主流を前記モータの軸中心方向へ導くように傾斜壁を備えることを特徴とする請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記モータの前記開口部に、前記吸込空気主流を前記モータの軸中心方向へ導くよう縮径した冷却空気導入路を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の過給機。
【請求項4】
前記モータが、円筒形状のハウジングと、該ハウジングの内部に収納されているステータと、前記ロータ軸の端部に接続されて前記ステータの内部で回転する永久磁石を備えたモータロータとを具備し、
前記ハウジングの内周面に1または複数の凹溝部を設けるとともに、前記内周面及び前記凹溝部に放熱グリースを塗布されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の過給機。
【請求項5】
前記ハウジングの外壁面に放熱フィンが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の過給機。
【請求項6】
ンプレッサ部に接続されたロータ軸の端部に、内部に冷却用空気を導入する開口部を備えるモータが取り付けられた過給機のモータ冷却方法であって、
イレンサの空気取入口から導入されて吸入空気導入路を通る吸込空気主流と、前記サイレンサにおいて少なくとも出口が前記ロータ軸の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路を通る冷却用吸込空気と、によって前記モータを冷却することを特徴とする過給機のモータ冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機及びモータ冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の燃焼用空気を圧縮し、密度の高い空気を燃焼室内へ送り込む過給機が知られており、たとえば舶用ディーゼル機関や発電用ディーゼル機関のような2ストローク低速機関等においても広く使用されている。このような過給機は、燃焼用空気を圧縮する圧縮機及び圧縮機の駆動源になるタービンがロータ軸に接続され、ケーシング内に収納されて一体に回転する。なお、タービンは、内燃機関の排気ガスが保有するエネルギにより駆動される。
【0003】
上述した過給機には、ロータ軸に高速の電動発電機を接続したハイブリッド過給機が知られている。このハイブリッド過給機は、通常の過給機と同様に加圧した燃焼用空気を内燃機関に供給するとともに、余剰の排ガスエネルギを使って発電し、電力を供給することもできる。なお、ハイブリッド過給機の電動発電機を圧縮機側のサイレンサ内部に設置する場合、一般的にサイレンサを貫通する程度の大きさを有している。
【0004】
また、上述したハイブリッド過給機の電動発電機に替えて小型化したモータを採用し、このモータを過給機に内蔵した電動アシスト過給機が知られている。この電動アシスト過給機は、ロータ軸を吸入空気導入路側へ延長した軸延長部に小型化したモータが取り付けられる。この場合、モータが小型であるため、モータロータの重量を既存の過給機軸受により充分支えることが可能であるため、モータ専用の軸受を不要とする、すなわち、モータ専用の軸受を持たないモータオーバハング構造が一般的である。このような電動アシスト過給機は、例えば主機関低負荷時に十分な排気ガス量を得られない場合、主機への掃気圧力が足りなくなるため、従来の補助ブロアの使用に替えてモータに通電し、モータの駆動力を加えて圧縮機の駆動を加勢する。
【0005】
また、下記の特許文献1には、電動過給機で使用されるモータの過熱を防ぐため、冷却媒体のオイルを循環させてモータを冷却する制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4959753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した電動アシスト過給機のモータには、モータ専用の軸受を持たないモータオーバハング構造を採用しているものがある。このようなモータオーバハング構造の場合、小型化されたモータのモータロータが過給機のロータ軸の延長部に取り付けられているので、モータロータに専用の軸受を設ける必要がなく、過給機本体を支持する軸受(ロータ軸の軸受)により支持された構造となっている。
【0008】
また、特許文献1においては、モータの過熱を防ぐために、軸受に供給するオイル(潤滑油)を循環させてモータを冷却しているが、モータオーバハング構造の電動アシスト過給機においては、モータ専用の軸受を有していないため、モータの冷却媒体として潤滑油を使用することができず、従って、例えば、過給機吸込空気を用いて冷却する方法が採用されている。
なお、上述したハイブリッド過給機等のように、モータ専用の軸受を有するモータを採用した構造にすることも可能ではあるが、このような構造にする場合は、潤滑油配管と油切のための圧縮空気配管の新設が必要となる。さらに、過給機とモータが各々軸受を持つことにより、過給機モータ間の軸方向変位、芯ズレを吸収するためにダイアフラムカップリング等が必要となるため、コストが上がりレトロフィットが難しくなる。
【0009】
このような背景から、例えばモータオーバハング構造のように、コンプレッサ部に接続されたロータ軸のサイレンサ側端部にモータが取り付けられた構造を採用している過給機においては、モータの冷却媒体に過給機吸込空気を用いて効率よく冷却することが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、コンプレッサ部に接続されたロータ軸のサイレンサ側端部にモータが取り付けられた構造を採用している過給機において、冷却媒体に過給機吸込空気を用いて効率よくモータを冷却できる過給機及び過給機のモータ冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る過給機は、コンプレッサ部に接続されたロータ軸の端部に、内部に冷却用空気を導入する開口部を備えるモータが取り付けられた過給機であって、サイレンサの径方向から前記サイレンサと前記コンプレッサ部との接続部に向けて吸込空気主流が流れ込むように前記サイレンサに形成された吸入空気導入路と、前記サイレンサにおいて少なくとも出口が前記ロータ軸の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の過給機によれば、前記サイレンサの径方向から前記サイレンサと前記コンプレッサ部との接続部に向けて吸込空気主流が流れ込むように前記サイレンサに形成された吸入空気導入路と、前記サイレンサにおいて少なくとも出口がロータ軸の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路と、を備えている。このため、冷却空気取入流路を通る冷却用吸込空気は、全量が同軸上にあるモータへ向けて供給され、過給機吸込空気の一部がモータ内部や周辺部に供給されるため、効率よく冷却を行うことが可能になる。
【0012】
本発明の過給機において、前記吸入空気導入路は、前記吸込空気主流を前記モータの軸中心方向へ導くように傾斜壁を備えることが好ましく、これにより、モータに向けて供給される吸込空気主流の供給量を増し、モータの冷却効率を向上させることが可能になる。
【0013】
本発明の過給機においては、前記モータの前記開口部に、前記吸込空気主流を前記モータの軸中心方向へ導くよう縮径した冷却空気導入路を備えることが好ましく、これにより、モータ内部に向けて過給機吸込空気を確実に導くことが可能になる。
【0014】
本発明の過給機において、前記モータが、円筒形状のハウジングと、該ハウジングの内部に収納されているステータと、前記ロータ軸の端部に接続されて前記ステータの内部で回転する永久磁石を備えたモータロータとを具備し、前記ハウジングの内周面に1または複数の凹溝部を設けるとともに、前記内周面及び前記凹溝部に放熱グリースを塗布することにより、ハウジングからの放熱性を向上させることができる。
この場合、前記ハウジングの外壁面に放熱フィンを設けることにより、ハウジングからの放熱性をより一層向上させることができる。
【0015】
本発明の過給機のモータ冷却方法は、コンプレッサ部に接続されたロータ軸の端部に、内部に冷却用空気を導入する開口部を備えるモータが取り付けられた過給機のモータ冷却方法であって、サイレンサの空気取入口から導入されて吸入空気導入路を通る吸込空気主流と、前記サイレンサにおいて少なくとも出口が前記ロータ軸の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路を通る冷却用吸込空気と、によって前記モータを冷却することを特徴とするものである。
【0016】
このような本発明の過給機のモータ冷却方法によれば、前記サイレンサの空気取入口から導入されて吸入空気導入路を通る吸込空気主流と、前記サイレンサにおいて少なくとも出口が前記ロータ軸の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路を通る冷却用吸込空気と、によって前記モータを冷却するので、冷却空気取入流路を通る冷却用吸込空気の全量が同軸上にあるモータへ向けて供給され、過給機吸込空気の一部がモータ内部や周辺部に対し供給されるため、冷却を効率よく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によれば、コンプレッサ部に接続されたロータ軸のサイレンサ側端部にモータが取り付けられた構造の過給機において、モータの冷却媒体として過給機吸込空気の一部を用い、モータを効率よく確実に冷却することが可能になる。この結果、モータを備えた過給機は、その信頼性や耐久性が向上するという顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る過給機及びモータ冷却方法の一実施形態を示す要部断面図である。
図2】所定位置に取り付けられたモータをサイレンサ方向から見た図1の左側面図である。
図3】(a)はモータを構成するハウジングの左側面図、(b)はモータを構成するハウジングの縦断面図である。
図4】本発明に係る過給機の概略構成例を示す縦断面図である。
図5図4に示す過給機のモータ周辺部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る過給機及びモータ冷却方法について、その一実施形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明に係る過給機の一例として、電動アシスト過給機の概略構成例を示す縦断面図である。図示の電動アシスト過給機(以下、「過給機」と呼ぶ)10は、例えば、図示しない舶用ディーゼル機関(例えば、低速2サイクルディーゼル機関)に備えられて、舶用ディーゼル機関を構成するシリンダライナ(図示せず)の内部と連通する給気マニホールド(図示せず)に、圧縮された空気を供給する装置である。
【0020】
図4に示すように、本実施形態の過給機10は、ガス入口ケーシング11、ガス出口ケーシング12、軸受台13及びコンプレッサ側の空気案内ケーシング14がボルト(図示せず)によって一体に締結されることにより構成されている。ロータ軸15は、軸受台13内に設けたスラスト軸受16及びラジアル軸受17、18により回転自在に支持されており、一端部にタービン部を構成するタービン19を有し、他端部にコンプレッサ部を構成するコンプレッサ羽根車(羽根車)20を有している。
【0021】
タービン19は、外周部に多数のブレード19aを有している。このブレード19aは、ガス入口ケーシング11に設けられた排気ガス導入路22と、ガス出口ケーシング12に設けられた排気ガス排出路23との間に配置されている。
一方、コンプレッサ羽根車20は、外周部に多数のブレード20aを有している。このブレード20aは、過給機ケーシングの一部である空気案内ケーシング14に設けられた吸入空気導入路(吸気流路)24の下流側に配置されている。吸入空気導入路24は、コンプレッサ羽根車20を介して渦室25に接続され、さらに、渦室25は図示しない吸入空気導入路を介してエンジンの燃焼室に接続されている。
【0022】
また、上述した過給機10は、吸入空気導入路24の上流側にサイレンサ26を備えている。このサイレンサ26は、コンプレッサ部で圧縮する吸入空気が吸入空気導入路24に吸入される前段(上流側)に、すなわち吸入空気導入路24の入口部上流側に設置され、吸入空気を通過させることで空気流を整流するフィルタ機能と、空気吸入によって発生する騒音を吸収する消音機能とを有している。このサイレンサ26は、中間ピース27を介して空気案内ケーシング14に支持されている。
【0023】
そして、本実施形態の過給機10は、ロータ軸15に接続したモータ30を備えている。このモータ30は、ハイブリッド過給機に用いられていた電動発電機の発電機能を省略し、電動機能に絞ることで小型化したものである。このため、モータ30は、ロータ軸15を吸入空気導入路24側へ延長して取り付ける構造、すなわち、モータ30が専用の軸受を持たないモータオーバハング構造となる。従って、モータ30及び後述するモータ30のモータロータ31は、ロータ軸15を支持するスラスト軸受16及びラジアル軸受17、18により支持された構造となる。
【0024】
図5は、上述したモータ30の周辺部を拡大した図である。
モータ30は、モータロータ31、ステータ32及びハウジング33を主な構成要素とする。このうち、モータロータ31は、外周面に永久磁石を備える円柱形状の部材であり、その一端部がロータ軸15の端部とフランジ結合により接続されている。このフランジ結合は、ロータ軸15の吸入空気導入路24側(同図において左側)となる端部に設けたフランジ15aと、モータロータ31のコンプレッサ羽根車20側(同図において右側)となる端部に設けたフランジ31aとを接合し、複数のボルト・ナット34を用いて連結したものである。
【0025】
ステータ32は、円筒形状のハウジング33内に収納設置されている。このハウジング33は、図4に示すように、サポート部材35を介して空気案内ケーシング14に支持されている。なお、サポート部材35と空気案内ケーシング14との間及びサポート部材35とハウジング33との間は、各々六角ボルト36によって連結されている。
【0026】
ステータ32の中空部には、軸中心部を通るモータロータ31がステータ32に対して非接触の状態で配設されている。
また、ハウジング33の吸入空気導入路24側となる先端部には、キャップ37が六角穴付ボルト38により固定して取り付けられている。このキャップ37は、サイレンサ26側よりコンプレッサ羽根車20側に向かって位置し、軸中心部には円形の開口部37aが設けられている。すなわち、モータ30は、ロータ軸15の軸延長部がサイレンサ26に到達しない大きさまで小型化されている。
【0027】
さて、上述した構成の過給機10は、運転時に温度上昇するモータ30を冷却することが必要になる。このため、本実施形態では、過給機吸込空気の一部を用いてモータ30を冷却する。
モータ30の冷却に使用する過給機吸込空気は、図1に示すように、サイレンサ26の空気取入口26aから導入されて吸入空気導入路24を通る吸込空気主流と、サイレンサ26の軸方向中心部を貫通してロータ軸15の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路40を通る冷却用吸込空気と、を備えている。すなわち、過給機吸込空気には、吸入空気導入路24を通って吸入された吸込空気主流と、冷却空気取入流路40を通って吸入された冷却用吸込空気とがあり、異なる経路を通った空気(吸込空気主流及び冷却用吸込空気)が合流して空気案内ケーシング14内に流入する。なお、ここでの冷却用吸込空気は、吸込空気主流と区別するための名称であり、用途を冷却のみに限定するものではない。
【0028】
吸込空気主流は、サイレンサ26の外周部に設けた空気取入口26aから吸入空気導入路24に流入し、ロータ軸15の軸方向へ向けて空気案内ケーシング14内に流入する。この吸込空気主流は、一部が冷却用吸入空気とともにモータ30の冷却に使用される。なお、吸込空気主流及び冷却用吸込空気は、モータ30の冷却に使用されたものも含めて空気案内ケーシング14内で合流した後、コンプレッサ羽根車20によって圧縮される。
【0029】
一方、冷却用吸入空気は、冷却空気取入流路40を通って流入するが、この冷却空気取入流路40は、少なくとも冷却空気取入流路40の出口部分がロータ軸15の軸中心線上にあるようにサイレンサ26を貫通し、設けられている。この冷却空気取入流路40は、全体がロータ軸15の軸中心線上でサイレンサ26を直線状に貫通していてもよい。このため、冷却空気取入流路40の出口41は、ロータ軸15の軸中心線上に取り付けられたモータ30のキャップ37と対向して開口する。すなわち、冷却空気取入流路40の出口41は、ロータ軸15の軸中心線上において、キャップ37の開口部37aと対向している。
なお、冷却空気取入流路40の入口42は、サイレンサ26の軸方向端面に取り付けた端子台50の内部に開口し、端子台50の外壁面適所に設けた空気取入口(不図示)から冷却用吸込空気を導入する。冷却空気取入流路40の入口42は、冷却空気取入流路40の設置方法により、ロータ軸15の軸中心線と合致せずに、軸中心から外れた位置に入口42を開口させてもよい。
【0030】
このため、冷却空気取入流路40から流入する冷却用吸込空気は、その全量が同軸上にあるモータ30へ向けて供給される。具体的に説明すると、冷却空気取入流路40の出口41と、モータ30の先端部に取り付けられたキャップ37の開口部37aとが同軸上にあるので、直線状の冷却空気取入流路40から流出する冷却用吸込空気は、そのまま直進して全量が開口部37aからモータ30内に流入する。また、吸込空気主流の一部も冷却用吸込空気と合流し、開口部37aから流入する。
こうしてモータ30の内部に流入した冷却用吸込空気及び吸込空気主流の一部は、モータロータ31とステータ32との間に形成されている隙間を通過するなどして、モータ30のキャップ37と反対側からコンプレッサ羽根車20側へ流出する。
【0031】
この結果、モータ30の内部を通過して流れる冷却用吸込空気及び吸込空気主流の一部は、モータ30から吸熱して冷却に利用することができる。また、吸込空気主流の多くがモータ30の外周側を通過して流れるので、この吸込空気主流もモータ30から吸熱して冷却に利用することができる。従って、過給機吸込空気の一部を用いるモータ30の冷却は、モータ30の内部や周辺部を通過する十分な空冷用空気量を確実に確保でき、特に、モータ30の内部を通過する空冷用空気として、主に冷却用吸込空気を確実に導入して効率よく冷却することができる。
【0032】
また、上述した実施形態(図1参照)の過給機10には、吸入空気導入路24のロータ軸側出口を延長し、吸込空気主流をモータ30の軸中心方向へ導くように傾斜壁60を設けてある。すなわち、この傾斜壁60は、吸入空気導入路24を形成する壁面のうち、ロータ軸15側となる流路内側壁面24aの傾斜面を冷却空気取入流路40の出口41まで延長したものである。なお、傾斜壁60が冷却空気取入流路40の出口41よりロータ軸側(図1において右側)に突出すると、冷却用吸込空気の流れを妨げることになり、冷却用吸込空気が適切にモータ30内部へ導かれなくなるため好ましくない。
【0033】
さらに、この傾斜壁60は、その延長線が、キャップ37の開口部37a内またはその近傍で、ロータ軸15の軸中心線上で交差するような角度設定にするとよい。
このような傾斜壁60を設けることにより、モータ30に向けて供給される吸込空気主流の供給量が増加するので、モータ30の内部や外周の冷却に利用する空冷用空気量を増し、モータ30の冷却効率を向上させることができる。
【0034】
また、上述した実施形態の過給機10には、モータ30のサイレンサ26側となる先端部に、過給機吸込空気の一部及び冷却用吸込空気をモータ30の軸中心方向へ導くようコンプレッサ羽根車20側へ縮径したコーン形状の冷却空気導入路39を設けることが望ましい。図示の構成例では、図1及び図5に示すように、キャップ37の開口部37aを形成する内周面37b及びステータ32の内周面端部32aにより、互いに連続するコーン形状の冷却空気導入路39を形成しているが、キャップ37の開口部37a側だけに部分的に冷却空気導入路39を形成してもよい。
【0035】
このような冷却空気導入路39を設けることにより、過給機吸込空気の一部及び冷却用吸込空気をモータ30の内部に向けて確実に導くことができる。このため、モータ30の内部では、モータロータ31とステータ32との間に形成された隙間を十分な量の空気が流れ、効率のよい冷却を行うことができる。
なお、ステータ32の内周面端部32aが冷却空気導入路39の一部を形成することにより、モータロータ31とステータ32との間に形成された隙間に対して空気をより確実に導くことができる。
【0036】
さらに、上述した実施形態の過給機10は、例えば図3(b)に示すように、ハウジング33の内周面33aに全周にわたる1または複数の凹溝部33bを設け、内周面33a及び凹溝部33bに放熱グリースを塗布することが望ましい。
具体的に説明すると、ハウジング33の内周面33aには、全周にわたる凹溝部33bが軸方向に複数(本実施形態では7列)設けられている。そして、内周面33a及び凹溝部33bに放熱グリースを薄く塗布しておくことで、運転時におけるハウジング33からの放熱性が向上する。また、ハウジング33からの放熱性を向上させるため、ハウジング33の外周面には複数の放熱フィン33cが設けられている。
【0037】
上述したように、本実施形態の過給機10は、過給機吸込空気として、サイレンサ26の空気取入口26aから導入されて吸入空気導入路24を通る吸込空気主流と、吸入空気導入路24の少なくとも出口はサイレンサ26の軸方向中心部を貫通してロータ軸15の軸中心線上に設けられた冷却空気取入流路40を通る冷却用吸込空気とを用い、その一部を空冷用空気にしてモータ30を冷却するモータ冷却方法を実施している。
このため、特に、冷却空気取入流路40を通る冷却用吸込空気の全量が同軸上にあるモータ30へ向けて供給されるようになる。このため過給機吸込空気の一部がモータ30の内部や周辺部に供給されるため、効率よく冷却を行うことが可能となる。
【0038】
上述した本実施形態により、モータオーバハング構造を採用している過給機10は、モータ30の冷却媒体として、冷却空気取入流路40を通る冷却用吸込空気と過給機吸込空気の一部を用いることで、モータ30を効率よく確実に冷却できるため、過給機10の信頼性や耐久性が向上する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 電動アシスト過給機(過給機)
11 ガス入口ケーシング
12 ガス出口ケーシング
13 軸受台
14 空気案内ケーシング
15 ロータ軸
19 タービン
20 コンプレッサ羽根車
22 排気ガス導入路
23 排気ガス排出路
24 吸入空気導入路
25 渦室
26 サイレンサ
30 モータ
31 モータロータ
32 ステータ
33 ハウジング
33a 内周面
33b 凹溝部
33c 放熱フィン
35 サポート部材
36 六角ボルト
37 キャップ
39 冷却空気導入路
40 冷却空気取入流路
60 傾斜壁
図1
図2
図3
図4
図5