(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と、半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器とが直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、
半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と
を具備する直流遮断装置。
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と;半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器と;が直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と、を具備する直流遮断装置による直流遮断方法であって、
前記通電路を流れる電流である通電路電流を検出し、
前記通電路電流をゼロに近い所定の閾電流値以下まで減じるように前記電流源の出力電流を制御し、
前記通電路電流が前記閾電流値以下にされたあとに前記第1または第2の開閉器の電極開制御を開始し、
前記第1または第2の開閉器の電極開制御の時点より少なくとも後に前記半導体スイッチをオフに切り替え制御する
直流遮断方法。
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と;半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器と;が直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と、を具備する直流遮断装置による直流遮断方法であって、
前記電流源の出力電流をゼロから漸増するように制御し、
前記電流源の出力電流が漸増されている途上または前記電流源の出力電流が漸増される前の時点において、前記第1または第2の開閉器の電極開制御を開始し、
前記第1または第2の開閉器の電極開制御の時点より少なくとも後に前記半導体スイッチをオフに切り替え制御する
直流遮断方法。
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と;半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器と;が直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と、を具備する直流遮断装置による直流遮断方法であって、
前記通電路を流れる電流である通電路電流を検出し、
前記通電路電流の値がゼロに減じるまで前記電流源の出力電流をゼロから漸増制御し、
前記電流源の出力電流が漸増制御されている途上において、前記第1または第2の開閉器の電極開制御を開始し、
前記第2の開閉器の電極開制御が開始されてから所定の時間の経過のあとに前記通電路電流の値がゼロに減じるように、前記電流源の出力電流の漸増の程度を調整し、
前記通電路電流の値がゼロまで減じたあと該通電路電流の値をゼロに保つように前記電流源の出力電流を制御し、
前記通電路電流の値がゼロに保たれたあとに前記半導体スイッチをオフに切り替え制御する
直流遮断方法。
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と;半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器と;が直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と、を具備する直流遮断装置による直流遮断方法であって、
前記通電路を流れる電流である通電路電流を検出し、
前記通電路電流の値がゼロに減じるまで前記電流源の出力電流をゼロから漸増制御し、
前記電流源の出力電流が漸増制御されている途上において、前記第1または第2の開閉器の電極開制御を開始し、
前記第2の開閉器の電極間距離を検出し、
前記第2の開閉器の電極間距離が所定の距離になったあとに前記通電路電流の値がゼロに減じるように、前記電流源の出力電流の漸増の程度を調整し、
前記通電路電流の値がゼロまで減じたあと該通電路電流の値をゼロに保つように前記電流源の出力電流を制御し、
前記通電路電流の値がゼロに保たれたあとに前記半導体スイッチをオフに切り替え制御する
直流遮断方法。
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と;半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器と;が直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と、を具備する直流遮断装置による直流遮断方法であって、
前記通電路を流れる電流である通電路電流を検出し、
前記通電路電流の値がゼロに減じるまで前記電流源の出力電流をゼロから漸増制御し、
前記電流源の出力電流が漸増制御されている途上において、前記第1または第2の開閉器の電極開制御を開始し、
前記通電路電流の値がゼロまで減じたあと該通電路電流の値をゼロに保つように前記電流源の出力電流を制御し、
前記第1の開閉器の電極開制御が開始されてから所定の時間の経過のあと前記半導体スイッチをオフに切り替え制御する
直流遮断方法。
半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、所定の第1の耐圧性を有する第1の開閉器と;半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える、前記第1の耐圧性より耐圧性が低い第2の耐圧性を有する第2の開閉器と;が直列に接続され、かつ、前記第2の開閉器に印加され得る電圧から該第2の開閉器を保護する抵抗器が該第2の開閉器に並列に接続されている通電路と、半導体スイッチと電流源とが直列に接続され、かつ、該半導体スイッチと該電流源との直列接続に対して並列に接続された非線形抵抗器を有する、前記通電路に並列に接続された電流遮断路と、を具備する直流遮断装置による直流遮断方法であって、
前記通電路を流れる電流である通電路電流を検出し、
前記通電路電流の値がゼロに減じるまで前記電流源の出力電流をゼロから漸増制御し、
前記電流源の出力電流が漸増制御されている途上において、前記第1または第2の開閉器の電極開制御を開始し、
前記第1の開閉器の電極間距離を検出し、
前記通電路電流の値がゼロまで減じたあと該通電路電流の値をゼロに保つように前記電流源の出力電流を制御し、
前記第1の開閉器の電極間距離が所定の距離になったあと前記半導体スイッチをオフに切り替え制御する
直流遮断方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以上を踏まえ、以下では実施形態の直流遮断装置を図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態1の直流遮断装置の構成を示している。
図1に示すように、この直流遮断装置は、通電路10、電流遮断路30、およびこれらを制御する制御部50を有する。通電路10には、開閉器11、開閉器12、抵抗器13、電流検出部21が備えられる。電流遮断路30には、半導体スイッチ31、電流源41、非線形抵抗器32が備えられる。
【0011】
通常時は、通電路10上の開閉器11、12を閉じて通電路10を通して電流を流す。事故等で電流遮断を要する時は、半導体スイッチ31をオン状態にしかつ電流源41に電流を流す指令を制御部50から発して電流遮断路30を強制的かつ一時的に通電させる。その一方で開閉器11、12を開き通電路10の電流を不通にすることにより電流遮断路30の側に電流を転流し、その後速やかに電流遮断路30に流れている電流を限流させて遮断を完了する。
【0012】
図1において、通常時の直流電流は、一般的には、図示左から右の場合、図示右から左の場合、両者が考えられるが、その両者の場合にこの直流遮断器は対応している。以下では、説明便宜のため、通常時の直流電流は図示左から右へ流れているものとして説明する。
【0013】
開閉器11は、半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える開閉器であり、所定の大きな耐圧性(後述)を有している。開閉器12も、半導体スイッチによらずに電流の通、不通を切り替える開閉器であるが、耐圧性は、開閉器11の耐圧性より低い開閉器である。開閉器11と開閉器12とはこのように特性の異なる開閉器になっており役割を分担している。開閉器11と開閉器12とは直列に接続されており、ともにその有する電極の開閉が制御部50により制御される。
【0014】
開閉器12と並列に接続された抵抗器13は、開閉器12に印加され得る電圧を低電圧に抑制して開閉器12を保護する抵抗器である。すなわち、開閉器11および開閉器12が開状態に制御された状態では、この直流遮断装置に印加されている電圧は、ほぼ、開閉器11の両端間に発生する電圧と開閉器12の両端間に発生する電圧とで負担された状態になる。このとき、開閉器11には抵抗器が並列に接続されていない(=等価的に非常に大きな抵抗器がある)ので、抵抗分圧として、この直流遮断装置に印加されている電圧のほとんどは開閉器11の側が負担することになる。ただ抵抗器13の抵抗値の下限目安については、半導体スイッチ31のオン時の抵抗値と関連する点があるので後述する。
【0015】
電流検出部21は、通電路10に流れている電流を検出しこれを制御部50に伝える。このため、電流検出部21は、開閉器11、12と直列接続になるように通電路10に設けられている。電流検出の具体例として、例えば、ごく小さい抵抗値を有する抵抗器を継電路10に挿入しその両端電圧を検出する構成が考えられる。
【0016】
半導体スイッチ31は、電流の通、不通を切り替えるスイッチであり、切り替えの制御は制御部50による。半導体スイッチの具体例として、図示するように、ここでは、IGBT(insulated gate bipolar transistor)とダイオードとの逆並列接続(順方向が互いに逆になる並列接続)要素を2つ逆方向に直列に向い合せに接続して単位要素を構成し、この単位構成を多数直列に接続して全体として2つの端子を有するようにした構成物を用いている。IGBTそれぞれのゲートに制御部50からの制御信号に起因する電圧が印加されると各単位要素は、いずれの方向にも電流が流れる状態(つまりオン状態)になる。
【0017】
半導体スイッチの具体的構成物については、図示以外にも種々採用することが可能である。半導体スイッチは一般にオン状態において等価的に抵抗(オン抵抗)があり、通電により電圧降下が生じる。この電圧降下は、
図1中に示した半導体スイッチ31の場合で言えば、上記の単位要素の直列数に依存して大きくなり、つまり半導体スイッチ31全体のオン抵抗もこの直列数に依存して大きくなる。
【0018】
単位要素の直列数については、その必要な数は、この半導体スイッチ31が電流遮断のためオフ状態に至ったとき以降においてこの遮断装置に印加され得る高電圧に耐えられることを条件に決め得る。これは、一般にある程度大きな数(例えば数百)になる。
【0019】
また、オン抵抗については、電流遮断路30として一時的に電流を流すという必要的機能上、通電路10に設けられた抵抗器13のそれより十分に低いことが要求される。実際には、上記の単位要素の直列数が、耐圧の点から最低限必要な数が決まっており、それにより半導体スイッチ31としてオン抵抗が決まることから、その結果、これを基準にそれより相当に大きな抵抗値として、通電路10にある抵抗器13の方の抵抗値を決めることができる。一例として、抵抗器13の抵抗値は、半導体スイッチ31のオン抵抗より少なくも1000倍以上大きくする。
【0020】
半導体スイッチ31を切り替える制御部50による制御は、通常時は半導体スイッチ31をオフ、遮断動作時には一度オンに切り替えてその後速やかにオフに戻すことが標準的な移行である。ただし、これに限らず、通常時に半導体スイッチ31をオンとするように制御しても実際にはそのオン抵抗のため電流遮断路30には電流は流れず、通電路10の側に全電流が流れることになるのでこのように通常時に半導体スイッチ31をオンとする制御も採り得る選択である。
【0021】
電流源41は、半導体スイッチ31と直列に接続され、これによりさらに、電流源41と半導体スイッチ31との直列接続要素が、導電路10と並列に接続される。電流源41の出力電流は、制御部50により所望に制御される。この点、特にその時系列的な制御は種々の例をさらに後述する。端的には、電流源41は、事故等により電流遮断が必要になった場合において、通電路10に流れている電流を、電流源41による強制的な電流の流れで電流遮断路30の側を流れる電流として素早く転流するための構成物である。電流源41による強制的な電流のことを、通電路10の電流を減じさせるための電流であることから、以下では「逆電流」と称する場合がある。
【0022】
非線形抵抗器32は、電流源41と半導体スイッチ31との直列接続要素と並列に接続されている。非線形抵抗器32は、この直流遮断器の遮断動作の最終段階で機能するものであり、具体的には通電路10が電流不通になり、半導体スイッチ31および電流源41の直列接続要素も電流不通になった状態において電流が一時的に流れる。一時的に流れる最初の段階では、その直前に半導体スイッチ31と電流源41との直列接続要素に流れていた電流と同じ値の電流が流れる。それにより非線形抵抗器32に比較的大きな電圧降下が生じることから電流は減少し、電流が減少すると抵抗の非線形性により抵抗値が増大し、増大した抵抗値により実質的に電流ゼロに至って電流遮断が完了する。
【0023】
なお、制御部50には、以上の説明でも言及したように、電流検出部21で検出した電流が伝えられる。そして、制御部50は、開閉器11、12の電極開閉を制御し、半導体スイッチ31のオンオフを切り替え制御し、電流源41の出力電流を制御する。制御部50の内部には、これらの各制御に対応してそれぞれ下位の制御部が存在するが、それらの下位の制御部は互いに接続され、それらの制御に必要な情報が互いに共有されるように伝え合えられている。
【0024】
次に、
図2は、
図1に示した直流遮断装置の変形例としての構成を示している。
図2において、
図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付し、その説明は省略する。
図2に示す構成の、
図1に示したものとの違いは、電流遮断路30に直列に挿入されるように電流検出部42を設けていることである。電流検出部42によって検出された電流の値は、制御部50に伝えられる。そのほかの構成は
図1に示したものと同じである。電流検出部42を設けた理由は以下である。
【0025】
図1に示した構成においては、電流源41が出力する電流の制御は、制御部50からの指令により行われるところ、この指令は制御部50から電流源41へ一方的に伝えられるのみであり、指令の通り電流源41が電流を出力しているかどうかは制御部50では感知できない。特に動的に指令の変更がある場合には、時間的に指令と実際とが乖離している状態が生じると考えられるがこれに対して制御部50は関われない。そこで、電流検出部42を図示するように挿入、設置すれば、制御部50は、指令の結果としての電流源41が出力している電流の値を了知することができる。したがって、全体として制御の質を向上できると考えられる。
【0026】
図1、
図2に示した実施形態1の直流遮断装置によれば、通電路10には半導体スイッチを用いた開閉器が使われないことから、通電時の電力損失を大きく減じることができる。また、電流遮断路30に電流源41を挿入しているので、通電路10の電流を強制的に素早く(一例として数msで)電流遮断路30の側に遮断すべき電流として転流することができる。したがって、電流遮断路30が遮断すべき電流の値を小さくすることが可能になり、遮断装置として大型化を回避できる。より具体的には、半導体スイッチ31の電流定格を小さく抑えることにより大型化を回避できる。
【0027】
次に、
図3は、
図1、
図2中に示した開閉器12に含まれ得る要素である真空バルブを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、この真空バルブ120は、碍管121、固定側電極122、可動側電極123、固定側通電軸124、可動側通電軸125、ベローズ126を主たる構成要素として有している。
【0028】
図1、
図2の説明においては開閉器12の具体例について言及しなかったが、開閉器12としては、真空開閉器を利用することができる。真空開閉器は、一般に耐圧性が高い開閉器とは言えないが絶縁回復特性は優れている。そこで、開閉器12として真空開閉器を用いても、通電路10の電流をゼロに減じた後に生じ得る、オン状態の半導体スイッチ31の電圧降下分による低印加電圧には開閉器12は耐えることができる上に、直流遮断装置として優れた絶縁回復特性を得ることができる。
【0029】
真空開閉器は、
図3に示すような真空バルブ120を有しており、これ以外に、可動側通電軸125をその軸方向に所望に移動させるための機構(不図示)などが備えられる。円筒状の碍管121の内部はほぼ真空に保たれ、この真空を外と遮断するため、可動側通電軸125および碍管121に固定してベローズ126が設けられている。真空バルブ120の構成について以下説明する。
【0030】
碍管121の円筒上面に貫通するように固定側通電軸124が設けられ、固定側通電軸124は、碍管121への貫通部で碍管121に固定されている。碍管121の円筒上面を貫通して突起している固定側通電軸124の部分が開閉器としての一方の端子になる。碍管121の内部に位置する固定側通電軸124の端部には、その軸と共通する軸を有するような、扁平な円盤状の固定側電極122が設けられている。固定側通電軸124が位置する側とは反対の側の固定側電極122の面に対向して、固定側電極122と同様な形状を有しかつその軸と共通する軸を有する可動側電極123の面が位置している。
【0031】
可動側電極123の、固定側電極122と対向する面の側とは反対の側には、固定側通電軸124、固定側電極122、可動側電極123のそれぞれと軸を共通に可動側通電軸125が設けられている。可動側通電軸125は、碍管121の円筒下面を貫通するように設けられ、その貫通して飛び出している部分が開閉器としての他方の端子になる。なお、すでに説明したようにベローズ126はその一方の側が可動側通電軸125に固定して設けられているとともに、その他方の側が碍管121に固定されている。ベローズ126により、可動側通電軸125が電流の開閉のためその軸方向に移動されても、常に碍管121内は気密が保たれる。
【0032】
直流遮断装置を、例えば直流300kV程度の系統に使用した場合を考えると、半導体スイッチ31はその耐圧を確保するため、すでに説明したようにその単位要素の数が膨大になっているが、開閉器12としては最大で、オン状態の半導体スイッチ31による電圧降下分の電圧に耐えられれば足りる。この電圧降下は数kVと見積もられ、真空開閉器である開閉器12でもこの程度の電圧には耐えられる。そして、真空開閉器である開閉器12により、直流遮断装置として優れた絶縁回復特性を得ることができる。
【0033】
一方、
図1、
図2の説明において開閉器11の具体例にも言及しなかったが、開閉器11としては、例えば絶縁ガスとしてSF
6が封入されたガス開閉器を利用することができる。ガス開閉器は、一般に耐圧性が高い。そこで、開閉器11としてガス開閉器を用いれば、電流遮断後に生じ得る直流遮断装置への高印加電圧を受け止めて耐えることが可能である。なおすでに説明したが、このとき、開閉器12の側は抵抗器13が並列に設けられているため、直流遮断装置への高印加電圧はほぼ開閉器11の側が負担している。
【0034】
直流遮断装置を、例えば直流300kV程度の系統に使用した場合を考えると、直流遮断装置として、半導体スイッチ31がオフ状態に移行した直後において、最大で500kV程度の電圧が印加された状態に至ると見積もられる。ガス開閉器である開閉器11を用いることでこのような高電圧に耐えることが可能である。
【0035】
次に、
図4を参照して、
図1、
図2に示した直流遮断装置についてその時系列的な動作をさらに説明する。
図4は、
図1に示した直流遮断装置の動作を説明する標準的なタイミングを示している。なお、以下の説明では、
図1に示した直流遮断装置の場合について説明するが、
図2に示した直流遮断装置の場合であっても、すでに説明した優位点が存在することを加味すればそれ以外はほぼ同様の動作である。
【0036】
図4(a)には、全電流(つまり、通電路10に流れる電流と電流遮断路30に流れる電流との和の電流)の時系列的な変化が示されている。図示の最初の段階(時刻A以前の段階)は、通常時の電流が流れている状態を示している。その内訳は、すべて通電路10の側に流れている電流でこの点は
図4(c)に示されているとおりである。当然ながら、この段階では
図4(b)に示すように半導体スイッチ31の側(および電流遮断路30)に電流は流れていない。
【0037】
時刻Aにおいて直流送電系統に事故が発生すると、
図4(a)に示すように全電流は増加していく。事故発生の旨は不図示の事故検出装置により検出され(時刻B)、その情報は制御部50に伝えられる。これを受けて制御部50は、電流源41を制御して電流出力を開始させる(時刻C:逆電流通電開始)。これにより、
図4(b)に示すように半導体スイッチ31を流れる電流が電流源41の駆動能力に応じてまたは制御された結果として漸増していく一方、
図4(c)に示すようにその反射的作用として通電路10の電流は漸減していく。
【0038】
そして、制御部50により電流源41の出力電流が漸増されている途上において、制御部50は、開閉器11、12に対して電極開制御を開始する(時刻D)。開閉器11、12の電極開制御が開始されると、それらの開閉器11、12において電極間は物理的に離間していくが当初は離間距離が短いためアーク電流が流れる。アーク電流で電極間にアーク抵抗が生じるため電流源41の駆動能力が限られている場合には、その出力電流の漸増速度は時刻D以降やや増加する可能性がある。
【0039】
電流源41の出力電流の、上記のような漸増状態は、半導体スイッチ31を流れる電流の作用で通電路10を流れる電流がゼロになるまで(時刻Eまで)続けられる。この電流がゼロに至ったことは、通電路10に設けられた電流検出部21により検出結果が制御部50に伝えられて了知される。これにより通電路10を流れる電流の電流遮断路30への転流が完了する。
【0040】
通電路10の電流の値がゼロまで減じたあとは、通電路10の電流の値をゼロに保つように、制御部50は電流源41に対してその出力電流の制御を行う(時刻Eから時刻F)。これも電流検出部21により検出結果が制御部50に伝えられてなされる制御である。時刻EからFまでの期間においては、半導体スイッチ31に流れる電流によりそのオン抵抗のためある程度の電圧降下が生じており、これがこの直流遮断装置への印加電圧になっている(
図4(d)を参照)。
【0041】
すでに説明したように、この印加電圧(例えば数kV)に対して開閉器12は耐圧性を有している。時刻EからFまでは、可能性として半導体スイッチ31の両端間の電圧がほぼそのまま開閉器12に印加され得る状態になっている。開閉器11の側の電極開状態がまだ最終的に確立していない可能性があるためである。
【0042】
時刻Eのあと、開閉器11、12の電極開状態が最終的に確立したと考えられる時点以後(時刻F)で、半導体スイッチ31を
オフ状態にすべく制御部50は半導体スイッチ31を制御する。すでに時刻Eで通電路10が電流不通であり、時刻Fで半導体スイッチ31および電流源41の直列接続要素も電流不通に変換されるため、時刻F以降、非線形抵抗器32に電流が一時的に流れる。
【0043】
一時的に流れる最初の段階では、その直前に半導体スイッチ31と電流源41との直列接続要素に流れていた電流と同じ値の電流が流れる。それにより非線形抵抗器32に比較的大きな電圧降下(例えば500kV)が生じることから電流は減少し、電流が減少すると抵抗の非線形性により抵抗値が増大し、増大した抵抗値により実質的に電流ゼロに至って電流遮断が完了する(時刻G)。時刻G以降は、この直流送電系統に応じた直流電圧(例えば300kV)がこの直流遮断装置に印加された状態になる(
図4(d)を参照)。
【0044】
図4に示したような標準的なタイミングによる直流遮断装置の動作によれば、開閉器11または開閉器12において、その電極開制御後に電極間にアーク電流が流れて、電気抵抗が増加する。したがって、その分だけ、電流源41の側ではその出力電流をゼロから漸増する漸増速度をより速められる可能性が生じ、その結果、通電路10の電流をより素早く電流遮断路30の側に遮断すべき電流として転流することができる。すなわち、その分だけ高速性のある直流遮断器になる。
【0045】
(実施形態2)
次に、実施形態2について
図5を参照して説明する。
図5は、
図1に示した直流遮断装置の動作を説明する改変的なタイミングを示している。この形態は、物理的な構成として
図1、
図2に示したものとほぼ同じと捉えてよいが、制御部50による制御のタイミングの点で
図4に示したものと多少異ならせている。このため、重複する説明は省略し
図4との比較上異なる点を中心に以下説明を行う。
【0046】
この形態は、図示する時刻Dのタイミングである開閉器の電極開制御開始のタイミングに特徴がある。このタイミングは、制御部50によって通電路10の電流をゼロに近い所定の閾電流値以下まで減じるように(
図5(c)における時刻Dを参照)電流源41の電流が制御されているときのタイミングである。この時点において開閉器11、12の電極開制御が開始される。
【0047】
したがって、この形態によれば、通電路10の電流がゼロに近い所定の電流値以下になってから電極開制御が開始されるため、開閉器11、12の電極間にアーク電流が生じることが大きく抑制され電極の損傷を効果的に軽減することができる。なお、開閉器11、12の電極開制御の開始は互いに多少前後しても効果の点ではほぼ同様と考えられる。
【0048】
この形態では、開閉器12として、真空開閉器のうちでも特に平板電極を有する真空開閉器を用いると好適である。平板電極を有する真空開閉器は閉状態での電気抵抗が低く、これにより通電時の電力損失をさらに低減することができるためである。平板電極とは、すでに説明した
図3に示した模式図を参照して、固定側電極122、通電側電極123の対向するそれぞれの面(接点)が平面状にされている電極である。平板電極は一般にアーク電流が局在して電極が損傷しやすいが、上記のような制御を行うことによりアーク電流による電極の損傷が大きく軽減される。
【0049】
(実施形態3)
次に、実施形態3について
図6を参照して説明する。
図6は、
図5に示したものとは異なる、
図1に示した直流遮断装置の動作を説明する改変的なタイミングを示している。この形態も、物理的な構成として
図1、
図2に示したものとほぼ同じと捉えてよいが、制御部50による制御のタイミングの点で
図4、
図5に示したものと多少異ならせている。このため、重複する説明は省略し
図4、
図5との比較上異なる点を中心に以下説明を行う。
【0050】
この形態も、図示する時刻Dのタイミングである開閉器の電極開制御開始のタイミングに特徴がある。すなわち、このタイミング(時刻D)を、逆電流通電開始のタイミングである時刻Cよりあとのごく近いタイミングとしている。
図4においてすでに説明したが、このように通電路10の電流が流れているタイミングで開閉器11、12の電極開制御開始を行うとその電極開制御後に電極間にアーク電流が流れて、電気抵抗が増加する。
【0051】
この形態は、この作用を積極的に利用している。すなわち、電気抵抗の増加の分だけ、電流源41の側ではその出力電流をゼロから漸増する漸増速度をより速められる可能性が生じ、その結果、通電路10の電流をさらに素早く電流遮断路30の側に遮断すべき電流として転流することができる。すなわち、その分だけさらに高速性のある直流遮断器にすることができる。なお、開閉器11、12の電極開制御の開始は互いに多少前後しても効果の点ではほぼ同様と考えられる。
【0052】
この形態では、開閉器12として、真空開閉器のうちでも特に縦磁界電極を有する真空開閉器を用いると好適である。縦磁界電極を有する真空開閉器は、その電極開制御後に電極間に流れるアーク電流を縦磁界により拡散制御して電極の損傷が抑制されるためである。縦磁界電極とは、すでに説明した
図3に示した模式図を参照して、固定側電極122、通電側電極123それぞれの電極自体にコイルを取り付けてアークと平行に強力な磁界を加えられるようにした電極である。これにより、荷電粒子を磁界中に閉じ込めてこれを電極全体に平等に分散させ、電極の損傷を大きく抑制することができる。
【0053】
(実施形態4)
次に、実施形態4について
図7を参照して説明する。
図7は、
図5、
図6に示したものとは異なる、
図1に示した直流遮断装置の動作を説明する改変的なタイミングを示している。この形態も、物理的な構成として
図1、
図2に示したものとほぼ同じと捉えてよいが、制御部50による制御のタイミングの点で
図4ないし
図6に示したものと多少異ならせている。このため、重複する説明は省略し
図4ないし
図6との比較上異なる点を中心に以下説明を行う。
【0054】
この形態も、図示する時刻Dのタイミングである開閉器の電極開制御開始のタイミングに特徴があり、このタイミング(時刻D)を、逆電流通電開始のタイミングである時刻Cよりも前のタイミングとしている。すなわち、この形態は、
図6において説明した作用をさらに積極的に利用した形態である。
【0055】
このように時刻Dを前に移行することで、さらに大きなアーク抵抗によって電流源41の側ではその出力電流をゼロから漸増する漸増速度をより速められる可能性が生じる。その結果、通電路10の電流をさらに素早く電流遮断路30の側に遮断すべき電流として転流することができる。すなわち、その分だけさらに高速性のある直流遮断器にすることができる。なお、開閉器11、12の電極開制御の開始は互いに多少前後しても効果の点ではほぼ同様と考えられる。
【0056】
この形態も、
図6での説明と同様に、開閉器12として、電極の損傷を抑制するため真空開閉器のうちでも特に縦磁界電極を有する真空開閉器を用いることが好適である。
【0057】
(実施形態5)
次に、実施形態5について
図8を参照して説明する。
図8は、
図5ないし
図7に示したものとは異なる、
図1に示した直流遮断装置の動作を説明する改変的なタイミングを示している。この形態も、物理的な構成として
図1、
図2に示したものとほぼ同じと捉えてよいが、制御部50による制御のタイミングの点で
図4ないし
図7に示したものと多少異ならせている。このため、重複する説明は省略し
図4ないし
図7との比較上異なる点を中心に以下説明を行う。
【0058】
この形態は、開閉器12への電極開制御の開始の時刻Dから予想される、開閉器12の電極距離が所定の距離に到達する時刻D1を考慮に入れて制御を行う。この時刻D1より遅い時点で通電路10から電流遮断路30への転流が完了するように(転流完了は時刻E)、電流源41の出力電流が制御部50によって制御される。つまり、電流源41の出力電流の漸増の程度は制御部50によってそのように調整される。
【0059】
このように制御することで、開閉器12の耐圧性が十分に確保されるような状態になってから、半導体スイッチ31による電圧降下分の開閉器12への電圧印加が生じることになるので(その期間は時刻E以降時刻Fまで)、開閉器12の運用上非常に好ましい結果がもたらされる。
【0060】
(実施形態6)
図9は、
図8に示したタイミングチャートを実現するための一例である実施形態6の直流遮断装置を示している。
図9において、
図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付し、その説明は省略する。
図9に示す構成の、
図1に示したものとの違いは、開閉器12に、開閉器12の電極間距離を検出して制御部50に伝える電極間距離検出部22を設けた点である。そのほかの構成は
図1に示したものと同じである。
【0061】
この形態は、考え方として
図8を参照して説明した形態と同じである。
図8での説明では、開閉器12の電極距離が所定の距離に到達する時刻D1を開閉器12への電極開制御の開始の時刻Dから予想していたが、この形態では、電極間距離検出部22によって開閉器12の電極間距離が制御部50に伝えられるので、これに基づき、制御部50は時刻D1を了知できる。その後は、
図8での説明と同じである。効果の点でも
図8での説明と同じである。
【0062】
(実施形態7)
次に、実施形態7について
図10を参照して説明する。
図10は、
図5ないし
図8に示したものとは異なる、
図1に示した直流遮断装置の動作を説明する改変的なタイミングを示している。この形態も、物理的な構成として
図1、
図2に示したものとほぼ同じと捉えてよいが、制御部50による制御のタイミングの点で
図4ないし
図8に示したものと多少異ならせている。このため、重複する説明は省略し
図4ないし
図8との比較上異なる点を中心に以下説明を行う。
【0063】
この形態は、開閉器11への電極開制御の開始の時刻Dから予想される、開閉器11の電極距離が所定の距離に到達する時刻D2を考慮に入れて制御を行う。この時刻D2より遅い時点で半導体スイッチ31を
オフ状態に切り替え制御するように(そのタイミングは時刻F)、半導体スイッチ31の
オンオフが制御部50によって制御される。
【0064】
このように制御することで、開閉器11の耐圧性が十分に確保されるような状態になってから、直流遮断装置への高印加電圧が生じることになるので(その期間は時刻F以降)、開閉器11の運用上非常に好ましい結果がもたらされる。
【0065】
(実施形態8)
図11は、
図10に示したタイミングチャートを実現するための一例である実施形態8の直流遮断装置を示している。
図11において、
図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付し、その説明は省略する。
図11に示す構成の、
図1に示したものとの違いは、開閉器11に、開閉器11の電極間距離を検出して制御部50に伝える電極間距離検出部23を設けた点である。そのほかの構成は
図1に示したものと同じである。
【0066】
この形態は、考え方として
図10を参照して説明した形態と同じである。
図10での説明では、開閉器11の電極距離が所定の距離に到達する時刻D2を開閉器11への電極開制御の開始の時刻Dから予想していたが、この形態では、電極間距離検出部23によって開閉器11の電極間距離が制御部50に伝えられるので、これに基づき、制御部50は時刻D2を了知できる。その後は、
図10での説明と同じである。効果の点でも
図10での説明と同じである。
【0067】
以上説明したように、各実施形態の直流遮断装置によれば、通電路10には半導体スイッチを用いた開閉器が使われないことから、通電時の電力損失を大きく減じることができる。また、電流遮断路30に電流源41を挿入しているので、通電路10の電流を強制的に素早く電流遮断路30の側に遮断すべき電流として転流することができる。したがって、電流遮断路30が遮断すべき電流の値を小さくすることが可能になり、遮断装置として大型化を回避できる。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。