(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケースと、このケース内に収納された光触媒に紫外線を照射可能な紫外線照射部と、前記ケースの一端部から外気を吸引する吸引部と、前記ケースの他端部に臨み前記吸引部によって前記外気と共に吸引された蚊を回収可能な回収部と、により構成される蚊の誘引捕獲装置であって、
前記ケースには、前記ケースの一端部から前記紫外線照射部の近傍まで延び、前記ケース内への前記外気の流入を許容しつつ、前記ケースの一端部からの前記紫外線の漏れを抑制する遮光板が取り付けられていることを特徴とする蚊の誘引捕獲装置。
前記遮光板のなかの、前記外気の流入を許容している部位は、少なくとも一部が、前記ケース内に向かって下がり勾配に形成されるテーパ部によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の蚊の誘引捕獲装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
<実施例1>
【0014】
図1には、本発明による蚊の誘引捕獲装置10(以下、単に「捕獲装置10」とする。)が示されている。捕獲装置10は、例えば、車両に搭載され、車室11内の蚊を捕獲するのに用いられる。
【0015】
捕獲装置10は、バッテリボックス20に収納されているバッテリによって作動され、ケース50の近傍に蚊を誘引すると共に、誘引された蚊をケース50の上部からケース50内に吸引し、吸引された蚊を回収部40によって回収する装置である。
【0016】
バッテリボックス20に収納されているバッテリは、車室11内に設けられているシガーソケット差込口12(雌側)に、シガーソケット21(雄側)を差し込むことにより充電される。
【0017】
なお、捕獲装置10は、電源コード22をバッテリボックス20から外すことにより、車外も含めて任意の場所に運び、使用することができる。例えば、コード22を変更することにより、家屋内の差込口を用いて充電を行うことができる。また、捕獲装置10の使用状況に応じて、バッテリボックス20内にコンバータを内蔵することもできる。さらには、振動により発生するエネルギを電気エネルギに変換するリニア振動発電機をバッテリボックス20内に内蔵してもよい。この場合には、車両10の走行中の振動によって、充電を行うことができる。さらに、減速時における運動エネルギを電気エネルギに変換して回収し、この電気エネルギを充電してもよい。この場合には、車両の走行中に不可避的に発生する減速によって、バッテリを充電することができ、望ましい。
図2及び
図3において、捕獲装置10を詳細に説明する。
【0018】
図2及び
図3に示されるように、捕獲装置10は、バッテリが収納されているバッテリボックス20と、このバッテリボックス20の上方に固定されている基台30と、この基台30の下部に対してスライド可能に取り付けられ蚊を回収可能な回収部40と、基台30の上部に固定されている円筒状のケース50と、このケース50によって支持されているシロッコファン70(吸引部70)と、このシロッコファン70の羽74aの上方に配置されケース50の内部において紫外線を照射可能な紫外線照射部80と、ケース50の上端部50d(一端部50d)を閉じているリング状の上蓋90と、この上蓋90の内周からシロッコファン70の羽74aの上方まで延び上端部50d側への紫外線の漏れを抑制する遮光板100と、ケース50の側面部50aに形成されている開口部50bに固定されているルーバー120とからなる。
【0019】
基台30は、バッテリボックス20の上面20aから立ち上げられ平面視において略U字状に形成されている脚部31と、この脚部31の上部に一体的に形成されバッテリボックス20の上面20aに平行に延びる基台蓋部32と、脚部31の上端から一体的に上方に延び基台蓋部32よりも上方に突出している突出部33とからなる。
【0020】
基台蓋部32には、基台30の内部をケース50の内部に連通させる連通孔32aが開けられている。ケース50は、突出部33に当接することにより、位置決めされている。
【0021】
回収部40は、上方に向かって開口するトレー状の本体部41と、この本体部41に一体的に形成され操作者が掴むことのできる把手42と、本体部41の底面41a上に配置され粘着性を有する粘着シート43とからなる。
【0022】
回収部40が配置される位置は、基台30の連通孔32aに対して、上下方向に略一致している。本体部41の把手42が形成されている側の壁部41bは、基台蓋部32よりも上方まで突出している。回収部40は、バッテリボックス20の上面20a上をスライド可能である。回収部40の閉じ状態において、壁部41bは、ケース50及び基台蓋部32に当接している。即ち、壁部41bが基台蓋部32よりも上方まで突出されることにより、回収部40の閉じ方向への変位が規制されている。さらに言い替えれば、基台蓋部32は、回収部40のストッパの役割を果たす。
【0023】
粘着シート43は、回収した蚊が飛ばされない程度に粘着性を有し、複数枚の薄いシートが重ねられてなる。
【0024】
ケース50は、筒状を呈し、鋳造や射出成形によって製造することができる。ケース50には、複数のボス51,52,53が一体的に形成されている。加えて、ケース50の側面部50aには、シロッコファン70によって吸引された外気を外部に排出するための開口部50bが形成されている。
【0025】
ボス51,52,53は、ケース50の側面部50aから、ケース50の軸線CL1に向かって膨出するようにして形成されている。ボス51,52,53には、それぞれボルト61,62,63が螺合されている。
【0026】
これらのボス51,52,53は、ケース50の下端部50c(他端部50c)の近傍に形成されシロッコファン70を固定するための下部ボス51と、ケース50の上端部50dに形成され上蓋90を固定するための上部ボス52と、ケース50の内部に形成され紫外線照射部80を固定するための中部ボス53と、からなる。
【0027】
シロッコファン70は、ボルト61によって下部ボス51に固定されている支持部71と、この支持部71に固定されているモータ72と、このモータ72のモータ軸72aに取り付けられている軸受73と、この軸受73を介してモータ72に支持されているファン本体部74と、このファン本体部74の上部に固定され外部に臨むキャップ75とからなる。
【0028】
支持部71は、上方に突出するハット形状を呈する。支持部71の鍔部71aには、ボルト61が挿通されるボルト孔71bと、ファン本体部74の下方に形成され回収された蚊を下方に落下させるための蚊落下孔71cとが形成されている。支持部71の頂部71dには、モータ軸72aを挿通するためのモータ軸孔71eが形成されている。
【0029】
ファン本体部74は、軸受73の上部にボルト64によって固定されている。ファン本体部74は、モータ72によって回転可能に設けられている。ファン本体部74の周縁には、外気をケース50内部に吸引すると共に、吸引された外気をケース50外部に排出するための、複数の羽74aが固定されている。ファン本体部74が回転すると、遮光板100の上方から外気を取り込む。取り込まれた外気は、ルーバー120から外部に向かって排出される。
【0030】
シロッコファン70の作動時には、モータ軸72a、軸受73、ファン本体部74、ボルト64、及びキャップ75が一体的に回転する。一方、支持部71及びモータ72は、回転しない。キャップ75の上部は、略半球形状を呈する。キャップ75は、外気をケース50内に円滑に流入させるための整流部材である。
【0031】
紫外線照射部80は、リング状を呈し中部ボス53に固定されている基板81と、この基板81の下面部81aに固定され紫外線を照射可能な光源82と、これらの光源82を連続的に覆いリング状に形成されているカバー83とからなる。紫外線を発生する光源82には、LEDが用いられている。
【0032】
なお、紫外線照射部80には、LEDの他にも、蛍光灯やバルブ等任意の光源を採用することができる。また、1つの紫外線照射部を2種類以上の光源によって構成することもできる。
【0033】
上蓋90は、リング状を呈し、ケース50の上端部50dにボルト62によって固定されている。上蓋90は、ケース50の軸線CL1に対して略垂直に向けて配置されている。上蓋90の内周側の縁部90aは、下部が内周側に突出する階段状に形成されている。
【0034】
遮光板100は、上蓋90から連続的に延びる水平部101と、この水平部101の内周側の端部からケース50の軸線CL1に向かって下がり勾配に形成されているテーパ部102と、このテーパ部102の下端から連続して垂下される縦壁部103とからなる。
【0035】
水平部101は、ケース50の軸線CL1に対して略垂直に延びる。水平部101の外周側の縁部101aは、上部が外周側に突出する階段状に形成されている。水平部101の外周側の縁部101aは、上蓋90の内周側の縁部90aの上部に載せられている。
【0036】
テーパ部102は、ケース50の軸線CL1を基準として、軸線CL1に沿う方向において、光源82に重なっている。即ち、光源82の上方にテーパ部102が形成されている。縦壁部103は、紫外線照射部80の基板81の内周を通過し、シロッコファン70の羽74aの上方まで延びている。縦壁部103は、光源82よりも上方から光源82よりも下方まで延びている。
【0037】
図4に示されるように、縦壁部103の外周面103aには、二酸化チタン111(TiO
2、光触媒111)が塗布されている。
図2も合わせて参照し、二酸化チタン111は、縦壁部103の外周面103aの他にも、ケース50の内周面やシロッコファン70の各部位にも塗布されている。即ち、ケース50内部の紫外線が照射される部位には、二酸化チタン111が塗布されている。
【0038】
図5には、ルーバー120の構成の一例が示されている。
図5(a)には、ルーバー120が分解された状態の斜視図によって示されている。
図5(b)には、ルーバー120の斜視図が示されている。
【0039】
図5(a)に示されるように、ルーバー120は、複数の略矩形の縦板121と、複数の略矩形の横板122とからなる。縦板121及び横板122のそれぞれには、複数のスリット121a,122aが形成されている。縦板121に形成されている縦スリット121aの数は、横板122の数と同じである。横板122に形成されている横スリット122aの数は、縦板121の数と同じである。スリット121a,122aの深さは、それぞれの板121,122の略半分とされている。これらのスリット121a,122a同士を嵌め合わせた上で、互いを押し込む。これにより、
図5(b)に示されるように、立体格子状のルーバー120が形成される。
【0040】
なお、ルーバー120は、このような構成の他に、鋳造品や射出成形品などを採用することもできる。即ち、ルーバー120は、立体格子状に形成されていればよく、これらの構成に限られない。
【0041】
図2に戻り、支持部71、モータ72、軸受73、ファン本体部74、ボルト64、キャップ75、紫外線照射部80、上蓋90、及び遮光板100の軸線は、ケース50の軸線CL1に一致している。即ち、ケース50の軸線CL1は、支持部71、モータ72、軸受73、ファン本体部74、ボルト64、キャップ75、紫外線照射部80、上蓋90、及び遮光板100のそれぞれの軸線ということもできる。
【0042】
捕獲装置10は、2つの方法により、蚊を誘引することができる。即ち、蚊の誘引部を2つ有する。第1の誘引部Ph1(誘引部Ph1)は、紫外線照射部80と、この紫外線照射部80により紫外線が照射される二酸化チタン(
図4、符号111)とによって構成される。第2の誘引部Ph2(誘引部Ph2)は、紫外線照射部80と、この紫外線照射部80の基板81の上面に固定されているアルミニウム製の伝熱部材112と、この伝熱部材112の上端に接触している上蓋90とによって構成される。
【0043】
紫外線照射部80は、第1及び第2の誘引部Ph1,Ph2のそれぞれを構成する部材である。これらの誘引部Ph1,Ph2の作用については、
図6において詳細に説明する。
【0044】
図6には、作動している状態の捕獲装置10が示されている。捕獲装置10を作動させると、まず、矢印(1)によって示されるように、モータ72のモータ軸72aが回転すると共に、紫外線照射部80の光源82が点灯する。
【0045】
モータ軸72aが回転すると、ファン本体部74も回転する。矢印(2)によって示されるように、遮光板100の上方から外気がケース50内に吸引される。吸引された外気は、矢印(3)によって示されるように、ルーバー120からケース50の外部へ排出される。
【0046】
ケース50内部のなかの紫外線が照射される部位には、二酸化チタン(
図4、符号111)が塗布されている。光源82が点灯されることにより、これらの部位には、紫外線が照射される。紫外線を二酸化チタンに照射すると、活性酸素が発生する。この活性酸素によって、車内に不可避的に存在する揮発性有機化合物は、二酸化炭素や水に酸化分解される。吸引された外気と共に、二酸化炭素や水は、ケース50の外部に排出される。蚊は、二酸化炭素や水に寄ってくる習性を有する。ケース50の近傍に存在する二酸化炭素や水によって、蚊は、ケース50近傍に誘引される。これは、第1の誘引部Ph1による誘引ということができる。
【0047】
さらに、光源82が点灯されることにより、光源82は、僅かに熱を発する。この熱は、基板81、伝熱部材112を伝わり、上蓋90に伝達される。熱は、上蓋90から大気中に放出される。蚊は、熱にも寄ってくる習性を有する。即ち、上蓋90の有する熱によって、蚊は、ケース50近傍に誘引される。このため、紫外線照射部80には、より高温を発する光源としてバルブを適宜組み合わせることが好ましい。これは、第2の誘引部Ph2による誘引ということができる。
【0048】
ケース50近傍に誘引された蚊は、外気と共にケース50内に吸引される。ケース50内に吸引された蚊は、回転している羽74aによって切断され、下方に落下する。落下した蚊は、矢印(4)によって示されるように、蚊落下孔71cから回収部40に落下する。落下した蚊は、回収部40によって回収される。このような捕獲装置10によれば、以下の効果を得ることができる。
【0049】
ケース50には、ケース50の上端部50dから紫外線照射部80の近傍まで延び、ケース50の上端部50dからの紫外線の漏れを抑制する遮光板100が取り付けられている。遮光板100によって、ケース50外部への紫外線の漏れが抑制される。
【0050】
さらに、開口部50bには、ケース50の内部に向かって延びる格子状のルーバー120が取り付けられている。ケース50の内部に向かって延びるルーバー120によって、吸引された外気の通過を許容しつつ、ケース50外部への紫外線の漏れを抑制することができる。
【0051】
蚊の種類によっては、紫外線を感知するとケース50から遠ざかる習性を有するものが存在する。ケース50外部への紫外線の漏れを抑制することにより、このような習性を有する蚊も誘引することができる。これにより、より多くの蚊を捕獲することができる。
【0052】
遮光板100のなかの、外気の流入を許容している部位は、少なくとも一部が、ケース50内に向かって下がり勾配に形成されるテーパ部102によって構成されている。遮光板100の一部を下がり勾配とすることにより、捕獲装置10を大型化することなく、蚊を吸引可能な部位を広くすることができる。これにより、より多くの蚊を捕獲することができる。
【0053】
特に、テーパ部102は、光源82に重なっており、且つ、縦壁部103は、光源82よりも上方から光源82よりも下方まで延びている。これにより、蚊を吸引可能な部位を特に広く確保することができると共に、より確実にケース50外部への紫外線の漏れを防止することができる。
【0054】
図7に示されるように、蚊Mを回収可能な回収部40は、ケース50に対して、スライド可能に取り付けられている。蚊の捕獲装置10の使用開始から所定時間経過後に、回収部40をスライドさせる。これにより、回収部40に回収された蚊Mを廃棄することができる。回収部40を清潔に保つことができ、望ましい。
【0055】
さらに、回収部40は、本体部41の底面41a上に粘着シート43が配置されている。このため、粘着シート43を剥がすのみで回収した蚊Mを廃棄することができる。さらには、粘着シート43は、複数枚の薄いシートが重ねられてなる。このため、粘着シート43を一度配置することにより、粘着シート43の張り替えを行うことなく、複数回の蚊Mの廃棄作業を行うことができる。
<実施例2>
【0056】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図8には、実施例2による捕獲装置の要部が断面によって示されている。実施例2による捕獲装置10Aは、実施例1による捕獲装置(
図2、符号10)に対して、ルーバー120Aの向けられている方向が異なる。その他については、実施例1による捕獲装置と同様であり、詳細な説明は省略する。さらに、実施例1と同様の構成要素については、符号を流用する。
【0057】
図8に示されるように、ケース50の軸線CL1に対する垂直な軸CL2を基準として、ルーバー120Aは、先端がケース50の上端部(
図2、符号50d)側に向けて傾けて配置されている。即ち、ルーバー120Aは、先端が外気及び蚊の吸い込み口が形成される部位の近傍に向けて配置されている。このようなルーバー120Aを用いた場合にも、本発明所定の効果を得ることができる。
【0058】
ケース50内部において発生させた二酸化炭素及び水を、上端部に向けて吹き出すことができる。これにより、上端部の近傍に多くの蚊を誘引することができる。上端部側から外気及び蚊が吸い込まれるため、吸い込み口の近傍に多くの蚊を誘引することにより、より多くの蚊を捕獲することができる。
【0059】
さらに、ルーバー120Aは、紫外線照射部80よりも下方に配置されていると共に、ケース50の軸線CL1に対する垂直な軸CL2を基準として、先端がケース50の上端部側に向けて傾けて配置されている。ケース50の外部へ紫外線が漏れることが、ルーバー120Aによってさらに抑制される。
【0060】
尚、本発明による捕獲装置は、車両に搭載された場合を例に説明したが、家屋や屋外など、任意の場所において使用することができる。この場合において、コードの先端部は、家庭用コンセントに合わせる等、適宜変更を行うことができる。
【0061】
さらに、本発明による捕獲装置は、吸引部にシロッコファンを採用した例を元に説明を行った。しかし、吸引部には、シロッコファン以外のファンや、ブロア等、任意の送風機を採用することができる。