(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223998
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】高効率ビデオコーディングにおける符号化ブロックフラグ符号化の方法と装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/132 20140101AFI20171023BHJP
H04N 19/136 20140101ALI20171023BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20171023BHJP
【FI】
H04N19/132
H04N19/136
H04N19/176
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-547706(P2014-547706)
(86)(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公表番号】特表2015-502722(P2015-502722A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】CN2013070160
(87)【国際公開番号】WO2013107309
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年6月23日
【審判番号】不服2016-7243(P2016-7243/J1)
【審判請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2012/070612
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516251901
【氏名又は名称】寰發股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HFI Innovation Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ リャン
(72)【発明者】
【氏名】アン ジチェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ シン
(72)【発明者】
【氏名】グオ シュン
【合議体】
【審判長】
篠原 功一
【審判官】
冨田 高史
【審判官】
清水 正一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/039733(WO,A2)
【文献】
Benjamin Bross et al., ”WD5: Working Draft 5 of High−Efficiency Video Coding”, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT−VC) of ITU−T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 7th Meeting: Geneva, CH, 2011−12−19, [JCTVC−G1103_d0] (version 1), pp.25,41,42,174,177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N7/12
H04N19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオビットストリームを復号する方法であって、前記方法は、
媒体、または、プロセッサから、前記ビデオビットストリームを受信する工程と、
カラーコンポーネントの現在のCU(符号化ユニット)が少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示す前記カラーコンポーネントの第一cbf(符号化ブロックフラグ)を復号し、前記第一cbfが前記ビデオビットストリームからリカバーされる工程と、
前記第一cbfの復号結果に従って、それぞれ、前記カラーコンポーネントの前記現在のCU中の4個のサブブロックのひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示す前記カラーコンポーネントの4個の第二cbfを復号し、前記第二cbfが前記ビデオビットストリームからリカバーされる工程と、
前記第一cbfに基づいて、または、前記第二cbfが存在する場合、前記第一cbfと前記4個の第二cbfに基づいて、前記カラーコンポーネントの前記現在のCUの残差四分木構造を決定する工程と、
を含み、
前記カラーコンポーネントの現在のCUサイズが前記カラーコンポーネントの最大TU(変換ユニット)サイズより大きいかどうかにかかわらず、前記第一cbfは、常に、現在のCUのルートレベルで信号伝達されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記カラーコンポーネントの前記最大TU(変換ユニット)サイズは、ルマコンポーネントの32×32、および、前記カラーコンポーネントの前記最大TUサイズは、彩度コンポーネントの16×16であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カラーコンポーネントの前記最大TUサイズは、シーケンスレベルで信号伝達されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記第二cbfの復号結果にしたがって、前記カラーコンポーネントの第三cbfを復号し、各第三cbfは、前記4個のサブブロックの次の深さ中の前記カラーコンポーネントの一リーフブロックが、少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかを示し、および、前記第三cbfが前記ビデオビットストリームからリカバーされる工程と、前記第三cbfが存在する場合、前記カラーコンポーネントの前記現在のCUの前記残差四分木構造は、さらに、前記第三cbfに基づく工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ビデオビットストリームを復号する方法であって、前記方法は、
媒体、または、プロセッサから、前記ビデオビットストリームを受信する工程と、
TU(変換ユニット)に関連するcbf(符号化ブロックフラグ)を復号し、前記cbfが前記ビデオビットストリームからリカバーされる工程と、
前記cbfに基づいて、前記TUのRQT(残差四分木構造)を決定し、前記cbfのシグナリングが、ルマコンポーネントと彩度コンポーネントとで統一される工程と、
を含み、
CU(符号化ユニット)サイズが最大TUサイズより大きいかどうかにかかわらず、前記cbfは、常に、CUのルートレベルで信号伝達されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記cbfは、ルートTUとリーフTUで信号伝達されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記cbfは、CABAC (context-based adaptive binary arithmetic coding)を用いて符号化され、前記CABACのコンテキストモデルは、前記RQTの深さに基づくことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
cbf(符号化ブロックフラグ)を符号化する方法であって、前記方法は、
カラーコンポーネントの現在のCU(符号化ユニット)の残差を決定する工程と、
前記カラーコンポーネントの前記現在のCUが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を含むかどうかを示す前記カラーコンポーネントの第一cbf(符号化ブロックフラグ)を決定する工程と、
前記現在のCUが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有する場合、前記カラーコンポーネントの4個の第二cbfを決定し、それぞれ、前記カラーコンポーネントの前記現在のCU中の4個のサブブロックのひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかを示す工程と、
前記カラーコンポーネントの前記第一cbfを、ビデオビットストリームに組み込む、または、前記第二cbfが存在する場合、前記カラーコンポーネントの前記第一cbfと前記第二cbfの両方を、前記ビデオビットストリームに組み込む工程と、
を含み、
前記カラーコンポーネントの現在のCUサイズが前記カラーコンポーネントの最大TU(変換ユニット)サイズより大きいかどうかにかかわらず、前記第一cbfは、常に、現在のCUのルートレベルで信号伝達されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記カラーコンポーネントの前記最大TU (変換ユニット)サイズは、ルマコンポーネントの32×32であり、前記カラーコンポーネントの前記最大TUサイズは、彩度コンポーネントの16×16であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カラーコンポーネントの前記最大TUサイズは、シーケンスレベルで組み込まれることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらに、少なくともひとつのサブブロックが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有する場合、前記カラーコンポーネントの第三cbfを決定する工程を含み、各第三cbfが、前記4個のサブブロック中、次の深さの前記カラーコンポーネントの一リーフブロックが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示す工程、および、前記第三cbfが存在する場合、前記カラーコンポーネントの前記第一cbf、前記第二cbf、および、前記第三cbfを、前記ビデオビットストリームに組み込む工程、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
cbf(符号化ブロックフラグ)を符号化する方法であって、前記方法は、
媒体、または、プロセッサからTU(変換ユニット)を受信する工程と、
前記TUに関連するRQT(残差四分木)を決定する工程と、
前記TUの前記RQTに対応するひとつ以上のcbfを決定する工程と、
を含み、
前記cbfのシグナリングはルマコンポーネントと彩度コンポーネントとで統一され、
CU(符号化ユニット)サイズが最大TUサイズより大きいかどうかにかかわらず、前記cbfは、常に、CUのルートレベルで信号伝達されることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記cbfは、ルートTUとリーフTUで信号伝達されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ビデオビットストリームを復号する装置であって、前記装置は、
媒体から前記ビデオビットストリームを受信する手段と、
カラーコンポーネントの現在のCU(符号化ユニット)は少なくともひとつのノンゼロ変換係数を含むかどうかを示す前記カラーコンポーネントの第一cbf(符号化ブロックフラグ)を復号し、前記カラーコンポーネントの前記第一cbfが、前記ビデオビットストリームからリカバーされる手段と、
前記カラーコンポーネントの第二cbfを復号し、各第二cbfは、前記カラーコンポーネントの前記第一cbfの復号結果にしたがって、前記カラーコンポーネントの前記現在のCU中の4個のサブブロックのひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を含むかどうかを示し、前記カラーコンポーネントの前記第二cbfが前記ビデオビットストリームからリカバーされる手段と、
前記カラーコンポーネントの前記第一cbfに基づいて、または、前記第二cbfが存在する場合、前記カラーコンポーネントの前記第一cbfと前記第二cbfに基づいて、前記カラーコンポーネントの前記現在のCUの残差四分木構造を決定する手段と、
を含み、
前記カラーコンポーネントの現在のCUサイズが前記カラーコンポーネントの最大TU(変換ユニット)サイズより大きいかどうかにかかわらず、前記第一cbfは、常に、現在のCUのルートレベルで信号伝達されることを特徴とする装置。
【請求項15】
cbf(符号化ブロックフラグ)を符号化する装置であって、前記装置は、
媒体、または、プロセッサから、カラーコンポーネントの現在のCU(符号化ユニット)を受信する手段と、
前記現在のCUが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示す前記カラーコンポーネントの第一cbf(符号化ブロックフラグ)を決定する手段と、
前記カラーコンポーネントの前記現在のCUが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有する場合、それぞれ、前記カラーコンポーネントの前記現在のCU中の4個のサブブロックのひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示す前記カラーコンポーネントの4個の第二cbfを決定する工程と、
前記カラーコンポーネントの前記第一cbfをビデオビットストリームに組み込む、または、前記第二cbfが存在する場合、前記カラーコンポーネントの前記第一cbfと前記第二cbfの両方を、前記ビデオビットストリームに組み込む手段と、
を含み、
前記カラーコンポーネントの現在のCUサイズが前記カラーコンポーネントの最大TU(変換ユニット)サイズより大きいかどうかにかかわらず、前記第一cbfは、常に、現在のCUのルートレベルで信号伝達されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2012年1月19日に出願された“Methods and Apparatuses of CBF Coding in HEVC”と題されたPCT/CN2012/070612号から、優先権を主張するものであり、その内容は引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明はビデオ符号化に関するものであって、特に、高効率ビデオコーディング (HEVC)において、符号化ユニット (CU)と変換ユニット (TU)に関連するcbf (符号化ブロックフラグ)構文を符号化する方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
HEVC (高効率ビデオコーディング)は、ITU-T研究班により、ビデオ符号化専門家の映像符号化共同研究部会 (JCT-VC)グループ下で発展している進化型ビデオ符号化システムである。HEVCテストモデルバージョン 5.0 (HM-5.0)において、ブロック-ベース変換符号化を用いて、インター符号化とイントラ符号化の残りが符号化される。ブロック (変換ユニットと称される)は、四分木構造を用いて、ルートブロック (ルート変換ユニット)から分割される。リーフブロック、または、最小ブロックが到達するまで、四分木分割が繰り返して起用される。その後、二次元変換が各変換ユニットに適用される。各TUは、4個のサブ-TU、すなわち、リーフTUに分割することができる。各TUにおいて、cbf (符号化ブロックフラグ)という名前の構文エレメントが伝送されて、TUがノンゼロ変換係数を有するかどうかを示し、“1”は存在する少なくともひとつのノンゼロ係数を示し、“0”はノンゼロ係数がないことを示す。
【0004】
HM-5.0において、cbfは、ルマ(luma)コンポーネントの残りの四分木のリーフTUにだけ信号伝達される。彩度コンポーネントにおいて、cbfは、ルートTUとリーフTU両方に信号伝達されるが、cbfは、最大彩度TUサイズ以下であるTUでだけ信号伝達される。
図1から
図3は、cbfシグナリングを示す図である。
図1において、ブロック110はTUの残りの四分木分割を示し、ルートTUは、四分木分割を用いて、サブ-TU(TU 0 から TU 6)に分割される。ブロック120は対応するcbfビットを示し、TU1、3、5、および、6はノンゼロ係数を有し、TU0、2、および4はノンゼロ係数を有さない。TUがルマTUである場合、cbfビットはリーフTUだけに伝送される。ルマTUのcbfシグナリング (すなわち、cbf符号化)の例が
図2Aに示され、4組の二値 “0”、“1” “0101” と “1” は、ルートTU210の4個のリーフのcbfビットに対応する。cbfビットは、ラスター走査順序、すなわち、左上のTU、右上TU、左下TUと右下のTUの順序で、信号伝達される。左下のリーフTUにおいて、TUは、さらに、4個のリーフTUに分割される。このリーフTUのcbfビットは、ラスター走査順序で、“0101”である。したがって、4組のcbfビット220が
図2Aに示される。 彩度TUのcbfシグナリングの例が
図2Bに示され、cbfビットが、ルートTUとリーフTU両方に伝送される。ルートTU230は4個のリーフTUに分割され、左下のリーフTUが、さらに、4個のリーフTUに分割される。 よって、3レベルのTUに対応する3レベルのcbfビットがある。ルートTU (すなわち、深さ = 0)において、cbfビット “1” (参照番号240で示される) が信号で伝えられる。ルートTUの4個のリーフTUにおいて、cbfビットは、ラスター走査順序で、 “0”、“1”、“1”と“1” (参照番号250で示される)である。左下のリーフTUにおいて、TUは、ラスター走査順序で、さらに、対応するcbfビット “0”、“1” “0” と “1” (参照番号260で示される)を有する4個のリーフTUに分割される。
図2Aと
図2Bに示されるように、ルマTUと彩度TUは同じRQT (残りの四分木)構造を有し、cbfシグナリングは異なる。
図2Bの例は、最大彩度TUサイズ以下であるルートブロックのためである。たとえば、最大彩度TUサイズは16×16、最小彩度TUサイズは4×4、ルートTU230のサイズは16×16、および、各左下のリーフTUのサイズは4×4である。彩度リーフCUサイズが、最大彩度TUサイズ、たとえば、32×32より大きい時、32×32レベルで伝達されるcbfがない。
【0005】
cbfビットの数量を減少させるために、推論方法がルマと彩度TUに用いられ、別のTUのcbfフラグを用いることにより、ルートTUの第四リーフTUのcbfフラグが推定される。よって、第四リーフTUのcbfは伝送される必要がない。
【0006】
ルマTUにおいて、第四リーフTUのcbfは、前の3個のリーフTUの符号化ブロックフラグ (cbf)と関連するルートTUの前記cbfから推定される。
図3中のブロック310は、第四リーフTUのcbfが推定される時を説明する。太線枠312により示される左下TUは、4個のリーフTUに分割され、第四リーフTUのcbfは1である。TU312が4個のリーフTUに分割されるので、4個のリーフTU間に、少なくともひとつのノンゼロ係数がある。3個の前のリーフTUのcbfがすべてゼロである(ラスター走査順序で)時、最後のリーフTU (すなわち、第四リーフTU)のcbfは 1でなければならない。よって、この場合、第四リーフTUのcbfが推定される。便宜上、リーフTUのcbfは、リーフcbfとも称される。
【0007】
彩度TUにおいて、cbfが残りの四分木の全レベルに伝送されるので、この状況は異なる。各ルートTUに関連する4個のリーフTUにおいて、ルートTUのcbfが伝送される。TUのcbfが1である場合(
図3中のブロック312)、4個のリーフTU間に、少なくともひとつのノンゼロリーフTUがなければならない。よって、リーフTUのcbfがすべてゼロである場合、最後のTU (円で示される)のcbfは 1でなければならない。この場合は、最後のcbfが推定され、信号伝達が必要でない。さらに、推論メカニズムは、彩度コンポーネントのイントラ、および、インター符号化TU両方に適用される。
【0008】
HEVCにおいて、インター符号化の符号化ユニット (CU)のルート残余フラグもある。残余フラグが誤りである時、全cbfをY、U、および、Vコンポーネントに信号伝達する必要がない。残余フラグが本物で、現在のCUのTU深さが0である時、彩度cbfがすべてゼロである場合、ルマcbfが1になると推定される。よって、U(ブロック320)とV(ブロック330)のcbfがすべてゼロである場合、
図3に示されるように、深さ0のルマTUのcbfは 1 であると推定される。
【0009】
HM5.0において、最大TUサイズは、彩度コンポーネントの16×16、ルマコンポーネントの32×32である。しかし、最大CUサイズは、彩度コンポーネントの32×32である。よって、最大CUサイズとTUサイズは同じではない。さらに、HM-5.0において、彩度cbfは、最大TUサイズ以下であるサイズのTUに信号を送る。たとえば、CUサイズが64×64、すなわち、彩度CUサイズが32×32であるとき、最大TUサイズは16×16に対応する。よって、4個のルートcbfが、この32×32 CUの4個の16×16 彩度TUに伝送される。
図4に示されるように、この場合は、4個のcbfすべてが0であっても、cbfが伝送され、彩度 CU410のサイズは32×32である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、ルマTUと彩度TUにとって、cbfシグナリング方法は困難である。統一されたcbfシグナリング方法を用いて、プロセスを簡潔にすることが望まれる。このほか、現存のcbfシグナリング方法はいくつかの余剰性があり、さらに、現存のcbfシグナリング方法の効率を改善することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ビデオビットストリームの符号化、および、復号の方法と装置が開示される。一具体例において、本発明は、カラーコンポーネントの現在のCU (符号化ユニット)がノンゼロ変換係数を有するかを示すカラーコンポーネントの第一cbf (符号化ブロックフラグ)を復号する工程を含み、第一cbfがビデオビットストリームからリカバーされる。第一cbfの復号結果にしたがって、本発明は、さらに、カラーコンポーネントの4個の第二cbfを復号する工程を含み、それぞれ、カラーコンポーネントの現在のCU中の4個のサブブロックのひとつがノンゼロ変換係数を有するかを示し、カラーコンポーネントの第二cbfがビデオビットストリームからリカバーされる。第二cbfが存在する場合、カラーコンポーネントの現在のCUの残りの四分木構造は、カラーコンポーネントの第一cbf、または、カラーコンポーネントの第一cbfと第二cbfに基づいて決定される。上述の方法において、カラーコンポーネントの現在のCUは、カラーコンポーネントの最大TUサイズより大きいサイズを有する。最大TUサイズは、ルマコンポーネントの32×32、最大TUサイズは、彩度コンポーネントの16×16である。カラーコンポーネントの最大TUサイズは、配列レベルで信号伝達される。
【0012】
別の具体例において、本発明は、TUに関連するcbf (符号化ブロックフラグ)を復号し、cbfに基づいて、TUのRQT (残りの四分木) を決定する工程を含み、cbfのシグナリングはルマコンポーネントと彩度コンポーネントに共通し、前記cbfがビデオビットストリームからリカバーされる。cbfは、ルートTUとリーフTUで信号伝達される、または、cbfは、リーフTUだけで信号伝達される。CUのブロックサイズが最大TUサイズより大きいかどうかにかかわらず、cbfは、CUのルートレベルでも信号伝達される。cbfは、CABAC (context-based adaptive binary arithmetic coding)を用いて符号化され、CABACの文脈モデルはRQTの深さに基づく。一部の例では、cbfは、また、推理を用いることにより決定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】リーフTUの残りの四分木構造と符号化ブロックフラグの例である。
【
図2A】HM-5.0にしたがったルマTUの符号化ブロックフラグシグナリング方法の例である。
【
図2B】HM-5.0にしたがった彩度TUの符号化ブロックフラグシグナリング方法の例である。
【
図3】ルマTUと彩度TUの推論に基づいた符号化ブロックフラグシグナリングの例である。
【
図4】4個の16×16 彩度ルートTU前記cbfの符号化ブロックフラグシグナリングの例である。
【
図5】本発明の具体例によるインターCUの符号化ブロックフラグ推論メカニズムの例である。
【
図6A】本発明の具体例による彩度コンポーネントのcbfがCUレベルで信号伝達される例である。
【
図6B】本発明の具体例による彩度コンポーネントのcbfがCUレベルで信号伝達される例である。
【
図7】本発明の具体例を具体化するエンコーダーのフローチャートである。
【
図8】本発明の具体例を具体化するデコーダのフローチャートである。
【
図9】本発明の別の具体例を具体化するエンコーダーのフローチャートである。
【
図10】本発明の別の具体例を具体化するデコーダのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一具体例において、ルマと彩度cbfシグナリング方法は、彩度cbf符号化方法をルマcbfに拡張することにより統一される。よって、ルマと彩度cbf両方が、残りの四分木の各レベルに信号伝達される。言い換えると、cbfシグナリングが、ルートTUとリーフTU両方に実行される。この場合、ルマと彩度コンポーネントの推論方法が統合される。したがって、ルマTUは、彩度TUと同じ推論方法を用いる。言い換えると、リーフTUのcbfがすべてゼロである場合、最後のTUのcbfは1でなければならない。
【0015】
別の具体例において、インターCUの残余フラグ推論方法は、統一されたシグナリング方法にも適用される。よって、残余フラグが本物で、彩度TUのcbfがすべて0である時、上ルートTUがさらに分割されるかどうかにかかわらず、上ルートルマTUのcbfが1であると推定される。さらに、インターCUのこの残余フラグ推論方法は、深さ 0に加え、別のTU深さに適用される。言い換えると、TUがさらに分割され、彩度cbfがすべてゼロである時、ルマTUのcbfが1であると推定される。
図5に示されるように、残余フラグが1である時、彩度 (U 520 と V 530) ルートTUのcbfがすべて0である時、ルマルートTU 510のcbfが1になると推定される。
【0016】
さらに、ルマcbfの文脈形成も、彩度cbfと統一されて、CABAC (context-based adaptive binary arithmetic coding)に基づいたcbf符号化の文脈形成は、ルマと彩度コンポーネント両方のTU深さに基づく。cbfフラグのエントロピー符号化の複雑性を減少させるため、コンテキストの数量が減少される。さらに、バイパス符号化モードがCABAC-ベースcbf符号化に用いられる。
【0017】
別の具体例において、ルートcbfは、最大TUのサイズにかかわらず、常に、CUレベルで信号伝達される。よって、各CU中、常に、ルートcbfがある。
図6Aと
図6Bは、彩度CUサイズが32×32、および、最大TUサイズが16×16である時のcbf符号化プロセスを示す図である。
図6Aにおいて、彩度CUは32×32ブロックに対応し、32×32ブロックは、最大彩度TUサイズ (すなわち、16×16)より大きい。CUに関連する全彩度TUは、0で示されるように、ノンゼロ係数がないので、彩度CUのルートcbfは 0である。本発明の具体例によると、各CU中のルートcbfが、常に信号伝達されるので、0 がCUに信号伝達され、追加のcbfシグナリングの必要がない。
図6Bは別の具体例を説明し、左下TUは少なくともひとつのノンゼロ係数を含む。この場合は、a 1 がルート彩度CUに信号伝達され、追加cbfビット “0 0 1 0”が信号伝達されて、どのTUがノンゼロ係数を含むかを示す。ルマと彩度コンポーネントの最大TUサイズは、HM-5.0に基づいた符号化システムとして知られている。最大TUサイズの情報は、ビットストリーム、たとえば、ビットストリームの配列レベル (たとえば、SPS)でも信号伝達される。
【0018】
さらに別の具体例において、ルマcbf符号化方法を彩度cbfに拡張することにより、ルマと彩度cbfシグナリング方法が統一される。その結果、ルマと彩度cbfは共に、リーフTUにだけ信号伝達される。
【0019】
上述のcbfシグナリング方法は、ビデオエンコーダーとビデオデコーダに用いられる。
図7は、本発明の具体例を具体化するエンコーダーのフローチャートである。ステップ710において、現在のCUの残りが決定され、現在のCUサイズは最大TUサイズより大きい。ステップ720において、現在のCU (深さ=0)が少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示すカラーコンポーネントの第一cbfが決定される。ステップ730に示されるように、第一cbfの結果によると、異なる加工経路が得られる。ステップ740において、カラーコンポーネントの現在のCUが、少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有する場合、それぞれ、現在のCU中のカラーコンポーネントの4個のサブブロック (深さ =1)のひとつが、少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示すカラーコンポーネントの4個の第二cbfが決定される。この場合は、ステップ750に示されるように、第一cbfと4個の第二cbf両方が、ビデオビットストリームに組み込まれる。現在のCUがノンゼロ変換係数を有さない場合、ステップ760に示されるように、第一cbfだけが、ビデオビットストリームに組み込まれる。ビデオビットストリーム中、cbfを組み込むことによるcbfシグナリングは、デコーダが、残りの四分木構造をリカバリーし、復号プロセスを実行することができるようにする。ある具体例において、カラーコンポーネントのサブブロックの少なくともひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有し、サブブロックがカラーコンポーネントの最小TUサイズに達しない場合、ノンゼロ変換係数を有するサブブロックは、さらに、4個のリーフブロック (深さ =2)に分割される。 それぞれ、カラーコンポーネントの4個のリーフブロックのひとつが、少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示すカラーコンポーネントの4個の第三cbfは、ノンゼロ変換係数を有する各サブブロックに決定される。カラーコンポーネントの4個の第三cbfもビデオビットストリームに組み込まれる。現在のCU中、サブブロックとリーフブロックは、ルートTUとリーフTUである。カラーコンポーネントは、ルマ、または、彩度コンポーネントである。
【0020】
図8は、本発明の具体例を具体化するデコーダのフローチャートである。ステップ810に示されるように、ビデオビットストリームは、媒体、または、プロセッサから受信される。ビデオビットストリームは、媒体、たとえば、ストレージ媒体(ハードドライブ、光ディスク、または、フラッシュカード)、または、コンピュータメモリ (RAM、PROM、DRAM、または、フラッシュメモリ)に保存される。また、ビデオビットストリームは、プロセッサにより受信、および/または処理される。たとえば、ブロードキャスト環境において、チャネルレシーバは変調された信号を受信して、復調、および、逆多重化し、所望のビットストリームをリカバーする。この場合は、ビデオビットストリームはプロセッサ (すなわち、チャネルレシーバ)から受信される。ステップ830において、カラーコンポーネントの現在のCU (深さ=0)が少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示すカラーコンポーネントの第一cbf が復号される。ステップ840において、復号結果にしたがって、異なる復号経路が得られる。ステップ850において、カラーコンポーネントの第一cbfがゼロでない場合、それぞれ、現在のCU中のカラーコンポーネントの4個のサブブロック (深さ = 1)のひとつが、少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示すカラーコンポーネントの4個の第二cbfが復号される。ステップ860に示されるように、カラーコンポーネントの現在のCUの残りの四分木構造が、第一cbfと4個の第二cbfに基づいて決定される。カラーコンポーネントの4個の第一cbfがゼロである場合、ステップ870に示されるように、カラーコンポーネントの現在のCUの残りの四分木構造は、第一cbfだけに基づいて決定される。ある具体例において、深さ = 1のカラーコンポーネントのサブブロックのひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有し、および、サブブロックがカラーコンポーネントの最小TUサイズより大きい場合、カラーコンポーネントの4個の第三cbfも復号される。各カラーコンポーネントの4個の第三cbfは、カラーコンポーネントの4個のリーフブロックのひとつが少なくともひとつのノンゼロ変換係数を有するかどうかを示す。現在のCU中、サブブロックとリーフブロックは、ルートTUとリーフTUである。カラーコンポーネントは、彩度、または、ルマコンポーネントである。
【0021】
図9は、本発明の別の具体例を具体化するエンコーダーのフローチャートである。ステップ910において、TUが、媒体、または、プロセッサから受信される。ステップ920に示されるように、TUに関連するRQT (残りの四分木)が決定される。ステップ930において、TUのRQTに対応するひとつ以上のcbfが決定され、cbfのシグナリングはルマコンポーネントと彩度コンポーネントに共通する。
【0022】
図10は、本発明の別の具体例を具体化するデコーダのフローチャートである。ステップ1010において、ビデオビットストリームは、媒体、または、プロセッサから受信される。ステップ1020において、TUに関連するcbfがデコードされ、cbfが、ビデオビットストリームからリカバーされる。ステップ1030に示されるように、TUの残りの四分木構造がcbfに基づいて決定され、cbfのシグナリングはルマコンポーネントと彩度コンポーネントに共通する。
【0023】
上に示されるフローチャートは、本発明の具体例を組み込んだビデオエンコーダーとデコーダのcbfシグナリングの例を説明することを目的としている。当業者は、本発明の精神を脱することなく、本発明のステップを修正し、ステップを再整理し、ステップを分割し、または、ステップを結合して、本発明を実行することができる。
【0024】
上記の説明は、特定の用途およびその要件の文脈において提供されるような本発明を当業者が実施できるようにするために示される。記述された実施形態に対する様々な修正は、当業者に明らかであろうし、本明細書に定義される一般的な原理は他の実施形態に適用することができる。したがって、本発明は、図示し説明した特定の実施の形態に限定されるものではなく、ここに開示された原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。上記の詳細な説明において、種々の具体的な詳細が本発明の完全な理解を提供するために示されている。それにもかかわらず、本発明が実施できることは当業者には理解されるであろう。
【0025】
上述の本発明の具体例は、各種ハードウェア、ソフトウェアコード、または、それらの組み合わせで実施される。たとえば、本発明の具体例は、画像圧縮チップに整合される回路、または、画像圧縮ソフトウェアに整合されるプログラムコードであり、処理を実行する。本発明の具体例は、デジタルシグナルプロセッサ (DSP)で実行され、上述の処理を実行するプログラムコードである。本発明は、コンピュータプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、または、フィールドプログラマブルゲートアレイ (FPGA)により実行される多数の機能を含む。本発明により具体化される特定の方法を定義する機械可読ソフトウェアコード、または、ファームコードを実行することにより、本発明にしたがって、これらのプロセッサが設置されて、特定のタスクを実行する。ソフトウェアコード、または、ファームコードは、異なるプログラミング言語と異なるフォーマットやスタイルで展開される。ソフトウェアコードが、異なるターゲットプラットフォームにコンパイルされる。しかし、本発明によると、ソフトウェアコードの異なるコードフォーマット、スタイルと言語、および、コードを設定してタスクを実行する別の手段は、本発明の精神と領域を脱しない。
【0026】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で実施することができる。記載された実施例は、すべての点で単なる例示であり限定的ではないものとして考えられる。本発明の範囲は、そのため前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更は、その範囲内に包含されるべきである。