(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントでは、監視制御の信頼性を確保するために、重要な制御系統の構成は、複数の制御ユニットで多重化されている。
つまり、多重化された制御ユニットのうちいずれか一つに故障が発生した場合でも、2 out of 4、又は2 out of 3と呼ばれるロジックに基づき、安全機構の誤動作による不要な原子炉停止やその不作動による異常な運転状態が、未然に回避される。
ここで、2 out of 3とは、全く同じ3台の制御装置のうち同一とみなされる出力値が2つ以上ある場合、この出力値を監視制御に採用する方法である。
【0003】
こうような多重化制御システムを構成する各々の制御ユニットには、インストールされたプログラム(制御情報)によって様々な数値計算、情報処理及び通信制御等を実行するプロセッサが、設けられている。
そして、従来の多重化制御システムは、構成する複数の制御ユニットにインストールする制御情報が、各々の制御ユニット毎に、別々に作成されていた(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、多重化制御システムを構成する複数の制御ユニットの各々は、同一のタイミングで同一のデータを受信し、同一の演算処理を実行して送信するものである。
このため、各々の制御ユニット用に作成される制御情報は、それぞれ互いに共通部分が高い割合で構成されている。
しかし、制御情報のうち複数の制御ユニット間の通信プロトコルに関しては、従来の仕組みでは、各々の制御ユニット毎に、別々に作成することが避けられない。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、複数の制御ユニットの各々にインストールされる制御情報を完全に共通化することができる多重化制御技術を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る多重化制御システムにおいて、
第1送受信部、第2送受信部、格納部、演算部、及び代表値導出部を備える制御ユニットの複数が、第1ネットワーク及び第2ネットワークに接続して構成され、前記第1送受信部は、前記第1ネットワークに接続し通信プロトコルで規定される
他の制御ユニットに対しデータを送受信
し、前記第2送受信部は、前記第2ネットワークに接続し前記通信プロトコルで規定されるプラント機器に対しデータを送受信
し、前記格納部は、前記通信プロトコル及び演算プログラムを少なくとも含み全ての前記制御ユニットに共通の制御情報を格納し、
前記演算部は、前記第2ネットワークから受信したプラントデータに基づき前記演算プログラムで演算した演算データを前記第1ネットワークに送信させ
、前記代表値導出部は、前記制御ユニットの各々が送信し前記第1ネットワーク経由で受信された前記演算データに基づき前記演算プログラムが導出した代表値を第1ネットワーク及び第2ネットワークに送信させ
、前記制御情報は、前記第1ネットワークに接続されたエンジニアリングツールからそれぞれの前記制御ユニットの前記格納部にダウンロードされたものであり、前記エンジニアリングツールは、前記第1ネットワークに接続し各々の前記制御ユニットから送信された前記演算データ及び前記代表値を取得するデータ取得部と、前記演算部で実行される前記演算プログラムのロジック図を生成するロジック図生成部と、表示部に表示される前記ロジック図を構成する接続子の近傍に対応する前記代表値を表示させる代表値表示部と、前記表示部に表示される前記代表値の近傍に表示されるカーソルを検出しこの代表値のベースとなった前記演算データを表示させる多重値表示部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、複数の制御ユニットの各々にインストールされる制御情報を完全に共通化することができる多重化制御技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る多重化制御システム10は、第1ネットワーク11に接続し通信プロトコルで規定される制御ユニット20(20a,20b,20c)に対しデータを送受信する第1送受信部21と、第2ネットワーク12に接続し通信プロトコルで規定されるプラント機器13(13a,13b,13c…)に対しデータを送受信する第2送受信部22と、通信プロトコル及び演算プログラムを少なくとも含み全ての制御ユニット20(20a,20b,20c)に共通の制御情報34を格納する格納部23と、第2ネットワーク12から受信したプラントデータに基づき演算プログラムで演算した演算データを第1ネットワーク11に送信させる演算部24と、制御ユニット20(20a,20b,20c)の各々が送信し第1ネットワーク11経由で受信された演算データに基づき演算プログラムが導出した代表値を第1ネットワーク11及び第2ネットワーク12に送信させる代表値導出部25と、を備えている。
【0011】
多重化された制御ユニット20(20a,20b,20c)は、それぞれ構成が同一であるので、制御ユニット20aを主体に説明する。なお、実施形態は、3重化したものを例示しているが、第1ネットワーク11に接続される制御ユニット20の数は、複数であれば特に限定されない。
【0012】
第1送受信部21は、後記するようにエンジニアリングツール30で作成された制御情報34を、第1ネットワーク11経由で受信し、格納部23に格納させる機能を有する。
そして、第1送受信部21は、演算部24で演算された演算データを、第1ネットワーク11経由で、自身(制御ユニット20a)を含めた全ての制御ユニット20b,20c及びエンジニアリングツール30に、送信する。
さらに、第1送受信部21は、導出部25で導出された代表値を、第1ネットワーク11経由で、エンジニアリングツール30に、送信する。
この第1送受信部21を介して受信されるデータの送信元(制御ユニット20)は、格納部23に格納されている制御情報の通信プロトコルにより規定されている。
【0013】
そして、第2送受信部22は、プラント機器13(13a,13b,13c…)が出力するプラントデータを、第2ネットワーク12経由で受信し、演算部24に転送する。
さらに、第2送受信部22は、導出部25で導出された代表値を、第2ネットワーク12経由で、プラント機器13に、送信する。
この第2送受信部22を介して送信されるデータの転送先(プラント機器13)及び受信されるデータの転送元(プラント機器13)は、格納部23に格納されている制御情報の通信プロトコルにより規定されている。
【0014】
プラント機器13(13a,13b,13c…)は、第2ネットワーク12を介した制御ユニット20との相互通信により、大規模プラントを監視・操作するための設備である。
原子力発電プラントのような複雑なプロセスプラントでは、数千点にもおよぶ複数のプラント機器13(例えば、ポンプ、温度計、開閉弁等)が設けられており、これらプラント機器13に出入力されるプロセス信号は、制御ユニット20に集約される。
【0015】
プラント機器13は、例えば、プラントのプロセス量の変化を検出したセンサ信号(プロセス信号)を第2ネットワーク12を介して制御ユニット20に送信する。
制御ユニット20は、受信したセンサ信号を、演算プログラム(制御情報34)に従い演算部24及び導出部25で処理し、ネットワーク12に送信し、プラント機器13に所定の動作を実行させる。
【0016】
それぞれの制御ユニット20a,20b,20cに設けられた格納部23には、同じ制御情報34が、格納されている。
このために、制御ユニット20a,20b,20cの各々は、プラント機器13から受信する同一のプロセス信号を、同一の演算プログラムに基づいて演算部24で処理し、同一の演算データを導く。
【0017】
そして、制御ユニット20a,20b,20cの各々は、この演算データを同一の通信プロトコル(制御情報34)に基づいて第1送受信部21から、自己を含む他の制御ユニット20に送信する。
これにより、制御ユニット20a,20b,20cの各々には、他の制御ユニット20の演算データの全てが集約される。
そして、同一の演算プログラムに従って、集約された複数の演算データのなかから代表値が導出されるため、各々の制御ユニット20a,20b,20cからは、同一の代表値が送信されることになる。
【0018】
エンジニアリングツール30は、制御ユニット20にインストールされる制御情報34(通信プロトコル及び演算プログラム)を作成するとともに、後述するように演算プログラムに基づく制御ユニット20の制御状態をオンラインモニタするものである。
エンジニアリングツール30による演算プログラムの作成は、種々の演算子とこれら演算子における入力や出力を表す入力線や出力線とをユーザが編集した後に、制御ユニット20のプロセッサが実行可能な言語に変換することにより行われる。
【0019】
このように作成された演算プログラムは、演算部24において、第2ネットワーク12から受信したプラントデータに基づき、演算データを演算する。
さらに演算プログラムは、代表値導出部25において、制御ユニット20(20a,20b,20c)の各々から受信した演算データに基づき、代表値を導出する。
ここで代表値とは、制御ユニット20(20a,20b,20c)の各々から受信した複数の演算データの中間値であったり、「2out of3」演算に基づく3つのうち2つ以上が同一である演算データの値であったりする。
【0020】
(第2実施形態)
次に
図2に基づいて本発明における第2実施形態について説明する。なお、
図2において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0021】
第2実施形態に係る多重化制御システム10におけるエンジニアリングツール30は、第1ネットワーク11に接続し各々の制御ユニット20(20a,20b,20c)から送信された演算データ及び代表値を取得するデータ取得部31と、演算部24(
図1)で実行される演算プログラム(制御情報34)のロジック
図32を生成するロジック図生成部33と、表示部35に表示されるロジック
図32を構成する接続子の近傍に対応する代表値を表示させる代表値表示部36と、表示部35に表示される代表値の近傍に表示されるカーソル37を検出しこの代表値のベースとなった演算データを表示させる多重値表示部38と、を備えている。
このようにエンジニアリングツール30が構成されることにより、演算プログラムに基づく制御ユニット20の制御状態をオンラインモニタすることができる。
【0022】
ロジック
図32には、演算子、入力線、出力線等の接続子の接続関係が規定されており、これら接続子の近傍に、多重化制御システム10において演算された代表値の経過値が、個別にモニタされる。
さらに、カーソル37をモニタされている代表値に近づけると、位置検出部39が検出した位置情報に従って、この代表値のベースとなった演算データがポップアップ表示されるようになっている。
これにより、制御ユニット20(20a,20b,20c)の制御状態を正確に把握することができる。
【0023】
次に、
図3に示すシーケンス図に基づいて実施形態に係る多重化制御システムの動作を説明する(適宜、
図1参照)。
エンジニアリングツール30において制御情報34が作成され(S11)、第1ネットワーク11を介して制御ユニット20a,20b,20cの各々にダウンロードされる(S12)。
【0024】
各々の制御ユニット20a,20b,20cには、同じ内容の制御情報34(通信プロトコル、演算プログラム)が格納されることになる(S13a,S13b,S13c)。
そして、制御ユニット20a,20b,20cは、各々のプラント機器13(13a,13b,13c…)から送信されるプラントデータを、共通の通信プロトコルに基づいて同じタイミングで受信することになる(S14,S15a,S15b,S15c)。
【0025】
そして、各々の制御ユニット20a,20b,20cで受信されたプラントデータは、共通の演算プログラムに基づいて演算が実行されることになる(S16a,S16b,S16c)。このように各々の制御ユニット20a,20b,20cで演算された演算データは、第1ネットワーク11に送信される(S17a,S17b,S17c)。
【0026】
各々の制御ユニット20(A系統のみ図示)は、通信プロトコルで規定された制御ユニット20(自己を含む)から第1ネットワーク11に送信された演算データを、全て受信する(S18)。
これにより、各々の制御ユニット20a,20b,20cは、他の制御ユニット20の演算データを全て共有することになる。
【0027】
各々の制御ユニット20(A系統のみ図示)は、共有する複数の演算データの中から代表値を導出し(S19)、第1ネットワーク11及び第2ネットワーク12に送信する(S20)。
各々のプラント機器13は、制御ユニット20a,20b,20cの各々から同じ値の代表値を受信し(S21)、所定の動作を実行する。
そして、エンジニアリングツール30では、ロジック
図32の接続子の近傍に、この代表値が表示され、マウス等の操作デバイスによりカーソル37をこの代表値の表示に近づけると、この代表値のベースとなった演算データがポップアップウインドウに表示される(S22)。そして、(S14)から(S22)のフローが繰り返される。
【0028】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の多重化制御システムによれば、多重化された複数の制御ユニットの各々が、他の制御ユニットの演算データを共有する仕組みをとることにより、制御ユニットの各々にインストールされる制御情報を、完全に共通化することが可能となる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
また、多重化制御システムの構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、多重化制御プログラムにより動作させることが可能である。