特許第6223886号(P6223886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223886
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/08 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   F01D17/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-67540(P2014-67540)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190364(P2015-190364A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】垣内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】成川 裕
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−067687(JP,A)
【文献】 特開昭64−041604(JP,A)
【文献】 特開昭63−194110(JP,A)
【文献】 特開2001−193415(JP,A)
【文献】 特開昭64−035002(JP,A)
【文献】 特開2012−067684(JP,A)
【文献】 特開2014−047636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/08
F02K 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した作動媒体を加圧するポンプと、
前記ポンプで加圧された作動媒体の少なくとも一部を熱源媒体の熱で蒸発させる加熱器と、
前記加熱器の下流側において、過熱状態であって予め定められた温度以上の作動媒体を飽和温度以上に維持される範囲で冷却する冷却手段と、
を備え
前記冷却手段は、冷却用通路と、冷却用通路に設けられた冷却用弁とを有し、前記冷却用通路の一端部が、前記凝縮器、前記ポンプ、前記加熱器及び前記膨張機が設けられる循環流路における前記ポンプと前記加熱器との間の部位に接続され、他端部が、前記循環流路における前記加熱器と前記膨張機との間の部位に接続され、
運転時には、前記加熱器の下流側での作動媒体の過熱度が予め設定された範囲内に収まるように前記ポンプの制御が行われる一方、作動媒体が過熱状態にある場合であって前記加熱器から流出して前記膨張機に導入される作動媒体の温度が基準温度を超えていると判断された場合には、前記冷却手段は前記冷却用弁を開放し、前記冷却用通路を流れた液状の作動媒体が前記循環流路中の過熱状態にある作動媒体に合流することにより、気化熱を利用して前記過熱状態の作動媒体を冷却する、発電装置。
【請求項2】
ガス状の作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した作動媒体を加圧するポンプと、
前記ポンプで加圧された作動媒体の少なくとも一部を熱源媒体の熱で蒸発させる加熱器と、
前記加熱器の下流側において、過熱状態であって予め定められた温度以上の作動媒体を飽和温度以上に維持される範囲で冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、冷却用熱交換器と、冷却用通路と、冷却用通路に設けられた冷却用弁とを有し、前記冷却用通路の一端部が、前記凝縮器、前記ポンプ、前記加熱器及び前記膨張機が設けられる循環流路における前記ポンプと前記加熱器との間の部位に接続され、他端部が、前記循環流路における前記膨張機と前記凝縮器との間の部位に接続され、
前記冷却用熱交換器は、前記循環流路における前記加熱器の下流側に配置され、前記循環流路に接続された作動媒体流路と、前記冷却用通路とが設けられ、
運転時には、前記加熱器の下流側での作動媒体の過熱度が予め設定された範囲内に収まるように前記ポンプの制御が行われる一方、作動媒体が過熱状態にある場合であって前記加熱器から流出して前記膨張機に導入される作動媒体の温度が基準温度を超えていると判断された場合には、前記冷却手段は前記冷却用弁を開放し、前記冷却用熱交換器において、前記冷却用通路に分流された作動媒体と前記循環流路の作動媒体とが間接的に熱交換されることによって前記過熱状態の作動媒体を冷却する、発電装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、気化熱を利用して過熱状態の作動媒体の冷却を行う請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
ガス状の作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動媒体を冷却回路から供給される冷却媒体によって凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した作動媒体を加圧するポンプと、
前記ポンプで加圧された作動媒体の少なくとも一部を熱源媒体の熱で蒸発させる加熱器と、
前記加熱器の下流側において、過熱状態であって予め定められた温度以上の作動媒体を飽和温度以上に維持される範囲で冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、冷却用熱交換器と、冷却用通路と、冷却用通路に設けられた冷却用弁とを有し、
前記冷却用通路が、前記冷却回路における前記凝縮器の下流側の部位に接続され、冷却用通路を流れた冷却媒体は前記冷却回路に戻される構成とされ、
前記冷却用熱交換器は、前記凝縮器、前記ポンプ、前記加熱器及び前記膨張機が設けられる循環流路における前記加熱器の下流側に配置され、前記冷却用熱交換器には前記循環流路に接続された作動媒体流路と、前記冷却用通路が設けられ、
運転時には、前記加熱器の下流側での作動媒体の過熱度が予め設定された範囲内に収まるように前記ポンプの制御が行われる一方、作動媒体が過熱状態にある場合であって前記加熱器から流出して前記膨張機に導入される作動媒体の温度が基準温度を超えていると判断された場合には、前記冷却手段は前記冷却用弁を開放し、前記冷却用熱交換器において、冷却媒体が過熱状態の作動媒体を冷却する、発電装置。
【請求項5】
ガス状の作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した作動媒体を加圧するポンプと、
前記ポンプで加圧された作動媒体の少なくとも一部を熱源媒体の熱で蒸発させる加熱器と、
前記加熱器の下流側において、過熱状態であって予め定められた温度以上の作動媒体を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、作動媒体流路及び冷却流路を有し、前記加熱器における下流側に配置された熱交換器と、前記冷却流路に繋がる熱媒体回路に設けられた減圧手段と、を有し、
前記減圧手段は、作動媒体が過熱状態であって予め定められた温度以上のときに前記熱交換器において前記作動媒体が冷却されるように、熱媒体を減圧する発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、作動媒体が循環する循環配管に設けられた膨張機によって発電機を駆動するバイナリ発電装置が知られている。図7に示すように、この特許文献1に開示されたバイナリ発電装置では、蒸発器71、膨張機72、凝縮器73及び循環ポンプ74がこの順で循環配管75に接続されている。蒸発器71は、工場から排出される排温水や、温泉からの温水を熱源として、作動媒体を蒸発させる。熱源が流れる流路における蒸発器71の出側には、温度計測手段76が設けられている。この計測値に基づいて、循環ポンプ74の回転数が調整されている。すなわち、蒸発器71の出側での温水の温度が目標値よりも高温になると、循環ポンプ74の回転数を上げることにより、出側での温水温度を下げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−181398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたバイナリ発電装置では、熱源としての温水の温度が上昇した場合に循環ポンプ74の回転数を上げることにより、蒸発器71から流出する温水の温度を下げる。これにより、蒸発器71から流出する温水の温度が所定範囲内に収まるようにすることができる。しかしながら、このバイナリ発電装置では、温水(熱源)の温度が急激に上昇した場合に対処できないという問題が残されている。すなわち、蒸発器71の出側での温水の温度が上昇すると循環ポンプ74の回転数を上げるように調整するが、温水の温度が急激に上昇した場合には、作動媒体の流量増加が追いつかず、蒸発器出口の過熱度が一時的に上昇する。このため、蒸発器71から膨張機72に至る経路に存在しているフランジのパッキン等を耐熱材料で構成しなければならないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電装置において蒸発器の出側での作動媒体の温度上昇を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、ガス状の作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した作動媒体を加圧するポンプと、前記ポンプで加圧された作動媒体の少なくとも一部を熱源媒体の熱で蒸発させる加熱器と、前記加熱器の下流側において、過熱状態であって予め定められた温度以上の作動媒体を冷却する冷却手段と、を備えている発電装置である。
【0007】
本発明では、冷却手段が、加熱器の下流側での温度が予め定められた値以上の過熱状態にある作動媒体を冷却する。このため、加熱器から流出して膨張機に流入する作動媒体の温度を抑制することができる。したがって、熱源媒体の温度が急激に上昇した場合等においても、作動媒体の昇温を効果的に抑制することができるため、加熱器から膨張機に至る経路に存在しているフランジのパッキン等を耐熱性のあるもので構成する必要がなくなり、また発電機で用いられる絶縁材の階級を上げる等の対策も必要なくなる。
【0008】
前記冷却手段は、前記ポンプの下流側で且つ前記加熱器の上流側から分流された作動媒体によって、前記過熱状態の作動媒体を冷却するように構成されていてもよい。この態様では、ポンプから吐出された作動媒体によって過熱状態の作動媒体を冷却するため、発電装置としての構成が複雑化することを抑制することができる。
【0009】
前記冷却手段は、前記ポンプの下流側から分流された作動媒体を前記加熱器の下流側の作動媒体に合流することによって前記過熱状態の作動媒体を冷却するように構成されていてもよい。この態様では、ポンプの下流側から分流された作動媒体が過熱状態の作動媒体に合流することによって、当該作動媒体を冷却する。したがって、より効果的に作動媒体を冷却することができる。
【0010】
前記冷却手段は、前記加熱器の下流側の作動媒体が飽和温度以上に維持される範囲で冷却を行ってもよい。この態様では、液状の作動媒体が膨張機に導入されることを防止することができる。したがって、発電効率が低下することを防止することができる。
【0011】
前記冷却手段は、気化熱を利用して過熱状態の作動媒体の冷却を行ってもよい。この態様では、気化熱を利用して過熱状態の作動媒体の冷却を行うため、作動媒体の冷却をより効果的に行うことができる。すなわち、わずかな量の冷却媒体で過熱状態の作動媒体を冷却できる。特に、ポンプの下流側から分流された作動媒体を冷却媒体として用いる場合には、ポンプから蒸発器に送られる作動媒体の量が僅かに減るだけである。このため、ポンプから吐出された作動媒体から分流させるとしても、影響はほとんど無い。
【0012】
前記冷却手段は、作動媒体流路及び冷却流路を有し、前記加熱器における下流側に配置された熱交換器と、前記冷却流路に繋がる熱媒体回路に設けられた減圧手段と、を有していてもよい。前記減圧手段は、作動媒体が過熱状態であって予め定められた温度以上のときに前記熱交換器において前記作動媒体が冷却されるように、熱媒体を減圧してもよい。
【0013】
この態様では、作動媒体が過熱状態であって予め定められた温度以上のときに、熱交換器において、作動媒体流路を流れる作動媒体が、熱媒体回路の減圧手段によって減圧されて冷却流路を流れる熱媒体によって冷却される。一方、加熱器において作動媒体が十分に加熱されなかった場合には、作動媒体は熱交換器において熱媒体によって加熱されることになる。したがって、熱交換器は、作動媒体が過度に加熱された場合に作動媒体を冷却することができる一方、作動媒体が十分に加熱されなかった場合には作動媒体を補助的に加熱することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、発電装置において蒸発器の出側での作動媒体の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る発電装置における制御動作を説明するための図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
図4】第2実施形態に係る発電装置における制御動作を説明するための図である。
図5】本発明のその他の実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
図6】本発明のその他の実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
図7】従来のバイナリ発電装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
第1実施形態による発電装置1は、ランキンサイクルを利用した発電システムであり、図1に示すように、凝縮器6と、循環ポンプ8と、蒸発器10と、膨張機14とを備えている。凝縮器6、循環ポンプ8、加熱器10及び膨張機14はこの順で循環流路4に設けられている。本実施形態による発電装置1では、作動媒体が循環流路4を通じて加熱器10、膨張機14、凝縮器6及び循環ポンプ8を順に流れるという循環回路が構成されている。作動媒体としては、水よりも沸点の低い冷媒が用いられる。
【0018】
膨張機14には発電機16が接続されている。膨張機14においてガス状の作動媒体を膨張させることにより、発電機16を駆動する力を取り出すことができる。
【0019】
凝縮器6は、膨張機14から排出されたガス状の作動媒体を凝縮させて液状の作動媒体とするものである。凝縮器6は、ガス状の作動媒体が流れる作動媒体流路6aと、冷却水等の冷却媒体が流れる冷却媒体流路6bとを有している。冷却媒体流路6bは、冷却回路61と接続されていて、この冷却回路61から供給される冷却水等の冷却媒体が流れる。作動媒体流路6aを流れる作動媒体は、冷却媒体流路6bを流れる冷却媒体と熱交換することにより凝縮する。
【0020】
循環ポンプ8は、循環流路4における凝縮器6の下流側(加熱器10と凝縮器6との間)に設けられており、循環流路4内で作動媒体を循環させるためのものである。循環ポンプ8は、凝縮器6で凝縮された液状の作動媒体を所定の圧力まで加圧して加熱器10に送り出す。循環ポンプ8として、インペラをロータとして備える遠心ポンプや、ロータが一対のギアからなるギアポンプ等が用いられる。
【0021】
加熱器10は、循環流路4における循環ポンプ8の下流側(循環ポンプ8と膨張機14との間)に設けられている。加熱器10は、作動媒体が流れる作動媒体流路10aと、熱源媒体が流れる熱源媒体流路10bとを有している。熱源媒体流路10bは熱源媒体回路62に接続されていて、この熱源媒体流路10bには、外部の熱源から供給された熱源媒体が流れる。作動媒体流路10aを流れる作動媒体は、熱源媒体流路10bを流れる熱源媒体と熱交換して蒸発する。熱源媒体としては、例えば温水、水蒸気等が挙げられる。
【0022】
循環流路4には、加熱器10と膨張機14との間に遮断弁(開閉弁)21が設けられている。遮断弁21は、通常開放されているが、膨張機14の異常時等、膨張機14を停止させる時などに閉じられる。
【0023】
循環流路4には、バイパス手段23および冷却手段25が設けられている。バイパス手段23は、膨張機14を迂回するバイパス路23aと、バイパス路23aに設けられた開閉弁23bとを有する。開閉弁23bは、通常閉じられているが、膨張機14の回転異常時等、膨張機14を停止させる時などに開放される。開閉弁23bが開放されることにより、加熱器10から流出した作動媒体が膨張機14に導入されることなく、凝縮器6に導入されるようになる。
【0024】
冷却手段25は、加熱器10で蒸発したガス状の作動媒体を冷却する(すなわち、顕熱を奪う)ためものであり、冷却用通路25aと、冷却用通路25aに設けられた冷却用弁(開閉弁)25bとを有する。冷却用通路25aの一端部は、循環流路4における循環ポンプ8と加熱器10との間の部位に接続されている。したがって、冷却用通路25aには、液状の作動媒体が流入する。冷却用通路25aの他端部は、循環流路4における加熱器10と膨張機14との間の部位に接続されている。このため、冷却用通路25aを流れた液状の作動媒体は、蒸発器10から流出したガス状の作動媒体に合流する。
【0025】
冷却用通路25aは、循環流路4を構成する配管よりも細径の配管によって構成されている。したがって、冷却用通路25aには、循環流路4を流れる作動媒体に比べて十分小さな流量の作動媒体が流れる。なお、代替的に、冷却用通路25aに絞りやキャピラリチューブ(図示省略)が設けられる構成としてもよい。
【0026】
冷却用弁25bは、通常閉じられており、後述するコントローラ30からの指令を受けると開放される。
【0027】
循環流路4には、冷却用通路25aの下流端が接続された部位と膨張機14との間に、温度センサ32及び圧力センサ34が設けられている。温度センサ32は、加熱器10から流出して遮断弁21及び膨張機14に導入される作動媒体の温度を検出する。圧力センサ34は、蒸発器10から流出して遮断弁21及び膨張機14に導入される作動媒体の圧力を検出する。
【0028】
発電装置1には、循環ポンプ8の駆動制御や開閉弁21,23b,25bの開閉制御を行うコントローラ30が設けられている。コントローラ30の機能には、ポンプ制御手段30aと冷却制御手段30bとが含まれている。
【0029】
ポンプ制御手段30aは、循環ポンプ8の回転数を制御する手段であり、温度センサ32及び圧力センサ34の検出値から導出される作動媒体の過熱度が予め設定された範囲内に収まるように循環ポンプ8の駆動制御を行う。
【0030】
冷却制御手段30bは、冷却用弁25bの開閉を制御する手段であり、加熱器10から流出した作動媒体の温度に基づいて冷却用弁25bの開閉制御を実行する。すなわち、冷却制御手段30bは、温度センサ32及び圧力センサ34の検出値から加熱器10の下流側での作動媒体が過熱状態にあると判断された場合において、温度センサ32の検出値が予め定められた温度(基準温度)以上にあると判断されたときに、冷却用弁25bを開放するための指令を出力する。この基準温度としては、遮断弁21の接続部に設けられた図略のパッキン等にダメージを与えないような温度が設定されている。すなわち、パッキンが耐熱材で構成されていない場合でも、作動媒体から受ける熱によってダメージを受けないように、加熱器10出口での作動媒体の温度がコントロールされる。
【0031】
また、冷却制御手段30bは、加熱器10の下流側の作動媒体が飽和温度以上に維持される範囲で冷却を行うように、冷却用弁25bの閉鎖制御を実行する。すなわち、冷却制御手段30bは、膨張機14に導入される作動媒体が飽和温度以上に維持されるように、予め定められた閉鎖条件が成立すると冷却用弁25bを閉じる指令を出力する。この閉鎖条件としては、例えば、温度センサ32及び圧力センサ34の検出値から得られる作動媒体の過熱度が所定温度以上にあること等が挙げられる。なお、このときの作動媒体の温度は、前記の基準温度よりも低い温度となる。
【0032】
ここで、第1実施形態による発電システムの運転動作について説明する。通常運転時においては、遮断弁21が開放されている一方、バイパス路23aの開閉弁23b及び冷却用弁25bは閉じられている。
【0033】
循環ポンプ8が駆動されると、循環ポンプ8から送出された液状の作動媒体は、加熱器10の作動媒体流路10aに流入する。この作動媒体は、熱源媒体流路10bを流れる熱源媒体によって加熱されて蒸発する。加熱器10で蒸発した作動媒体は、膨張機14に導入される。作動媒体が膨張機14内に導入されることにより、膨張機14が回転駆動され、それによって発電機16が駆動されて発電が行われる。膨張機14内で膨張した作動媒体は、循環流路4に排出される。膨張機14から排出されたガス状の作動媒体は、凝縮器6の作動媒体流路6aに導入される。凝縮器6においては、作動媒体は、冷却媒体流路6bを流れる冷却媒体によって冷却されて凝縮する。この液状の作動媒体は、循環流路4を流れて循環ポンプ8に吸入される。循環流路4では、このような循環が繰り返されて発電機16において発電が行われる。
【0034】
発電装置1の運転時には、加熱器10下流側での作動媒体の過熱度が所定範囲内に収まるように、循環ポンプ8の回転数が制御されている。すなわち、図2に示すように、圧力センサ34及び温度センサ32の検出値P1,T1がコントローラ30に入力され(ステップST1)、ポンプ制御手段30aは、この検出値P1,T1に基づいて、作動媒体の過熱度が予め設定された範囲内に収まるように循環ポンプ8の制御が行われている(ステップST2)。
【0035】
そして、冷却制御手段30bは、圧力センサ34及び温度センサ32の検出値P1,T1に基づき、作動媒体が過熱状態にあるか否かを確認した上で、温度センサ32の検出値T1が予め設定された基準温度(上限値)Tr以下であるか否かを判定する(ステップST3、ST4)。そして、作動媒体が過熱状態にある場合において、温度センサ32の検出値T1が基準温度Trを超えていると判断された場合には、冷却用弁25bを開放する(ステップST5)。このような事態は、例えば、加熱器10に導入される熱源媒体の温度が急激に上昇したことにより、循環ポンプ8の回転数上昇では対応できなくなってしまった場合等に生ずる。
【0036】
冷却用弁25bが開放されると、循環ポンプ8から吐出された液状の作動媒体の一部が冷却用通路25aに分流される。そして、冷却用通路25aを流れた液状の作動媒体が循環流路4中の過熱状態にある作動媒体に合流する。したがって、加熱器10から流出して遮断弁21及び膨張機14に向かって循環流路4を流れるガス状の作動媒体は、合流された液状の作動媒体が気化することによって冷却される。冷却用通路25aから加熱器10よりも下流の循環流路4部分へ導入される液状の作動媒体は、加熱器10から流出した循環流路4内のガス状の作動媒体の温度を下げる、すなわち、顕熱を奪うだけでよいため、潜熱を奪う場合に比べて大きな熱量を必要としない。このため、上記液状の作動媒体は少量でよい。
【0037】
なお、冷却用通路25aは循環流路4に比べて細径の配管で構成されているため、冷却用通路25aを多量の作動媒体が流れてしまうことが防止される。このため、加熱器10内に溜まっている作動媒体量に影響を与えるほどは、循環流路4を通して加熱器10に流入する作動媒体の量は減らず、過熱度が更に上昇することもほとんどない。
【0038】
冷却用弁25bが開放されている状態において、温度センサ32及び圧力センサ34の検出値T1,P1から算出される過熱度SHが基準過熱度(下限値)SHr以上にあるか否かが判断されている(ステップST6)。そして、過熱度SHが基準過熱度SHrよりも低くなると冷却用弁25bが閉鎖される(ステップST7)。これにより、循環ポンプ8から吐出された作動媒体が冷却用通路25aに分流されることなく加熱器10に導入される通常運転に戻る。
【0039】
以上説明したように、第1実施形態では、冷却手段25が、加熱器10の下流側での温度が予め定められた値以上の過熱状態にある作動媒体を冷却する。このため、加熱器10から流出して膨張機14に流入する作動媒体の温度を抑制することができる。したがって、熱源媒体の温度が急激に上昇した場合等においても、作動媒体の昇温を効果的に抑制することができるため、加熱器10から膨張機14に至る経路に存在しているフランジのパッキン等を耐熱性のあるもので構成する必要がなくなり、また発電機16で用いられる絶縁材の階級を上げる等の対策も必要なくなる。
【0040】
また第1実施形態では、冷却手段25がポンプの下流側で且つ加熱器10の上流側から分流された作動媒体を循環流路4に合流させることによって作動媒体を冷却する構成なので、発電装置1としての構成が複雑化することを抑制することができ、また、より効果的に作動媒体を冷却することができる。
【0041】
また第1実施形態では、加熱器10の下流側の作動媒体が飽和温度以上に維持されるため、液状の作動媒体が膨張機14に導入されることを防止することができる。したがって、発電効率が低下することを防止することができる。
【0042】
また第1実施形態は、作動媒体の気化熱を利用して過熱状態の作動媒体の冷却を行うため、作動媒体の冷却をより効果的に行うことができる。すなわち、わずかな量の冷却媒体で過熱状態の作動媒体を冷却できる。特に、循環ポンプ8の下流側から分流された作動媒体を冷却媒体として用いるため、循環ポンプ8から加熱器10に送られる作動媒体の量が僅かに減るだけである。このため、循環ポンプ8から吐出された作動媒体から分流させるとしても、影響はほとんど無い。
【0043】
図3は、第2実施形態に係る発電装置1を示す。第2実施形態に係る発電装置1では、冷却手段25は、過熱状態の作動媒体を、外部から導入される蒸気、高温空気、温水等の熱媒体によって冷却する熱交換器25fを有していてもよい。例えば、この熱交換器25fは、加熱器10に接続される熱源媒体回路62が、エンジン(図示省略)への過給空気が流れる流路によって構成されている場合に適用される。熱交換器24fは、循環回路4における加熱器10の下流側に設けられている。熱交換器25fの冷却流路25eには、エンジンが搭載される船に設けられる図外の蒸気設備から余剰蒸気が導入されてもよい。エンジンが高負荷運転されている場合には、例えば150℃程度以上の過給空気が加熱器10に導入される。このため、加熱器10の作動媒体流路10aを流れる作動媒体は、150℃程度の温度になるまで加熱される。この場合には、冷却手段25の冷却用通路25aに設けられた冷却用弁(減圧手段)25bの開度を絞ることにより、熱媒体を減圧させ、これにより熱媒体の温度を下げる。これにより、熱交換器25fの作動媒体流路25dを流れる過熱状態の作動媒体を冷却することができる。なお、エンジンが低負荷運転されている場合には、加熱器10において作動媒体が十分に加熱されない場合があるため、このときには、熱交換器25fは、作動媒体を過熱状態まで加熱する過熱器としても機能し得る。
【0044】
図4に示すように、この実施形態による発電システムでは、圧力センサ34及び温度センサ32の検出値P1,T1に基づき、作動媒体が過熱状態にあるか否かを確認する(ステップST3)。そして、作動媒体が過熱状態にある場合において、温度センサ32の検出値T1が基準温度Trを超えていると判断された場合には(ステップST4)、冷却制御手段30bは、冷却用弁25bを絞る制御を行う(ステップST11)。これにより、熱媒体が減圧され、熱交換器25fにおいて作動媒体が冷却される(作動媒体の顕熱が取られる)。
【0045】
なお、本発明は、前記第1実施形態及び第2実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記第1実施形態では、循環流路4から分流された作動媒体が、加熱器10の下流側で再度循環流路4の作動媒体に合流され、直接熱交換される。代替的に、図5に示すように、冷却用通路25aに分流された作動媒体と循環流路4の作動媒体とが間接的に熱交換されてもよい。
【0046】
具体的に、冷却手段25は、循環流路4における加熱器10の下流側に配置された冷却用熱交換器25cを有している。この冷却用熱交換器25cには、循環流路4に接続された作動媒体流路25dと、冷却用通路25aに接続された冷却流路25eとが設けられている。
【0047】
冷却用通路25aの一端部(上流端部)は、循環流路4における循環ポンプ8と加熱器10との間の部位に接続されている。冷却用通路25aの他端部(下流端部)は、循環流路4における膨張機14と凝縮器6との間の部位に接続されている。冷却用通路25aの下流端部は、循環流路4における循環ポンプ8の吸入側に位置しているため、冷却用通路25aに分流された作動媒体が流れやすくなっている。
【0048】
循環流路4から冷却用通路25aに分流された液状の作動媒体は、冷却用熱交換器25cにおいて過熱状態にある作動媒体流路25dの作動媒体を冷却しながら気化する。気化した作動媒体は、冷却用通路25aから循環流路4における凝縮器6の上流側に戻される。
【0049】
前記第1実施形態では、過熱状態の作動媒体が液状の作動媒体によって冷却される。代替的に、図6に示すように、凝縮器6を通過した冷却回路61の冷却媒体(冷却水)によって過熱状態の作動媒体が冷却されてもよい。具体的に、冷却用通路25aの一端部(上流端部)は、冷却回路61における凝縮器6の下流側の部位に接続されている。冷却用通路25aを流れた冷却媒体は冷却回路61に戻される。この構成では、冷却用熱交換器25cにおいて、冷却流路25e内の冷却媒体が、過熱状態にある作動媒体流路25dの作動媒体を冷却する。
【0050】
前記各実施形態において、循環流路4の加熱器10と膨張機14との間の配管部分の一部を覆うジャケットを設け、当該ジャケット内に作動媒体や冷却流体を流すことにより加熱器10から流出した作動媒体が間接的に冷却されてもよい。
【0051】
冷却用弁25aは開度調整可能な弁とされてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 発電装置
4 循環流路
6 凝縮器
8 循環ポンプ
10 加熱器
14 膨張機
16 発電機
21 遮断弁
25 冷却手段
25a 冷却用通路
25b 冷却用弁
25c 冷却用熱交換器
25f 熱交換器
30 コントローラ
30a ポンプ制御手段
30b 冷却制御手段
32 温度センサ
34 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7