(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223977
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】分布光ファイバ温度センシングを用いた医療装置の挿入及び取り出し情報
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20171023BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20171023BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
A61B5/00 101H
A61B90/00
A61B1/00 650
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-527779(P2014-527779)
(86)(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公表番号】特表2014-534826(P2014-534826A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】IB2012054379
(87)【国際公開番号】WO2013030749
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】61/530,443
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン,バラート
(72)【発明者】
【氏名】マンツクェ,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】チャン,レイモンド
【審査官】
伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/034584(WO,A2)
【文献】
特開2008−173397(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/048509(WO,A1)
【文献】
特表2011−517417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 5/00 − 5/01
A61B 34/00 − 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度誘起歪みの分布センシングを実行するように構成される、少なくとも1つの光ファイバを有するセンシング可能装置;及び、
体内に存在する前記少なくとも1つの光ファイバからの光信号を受け、かつ、前記光信号を解釈して、前記センシング可能装置の少なくとも1つの温度勾配を決定するように構成される解釈モジュール;
を有するシステム。
【請求項2】
前記センシング可能装置が、該センシング可能装置の形状センシングを実行し、かつ、温度誘起歪みをセンシングするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センシング可能装置が伸びた医療装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記センシング可能装置が、第1温度を有する第1部分及び第2温度を有する第2部分を有し、かつ
前記解釈モジュールが、前記第1部分と前記第2部分との間の遷移点を決定するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1部分が体内で、
前記第2部分は体外で、かつ、
前記遷移点が前記体内の挿入地点を含む、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記センシング可能装置が4つ以上の光ファイバを有し、
前記4つ以上の光ファイバは、3つ以上の光ファイバが1つの中心光ファイバを取り囲むように構成され、
前記の取り囲む光ファイバは幾何学構造誘起歪みを測定し、かつ、前記中心光ファイバは温度誘起歪みを測定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センシング可能装置の前記少なくとも1つの温度勾配を受け取り、かつ、画像を前記少なくとも1つの温度勾配に対してレジストレーションするように構成される画像生成モジュールをさらに有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの光ファイバを有し、かつ、温度誘起歪みの分布センシングを実行するように構成されるセンシング装置を有する医療装置;
プロセッサ;
前記プロセッサと結合されるメモリであって、対象物内部の前記少なくとも1つの光ファイバからの光信号を受け、かつ、前記光信号を解釈して、前記センシング装置の少なくとも1つの温度勾配を決定するように構成される解釈モジュールを記憶するメモリ;
前記プロセッサに結合され、かつ、前記対象物に対する温度及び/又は温度勾配情報を表示するように構成される表示装置;
を有するワークステーション。
【請求項9】
前記センシング装置が、該センシング装置の形状センシングを実行し、かつ、温度誘起歪みをセンシングするように構成される、請求項8に記載のワークステーション。
【請求項10】
前記医療装置が伸びた装置を含む、請求項8に記載のワークステーション。
【請求項11】
前記センシング装置が、第1温度を有する第1部分及び第2温度を有する第2部分を有し、かつ
前記解釈モジュールが、前記第1部分と前記第2部分との間の遷移点を決定するように構成される、
請求項8に記載のワークステーション。
【請求項12】
前記第1部分が体内で、
前記第2部分は体外で、かつ、
前記遷移点が前記体内の挿入地点を含む、
請求項11に記載のワークステーション。
【請求項13】
システムの作動方法であって、
少なくとも2つの異なる温度領域内に設けられたファイバ光学歪みセンシング装置から歪みデータを収集する段階;
前記歪みデータから前記少なくとも2つの異なる温度領域にわたる少なくとも1つの温度勾配を決定する段階;
前記歪みデータに基づいて前記少なくとも2つの異なる温度領域間での温度遷移点を決定する段階;及び、
医療装置に対する前記遷移点を特定することで特定参照位置を発見する段階;
を有する、作動方法。
【請求項14】
前記センシング装置が、第1温度を有する第1部分及び第2温度を有する第2部分を有し、
前記第1部分が体内で、
前記第2部分は体外で、かつ、
前記遷移点が前記体内の挿入地点を含む、
請求項13に記載の作動方法。
【請求項15】
幾何学構造誘起歪みと温度誘起歪みを測定する段階をさらに有する、請求項14に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置に関し、より詳細には、医療装置の挿入/取り出しも若しくは他の情報の評価及び決定を行う医療用途における形状センシング光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
最小侵襲処理は、装置を挿入して処理を実行するために小さな切り口又は鍵穴を設ける段階を含む。多くの場合において、たとえば装置の一部が現在、体外に対して体内のどこに存在するのかを決定するのに、装置と患者に対する挿入地点を知ることは重要である。挿入された装置は一般的には長くなり、かつ、かなりの長さにまで延びて体内に入り込むことができる。それに加えて長さは処理中動的に変化しうることで、その装置が体内に入り込む程度が変化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明によると、システム、装置、及び方法は、温度誘起歪みの分布センシングを実行するように構成される光ファイバを有するセンシング可能装置を備える。解釈モジュールが、体内に存在する前記光ファイバからの光信号を受け、かつ、前記光信号を解釈して、当該装置の1種類以上の温度又は温度勾配を決定するように構成される。
【0004】
ワークステーションは、少なくとも1つの光ファイバを有し、かつ、温度誘起歪みの分布センシングを実行するように構成されるセンシング装置を有する医療装置を備える。プロセッサが供される。メモリは前記プロセッサと結合され、前記プロセッサ内部に記憶された解釈モジュールを有し、かつ、対象物内部の前記少なくとも1つの光ファイバからの光信号を受け、かつ、前記光信号を解釈して、前記装置の少なくとも1つの温度又は温度勾配を決定するように構成される。表示装置が、前記プロセッサに結合され、かつ、前記対象物に対する温度及び/又は温度勾配を表示するように構成される。
【0005】
方法は、少なくとも2つの温度領域内に設けられたファイバ光学歪みセンシング装置から歪みデータを収集する段階、前記歪みデータに基づいて前記少なくとも2つの温度領域間での温度遷移点を決定する段階、及び、医療装置に対する前記遷移点を特定することで特定参照位置を発見する段階を有する。
【0006】
本開示の上記並びに他の目的、特徴、及び利点は、添付図面と共に参照することで以降の本開示の実施例の詳細な説明から明らかとなる。
【0007】
本開示は、図面を参照しながら好適実施例を以下のように詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一の実施例による温度/形状センシングシステムを用いるシステム及びワークステーションを示すブロック図/流れ図である。
【
図2】本願の原理による2つの温度領域間の参照位置を示唆することが可能な表示装置を示す絵又は画像である。
【
図3】一の実施例によるセンシング装置の図である。図中、複数の光ファイバを示す断面が示されている。
【
図4】他の実施例による参照位置として温度遷移を決定するセンシングされた歪みデータを収集及び使用するシステム/方法を示すブロック図/流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の原理によると、医療装置の挿入/取り出し位置を決定し、かつ、どの程度装置が患者の内部にあるのかを前記患者の外部と比較して決定するシステムが供される。一の特に有用な実施例によると、ファイバ光学歪みセンシング装置は医療装置と併用される。ファイバ光学に基づく形状センシングは、従来の光ファイバにおける固有後方散乱を利用する。原理は、特性レイリー後方散乱パターン又は他の反射特性を用いることによって光ファイバ内での分布歪み測定を利用する。ファイバ光学センシング装置が、空間分解温度測定のみならず医療装置の形状をも示すことができるように、ファイバ光学歪みセンシング装置は、医療装置上に設けられるか又は医療装置に統合される。一の実施例では、温度は、体内のファイバが可能な装置の挿入/取り出し位置を測定するように用いられる。装置が体内に挿入されてリアルタイムで体内で操作される際には、この情報は、体内の装置の長さを計算するのに用いられて良い。
【0010】
一例では、4つ以上のコアファイバが用いられて良い。このとき一のコアは、前記一のコアが曲がりによる歪みと温度効果とを分離できるように断面の中心に設けられる(たとえば軸方向の歪み(張力)が存在しないとき又は張力が既知で制御可能(校正可能)であるとき)。一の実施例では、形状センシングと温度センシングが一緒になって供されて良い。他の実施例では、温度効果のみが一の光ファイバによって測定されて良い。
【0011】
一の実施例では、システムは、歪みと温度の分布ファイバ光学センシングを実行し、かつ、延びた医療装置の形状を再構成することができる。このとき空間分解温度測定は、体内の位置と体外の位置との間での遷移によって生じる温度勾配を特定するのに用いられる。歪みの測定は、装置の形状を決定し、かつ、温度勾配を用いることによって装置に沿った特定の位置を決定するのに用いられて良い。システムは、各異なる温度領域内−たとえば人体内部と人体外部、熱処理された領域(たとえばアブレーション領域)の内部と外部等−に存在する装置の部分を決定することができる。
【0012】
さらに固定された挿入地点の検出は、実験室の参照座標軸の代わりに患者の参照座標軸で移動する患者固有の参照開始領域を特定するのに用いられて良い。正確な形状センシングでは、形状センシング装置周辺の環境温度が、処理中に使用される装置−たとえば体外で室温動作する形状センシング部及び体温で動作する生体内の第2部品−の校正に用いられる。いずれの部分での形状センシング精度は必要であるので、それらの部分に固有な温度校正が好ましい。
【0013】
本発明は医療装置関して説明されるが、本発明の教示はかなり広く、かつ、任意のファイバ光学装置に適用可能であることに留意して欲しい。一部の実施例では、本願の原理は、複雑な生体系又は機械系(たとえば配管系等)の追跡又は解析に用いられる。特に本願の原理は、生体系の内部追跡処理、身体の全領域−たとえば肺、消化管、排出器官、血管等−内での処理に適用可能である。図示された構成要素は、ハードウエアとソフトウエアの様々な組み合わせで実装されて良く、かつ、単一の構成要素又は複数の構成要素内で結合可能な複数の機能を供して良い。
【0014】
図示された様々な構成要素の機能は、専用のハードウエアを使用することによって供されて良いし、又は、適切なソフトウエアと関連するソフトウエアを実行することのできるハードウエアを用いることによって供されて良い。プロセッサによって供されるとき、昨日は単一の専用プロセッサによって、単一の共有されたプロセッサによって、又は、複数の各独立するプロセッサ−そのうちの一部は共有されて良い−によって供されて良い。しかも「プロセッサ」又は「制御装置」という語句を明示的に使用しても、ソフトウエアを実行することのできるハードウエアという意味しかないと解するべきではなく、限定なく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウエア、ソフトウエアを記憶する読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性メモリ等を含みうることが含意されうる。
【0015】
ここで図面を参照すると、
図1には、一の実施例による温度センシング可能な装置を用いた処理を実行するシステム100が図示されている。システム100は、ファイバ光学形状センシングを用いる介入処理及び外科処理用のすべての用途と併用され、かつ、前記用途に適用可能である。歪みと温度の分布ファイバ光学センシングは、長く延びた医療装置102の形状及び/又は温度を再構成するのに用いられて良い。空間分解温度測定は、体131の内部及び/又は外部の複数の位置間での遷移によって生じる温度勾配を特定するのに用いられる。歪みの測定は、装置の形状の決定、及び、温度勾配を有する装置に沿った特定の位置の決定に用いられる。各異なる温度領域−たとえば人体の内部と外部、又は、熱処理された領域の内部と外部−内に存在する装置102の部分が決定されて良い。
【0016】
システム100はワークステーション又はコンソール112を有して良い。ワークステーション又はコンソール112から、処理が、指図を受け、及び/又は管理される。ワークステーション112は、1つ以上のプロセッサ114及びプログラムとアプリケーションを記憶するメモリ116を有することが好ましい。メモリ116は、光学センシング及び解釈モジュール115を記憶して良い。光学センシング及び解釈モジュール115は、形状及び/若しくは温度センシング装置又はシステム104からの光フィードバック信号を解釈するように構成される。光センシングモジュール115は、光信号フィードバック(及び他のフィードバック−たとえば電磁(EM)追跡、生きたマルチモダリティ可視化データ、又は、診断環境内で利用可能な他の監視データ−)を用いて、変位、曲がり、並びに、医療装置102及び/又はその周辺領域に係る他の変化を再構成するように構成されて良い。医療装置102は、カテーテル、ガイドワイヤ、プローブ、内視鏡、ロボット、電極、フィルタ装置、バルーン装置、又は他の医療装置等を含んで良い。特に有用な実施例では、センシング装置104は、医療装置102と併用されうる又は独立して使用されうる温度センシング構成を有する。
【0017】
温度センシングシステムは、モジュール115、及び、装置102に設けられる又は統合される形状/温度センシング装置104を有する。センシングシステムは、選択された信号を供し、かつ、光応答を受け取る光検出器108を有する。光源106は、検出器108の一部として供されて良いし、又は、光信号をセンシング装置104へ供する別個の装置として供されても良い。センシング装置104は、パターンの組又は複数のパターンを構成するように装置102と結合する1つ以上の光ファイバ126を有する。光ファイバ126は、ケーブル127を介してワークステーション112に接続する。ケーブル127は、必要に応じて、光ファイバ、電気的接続、他の装置を含んで良い。
【0018】
光ファイバを備えるセンシング装置104は、光ファイバブラッグ回折格子センサに基づいて良い。光ファイバブラッグ回折格子(FBG)は、特定の波長の光を反射させて他すべてを透過させる短い光ファイバの一部である。これは、ファイバコア内に周期的な屈折率の変化を加えることによって実現される。これは波長に固有な誘電ミラーを生成する。従ってファイバブラッグ回折格子は、ある波長を阻止するインラインの光ファイバとして又は波長に固有な反射体として用いられて良い。
【0019】
ファイバブラッグ回折格子の動作の背後にある基本原理は、屈折率が変化する各界面でのフレネル反射である。一部の波長では、様々な周期の反射光は、反射について建設的干渉が起こるような位相をとる。従って透過については破壊的干渉となる。ブラッグ波長は、歪みにも温度にも敏感である。このことは、ブラッグ回折格子が光ファイバセンサ内のセンシング素子として用いられうることを意味する。FBGセンサでは、(たとえば温度又は歪みの)測定によって、ブラッグ波長のシフトが生じる。
【0020】
この方法の一の利点は、様々なセンサ素子がファイバの長さにわたって分布可能となることである。構造体内に埋め込まれたファイバの長さに沿って様々なセンサを備える3つ以上のコアを組み込むことによって、その構造体の3次元形状を厳密に−典型的には1mm以上の精度で−決定することが可能となる。ファイバの長さに沿った様々な位置に、多数のFBGセンサ(たとえば3つ以上のファイバセンシングコア)が設けられて良い。各FBGの歪み測定から、その位置での構造体の温度と曲率が推定されうる。多数の測定位置から、全体的な3次元形状が決定され、かつ、温度差が決定されうる。
【0021】
光ファイバブラッグ回折格子の代わりとして、従来の光ファイバにおける固有後方散乱が利用されても良い。係る方法の一は、標準的な単一モード通信ファイバにおけるレイリー散乱を利用することである。レイリー散乱は、ファイバコア内での屈折率の無作為な揺らぎの結果生じる。これらの無作為な揺らぎは、回折格子の長さに沿って振幅と位相が無作為に変化するブラッグ回折格子としてモデル化されうる。マルチコアファイバの単一長さの内部で延びる3つ以上のコアにおいてこの効果を用いることによって、関心構造の3D形状、温度、及び動的特性を追跡することができる。
【0022】
可視化システム110は、処理中での対象物131のその場での可視化のために用いられて良い。可視化システム110は、装置102に組み込まれて良いし(たとえば冠動脈血管内超音波(IVUS)等)、又は、対象物131の外部で用いられても良い。可視化システム110はまた、対象物内の関心領域をマッピングすることで、形状/温度センシング空間で
レジストレーション用の画像体積を生成するため、処置前の画像を収集及び処理するのに用いられても良い。
【0023】
一の実施例では、ワークステーション112は画像生成モジュール148を有する。画像生成モジュール148は、装置102の少なくとも1つの温度勾配を受け取り、かつ、
画像を前記少なくとも1つの温度勾配
に対してレジストレーションし、又は、センシング装置104からの結果を表示するように構成される。ワークステーション112は、対象物(患者)131の内部画像を閲覧する表示装置118を有し、かつ、オーバーレイ画像又は装置102(及び/又はセンシング装置104)の挿入/取り出し地点を示す他の画像を有して良い。
図2は表示画像の例を示す。可視化システム110は、蛍光分光システム、コンピュータ断層撮像(CT)システム、超音波システム等を含んで良い。表示装置118はまた、ユーザーが、ワークステーション112とその構成要素及び機能、又は、システム100内部の他の任意の構成要素との相互作用することを可能にする。このことはインターフェース120によってさらに容易になる。インターフェース120には、キーボード、マウス、ジョイスティック、力覚装置、又は、ワークステーション112からのユーザーフィードバック及び相互作用を可能にする他の任意の周辺機器若しくは制御装置が含まれて良い。
【0024】
他の実施例では、システム100は、他の任意の可視化若しくは追跡法を用いることなく、又は、如何なる外部外部技術若しくはユーザー観察/介入に依拠することなく、身体131内部での形状/温度センシング可能な装置102の挿入地点140を計算する方法を有する。システム100は、挿入地点140を計算することで、身体131に挿入されるセンシング装置104の厳密な部分を動的にリアルタイムで知る。光ファイバ形状センシングシステムでは、固定された挿入地点140の検出は、環境(たとえば実験室又は手術室)の参照座標軸の代わりに患者の参照座標軸で移動する患者固有の参照開始領域を特定するのに用いられて良い。正確な形状/温度センシング性能のためには、光ファイバ126の周辺温度が、処理中に使用される装置104を校正する因子として必要になる。たとえば周辺の室温は、体外のセンシング装置104の第1部分142にとって最も重要となる。第2部分144は生体内で、体温で動作する。いずれの部分においても形状センシング精度は必要なので、部分に特有の温度校正が好ましい。
【0025】
一の実施例では、光ファイバ126のN個の部分152の各々は、各対応する部分152の校正温度を供する温度参照部154を有して良い。これは、処理中又は処理に先立つ若しくはその後の校正段階として用いられて良い。分布ファイバセンサ104によって記録される光学測定は、独立した温度参照部154−たとえば温度計の読み取り−と共に、又は、校正段階における既知の温度へのファイバの曝露及び温度変化から、正確な温度値と校正されうる。
【0026】
図2を参照すると、考えられ得る表示装置118を示す絵又は画像200が表されている。(たとえば表示装置118上での)考えられ得る表示を示す絵又は画像200が図示されている。患者の描画202は、患者(の一部分)の大まかな輪郭又は実際にリアルタイム若しくは事前に記録された画像を含んで良い。画像200は、センシング装置104のレンダリング206を含んで良く、かつ、挿入地点208に対する様々なテクスチャ又は色(温度変化)を示して良い。センシング装置104の第1部分242は身体131の外側である。第2部分244は身体131の内部である。
【0027】
絵200は、身体131の内部である形状センシング可能な装置102の長さを計算するリアルタイム手段を供するグラフ210を含む。そのような手段は、たとえば装置の挿入させすぎ/挿入不足に起因する正しくない領域ではなく、所望の標的病巣からの生体組織検査を実行するための診断上及び治療上の膣内での用途に必要とされ得る。
【0028】
そのようにすることで、診断上の処理能力の向上が、介入処理中に実現可能となる。グラフ210は、外部温度領域212、内部温度領域216、及び遷移温度領域214を示す。遷移温度領域214は身体131への遷移を与える。この遷移は、挿入地点208を決定するのに用いられる。それに加えて、挿入長222と外部長224を示す実行中の計算220が表示されて良い。他の絵及び視覚的手法も考えられるし、用いられて良い。
【0029】
37℃である人体の温度は、処置室又は介入処理用の特別室内の周辺温度(たとえば空調によって20℃周辺である)よりも高い。その結果、ファイバ装置が体内に侵入するときの地点では、ファイバの温度は、20℃から37℃の範囲での勾配を受ける、すなわち徐々に変化する。この位置は、装置104の進行中に動的に検出されて良い。しかしファイバを取り囲む材料によって導入される熱容量が、温度変化に対するシステムの応答時間に影響を及ぼす時定数を大きくする恐れがある。これらはたとえば、設計又は計算において考慮されて良い。
【0030】
他の実施例では、挿入地点208が可視化空間内において視認可能である限り、形状/温度センシングデータは、処置前と処置中の両方で可視化データに適合さ
せることができる。たとえば身体131の画像とセンシング装置104の病臥は一緒に表示されて良い。挿入地点208は、両方の空間を
レジストレーションするための共通の参照点を与えて良い。これによって、ファイバ126自体が視野内で視認不可能な場合、又は、存在するファイバの一部分152が明確な融合(たとえばファイバ装置は、視野を貫通するする1本の線として現れる)を可能にするための十分な構造上の詳細を欠く場合において
レジストレーションの際に直面する問題が解決される。
【0031】
図3を参照すると、形状/温度センシング装置104の断面が図示されている。光ファイバは、歪みの測定に用いられて良く、かつ、温度に敏感でもある。一の実施例では、3つの外側ファイバコア302が第4の中心コア304の周りに設けられている。このような組み合わせによって、歪みを別個に測定することが可能となる。その結果、形状(コア302)及び(長さに沿った)空間分解温度(コア304)が得られる。軸歪みが存在しない場合にこの構成は最もよく機能する。大抵の場合、装置104はその長さ方向に沿って伸張しないので、装置104の軸歪みが無視できる。よって中心コア304における基本的な影響は温度に起因すると推定することは合理的である。軸歪みが存在する場合にそれを無視する又は考慮する他の構成が用いられても良い。たとえば物理的な歪みと温度による歪みとが区別されうるように、第1コアとは異なる特性を有する第2コアが供されても良い。各コアが各異なる特性を有することで、測定の差異が、軸歪み、温度値等を分解する複数の解決法を可能にする場合、これらの同一な特徴又は差異は、外側コアにも適用されて良い。
【0032】
装置104の長さに沿った温度変化は、挿入地点208を動的に決定することによって、又はより一般的には、様々な温度領域内での位置を決定することによって監視される。上述したように、これは、標的に接近しているのか否かを予測するために処置前の可視化と組み合わせられて良い。それもまた、挿入地点が可視化モダリティにおいて視認可能であるときには、形状センシングシステムに適合され、かつ、その形状センシングシステムに
対してレジストレーションされて良い。
【0033】
4つのコア(302,304)の構成によって、温度からの歪みは幾何学構造による歪みと容易に区別されうる。コア302によって示唆される幾何学構造が、中心コア304から収集される情報に対する位置情報を供するので、コア302における歪みは、ファイバに沿った温度領域を分解するのに用いられ得る。それに加えて、光ファイバセンサ104は、追加の光測定−たとえば後方散乱等−を供して良い。この光後方散乱は、光後方散乱において変位誘起変化から温度を分離することによって不良推定問題をより正確に解決するのに用いられ得る。
【0034】
しかし単一のファイバコアが温度センサとして用いられて良いことに留意して欲しい。これは、単一ファイバ内での他の歪みが既知であるときには特に有効である。さらに多くのコア(たとえば最大7つのコア)を備えるファイバ構成では、コアは中心コアの周りで均等又は対称的に分布することが好ましい。一例では、六角形状に分布する6つの外側コアと中心に1つのコアを備える7つのコアが用いられて良い。他の構成も考えられる。
【0035】
ファイバの物理的な長さ及び屈折率は本質的に環境パラメータ−温度、歪み、これらよりは影響ははるかに小さいが、圧力、湿度、電磁場、化学物質への曝露等−に対して敏感である。温度変化ΔT又はファイバ軸に沿った歪みεに起因する後方散乱パターンの波長シフトΔλ又は周波数シフトΔνは、Δλ/λ=-Δν/ν=K
T+K
εとなる。ここでK
ε=1-n
2eff/2(p
12-μ(p
11+p
12))である。温度係数K
Tは、熱膨張係数αと熱光学係数ξ=1/n(∂n/∂T)の合計である。Geがドーピングされたシリカコアファイバでのαとξの典型的な値はそれぞれ0.55×10
-6℃
-1と6.1×10
-6℃
-1である。歪み係数K
εは、群の屈折率(すなわちn
eff)、歪み光学テンソルp
ijの成分、及びポアソン比μの関数である。Geがドーピングされるシリカについて与えられるn,p
12,p
11,μの通常の値から、約0.787のK
εの値が得られる。よって温度又は歪みのシフトは、(中程度の温度の歪みの範囲では)スペクトル周波数シフトΔνに対して線形に変化して良い。歪みがファイバの弾性限界に接近するとき又は温度がファイバのガラス転移温度に接近するときには、この線型モデルは適用されない。
【0036】
ファイバ長さに沿って検出される温度変化を利用することで、部分毎の一定温度校正及び部分に固有な形状再構成を、ファイバセンサ104の各領域に適用することが可能となる。これによって、挿入地点で温度勾配(これは通常形状センシング/特定の性能を劣化させる恐れがある)が存在するにもかかわらず、各領域内での形状追跡精度が保証される。
【0037】
本願の原理の他の用途には、標的−たとえば病巣−の位置が処置前のコンピュータ断層撮像(CT)による像内で既知である場合における呼吸器又は他の膣内及び血管内の用途が含まれて良い。これを知ることによって、呼吸器科医が標的に到達するまでに進行させなければならない経路及びその経路長もわかる。本願の原理によると、医療者は、体内で移動した装置の長さを知る。その装置からの3D形状情報と結合されるこの装置の移動した長さは、処理の処理能力を改善する上で重要となる。上述した例は限定と解されてはならない。本願の原理から利益を享受する他の膣内用途には、消化器、大腸、婦人科、泌尿器等の用途が含まれうる。センシング装置104は、膀胱鏡、尿管鏡、鼻喉鏡、胃内視鏡、大腸内視鏡、食道鏡等のうちの1つ以上に組み込まれて良い。
【0038】
図4を参照すると、一の実施例による参照位置を発見するための温度遷移点を決定する方法が示されている。ブロック402では、歪みデータが少なくとも2つの異なる温度領域内に設けられた光ファイバ歪みセンシング装置から収集される。センシング装置は、第1温度を有する第1部分及び第2温度を有する第2部分を有して良い。第1部分は体内である。第2部分は体外である。この場合、遷移点は身体内の挿入地点を含む。他の例では、第1部分は温度処理された領域を含んでよく、かつ、第2部分は参照温度領域を含んでよい。(複数の)遷移点は、身体への挿入地点/身体からの取り出し地点を決定し、標的までの体内での距離を決定し、アブレーション領域を決定する等に用いられて良い。
【0039】
歪みデータは、医療装置の形状及び温度遷移を決定する幾何学構造データを含んで良い。ブロック404では、センシングデータは温度誘起歪みと幾何学構造が誘起する歪みを含んで良い。センシング装置は、3つの光ファイバが1つの中心光ファイバを取り囲むように校正される少なくとも4つの光ファイバを有して良い。それにより3つの光ファイバは幾何学構造誘起歪みを測定し、かつ、中心光ファイバは温度誘起歪みを測定する。他の校正もまた考えられる。
【0040】
ブロック406では、少なくとも2つの異なる温度領域間での温度遷移点が、歪みデータに基づいて決定される。任意の数の領域が用いられて良い。ブロック408では、特定の参照位置を発見するため、身体及び/又は医療装置に対する遷移点が特定される。ブロック410では、遷移点の特定は、第1部分の長さと第2部分の長さの決定を含んで良い。
【0041】
ブロック412では、身体の画像が、参照地点としての温度遷移点を用いることによって温度/形状センシング空間に
レジストレーションされる。ブロック414では、温度情報が表示される。遷移点及び/又は温度勾配は、医療者が処置の精度や処理能力などを改善するように表示されうる。