特許第6223908号(P6223908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6223908-替芯式ホルダー鉛筆芯 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223908
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】替芯式ホルダー鉛筆芯
(51)【国際特許分類】
   C09D 13/00 20060101AFI20171023BHJP
   B43K 21/16 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   C09D13/00
   !B43K21/16 S
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-106872(P2014-106872)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-221869(P2015-221869A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 清志
(72)【発明者】
【氏名】坂西 聡
(72)【発明者】
【氏名】木野 仁志
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−343932(JP,A)
【文献】 特開平07−018213(JP,A)
【文献】 特開平09−076691(JP,A)
【文献】 特開平08−053642(JP,A)
【文献】 実開昭54−089939(JP,U)
【文献】 実開昭49−073527(JP,U)
【文献】 実開昭54−008543(JP,U)
【文献】 特開2009−062443(JP,A)
【文献】 実開昭61−078684(JP,U)
【文献】 特開平10−088057(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3032166(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 13/00
B43K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す組成物を焼成してなるアモルファス状炭素中に、炭素粉末、半金属窒化物、半金属酸化物及び粘土鉱物から選ばれる体質材の一種または二種以上を、均一かつ一方向に高度に配向制御させてなる鉛筆芯と、該鉛筆芯を把持し、任意に繰出して折ることができるホルダーとを具備することを特徴とする替芯式ホルダー鉛筆芯。
【請求項2】
炭素粉末が黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
【請求項3】
体質材が、窒化ホウ素、タルク、カオリン(カオリナイト、ハロイサイト)、シリカ、マイカ及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
【請求項4】
断面の形状が四角形の矩形状であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
【請求項5】
表面にレーザー光を照射してカット用の傷をつけることを特徴とする請求項1〜の何れか一つに記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度で折れ難く、かつ、任意に折ることができ、描線も安定して筆記することができ、また、カド書きで細かい文字も書くことができ、しかも、削る必要がないため削りカスもでない替芯式ホルダー鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木軸鉛筆用の芯は、黒鉛などの体質材に、主に粘土などの結合材を加え、さらに必要に応じて所要の溶剤及び/または可塑剤を添加してこれらを混練し、この混練物を線状体に押出成形した後900〜1200℃の温度で焼成し、得られた焼結体の気孔中に油脂類等を含浸させて成形されている。
【0003】
また、木軸鉛筆については、ナイフや削り器により削って使用する必要があり、削ることに伴い、削りカスが発生し、しかも、使用し続けることで木軸が短くなり持ちにくくなるなどの不満があった。更に、削り器を用いなくて済む紙巻軸やカット平型軸鉛筆(例えば、特許文献1参照)も提案されているが、削り器は不要になってもカスが出ること、使用し続けると長さが変わるこなどの課題があり、これらの課題については解決できていないのが現状である。
【0004】
一方、従来の円断面芯を把持して使用するホルダー鉛筆は、文字を書く用途には適するが、芯先がすぐに丸くなることや、マークシートのように幅広い面を塗るには使い勝手が悪かった。加えて、これまでの鉛筆芯を矩形に成形して焼成した鉛筆芯(例えば、特許文献2参照)も知られているが、芯自体の強度が弱いことで、折れやすいものとなり、根本的な解決には至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3032166号公報(実用新案登録請求の範囲、図1等)
【特許文献2】実開昭61−78684号公報全文(考案の詳細な説明等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題等について、これを解消しようとするものであり、削る必要がなく、したがって削りカスが出ない、外観形状として短くなることがないので筆記具としての使い勝手も変わらなく、高強度で折れ難く、かつ、任意に折ることができ、描線も安定して筆記できて、カド書きで細かい文字も書くことができる替芯式ホルダー鉛筆芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、鋭意研究の結果、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物を焼成してなるアモルファス状炭素中に、少なくとも特定の体質材一種または二種以上を、均一かつ一方向に高度に配向制御させることなどにより、前記課題が効果的に解決し、上記目的の替芯式ホルダー鉛筆芯が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)〜(6)に存する。
(1) 賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す組成物を焼成してなるアモルファス状炭素中に、炭素粉末、半金属窒化物、半金属酸化物及び粘土鉱物から選ばれる体質材の一種または二種以上を、均一かつ一方向に高度に配向制御させてなることを特徴とする替芯式ホルダー鉛筆芯。
(2) 炭素粉末が黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする上記(1)記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
(3) 体質材が、窒化ホウ素、タルク、カオリン(カオリナイト、ハロイサイト)、シリカ、マイカ及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
(4) 断面の形状が四角形の矩形状であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
(5) 鉛筆芯を把持し、任意に繰出して折ることができるホルダーを具備する上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
(6) 表面にレーザー光を照射してカット用の傷をつけることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の替芯式ホルダー鉛筆芯。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高強度で折れ難く、かつ、任意に折ることができ、描線も安定して筆記することができ、また、カド書きで細かい文字も書くことができ、しかも、削る必要がないため削りカスもでない替芯式ホルダー鉛筆芯が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯の一例を示す平面図、(b)は本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯を替芯式のホルダータイプの筆記具に適用した一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯は、賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す組成物を焼成してなるアモルファス状炭素中に、炭素粉末、半金属窒化物、半金属酸化物及び粘土鉱物から選ばれる体質材の一種または二種以上を、均一かつ一方向に高度に配向制御させてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明において、上記構成となる替芯式ホルダー鉛筆芯は、例えば、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、カーボンブラック、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素粉末と、窒化ホウ素、タルク、カオリン(カオリナイト、ハロイサイト)、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム等の体質材一種または二種以上を混合し、成形段階でこれら体質材を均一かつ一方向に高度に配向させた後に焼成することにより得られるものである。
【0013】
本発明の賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物としては、例えば、不活性ガス雰囲気中での焼成により5%以上の炭化収率を示す有機物質などを挙げることができる。
具体的には、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、リグニン、セルロース、トラガントガム、アラビアガム、糖類等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ天然高分子物質、及び前記には含有されない、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、コプナ樹脂等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ合成高分子物質が挙げられる。
使用する組成物種とその使用量は、目的とする替芯式ホルダー鉛筆芯の形状等により適宜選択され、上述の成分の単独でも二種以上の混合体でも使用することができるが、特に、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂を使用することが好ましく、炭素の持つ優れた特性を堅持するためにもその使用量は配合組成物全量中に、30質量部以上が好ましく、更に好ましくは、35〜60質量部が望ましい。
【0014】
本発明の炭素粉末としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
また、本発明の半金属窒化物、半金属酸化物、粘土鉱物などの体質材としては、例えば、窒化ホウ素、窒化ケイ素、タルク、カオリン(カオリナイト、ハロイサイト)、シリカ、マイカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
好ましくは、炭素粉末や、半金属窒化物、半金属酸化物、粘土鉱物などの体質材は、平均粒度(平均粒子径)が50μm以下、好ましくは、1〜10μmの粒子径のものを用いることが望ましい。この平均粒子径が50μm超の場合には、十分な強度が発現せず、また、平均粒子径が1μm未満の場合には体質材の配向が劣り、強度が発現しないばかりでなく硬度だけが硬くなる傾向を有するので好ましくない。
なお、本発明(後述する実施例等を含む)において、平均粒度(平均粒子径)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置で測定した値をいう。
【0015】
用いる炭素粉末、半金属窒化物、半金属酸化物、粘土鉱物などの体質材種とその使用量は、目的とする替芯式ホルダー鉛筆芯の形状や芯の摩耗状態と被筆記面に形成される描線の状態、折るための加工のし易さ、替芯式ホルダー鉛筆芯としての使い勝手などにより適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができる。好ましくは、筆記描線の濃さなどから、特に黒鉛、窒化硼素を使用することが望ましく、炭素の持つ優れた特性を堅持するためにもその使用量は、配合組成物全量中に、70質量部以下が好ましく、更に好ましくは、40〜65質量部が望ましく、特に好ましくは、炭素粉末が10〜60質量部、その他の体質材が5〜55質量部とすることが望ましい。
【0016】
本発明では、上記賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、カーボンブラック、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素粉末と、窒化ホウ素、タルク、カオリン(カオリナイト、ハロイサイト)、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム等の体質材一種または二種以上と、さらに必要に応じて、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、リン酸トリクレジル(TCP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、ジアリルフタレート(DAP)、プロピレンカーボネート、アルコール類、ケトン類、エステル類などの所要の溶剤及び可塑剤の一種または二種以上を配合して、これらをヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、2本ロールなどの混練機で混練して混練物を調整し、この混練物を押出成形等する際の成形段階で上記体質材を均一かつ一方向に高度に配向させた後に焼成することにより、得られるものである。
具体的には、上記混練物を、例えば、スクリュー型押出機などを用いて押出成形する際、押出ノズル直上の背面圧力を30MPa以上、好ましくは35MPa以上で、かつ溶融した混練物がノズルを通過する時のせん断速度を5×10(1/sec)以上、好ましくは7×10(1/sec)以上となるように押出条件を設定し、所定形状となるように成形、好ましくは、スクリュー式押出機の押出部分の先端形状が断面長方形状となる押出ノズルを装着し、断面が四角形の矩形状に成形を行ない、その後、従来と同様に、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で焼成し、得られた焼結体の気孔中に油脂類等を含浸させることにより本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯を得ることができる。
【0017】
なお、上記押出条件の制御は、使用する材料の選択、配合の調整などの他に、押出機のスクリュー形状、押出温度、押出速度、ノズル径などを好適に組み合わせることによって得られる。
溶融した混練物がノズルを通過する時のせん断速度は、流量Q(cm/sec)、ノズル半径R(cm)、円周率をπとしたとき次式により求められる。
せん断速度=4Q/πR(1/sec)
このようにして押出成形によって得られた線状体を焼成し、得られた焼結体の気孔中に油脂類等を含浸させることにより本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯を得ることができる。
【0018】
本発明において、賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す組成物を焼成してなるアモルファス状炭素中に、上述の体質材が、均一かつ一方向に高度に配向制御されているかの確認は、
X線回析による配向度(π)により確認できる。すなわち、配向度(π)は、芯体中のアモルファス状炭素結晶の押出軸方向に対する配向の程度を示すもので、この数値が1に近いほど、高度に配向制御されていることを意味する。
本発明(後述する実施例等を含む)において、X線回析は、芯の押出軸方向に対して垂直にX線を照射し、方位角2θを0〜90°スキャンし、(002)面の強度分布の最大値を示す方位角の位置を確認する(約26°近傍)。次に、この方位角の位置において芯をX線ビームの垂直面内において180°回転することにより、(002)面の強度分布をとり、強度最大値の1/2の点における半価幅(H)から下記式により配向度(π)が求められる。
配向度(π)=(180−H)/180 (1)
本発明では、配向度(π)が0.85以上のときに、上述の体質材が、均一かつ一方向に高度に配向制御されていることを意味する。より好ましくは、配向度(π)が0.90以上が望ましい。
本発明で得られる替芯式ホルダー鉛筆芯は、アモルファス状炭素中に、上記特性の体質材が、均一かつ一方向に高度に配向制御されており、その強度(曲げ強度)も強く、250〜450(MPa)の範囲となるものである。
【0019】
本発明において、替芯式ホルダー鉛筆芯は、曲げ強度も強く上記範囲となるものであるので、従来では、断面四角形の矩形芯とした場合、厚みの薄い方向ではどうしても強度不足で折れやすいところであったが、本発明では、補強効果を発現できる上記平均粒度(平均粒子径)の高強度素材となる体質材を均一かつ一方向に高度に配向制御させることで、断面の形状が四角形の矩形状のホルダー鉛筆芯が得られるものとなる。
本発明において、断面の形状が四角形の矩形状その大きさとしては、用いる筆記具等により変動するものであるが、替芯式のホルダータイプの筆記具では、好ましくは、断面の高さ(厚さ)が0.2〜2mm、幅方向(幅)が3〜7mm、その長手方向の長さが1〜18cm程度に調整されることが望ましい。
また、替芯式ホルダー鉛筆芯では、上記曲げ強度を有し、折れ難く、新筆記面(新たな鋭角部)が露出できる構造、すなわち、任意に折ることができるように、表面にレーザー加工機によるレーザー光を照射して、所定間隔度(例えば、3〜10mmの間隔)に、カット用の傷、例えば、所定深さの溝(0.1〜1mm)を形成することが好ましい。
【0020】
図1(a)は、本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯を替芯式のホルダータイプの筆記具に適用した一例を示す斜視図である。
図1(a)の替芯式ホルダー鉛筆芯10は、幅5mm、厚さ1mm、長さ10cmであり、レーザー加工機で鉛筆芯表面に、長手方向と垂直に深さ0.3mmの溝11,11…を5mm間隔で形成したものである。
図1(b)の筆記具Aは、汎用の構造であり、軸筒1の内部には、図示しないが、コイルバネ等の弾性部材によって後方に付勢された芯タンク2が前後動可能に配置され、該芯タンク2の前方には、替芯式ホルダー鉛筆芯10の把持・解放を行うチャック3が取り付けられている。そして、そのチャック3の頭部3aは、前記軸筒1の前端に取り付けられた首部4から露出しており、チャック3が前後動する度に、その首部4の先端孔4aによって閉鎖、拡開が行われる。そして、ノック体5を押圧すると、芯タンク2を前進し、チャック3も前進し、そのチャック3の頭部3aが自らの弾性復元力によって拡開する。この拡開動作により、把持されていた替芯式ホルダー鉛筆芯10が解放されるため、替芯式ホルダー鉛筆芯10は自重で下降し、チャック3の頭部4から露出する。ここで、前記芯タンク2の前進動作を解除すると、その芯タンク2は、弾性部材によって後方に移動すると共に、チャック3も後方に向け移動する。この時、そのチャック3の頭部3aは、前記首部4の先端孔4aによって閉鎖せしめられ、再び、替芯式ホルダー鉛筆芯10を把持するものであり、所定の繰り出す操作により使用に供されるものである。
このタイプの筆記具Aでは、本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯を用いることにより、筆記時は折れにくく、カド書きで細い描線、面書きで塗りやすい芯を実現可能となり、それ故芯表面に加工することも可能となり、鉛筆芯を把持し、任意に繰出して削らずに溝部11で折って、新筆記面(溝部11に沿って折ることで新たな鋭角部)を出すことも可能となると同時に削り器が不要で、削りカスや粉がでないなど機能を発現することができるものとなる。
【0021】
本発明の替芯式ホルダー鉛筆芯は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。例えば、ノック式でなくチャックで把持固定し、数回折っての使用後に、鉛筆芯を付け替え把持固定するなどであってもよいものである。
【実施例】
【0022】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本願発明はこの実施例等によって何等限定されるものではない。
【0023】
〔実施例1〜3及び比較例1〕
以下の実施例、比較例において、高速高圧での押し出しは、高樹脂圧力に耐えうるスクリュー式押出機を用いて行い、各実施例、比較例に記載の押し出し温度、背面圧力、せん断速度で行った。
また、配向度は、X線回析装置(リガク社製)を用いて、上述の条件で測定し、上記式にて算出し、曲げ強度はJIS S 6005:2013に準拠して測定した。
これらの結果を下記実施例1〜3及び比較例1中に記載した。
【0024】
(実施例1)
配合組成物として、塩素化塩化ビニル樹脂45質量部を用い、これに天然黒鉛微粉末(平均粒度5μm)45質量部と窒化硼素(平均粒度6μm)10質量部に対し、可塑材としてジアリルフタレートモノマーを20質量部添加して、ヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、二本ロールで混練した後、スクリュー式押出機にノズル先端の断面形状が長方形状の押出ノズルを装着し、押出温度を100℃に設定し、背面圧力を35MPa、せん断速度8×10(1/sec)が得られるようにスクリュー回転数で高速高圧で押し出しで、断面が矩形状に成形を行ない、その後、窒素ガス雰囲気中で焼成し、最後にアルファーオレフィンオリゴマー中に浸漬して、替芯式ホルダー鉛筆芯を得た。
【0025】
得られた替芯式ホルダー鉛筆芯は、幅5mm、厚さ1mm、長さ10cm、配向度0.91、曲げ強度が400MPaであった。
また、レーザー加工機(YAGレーザー、三菱電機社製、以下同様)で鉛筆芯表面に、長手方向と垂直に深さ0.3mmの溝を5mm間隔で形成した。
該鉛筆芯を図1に示すホルダーで把持することで、削る必要がなく、したがって削りカスが生じず、外観形状として短くなることが無いので筆記具としての使い勝手も変わらなく、高強度で折れ難く、且つ任意に折ることができ、描線も安定して使うことができ、カド書きで細かい文字も書くことが可能な替芯式ホルダー鉛筆芯を得ることができた。
【0026】
(実施例2)
配合組成物として、塩素化塩化ビニル樹脂45質量部を用い、これに天然黒鉛微粉末(平均粒度5μm)35質量部と窒化硼素(平均粒度6μm)20質量部に対し、可塑材としてジアリルフタレートモノマーを20質量部添加して、上記実施例1と同様に分散、混合し、高速高圧で押し出し〔(押出温度:100℃、背面圧力を30MPa、せん断速度7×10(1/sec)〕で押し出しで、断面が矩形状に成形を行ない、その後、窒素ガス雰囲気中で焼成し、最後にアルファーオレフィンオリゴマー中に浸漬して、替芯式ホルダー鉛筆芯を得た。
【0027】
得られた替芯式ホルダー鉛筆芯は、幅5mm、厚さ1mm、長さ18cm、配向度0.89、曲げ強度が380MPaであった。上記実施例1と同様にレーザー加工機で鉛筆芯表面に、長手方向と垂直に深さ0.3mmの溝を5mm間隔で形成した。
該鉛筆芯を図1のホルダーで把持することで、実施例1と同様に、削る必要がなく、したがって削りカスが生じず、外観形状として短くなることが無いので筆記具としての使い勝手も変わらなく、高強度で折れ難く、且つ任意に折ることができ描線も安定して使うことができ、カド書きで細かい文字も書くことが可能な替芯式ホルダー鉛筆芯を得ることができた。
【0028】
(実施例3)
配合組成物として、塩素化塩化ビニル樹脂45質量部を用い、これに天然黒鉛微粉末(平均粒度5μm)45質量部と窒化硼素(平均粒度6μm)10質量部に対し、可塑材としてジアリルフタレートモノマーを20質量部添加して、上記実施例1と同様に分散、混合し、高速高圧で押し出し〔(押出温度:100℃、背面圧力を50MPakg/cm2、せん断速度9×10(1/sec)〕で押し出しで、断面が矩形状に成形を行ない、その後、窒素ガス雰囲気中で焼成し、最後にアルファーオレフィンオリゴマー中に浸漬して、替芯式ホルダー鉛筆芯を得た。
【0029】
得られた替芯式ホルダー鉛筆芯は、幅7mm、厚さ0.7mm、長さ15cm、配向度0.93、曲げ強度が390MPaであった。実施例1と同様にレーザー加工機で鉛筆芯表面に、長手方向と垂直に深さ0.2mmの溝を7mm間隔で形成した。
該鉛筆芯を図1のホルダーで把持することで、実施例1と同様に、削る必要がなく、したがって削りカスが生じず、外観形状として短くなることが無いので筆記具としての使い勝手も変わらなく、高強度で折れ難く、且つ任意に折ることができ描線も安定して使うことができ、カド書きで細かい文字も書くことが可能な替芯式ホルダー鉛筆芯を得ることができた。
【0030】
(比較例1)
配合組成物として、塩素化塩化ビニル樹脂45質量部を用い、これに天然黒鉛微粉末(平均粒度5μm)45質量部と窒化硼素(平均粒度6μm)10質量部に対し、可塑材としてジアリルフタレートモノマーを20質量部添加して、上記実施例1と同様に分散、混合し、背圧がかからず一般的な押出し圧力および速度で押し出し、断面が矩形状に成形を行ない、その後窒素ガス雰囲気中で焼成し、上記実施例1と同様にして替芯式ホルダー鉛筆芯を得た。
【0031】
得られた替芯式ホルダー鉛筆芯は、幅5mm、厚さ1mm、長さ10cm、配向度0.82、曲げ強度が240MPaであった。上記実施例1と同様にレーザー加工機で鉛筆芯表面に、長手方向と垂直に深さ0.3mmの溝を5mm間隔で形成した。
該鉛筆芯を図1のホルダーで把持したが、削る必要がなく、したがって削りカスが生じなかった。しかしながら、外観形状として短くなることが無いものの、配向度が低く、カド書きで細かい文字も書くことが可能な使い勝手を考慮すると、強度面等で課題が残る替芯式ホルダー鉛筆芯となった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
カド書きで細かい文字を好適に書くことができ、高強度で折れ難く、かつ、任意に折ることができ、描線も安定して筆記することができる替芯式ホルダー鉛筆芯に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 替芯式ホルダー鉛筆芯
図1