(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エンジンを構成する部品間の摩耗を抑制し、エンジンの故障を防止するとともに、エンジンをオーバーホールする頻度やオーバーホールした際に交換する部品の数を減らすため、2サイクルディーゼルエンジンのシリンダ内には、潤滑性に優れたシリンダ油を供給することが重要である。
【0003】
船舶等で使用されるクロスヘッド型2サイクルディーゼルエンジンにおいて、クランクケース内には軸受における流体潤滑のためのシステム油が供給され、シリンダ内にはシリンダライナーとピストンリングとの間における摺動面潤滑のためのシリンダ油が供給される。シリンダ油は、シリンダ油を貯蔵する供給タンクから供給され、シリンダライナーに連通して設けられた注油ノズルを通りシリンダ内部に注入される。シリンダ内部に供給されたシリンダ油は、燃料と共に燃焼するか、ピストンリングの往復運動によりシリンダライナーの内壁面から下方に設置されるランタンスペースに掻き落とされる。
【0004】
従来、シリンダ内の潤滑に使用されたシリンダ油は、金属摩耗粉などの不純物が含まれるため、ピストンリングやシリンダライナーの摩耗を促進することになるとして、再利用されることはなかった。このためシリンダ内には、常に新たなシリンダ油が供給され、ピストンリングによってシリンダ下方に掻き落とされたシリンダ油は、ランタンスペースに連通して設けられた廃油管からドレン油として排出され焼却又は廃油処理されていた。
【0005】
このように、従来のシリンダ油の供給システムにおいては、シリンダ油は一度だけの使用で使い捨てるものであるため、船舶の動力として使用する大型のエンジンにおいては、ドレン油として排出されるシリンダ油の量はきわめて多く、コストの高騰を招くばかりでなく、環境への対応を検討する必要もあった。
【0006】
このため、2サイクルディーゼルエンジンのシリンダ内の潤滑効果を高め、エンジンの性能を十分発揮させるとともに、ドレン油として排出されるシリンダ油をなくすことができるシリンダ油の循環供給システムの開発が求められる。
【0007】
【特許文献1】特開2011−231685号公報
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面にしたがって説明する。
【0020】
本発明は、2サイクルディーゼルエンジンのシリンダ内から回収した、微粒子を含有する回収シリンダ油を、新油と混合し、回収シリンダ油の配合量が0.1〜30質量%になるように調製した混合シリンダ油をシリンダ内に再供給することを特徴とするシリンダ油の循環供給システムである(
図1)。
【0021】
図2は、船舶用クロスヘッド型2サイクルディーゼルエンジン(2)の一例を示すものである。ピストン(3)及びピストン(3)に外挿嵌着されたピストンリング(4)はシリンダライナー(5)の内部を上下に往復摺動するようになっている。また、ピストン(3)の下端から延出するピストン棒(6)は連接棒(7)の上端にあるクロスヘッドピン(8)に回動自在に連結しており、連接棒(7)の下端部は、クランク軸(9)における偏心したアーム部(9a)先端に回動自在に取り付けられている。そしてピストン(3)の上下の往復摺動は、ピストン棒(6)、クロスヘッドピン(8)、連接棒(7)を介してクランク軸(9)の回転運動に変換され出力される。
【0022】
シリンダライナー(5)は、シリンダジャケット(10)に固定され、クランクケース(11)の上部に設置される。シリンダライナー(5)の上部には、排気ガスを排出するための排気弁(12)を内蔵したシリンダカバー(13)が取り付けられている。
【0023】
クランクケース(11)内の各部位に給油される潤滑油にはシステム油(19)が使用される。システム油はシリンダ油と異なり繰り返し使用されるもので、所定期間使用した後に交換される。
【0024】
シリンダジャケット(10)の底部はピストンスタッフィングボックス(14)により、ピストン棒(6)を摺動可能にシールし、ピストン(3)の往復運動により掻き落とされたシリンダ油を溜めるランタンスペース(15)を形成している。ピストン(3)が下降するとシリンダジャケット(10)の側面にある吸気口(16)からランタンスペース(15)に取り入れた空気を掃気孔(17)を通してシリンダライナー(5)内に吸気し、ピストン(3)の上昇により燃料とともに圧縮して燃焼させる。燃焼により生じた排気ガスは排気弁(12)を通り排気管(28)に排出される。
【0025】
シリンダライナー(5)には注油ノズル(18)が連通して設けられており、シリンダライナー(5)とピストンリング(4)との潤滑のためのシリンダ油が注入される。本発明では、ランタンスペース(15)から回収した回収シリンダ油(24)と未使用の新油(25)を所定の割合で混合し調製した混合シリンダ油(20)が供給タンク(21)から送り込まれるようになっている。
【0026】
注油ノズル(18)からシリンダ内に供給されたシリンダ油は、燃料と共に燃焼したり、ピストン(3)の往復運動によりランタンスペース(15)に掻き落とされる。
【0027】
従来、掻き落とされたシリンダ油は、エンジン内部の摩耗により生じた金属粉や燃料が燃焼した後に発生したカーボン等を多量に含んでおり、再利用することは困難であると考えられ、ランタンスペースに落下したシリンダ油は、ランタンスペース(15)に連通して設けられた排油管(22)から排出され、ドレン油として焼却又は廃油処理されていた。また、エンジン内に供給されたシリンダ油の一部は、排気ガスとともに排気弁(12)を通り、排気管(23)に付着するが、このような排気管(23)に付着したシリンダ油も従来は焼却等されていた。このように従来は、ランタンスペースに落下したシリンダ油や排気管に付着したシリンダ油は焼却又は廃油処理し、シリンダ内部には常に新たなシリンダ油を供給することとしていた。
【0028】
本発明は、ランタンスペース(15)から回収した回収シリンダ油には優れた潤滑効果があることを新たに見出し、効果的且つ実用的な回収シリンダ油の再利用システムを開発し完成したものである。以下に、回収シリンダ油の潤滑性について記載する。
【0029】
潤滑油が有する潤滑効果を評価するための試験法としてシェル四球式摩擦試験(ASTM D 2783)がある。シェル四球式摩擦試験は、直径が1/2インチの三個の鋼球を固定した試料容器に潤滑油を入れる。そして、三個の固定球それぞれに接触するように、一個の回転球を上方から押し付ける(
図4)。回転球は所定の荷重を加えながら所定の速度で回転させ、回転球が融着(焼き付き)が生じたときの加重(焼付き発生圧力)を求める。したがって、加重(焼付き発生圧力)の数値が大きいほど、エンジンにおける焼き付きが生じにくく、潤滑油としての機能がすぐれることを示す。
【0030】
評価するシリンダ油は、未使用のシリンダ油(新油)と、ランタンスペースから回収した回収シリンダ油(回収油)と、新油と回収油とを所定の割合で混合した混合油(新油:回収油=7:3あるいは新油:回収油=9:1)とし、それぞれの試験油について焼付き発生圧力を測定した。なお、回収油は、ランタンスペースから回収後、遠心分離機およびフィルタ装置で浄化したものを使用した。
【0032】
表1は、それぞれの試験油について測定した焼付き発生圧力の数値を示す。表に示す数値から、ランタンスペースから回収した回収油は新油より焼付きが発生する圧力がきわめて高く、潤滑性に優れることを確認することができる。また、混合油においても新油と同等以上の焼付き発生圧力であることから、回収油を新油に混合することで、新油の潤滑性を向上させることが可能であることが確認できる(
図3)。
【0033】
表2に、シェル四球式摩擦試験を行った試験油の物性および含有成分を示す。
【0035】
表中、新油と回収油について含有成分を比較すると、新油のペンタン不溶解分の含有率は0.02%の微量であるのに対し、回収油のペンタン不溶解分の含有率は1.11%であり、回収油ではペンタン不溶解分の含有量が約50倍に増加していることが確認された。また、回収油を新油と混合し所定の割合に調製した混合油においてもペンタン不溶解分が増量していることが確認できる。
【0036】
これらの結果は、ランタンスペースから回収した回収油がペンタン不溶解分として示される微粒子を多く含有するものであり、焼付きの防止にすぐれた効果を発揮すること、また、回収油を新油と混合することによっても、潤滑性が向上して焼付きを抑制することができることを示すものである。新油と混合する回収油の割合としては、ペンタン不溶解分の含有率が新油では0.02%、回収油では1.11%であることから、たとえ回収油を新油に0.1%配合したとしても、ペンタ不溶解分は0.001%増量することとなり、新油に含まれるペンタン不溶解分に対しては、5%増量することに相当するため、焼付きの防止に十分な効果を奏することが期待できる。したがって、新油に配合する回収油の割合としては0.1%以上であることが好ましい。
【0037】
一方、新油に配合する回収油の量は多いほど焼付きの防止効果が期待できるが、船舶等における動力機関として2サイクルディーゼルエンジンを安定して連続稼働する場合、ランタンスペースから回収できる回収シリンダ油(回収油)の量は、シリンダ内に供給するシリンダ油の約30質量%が上限となることが確認された。このため、2サイクルディーゼルエンジンを長期に稼働するための循環システムとしては、混合油に配合される回収油の割合は、30%を上限とすることが好ましい。
【0038】
このように本発明の潤滑油の循環供給システムは、2サイクルディーゼルエンジンのシリンダ内から回収した、微粒子を含有する回収シリンダ油を、新油と混合し、回収シリンダ油が0.1〜30質量%となるように調製した混合シリンダ油(混合油)をシリンダ内に再供給することにより、2サイクルディーゼルエンジンの摩耗を抑え、エンジンを長期に亘り安定して連続運転可能にするものである。
【0039】
図1に示すように、ランタンスペース(15)から回収した回収シリンダ油(24)は、回収タンク(26)に一旦貯蔵される。シリンダ油の回収は、ランタンスペースに連通して設けられた排油管(22)を利用することができる。回収タンク(26)は、これに連結する浄化タンク(27)内に貯蔵された回収シリンダ油(24)の浄化処理が完了するまでの間、ランタンスペース(15)に連続的に掻き落とされるシリンダ油を回収して一時貯蔵するものであり、浄化タンク(27)の浄化処理が完了し浄化タンク内のシリンダ油が供給タンク(21)に移送された後、回収タンク(26)内の回収シリンダ油は浄化タンク(27)に移送される。したがって、回収タンク(26)は、浄化タンク(27)の回収シリンダ油が浄化処理される間、ランタンスペース(15)に溜まるシリンダ油を回収し収容するのに十分な容積とすることが好ましい。
【0040】
また、エンジン内に供給されたシリンダ油の一部は、排気ガスとともに排気弁(12)を通り、排気管(23)に付着する(
図2)。このような排気管(23)に付着したシリンダ油は、従来は焼却又は廃油処理していたが、回収タンク(26)に回収することにより、ランタンスペース(15)から回収した回収シリンダ油(24)とともに、浄化され再利用することが可能となる(
図1)。
【0041】
回収タンク(26)に貯蔵された回収シリンダ油(24)は、回収タンク(26)に連結された浄化タンク(27)に移送される。浄化タンク(27)は、回収シリンダ油(24)を貯蔵するとともに、浄化タンク(27)に連結した遠心分離機(28)、あるいはフィルター装置(29)との間で、回収シリンダ油を循環させることにより、回収シリンダ油に含有される大粒径の金属粉やカーボン等の不純物を取り除き、シリンダ油を浄化するためのものである。
【0042】
遠心分離器(28)とフィルター装置(29)は浄化タンク(27)に自由に連結することができ、例えば、遠心分離機(28)とフィルター装置(29)とを直列あるいは並列に配列して浄化タンクに連結することも可能ではあるが、
図1に示すように、浄化タンク(27)に遠心分離機(28)を連結し、浄化タンクと遠心分離機の間で回収シリンダ油を循環させる第1の循環回路(A)を形成するとともに、第1の循環回路(A)とは別に、浄化タンク(27)と前記遠心分離機(28)との間にフィルター装置(29)を連結し、回収シリンダ油(24)を浄化タンク(27)からフィルター装置(29)と遠心分離機(28)を経て浄化タンク(27)に戻す第2の循環回路(B)を形成することが好ましい。このような循環回路を形成することにより、状況に応じて、第1の循環回路(A)によるシリンダ油の第1の浄化処理と第2の循環回路(B)によるシリンダ油の第2の浄化処理とを同時あるいは連続して効率的に行うことができる。また、第1の浄化処理と第2の浄化処理に用いる遠心分離機を共通のものとすることで省スペース化が可能となり、船舶内の限られたスペースにも浄化システムを容易に組み入れることができ、船舶の航行などエンジンの稼働中にも浄化処理を行いながら運航することが可能となる。
【0043】
遠心分離機(28)は、回収シリンダ油(24)に含有される粒径の大きい不純物を除去することを目的とするものである。また、フィルター装置(29)は、回収シリンダ油の精密濾過を目的とするものであり、例えば、薄い紙を多数積層したフィルターエレメントを利用する精密濾過装置を使用して、シリンダ油中に混入するエンジンの摩耗による生じた金属粉や燃料の燃焼により発生したカーボン等の粒子をブラウン運動を利用して紙の繊維に付着させて除去することが好ましい。かかる精密濾過装置は、特開平11−257038号公報に開示されており、ティッシュペーパーのような薄い紙を多数積層したフィルターエレメントを含み、紙の積層間隙にシリンダ油を流過させ、シリンダ油中に含有される金属粉やカーボン等の不純物を粒子のブラウン運動により紙の繊維に付着させて除去するようにしたものである。
【0044】
フィルターエレメントは、長尺の紙をトイレットペーパー状に巻回した構造であっても、円板状に切断した紙を多数積層したものであっても良い。かかる精密濾過手段での濾過は、シリンダ油に混入する不純物が、ブラウン運動により油中を移動し、紙の繊維に付着することにより達成される。従って、不純物の濾過を効果的に達成するには、油中において不純物が十分なブラウン運動を発揮できる状態であることが要求される。不純物の割合が多いと、油中における不純物のブラウン運動が低下し、エンジンの内壁等に付着した不純物の油中への移動が減少するとともに、油中に存在している不純物の移動量も減少し、紙の繊維への付着量が少なくなり、濾過効率が低下することとなる。
【0045】
したがって、浄化タンク(27)内の回収シリンダ油(24)に含まれる不純物の濃度が高い場合には、まず第1の循環回路(A)による回収シリンダ油の第1の浄化処理を行い、つぎに第2の循環回路(B)による回収シリンダ油の第2の浄化処理を行えば、遠心分離機により大きな不純物が先に除去されているため、フィルターの目詰まりすることが少なくすることができ、不純物の除去効率を高めることができる。
【0046】
一方、浄化タンク内の回収シリンダ油に含まれる不純物の濃度が低い場合には、第1の循環回路(A)による第1の浄化処理と第2の循環回路(B)による第2の浄化処理とを同時に並行して行うことができ、回収シリンダ油を効率的に浄化処理することができる。
【0047】
回収シリンダ油(24)は、燃料の燃焼により発生した水分が混入しており、潤滑性能が低下している。このため、浄化タンク(27)は、約110〜120℃に加温し、内部の回収シリンダ油を加熱することにより含有される水分を蒸発させ潤滑性能を回復させることが好ましい。
【0048】
浄化タンク(27)において浄化した回収シリンダ油に含有される微粒子の粒度分布について、遠心分離機(28)のみを使用して浄化した場合と、遠心分離機(28)とフィルター装置(29)を併用して浄化した場合を
図5に示す。
【0049】
図5に示すように、遠心分離機(28)のみを使用して浄化した場合(a)、遠心分離機(28)とフィルター装置(29)を併用して浄化した場合(b)ともに、回収シリンダ油に含有される微粒子の粒度分布は、粒径0.1〜1μmの範囲にピークを有する。また、2つのグラフを比較すると、遠心分離機(28)のみを使用して浄化した場合(a)には、粒径6〜60μmの範囲にもピークがあるのに対し、遠心分離機(28)とフィルター装置(29)を併用して浄化した場合(b)には、10μm以上の粒子がなく、粒径0.1〜1μmの範囲にメインのピークがあり、特に、粒径0.1〜0.5μmの範囲に鋭いピークが表れる。10μm以上の大きい粒径の粒子が混入していると、エンジン部品の表面を傷つけるなどして摩耗を促進し、却ってエンジンを傷めるおそれがあることから、シリンダ内に再供給するための回収シリンダ油としては、フィルター装置により浄化処理したものを使用することが好ましい。
【0050】
浄化した回収シリンダ油(24)と未使用のシリンダ油(新油)(25)との混合は、浄化タンク(27)にシリンダ油(新油)(25)を注入することにより行う。浄化タンク(27)内で調製された混合油(20)は、供給タンク(21)に移送され、シリンダライナー(5)とピストンリング(4)との間の潤滑のために、注油ノズル(18)から再びエンジン内に注入される。
【0051】
図1では、回収シリンダ油(24)と未使用のシリンダ油(新油)(25)との混合を浄化タンク(27)内で行う例を示すが、必ずしも浄化タンク(27)内で行う必要はなく、供給タンク(21)内で混合油を調製することもできる。
【0052】
供給タンク(20)への回収シリンダ油(24)の移送が完了した浄化タンク(27)には、回収タンク(26)から回収シリンダ油が移送され、再び回収シリンダ油の浄化処理が行われる。このように、回収タンク(26)、浄化タンク(27)、及び供給タンク(21)を連結し、回収シリンダ油(24)を順次移送することにより、各タンクごとにシリンダ油の回収、浄化、供給の工程を段階的に繰り返して行うことができるため、エンジンを稼働しながら効率的な浄化処理を行うことが可能となる。
【0053】
ポンプ(P)は、シリンダ油をタンク間で移送するために配管の途中に配置されるものであり、
図1はその一例を示すものであるが、シリンダ油の移送が円滑に行えるものであれば特に限定されるものではなく、移送管の長さや太さ等によって適宜ポンプの配置を調整すればよい。
【実施例】
【0054】
本発明のシリンダ油の循環供給システム(循環供給方法)について行った効果の確認試験を実施例として記載する。
【0055】
「確認試験1」
2サイクルディーゼルエンジン(三菱重工業株式会社製9UEC52LSE)を搭載した船舶(高速貨物船)に、本発明のシリンダ油の循環供給システムを設置し、約10ヶ月間の航行テスト(航行時間約4,040時間)を実施した。航行テストの期間中、シリンダ内に供給するための混合油を構成する新油と回収油の供給量について計測した。
【0056】
シリンダ内に供給するための混合油を構成する新油と回収油の供給量の推移を表すグラフを
図6に示す。ここで、グラフの縦軸には、エンジンに供給した新油と回収油の供給量をエンジンの単位仕事量あたりに必要な供給量(単位仕事量あたりの消費率)として換算した数値を示している。また、グラフ上の具体的な数値を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
確認試験1においては、回収油を約8〜12%を配合した混合シリンダ油(混合油)をシリンダ内に再供給することにより(表3)、約10ヶ月間の航行テスト(航行時間約4,040時間)においてエンジン内部の摩耗を効果的に抑制することができ、安全に航行を完了することができた。
【0059】
「確認試験2」
確認試験1の航行テストの実施中あるいは終了後にエンジンを分解し、構成部品(ピストンリングおよびシリンダライナー等)の表面状態あるいは各部の寸法を計測し、航行テスト開始前の状態と比較することにより、エンジンの摩耗の程度について評価した。
【0060】
図7は、1,784時間運航後のピストンリングの直径を計測した数値をもとに、ピストンリングの摩耗量の推移をグラフに示したものである。運航テストにおけるピストンリングの摩耗率は、1,000時間あたり0.024mmである。通常、ピストンリングの摩耗限界値は3mmであることから、およそ12万5,000時間の航行が可能であると考えられる。これは、通常の運航であれば30年もの長期に亘りピストンリングの交換を行うことなく連続して運航することが可能であることを示すものであり、一般的に2〜3年のサイクルでオーバーホールを行うとされる従来の2サイクルディーゼルエンジンの寿命を飛躍的に向上させるものである。
【0061】
図8は、3,222時間運航後のシリンダライナーの内径を計測した数値をもとに、シリンダライナーの摩耗量の推移をグラフに示したものである。運航テストにおけるシリンダライナーの摩耗率は、1,000時間あたり0.027mmである。通常、シリンダライナーの摩耗限界値は3.5mmであることから、およそ13万時間の航行が可能であると考えられる。これは、通常の運航であれば31年もの長期に亘りシリンダライナーを交換することなく連続して運航することが可能であることを示すものであり、従来の2サイクルディーゼルエンジンの寿命(2〜3年サイクルで行うオーバーホールまでの期間)を大幅に向上させることができる。
【0062】
図9は、運航テストの実施期間中に観察したピストンリングの状態を示す。図に示すように、ピストンリングの表面に変化はなく、テスト期間中、良好な状態を維持していることが確認された。
【0063】
図10は、1,784時間運航後のシリンダライナーの状態(レプリカ表面画像)を示す。シリンダライナーの摩耗の評価は、シリンダライナー内面から得たレプリカの表面を撮影した画像により行った。図に示すように、シリンダライナーの表面に大きな変化はなく、良好な状態を維持していることが確認された。